(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075998
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】イオン濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240529BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G01N27/416 361A
G01N27/416 351A
G01N27/416 351J
G01N27/28 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187324
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 耕大
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】冨田 麻未
(57)【要約】
【課題】測定対象液に共存イオンが含まれていても、共存イオンの影響を低減して、測定対象液のイオン濃度をより正確に求めることができるイオン濃度測定方法を提供する。
【解決手段】測定対象液Qが保持された計測部3と、測定電極4Eを有し、測定電極4Eが計測部3に保持された測定対象液Qに浸漬設置されているイオン電極計4と、計測部3から流出した測定対象液Qを計測部3に戻す循環ライン5とを含む計測ユニット2を有する測定装置1を用いて測定対象液Qのイオン濃度を測定する方法であって、循環ライン5において、循環ライン5を流れる測定対象液Qの組成は実質的に変化せず、計測部3と循環ライン5との間を測定対象液Qを循環させながら、イオン電極計4で測定対象液Qの電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、電位値Pから測定対象液Qのイオン濃度を算出する工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象液が保持された計測部と、測定電極を有し、前記測定電極が前記計測部に保持された測定対象液に浸漬設置されているイオン電極計と、前記計測部から流出した測定対象液を前記計測部に戻す循環ラインとを含む計測ユニットを有する測定装置を用いて測定対象液のイオン濃度を測定する方法であって、
前記循環ラインにおいて、前記循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化せず、
前記計測部と前記循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、前記イオン電極計で測定対象液の電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、
前記電位値Pから測定対象液のイオン濃度を算出する工程を有することを特徴とするイオン濃度測定方法。
【請求項2】
測定対象液が保持された計測部と、測定電極を有し、前記測定電極が前記計測部に保持された測定対象液に浸漬設置されているイオン電極計と、前記計測部から流出した測定対象液を前記計測部に戻す循環ラインとを含む計測ユニットと、
前記計測ユニットに測定対象液を導入する供給ラインと、
前記計測ユニットから測定対象液を排出する排出ラインと
を有する測定装置を用いて測定対象液のイオン濃度を測定する方法であって、
前記供給ラインは前記計測部に接続しており、
前記循環ラインにおいて、前記循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化せず、
前記供給ラインを通して前記計測ユニットに測定対象液を導入し、前記排出ラインを通して前記計測ユニットから測定対象液を排出し、前記計測部と前記循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、前記イオン電極計で測定対象液の電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、
前記電位値Pから測定対象液のイオン濃度を算出する工程を有することを特徴とするイオン濃度測定方法。
【請求項3】
測定対象液が保持された計測部と、測定電極を有し、前記測定電極が前記計測部に保持された測定対象液に浸漬設置されているイオン電極計と、前記計測部から流出した測定対象液を前記計測部に戻す循環ラインとを含む計測ユニットと、
前記計測ユニットに測定対象液を導入する供給ラインと、
前記計測ユニットから測定対象液を排出する排出ラインと
を有する測定装置を用いて測定対象液のイオン濃度を測定する方法であって、
前記供給ラインは前記循環ラインに接続しており、
前記循環ラインにおいて、前記供給ラインとの接続部まで、前記循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化せず、
前記供給ラインを通して前記計測ユニットに測定対象液を導入し、前記排出ラインを通して前記計測ユニットから測定対象液を排出し、前記計測部と前記循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、前記イオン電極計で測定対象液の電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、
