(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076003
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】物標検出装置及び物標検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/89 20060101AFI20240529BHJP
G01S 13/06 20060101ALI20240529BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20240529BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S13/06
G01S17/894
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187332
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】矢野 邦哲
(72)【発明者】
【氏名】星 将広
【テーマコード(参考)】
5J070
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AC01
5J070AC06
5J070AC11
5J070AE01
5J070AE09
5J070AK15
5J084AA04
5J084AA07
5J084AA10
5J084AB01
5J084AB07
(57)【要約】
【課題】本開示は、測距センサの信号点群をクラスタリングする物標検出技術において、クラスタリングのクラスタ数が予め決められる必要がなく、クラスタリングの計算量が信号点群数に大きく依存することもなく、信号点群が複雑に分布する場合でも、高速にかつ正確に信号点群をクラスタリングすることを目的とする。
【解決手段】本開示は、測距センサ1の信号点座標内の信号点群をクラスタリングする物標検出装置2であって、信号点座標を複数のグリッドに量子化する信号点座標量子化部21と、信号点群が存在する信号点グリッドを抽出する信号点グリッド抽出部22と、互いに隣接する信号点グリッドに同一のラベルを付与するグリッドラベル付与部23と、同一のラベルが付与された信号点グリッドに存在する信号点群を、同一の物標としてクラスタリングするクラスタリング部24と、を備えることを特徴とする物標検出装置2である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距センサの信号点座標内の信号点群をクラスタリングする物標検出装置であって、
前記信号点座標を複数のグリッドに量子化する信号点座標量子化部と、
前記信号点群が存在する信号点グリッドを抽出する信号点グリッド抽出部と、
互いに隣接する前記信号点グリッドに同一のラベルを付与し、互いに隣接しない前記信号点グリッドに異なるラベルを付与するグリッドラベル付与部と、
前記同一のラベルが付与された前記信号点グリッドに存在する前記信号点群を、同一の物標としてクラスタリングし、前記異なるラベルが付与された前記信号点グリッドに存在する前記信号点群を、異なる物標としてクラスタリングするクラスタリング部と、
を備えることを特徴とする物標検出装置。
【請求項2】
前記信号点座標量子化部は、前記物標検出装置の検出対象の大きさに応じて、前記複数のグリッドの大きさを設定し、前記信号点座標を前記複数のグリッドに量子化する
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標検出装置。
【請求項3】
前記信号点座標量子化部は、前記物標検出装置の検出距離の遠近によらず、前記複数のグリッドの大きさを同一に設定し、前記信号点座標を前記複数のグリッドに量子化する
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標検出装置。
【請求項4】
前記信号点グリッド抽出部は、所定数以上の前記信号点群が存在する前記信号点グリッドを抽出し、前記所定数未満の前記信号点群が存在する前記信号点グリッドを破棄する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の物標検出装置。
【請求項5】
