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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075990
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】制御装置、車両及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
B60W30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187307
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾山 啓介
(72)【発明者】
【氏名】下村 一哉
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA22
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241CD11
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
(57)【要約】
【課題】移動経路の最適化を図る。
【解決手段】自動駐車制御を実行するよりも前に、車両VHを駐車場PAに駐車させる際の移動経路R1,R2,R3,R4を予め取得する移動経路取得部110と、移動経路R1,R2,R3,R4に、車両VHを駐車場PAに駐車させるのに不要な経路R2,R3が含まれている場合には、移動経路R1,R2,R3,R4から不要な経路R2,R3を削除した経路を最適移動経路RD,RRに設定する最適化処理を実行する最適化処理部120と、最適化処理を実行しない場合は、移動経路取得部110が取得した移動経路R1,R2,R3,R4に基づき自動駐車制御を実行し、最適化処理を実行した場合は、最適移動経路RD,RRに基づき自動駐車制御を実行する自動制御部150とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駐車場に自動的に駐車する自動駐車制御及び、又は前記車両を前記駐車場から自動的に出庫する自動出庫制御を実行可能な車両の制御装置であって、
前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行するよりも前に、前記車両を前記駐車場に駐車又は前記駐車場から出庫させる際の前記車両の移動経路を予め取得する移動経路取得部と、
前記移動経路取得部が取得した前記移動経路に、前記車両を前記駐車場に駐車又は前記駐車場から出庫させるのに不要な経路が含まれている場合には、前記移動経路から前記不要な経路を削除した経路を最適移動経路に設定する最適化処理を実行する最適化処理部と、
前記最適化処理部が前記最適化処理を実行しない場合は、前記移動経路取得部が取得した前記移動経路に基づき前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行し、前記最適化処理部が前記最適化処理を実行した場合は、前記最適移動経路に基づき前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行する自動制御部と、を備える
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記最適化処理部は、前記移動経路取得部が前記車両の駐車時の移動経路である駐車時移動経路を取得した場合において、前記駐車時移動経路に前記車両の進行方向を切り替えた複数の切替位置が含まれる場合には、複数の前記切替位置のうち、前記車両を前記駐車場に進入させて前記駐車場内の所定の終了位置に停車させた移動経路の起点となる最後の切替位置を最適切替位置に設定するとともに、前記駐車時移動経路の開始位置から前記駐車時移動経路を通って前記最適切替位置に至る最短の移動経路と、前記最適切替位置から前記終了位置に至る移動経路と、を前記最適移動経路に設定する
制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置を備える車両。
【請求項4】
車両を駐車場に自動的に駐車する自動駐車制御及び、又は前記車両を前記駐車場から自動的に出庫する自動出庫制御を実行可能な車両の制御方法であって、
前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行するよりも前に、前記車両を前記駐車場に駐車又は前記駐車場から出庫させる際の前記車両の移動経路を予め取得する移動経路取得ステップと、
前記移動経路取得ステップで取得した前記移動経路に、前記車両を前記駐車場に駐車又は前記駐車場から出庫させるのに不要な経路が含まれている場合には、前記移動経路から前記不要な経路を削除した経路を最適移動経路に設定する最適化処理を実行する最適化処理ステップと、
