(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000076
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
A61B8/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098606
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山口 将吾
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601EE20
4C601JB45
4C601JB50
4C601JC11
4C601JC13
4C601JC16
4C601KK07
4C601KK16
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】非侵襲的に声門の閉鎖度合いを推定する。
【解決手段】超音波診断装置1は、被測定者90の体表面92から声門91に向けて超音波を送信し、気管壁93で反射した反射波を受信することが可能な送受信部(超音波プローブ10)を備える。更に、超音波診断装置1は、送受信部によって受信された反射波に基づいて、体表面92から気管壁93までの距離を所定期間にわたって測定する測定部31を備える。更に、超音波診断装置1は、測定部31によって測定された距離に基づいて、所定期間における距離の変化度合いを特定する特定部32を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の体表面から声門に向けて超音波を送信し、気管壁で反射した反射波を受信することが可能な送受信部と、
前記送受信部によって受信された前記反射波に基づいて、前記体表面から前記気管壁までの距離を所定期間にわたって測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記距離に基づいて、前記所定期間における前記距離の変化度合いを特定する特定部と、を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記所定期間において前記被測定者がせき込む動作を行ったときの前記変化度合いを特定する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記所定期間に測定された前記距離の最小値と最大値とに基づいて、前記距離の前記変化度合いを特定する請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記距離の前記変化度合いとして、前記所定期間に測定された前記距離の最小値と最大値との差又は比率を特定する請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記所定期間の開始時に測定された前記距離と、前記所定期間に測定された前記距離の最大値とに基づいて、前記変化度合いを特定する請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記所定期間中において、前記所定期間の開始時に測定された前記距離と前記所定期間に測定された前記距離のうち現時点での最小値とのうちいずれかを基準値とし、前記基準値と直近に測定された前記距離との差又は比率が閾値を超えたか否かを判定する請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記特定部によって特定された前記変化度合いに基づいて、前記声門の閉鎖度合いを判別する判別部を備える請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記被測定者に対し、前記所定期間において前記声門を閉鎖させるための動作を行うように促す情報を通知する通知部を備える請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、声帯粘膜の運動状態を分析するためのシステムが開示されている。このシステムでは、内視鏡によって撮影した声帯の映像に基づいて、声帯粘膜の運動状態を分析する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、内視鏡が被測定者の鼻や口から挿入される必要があるため、侵襲的である。つまり、内視鏡が鼻から挿入される場合には、鼻痛や頭痛が引き起こされるおそれがある。内視鏡が口から挿入される場合には、咽頭反射が起こり被測定者に負担がかかりやすい。
【0005】
本発明は、非侵襲的に声門の閉鎖度合いを推定することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の超音波診断装置は、被測定者の体表面から声門に向けて超音波を送信し、気管壁で反射した反射波を受信することが可能な送受信部を備える。更に、上記超音波診断装置は、上記送受信部によって受信された上記反射波に基づいて、上記体表面から上記気管壁までの距離を所定期間にわたって測定する測定部を備える。更に、上記超音波診断装置は、上記測定部によって測定された上記距離に基づいて、上記所定期間における上記距離の変化度合いを特定する特定部を備える。
