(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007601
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】エアバッグ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2334 20110101AFI20240112BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20240112BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108769
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】早川 真司
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054CC08
3D054CC34
3D054CC42
3D054DD07
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】簡便な構造で障害物との干渉を回避することができる、エアバッグ及びエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置1は、通常時はインストルメントパネルI内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席Zに着座した乗員Mの前方に膨張展開するエアバッグ2と、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3と、エアバッグ2及びインフレータ3を保持するリテーナ4と、エアバッグ2を覆い隠すとともにインストルメントパネルIの一部を構成するエアバッグカバー5と、を備えている。エアバッグ2は、膨張展開されたエアバッグ2の側方に存在する障害物(例えば、ディスプレイD)と隣接する位置に、障害物の高さ方向に沿って形成された、エアバッグ2の膨張展開形状を制御する制御縫合部2aを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時は車両構造物内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、
膨張展開された前記エアバッグの側方に存在する障害物と隣接する位置に、前記障害物の高さ方向に沿って形成された、前記エアバッグの膨張展開形状を制御する制御縫合部を有する、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記制御縫合部は、前記エアバッグの膨張展開時に前記障害物と接触しないように構成されている、請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記エアバッグを構成するパネルは、前記車両構造物側に配置されるリアパネルと、前記乗員側に配置されるフロントパネルと、側面に配置されるサイドパネルと、を含み、前記制御縫合部は、前記リアパネルと前記サイドパネルとの縫合部によって構成される、請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記サイドパネルは、一枚のパネルにより構成されており、前記エアバッグの第一側面に配置される第一側面部と、前記エアバッグの第二側面に配置される第二側面部と、前記第一側面部と前記第二側面部とを連結し前記エアバッグの上部に配置される上面部と、を備えている、請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記サイドパネルは、複数のパネルにより構成されており、前記エアバッグの第一側面に配置される第一サイドパネルと、前記エアバッグの第二側面に配置される第二サイドパネルと、を含む請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記フロントパネルは、前記エアバッグの下面を形成する舌状部を含み、前記舌状部には、前記エアバッグにガスを供給するインフレータを接続する開口部が形成されている、請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項7】
前記フロントパネルは、前記エアバッグの下面を形成する第一舌状部と、前記エアバッグの上面を形成する第二舌状部と、を含み、前記第一舌状部には、前記エアバッグにガスを供給するインフレータを接続する開口部が形成されており、前記リアパネルは、複数のパネルにより構成されている、請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項8】
前記エアバッグを構成するパネルは、前記リアパネル、前記フロントパネル及び前記サイドパネルとは別に、前記エアバッグにガスを供給するインフレータを接続する開口部が形成されたベースパネルを含む、請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項9】
