(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076000
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】無停電電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
H02J9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187328
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】宮下 充
(72)【発明者】
【氏名】中西 良太
(72)【発明者】
【氏名】末廣 豊
【テーマコード(参考)】
5G015
【Fターム(参考)】
5G015FA10
5G015GA06
5G015HA17
5G015JA05
5G015KA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シンプルな構成で汎用性の高い無停電電源システムを提供する。
【解決手段】無停電電源システム100は、入力端子11、交流電圧から変換された直流電圧が供給される直流電力線DC、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ13、交流電圧を出力する出力端子16、インバータ13を介さずに入力端子11と出力端子16とを接続する個別バイパス線32及び交流電源の停電時に、個別バイパス線32を介した負荷Lへの給電を、蓄電装置101からインバータ13を介した負荷Lへの給電へと切り替える切替器17、をそれぞれが有し、負荷Lに並列に接続される複数のユニット10a、10bと、それぞれのユニット10a、10bの直流電力線DCに接続される蓄電装置101と、複数のユニット10a、10bの個別バイパス線32を介した負荷Lへの給電の経路それぞれに設けられる複数のインピーダンス部品20a、20bを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流電圧を負荷に供給する無停電電源システムであって、
入力端子、前記交流電圧から変換された直流電圧が供給される直流電力線、前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、前記交流電圧を出力する出力端子、前記インバータを介さずに前記入力端子と前記出力端子とを接続する個別バイパス線、および、前記交流電源の停電時に、前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電を、蓄電装置から前記インバータを介した前記負荷への給電へと切り替える切替器、をそれぞれが有し、前記負荷に並列に接続される複数のユニットと、
それぞれの前記ユニットの前記直流電力線に接続される前記蓄電装置と、
前記複数のユニットの前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電の経路それぞれに設けられる複数のインピーダンス部品と、を備える無停電電源システム。
【請求項2】
前記複数のインピーダンス部品は、複数のインダクタである、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記複数のインピーダンス部品は、前記複数のユニットそれぞれの前記入力端子の上流側に設けられる、請求項1または請求項2に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
前記複数のインピーダンス部品それぞれは、対応する前記個別バイパス線を介した前記経路の配線抵抗より高いインピーダンスを有する、前記請求項1または請求項2に記載の無停電電源システム。
【請求項5】
交流電源から入力される交流電圧を負荷に供給する無停電電源システムであって、
入力端子、前記交流電圧から変換された直流電圧が供給される直流電力線、前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、前記交流電圧を出力する出力端子、前記インバータを介さずに前記入力端子と前記出力端子とを接続する個別バイパス線、および、前記交流電源の停電時に、前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電を、蓄電装置から前記インバータを介した前記負荷への給電へと切り替える切替器、をそれぞれが有し、前記負荷に並列に接続される複数のユニットと、
それぞれの前記ユニットの前記直流電力線に接続される前記蓄電装置と、
前記複数のユニットの前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電の経路の電流をバランスさせる電流バランサーと、を備える無停電電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、無停電電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の無停電電源装置を直列接続して高電圧を出力できる無停電電源装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