【0007】
この構成によれば、所定期間における被測定者の声門の閉鎖に応じた距離の変化度合いを特定することができる。このため、その変化度合いに基づいて声門の閉鎖度合いを推定することが可能となる。
【0008】
[2]上記[1]において、上記特定部は、上記所定期間において上記被測定者がせき込む動作を行ったときの上記変化度合いを特定してもよい。
【0009】
この構成によれば、声門が閉鎖しやすいせき込む動作が行われたときの距離の変化度合いを特定することができるため、変化度合いに基づいて声門の閉鎖が正常に行われたか否かを判別しやすい。
【0010】
[3]上記[1]又は[2]において、上記特定部は、上記所定期間に測定された上記距離の最小値と最大値とに基づいて、上記距離の上記変化度合いを特定してもよい。
【0011】
この構成によれば、最小値と最大値とに基づいて距離の変化度合いを特定するため、声門の閉鎖度合いをより高い精度で推定しやすい。
【0012】
[4]上記[3]において、上記特定部は、上記距離の上記変化度合いとして、上記所定期間に測定された上記距離の最小値と最大値との差又は比率を特定してもよい。
【0013】
この構成によれば、変化度合いを特定する処理を簡素化しやすい。
【0014】
[5]上記[1]又は[2]において、上記特定部は、上記所定期間の開始時に測定された上記距離と、上記所定期間に測定された上記距離の最大値とに基づいて、上記変化度合いを特定してもよい。
【0015】
この構成によれば、所定期間に測定された距離の最小値を特定しなくとも、距離の変化度合いを特定することができる。
【0016】
[6]上記[1]又は[2]において、上記特定部は、上記所定期間中において、上記所定期間の開始時に測定された上記距離と上記所定期間に測定された上記距離のうち現時点での最小値とのうちいずれかを基準値とし、上記基準値と直近に測定された上記距離との差又は比率が閾値を超えたか否かを判定してもよい。
【0017】
この構成によれば、基準値と直近に測定された距離との差又は比率が閾値を超えたか否かを判定することができるため、所定期間に測定された距離の最大値を特定しなくとも、距離の変化度合いを特定することができる。
【0018】
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、上記超音波診断装置は、上記特定部によって特定された上記変化度合いに基づいて、上記声門の閉鎖度合いを判別する判別部を備えていてもよい。
【0019】
この構成によれば、特定部によって特定された変化度合いに基づいて、被測定者の声門の閉鎖度合いを自動的に判別することができる。
【0020】
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、上記超音波診断装置は、上記被測定者に対し、上記所定期間において上記声門を閉鎖させるための動作を行うように促す情報を通知する通知部を備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、被測定者に対し、所定期間において声門を閉鎖させるための動作を行うように促すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、非侵襲的に声門の閉鎖度合いを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態の超音波診断装置の構成を概略的に例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、声門が開放された状態の声門周辺の冠状断面図である。
【
図3】
図3は、声門が閉鎖した状態の声門周辺の冠状断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態の制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第3実施形態の制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1実施形態
1-1.超音波診断装置1の構成
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ10によって超音波を送受信し、非侵襲的に被測定者90の声門91の閉鎖度合いを推定するための装置である。超音波診断装置1は、定置用の装置であってもよいし、携帯用の装置であってもよい。超音波診断装置1は、被測定者90とは異なる人物が測定者となることを想定した装置であってもよいし、被測定者90自身が測定者となることを想定した装置であってもよい。
【0025】
超音波診断装置1は、超音波プローブ10と、装置本体11と、超音波プローブ10を装置本体11につなぐケーブル12と、を備える。超音波プローブ10は、「送受信部」の一例に相当する。
【0026】
装置本体11は、入力部20と、出力部21と、制御装置22と、を備える。
【0027】
入力部20は、測定者の入力操作を受け付ける入力器を含んで構成される。入力器は、例えば、操作ボタンやタッチパネルなどを含んで構成されてもよい。入力器は、マイクなどの音声入力操作を受け付ける機器を含んで構成されてもよい。