前記制御縫合部は、前記エアバッグを構成するパネルに形成された切欠部を縫合することによって構成されている、請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載されたエアバッグを備える、ことを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ及びエアバッグ装置に関し、特に、膨張展開されるエアバッグの周辺に障害物を有する車両に適したエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になってきている。かかるエアバッグ装置は、一般に、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するリテーナと、前記エアバッグを被覆するエアバッグカバーと、を備えている。
【0003】
近年の車両は、インストルメントパネルの中央部にナビゲーションシステムのディスプレイや空調設備のスイッチ等を装備したセンタークラスターが配置されていることが多い。かかるセンタークラスター(特に、ディスプレイ部分)は、インストルメントパネルに対して突出した形状を有していることが多く、エアバッグの膨張展開時に干渉しやすい。
【0004】
センタークラスターのように膨張展開されるエアバッグの周辺に障害物が存在する場合、エアバッグの膨張展開時の姿勢(例えば、向きや位置)が崩れてしまう場合がある。また、車両の衝突方向によっては、乗員がセンタークラスター等の障害物に向かって移動する場合もある。そこで、特許文献1や特許文献2に記載されたように、エアバッグと障害物との干渉を回避する対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-24478号公報
【特許文献2】特開2021-54180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明のように、ディスプレイの前面に膨張展開される第二エアバッグを設置したり、特許文献2に記載された発明のように、エアバッグの内部にテザーを配置したりした場合には、エアバッグの構造が複雑化するとともに重量の増加や折り畳み形状の大型化等の問題を生じる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、簡便な構造で障害物との干渉を回避することができる、エアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、通常時は車両構造物内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席に着座した乗員の前方に膨張展開するエアバッグにおいて、膨張展開された前記エアバッグの側方に存在する障害物と隣接する位置に、前記障害物の高さ方向に沿って形成された、前記エアバッグの膨張展開形状を制御する制御縫合部を有する、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0009】
前記制御縫合部は、前記エアバッグの膨張展開時に前記障害物と接触しないように構成されていてもよい。
【0010】
前記エアバッグを構成するパネルは、前記車両構造物側に配置されるリアパネルと、前記乗員側に配置されるフロントパネルと、側面に配置される部分を含むサイドパネルと、を含み、前記制御縫合部は、前記リアパネルと前記サイドパネルとの縫合部によって構成されていてもよい。
【0011】
前記サイドパネルは、一枚のパネルにより構成されており、前記エアバッグの第一側面に配置される第一側面部と、前記エアバッグの第二側面に配置される第二側面部と、前記第一側面部と前記第二側面部とを連結し前記エアバッグの上部に配置される上面部と、を備えていてもよい。
【0012】
前記サイドパネルは、複数のパネルにより構成されており、前記エアバッグの第一側面に配置される第一サイドパネルと、前記エアバッグの第二側面に配置される第二サイドパネルと、を含んでいてもよい。
【0013】
前記フロントパネルは、前記エアバッグの下面を形成する舌状部を含み、前記舌状部には、前記エアバッグにガスを供給するインフレータを接続する開口部が形成されていてもよい。
【0014】
前記フロントパネルは、前記エアバッグの下面を形成する第一舌状部と、前記エアバッグの上面を形成する第二舌状部と、を含み、前記第一舌状部には、前記エアバッグにガスを供給するインフレータを接続する開口部が形成されており、前記リアパネルは、複数のパネルにより構成されていてもよい。
【0015】
前記エアバッグを構成するパネルは、前記リアパネル、前記フロントパネル及び前記サイドパネルとは別に、前記エアバッグにガスを供給するインフレータを接続する開口部が形成されたベースパネルを含んでいてもよい。
【0016】
前記制御縫合部は、前記エアバッグを構成するパネルに形成された切欠部を縫合することによって構成されていてもよい。
【0017】
また、本発明によれば、上述したいずれかの構成を備える、ことを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係るエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、膨張展開されたエアバッグの側方に存在する障害物の高さ方向に沿って、エアバッグの膨張展開形状を制御する制御縫合部を形成したことにより、障害物と隣接する位置におけるエアバッグの膨張展開形状に凹部又は絞り部を形成することができ、簡便な構造で障害物との干渉を回避するようにエアバッグを膨張展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置を示す全体構成図である。