前記信号点グリッド抽出部は、前記所定数未満の前記信号点群が存在する前記信号点グリッド(以下は「少信号点グリッド」という)が互いに隣接するときでも、互いに隣接する前記少信号点グリッドの境界にまたがる新たなグリッドに前記所定数以上の前記信号点群が存在するときには、互いに隣接する前記少信号点グリッドに前記所定数以上の前記信号点群が存在するとみなし、互いに隣接する前記少信号点グリッドを破棄せず抽出する
ことを特徴とする、請求項4に記載の物標検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の物標検出装置が備える各処理部が実行する各処理ステップを、前記物標検出装置としてのコンピュータに順に実行させるための物標検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距センサの信号点群をクラスタリングする物標検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダセンサの信号点群をクラスタリングする物標検出技術が、特許文献1等に開示されている。クラスタリング技術として、k-meansクラスタリング及びDBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)が、非特許文献1等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】DBSCANクラスタリングの解説と実験、[online]、S-Analysis、[令和4年9月16日検索]、<URL:https://data-analysis-stats.jp/python/dbscan%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%81%A8%E5%AE%9F%E9%A8%93/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
k-meansクラスタリングでは、k個のクラスタの重心からの信号点群の距離に基づいて、信号点群をクラスタリングしている。しかし、信号点群が複雑に分布する場合(信号点群が円を描いて分布する中に、他の信号点群が存在する場合等)では、正確に信号点群をクラスタリングすることができない。そして、信号点群をいくつ(k個)のクラスタにクラスタリングするべきかを、予め決めておく必要がある。
【0006】
DBSCANでは、信号点群の密度に基づいて、具体的には、信号点群間の距離に基づいて、信号点群をクラスタリングしている。よって、信号点群が複雑に分布する場合(信号点群が円を描いて分布する中に、他の信号点群が存在する場合等)でも、正確に信号点群をクラスタリングすることができる。しかし、クラスタリングの計算量が、信号点群数の2乗のオーダーとなり、信号点群数が増加するほど増加する。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、測距センサの信号点群をクラスタリングする物標検出技術において、クラスタリングのクラスタ数が予め決められる必要がなく、クラスタリングの計算量が信号点群数に大きく依存することもなく、信号点群が複雑に分布する場合でも、高速にかつ正確に信号点群をクラスタリングすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、信号点座標を複数のグリッドに量子化し、信号点群が存在する信号点グリッドを抽出する。そして、互いに隣接する信号点グリッドに同一のラベルを付与し、同一のラベルが付与された信号点グリッドに存在する信号点群を、同一の物標としてクラスタリングする。一方で、互いに隣接しない信号点グリッドに異なるラベルを付与し、異なるラベルが付与された信号点グリッドに存在する信号点群を、異なる物標としてクラスタリングする。
【0009】
具体的には、本開示は、測距センサの信号点座標内の信号点群をクラスタリングする物標検出装置であって、前記信号点座標を複数のグリッドに量子化する信号点座標量子化部と、前記信号点群が存在する信号点グリッドを抽出する信号点グリッド抽出部と、互いに隣接する前記信号点グリッドに同一のラベルを付与し、互いに隣接しない前記信号点グリッドに異なるラベルを付与するグリッドラベル付与部と、前記同一のラベルが付与された前記信号点グリッドに存在する前記信号点群を、同一の物標としてクラスタリングし、前記異なるラベルが付与された前記信号点グリッドに存在する前記信号点群を、異なる物標としてクラスタリングするクラスタリング部と、を備えることを特徴とする物標検出装置である。
【0010】