前記最適化処理を実行しない場合は、前記移動経路取得ステップで取得した前記移動経路に基づき前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行し、前記最適化処理を実行した場合は、前記最適移動経路に基づき前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行する自動制御ステップと、を含む
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、車両及び、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、車両を駐車させる最適駐車位置を設定するとともに、予め記憶した移動経路の終端を最適駐車位置に重ね合わせることにより最適移動経路を設定し、車両が最適移動経路に沿って走行するように操舵装置を自動的に作動させる自動駐車制御を実行可能な装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-114274号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1記載の装置は、自動駐車制御を開始するスタート位置が最適スタート位置からずれている場合には、スタート位置のずれを補正することにより、車両が最適駐車位置に到達できるようにする。しかしながら、予め記憶した移動経路に無駄な経路が含まれている場合には、スタート位置のずれを補正した場合であっても、自動駐車制御の実行時に無駄な経路が再現されることになる。すなわち、移動経路の最適化に改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、自動駐車制御又は、自動出庫制御に用いる移動経路の最適化を図ることを目的とする。
【0006】
本開示の装置は、車両(VH)を駐車場(PA)に自動的に駐車する自動駐車制御及び、又は前記車両(VH)を前記駐車場(PA)から自動的に出庫する自動出庫制御を実行可能な車両の制御装置であって、前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行するよりも前に、前記車両(VH)を前記駐車場(PA)に駐車又は前記駐車場(PA)から出庫させる際の前記車両(VH)の移動経路(R1,R2,R3,R4)を予め取得する移動経路取得部(110)と、前記移動経路取得部(110)が取得した前記移動経路(R1,R2,R3,R4)に、前記車両(VH)を前記駐車場(PA)に駐車又は前記駐車場(PA)から出庫させるのに不要な経路(R2,R3)が含まれている場合には、前記移動経路(R1,R2,R3,R4)から前記不要な経路(R2,R3)を削除した経路を最適移動経路(RD,RR)に設定する最適化処理を実行する最適化処理部(120)と、前記最適化処理部(120)が前記最適化処理を実行しない場合は、前記移動経路取得部(110)が取得した前記移動経路(R1,R2,R3,R4)に基づき前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行し、前記最適化処理部(120)が前記最適化処理を実行した場合は、前記最適移動経路(RD,RR)に基づき前記自動駐車制御又は前記自動出庫制御を実行する自動制御部(150)と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る車両のハードウェア構成を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る制御装置のソフトウェア構成を示す模式図である。
図3】運転者の手動操作による駐車時に取得する車両の移動経路の一例を説明する模式図である。
図4】移動経路の最適化処理の一例を説明する模式図である。
図5】移動経路取得処理及び、経路最適化処理のルーチンを説明するフローチャートである。
図6】自動駐車制御のルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態に係る制御装置、車両及び、制御方法を説明する。
【0009】
[ハードウェア構成]
図1は、本実施形態に係る車両VHのハードウェア構成を示す模式図である。車両VHは、ECU(Electronic Control Unit)10を有する。ECU10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13及びインターフェース装置14等を備える。CPU11は、ROM12に格納されている各種プログラムを実行するプロセッサである。ROM12は、不揮発性メモリであって、CPU11が各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM13は、揮発性メモリであって、各種プログラムがCPU11によって実行される際に展開される作業領域を提供する。インターフェース装置14は、外部装置と通信するための通信デバイスである。