【0028】
出力部21は、制御装置22からの指令に応じて情報を出力する。出力部21は、例えば液晶表示器などの表示器を含んで構成されてもよい。出力部21は、例えばスピーカなどの音声出力器を含んで構成されてもよい。
【0029】
制御装置22は、超音波診断装置1の動作を制御する。制御装置22は、例えばMCU(Micro Controller Unit)を含んで構成される。制御装置22は、入力部20に接続されており、入力部20に入力された情報を取得する。制御装置22は、出力部21に接続されており、出力部21から所定の情報を出力させる。
【0030】
制御装置22には、超音波プローブ10が接続されている。超音波プローブ10は、制御装置22に制御され、自身の先端部から超音波を送信する。また、超音波プローブ10は、物体で反射した超音波を受信する。超音波プローブ10によって受信された反射波は、制御装置22に入力される。
【0031】
超音波プローブ10は、先端部を被測定者90の体表面92(より具体的には、首の体表面92)に接触させ、声門91に向けた状態で配置される(
図1~
図3参照)。超音波プローブ10は、例えば、測定者又は被測定者90の手で保持される。超音波プローブ10は、この状態で超音波を送信することで、被測定者90の体表面92から声門91に向けて超音波を送信し、気管壁93で反射した反射波を受信することができる。なお、気管壁93とは、気道94の内壁のことである。
【0032】
また、超音波プローブ10の先端部は、甲状軟骨95と輪状軟骨96との間に向けて配置される。これにより、超音波プローブ10から送信された超音波が、甲状軟骨95又は輪状軟骨96で反射されず、気管壁93まで到達しやすくなる。
【0033】
また、声門91は、被測定者90の左右方向に開閉する。しかし、被測定者90の真横から超音波を送信すると、特に高齢者のように軟骨が骨化した被測定者90では甲状軟骨95又は輪状軟骨96に当たって反射しやすい。このため、超音波プローブ10の先端部は、被測定者90の斜め前方から、甲状軟骨95と輪状軟骨96との間に向けて配置されることが好ましい。
【0034】
制御装置22は、制御部30と、測定部31と、特定部32と、判別部33と、通知部34と、を備える。
【0035】
制御部30は、超音波プローブ10の動作を制御する。制御部30は、超音波プローブ10から超音波を送信させる。制御部30は、測定者によって開始操作が行われた場合に、所定期間(例えば5s)にわたって超音波を送信させる動作を超音波プローブ10に行わせる。
【0036】
測定部31は、超音波プローブ10によって受信された反射波に基づいて、体表面92から気管壁93までの距離を所定期間にわたって測定する。測定部31は、測定者による開始操作に応じて距離を測定する動作を開始する。測定部31は、開始操作の直後に距離を測定する動作を開始してもよいし、開始操作から所定時間経過後に距離を測定する動作を開始してもよい。
【0037】
特定部32は、測定部31によって測定された距離に基づいて、上記所定期間における距離の変化度合いを特定する。特定部32は、上記所定期間において被測定者90が声門91を閉鎖するための動作を行ったときの変化度合いを特定する。声門91を閉鎖させるための動作は、本実施形態では、せき込む動作とするが、別の動作であってもよい。別の動作としては、例えば、飲み込む動作であってもよいし、発声動作であってもよい。
【0038】
特定部32は、上記所定期間に測定された距離の最小値と最大値とに基づいて、上記所定期間における距離の変化度合いを特定する。具体的には、特定部32は、上記所定期間にわたって測定した後、測定された距離の最小値と最大値とを特定する。例えば、特定部32は、
図2に示すように、声門91が開放されたときに測定された距離L1を最小値として特定する。また、特定部32は、
図3に示すように、声門91が閉鎖されたときに測定される距離L2を最大値として特定する。そして、特定部32は、特定した最小値と最大値とに基づいて、上記所定期間における距離の変化度合いを特定する。例えば、特定部32は、上記所定期間における距離の変化度合いとして、所定期間に測定された距離の最小値と最大値との差又は比率を特定する。
【0039】
判別部33は、特定部32によって特定された変化度合いに基づいて、声門91の閉鎖度合いを判別する。判別部33は、距離の変化度合いと声門91の閉鎖度合いとの対応関係を示す対応データを予め記憶している。判別部33は、この対応データと、距離の変化度合いとに基づいて、声門91の閉鎖度合いを特定する。例えば、判別部33は、所定期間に測定された距離の最小値と最大値との差又は比率が第1判別値以上である場合には「正常」と判断し、第1判別値未満で第2判別値以上である場合には「軽度な異常」と判断し、第2判別値未満である場合には「重度な異常」と判断する。
【0040】
通知部34は、被測定者90に対し、上記所定期間において声門91を閉鎖させるための動作(本実施形態では、せき込む動作)を行うように促す情報を通知する。通知部34は、出力部21を介して、上記情報を被測定者90に通知する。通知部34は、測定者によって開始操作が行われた場合に、上記情報を通知する。通知部34は、例えば「咳をしてください」という音声情報を出力部21の音声出力器から出力させ、「咳をしてください」という文字情報を出力部21の表示器に表示させる。