この構成によれば、信号点座標の量子化グリッド数が予め決められるのみであり、クラスタリングのクラスタ数が予め決められる必要がない。そして、クラスタリングの計算量が量子化グリッド数に大きく依存するのみであり、クラスタリングの計算量が信号点群数(ビッグデータとなり得る)に大きく依存することもない。よって、信号点群が複雑に分布する場合でも、高速にかつ正確に信号点群をクラスタリングすることができる。
【0011】
また、本開示は、前記信号点座標量子化部は、前記物標検出装置の検出対象の大きさに応じて、前記複数のグリッドの大きさを設定し、前記信号点座標を前記複数のグリッドに量子化することを特徴とする物標検出装置である。
【0012】
量子化グリッドが大き過ぎれば、複数の小さい物標が同一視され得る。一方で、量子化グリッドが小さ過ぎれば、単一の大きい物標が分離され得る。この事実を考慮して、この構成によれば、測距センサの検出対象の大きさに応じて、量子化グリッドの大きさを設定することができる。
【0013】
また、本開示は、前記信号点座標量子化部は、前記物標検出装置の検出距離の遠近によらず、前記複数のグリッドの大きさを同一に設定し、前記信号点座標を前記複数のグリッドに量子化することを特徴とする物標検出装置である。
【0014】
同じ大きさの物標が測距センサから異なる距離に存在しても、これらの物標は信号点座標内に同じ大きさで表示される。この事実を考慮して、この構成によれば、測距センサの検出距離の遠近によらず、量子化グリッドの大きさを同一に設定することができる。
【0015】
また、本開示は、前記信号点グリッド抽出部は、所定数以上の前記信号点群が存在する前記信号点グリッドを抽出し、前記所定数未満の前記信号点群が存在する前記信号点グリッドを破棄することを特徴とする物標検出装置である。
【0016】
この構成によれば、多数の信号点群が存在する信号点グリッドをシグナルとして抽出し、少数の信号点群が存在する信号点グリッドをノイズとして破棄することができる。
【0017】
また、本開示は、前記信号点グリッド抽出部は、前記所定数未満の前記信号点群が存在する前記信号点グリッド(以下は「少信号点グリッド」という)が互いに隣接するときでも、互いに隣接する前記少信号点グリッドの境界にまたがる新たなグリッドに前記所定数以上の前記信号点群が存在するときには、互いに隣接する前記少信号点グリッドに前記所定数以上の前記信号点群が存在するとみなし、互いに隣接する前記少信号点グリッドを破棄せず抽出することを特徴とする物標検出装置である。
【0018】
複数の信号点群を有する物標が、元々の量子化グリッドを用いて、互いに隣接する少信号点グリッドに分割されると、ノイズとして破棄され得る。しかし、この構成によれば、複数の信号点群を有する物標が、元々の量子化グリッド及び新たな量子化グリッドを二重に用いて、ノイズとして破棄されることなくシグナルとして抽出されることができる。なお、新たな量子化グリッドが、元々の量子化グリッドと比べて、1回のみならず2回以上にわたって少しずつずらされたうえで、物標見逃し抑圧処理が、1段階のみならず2段階以上にわたって実行されることにより、シグナルがより確実に抽出されてもよい。
【0019】
また、本開示は、以上に記載の物標検出装置が備える各処理部が実行する各処理ステップを、前記物標検出装置としてのコンピュータに順に実行させるための物標検出プログラムである。
【0020】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0021】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本開示は、測距センサの信号点群をクラスタリングする物標検出技術において、クラスタリングのクラスタ数が予め決められる必要がなく、クラスタリングの計算量が信号点群数に大きく依存することもなく、信号点群が複雑に分布する場合でも、高速にかつ正確に信号点群をクラスタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の物標検出システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示のクラスタリング処理の手順を示す図である。
【
図3】本開示のクラスタリング処理の具体例を示す図である。
【
図4】本開示のクラスタリング処理の具体例を示す図である。
【
図5】本開示の信号点座標量子化処理の具体例を示す図である。
【
図6】本開示の信号点座標量子化処理の具体例を示す図である。