【0010】
ECU10は、車両VHを駐車場に自動的に駐車させる自動駐車制御及び、車両VHを駐車場から自動的に出庫させる自動出庫制御を行う中枢となる装置である。本実施形態において、自動駐車制御及び、自動出庫制御は、使用頻度が比較的高い自宅や職場の駐車場等、運転者が予め登録した駐車場に対して行われる。以下では、登録された駐車場を「既登録駐車場」と称する。対象となる駐車場は、白線等によって駐車枠が区画された駐車場のみならず、車両VHが進入可能なスペースを確保できる駐車場であれば、既登録駐車場として登録することができる。既登録駐車場は、運転者が手動操作によって車両VHを駐車場に駐車又は、駐車場から出庫させる際の移動経路を取得し、取得した移動経路を駐車場の位置情報と紐づけて記憶することにより登録される。
【0011】
車両VHの既登録駐車場への自動駐車制御及び、既登録駐車場からの自動出庫制御は、予め記憶した移動経路に沿って車両VHを走行させることにより実行される。本実施形態において、既登録駐車場への自動駐車制御及び、自動出庫制御は、運転者が車両VHに乗車している場合に限らず、運転者が車両VHから降車して外部から指令を送るリモート操作によっても実行することができる。自動駐車制御及び、自動出庫制御は、基本的には同じ処理となるため、以下では自動駐車制御について説明する。
【0012】
ECU10には、駆動装置20、操舵装置21、制動装置22、変速装置23、内界センサ装置30、外界センサ装置40、位置情報取得装置50、自動駐車スイッチ60、表示装置70、スピーカ75等が通信可能に接続されている。
【0013】
駆動装置20は、車両VHの駆動輪に伝達する駆動力を発生させる。駆動装置20としては、例えば、電動機、エンジンが挙げられる。本実施装置において、車両VHは、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)、電気自動車(BEV)、エンジン車の何れであってもよい。操舵装置21は、車両VHの車輪に転舵力を付与する。制動装置22は、車両VHの車輪に制動力を付与する。変速装置23は、駆動輪の回転をロックするパーキングレンジ、車両VHを後進走行させるリバースレンジ、動力の伝達を遮断するニュートラルレンジ、車両VHを前進走行させるドライブレンジに選択的に切り替え可能に構成されている。
【0014】
内界センサ装置30は、車両VHの状態を検出するセンサ類である。具体的には、内界センサ装置30は、車速センサ31、アクセルセンサ32、ブレーキセンサ33、操舵角センサ34、シフトセンサ35等を備えている。車速センサ31は、車両VHの走行速度、すなわち車速を検出する。アクセルセンサ32は、ドライバによる不図示のアクセルペダルの操作量を検出する。ブレーキセンサ33は、ドライバによる不図示のブレーキペダルの操作量を検出する。操舵角センサ34は、不図示のステアリングホイール又は、ステアリングシャフトの回転角、すなわち操舵角を検出する。シフトセンサ35は、変速装置23のシフト位置を検出する。内界センサ装置30は、各センサ31~35によって検出される車両VHの状態をECU10に所定の周期で送信する。
【0015】
外界センサ装置40は、車両VHの周囲の物標に関する物標情報を認識するセンサ類である。具体的には、外界センサ装置40は、レーダセンサ41、ソナーセンサ42、カメラセンサ43等を備える。レーダセンサ41には、ミリ波レーダ及び、又はライダが含まれる。ミリ波レーダは、ミリ波帯の電波を放射し、放射範囲内に存在する物標によって反射された反射波を受信することにより、車両VHと物標との相対距離、相対速度等を取得する。ライダは、ミリ波よりも短波長のパルス状のレーザ光を複数の方向に向けて順次走査し、物標により反射される反射光を受光することにより、物標の形状、車両VHと物標との相対距離、相対速度等を取得する。ソナーセンサ42は、超音波を放射し、放射範囲内に存在する物標によって反射された反射波を受信することにより、車両VHと物標との相対距離、相対速度等を取得する。カメラセンサ43は、例えば、ステレオカメラや単眼カメラであり、CMOSやCCD等の撮像素子を有するデジタルカメラを用いることができる。カメラセンサ43は、撮像した画像データを処理することにより、物標の形状、車両VHと物標との相対距離、相対速度等を取得する。外界センサ装置40は、取得した物標情報をECU10に所定の周期で送信する。なお、外界センサ装置40は、必ずしも、レーダセンサ41、ソナーセンサ42及び、カメラセンサ43の全てを備える必要はなく、例えば、カメラセンサ43のみを含んでいてもよい。
【0016】
