(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076002
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】グレーチング固定金具
(51)【国際特許分類】
E04B 5/02 20060101AFI20240529BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20240529BHJP
E04G 7/34 20060101ALI20240529BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E04B5/02 J
E04G5/08 P
E04G7/34 305B
F16B5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187331
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】家久 侑大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 開道
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA02
3J001GB01
3J001HA04
3J001JB02
3J001KA12
3J001KA21
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】クロスバーを有さないベアリングバーのみのグレーチングを上方から固定する金具を提供する。
【解決手段】金具10は、FRPグレーチング100のベアリングバー上縁に係止する第1部材11と、ベアリングバーの間隔よりも狭い幅寸法を有する帯板からなり、一端領域42が支持材110の下縁に当接し、他端部44がベアリングバー下縁に当接し、一端領域42と他端部44との間の中央領域43が第1部材11に向かって膨出する形状である第2部材41と、第1部材11に形成される貫通孔、および第2部材41の中央領域43に形成されて第2部材41の長手方向に延びる長孔45、に通されるボルト21と、ボルト21に螺合して第1部材11および第2部材41を互いに緊結するナット31,32を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持材の上に敷設されるグレーチングを前記支持材に固定する金具であって、
前記グレーチングのベアリングバー上縁に係止する第1部材と、
前記ベアリングバーの間隔よりも狭い幅寸法を有する帯板からなり、一端が前記支持材の下縁に当接し、他端がベアリングバー下縁に当接し、前記一端と前記他端との間の中央領域が前記第1部材に向かって膨出する形状である第2部材と、
前記第1部材に形成される貫通孔、および前記第2部材の前記中央領域に形成されて前記第2部材の長手方向に延びる長孔に通されるボルトと、
前記ボルトに螺合して前記第1部材および前記第2部材を互いに緊結するナットとを備える、グレーチング固定金具。
【請求項2】
前記中央領域は、第2部材の帯幅方向にみて、所定半径の円弧である、請求項1に記載のグレーチング固定金具。
【請求項3】
前記第2部材のうち前記一端を含む一端領域が、前記他端を含む他端部よりも長い、請求項1に記載のグレーチング固定金具。
【請求項4】
前記一端領域および前記他端部は、それぞれ真っ直ぐに延び、前記一端領域が前記他端部よりも低い位置になる段違い形状である、請求項3に記載のグレーチング固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な形状のグレーチングを梁等の支持材に固定する金具に関する。
【背景技術】
【0002】
梁、あるいは他の支持材の上に敷設される汎用品のグレーチングに関し、上方からグレーチングの網目に差し込まれて該グレーチングを梁等に固定する金具として従来、特開2000-080714号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。
【0003】
汎用品のグレーチングは、縦材および横材として、ベアリングバーおよびクロスバーを具備する。ベアリングバーは、断面I字形状であり、グレーチングの主部材を構成する。
【0004】
クロスバーは、断面多角形の棒材をねじり形状とされ、ベアリングバーの断面積よりも十分に小さな断面積の副部材として、ベアリングバーの上縁と交差する。つまり、隣り合う2本ベアリングバーの間には、ベアリングバーの上縁を除けば、グレーチングの構成部材と何ら干渉しない細長空間が連続して延びている。
【0005】
特許文献1記載の金具が上方からグレーチングの網目に通されて、該グレーチングを支持材に固定する。かかる固定に際し、金具は若干傾いた姿勢にされるとクロスバー同士の間を通り抜けて、上述した細長空間に容易に差し込まれる。このように汎用品のグレーチングにあっては、金具のセットが容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のような金具にあっては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。つまり特許文献1の金具では、特殊な形状のグレーチング、例えばFRPグレーチング、を支持材に固定することができなかった。
【0008】