瞬断(瞬時停電)が許容される負荷に対し、常時商用方式の無停電電源装置が従来用いられている。
【0005】
近年、自然災害の増加などを理由に、CCTV(Closed-Circuit Television)カメラや監視カメラといった、屋外設置される機器に対する長時間の電力バックアップが求められる傾向にある。そのようなニーズに対し、常時商用方式の無停電電源システムを適用または提案することが考えられる。
【0006】
無停電電源システムは、様々な出力容量、様々なバックアップ時間に柔軟に対応できることが望ましい。
【0007】
本発明の一態様は、シンプルな構成で汎用性の高い無停電電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る、交流電源から入力される交流電圧を負荷に供給する無停電電源システムは、入力端子、前記交流電圧から変換された直流電圧が供給される直流電力線、前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、前記交流電圧を出力する出力端子、前記インバータを介さずに前記入力端子と前記出力端子とを接続する個別バイパス線、および、前記交流電源の停電時に、前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電を、蓄電装置から前記インバータを介した前記負荷への給電へと切り替える切替器、をそれぞれが有し、前記負荷に並列に接続される複数のユニットと、それぞれの前記ユニットの前記直流電力線に接続される前記蓄電装置と、前記複数のユニットの前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電の経路それぞれに設けられる複数のインピーダンス部品と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、シンプルな構成で汎用性の高い無停電電源システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】無停電電源システムの概要を示すブロック図である。
【
図3】複数の経路の電流アンバランスを説明する等価回路図である。
【
図4】インピーダンス部品の配置位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、本発明の実施形態に係る無停電電源システムの、概要を説明する。
【0012】
(1)交流電源から入力される交流電圧を負荷に供給する無停電電源システムは、入力端子、前記交流電圧から変換された直流電圧が供給される直流電力線、前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、前記交流電圧を出力する出力端子、前記インバータを介さずに前記入力端子と前記出力端子とを接続する個別バイパス線、および、前記交流電源の停電時に、前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電を、蓄電装置から前記インバータを介した前記負荷への給電へと切り替える切替器、をそれぞれが有し、前記負荷に並列に接続される複数のユニットと、それぞれの前記ユニットの前記直流電力線に接続される前記蓄電装置と、前記複数のユニットの前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電の経路それぞれに設けられる複数のインピーダンス部品と、を備える。
【0013】
ここで、複数の経路に設けられる複数のインピーダンス部品は、実質的に同一のインピーダンス(Ω)を持つことが好ましい。インピーダンス部品は、受動部品であることが好ましい。
【0014】
同じ構成の、または実質的に同じ構成の複数のユニットを接続する構成(いわゆる、モジュラーデザイン)により、シンプルな構成で汎用性の高い無停電電源システムを提供できる。並列接続するユニットの数を変えることで、様々な出力容量に柔軟に対応できる。同じ構成の複数のユニットの採用により、部品調達性の向上、生産コスト低減といった量産効果が得られる。
【0015】
複数のユニットの個別バイパス線を介した負荷への給電の経路それぞれに、低コストのインピーダンス部品を設けることで、それら複数の経路の電流をバランスさせることができる。そのため、複数の経路で電流がアンバランスになって、大電流が流れる一部のユニットが過度に発熱することを防止できる。また、電流アンバランスを考慮に入れた設計(大電流を許容できる基板パターンや部品の選択)によって無停電電源システムが大型化することや、生産コストが上昇することを防止できる。各ユニットの外部または内部にスイッチ等の追加部品を設けなくても、電流アンバランスを抑制できるため、無停電電源システムの生産コストを低減できる。
【0016】
(2)上記(1)の無停電電源システムにおいて、前記複数のインピーダンス部品は、複数のインダクタであってもよい。
【0017】