位置情報取得装置50は、車両VHの現在の位置情報を取得する。位置情報取得装置50としては、例えば、図示しないナビゲーション装置が備えるGPS(Global Positioning System)、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を用いることができる。位置情報取得装置50は、取得した車両VHの現在の位置情報をECU10に所定の周期で送信する。
【0017】
自動駐車スイッチ60は、例えば、車両VHのセンタコンソールやインストルメントパネル等に設けられており、車両VHの乗員(例えば、運転者)によってON・OFF操作されるスイッチである。自動駐車スイッチ60がON操作されると、ECU10は自動駐車開始要求を受け付ける。
【0018】
表示装置70は、車両VHのインストルメントパネル等に設けられたタッチパネル式のディスプレイ(例えば、タッチパネル式の液晶ディスプレイ)であって、ECU10からの指令に応じて各種の画像を表示する。スピーカ75は、例えば、音響システムやナビゲーション装置のスピーカであって、ECU10からの指令に応じて音を出力する。
【0019】
[ソフトウェア構成]
図2は、本実施形態に係るECU10のソフトウェア構成を示す模式図である。図2に示すように、ECU10は、移動経路取得部110、経路最適化処理部120、既登録駐車場記憶部130、駐車場報知処理部140、自動駐車制御部150を機能要素として備える。これら各機能要素100~150は、ECU10のCPU11がROM12に格納されているプログラムをRAM13に読み出して実行することにより実現される。なお、各機能要素100~150の全部又は一部は、ECU10とは別体の他のECU、或いは、車両VHと通信可能な施設(管理センタ等)の情報処理装置に設けることもできる。
【0020】
移動経路取得部110は、運転者からの登録開始要求を受け付けると、運転者が手動操作によって車両VHを駐車場に駐車させる際の車両VHの移動経路を取得し、取得した移動経路をRAM13に一時的に記憶する。ここで、車両VHの移動経路とは、車両VHの走行に伴い変化する車両位置の移動軌跡をいう。車両位置とは、例えば、車両VHの平面視における所定の幾何学的中心位置である。なお、車両位置は、車両VHの他の位置(例えば、左右前輪の中央位置、或は、左右後輪の中央位置等)であってもよい。運転者の登録開始要求は、例えば、表示装置70に表示されるタッチ式のスイッチ画像の操作、或いは、表示装置70とは別体に設けられた物理スイッチの操作、或は、集音機による音声認識等によって取得すればよい。
【0021】
移動経路取得部110は、車両VHが駐車場の入口付近に停車した状態で、運転者からの登録開始要求を受け付けると、その時の車両VHの位置情報を移動経路の開始位置に設定する。車両VHの位置情報は、位置情報取得装置50の検出結果に基づいて取得すればよい。また、移動経路取得部110は、開始位置を設定すると、開始位置を原点、車両VHの前後方向をX軸、車両VHの幅方向をY軸とする二次元マップを設定する。
【0022】
移動経路取得部110は、運転者が開始位置から手動操作による駐車を開始すると、所定のサンプリング周期毎に、車両位置の移動軌跡を二次元マップにプロットする。これにより、車両VHの移動経路を取得することができる。移動軌跡は、例えば、車速センサ31や操舵角センサ34の検出結果に基づいたオドメトリにより算出してもよく、或は、位置情報取得装置50によって取得される車両VHの位置情報や、カメラセンサ43によって撮像される車両VHの周囲の画像データから推定することもできる。所定のサンプリング周期は、所定距離又は所定時間の何れであってもよい。
【0023】
移動経路取得部110は、車両位置の移動軌跡を二次元マップにプロットする際、内界センサ装置30によって検出される車速、操舵角、ブレーキ操作量、アクセル操作量、シフト位置等を移動経路上の車両位置に対応付けて取得する。移動経路取得部110は、運転者が車両VHを駐車場内の所定位置にて停車させ、シフト位置をパーキングPに切り替えると、移動経路の取得を終了する。移動経路取得部110は、移動経路の取得を終了した時の車両位置を移動経路の終了位置に設定する。
【0024】
図3は、運転者の手動操作による駐車時に、移動経路取得部110が取得する車両VHの移動経路の一例を説明する模式図である。図3では、車両VHの右側方にある駐車場PAに車両VHを後進させながら駐車する並列駐車の一例を示している。図3中の符号Sは、例えば、駐車場PAの入口ENが臨む道路である。なお、車両VHの左側方に駐車場PAがある場合、或は、車両VHを前進させながら駐車場PAに駐車させる場合、或は、車両VHを縦列駐車させる場合も略同様の処理となるため、それらの説明は省略する。
【0025】