前記電位値Pから測定対象液のイオン濃度を算出する工程を有することを特徴とするイオン濃度測定方法。
【請求項4】
前記計測部は、前記計測部から前記循環ラインに測定対象液が流出する循環流出部と、前記計測部から前記排出ラインに測定対象液が排出する排出部を有し、
前記排出部は前記循環流出部よりも高い位置にある請求項2または3に記載のイオン濃度測定方法。
【請求項5】
前記計測部と前記循環ラインとの間を循環する測定対象液の流量は、前記供給ラインから前記計測ユニットに導入される測定対象液の流量よりも多い請求項2または3に記載のイオン濃度測定方法。
【請求項6】
前記計測工程において、下記式に基づき算出される測定対象液の循環流量が5(1/min)以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のイオン濃度測定方法。
循環流量(1/min)=(1分間に計測部と循環ラインとの間を循環する測定対象液の流量)/(計測部に保持される測定対象液の容量)
【請求項7】
前記計測部は、前記計測部から前記循環ラインに測定対象液が流出する循環流出部と、前記循環ラインから前記計測部に測定対象液が戻される循環返送部を有し、
前記循環流出部は前記循環返送部よりも高い位置にある請求項1~3のいずれか一項に記載のイオン濃度測定方法。
【請求項8】
前記計測部は、前記計測部から前記循環ラインに測定対象液が流出する循環流出部と、前記循環ラインから前記計測部に測定対象液が戻される循環返送部を有し、
前記測定電極は、前記計測部において前記循環返送部から前記循環流出部までの間に設置されている請求項1~3のいずれか一項に記載のイオン濃度測定方法。
【請求項9】
前記測定電極は、前記循環返送部側に対向して設置されている請求項8に記載のイオン濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン電極計を用いてイオン濃度を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン電極計は、イオン選択電極を用いて溶液中のイオン濃度を測定する装置であり、イオン選択電極を用いたイオン濃度測定は公定法としても定められている。例えば、非特許文献1には、イオン選択電極を用いてイオン濃度を定量する一般的事項が記載され、イオン選択電極を用いて電位測定することによりイオン濃度を求めることができること、イオン選択電極ではイオン活量に応じた膜電位が生じること、活量係数はイオン強度の影響を受けて変動し測定誤差の原因となること、測定対象液のイオン強度を一定に保つために、イオン強度調整液として高濃度の電解質溶液が加えられる場合があること、イオン選択電極による測定は共存イオンの影響を受けるため、その影響を避ける対策をとる必要があることなどが記載されている。非特許文献2には、イオン電極法において共存イオンの影響を避けるための前処理方法や測定時のpH条件などが記載されている。特許文献1には、イオン電極計を用いてフッ素イオン濃度を測定方法する方法であって、共存イオンの影響を抑えてフッ素イオンの濃度を正確に求めることができるフッ素イオン濃度測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格 JIS K 0122-1997
【非特許文献2】日本工業規格 JIS K 0102-2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオン電極計を用いたイオン濃度の測定では、共存イオンの影響をできるだけ低減することが望まれるが、上記のように共存イオンの影響を低減する対策を行っても、依然として共存イオンがイオン濃度の算出に影響を及ぼす場合がある。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、測定対象液に共存イオンが含まれていても、共存イオンの影響を低減して、測定対象液のイオン濃度をより正確に求めることができるイオン濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明のイオン濃度測定方法は下記の通りである。
[1] 測定対象液が保持された計測部と、測定電極を有し、前記測定電極が前記計測部に保持された測定対象液に浸漬設置されているイオン電極計と、前記計測部から流出した測定対象液を前記計測部に戻す循環ラインとを含む計測ユニットを有する測定装置を用いて測定対象液のイオン濃度を測定する方法であって、
前記循環ラインにおいて、前記循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化せず、
前記計測部と前記循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、前記イオン電極計で測定対象液の電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、