【
図2】
図1に示したエアバッグの膨張展開形状を示す上面図であり、(A)はエアバッグの第一側面に障害物を有する場合、(B)はエアバッグの第二側面に障害物を有する場合、を示している。
【
図3】第一実施形態に係るエアバッグの膨張展開形状を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示したエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【
図5】
図4に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【
図6】第二実施形態に係るエアバッグの膨張展開形状を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示したエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【
図8】
図7に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【
図9】第三実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【
図10】
図9に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【
図11】第四実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【
図12】
図11に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【
図13】第五実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【
図14】第六実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図14を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置を示す全体構成図である。
図2は、
図1に示したエアバッグの膨張展開形状を示す上面図であり、(A)はエアバッグの第一側面に障害物を有する場合、(B)はエアバッグの第二側面に障害物を有する場合、を示している。
【0021】
本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置1は、
図1に示すように、通常時はインストルメントパネルI内に折り畳まれて収容されており、緊急時にガスが供給されて車両の座席Zに着座した乗員Mの前方に膨張展開するエアバッグ2と、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3と、エアバッグ2及びインフレータ3を保持するリテーナ4と、エアバッグ2を覆い隠すとともにインストルメントパネルIの一部を構成するエアバッグカバー5と、を備えている。
【0022】
図1に示した車両は、インストルメントパネルIの中央部にセンタークラスターCを有している。センタークラスターCには、ナビゲーションシステム等に使用されるディスプレイDや空調設備のスイッチ等が装備される。なお、インストルメントパネルIは、エアバッグ2が配置される車両構造物の一例である。
【0023】
本実施形態における「障害物」とは、例えば、センタークラスターCやインストルメントパネルI等の車両構造物の内装に配置され、膨張展開されたエアバッグ2の側方に存在する突出した部分である。障害物の好適な一例はディスプレイDであるが、これに限定されるものではない。
【0024】
図1に示したエアバッグ装置1は、例えば、助手席用エアバッグ装置であり、エアバッグ2は、例えば、乗員M、ウインドシールドW及びインストルメントパネルIにより囲まれた空間に膨張展開される。なお、
図1~
図2(B)では、説明の便宜上、エアバッグ装置1以外の構成については一点鎖線で図示してある。また、
図1では、説明の便宜上、エアバッグ装置1の一部(エアバッグ2の一部、リテーナ4、エアバッグカバー5等)については断面図を図示してある。
【0025】
インフレータ3は、ガス噴出口がエアバッグ2内に挿入された状態でリテーナ4に固定される。インフレータ3は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御されている。ECUが車両の衝突や急減速等の緊急時を感知した場合には、インフレータ3の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ2にガスを供給する。インフレータ3は、ディスク型形状であってもよいし、円柱形状であってもよい。
【0026】
リテーナ4は、例えば、側面部に接続されたフックにより、エアバッグカバー5に係止されるとともに、接合部材を介してリインフォースメント6等の車両構造物に連結されている。リテーナ4には、例えば、バッグリングを介してエアバッグ2及びインフレータ3が固定される。なお、リテーナ4の構成は、図示した構成に限定されるものではない。