図3の開始位置P0は、移動経路取得部110が運転者からの登録開始要求を受け付けた際の車両位置である。図3に示されるように、運転者が車両VHを開始位置P0から左操舵により左旋回させながら、駐車場PAの入口ENから離れた第1切替位置P1までクリープ又はアクセル操作により前進走行させたとする。以下では、開始位置P0から第1切替位置P1までの車両VHの移動経路を第1移動経路R1と称する。第1切替位置P1は、例えば、道路Sを駐車場PA側から視た場合に、入口ENよりも右側にある道路S上の所定位置である。移動経路取得部110は、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの開始位置P0から第1切替位置P1までの移動軌跡を二次元マップにプロットすることにより、第1移動経路R1を取得する。また、移動経路取得部110は、車両VHが第1移動経路R1を走行する間、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの車速、操舵角、ブレーキ操作量、アクセル操作量、シフト位置等を第1移動経路R1上の車両位置に対応付けて取得する。
【0026】
第1切替位置P1にて、車両VHの前後方向は駐車場PAの長手方向に対して傾いている。この場合、車両VHを駐車場PA内に進入させるには、運転者は車両VHの前後方向と駐車場PAの長手方向とが略平行となるように、車両VHを右操舵により右旋回させながら後進さる必要がある。運転者は、第1切替位置P1にてシフト位置をドライブDからリバースRに切り替えると、右操舵により車両VHを右旋回させながら車両VHを後進走行させる。
【0027】
ここで、運転者が駐車操作に不慣れな場合や、車両VHに歩行者や他車両等が接近した場合等、何等かの理由によって運転者が右操舵を必要以上に切り増してしまう場合がある。この場合、車両VHの後端は、駐車場PAの入口ENに到達せず、入口ENよりも右側の位置P2に到達することになる。すなわち、運転者は車両VHを位置P2にて停止させ、シフト位置をリバースRからドライブDに切り替えて車両VHを再度前進させることにより、駐車操作をやり直す必要がある。以下では、運転者がシフト位置をリバースRからドライブDに切り替える位置P2を第2切替位置と称する。また、第1切替位置P1から第2切替位置P2までの車両VHの移動経路を第2移動経路R2と称する。移動経路取得部110は、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの第1切替位置P1から第2切替位置P2までの移動軌跡を二次元マップにプロットすることにより、第2移動経路R2を取得する。また、移動経路取得部110は、車両VHが第2移動経路R2を走行する間、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの車速、操舵角、ブレーキ操作量、アクセル操作量、シフト位置等を第2移動経路R2上の車両位置に対応付けて取得する。
【0028】
運転者は、第2切替位置P2にてシフト位置を切り替えると、駐車場PAの長手方向に対する車両VHの前後方向の傾きが小さくなるよう、車両VHを駐車場PAの入口ENから離れる位置P3に向けて車両VHを前進走行させる。位置P3は、第1切替位置P1よりも駐車場PAの入口ENに近い位置であって、運転者が車両VHを駐車場PA内に進入させるために最後に進行方向を切り替える位置、すなわち、シフト位置をドライブDからリバースRに切り替える位置である。以下では、運転者が最後にシフト位置を切り替える位置P3を第3切替位置と称する。また、第2切替位置P2から第3切替位置P3までの車両VHの移動経路を第3移動経路R3と称する。移動経路取得部110は、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの第2切替位置P2から第3切替位置P3までの移動軌跡を二次元マップにプロットすることにより、第3移動経路R3を取得する。また、移動経路取得部110は、車両VHが第3移動経路R3を走行する間、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの車速、操舵角、ブレーキ操作量、アクセル操作量、シフト位置等を第3移動経路R3上の車両位置に対応付けて取得する。
【0029】
運転者は、第3切替位置P3にてシフト位置を切り替えると、車両VHが駐車場PAに入口ENから進入し、駐車場PA内の所定の終了位置P4に到達するよう、車両VHを後進走行させる。具体的には、運転者は、車両VHの後端が駐車場PAの入口EN付近に到達するまでに、車両VHの前後方向が駐車場PAの長手方向と略平行となるように、車両VHを右操舵により右旋回させながら後進させる。運転者は、車両VHが駐車場PA内に進入し、終了位置P4に到達すると制動操作によって車両VHを停止させ、シフト位置をリバースRからパーキングPに切り替える。以下では、第3切替位置P3から終了位置P4までの車両VHの移動経路を第4移動経路R4と称する。移動経路取得部110は、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの第3切替位置P3から終了位置P4までの移動軌跡を二次元マップにプロットすることにより、第4移動経路R4を取得する。また、移動経路取得部110は、車両VHが第4移動経路R4を走行する間、所定のサンプリング周期毎に、車両VHの車速、操舵角、ブレーキ操作量、アクセル操作量、シフト位置等を第4移動経路R4上の車両位置に対応付けて取得する。