前記電位値Pから測定対象液のイオン濃度を算出する工程を有することを特徴とするイオン濃度測定方法。
[2] 測定対象液が保持された計測部と、測定電極を有し、前記測定電極が前記計測部に保持された測定対象液に浸漬設置されているイオン電極計と、前記計測部から流出した測定対象液を前記計測部に戻す循環ラインとを含む計測ユニットと、
前記計測ユニットに測定対象液を導入する供給ラインと、
前記計測ユニットから測定対象液を排出する排出ラインと
を有する測定装置を用いて測定対象液のイオン濃度を測定する方法であって、
前記供給ラインは前記計測部に接続しており、
前記循環ラインにおいて、前記循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化せず、
前記供給ラインを通して前記計測ユニットに測定対象液を導入し、前記排出ラインを通して前記計測ユニットから測定対象液を排出し、前記計測部と前記循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、前記イオン電極計で測定対象液の電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、
前記電位値Pから測定対象液のイオン濃度を算出する工程を有することを特徴とするイオン濃度測定方法。
[3] 測定対象液が保持された計測部と、測定電極を有し、前記測定電極が前記計測部に保持された測定対象液に浸漬設置されているイオン電極計と、前記計測部から流出した測定対象液を前記計測部に戻す循環ラインとを含む計測ユニットと、
前記計測ユニットに測定対象液を導入する供給ラインと、
前記計測ユニットから測定対象液を排出する排出ラインと
を有する測定装置を用いて測定対象液のイオン濃度を測定する方法であって、
前記供給ラインは前記循環ラインに接続しており、
前記循環ラインにおいて、前記供給ラインとの接続部まで、前記循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化せず、
前記供給ラインを通して前記計測ユニットに測定対象液を導入し、前記排出ラインを通して前記計測ユニットから測定対象液を排出し、前記計測部と前記循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、前記イオン電極計で測定対象液の電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、
前記電位値Pから測定対象液のイオン濃度を算出する工程を有することを特徴とするイオン濃度測定方法。
[4] 前記計測部は、前記計測部から前記循環ラインに測定対象液が流出する循環流出部と、前記計測部から前記排出ラインに測定対象液が排出する排出部を有し、
前記排出部は前記循環流出部よりも高い位置にある[2]または[3]に記載のイオン濃度測定方法。
[5] 前記計測部と前記循環ラインとの間を循環する測定対象液の流量は、前記供給ラインから前記計測ユニットに導入される測定対象液の流量よりも多い[2]~[4]のいずれかに記載のイオン濃度測定方法。
[6] 前記計測工程において、下記式に基づき算出される測定対象液の循環流量が5(1/min)以上である[1]~[5]のいずれかに記載のイオン濃度測定方法。
循環流量(1/min)=(1分間に計測部と循環ラインとの間を循環する測定対象液の流量)/(計測部に保持される測定対象液の容量)
[7] 前記計測部は、前記計測部から前記循環ラインに測定対象液が流出する循環流出部と、前記循環ラインから前記計測部に測定対象液が戻される循環返送部を有し、
前記循環流出部は前記循環返送部よりも高い位置にある[1]~[6]のいずれかに記載のイオン濃度測定方法。
[8] 前記計測部は、前記計測部から前記循環ラインに測定対象液が流出する循環流出部と、前記循環ラインから前記計測部に測定対象液が戻される循環返送部を有し、
前記測定電極は、前記計測部において前記循環返送部から前記循環流出部までの間に設置されている[1]~[7]のいずれかに記載のイオン濃度測定方法。
[9] 前記測定電極は、前記循環返送部側に対向して設置されている[8]に記載のイオン濃度測定方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のイオン濃度測定方法によれば、測定対象液に共存イオンが含まれていても、共存イオンの影響を低減して、測定対象液のイオン濃度をより正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のイオン濃度測定方法において用いられる測定装置の構成例を表す。
【
図2】本発明のイオン濃度測定方法において用いられる測定装置の構成例を表す。
【
図3】本発明のイオン濃度測定方法において用いられる測定装置の構成例を表す。
【
図4】イオン電極計で計測した電位値Pからイオン濃度を算出する方法の一例のフロー図を表す。
【
