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  • 特開-内燃機関の制御装置 図1
  • 特開-内燃機関の制御装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075996
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240529BHJP
   F02P 5/145 20060101ALI20240529BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D45/00 368A
F02P5/145 D
F01N3/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187321
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品川 悟誌
【テーマコード(参考)】
3G022
3G091
3G384
【Fターム(参考)】
3G022EA02
3G022GA13
3G091AB01
3G091BA33
3G091CB05
3G091EA10
3G091FC01
3G091HB05
3G384AA01
3G384BA24
3G384CA25
3G384DA43
3G384EB03
3G384EB04
3G384ED11
3G384EE11
3G384FA33Z
3G384FA44B
3G384FA48Z
3G384FA52Z
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減して軽量化を図りつつ、触媒が劣化しているか否かの判定を迅速に行うことができる内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】排気ガスを浄化する触媒と、触媒の下流から内燃機関の吸気側に排気ガスを還流させるEGR装置と、内燃機関に発生するノッキングを検出するノックセンサと、を備えた車両に適用される内燃機関の制御装置であって、内燃機関の点火時期を制御する点火時期制御部と、触媒が劣化しているか否かを判定する触媒劣化診断部と、を備え、点火時期制御部は、内燃機関の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、ノッキングが発生していない場合に点火時期を進角し、触媒劣化診断部は、EGR作動中であり、かつ内燃機関の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、点火時期の進角量が所定値以上の場合に触媒が劣化していると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスを浄化する触媒と、前記触媒の下流から前記内燃機関の吸気側に排気ガスを還流させるEGR装置と、前記内燃機関に発生するノッキングを検出するノックセンサと、を備えた車両に適用される内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の点火時期を制御する点火時期制御部と、
前記触媒が劣化しているか否かを判定する触媒劣化診断部と、を備え、
前記点火時期制御部は、前記内燃機関の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、前記ノッキングが発生していない場合に前記点火時期を進角し、
前記触媒劣化診断部は、前記EGR装置により前記排気ガスが還流され、かつ前記内燃機関の運転領域が前記所定のノック制御領域にある場合において、前記点火時期の進角量が所定値以上の場合に前記触媒が劣化していると判定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記触媒劣化診断部は、所定時間の間、前記点火時期の進角量が前記所定値以上の場合に前記触媒が劣化していると判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、触媒の上流側に配置される前空燃比センサと、触媒の下流側に配置される後空燃比センサと、を備えた内燃機関の触媒診断装置において、前空燃比センサと後空燃比センサとの出力信号の関係に基づいて、触媒の劣化を判定する内燃機関の触媒診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-241026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の内燃機関の触媒診断装置では、触媒の劣化を診断するにあたり、触媒の上流側及び下流側の排気管のそれぞれに空燃比センサを配置し、これら空燃比センサの出力信号を用いた偏差や比率に基づき触媒が劣化したか否かを判定している。このため、触媒の劣化を診断するにあたっては、少なくとも2つの空燃比センサを必要としていた。
【0005】
したがって、従来の内燃機関の触媒診断装置にあっては、触媒が劣化したか否かの判定に要する演算時間の増加や、空燃比センサを2つ用いることによる、部品点数及びエンジン重量の増加を招いていた。