【0041】
1-2.超音波診断装置1の動作
まず、超音波プローブ10は、測定者又は被測定者90によって、先端部が被測定者90の体表面92に当てられる。また、超音波プローブ10は、超音波が、甲状軟骨95と輪状軟骨96との間を通り、声門91に向かう位置及び向きで配置される。この状態で、測定者は開始操作を行う。測定者が被測定者90でない場合、測定者は、開始操作を行う際に、口頭で被測定者90にせき込む動作を促してもよい。
【0042】
制御装置22は、開始操作が行われた場合に、
図4に示す処理を開始する。制御装置22は、ステップS110において、超音波プローブ10から超音波を送信させる。これにより、超音波プローブ10は、被測定者90の体表面92から声門91に向けて超音波を送信し、気管壁93で反射した反射波を受信する。制御部30は、所定期間にわたって超音波プローブ10から超音波を送信させ続ける。これにより、超音波プローブ10は、所定期間にわたって超音波を送信し、気管壁93で反射した反射波を受信する。
【0043】
また、制御装置22は、開始操作が行われた場合、被測定者90に対し、上記所定期間において声門91を閉鎖させるための動作を行うように促す情報を通知する。通知するタイミングは、上記所定期間の開始前であってもよいし、上記所定期間の開始時であってもよいし、上記所定期間中であってもよい。
【0044】
制御装置22は、ステップS111において、超音波プローブ10によって受信された反射波に基づいて、体表面92から気管壁93までの距離を所定期間にわたって測定する。
【0045】
制御装置22は、ステップS112において、上記所定期間に測定された距離の最小値と最大値を特定する。そして、特定部32は、最小値と最大値とに基づいて、距離の変化度合いを特定する。
【0046】
制御装置22は、ステップS113において、ステップS112で特定された変化度合いに基づいて、声門91の閉鎖度合いを判別する。制御装置22は、判別した結果を出力部21から出力させる。また、制御装置22は、所定期間に測定された距離の経時的変化を示すグラフを表示器に表示させる。また、制御装置22は、最小値、最大値、最小値と最大値との差、最小値と最大値との比率なども出力部21から出力させる。
【0047】
1-3.超音波診断装置1の効果の例
第1実施形態の超音波診断装置1によれば、所定期間において被測定者90が声門91を閉鎖させるための動作を行うことで、その動作が行われたときの声門91の閉鎖に応じた距離の変化度合いを特定することができる。このため、その変化度合いに基づいて声門91の閉鎖度合いを推定することが可能となる。
【0048】
更に、超音波診断装置1は、声門91が閉鎖しやすいせき込む動作が行われたときの距離の変化度合いを特定することができるため、変化度合いに基づいて声門91の閉鎖が正常に行われたか否かを判別しやすい。
【0049】
更に、超音波診断装置1は、最小値と最大値とに基づいて距離の変化度合いを特定するため、声門91の閉鎖度合いをより高い精度で推定しやすい。
【0050】
更に、超音波診断装置1は、基準値と直近に測定された距離との差又は比率が閾値を超えたか否かを判定することができるため、所定期間に測定された距離の最大値を特定しなくとも、距離の変化度合いを特定することができる。
【0051】
更に、超音波診断装置1は、変化度合いに基づいて、被測定者90の声門91の閉鎖度合いを自動的に判別することができる。
【0052】
更に、超音波診断装置1は、被測定者90に対し、所定期間において声門91を閉鎖させるための動作を行うように促す情報を通知する。このため、超音波診断装置1は、被測定者90に対し、所定期間において声門91を閉鎖させるための動作を行うように促すことができる。
【0053】
2.第2実施形態
距離の変化度合いの特定方法は、第1実施形態の方法に限らない。第2実施形態では、別の特定方法について説明する。第2実施形態の構成は、制御装置22の動作を除き同じである。このため、第2実施形態では、
図1から
図3を用いて説明する。
【0054】
第2実施形態では、特定部32が、所定期間の開始時に測定された距離と、所定期間に測定された距離の最大値とに基づいて、距離の変化度合いを特定する。
【0055】
第2実施形態の制御装置22は、開始操作が行われた場合に、
図5に示す処理を開始する。制御装置22は、ステップS210において、
図4のステップS110と同様の処理を行う。つまり、制御装置22は、超音波プローブ10から超音波を送信させる。
【0056】
制御装置22は、ステップS211において、
図4のステップS111と同様の処理を行う。つまり、制御装置22は、超音波プローブ10によって受信された反射波に基づいて、体表面92から気管壁93までの距離を所定期間にわたって測定する。
【0057】
制御装置22は、ステップS212において、上記所定期間の開始時に測定された距離と、上記所定期間に測定された距離の最大値とを特定する。そして、特定部32は上記所定期間の開始時に測定された距離と、上記所定期間に測定された距離の最大値とに基づいて、距離の変化度合いを特定する。