図5】実施例において求めた循環流量(SV)と銅イオン濃度の出力値の関係をプロットしたグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従来、イオン選択電極を備えたイオン電極計を用いて、溶液中のイオン濃度を測定する方法が知られている。イオン電極計を用いれば、溶液中の特定イオン、すなわちイオン電極計の測定対象となるイオンの濃度を迅速に測定することができ、自動で当該イオンの濃度を測定することもできる。そのため、例えば、排水中の特定イオンの濃度をモニタリングしたり、河川や湖沼などの環境中の特定イオンの濃度をモニタリングしたり、あるいは多量の検体を自動分析するのに、イオン電極計を好適に使用することができる。
【0010】
イオン電極計は、イオン選択電極と、比較電極と、これら両電極間の電位差を計測する電位差計とを備えて構成される。電位差計には演算部が電気的に接続していることが好ましく、これにより、電位差計で計測した電位差をイオン濃度に換算した応答値を返すことができる。イオン選択電極は、測定対象液の特定イオン濃度の測定電極として用いられる。イオン選択電極は、測定対象となる特定イオンに応答する感応膜を有し、これにより、特定イオンに対して選択的に応答することができる。イオン選択電極を測定対象液に浸漬し、測定対象液中の特定イオンが感応膜に接すると、そのイオン活量に応じた膜電位を生じる。そして、同じく測定対象液中に浸漬した比較電極と電気的に接続し、これら両電極間に電位差計を設置することにより、イオン選択電極と比較電極の間の電位差を計測することができる。このようにして得られた電位差の値は、ネルンストの式に基づきイオン濃度に換算することができ、演算部では、電位差計で得られた電位差の値をイオン濃度に換算した応答値を返す。ただし、応答値が単にネルンストの式に基づき電位差をイオン濃度に換算したものである場合は、測定対象液中に特定イオンのみが含まれていれば、測定対象液中の特定イオン濃度を表すものとなるが、測定対象液中に特定イオン以外の共存イオンが含まれていると、当該応答値は真の特定イオンの濃度からずれたものとなる。すなわち、測定対象液中に特定イオン以外の共存イオンが含まれる場合は、イオン電極計の応答値は、測定対象液中の特定イオンの濃度を正しく表さないものとなる。そのため、イオン電極計による測定においては通常、イオン強度調整剤を加えたりして共存イオンの影響を受けないようにする対策をしており、これにより、共存イオンを含む測定対象液であっても、当該測定対象液中の特定イオンの濃度を測定することが可能となる。この場合、測定対象液の組成に応じて、イオン電極計の応答値と真の特定イオンの濃度との間の相関式を求め、この相関式に基づいて、測定対象液の特定イオンの濃度を算出する。
【0011】
本発明は、イオン電極計を用いて測定対象液のイオン濃度を測定する方法に関するものであり、測定対象液が保持された計測部と、測定電極を有し、測定電極が計測部に保持された測定対象液に浸漬設置されているイオン電極計と、計測部から流出した測定対象液を計測部または計測部よりも上流側に戻す循環ラインとを含む計測ユニットを有する測定装置を用いて、測定対象液のイオン濃度を測定するものである。循環ラインでは、循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化しない。あるいは、循環ラインに、測定対象液を計測ユニットに導入する供給ラインが接続し、供給ラインを通して計測ユニットに測定対象液が導入される場合は、循環ラインにおいて、計測部から流出し供給ラインの接続部に至るまで循環ラインを流れる測定対象液の組成は実質的に変化しない。その上で、本発明のイオン濃度測定方法は、計測部と循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、イオン電極計で測定対象液の電位を計測し、電位値Pを得る計測工程と、電位値Pから測定対象液のイオン濃度を算出する工程(濃度算出工程)を有する。
【0012】
上記に説明したように、測定対象液中に特定イオン以外の共存イオンが含まれる場合、イオン電極計の応答値は共存イオンの影響を受け、測定対象液中の特定イオンの濃度を正しく表さないものとなる。そのため、イオン電極計による測定においては通常、イオン強度調整剤を加えたりして共存イオンの影響を減らす対策を行うが、本発明者らが、イオン電極計を測定装置に組み込んで測定対象液の特定イオンの濃度を測定したところ、そのように対策をしても、得られる電位値Pが真の値よりも低くなる場合があることが判明した。この場合、電位値Pはネルンストの式に基づき濃度の対数と負の比例関係を示すため、電位値Pから算出したイオン濃度は真の値よりも高くなる。そして、これに対する対策として、計測部と循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、計測部に保持された測定対象液の電位を計測することが有効であることが明らかになった。このように測定対象液の電位を計測することにより、得られる電位値Pを真の値に近づけることができる。以下、本発明のイオン濃度方法について詳しく説明する。
【0013】
図1~
図3には、本発明のイオン濃度測定方法において用いられる測定装置の構成例を示した。測定装置1は、測定対象液Qが保持された計測部3と、測定電極4Eを有し、測定電極4Eが計測部3に保持された測定対象液Qに浸漬設置されているイオン電極計4と、計測部3から流出した測定対象液Qを計測部3に戻す循環ライン5とを含む計測ユニット2を有する。計測部3には測定対象液Qが保持され、計測部3の測定対象液Qにイオン電極計4の測定電極4Eが浸漬設置されている。計測部3は、測定対象液Qが貯められた水槽(すなわち計測槽)であってもよく、測定対象液Qが流れる流路であってもよい。いずれの場合も、測定電極4Eが測定対象液Qに浸漬設置されていればよい。