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、部品点数を削減して軽量化を図りつつ、触媒が劣化しているか否かの判定を迅速に行うことができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、内燃機関から排出された排気ガスを浄化する触媒と、前記触媒の下流から前記内燃機関の吸気側に排気ガスを還流させるEGR装置と、前記内燃機関に発生するノッキングを検出するノックセンサと、を備えた車両に適用される内燃機関の制御装置であって、前記内燃機関の点火時期を制御する点火時期制御部と、前記触媒が劣化しているか否かを判定する触媒劣化診断部と、を備え、前記点火時期制御部は、前記内燃機関の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、前記ノッキングが発生していない場合に前記点火時期を進角し、前記触媒劣化診断部は、前記EGR装置により前記排気ガスが還流され、かつ前記内燃機関の運転領域が前記所定のノック制御領域にある場合において、前記点火時期の進角量が所定値以上の場合に前記触媒が劣化していると判定する構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品点数を削減して軽量化を図りつつ、触媒が劣化しているか否かの判定を迅速に行うことができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置が適用される車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置によって実行される触媒劣化診断の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関から排出された排気ガスを浄化する触媒と、触媒の下流から内燃機関の吸気側に排気ガスを還流させるEGR装置と、内燃機関に発生するノッキングを検出するノックセンサと、を備えた車両に適用される内燃機関の制御装置であって、内燃機関の点火時期を制御する点火時期制御部と、触媒が劣化しているか否かを判定する触媒劣化診断部と、を備え、点火時期制御部は、内燃機関の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、ノッキングが発生していない場合に点火時期を進角し、触媒劣化診断部は、EGR装置により排気ガスが還流され、かつ内燃機関の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、点火時期の進角量が所定値以上の場合に触媒が劣化していると判定することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、部品点数を削減して軽量化を図りつつ、触媒が劣化しているか否かの判定を迅速に行うことができる。
【実施例0011】
以下、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置が適用される車両について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施例に係る車両1は、内燃機関2と、触媒3と、EGR装置4と、を含んで構成されている。
【0013】
内燃機関2は、例えば、気筒♯1から気筒♯3の直列3気筒のガソリンエンジンで構成されている。内燃機関2は、シリンダ内でピストンが往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルのガソリンエンジンである。なお、内燃機関2の気筒数は3気筒に限られない。
【0014】
内燃機関2の各気筒には、点火プラグからなる点火装置21が設けられている。点火装置21は、後述するECM50からの信号に基づき図示しないイグナイタを介して点火時期が調整されるようになっている。
【0015】
内燃機関2には、内燃機関2に発生するノッキングを検出するノックセンサ22が設けられている。ノックセンサ22は、例えば内燃機関2のシリンダブロック等に設置されている。ノックセンサ22は、ノッキングにより生じる衝撃又は振動を検出し、その検出した衝撃又は振動の大きさに応じた電圧信号をECM50に出力する。
【0016】
内燃機関2の吸気側には、吸気マニホールド23を介して吸気管24が接続されている。内燃機関2の排気側には、排気マニホールド25を介して排気管26が接続されている。
【0017】
触媒3は、排気管26に設けられており、内燃機関2から排出された排気ガスを浄化する三元触媒からなる。
【0018】
EGR装置4は、触媒3の下流側の排気管26と内燃機関2の吸気側の吸気管24とを接続するEGR配管41と、図示しないEGRバルブやEGRクーラと、を含んで構成されている。EGR装置4は、触媒3の下流側から内燃機関2の吸気側に排気ガスを還流させる装置である。
【0019】
上述のように構成された内燃機関2は、内燃機関の制御装置としてのECM(Electronic Control Module)50によってその運転状態が制御されるようになっている。ECM50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
【0020】
ECM50の入力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、ノックセンサ22を含む各種センサ類が接続されている。
【0021】
ECM50の出力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、前述した点火装置21、図示しないインジェクタ、スロットルバルブ等の各種装置が接続されている。
【0022】
ECM50は、ドライバによる操作や内燃機関2の運転状態等に基づいて、点火装置21、インジェクタ及びスロットルバルブを制御する。具体的には、ECM50は、点火時期を制御する点火時期制御部51としての機能を有する。また、ECM50は、インジェクタ及びスロットルバルブを制御することにより、燃料噴射時期及び吸入空気量を調整するようになっている。
【0023】
ECM50は、内燃機関2の運転領域がノック制御領域にある場合において、内燃機関2におけるノッキングの発生状況に応じて点火時期を遅角又は進角させる、ノック制御を実行するようになっている。ECM50は、内燃機関2の運転領域が所定の機関負荷域、例えば高負荷かつ低回転又は中回転域にある場合に、運転領域がノック制御領域にあると判定する。
【0024】
