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特開2024-76020二酸化炭素固定方法、および、二酸化炭素固定装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076020
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定方法、および、二酸化炭素固定装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20240529BHJP
   C04B 12/04 20060101ALI20240529BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20240529BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B12/04
C04B40/02
C04B18/10 A
C04B18/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187355
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤山 類
(72)【発明者】
【氏名】根岸 孝次
(72)【発明者】
【氏名】並木 千晶
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真哉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA26
4G112PA29
4G112PE01
4G112PE07
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を効率的に固定化し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能な二酸化炭素固定方法等を提供する。
【解決手段】実施形態の二酸化炭素固定方法は、ジオポリマー材料を準備する準備ステップと、ジオポリマー材料を混練することによって混練物を作製する混練ステップと、混練物を容器に供給することによって充填物が充填される充填ステップと、充填物を養生することによってジオポリマー固化体を作製する養生ステップとを有する。準備ステップでは、ケイ素元素、アルミニウム元素、および、カルシウム元素を含む基材と、アルカリ刺激剤とをジオポリマー材料として準備する。そして、準備ステップと混練ステップと充填ステップと養生ステップとの少なくとも1つにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオポリマー材料を準備する準備ステップと、
前記ジオポリマー材料を混練することによって混練物を作製する混練ステップと、
前記混練物を容器に供給することによって充填物が充填される充填ステップと、
前記充填物を養生することによってジオポリマー固化体を作製する養生ステップと
を有し、
前記準備ステップでは、
ケイ素元素、アルミニウム元素、および、カルシウム元素を含む基材と、
アルカリ刺激剤と
を前記ジオポリマー材料として準備し、
前記準備ステップと前記混練ステップと前記充填ステップと前記養生ステップとの少なくとも1つにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する、
二酸化炭素固定方法。
【請求項2】
前記準備ステップにおいて前記固定化処理を実行することによって、前記基材と前記アルカリ刺激剤との少なくとも一方に二酸化炭素を固定化する、
請求項1に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項3】
前記基材は、スラグと石炭灰と焼却灰と汚泥灰との少なくとも1つである、
請求項2に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項4】
前記アルカリ刺激剤は、アルカリ金属塩が溶解されたアルカリ性水溶液である、
請求項2に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項5】
前記混練ステップにおいて前記固定化処理を実行することによって、前記ジオポリマー材料に二酸化炭素を固定化する、
請求項1に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項6】
前記充填ステップにおいて前記固定化処理を実行することによって、前記混練物に二酸化炭素を固定化する、
請求項1に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項7】
前記養生ステップにおいて前記固定化処理を実行することによって、前記充填物に二酸化炭素を固定化する、
請求項1に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項8】
ジオポリマー材料を準備する準備ステップと、
容器に供給された前記ジオポリマー材料を混練することによって充填物が充填される混練充填ステップと、
前記充填物を養生することによってジオポリマー固化体を作製する養生ステップと
を有し、
前記準備ステップでは、
ケイ素元素、アルミニウム元素、および、カルシウム元素を含む基材と、
アルカリ刺激剤と
を前記ジオポリマー材料として準備し、
前記準備ステップと前記混練充填ステップと前記養生ステップとの少なくとも1つにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する、
二酸化炭素固定方法。
【請求項9】
ジオポリマー材料を準備する準備部と、
前記ジオポリマー材料を混練することによって混練物を作製する混練部と、
前記混練物を容器に供給することによって充填物が充填される充填部と、
前記充填物を養生することによってジオポリマー固化体を作製する養生部と
を有し、
前記準備部では、
ケイ素元素、アルミニウム元素、および、カルシウム元素を含む基材と、
アルカリ刺激剤と
を前記ジオポリマー材料として準備し、
前記準備部と前記混練部と前記充填部と前記養生部との少なくとも1つにおいて、二酸化炭素の固定化処理を実行するように構成されている、
二酸化炭素固定装置。
【請求項10】
ジオポリマー材料を準備する準備部と、
容器に供給された前記ジオポリマー材料を混練することによって充填物が充填される混練充填部と、
前記充填物を養生することによってジオポリマー固化体を作製する養生部と
を有し、
前記準備部では、
ケイ素元素、アルミニウム元素、および、カルシウム元素を含む基材と、
アルカリ刺激剤と
を前記ジオポリマー材料として準備し、
前記準備部と前記混練充填部と前記養生部との少なくとも1つにおいて、二酸化炭素の固定化処理を実行するように構成されている、
二酸化炭素固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素固定方法、および、二酸化炭素固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動の対策のために、大気中の二酸化炭素濃度が上昇することを抑制する必要がある。
【0003】
このような要求に応えるために、二酸化炭素(CO)をセメントに固定化する技術等が提案されている。しかし、セメントを製造する工程(特に、クリンカの製造工程)で二酸化炭素が多量に発生するため、二酸化炭素の全排出量のうちの多くは、セメントの製造工程で生ずる二酸化炭素が占める(全排出量の8%)。このため、二酸化炭素の固定化のためにセメントを用いても、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制することは容易ではない。
【0004】
セメントの代替材料として、ジオポリマーが注目されている。ジオポリマーは、製造工程で排出される二酸化炭素の排出量が、セメントよりも少ない。ジオポリマーは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)などの元素で構成された非晶質の重合体であって、セメントと同様に、無機材料である。ジオポリマーは、ケイ素、アルミニウムなどの元素を含む基材(アルミノケイ酸塩等)と、アルカリ刺激剤とが、ジオポリマー材料(原料)として用いられ、基材とアルカリ刺激剤との間において縮重合反応が生じることによって、ジオポリマー固化体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4822373号
【特許文献2】特許第5504000号
【特許文献3】特許第6218119号
【特許文献4】特許第4649256号
【特許文献5】特開2021-54678号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Davidovits J.,Geopolymer Chemistry and Applications,2011-July,Institute Geopolymer.