【0030】
ところで、車両VHを後進により駐車場PAに最も効率的に駐車させるには、車両VHの進行方向の切り替え回数、すなわちシフト位置の切り替え回数を少なくすることが望ましい。図3に示す例では、シフト位置の切り替えを計三回行っており、移動経路取得部110が記憶した移動経路に基づいて自動駐車制御を実行すると、第2移動経路R2や第2移動経路R3等といった無駄な経路が再現されることになる。
【0031】
経路最適化処理部120は、移動経路取得部110が取得した移動経路に、車両VHの駐車場PAへの駐車に不要となる無駄な経路が含まれているかを判定し、無駄な経路が含まれている場合には、無駄な経路を削除することにより、自動駐車制御に利用する移動経路を最適化する最適化処理を実行する。以下では、最適化された移動経路を「最適移動経路」と称する。
【0032】
図4は、経路最適化処理部120による移動経路の最適化処理を説明する模式図である。図4(A)中において、実線R1~R4は運転者の手動操作によって車両VHが実際に走行した移動経路であって、移動経路取得部110が取得した図3に示す移動経路R1~R4である。図4(A)中に破線で囲まれた領域Eは、車両VHが移動経路R1~R4に沿って走行した領域を示している。ここで、領域Eとは、道路S及び駐車場PAの平面視において、車両VHの輪郭(外周)と重なる部分をいう。
【0033】
経路最適化処理部120は、運転者が手動操作によって車両VHを移動経路R1~R4に沿って走行させた時の領域Eを抽出する。領域Eは、例えば、車両VHを移動経路R1~R4に沿って走行させた時にカメラセンサ43が撮像した画像データ等から抽出すればよい。経路最適化処理部120は、最適移動経路を抽出した領域E内に設定する。すなわち、開始位置P0と終了位置P4とを単純に最短経路で結ぶのではなく、車両VHが実際に走行した領域E内に収まるように最適移動経路を設定する。これにより、運転者が障害物を避ける等、運転者が意図して避けた領域に最適移動経路が設定されることを効果的に防止することが可能になる。
【0034】
経路最適化処理部120は、車両VHが実際に走行した領域E内において、車両VHの進行方向の切り替え回数、すなわち、シフト位置の切り替え回数が最小となる移動経路を最適移動経路とする。図4(A)に示す例では、まず、経路最適化処理部120は、シフト位置をドライブDからリバースRに切り替えた第1又は第3切替位置P1,P3のうち、車両VHを駐車場PA内に進入させて終了位置P4に停車させることができた第4移動経路R4の起点となる第3切替位置P3を最適切替位置PBとして選択する。すなわち、最適移動経路の進行方向の切り替え回数を第3切替位置P3の一回とする。
【0035】
次いで、経路最適化処理部120は、領域E内において、車両VHを開始位置P0から最適切替位置PB(P3)に最短の距離で到達させることができる最適前進経路を抽出する。図4に示す例では、経路最適化処理部120は、第1移動経路R1の開始位置P0から第4移動経路R4と交差する交点Xまでの経路R1’と、第4移動経路R4の交点Xから最適切替位置PB(P3)までの経路R4’とを最適前進経路RDとして抽出する。ここで、経路R4’は、車両VHが実際は第4移動経路R4に沿って後進走行した経路であり、移動経路取得部110が取得したシフト位置はリバースRである。このため、経路最適化処理部120は、経路R4’のシフト位置については、シフト位置をリバースRからドライブDに変更する。
【0036】
経路最適化処理部120は、最適前進経路RDを抽出すると、第4移動経路R4の最適切替位置PB(P3)から終了位置P4に至る経路R4”を最適後進経路RRとして抽出する。経路最適化処理部120は、最適前進経路RD及び、最適後進経路RRを抽出すると、これらを経路RD,RRを自動駐車制御によって車両VHを駐車場PAに駐車させる際に利用する最適移動経路に設定する。
【0037】
このように、経路最適化処理部120は、移動経路取得部110が取得した移動経路に複数の切替位置P1,P2,P3が含まれる場合には、車両VHを駐車場PA内の終了位置P4に停車させた第4移動経路R4の起点となる第3切替位置P3(最後の切替位置)を最適切替位置PBに設定し、他の切替位置P1,P2を起点とする移動経路R2,R3については、無駄な経路として削除する。これにより、自動駐車制御時に、車両SVの駐車場PAへの駐車に不要となる無駄な移動経路R2,R3が再現されることを効果的に防止することができる。すなわち、自動駐車制御の移動経路の最適化を図ることが可能になる。