【0014】
本発明のイオン濃度の測定方法において測定対象となるイオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、銅イオン、鉛イオン、カドミウムイオン、銀イオン、フッ素イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、硫化物イオンが挙げられる。イオン電極計4の測定電極4Eは特定イオンに応答する感応膜を有し、これにより、特定イオンに対して選択的に応答することができる。
【0015】
イオン電極計4の測定電極4Eは、ガラス膜電極、固体膜電極、液体膜電極、隔膜形電極など公知のイオン選択電極を用いることができる。イオン電極計4の比較電極は、単一液絡形電極、二重液絡形電極など公知の比較電極を用いることができ、電極内部には内部液(電解液)が液状に保持されていてもよく、ゲル状に保持されていてもよい。
【0016】
測定対象液Qの種類は特に限定されず、特定イオンを含有するものであってもよく、特定イオンを含有しないものであってもよい。特定対象液としては、例えば、工場、発電所、精錬所、鉱山、病院、研究所等の事業所からの廃水(処理プロセス水を含む)や、河川水や湖沼水等の環境水が挙げられる。工場からの廃水としては、製鉄、鉄鋼、非鉄金属、機械、金属加工、めっき、塗装、電子部品、ガラス、セメント等の各種工場で発生する廃水が挙げられる。
【0017】
測定対象液Qは、特定イオンを含有することが好ましく、さらに、特定イオン以外のイオンを含有していてもよい。なお、測定対象液Qは、特定イオン以外のイオン濃度が高いほど本発明の効果がより好適に発揮されることから、測定対象液Qは特定イオン以外のイオンを含有するものであることが好ましい。より好ましくは、測定対象液Qは、特定イオン以外のイオンを、特定イオンよりも多くの量(モル基準)を含有する。なお、特定イオン以外のイオンの種類は特に限定されない。
【0018】
測定対象液Qに含まれるイオンの総量を表す指標として、測定対象液Qは、例えば、蒸発残分が0.05g/L以上であることが好ましく、0.1g/L以上がより好ましく、0.3g/L以上がさらに好ましく、また300g/L以下が好ましく、200g/L以下がより好ましく、100g/L以下がさらに好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に発揮されるものとなる。蒸発残分は、JIS K 0067-1992に従って求めることができる。
【0019】
計測部3は、測定対象液Qが上向きに流れるように構成されていてもよく、下向きに流れるように構成されていてもよく、横向きに流れるように構成されていてもよい。
図2~
図4では、計測部3において、測定対象液Qが上向きに流れるように構成されている。
【0020】
イオン電極計4(具体的には測定電極4Eを含む部分)は、計測部3の上側から差し込まれ設置されてもよく、下側から差し込まれ設置されてもよく、横側から差し込まれ設置されてもよい。なお、イオン電極計4のメンテナンスの容易性から、イオン電極計4は計測部3の上側から差し込まれ設置されることが好ましい。これにより、計測部3に測定対象液Qを保持した状態で、イオン電極計4を計測部3から取り外すことが容易になる。
【0021】
計測ユニット2には、計測部3から流出した測定対象液Qを計測部3に戻す循環ライン5が設けられている。これにより、計測部3と循環ライン5の間を測定対象液Qが循環する。循環ライン5は、計測部3から出て計測部3に戻るまでの部分を指す。具体的には、計測部3は、計測部3から循環ライン5に測定対象液Qが流出する循環流出部6と、循環ライン5から計測部3に測定対象液Qが戻される循環返送部7を有し、循環ライン5は循環流出部6と循環返送部7に接続している。本発明では、計測工程において、計測部3と循環ライン5との間を測定対象液Qを循環させながら、イオン電極計4で計測部3に保持された測定対象液Qの電位を計測し、電位値Pを得る。このように測定対象液Qの電位を計測することにより、得られる電位値Pを真の値に近づけることができる。測定対象液Qを循環させることにより電位値Pを真の値に近づけることができる効果は、共存イオン濃度が高くなるほどより顕著に表れる。
【0022】
本発明のイオン濃度の測定方法は、バッチ式で測定する方法と、連続式で測定する方法を含む。バッチ式で測定する場合は、計測工程において計測ユニット2に新たな測定対象液Qは供給されない。連続式で測定する場合は、計測工程において計測ユニット2に新たな測定対象液Qが供給される。
【0023】