【0027】
エアバッグカバー5は、例えば、車両内装面を構成する板状部51と、板状部51の背面に配置されエアバッグ2の放出口を構成するインナーケース52と、を有している。インナーケース52上の板状部51には、エアバッグ2の膨張展開時に開裂可能に形成された扉部53が形成されている。エアバッグカバー5は、インストルメントパネルIに形成された開口部に嵌め込まれるように構成されていてもよいし、インストルメントパネルIと一体に形成されていてもよい。なお、エアバッグカバー5の構成は、図示した構成に限定されるものではない。
【0028】
エアバッグ2は、膨張展開されたエアバッグ2の側方に存在する障害物(例えば、ディスプレイD)と隣接する位置に、障害物の高さ方向に沿って形成された、エアバッグ2の膨張展開形状を制御する制御縫合部2aを有している。なお、
図1~
図2(B)では、説明の便宜上、エアバッグ2を構成するパネルの縫合部を点線で図示してある。
【0029】
図1に示したエアバッグ2を構成するパネルは、例えば、車両構造物(例えば、インストルメントパネルI)側に配置されるリアパネル21、乗員M側に配置されるフロントパネル22及び側面に配置される部分を含むサイドパネル23の三枚に分割された構成を有している。エアバッグ2は、リアパネル21とサイドパネル23を縫合する第一縫合部(制御縫合部2a)と、フロントパネル22とサイドパネル23を縫合する第二縫合部2bとにより袋状に形成される。
【0030】
また、エアバッグ2は、内圧を調整するベントホール2hを備えていてもよい。
図1ではリアパネル21にベントホール2hを配置した場合を図示しているが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、ベントホール2hはサイドパネル23に配置してもよいし、複数のベントホール2hを配置してもよい。
【0031】
制御縫合部2aは、
図1及び
図2(A)に示したように、膨張展開されたエアバッグ2の側方に存在する障害物(例えば、ディスプレイD)と隣接する位置に形成される。制御縫合部2aは、障害物の高さ方向、例えば、インストルメントパネルIからウインドシールドWに向かう方向に沿って形成される。
【0032】
なお、「高さ方向に沿って」とは、障害物の高さ方向と同じ方向だけでなく、障害物の高さ方向に対して-45°~+45°の範囲で傾斜した角度を有する場合を含む趣旨である。傾斜角度は、乗員M側に傾斜している場合を-(マイナス)に設定、インストルメントパネルI側に傾斜している場合を+(プラス)に設定している。
【0033】
制御縫合部2a(第一縫合部)を形成することにより、
図2(A)及び
図2(B)に示したように、障害物(例えば、ディスプレイD)に隣接した位置のエアバッグ2の膨張幅W1が規制される。このとき、制御縫合部2a(第一縫合部)は、エアバッグ2の膨張展開時に障害物(ディスプレイD)と接触しないように構成される。
【0034】
第二縫合部2bは、乗員Mの前方に膨張展開されるエアバッグ2の膨張幅W2を規制する。制御縫合部2a(第一縫合部)によるエアバッグ2の膨張幅W1は、第二縫合部2bによるエアバッグ2の膨張幅W2よりも小さくなるように設定される。
【0035】
かかる構成により、テザー等の他の構成部品を用いることなくエアバッグ2の膨張展開形状を制御することができ、膨張展開されたエアバッグ2に障害物(例えば、ディスプレイD)との接触を回避する凹部又は絞り部を容易に形成することができる。また、障害物(例えば、ディスプレイD)の前方にエアバッグ2を膨張展開させることができ、車両衝突時等の緊急時に乗員Mが障害物と衝突しないように乗員Mを拘束することもできる。
【0036】
ここで、
図2(A)は右ハンドル車の場合の構成を図示し、
図2(B)は左ハンドル車の場合の構成を図示している。エアバッグ2の膨張展開形状を左右対称に構成することにより、右ハンドル車及び左ハンドル車の何れにも対応させることができる。また、例えば、エアバッグ2の左右両側に障害物が存在する場合にも対応させることができる。このとき、障害物の位置や高さに応じて制御縫合部2a(第一縫合部)の左右の位置や傾斜角度を異ならせるようにしてもよい。
【0037】
次に、上述したエアバッグ2のパネル構成について、
図3~
図5(C)を参照しつつ説明する。ここで、
図3は、第一実施形態に係るエアバッグの膨張展開形状を示す斜視図である。
図4は、
図3に示したエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
図5は、
図4に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【0038】
図3は、
図1に示したエアバッグ2の斜視図である。また、
図3~
図5(C)において、ベントホール2hの図は省略してある。図示したように、エアバッグ2の下面には、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3を接続する開口部2gが形成されている。エアバッグ2を制御縫合部2a(第一縫合部)及び第二縫合部2bで縫合する前は、
図4に示したように、リアパネル21、フロントパネル22及びサイドパネル23に部品展開することができる。
【0039】
リアパネル21は、例えば、