【非特許文献2】国土交通省港湾局環境・技術課、港湾・空港等整備におけるリサイクル技術指針のとりまとめ,平成16年5月10日
【非特許文献3】平岡正勝、酒井伸一,ごみ焼却飛灰の性状と処理技術の展望平、廃棄物学会誌,Vol.5,No.1,pp.3-17,1994
【非特許文献4】太平洋セメント株式会社,都市ごみ焼却灰のセメント資源化,平成21年12月10日
【非特許文献5】田野崎隆雄他,日本の焼却灰の性状、無機マテリアル,Vol.5,Mar.149-158(1998)
【非特許文献6】高岡昌輝他,灰分組成と示差熱分析による焼却灰・飛灰の融点の推定,土木学会論文集No.727/VII-26,91-101,2003.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来においては、ジオポリマーを用いて二酸化炭素を効率的に固定化することが容易ではなく、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制することが困難であった。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、二酸化炭素を効率的に固定化し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能な、二酸化炭素固定方法、および、二酸化炭素固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の二酸化炭素固定方法は、ジオポリマー材料を準備する準備ステップと、ジオポリマー材料を混練することによって混練物を作製する混練ステップと、混練物を容器に供給することによって充填物が充填される充填ステップと、充填物を養生することによってジオポリマー固化体を作製する養生ステップとを有する。準備ステップでは、ケイ素元素、アルミニウム元素、および、カルシウム元素を含む基材と、アルカリ刺激剤とをジオポリマー材料として準備する。そして、準備ステップと混練ステップと充填ステップと養生ステップとの少なくとも1つにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二酸化炭素を効率的に固定化し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能な、二酸化炭素固定方法、および、二酸化炭素固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、第1実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
図1B図1Bは、第1実施形態に係る二酸化炭素固定装置1において、二酸化炭素固定化処理部110を模式的に示す図である。
図1C図1Cは、第1実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
図1D図1Dは、第1実施形態の変形例に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
図2A図2Aは、第2実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
図2B図2Bは、第2実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
図3A図3Aは、第3実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
図3B図3Bは、第3実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
図4A図4Aは、第4実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
図4B図4Bは、第4実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
図5A図5Aは、第5実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
図5B図5Bは、第5実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
[A]二酸化炭素固定装置1
図1Aは、第1実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
【0013】
図1Aに示すように、本実施形態の二酸化炭素固定装置1は、準備部10と混練部20と充填部30と養生部40とを有し、準備部10において二酸化炭素の固定化処理を実行するように構成されている。
【0014】
以下より、二酸化炭素固定装置1を構成する各部について順次説明する。
【0015】
[A-1]準備部10
準備部10は、図1Aに示すように、基材貯蔵部11とアルカリ刺激剤貯蔵部12と二酸化炭素固定化処理部110とを備え、ジオポリマー材料として基材M11とアルカリ刺激剤M12とを準備するために設けられている。
【0016】
[A-1-1]基材貯蔵部11
基材貯蔵部11は、基材M11を貯蔵するためのタンクを含む。
【0017】
基材M11は、ケイ素元素、アルミニウム元素、および、カルシウム元素を含む固化材である。基材M11は、廃棄物であることが好ましく、例えば、スラグと石炭灰と焼却灰と汚泥灰との少なくとも1つであることが好ましい。つまり、基材M11は、例えば、ケイ素化合物であるSiOと、アルミニウム化合物であるAlと、カルシウム化合物であるCaOと少なくとも含む混合物であることが好ましい。ここでは、基材M11は、SiOの割合が15~80mass%であり、Alの割合が5~30mass%であり、CaOの割合が1~80mass%であることが特に好ましい。