交流回路においてインダクタは、有効電力を消費しないため損失を生じさせることがなく、インピーダンス(Z=ωL)を持つ。上記構成により、少ない損失で複数の経路の電流をバランスさせることができる。
【0018】
(3)上記(1)または(2)の無停電電源システムにおいて、前記複数のインピーダンス部品は、前記複数のユニットそれぞれの前記入力端子の上流側に設けられてもよい。
【0019】
上記構成により、インピーダンス部品を各ユニットの外部に配置することで、インピーダンス部品の発熱によってユニット内の温度が上昇することを抑制できる。
【0020】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの無停電電源システムにおいて、前記複数のインピーダンス部品それぞれは、対応する前記個別バイパス線を介した前記経路の配線抵抗より高いインピーダンスを有してもよい。
【0021】
上記構成により、複数の経路における配線抵抗のばらつきに起因する電流アンバランスを、効果的に低減できる。
【0022】
以下、図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。
図1は、無停電電源システム(以下、UPSシステムとも称する)100の前面を示す斜視図である。
【0023】
UPSシステム100は、複数のユニット10a、10bと、停電時にバックアップ電力を供給する蓄電池箱(蓄電装置の一例)101と、を備える。
図1に示すUPSシステム100は一例であり、この形態に限定はされない。本実施形態では、蓄電池箱101を用いているが、蓄電装置はそれに限定はされず、フライホイールまたはキャパシタを用いて構成されてもよい。
【0024】
蓄電池箱101は、筐体内に、複数の電池セルを直列および/または並列に接続した組電池を収納している。本実施形態では、複数のリチウムイオン電池セルを接続した組電池と、それら複数の電池セルを管理する電池管理システム(BMS)とを有する電池パックが、筐体内に収納されている。蓄電池の種類は、リチウムイオン電池に限定はされず、鉛蓄電池等の他の二次電池であってもよい。
【0025】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いため、電池による占有スペースを小さくでき、屋外設置される、または可搬型の、UPSシステムに適している。
リチウムイオン電池は、蓄電池箱101に収納されることに代えて、各ユニット10a、10bに内蔵されてもよい。
【0026】
図1の例では、複数のユニット10a、10b、および、蓄電池箱101は、それぞれ金属製の筐体を備えて、屋外設置が可能な防水性・対候性を有する。複数のユニット10a、10bは、それぞれが単独でも常時商用方式のUPSとして動作してもよい。複数のユニット10a、10bを並列に接続することで、UPSシステム100の出力容量を増加している。複数の蓄電池箱101を並列に接続することで、UPSシステム100の蓄電容量(バックアップ可能時間)を増加している。
【0027】
図1の例では、2台のユニット10a、10b、および、2台の蓄電池箱101は、上下方向に間隔をあけて配置されてそれぞれ水平方向に延びる第一金具102および第二金具103に、それらの筐体の背面が取り付けられている。
【0028】
ユニット10a、10bの台数、蓄電池箱101の台数は、2台に限定はされない。求められる出力容量に応じて、ユニット10a、10bの台数を増減し、求められるバックアップ時間に応じて、蓄電池箱101の台数を増減する。例えば、第一金具102および第二金具103の長さを延ばして、より多くのユニットまたは蓄電池箱101をそれら金具に取り付けることができる。こうすることで、コンパクトで組立性が良好、かつ統一感(バランス感)のある外観をもつUPSシステム100を提供できる。
【0029】
ユニット10a、10bおよび蓄電池箱101は、金属製の筐体に代えて合成樹脂等の絶縁材料からなる筐体を備えてもよい。ユニット10a、10bは、筐体を備えずに回路基板が露呈する構成であってもよい。
図1の例のように、ユニット10a、10bおよび蓄電池箱101それぞれが金属製の筐体を備えることにより、工場での取扱いや保管(在庫)が容易である、設置現場への運送が容易である、屋外設置がしやすい、破損しにくい、組立作業が容易である、といった利点が得られる。
【0030】
ユニット10a、10b、および、蓄電池箱(蓄電装置)は、屋外で水平方向に延びる金具に取り付けることに代えて、図示しないUPS盤、および、電池盤にそれぞれ収納されてもよいし、屋内に設置されてもよい。蓄電装置を電池盤に収納する場合、蓄電池箱101の金属製筐体は用いずに、電池パックを電池盤に収納してもよい。
【0031】
図1の例では、複数のユニット10a、10bは、筐体の底壁に複数の防水コネクタが設けられている。後述する、入力端子11、出力端子16、バッテリ接続端子Battは、筐体底壁のこれらの防水コネクタにより構成される。
図示しないが、蓄電池箱101も、筐体の底壁に複数の防水コネクタを有する。
【0032】