図5(C)に示したように、略Y字形状の外形を有するパネルにより構成される。リアパネル21は、開口部2gを有する本体部21aと、本体部21aからフロントパネル22側に延出するように構成された第一凸部21bと、本体部21aから左右方向に延出するように構成された第二凸部21c及び第三凸部21dと、を備えている。
【0040】
第二凸部21cの内辺21e及び第三凸部21dの内辺21fは、本体部21aの第一辺21gに縫合される。また、第二凸部21cの端辺21h及び第三凸部21dの端辺21iは互いに縫合される。これらの縫合により、リアパネル21は
図4に示したように、片側が開放された略柱状体形状に構成される。また、リアパネル21は、フロントパネル22に縫合される第二辺21jと、サイドパネル23に縫合される第三辺21k及び第四辺21mと、を備えている。
【0041】
フロントパネル22は、例えば、
図5(A)に示したように、略多角形状を有するパネルにより構成される。フロントパネル22は、エアバッグ2の上面に配置される第一辺22aと、エアバッグ2の下面に配置される第二辺22bと、エアバッグ2の側面に配置される第三辺22c及び第四辺22dと、を備えている。フロントパネル22の第二辺22bは、リアパネル21の第二辺21jに縫合される。また、フロントパネル22の第一辺22a、第三辺22c及び第四辺22dは、サイドパネル23に縫合される。
【0042】
サイドパネル23は、例えば、
図5(B)に示したように、略三日月形状を有する一枚のパネルにより構成される。また、サイドパネル23は、エアバッグ2の第一側面に配置される第一側面部23aと、エアバッグ2の第二側面に配置される第二側面部23bと、第一側面部23aと第二側面部23bとを連結しエアバッグ2の上部に配置される上面部23cと、を備えている。
【0043】
サイドパネル23は、相対的に短い長さを有する湾曲した内辺23dと、相対的に長い長さを有する湾曲した外辺23eと、を備えている。サイドパネル23の内辺23dは、リアパネル21の第三辺21k及び第四辺21mに縫合される。また、サイドパネル23の外辺23eは、フロントパネル22の第一辺22a、第三辺22c及び第四辺22dに縫合される。
【0044】
上述した制御縫合部2a(第一縫合部)は、サイドパネル23の内辺23dとリアパネル21の第三辺21k及び第四辺21mとの縫合部により構成される。また、第二縫合部2bは、サイドパネル23の外辺23eとフロントパネル22の第一辺22a、第三辺22c及び第四辺22dとの縫合部により構成される。
【0045】
このように、エアバッグ2の膨張展開方向(車両の前後方向)に略垂直な平面における周長を制御縫合部2a(第一縫合部)及び第二縫合部2bにより段階的に異ならせることにより、
図2(A)に示したように、エアバッグ2の膨張幅W1,W2を規制してエアバッグ2の膨張展開形状を制御して、障害物(例えば、ディスプレイD)との接触を回避する凹部又は絞り部を容易に形成することができる。
【0046】
次に、本発明の第二実施形態に係るエアバッグ2について、
図6~8(C)を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、第二実施形態に係るエアバッグの膨張展開形状を示す斜視図である。
図7は、
図6に示したエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
図8は、
図7に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【0047】
図6は、縫合したエアバッグ2の斜視図であり、ベントホール2hの図は省略してある。図示したように、エアバッグ2の下面には、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3を接続する開口部2gが形成されている。エアバッグ2を制御縫合部2a(第一縫合部)及び第二縫合部2bで縫合する前は、
図7に示したように、リアパネル21、フロントパネル22及び一対のサイドパネル23に部品展開することができる。
【0048】
図6及び
図7に示したように、第二実施形態に係るエアバッグ2は、
図3及び
図4に示した第一実施形態に係るエアバッグ2に対して、フロントパネル22及びサイドパネル23の取り合い方法を変更したものである。
【0049】
リアパネル21は、例えば、
図8(C)に示したように、略Y字形状の外形を有するパネルにより構成される。リアパネル21の構成は、上述した第一実施形態と同じであるため詳細な説明を省略する。なお、リアパネル21の第三辺21k及び第四辺21mにより構成される縁部の一部(上部及び下部)はフロントパネル22に縫合され、リアパネル21の第三辺21k及び第四辺21mにより構成される縁部の一部はサイドパネル23に縫合される。
【0050】
フロントパネル22は、例えば、
図8(A)に示したように、エアバッグ2の上面に配置される第一辺22aと、エアバッグ2の下面に配置される第二辺22bと、エアバッグ2の側面に配置される第三辺22c及び第四辺22dと、を備えている。フロントパネル22は、第一実施形態に示したフロントパネル22に対して、エアバッグ2の上面に配置される部分がリアパネル21に届くように延出された凸部22eを有している。第一辺22aは凸部22eの端辺により構成される。
【0051】