この理由として、金具をグレーチングの網目に上方から差し込んでセットするに際し、FRPグレーチング等のように縦材も横材もI字形状であると、上述した細長空間が画成されず、差し込み不可能であるためである。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑み、FRPグレーチングのように縦材および横材が断面I字形状であって上述した細長空間が形成されない特殊な形状のグレーチングであっても、上方から網目に差し込んでセット可能なグレーチング固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明によるグレーチング固定金具は、支持材の上に敷設されるグレーチングを支持材に固定する金具であって、グレーチングのベアリングバー上縁に係止する第1部材と、ベアリングバーの間隔よりも狭い幅寸法を有する帯板からなり、一端が支持材の下縁に当接し、他端がベアリングバー下縁に当接し、一端と他端との間の中央領域が第1部材に向かって膨出する形状である第2部材と、第1部材に形成される貫通孔、および第2部材の前記中央領域に形成されて第2部材の長手方向に延びる長孔に通されるボルトと、ボルトに螺合して第1部材および第2部材を互いに緊結するナットとを備える。
【0011】
かかる本発明によれば、第2部材が膨出形状の中央領域を中心として垂直姿勢ないし水平姿勢に変化することができる。したがって上述した細長空間を有さず、縦材のベアリングバーと横材のベアリングバーによって区画される網目が小さい場合であっても、垂直姿勢の第2部材を上方から網目に通し、次に第2部材を水平姿勢にしてベアリングバー下縁および支持材下縁に当接させることができる。なお本発明は、上面および下面を有するグレーチングの固定に際し、グレーチングの上方から下方に差し込まれてセットされるが、本発明のグレーチング固定金具は上下方向以外の方向にも使用可能である。
【0012】
本発明の一局面として第2部材の中央領域は、第2部材の帯幅方向にみて、所定半径の円弧である。かかる局面によれば、第2部材は円滑に姿勢を変化することができる。他の局面として第2部材の中央領域は、一方壁部と他方壁部と頂壁部のように3方向の壁部からなる凸状であってもよい。
【0013】
第2部材の中央領域からみて、一端までの長さおよび他端までの長さは限定されない。本発明の好ましい局面として、第2部材のうち一端を含む一端領域が、他端を含む他端部よりも長い。かかる局面によれば、一端領域が重く、他端部が軽くなることから、第2部材の垂直姿勢で一端領域が下になるとともに他端部が上になる。
【0014】
第2部材の一端領域および他端部の位置関係は特に限定されないが、本発明のさらに好ましい局面として、一端領域および他端部は、それぞれ真っ直ぐに延び、一端領域が他端部よりも低い位置になる段違い形状である。かかる局面によれば、比較的に厚みの大きな支持材であっても、一端領域が支持材の下縁に当接することができる。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明によれば、グレーチングの上方からグレーチング固定金具をセットすることによって、FRPグレーチングのような特殊な形状のグレーチングを支持材に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態になる金具を示す全体図である。
【
図2】同実施形態の金具を示す平面図および底面図である。
【
図4】同実施形態の金具をFRPグレーチングにセットする手順を示す図である。
【
図5】同実施形態の金具をFRPグレーチングにセットする手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になるグレーチング固定金具を示す全体図であって、(a)は正面図、(c)は背面図であり、(b)は一部の部材を断面とする右側面図である。なお図示しない左側面図は、(b)の右側面図と左右対称であると理解されたい。
図2は、
図1に対応する図であって、(a)が平面図、(b)が底面図である。本実施形態のグレーチング固定金具(以下、金具10という)は、第1部材11と、ボルト21と、ナット31,32と、第2部材41を備える。
【0018】
第1部材11は鋼製の板材を折曲形状にしたものであり、後述するFRPグレーチングのベアリングバー間隔よりも大きな長手方向寸法を有する。第1部材11の端部には、フック状の係止部12が形成される。係止部12は、下向きに開いた形状であって、詳しくは後述するが、
図3に示すグレーチング100の上縁に係止することができる。本実施形態では、第1部材11の両端がそれぞれ係止部12とされ、第1部材11の中央部には板厚方向に貫通する貫通孔13が形成される。
【0019】
ボルト21およびナット31は、第1部材11および第2部材41を連結する。ナット32は、ボルト21の首下部分に螺合する。
【0020】
第2部材41は、一定幅寸法の帯鋼を屈曲形状にしたものであり、一端領域42および他端部44で真直ぐあるいは略真直ぐに延びるが、中央領域43で第1部材11へ向かって膨出する形状である。本実施形態では、一端領域42が他端部44よりも長い。
図1に示すように第1部材11を水平姿勢で上側にし、第2部材41を吊下げた状態で、ボルト21は上下方向に延び、第2部材は下側で傾斜姿勢となり、一端領域42が他端部44よりも下方にされる。
【0021】
図1(b)に示すように、第2部材41の帯幅方向にみて中央領域43が丸いカーブを描くよう曲線とされる。より具体的には、所定半径の円弧形状とされる。また、一端領域42および他端部44の位置関係は、面一ではなく、段違い形状にされる。具体的には中央領域43が上方へ膨出する姿勢で、一端領域42が下段、他端部44が上段となる。
【0022】
ナット32は、ボルト21の頭部23と隣り合って配置される。頭部23およびナット32は半円状の中央領域43の中に収容される。
【0023】
図1(a)(c)を参照して、中央領域43には長孔45が形成される。長孔45は第2部材41の長手方向に延びる。長孔45には下方からボルト21が通される。ボルト21の軸部先端22は上向きとされ、さらに第1部材11の貫通孔13に通され、ナット31と螺合する。ナット32は、長孔45の幅よりも大きいため、長孔45で中央領域43に係止する。頭部23も同様である。またナット31は、貫通孔13の内径よりも大きいため、貫通孔13で第1部材11に係止する。これにより第2部材41は、ボルト21およびナット31で第1部材11に連結される。第1部材11および第2部材41は、ナット31,32の間で移動可能である。
【0024】