【0038】
なお、図4(A)に示す例では、第3移動経路R3が無駄な経路として削除されたが、図4(B)に示すように、第1移動経路R1が第4移動経路R4よりも先に第3移動経路R3と交差している場合には、第3移動経路R3の一部を最適前進経路RDに用いることになる。具体的には、第1移動経路R1と第3移動経路R3とが交差する交点Xを基準とし、第1移動経路R1の開始位置P0から交点Xまでの経路R1’と、第3移動経路R3の交点Xから第3切替位置P3までの経路R3’とを最適前進経路RDに設定する。すなわち、開始位置P0から最後の切替位置P3である最適切替位置PBまでは、車両VHが手動操作時に実際に走行した移動経路の中から最短距離となる移動経路を抽出する。
【0039】
既登録駐車場記憶部130は、経路最適化処理部120が移動経路の最適化を不要と判断した場合、すなわち、最適化処理を実行しなかった場合には、移動経路取得部110が取得した移動経路を駐車場PAの自動駐車制御に用いる目標移動経路として記憶する。また、既登録駐車場記憶部130は、経路最適化処理部120が移動経路の最適化処理を実行した場合、経路最適化処理部120によって設定された最適移動経路を駐車場PAの自動駐車制御に用いる目標移動経路として記憶する。既登録駐車場記憶部130は、目標移動経路を駐車場PAの位置情報や駐車場PAの画像と紐づけて記憶する。駐車場PAの位置情報は、位置情報取得装置50の検出結果に基づいて取得すればよい。駐車場PAの画像は、例えば、車両VHが開始位置P0に停車した状態でカメラセンサ43によって撮像した駐車場PA(例えば、入口EN付近)の画像データを記憶すればよい。既登録駐車場記憶部130は、既登録駐車場が複数ある場合、既登録駐車場毎に目標移動経路や位置情報をそれぞれ格納する。
【0040】
駐車場報知処理部140は、位置情報取得装置50の検出結果に基づき、車両VHの現在位置と既登録駐車場との距離が所定距離以下になると、車両VHの乗員に既登録駐車場を検知したことを知らせる駐車場報知処理を実行する。乗員への報知は、例えば、表示装置70への表示、或いは、スピーカからの音声等によって行えばよい。
【0041】
自動駐車制御部150は、駐車場報知処理部140が駐車場報知処理を実行し、且つ、車両VHの乗員によって自動駐車スイッチ60がON操作されると、既登録駐車場記憶部130に格納されている目標移動経路に基づいて、車両VHの駆動装置20、操舵装置21、制動装置22、変速装置23を自動的に作動させる自動駐車制御を実行する。自動駐車制御は、例えば、目標移動経路と車両VHの実際の移動軌跡との偏差に基づき、駆動装置20や操舵装置21等の作動をフィードバック制御することにより実行する。車両VHの実際の移動軌跡は、例えば、車速センサ31や操舵角センサ34の検出結果に基づいて算出してもよく、或は、位置情報取得装置50によって取得される車両VHの位置情報を併用することにより推定してもよい。
【0042】
自動駐車制御部150は、自動駐車スイッチ60がON操作された際に、車両VHの車両位置と開始位置P0とにずれがある場合、運転者に車両VHの開始位置P0への移動を促す通知を実行する。運転者への通知は、表示装置70による表示及び、スピーカ75による音声の何れか一方又は両方を用いて行えばよい。自動駐車制御部150は、車両VHの位置が開始位置P0と略一致すると、既登録駐車場記憶部130から読み出した目標移動経路に沿って車両VHを自動的に走行させる自動駐車制御を開始する。自動駐車制御部150は、自動駐車制御を実行する間、外界センサ装置40の検出結果に基づき、車両VHに接触する可能性のある物体が存在するか否かを監視する。接触する可能性の高い物体を検知した場合、自動駐車制御部150は、自動駐車制御を中断する。自動駐車制御部150は、車両VHを目標位置P4に停車させ、シフト位置をパーキングPに切り替えると、自動駐車制御を終了する。
【0043】
次に、図5に示すフローチャートに基づいて、ECU10のCPU11が実行する移動経路取得処理及び、経路最適化処理のルーチンを説明する。
【0044】
ステップS100では、ECU10は、運転者が登録開始要求の操作を行ったか否かを判定する。運転者が登録開始要求の操作を行った場合(Yes)、ECU10は、登録開始要求を受け付けてステップS110の処理に進む。一方、運転者が登録開始要求の操作を行っていない場合(No)、ECU10は、本ルーチンをリターンする。
【0045】
ステップS110では、ECU10は、登録開始要求を受け付けた時の車両VHの位置を、移動経路の取得を開始する開始位置P0に設定する。次いで、ステップS120では、ECU10は、運転者が手動操作により車両VHの駐車を開始したか否かを判定する。運転者が駐車を開始したか否かは、例えば、車両VHが開始位置P0から移動したか否かで判定すればよい。運転者が手動操作による駐車を開始した場合(Yes)、ECU10は、ステップS130の処理に進む。一方、運転者が手動操作による駐車を開始しない場合(No)、ECU10は、一定時間が経過後に本ルーチンをリターンする。