図1には、バッチ式で測定する場合の測定装置1の構成例を示した。バッチ式で測定する場合、循環ライン5において、循環ライン5を流れる測定対象液Qの組成は実質的に変化せず、計測工程において、計測部3と循環ライン5との間を測定対象液Qを循環させながら、イオン電極計4で計測部3に保持された測定対象液Qの電位を計測する。バッチ式で測定する場合、測定装置1には、計測ユニット2に測定対象液Qを導入する供給ラインと、計測ユニット2から測定対象液Qを排出する排出ラインが設けられていてもよいが、計測工程を行っている際は、供給ラインを通して計測ユニット2に測定対象液Qは導入されず、排出ラインを通して計測ユニット2から測定対象液Qは排出されない。
【0024】
図2および
図3には、連続式で測定する場合の測定装置1の構成例を示した。連続式で測定する場合、測定装置1には、計測ユニット2に測定対象液Qを導入する供給ライン8と、計測ユニット2から測定対象液Qを排出する排出ライン10が設けられ、計測工程において、供給ライン8を通して計測ユニット2に測定対象液Qを導入し、排出ライン10を通して計測ユニット2から測定対象液Qを排出し、計測部3と循環ライン5との間を測定対象液Qを循環させながら、イオン電極計4で計測部3に保持された測定対象液Qの電位を計測する。
【0025】
図2では、供給ライン8は計測部3に直接接続しており、従って、供給ライン8は循環ライン5には接続されていない。測定装置1は、新たな測定対象液Qが供給ライン8を通して計測部3に直接供給されるように構成されており、すなわち、計測部3は、供給ライン8から計測部3に新たな測定対象液Qが供給される供給部9を有し、供給ライン8は計測部3の供給部9に接続している。
図2では、循環ライン5において、循環ライン5を流れる測定対象液Qの組成は実質的に変化しない。計測工程では、新たな測定対象液Qが供給ライン8を通して計測部3に供給され、排出ライン10を通して計測部3から測定対象液Qが排出される。
【0026】
図3では、供給ライン8は循環ライン5に接続されており、測定装置1は、新たな測定対象液Qが供給ライン8から循環ライン5を通して計測部3に供給されるように構成されている。この場合、循環ライン5において、供給ライン8の接続部まで(具体的には、循環ライン5において、計測部3を出て供給ライン8と接続部に至るまでの範囲で)循環ライン5を流れる測定対象液Qの組成は実質的に変化しない。計測工程では、新たな測定対象液Qが供給ライン8から循環ライン5を通して計測部3に供給され、排出ライン10を通して計測部3から測定対象液Qが排出される。
【0027】
連続式で測定する場合、排出ライン10は計測部3に接続していてもよく、循環ライン5に接続していてもよい。前者の場合、計測部3に保持された測定対象液Qが排出ライン10から直接排出され、後者の場合、計測部3に保持された測定対象液Qは循環ライン5の途中から排出ライン10に引き抜かれる。
図2および
図3では、計測部3は、計測部3から排出ライン10に測定対象液Qが排出する排出部11を有し、排出ライン10が計測部3の排出部11に接続している。
【0028】
循環ライン5を流れる測定対象液Qの組成が実質的に変化しないとは、循環ライン5において、測定対象液Qに他の成分が加えられたり、測定対象液Qに含まれる成分が除去されたり、測定対象液Qが濃縮または希釈されることが、意図して行われないことを意味する。
【0029】
循環ライン5には送液ポンプが備えられることが好ましい。これにより、計測部3に保持された測定対象液Qが送液ポンプによって循環ライン5に引き抜かれ、循環ライン5に引き抜かれた測定対象液Qが当該送液ポンプによって送り出され、計測部3に戻される。
【0030】
計測工程では、計測部3と循環ライン5との間を、測定対象液Qをより多く循環させることが好ましく、これにより電位値Pを真の値により近づけることができる。測定対象液Qの循環流量は、下記式で表すことができる。計測部3と循環ライン5との間を循環する測定対象液Qの流量は、例えば送液ポンプの吐出量から求めることができる。
循環流量(1/min)=(1分間に計測部3と循環ライン5との間を循環する測定対象液Qの流量)/(計測部3に保持される測定対象液Qの容量)
【0031】
上記式で表される循環流量は、例えば5(1/min)以上であることが好ましく、これにより測定対象液Qを循環させることの効果が好適に発揮されやすくなる。循環流量は、10(1/min)以上がより好ましく、15(1/min)以上がさらに好ましく、20(1/min)以上が特に好ましい。一方、循環流量の上限は特に限定されず、例えば100(1/min)以下であってもよいが、送液ポンプや循環ライン5が過剰な仕様にならず、送液ポンプの性能や用役費などを考慮すると、50(1/min)以下が好ましく、40(1/min)以下がより好ましく、30(1/min)以下がさらに好ましい。
【0032】
連続式で測定する場合は、計測部3と循環ライン5との間を循環する測定対象液Qの流量、すなわち循環流量は、供給ライン8から計測ユニット2に導入される測定対象液Qの流量よりも多いことが好ましい。これにより、供給ライン8から計測ユニット2に導入される測定対象液Qの組成が多少変動しても、測定対象液Qの電位を安定して計測することができる。例えば、循環流量は、供給ライン8から計測ユニット2に導入される測定対象液Qの流量の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましい。供給ライン8から計測ユニット2に導入される測定対象液Qの流量に対する循環流量の比の上限は特に限定されないが、循環流量を確保することが容易になる点から、循環流量は、供給ライン8から計測ユニット2に導入される測定対象液Qの流量の50倍以下が好ましく、20倍以下がより好ましく、10倍以下がさらに好ましい。