またボルト21は、第2部材41に対し、長孔45の長手方向に相対移動可能である。換言すると第2部材41は、上下方向に延びるボルト21に対して姿勢が変化することができ、水平姿勢ないし垂直姿勢をとることができる。
【0025】
図3は、金具10によって固定されるFRP(Fiber Reinforced Plastics)グレーチング100を示す平面図である。
図4および
図5は金具10をFRPグレーチング100にセットして固定する手順を時系列で示す模式図であり、側方からみた状態を表す。グレーチング100は、縦材101および横材102とも、等間隔に配列され、正方形の網目103を画成する。
図4を参照して、横材102はI型断面であり、縦材101も同様である。
【0026】
グレーチング100は、支持材110の上に敷設される。支持材110は、例えば梁としてのH形鋼のフランジである。支持材110は、一端領域42と他端部44の段差Dに対応する厚みを有する。
【0027】
まず
図4(a)を参照して、ナット31は緩め方向に回転させられて、ボルト21の軸部先端22まで移動される。これにより第2部材41は第1部材11から下方へ最も離れて吊下げられる。支持材110と隣り合って支持材110と重ならない網目103には、矢Aのように上方から金具10が挿入される。寸法Eは、第2部材41の輪郭が最も小さくなるときの寸法であり、第2部材41の長手方向にみて中央領域43の頂部から一端領域42までの寸法と理解されたい。
【0028】
段差Dを含む第2部材41の高さ寸法Eは、網目103よりも小さい。また第2部材41の帯幅寸法も網目103よりも小さい。このため第2部材41は垂直姿勢で次の
図4(b)に示すように網目103を通り抜けてグレーチング100よりも下方へ到達する。
【0029】
第1部材11が横材102の上縁に係止した状態で、金具10を矢Bにように支持材110から離れる方向へ水平移動させ、
図5(a)に示すように他端部44を横材102の下端に係止させる。
【0030】
次に矢Cで示すようにボルト21およびナット31を上方へ引き上げると、
図5(b)に示すように第2部材41が水平姿勢となり、一端領域42が支持材110の下面に当接する。また多角形のナット32が長孔45に係止して回動不能とされる。
【0031】
次に上段のナット31を把持して矢Dで示すようにボルト21を回転させ、ボルト21および下段のナット32間を相対回転させる。そうするとボルト21はナット32に対して下降する。これによりナット31およびナット32の距離が短くなり、FRPグレーチング100および支持材110は第1部材11および第2部材41間に挟圧される。そしてFRPグレーチング100は支持材110に固定される。
【0032】
ここで附言すると、上段のナット31は例えばフリクションリングナットであり(ねじの回転摩擦力がナット32よりも大きい)、下段のナット32は通常ナット(ねじの回転摩擦力がナット31よりも小さい)である。要するに本実施形態では、上段のナット31を回転させるとボルト21も共回りし易いが、下段のナット32はボルト21に対して相対回転し易い。下段のナット32は長孔45に係止したまま回転不能であるところ、ボルト21の回転によってボルト21の頭部23が下段のナット32から下方へ離れる。
【0033】
上述したように
図5(c)に示される金具10によるFRPグレーチング100固定完了後、ボルト21に対して相対回転し難い上段のナット31は緩み止め効果を発揮し、第1部材11は長年に亘って縦材101に係止する。
【0034】
ところで本実施形態の金具10は、FRPグレーチング100のように縦材101および横材102の双方がベアリングバーでありクロスバーを有さない特殊な形状のグレーチングを、上方から好適に固定することができる。
【0035】
すなわち第2部材41が、ベアリングバーである縦材101,101の間隔よりも狭い幅寸法を有する帯板からなり、第2部材41の一端領域42が支持材110の下面に当接し、他端部44がベアリングバーである横材102の下縁に当接し、第2部材41の中央領域43が第1部材11に向かって膨出する形状である。またボルト21が第1部材11に形成される貫通孔13、および第2部材41の中央領域43に形成されて第2部材41の長手方向に延びる長孔45に通される。これにより、FRPグレーチング100の上方から第2部材41を網目103に通し、かかる第2部材41をFRPグレーチング100の下縁および支持材110の下縁に配置することができる。そしてナット31およびボルト21を締め付け方向に相対回転させて、第1部材11および第2部材41を互いに緊結することにより、FRPグレーチング100を支持材110に固定することができる。
【0036】
また本実施形態の中央領域43は、
図4および
図5に示すように第2部材41の帯幅方向にみて、所定半径の円弧であることから、かかる円弧の中心を中心点として、第2部材41は垂直姿勢ないし水平姿勢に変化することができる。したがって第2部材41をFRPグレーチング100の上方から網目103に容易に差し込むことができる。
【0037】
また本実施形態によれば、一端領域42が他端部44よりも長いことから、第2部材41は垂直姿勢を維持することができ、十分な長さで支持材110に当接することができる。
【0038】
また本実施形態では、第2部材41の一端領域42および他端部44が真っ直ぐに延び、一端領域42が他端部44よりも低い位置になる段違い形状であることから、支持材110の厚みが比較的大きい場合であっても、支持材110の下縁に当接することができる。
【0039】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、建設材料において有利に利用される。
【符号の説明】
【0041】
10 グレーチング固定金具、 11 第1部材、 12 係止部、
13 貫通孔、 21 ボルト、 22 軸部先端、 23 頭部、
31,32 ナット、 41 第2部材、 42 一端領域、
43 中央領域、 44 他端部、 45 長孔。