【
図7】本開示の物標見逃し抑圧処理の手順を示す図である。
【
図8】本開示の物標見逃し抑圧処理の具体例を示す図である。
【
図9】本開示の物標見逃し抑圧処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0025】
(本開示の物標検出システムの構成)
本開示の物標検出システムの構成を
図1に示す。物標検出システムSは、測距センサ1、物標検出装置2及び物標表示装置3を備える。物標検出装置2は、信号点座標量子化部21、信号点グリッド抽出部22、グリッドラベル付与部23及びクラスタリング部24を備える。物標検出装置2は、後述の
図2及び
図7に示す物標検出プログラムを、コンピュータにインストールすることにより実現することができる。
【0026】
測距センサ1は、レーダセンサ、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサ、TOF(Time Of Flight)カメラ又はソナーセンサ等である。物標検出装置2は、測距センサ1の信号点座標内(2次元又は3次元の座標内)の信号点群をクラスタリングする。物標表示装置3は、物標検出装置2の物標検出結果(物標の位置、動静及び速度等)を表示画面に表示する。
【0027】
物標検出装置2は、k-meansクラスタリング及びDBSCANに代えて、信号点座標量子化部21、信号点グリッド抽出部22、グリッドラベル付与部23及びクラスタリング部24を用いて、以下のように測距センサ1の信号点群をクラスタリングする。
【0028】
(本開示のクラスタリング処理の手順)
本開示のクラスタリング処理の手順を
図2に示す。本開示のクラスタリング処理の具体例を
図3及び
図4に示す。信号点座標量子化部21は、測距センサ1の信号点座標内の信号点群のデータを、測距センサ1から入力する。
図3の左上欄では、信号点群データD1において、XY座標の原点が測距センサ1の設置位置であり、X軸方向が測距センサ1から見た方位角方向であり、Y軸方向が測距センサ1から見た奥行き方向である。そして、XY座標内にn点(=13点)の信号点群が存在しており、ビッグデータとなり得る。
【0029】
信号点座標量子化部21は、グリッドの大きさのパラメータを入力したうえで、信号点座標を複数のグリッドに量子化する(ステップS1)。
図3の右上欄では、量子化グリッドデータD2において、X軸方向にm個(=5個)のグリッドが生成され、Y軸方向にm個(=5個)のグリッドが生成され、XY座標内にm
2個(=25個)のグリッドが生成される。そして、量子化グリッドデータD2の生成計算量は、1のオーダーである。なお、変形例として、量子化グリッドデータD2において、X軸方向にm個のグリッドが生成され、Y軸方向にn個(m個と同数であってもよく、m個と同数でなくてもよい。)のグリッドが生成され、XY座標内にmn個のグリッドが生成されてもよい。
【0030】
信号点グリッド抽出部22は、信号点群の最小閾値(=2)のパラメータを入力したうえで、信号点群が存在する信号点グリッドを抽出する(ステップS2)。
図3の左下欄では、信号点数データD3において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、グリッド(2、1)に“2”が付与され、グリッド(2、4)に“1”が付与され、グリッド(3、4)に“3”が付与され、グリッド(4、3)に“3”が付与され、グリッド(5、1)に“2”が付与され、グリッド(5、4)に“2”が付与される。そして、信号点数データD3の生成計算量は、n(=信号点群数)のオーダーである。
【0031】
信号点グリッド抽出部22は、最小閾値(=2)以上の信号点群が存在する信号点グリッドを抽出する(ステップS3、YES及びステップS4)。一方で、信号点グリッド抽出部22は、最小閾値(=2)未満の信号点群が存在する信号点グリッドを破棄する(ステップS3、NO及びステップS5)。
図3の右下欄及び
図4の左上欄では、抽出グリッドデータD4において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、グリッド(2、1)に“Y”が付与され、グリッド(2、4)に“N”が付与され、グリッド(3、4)に“Y”が付与され、グリッド(4、3)に“Y”が付与され、グリッド(5、1)に“Y”が付与され、グリッド(5、4)に“Y”が付与される。そして、抽出グリッドデータD4の生成計算量は、m
2(=各軸グリッド数