図2に示すように、UPSシステム100を構成する複数のユニット10a、10bは、同じ構成・部品を有する。複数のユニットそれぞれは、交流電源(図示せず)から端子台またはインレット(図示せず)を介して入力される交流電圧(交流電流AC)を受ける入力端子11、交流電圧から変換された直流電圧が供給される直流電力線DC、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ13、交流電圧を出力する出力端子16、および、インバータ13を介さずに入力端子11と出力端子16とを接続する個別バイパス線32を有する。
【0033】
本実施形態では、各ユニットに、入力端子11から入力された交流電圧を直流電圧に変換する充電器(整流器)CHG、充電器CHGの下流側に直流電力線DCを介して接続された絶縁型DC-DCコンバータ12、ユニットの各部を制御する制御基板14、制御基板14に制御電源を供給する電源15が設けられている。複数のユニットの出力端子16は、負荷Lに並列に接続されている。
充電器CHGは、各ユニットに設けることに代えて、蓄電池箱101や電池盤やUPS盤に備えられてもよい。
【0034】
各ユニットに、蓄電池箱101を接続するためのバッテリ接続端子Battが設けられている。バッテリ接続端子Battは、各ユニット内で図示しない配線を介して直流電力線DCに接続されている。
【0035】
各ユニットの、入力端子11の下流側、および、出力端子16の上流側にそれぞれ、ノイズフィルタNFが設けられている。
【0036】
各ユニットは、個別バイパス線32を介した負荷Lへの給電を、蓄電池箱101からインバータ13を介した給電へと切り替える切替器(第一切替器)17を有している。そのため各ユニットは、単独でも常時商用方式のUPSとして動作可能である。
【0037】
UPSシステム100を構成する複数のユニット10a、10bそれぞれの入力端子11の上流側の配線(UPSシステム100の入力端(端子台またはインレット)と入力端子11との間の配線)に、インピーダンス部品20a、20bが設けられている。本実施形態では、実質的に同一のインピーダンス(例えば、1Ω)を持つインダクタが、複数のユニット10a、10bの入力端子11の上流側に1個ずつ設けられている。
【0038】
UPSシステム100は、非停電時(平常時)は、商用電源などの交流電源からの交流電流ACを、並列に接続された複数のユニット10a、10bの個別バイパス線32、32を介した経路で負荷Lに供給する。交流電流ACは、並列に接続された各経路のインピーダンス部品20a(または20b)、ユニットの入力端子11、ノイズフィルタNF、切替器17、ノイズフィルタNF、および出力端子16を介して負荷Lへと流れる。
【0039】
各ユニットの制御基板14は、停電時(非常時)に、切替器17を切り替えてインバータ13と出力端子16とを接続するとともに、インバータ13を起動する。こうして、個別バイパス線32を介した負荷Lへの給電(バイパス給電)が、蓄電池箱101からインバータ13を介した負荷Lへの給電(インバータ給電)へと切り替えられる。
【0040】
図2の例では、各ユニットの制御電源15と入力端子11とを接続する交流電力線に第二切替器18が設けられている。各ユニットの制御基板14は、停電時に第二切替器18を切り替える(オープンする)ことで、ユニット10a、10b間に循環電流が生じることを防止する。
【0041】
図3を参照して、複数の経路における電流アンバランスと、インピーダンス部品による効果を説明する。
【0042】
図3(A)は、複数の経路にインピーダンス部品が無い場合の等価回路図である。
図2のユニット10a、10bにおける、個別バイパス線32を介した負荷Lへの給電経路の抵抗(配線抵抗)をRa、Rbで示す。ユニット10a、10bが同じ構成・部品を有していても、通常、配線抵抗Raと配線抵抗Rbは同一にはならない。これは、配線の長さをミリメートル単位で合わせてユニット10a、10bを量産することが難しいこと、個々のノイズフィルタNFは抵抗値にばらつきがあること、各ユニットの端子の接触抵抗にばらつきがあること等に起因する。こうした部品や製造上のばらつきのため、複数の経路における電流アンバランスが生じる。
【0043】
ユニット10aの配線抵抗Raが20mΩ、ユニット10bの配線抵抗Rbが30mΩである場合を考える。負荷Lに20アンペア(A)の電流を流すと、ユニット10aには12A(=30mΩ/(20mΩ+30mΩ)×20A)、ユニット10bには8A(=20mΩ/(20mΩ+30mΩ)×20A)が流れる。配線の抵抗値が低いほど、各配線の抵抗値をそろえること、ばらつきを抑えることは難しい。
【0044】
図3(B)は、複数の経路にインピーダンス部品としてのインダクタ20a、20bを設けた場合(配線抵抗と比べて大きな抵抗を追加した場合)の等価回路図である。これらインダクタ20a、20bはインピーダンスが小さくても、複数の経路の電流をバランスさせる効果を奏する。インダクタ20a、20bそれぞれは、対応する経路の配線抵抗より高い(数十倍から百倍程度の)インピーダンスを有していればよい。
【0045】
ユニット10aの配線抵抗Raが20mΩ、ユニット10bの配線抵抗Rbが30mΩ、インダクタ20a、20bそれぞれのインピーダンスが1Ωである場合を考える。負荷Lに20Aの電流を流すと、ユニット10aには式(1)のように10.05A、ユニット10bには式(2)のように9.95Aが流れ、電流はほぼバランスする。