【0046】
ステップS130では、ECU10は、運転者の手動操作による車両VHの移動経路を取得し、RAM13に一時的に記憶する。ステップS140では、ECU10は、車両VHが駐車場PA内の終了位置P4に到達したかを判定する。車両VHが終了位置P4に到達したかは、車両VHが停止し、且つ、シフト位置がパーキングPに切り替えられたかで判定すればよい。車両VHが終了位置P4に到達した場合(Yes)、ECU10は、ステップS140の処理に進む。一方、車両VHが終了位置P4に到達していない場合(No)、ECU10はステップS130の処理を継続する。
【0047】
ステップS150では、ECU10は、ステップS130で取得した移動経路に無駄な経路が含まれているか否かを判定する。無駄な経路が含まれていない場合(No)、ECU10は、ステップS170の処理に進む。一方、無駄な経路が含まれていた場合(Yes)、ECU10は、ステップS160の処理に進む。
【0048】
ステップS160では、ECU10は、ステップS130で取得した移動経路の最適化処理を実行する。最適化処理を実行すると、ECU10は、ステップS170の処理に進む。
【0049】
ステップS170では、ECU10は、駐車場PAを既登録駐車場に登録するとともに、目標移動経路を駐車場PAの位置情報と紐付けて記憶する。具体的には、ECU10は、ステップS160の処理を経由せずにステップS170に進んだ場合、すなわち、移動経路に無駄な経路が含まれていなかった場合、ステップS130で取得した移動経路を既登録駐車場の自動駐車制御に用いる目標移動経路として記憶する。一方、ECU10は、ステップS160の処理を経由してステップS170に進んだ場合、すなわち、移動経路に無駄な経路が含まれていた場合、ステップS160にて最適化処理により計算した最適移動経路を既登録駐車場の自動駐車制御に用いる目標移動経路として記憶する。その後、ECU10は、本ルーチンをリターンする。
【0050】
次に、図6に示すフローチャートに基づいて、ECU10のCPU11が実行する自動駐車制御のルーチンを説明する。
【0051】
ステップS200では、ECU10は、車両VHの現在位置と既登録駐車場との距離が所定距離以下であるか否かを判定する。所定距離以下の場合(Yes)、ECU10は、ステップS210の処理に進む。一方、所定距離以下でない場合(No)、ECU10は、本ルーチンをリターンする。
【0052】
ステップS210では、ECU10は、車両VHの乗員に既登録駐車場を検知したことを知らせる駐車場報知処理を実行する。次いで、ステップS220では、ECU10は、車両VHの乗員によって自動駐車スイッチ60がON操作されたかを判定する。自動駐車スイッチ60がON操作された場合、ECU10は、ステップS230の処理に進む。一方、自動駐車スイッチ60がON操作されない場合(No)、ECU10は、一定時間が経過後に本ルーチンをリターンする。
【0053】
ステップS230では、ECU10は、図5のフローに従って事前に登録した目標移動経路に基づき、車両VHを既登録の駐車場PAに自動的に駐車する自動駐車制御を実行する。すなわち、最適化処理を実行していない場合は、運転者による手動操作時に取得した移動経路に基づいて自動駐車制御を実行し、最適化処理を実行している場合は、最適化処理により計算した最適移動経路に基づいて自動駐車制御を実行する。
【0054】
次いで、ステップS240では、ECU10は、車両VHが終了位置P4に到達したかを判定する。車両VHが終了位置P4に到達しない場合(No)、ECU10はステップS230の自動駐車制御を継続する。一方、車両VHが終了位置P4に到達した場合(Yes)、ECU10は自動駐車制御を終了し、その後、本ルーチンをリターンする。
【0055】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、移動経路取得部110は、運転者が手動操作によって車両VHを駐車させるときの移動経路を取得するものとして説明したが、自動駐車制御時の車両VHの移動経路を取得し、自動駐車制御の移動経路を逐次最適化するように構成することも可能である。また、経路最適化処理部120は、無駄な経路を削除するものとして説明したが、これら無駄な経路を保存しておき、駐車場周囲の変化等に応じて最適移動経路を更新するように構成することも可能である。また、本開示は、運転操作の一部又は全部を自動で行う自動運転車両にも適用することが可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6