2)のオーダーである。
【0032】
なお、信号点グリッド抽出部22は、最小閾値(=2)未満の信号点群が存在する信号点グリッドを破棄するにあたり、
図7に示す物標見逃し抑圧処理を実行する。
【0033】
グリッドラベル付与部23は、互いに隣接する信号点グリッドに同一のラベルを付与する(ステップS6)。一方で、グリッドラベル付与部23は、互いに隣接しない信号点グリッドに異なるラベルを付与する(ステップS6)。ここで、「互いに隣接する」は、着目する信号点グリッドから見て、周囲の8近傍の全て又は上下左右の4近傍のみを指す。
図4の右上欄では、グリッドラベルデータD5において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、グリッド(2、1)に“A”が付与され、グリッド(3、4)に“B”が付与され、グリッド(4、3)に“B”が付与され、グリッド(5、1)に“C”が付与され、グリッド(5、4)に“B”が付与される。そして、グリッドラベルデータD5の生成計算量は、m
2(=各軸グリッド数
2)のオーダーである。
【0034】
クラスタリング部24は、同一のラベルが付与された信号点グリッドに存在する信号点群を、同一の物標としてクラスタリングする(ステップS7)。一方で、クラスタリング部24は、異なるラベルが付与された信号点グリッドに存在する信号点群を、異なる物標としてクラスタリングする(ステップS7)。
図4の左下欄では、ラベル参照データD6において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、“A”が付与されたグリッド(2、1)に2点の信号点群が存在し、“B”が付与されたグリッド(3、4)に3点の信号点群が存在し、“B”が付与されたグリッド(4、3)に3点の信号点群が存在し、“C”が付与されたグリッド(5、1)に2点の信号点群が存在し、“B”が付与されたグリッド(5、4)に2点の信号点群が存在し、“N”が付与されたグリッド(2、4)(既に破棄された信号点グリッド)に1点の信号点群が存在する。そして、ラベル参照データD6の生成計算量は、n(=信号点群数)のオーダーである。
【0035】
クラスタリング部24は、クラスタリングされた信号点群のデータを、物標表示装置3へと出力する。
図4の右下欄では、クラスタリングデータD7において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、“A”が付与されたグリッド(2、1)に存在する2点の信号点群に“A”が付与され、“B”が付与されたグリッド(3、4)、(4、3)、(5、4)に存在する8点の信号点群に“B”が付与され、“C”が付与されたグリッド(5、1)に存在する2点の信号点群に“C”が付与され、“N”が付与されたグリッド(2、4)(既に破棄された信号点グリッド)に存在する1点の信号点群が破棄される。そして、クラスタリングデータD7の生成計算量は、n(=信号点群数)のオーダーである。
【0036】
つまり、信号点座標の量子化グリッド数m2が予め決められるのみであり、クラスタリングのクラスタ数kが予め決められる必要がない。そして、クラスタリングの計算量が量子化グリッド数m2に大きく依存するのみであり、クラスタリングの計算量が信号点群数n(ビッグデータとなり得る)に大きく依存することもない。よって、信号点群が複雑に分布する場合でも、高速にかつ正確に信号点群をクラスタリングすることができる。
【0037】
さらに、多数(2以上等)の信号点群が存在する信号点グリッドをシグナルとして抽出し、少数(1以下等)の信号点群が存在する信号点グリッドをノイズとして破棄することができる。ただし、複数の信号点群を有する物標が、量子化グリッドデータD2を用いて、互いに隣接する少信号点グリッドに分割されると、ノイズとして破棄され得る。そこで、信号点グリッド抽出部22は、
図7に示す物標見逃し抑圧処理を実行する。その前に、信号点座標量子化部21は、
図5及び
図6に示す信号点座標量子化処理を実行する。
【0038】
(本開示の信号点座標量子化処理の具体例)
本開示の信号点座標量子化処理の具体例を
図5及び
図6に示す。信号点座標量子化部21は、物標検出装置2の検出対象の大きさに応じて、複数のグリッドの大きさを設定し、信号点座標を複数のグリッドに量子化する(ステップS1)。そして、信号点座標量子化部21は、物標検出装置2の検出距離の遠近によらず、複数のグリッドの大きさを同一に設定し、信号点座標を複数のグリッドに量子化する(ステップS1)。