【0033】
計測工程では、計測部3内を流れる測定対象液Qと測定電極4Eとの接触が促進されることが好ましい。このような観点から、測定電極4Eは、計測部3において循環返送部7から循環流出部6までの間に設置されていることが好ましい。具体的には、計測部3内において、測定対象液Qが循環返送部7から循環流出部6まで流通する途中に測定電極4Eが設置されることが好ましい。例えば、計測部3において測定対象液Qが上向きまたは下向きに流れる場合は、測定電極4Eは鉛直方向に対して循環返送部7と循環流出部6の間に設置されることが好ましい。計測部3において、測定対象液Qが横向きに流れる場合は、測定電極4Eは水平方向に対して循環返送部7と循環流出部6の間に設置されることが好ましい。このように測定電極4Eが設置されることにより、測定電極4Eが、計測部3内を流れる測定対象液Qと接触する頻度が高まり、イオン電極計4で測定対象液Qの電位を計測して得られる電位値Pをより真の値に近づけることが容易になる。
【0034】
測定電極4Eは、循環返送部7側に対向して設置されていることが好ましい。このようにイオン電極計4を設置することにより、計測部3内を流れる測定対象液Qと測定電極4Eとの接触が促進される。測定電極4Eは通常イオン電極計4の先端に設けられることから、イオン電極計4の先端が循環返送部7側に向くように、イオン電極計4が計測部3に設置されることが好ましい。例えば、計測部3において測定対象液Qが上向きに流れる場合は、イオン電極計4(具体的にはイオン電極計4の測定電極4Eを含む部分)は、計測部3の上側から差し込まれ設置されることが好ましい。計測部3において測定対象液Qが下向きに流れる場合は、イオン電極計4は、計測部3の下側から差し込まれ設置されることが好ましい。計測部3において測定対象液Qが横向きに流れる場合は、イオン電極計4は、計測部3の横側であって測定対象液Qの流れる方向と反対側から差し込まれ設置されることが好ましい。
【0035】
計測部3では、測定対象液Qが上向きに流れることが好ましい。具体的には、計測部3と循環ライン5との間を循環する測定対象液Qは、計測部3内において上向きに流れることが好ましい。従って、計測部3は、循環流出部6が循環返送部7よりも高い位置にあることが好ましい。このように循環流出部6と循環返送部7が設けられることにより、測定電極4Eが測定対象液Qに浸漬された状態が維持されやすくなり、また測定電極4Eと測定対象液Qとの接触がより促される。
【0036】
連続式で測定する場合は、計測部3から排出ライン10に測定対象液Qが排出する排出部11は、計測部3から循環ライン5に測定対象液Qが流出する循環流出部6よりも高い位置にあることが好ましい。このように排出部11と循環流出部6が設けられることにより、循環流量を多くしても、計測部3に保持された測定対象液Qを循環流出部6から確実に抜き出すことができる。そのため、計測部3と循環ライン5との間を測定対象液Qを循環させることが容易になる。
【0037】
図2に示すように、計測部3に、新たな測定対象液Qが供給される供給部9が設けられる場合は、排出部11が循環流出部6よりも高い位置にあり、供給部9が循環排出部11よりも低い値にあることが好ましい。このように計測部3が構成されることにより、供給部9から計測部3に供給される新たな測定対象液Qが、既に計測部3に保持されていた測定対象液Qと速やかに混合されやすくなる。
【0038】
計測工程において、イオン電極計4で測定対象液Qの電位を計測し電位値Pを得たら、次に濃度算出工程で、電位値Pから測定対象液Qのイオン濃度を算出する。濃度算出工程では、測定対象液Qの組成に応じた検量線を作成し、当該検量線に基づき、測定対象液Qの特定イオンの濃度を求める。すなわち、計測工程で得られた電位値Pを、検量線に基づき、測定対象液Qの組成に応じた特定イオンの濃度に換算する。イオン電極計による測定は、JIS K 0122-1997に従って行うことができ、検量線の作成およびイオン濃度の求め方は、当該JISの「6.4 測定方法」を参照することができる。共存イオンの影響を抑える場合は、例えば、標準液と測定対象液Qにイオン強度調整剤を加えてイオン強度を等しく測定したり、測定対象液Q中で特定イオンが錯体を形成している場合には、錯体解離剤を添加したりpHを調整することなどによって錯体を解離させた後に測定すればよい。
【0039】
濃度算出工程では、国際公開第2019/225433号に記載の方法に準じ、測定対象液Qから特定イオンを吸着剤により一旦除去した後、特定イオンを既知量加えて基準液を作製し、当該基準液の測定に基づき検量線を作成し、イオン濃度を求めることもできる。このようにしても、共存イオンの影響を抑えることができる。この場合、濃度算出工程は、