サイドパネル23は、例えば、
図8(B)に示したように、左右一対の略半円形状を有するパネルにより構成されている。また、サイドパネル23は、エアバッグ2の第一側面に配置される第一側面23aを構成するパネルと、エアバッグ2の第二側面に配置される第二側面23bを構成するパネルと、を備えている。
【0052】
サイドパネル23は、相対的に短い長さを有する略直線形状の内辺23dと、相対的に長い長さを有する湾曲した外辺23eと、を備えている。サイドパネル23の内辺23dは、リアパネル21の第三辺21k及び第四辺21mに縫合される。また、サイドパネル23の外辺23eは、フロントパネル22の第三辺22c及び第四辺22dに縫合される。
【0053】
次に、本発明の第三実施形態に係るエアバッグ2について、
図9~10(C)を参照しつつ説明する。ここで、
図9は、第三実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
図10は、
図9に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【0054】
図9に示したように、第三実施形態に係るエアバッグ2は、
図7に示した第二実施形態に係るエアバッグ2に対して、エアバッグ2の下面の取り合い方法を変更したものである。具体的には、フロントパネル22は、エアバッグ2の下面を形成する舌状部22fを含み、舌状部22fには、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3を接続する開口部2gが形成されている。
【0055】
フロントパネル22は、例えば、
図10(A)に示したように、エアバッグ2の上面に配置され凸部22eの端辺により構成される第一辺22aと、エアバッグ2の下面に配置され舌状部22fの端辺により構成される第二辺22bと、エアバッグ2の側面に配置される第三辺22c及び第四辺22dと、舌状部22fの側辺により構成される第五辺22g及び第六辺22hと、を備えている。
【0056】
リアパネル21は、例えば、
図10(C)に示したように、略多角形状の外形を有するパネルにより構成される。リアパネル21は、フロントパネル22の第二辺22bに縫合される第一辺21nと、フロントパネル22の第一辺22aに縫合される第二辺21oと、サイドパネル23に縫合される第三辺21p及び第四辺21qと、フロントパネル22の第五辺22gに縫合される第五辺21rと、フロントパネル22の第六辺22hに縫合される第六辺21sと、を備えている。
【0057】
サイドパネル23は、例えば、
図10(B)に示したように、サイドパネル23の下側にフロントパネル22とリアパネル21との継目(縫合部)がないため、上述した第二実施形態に示したサイドパネル23の下側を丸く形成した形状を有するパネルにより構成される。サイドパネル23の内辺23dは、リアパネル21の第三辺21p及び第四辺21qに縫合される。
【0058】
次に、本発明の第四実施形態に係るエアバッグ2について、
図11~12(C)を参照しつつ説明する。ここで、
図11は、第四実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
図12は、
図11に示したエアバッグを構成するパネルの平面図であり、(A)はフロントパネル、(B)はサイドパネル、(C)はリアパネル、を示している。
【0059】
図11に示したように、第四実施形態に係るエアバッグ2は、
図9に示した第三実施形態に係るエアバッグ2に対して、エアバッグ2の上面の取り合い方法を変更したものである。具体的には、フロントパネル22は、エアバッグ2の下面を形成する第一舌状部22iと、エアバッグ2の上面を形成する第二舌状部22jと、を含み、第一舌状部22iには、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3を接続する開口部2gが形成されている。
【0060】
フロントパネル22は、例えば、
図12(A)に示したように、エアバッグ2の上面に配置され第二舌状部22jの端辺により構成される第一辺22aと、エアバッグ2の下面に配置され第一舌状部22iの端辺により構成される第二辺22bと、エアバッグ2の側面に配置される第三辺22c及び第四辺22dと、第一舌状部22iの側辺により構成される第五辺22g及び第六辺22hと、第二舌状部22jの側辺により構成される第七辺22k及び第八辺22mと、を備えている。
【0061】
本実施形態では、フロントパネル22の第一辺22aと第二辺22bとは、突き合わされて縫合され、エアバッグ2の上下方向を囲む環状に形成され、その側部にリアパネル21及びサイドパネル23が縫合される。なお、サイドパネル23については、上述した第三実施形態と同じ構成を有しているので詳細な説明を省略する。
【0062】
リアパネル21は、例えば、
図12(C)に示したように、略三角形状の外形を有する一対のパネルにより構成される。リアパネル21は、フロントパネル22の第一舌状部22iに縫合される第一辺21tと、フロントパネル22の第二舌状部22jに縫合される第二辺21uと、サイドパネル23に縫合される第三辺21vと、を備えている。
【0063】
図12(C)の左側に図示したリアパネル21において、第一辺21tはフロントパネル22の第五辺22gに縫合され、第二辺21uはフロントパネル22の第七辺22kに縫合される。また、