具体的には、ECM50は、ノック制御領域において内燃機関2にノッキングが発生していない場合には、点火時期を進角させる。これにより、内燃機関2の出力向上を図ることができる。
【0025】
これに対し、ECM50は、ノック制御領域において、内燃機関2にノッキングが発生している場合には、点火時期を遅角させる。これにより、ノッキングが抑制される。
【0026】
ECM50は、内燃機関2の運転状態が所定のEGR作動領域にある場合に、触媒3の下流から内燃機関2の吸気側に排気ガスを還流させるようEGR装置4を制御するようになっている。
【0027】
ECM50は、EGR装置4により排気ガスが還流され、つまりEGR作動中であり、かつ内燃機関2の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、触媒3が劣化しているか否かを判定する、触媒劣化診断を行う触媒劣化診断部52としての機能を有する。
【0028】
ECM50は、EGR作動中であり、かつ所定のノック制御領域である場合において、所定時間の間、点火時期の進角量が所定値TH以上の場合に触媒3が劣化していると判定する。
【0029】
ここで、上記のように点火時期の進角量から触媒3の劣化が判定できる理由について説明する。
【0030】
触媒3が劣化すると、触媒3における排気ガスの還元が不十分となり、反応熱が低下する。この結果、触媒3の下流側の排気ガス温度が低下するため、EGRガスの密度が増加し、推定のEGR量に対して実EGR量が増加する。これにより、吸気の酸素濃度が低下してノッキングが発生しにくくなるので、ノック制御領域での点火時期の進角が可能となり、点火時期が進角される、つまり点火時期の進角が進むことになる。
【0031】
このように、触媒3が劣化すると、点火時期の進角が進むことから、EGR作動中に点火時期の進角量が所定値TH以上となった場合には、触媒3が劣化している状況であると判断できる。
【0032】
したがって、本実施例では、ECM50は、上述したような条件が成立した場合に、触媒3が劣化していると判定することができる。
【0033】
所定値THは、触媒3の劣化が原因で点火時期が進角していると判断できる進角量の下限値であって、予め実験的に求めてECM50のROMに記憶されている。
【0034】
次に、図2のフローチャートを参照して、本実施例に係るECM50によって実行される触媒劣化診断の処理の流れについて説明する。
【0035】
図2に示すように、ECM50は、EGR作動中か否か、すなわちEGR装置4により排気ガスが還流されているか否かを判定する(ステップS1)。ECM50は、例えば、内燃機関2の運転状態が所定のEGR作動領域にあるか否かにより、EGR作動中か否かを判定することができる。
【0036】
ECM50は、ステップS1においてEGR作動中でないと判定した場合には、ステップS1の処理を繰り返す。
【0037】
ECM50は、ステップS1においてEGR作動中であると判定した場合には、内燃機関2の運転領域が所定のノック制御領域にあるか否かを判定する(ステップS2)。ECM50は、ステップS2において内燃機関2の運転領域が所定のノック制御領域にないと判定した場合には、処理をステップS1に戻す。
【0038】
ECM50は、ステップS2において内燃機関2の運転領域が所定のノック制御領域にあると判定した場合には、触媒劣化診断を開始する(ステップS3)。
【0039】
次いで、ECM50は、点火時期の進角量が所定値TH以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ECM50は、ステップS4において点火時期の進角量が所定値TH以上でないと判定した場合には、触媒3が正常であると判定して(ステップS7)、触媒劣化診断の処理を終了する。
【0040】
ECM50は、ステップS4において点火時期の進角量が所定値TH以上であると判定した場合には、ステップS4で点火時期の進角量が所定値TH以上であると判定されてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS5)。
【0041】
ECM50は、ステップS5において所定時間が経過していないと判定した場合には、処理をステップS4に戻す。
【0042】
ECM50は、ステップS5において所定時間が経過したと判定した場合には、触媒3が劣化していると判定して(ステップS6)、触媒劣化診断の処理を終了する。触媒3が劣化していると判定された場合には、例えば警告ランプが点灯する等して、触媒3が劣化していることが運転者に報知される。
【0043】
以上のように、本実施例に係る内燃機関の制御装置は、EGR装置4により排気ガスが還流され、かつ内燃機関2の運転領域が所定のノック制御領域にある場合において、点火時期の進角量が所定値TH以上の場合に触媒が劣化していると判定するよう構成されている。
【0044】
この構成により、本実施例に係る内燃機関の制御装置は、例えば空燃比センサの検出結果を用いて触媒が劣化しているか否かの判定を行う場合よりも、触媒3が劣化しているか否かの判定を迅速に行うことができる。換言すれば、触媒3が劣化していることを迅速に判定することができる。
【0045】
また、触媒劣化診断において空燃比センサの検出結果を用いる必要がないので、空燃比センサを必要とせず、その分、部品点数を削減することができる。さらに、部品点数を削減することで内燃機関2の軽量化を図ることができる。
【0046】
また、本実施例に係る内燃機関の制御装置は、所定時間の間、点火時期の進角量が所定値TH以上の場合に触媒3が劣化していると判定するので、誤判定を防止することができる。
【0047】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
2 内燃機関
3 触媒
4 EGR装置
21 点火装置
22 ノックセンサ
50 ECM
51 点火時期制御部
52 触媒劣化診断部
図1
図2