【0058】
制御装置22は、ステップS213において、
図4のステップS113と同様の処理を行う。つまり、制御装置22は、ステップS212で特定された変化度合いに基づいて、声門91の閉鎖度合いを判別する。制御装置22は、判別した結果を出力部21から出力させる。また、制御装置22は、所定期間に測定された距離の経時的変化を示すグラフを表示器に表示させる。また、制御装置22は、所定期間の開始時に測定された距離、最大値、所定期間の開始時に測定された距離と最大値との差、所定期間の開始時に測定された距離と最大値との比率なども出力部21から出力させる。
【0059】
以上のように、第2実施形態の超音波診断装置1は、所定期間の開始時に測定された距離と、所定期間に測定された距離の最大値とに基づいて、変化度合いを特定する。このため、超音波診断装置1は、所定期間に測定された距離の最小値を特定しなくとも、距離の変化度合いを特定することができる。
【0060】
3.第3実施形態
第3実施形態では、第2実施形態とも異なる距離の変化度合いの特定方法について説明する。第3実施形態の構成は、制御装置22の動作を除き同じである。このため、第3実施形態では、
図1から
図3を用いて説明する。
【0061】
第3実施形態では、特定部32が、所定期間中において、現時点での最小値を基準値とし、基準値と測定される前記距離との差又は比率が閾値を超えたか否かを特定する。判別部33は、上記差又は上記比率が閾値を超えた場合に、声門91の閉鎖度合いを正常と判別する。判別部33は、上記差又は上記比率が閾値を超えずに所定期間が経過した場合に、声門91の閉鎖度合いが異常と判別する。
【0062】
第3実施形態の制御装置22は、開始操作が行われた場合に、
図6に示す処理を開始する。制御装置22は、ステップS310において、
図4のステップS110と同様の処理を行う。つまり、制御装置22は、超音波プローブ10から超音波を送信させる。
【0063】
制御装置22は、ステップS311において、超音波プローブ10によって受信された反射波に基づいて、体表面92から気管壁93までの距離を測定する。そして、制御装置22は、ステップS312において、所定期間における現時点での距離の最小値を特定し、基準値として設定する。
【0064】
制御装置22は、ステップS313において、ステップS312で設定された基準値と、直近に測定された距離との差又は比率を特定する。そして、制御装置22は、上記差又は上記比率が閾値を超えたか否かを判定する。
【0065】
制御装置22は、上記差又は上記比率が閾値を超えたと判定した場合(ステップS313にてYesの場合)、ステップS314において、声門91の閉鎖度合いが正常と判別する。制御装置22は、正常との判別結果を出力部21から出力させる。
【0066】
制御装置22は、上記差又は上記比率が閾値を超えていないと判定した場合(ステップS313にてNoの場合)、ステップS315において、所定期間が経過したか否かを判定する。
【0067】
制御装置22は、所定期間が経過していないと判定した場合(ステップS315にてNoの場合)、ステップS311の処理に戻る。つまり、制御装置22は、上記差又は上記比率が閾値を超えるか、あるいは、所定期間が経過するまで、ステップS311、S312、S313、S315の処理を繰り返す。具体的には、制御装置22は、体表面92から気管壁93までの距離を測定する処理(ステップS311)、測定値が現在の基準値よりも小さければ基準値を今回の測定値に更新する処理(ステップS312)、基準値と新たな測定値との差又は比率を特定する処理(ステップS313)、及び所定期間が経過したか否かを判定する処理(ステップS315)を繰り返す。
【0068】
制御装置22は、上記差又は上記比率が閾値を超えずに所定期間が経過した場合(ステップS315にてYesの場合)、ステップS316において、声門91の閉鎖度合いが異常と判別する。制御装置22は、異常との判別結果を出力部21から出力させる。
【0069】
以上のように、第3実施形態の超音波診断装置1は、所定期間中において、現時点での最小値を基準値とし、基準値と測定される距離との差又は比率が閾値を超えたか否かを特定する。このため、超音波診断装置1は、所定期間に測定された距離の最大値を特定しなくとも、距離の変化度合いを特定することができる。
【0070】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わされてもよい。
【0071】
(1)上記第3実施形態では、現時点での最小値を基準値とする構成であったが、所定期間の開始時に測定された距離を基準値としてもよい。
(2)上記第3実施形態では、閾値が1つであったが、閾値が複数であってもよい。
【0072】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 :超音波診断装置
10 :超音波プローブ
11 :装置本体
12 :ケーブル
20 :入力部
21 :出力部
22 :制御装置
30 :制御部
31 :測定部
32 :特定部
33 :判別部
34 :通知部
90 :被測定者
91 :声門
92 :体表面
93 :気管壁
94 :気道
95 :甲状軟骨
96 :輪状軟骨