【0039】
図5の左欄では、量子化グリッドデータD2において、検出対象である人間Pの大きさ(0.5m×0.5mの程度)に応じて、1個のグリッドの大きさが人間Pの大きさとほぼ等しく設定される。そこで、測距センサ1の信号点座標が全体で5m×5mのグラフであるとして、X軸方向にm個(=10個)のグリッドが生成され、Y軸方向にm個(=10個)のグリッドが生成され、XY座標内にm
2個(=100個)のグリッドが生成される。ここで、1個のグリッドが大き過ぎれば、複数の小さい人間Pが同一視され得るため、1個のグリッドが大き過ぎないようにすることが望ましい。
【0040】
図5の右欄では、量子化グリッドデータD2において、検出対象である自動車Vの大きさ(5m×5mの程度)に応じて、複数のグリッドを合わせた大きさが自動車Vの大きさとほぼ等しく設定される。そこで、測距センサ1の信号点座標が全体で5m×5mのグラフであるとして、X軸方向にm個(=5個)のグリッドが生成され、Y軸方向にm個(=5個)のグリッドが生成され、XY座標内にm
2個(=25個)のグリッドが生成される。ここで、1個のグリッドが小さ過ぎれば、単一の大きい自動車Vが分離され得るため、1個のグリッドが小さ過ぎないようにすることが望ましい。
【0041】
図6の左欄では、
図5の右欄に示した量子化グリッドデータD2において、自動車Vが検出対象となるのみならず、人間Pも検出対象となることができる。ここで、人間Pも検出対象となるときに、1個のグリッドが大き過ぎれば、複数の小さい人間Pが同一視され得るため、1個のグリッドが大き過ぎないようにすることが望ましい。
【0042】
図6の右欄では、
図5の左欄に示した量子化グリッドデータD2において、人間Pが検出対象となるのみならず、自動車Vも検出対象となることができる。ここで、自動車Vも検出対象となるときに、1個のグリッドが小さ過ぎれば、単一の大きい自動車Vが分離され得るため、1個のグリッドが小さ過ぎないようにすることが望ましい。
【0043】
つまり、量子化グリッドが大き過ぎれば、複数の小さい物標が同一視され得る。一方で、量子化グリッドが小さ過ぎれば、単一の大きい物標が分離され得る。この事実を考慮して、測距センサ1の検出対象の大きさに応じて、量子化グリッドの大きさを設定することができる。
【0044】
そして、同じ大きさの物標が測距センサ1から異なる距離に存在しても、これらの物標は信号点座標内に同じ大きさで表示される。この事実を考慮して、測距センサ1の検出距離の遠近によらず、量子化グリッドの大きさを同一に設定することができる。
【0045】
なお、レーダの変調方式、光信号の変調方式、カメラの焦点距離又は超音波の変調方式等に応じて、測距センサ1の距離分解能が決まる。そこで、測距センサ1の距離分解能が高いか/低いかに応じて、量子化グリッドを小さく/大きく設定することができる。
【0046】
(本開示の物標見逃し抑圧処理の手順)
本開示の物標見逃し抑圧処理の手順を
図7に示す。本開示の物標見逃し抑圧処理の具体例を
図8及び
図9に示す。信号点グリッド抽出部22は、最小閾値(=2)未満の信号点群が存在する信号点グリッド(以下は「少信号点グリッド」という)が互いに隣接するかどうかを判定する(ステップS11)。
図8の左欄では、信号点数データD3において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、2個の信号点群を有する1個の物標が、グリッド(2、3)の左下隅及びグリッド(3、3)の左上隅に分離し、グリッド(2、3)、(3、3)に“1”が付与される。
図9の左欄では、信号点数データD3において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、2個の信号点群を有する1個の物標が、グリッド(2、3)の下辺近傍及びグリッド(3、3)の上辺近傍に分離し、グリッド(2、3)、(3、3)に“1”が付与される。
【0047】
信号点グリッド抽出部22は、少信号点グリッドが互いに隣接するときに(ステップS11、YES)、互いに隣接する少信号点グリッドの境界にまたがる新たなグリッドを設定する(ステップS12)。
図8の中欄では、信号点数データD3’において、新たなグリッド(破線で示す)が、元々のグリッド(実線で示す)と比べて、X、Y軸方向ともにグリッドの大きさの半分だけずらされ、p’行目及びq’列目のグリッドをグリッド(p’、q’)として、2個の信号点群を有する1個の物標が、グリッド(3’、3’)の内部に存在し、グリッド(3’、3’)に“2”が付与される。