図12(C)の右側に図示したリアパネル21において、第一辺21tはフロントパネル22の第六辺22hに縫合され、第二辺21uはフロントパネル22の第八辺22mに縫合される。
【0064】
次に、本発明の第五実施形態に係るエアバッグ2について、
図13を参照しつつ説明する。ここで、
図13は、第五実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【0065】
図13に示したように、第五実施形態に係るエアバッグ2は、
図11に示した第四実施形態に係るエアバッグ2に対して、エアバッグ2の下面の取り合い方法を変更したものである。具体的には、エアバッグ2を構成するパネルは、リアパネル21、フロントパネル22及びサイドパネル23とは別に、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ3を接続する開口部2gが形成されたベースパネル24を備えている。
【0066】
ベースパネル24は、略四角形状の外形を有するパネルにより構成される。ベースパネル24は、フロントパネル22の第一辺22aに縫合される第一辺24aと、フロントパネル22の第二辺22bに縫合される第二辺24bと、リアパネル21の第一辺21tに縫合される第三辺24c及び第四辺24dと、を備えている。
【0067】
図示したベースパネル24は、
図11に示した第四実施形態におけるフロントパネル22の第一舌状部22iの一部を切り離したものと言い換えることもできる。また、図示しないが、ベースパネル24は、
図4に示した第一実施形態のリアパネル21の一部、
図7に示した第二実施形態のリアパネル21の一部又は
図9に示した第三実施形態のフロントパネル22の一部を切り離すことによって構成してもよい。
【0068】
次に、本発明の第六実施形態に係るエアバッグ2について、
図14を参照しつつ説明する。ここで、
図14は、第六実施形態に係るエアバッグを構成するパネルの部品展開形状を示す図である。
【0069】
上述した第一実施形態~第五実施形態では、制御縫合部2aをサイドパネル23とリアパネル21の縫合部により構成しているが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、リアパネル21又はサイドパネル23を一枚のパネルで構成し、その片側又は両側に切欠部を形成し、その切欠部を縫合することにより、制御縫合部2aを構成するようにしてもよい。
【0070】
例えば、
図14に示した第六実施形態は、
図11に示した第四実施形態に示した左右両側に配置されるリアパネル21及びサイドパネル23をそれぞれ一枚のサイドパネル25で構成したものである。サイドパネル25は、リアパネル21に相当する面を構成するリア側面部25aと、サイドパネル23に相当する面を構成するフロント側面部25bと、リア側面部25aとフロント側面部25bとの間に形成された切欠部25cと、を含む。
【0071】
リア側面部25aは、フロントパネル22の第一舌状部22i(第五辺22g又は第六辺22h)に縫合される第一辺25dと、フロントパネル22の第二舌状部22j(第七辺22k又は第八辺22m)に縫合される第二辺25eと、を含む。また、フロント側面部25bは、フロントパネル22の第三辺22c又は第四辺22dを含む湾曲部に縫合される第三辺25fを含む。
【0072】
切欠部25cは、リア側面部25aとフロント側面部25bとの間に形成された開口部であり、リア側面部25a側に配置された第四辺25gと、フロント側面部25b側に配置された第五辺25hと、を備えている。
【0073】
制御縫合部2aは、切欠部25cを構成する第四辺25g及び第五辺25hを縫合することによって構成される。切欠部25cは、周縁部の一部が切り離されていてもよいし、第四辺25g及び第六辺25hが連続するように、周縁部の一部が切り離されていない環状に構成されていてもよい。
【0074】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1 エアバッグ装置
2 エアバッグ
2a 制御縫合部(第一縫合部)
2b 第二縫合部
2g 開口部
2h ベントホール
3 インフレータ
4 リテーナ
5 エアバッグカバー
6 リインフォースメント
21 リアパネル
21a 本体部
21b 第一凸部
21c 第二凸部
21d 第三凸部
21e,21f 内辺
21g,21n,21t 第一辺
21h,21i 端辺
21j,21o,21u 第二辺
21k,21p,21v 第三辺
21m,21q 第四辺
21r 第五辺
21s 第六辺
22 フロントパネル
22a 第一辺
22b 第二辺
22c 第三辺
22d 第四辺
22e 凸部
22f 舌状部
22g 第五辺
22h 第六辺
22i 第一舌状部
22j 第二舌状部
22k 第七辺
22m 第八辺
23 サイドパネル
23a 第一側面部
23b 第二側面部
23c 上面部
23d 内辺
23e 外辺
24 ベースパネル
24a 第一辺
24b 第二辺
24c 第三辺
24d 第四辺
25 サイドパネル
25a リア側面部
25b フロント側面部
25c 第一辺
25d 第二辺
25e 第三辺
25f 第四辺
25g 第五辺
25h 第六辺
51 板状部
52 インナーケース
53 扉部