1.03Ω/(1.02Ω+1.03Ω)×20A=10.05A ・・・式(1)
1.02Ω/(1.02Ω+1.03Ω)×20A=9.95A ・・・式(2)
【0046】
このように、複数のユニット10a、10bの個別バイパス線32を介した負荷Lへの給電の経路それぞれに、低コストのインダクタ20a、20bを設けることで、それら複数の経路の電流をバランスさせることができる。そのため、複数の経路で電流がアンバランスになって、大電流が流れる一部のユニットにおける部品(例えば、ノイズフィルタNF)が過度に発熱することを防止できる。また、電流アンバランスを考慮に入れた設計(大電流を許容できる基板パターンや部品の選択)を行う必要がないため、低コストかつ小型のユニット10a、10bを生産できる。各ユニットの外部または内部にスイッチ等の追加部品を設けなくても電流アンバランスを抑制できるため、UPSシステム100の生産コストを低減できる。
【0047】
インピーダンス部品としてインダクタ20a、20bを用いることにより、少ない損失で複数の経路の電流をバランスさせることができる。
インピーダンス部品は、インダクタに限定はされず、複数の経路のインピーダンスをほぼ一致させる機能を奏するものであればよい。
【0048】
インピーダンス部品を設ける位置は、
図4に示す、各ユニットの入力端子11の上流側(位置A)に限定はされない。インピーダンス部品は、入力端子11とノイズフィルタNFとの間(位置B)、ノイズフィルタNFの下流側(位置C)、ノイズフィルタNFと出力端子16との間(位置D)、または出力端子16の下流側(位置E)、に設けられてもよい。
【0049】
図1に示したように、ユニット10a、10bが、屋外設置が可能な密閉筐体を有する場合、放熱の観点から、入力端子11の上流側(位置A)または出力端子16の下流側(位置E)にインピーダンス部品を配置することが好ましい。
【0050】
インバータ13の下流側(位置D、位置E)にインピーダンス部品を配置すると、インバータ給電時(停電時)も電流がインピーダンス部品を流れることとなる。インバータ給電時は、インバータ13の制御によって電流のバランスを取ることができるため、インピーダンス部品は必要ない。
【0051】
そのため、入力端子11の上流側(位置A)にインピーダンス部品を設けることにより、少ない損失で複数の経路の電流をバランスさせることができる。
【0052】
上述した実施形態によれば、様々な出力容量に対応可能な、汎用性の高いUPSシステム100を提供できる。3キロワット(kW)から5kWの容量帯であったり、それ以外の容量帯であったり、UPSシステム100の適用範囲は広い。特に、適当な代替手段が存在しない容量帯(例えば、3kW未満の容量帯、5kW超の容量帯)へのニーズに対応できる。リチウムイオン電池の採用により、屋外での長時間バックアップへのニーズに対応できる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
複数のユニット10a、10bそれぞれが、単独で常時商用方式のUPSとして動作可能な例を示したが、その例に限定はされない。それぞれのユニットは、入力端子11、直流電力線DC、インバータ13、出力端子16、個別バイパス線32を備えていればよい。
【0054】
それぞれの給電経路に設けられるインピーダンス部品の数は1個に限定はされず、複数でもよい。
複数の蓄電装置101が、複数のユニット10a、10bそれぞれに設けられてもよいし、蓄電装置101がいずれかのユニットに設けられてもよい。
【0055】
UPSシステムは、以下のように構成されてもよい。
交流電源から入力される交流電圧を負荷に供給する無停電電源システムであって、
入力端子、前記交流電圧から変換された直流電圧が供給される直流電力線、前記直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、前記交流電圧を出力する出力端子、前記インバータを介さずに前記入力端子と前記出力端子とを接続する個別バイパス線、および、前記交流電源の停電時に、前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電を、蓄電装置から前記インバータを介した前記負荷への給電へと切り替える切替器、をそれぞれが有し、前記負荷に並列に接続される複数のユニットと、
それぞれの前記ユニットの前記直流電力線に接続される前記蓄電装置と、
前記複数のユニットの前記個別バイパス線を介した前記負荷への給電の経路の電流をバランスさせる電流バランサーと、を備える無停電電源システム。
【0056】
ここで、電流バランサーは、受動部品に限らず、能動部品であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 ユニット
11 入力端子
13 インバータ
16 出力端子
17 切替器
20a、20b インピーダンス部品
32 個別バイパス線
DC 直流電力線
L 負荷
100 UPSシステム(無停電電源システム)
101 蓄電池箱(蓄電装置)