図9の中欄では、信号点数データD3’において、新たなグリッド(破線で示す)が、元々のグリッド(実線で示す)と比べて、Y軸方向のみにグリッドの大きさの半分だけずらされ、p’行目及びq’列目のグリッドをグリッド(p’、q’)として、2個の信号点群を有する1個の物標が、グリッド(3’、3’)の内部に存在し、グリッド(3’、3’)に“2”が付与される。
【0048】
信号点グリッド抽出部22は、少信号点グリッドの境界にまたがる新たなグリッドに最小閾値(=2)以上の信号点群が存在するときに(ステップS13、YES)、互いに隣接する少信号点グリッドに最小閾値(=2)以上の信号点群が存在するとみなす(ステップS14)。
図8の右欄では、信号点数データD3”において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、グリッド(2、3)、(3、3)に“1”に代えて“2”が付与されるとともに、物標見逃し抑圧処理をより確実に実行するために、グリッド(2、2)、(3、2)に“0”に代えて“2”が付与されてもよい。
図9の右欄では、信号点数データD3”において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、グリッド(2、3)、(3、3)に“1”に代えて“2”が付与される。
【0049】
信号点グリッド抽出部22は、少信号点グリッドの境界にまたがる新たなグリッドに最小閾値(=2)以上の信号点群が存在するときに(ステップS13、YES)、互いに隣接する少信号点グリッドを破棄せず抽出する(ステップS15)。
図8の右欄では、信号点数データD3”において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、グリッド(2、3)、(3、3)が破棄されず抽出され、2個の信号点群を有する1個の物標が破棄されず抽出される。
図9の右欄でも、信号点数データD3”において、p行目及びq列目のグリッドをグリッド(p、q)として、グリッド(2、3)、(3、3)が破棄されず抽出され、2個の信号点群を有する1個の物標が破棄されず抽出される。
【0050】
一方で、信号点グリッド抽出部22は、少信号点グリッドが互いに隣接しないときに(ステップS11、NO)、当該少信号点グリッドを破棄する(ステップS16、
図8及び
図9に不図示)。そして、信号点グリッド抽出部22は、少信号点グリッドの境界にまたがる新たなグリッドに最小閾値(=2)未満の信号点群が存在するときも(ステップS13、NO)、当該少信号点グリッドを破棄する(ステップS16、
図8及び
図9に不図示)。
【0051】
つまり、複数の信号点群を有する物標が、元々の量子化グリッドを用いて、互いに隣接する少信号点グリッドに分割されると、ノイズとして破棄され得る。しかし、複数の信号点群を有する物標が、元々の量子化グリッド及び新たな量子化グリッドを二重に用いて、ノイズとして破棄されることなくシグナルとして抽出されることができる。なお、新たな量子化グリッドが、元々の量子化グリッドと比べて、1回のみならず2回以上にわたって少しずつずらされたうえで、物標見逃し抑圧処理が、1段階のみならず2段階以上にわたって実行されることにより、シグナルがより確実に抽出されてもよい。
【0052】
なお、元々の量子化グリッド及び新たな量子化グリッドを二重に用いるときでも、元々の量子化グリッドのみを用いるときより、クラスタリングの計算量が数倍程度に増加するのみであり、クラスタリングの計算量が信号点群数nに大きく依存することはない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示の物標検出装置及び物標検出プログラムは、レーダセンサ、LiDARセンサ、TOFカメラ又はソナーセンサ等を、測距センサとして適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
S:物標検出システム
1:測距センサ
2:物標検出装置
3:物標表示装置
21:信号点座標量子化部
22:信号点グリッド抽出部
23:グリッドラベル付与部
24:クラスタリング部
D1:信号点群データ
D2:量子化グリッドデータ
D3、D3’、D3”:信号点数データ
D4:抽出グリッドデータ
D5:グリッドラベルデータ
D6:ラベル参照データ
D7:クラスタリングデータ
P:人間
V:自動車