図4に示すように、測定対象液を、イオン電極計の測定対象となる特定イオンを吸着する吸着剤と接触させて、特定イオン除去液を得る工程(特定イオン除去工程)と、特定イオン除去液に特定イオンを加えて、特定イオン濃度C1の第1基準液を調製する工程(第1基準液調製工程)と、特定イオン除去液に特定イオンを加えてまたは加えないで特定イオン濃度C2の第2基準液を調製する工程(第2基準液調製工程)と、イオン電極計で第1基準液の電位を計測して、電位値P1を得る工程(第1基準液計測工程)と、イオン電極計で第2基準液の電位を計測して、電位値P2を得る工程(第2基準液計測工程)と、特定イオン濃度C1,C2と電位値P1,P2を用いて、特定イオン濃度と電位値との相関を表す検量線を作成する工程(検量線作成工程)と、前記検量線に基づき、電位値Pに対応する測定対象液Qの特定イオン濃度を算出する工程(濃度換算工程)とを有することが好ましい。
【0040】
特定イオン除去工程では、測定対象液を、特定イオンを吸着する吸着剤と接触させて、特定イオン除去液を得る。特定イオン除去工程に供する測定対象液は、計測工程で計測部ないし計測ユニットに導入する測定対象液と同一バッチであってもよく、異なるバッチであってもよい。前者の場合、例えば、1バッチで採取した測定対象液の一部を計測工程に供し、他部を特定イオン除去工程に供する。あるいは、計測工程で電位測定した測定対象液を特定イオン除去工程に供してもよい。
【0041】
吸着剤は、特定イオンを吸着できる公知の吸着剤を用いればよい。測定対象液と吸着剤との接触は、槽中で行ってもよく、吸着カラムに通液することにより行ってもよい。
【0042】
特定イオン除去工程では、測定対象液を吸着剤と接触させることにより測定対象液から特定イオンが除去された特定イオン除去液が得られる。なお、特定イオン除去液の特定イオン濃度は完全に0mg/Lにならなくてもよい。特定イオン除去液の特定イオン濃度は、例えば3mg/L以下が好ましく、2mg/L以下がより好ましく、1mg/L以下がさらに好ましく、0.5mg/L以下が特に好ましい。
【0043】
特定イオン除去工程で得られた特定イオン除去液は、次に第1基準液調製工程と第2基準液調製工程にて特定イオンを加えることにより、特定イオン濃度C1の第1基準液と、特定イオン濃度C2の第2基準液を調製する。第2基準液調製工程では、特定イオンを加えないで第2基準液を調製してもよい。第1基準液調製工程と第2基準液調製工程では、予め所定濃度の特定イオン溶液を準備しておき、第1基準液と第2基準液の特定イオン濃度に応じて特定イオン溶液の添加量を調整することが好ましく、これにより所望の特定イオン濃度の第1基準液と第2基準液を容易に調製できる。このような特定イオン溶液としては、特定イオン濃度が既知の特定イオン標準液を用いることが簡便である。
【0044】
第1基準液調製工程と第2基準液調製工程に続いて、第1基準液計測工程と第2基準液計測工程にて、第1基準液と第2基準液の電位をイオン電極計により計測する。第1基準液と第2基準液の測定に用いるイオン電極計は、測定対象液の計測に用いるイオン電極計と同じであっても異なっていてもよい。第1基準液計測工程では、特定イオン濃度C1の第1基準液の電位として電位値P1を得る。第2基準液計測工程では、特定イオン濃度C2の第2基準液の電位として電位値P2を得る。
【0045】
次いで、検量線作成工程で、特定イオン濃度C1,C2と電位値P1,P2を用いて、特定イオン濃度と電位値との相関を表す検量線を作成する。検量線の作成に当たっては、横軸に電位値をとり、縦軸に特定イオン濃度の対数値をとり、第1基準液の特定イオン濃度C1と電位値P1、第2基準液の特定イオン濃度C2と電位値P2をプロットし、直線近似することにより、検量線を作成することができる。
【0046】
検量線作成工程にて検量線が得られたら、次いで濃度換算工程にて、当該検量線に基づき、電位値Pに対応する測定対象液Qの特定イオン濃度を算出する。これにより、測定対象液Qのイオン濃度を求めることができる。
【実施例0047】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(1)実験方法
図1に示す測定装置を用いて、計測部と循環ラインとの間を測定対象液を循環させながら、イオン電極計で測定対象液の電位を計測した。イオン電極計は銅イオン用の測定電極を備え、測定対象液は、銅イオンを100mg/L含有し、さらに共存イオンを蒸発残分として0.3g/L含有していた。測定対象液の循環は、循環流量を様々変えて行った。
図4に示した手順で、国際公開第2019/225433号に記載の方法に準じて検量線を作成し、当該検量線に基づき、イオン電極計で計測した電位値を銅イオン濃度に変換して、出力値として求めた。
【0049】
(2)結果
図5に、循環流量(SV)と銅イオン濃度の出力値の関係をプロットした結果を示した。
図5に示すように、循環流量が増えるほど、出力値は真の銅イオン濃度の値100mg/Lに近づいた。
図5では、循環流量が20(1/min)を超えると出力値が真の値とほぼ同じになったが、循環流量が6(1/min)であっても、循環させないときと比べて出力値と真の値との差が半減し、循環による効果が確認された。共存イオン濃度が高いほど、出力値と真の値との差が大きくなることから、共存イオン濃度が低い場合には、より少ない循環流量で出力値を真の値に近づけることができる。