【0018】
[A-1-2]アルカリ刺激剤貯蔵部12
アルカリ刺激剤貯蔵部12は、アルカリ刺激剤M12を貯蔵するためのタンクを含む。
【0019】
アルカリ刺激剤M12は、例えば、アルカリ金属塩(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなど)を溶解したアルカリ性水溶液であることが好ましい。その他、アルカリ刺激剤M12は、ケイ酸塩(ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ルビジウム、ケイ酸セシウム)を溶解したアルカリ性水溶液であってもよい。
【0020】
[A-1-3]二酸化炭素固定化処理部110
二酸化炭素固定化処理部110は、基材M11に二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行するために設けられている。二酸化炭素固定化処理部110において二酸化炭素が固定化された基材M11は、基材貯蔵部11に供給され、貯蔵される。
【0021】
図1Bは、第1実施形態に係る二酸化炭素固定装置1において、二酸化炭素固定化処理部110を模式的に示す図である。
【0022】
図1Bに示すように、二酸化炭素固定化処理部110は、処理容器111と温度湿度調整部112とを有する。
【0023】
処理容器111は、密閉容器であって、処理対象である基材M11を内部空間に収容するように構成されている。処理容器111は、外部の二酸化炭素供給源120(二酸化炭素ボンベ等)から二酸化炭素ガスが内部空間に供給される。ここでは、二酸化炭素ガスは、湿度調整部121(ガス洗浄瓶等)によって湿度が予め定めた値になるように調整された状態で、処理容器111の内部空間に供給される。
【0024】
温度湿度調整部112は、例えば、エアコンディショナであって、処理容器111の内部空間の温度および湿度が予め定めた値になるように、調整するために設けられている。
【0025】
二酸化炭素固定化処理部110では、処理容器111の内部空間において、基材M11に二酸化炭素を固定化する固定化処理が実施される。固定化処理の実施により、二酸化炭素と、基材M11においてカルシウム元素を組成に含む化合物(CaO等)との間で反応が生ずる。例えば、固定化処理の実施により、炭酸カルシウム(CaCO)が生成される。これにより、基材M11に二酸化炭素が固定化された状態になる。
【0026】
[A-2]混練部20
混練部20は、図1Aに示すように、混練槽21と撹拌機22とを含み、ジオポリマー材料を混練することによって混練物M20を作製するために設けられている。
【0027】
混練槽21は、ジオポリマー材料として、基材貯蔵部11から基材M11が内部に供給され、アルカリ刺激剤貯蔵部12からアルカリ刺激剤M12が内部に供給される。そして、混練槽21では、撹拌機22を用いて基材M11とアルカリ刺激剤M12との混合物が混練され、混練物M20が作製される。混練物M20は、例えば、スラリーである。
【0028】
[A-3]充填部30
充填部30は、図1Aに示すように、充填台31を含み、充填物M30の充填を行うために設けられている。
【0029】
充填台31は、充填容器300が載置される。充填容器300は、たとえば、ドラム缶である。充填容器300は、ドラム缶の他に、モールド等でもよい。そして、その充填容器300に混練部20から混練物M20が供給されることによって、混練物M20が充填物M30として充填容器300に充填される。
【0030】
[A-4]養生部40
養生部40は、図1Aに示すように、養生室41を含み、充填物M30を養生することによってジオポリマー固化体M40を作製するために設けられている。
【0031】
養生室41は、例えば、複数の充填容器300を収容可能である。充填容器300に充填された充填物M30は、養生室41での養生によって、基材M11とアルカリ刺激剤M12との反応が進行し、ジオポリマー固化体M40が作製される。
【0032】
[B]二酸化炭素固定方法
図1Cは、第1実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
【0033】
上記の二酸化炭素固定装置1(図1A参照)を用いて、二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定方法に関して、図1Cを用いて説明する。
【0034】
図1Cに示すように、本実施形態の二酸化炭素固定方法では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)と養生ステップ(ST40)とを順次実行する。ここでは、準備ステップ(ST10)において、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する。各工程の詳細について順次説明する。
【0035】
[B-1]準備ステップ(ST10)
準備ステップ(ST10)では、上述したように、準備部10(図1A参照)において、基材貯蔵部11に基材M11を準備し、アルカリ刺激剤貯蔵部12においてアルカリ刺激剤M12を準備する。本実施形態では、二酸化炭素固定化処理部110において二酸化炭素の固定化処理が施された基材M11が基材貯蔵部11に準備される。
【0036】
[B-2]混練ステップ(ST20)
混練ステップ(ST20)では、上述したように、混練部20(図1A参照)において基材M11とアルカリ刺激剤M12とを含む混合物を混練することによって、混練物M20を作成する。
【0037】
[B-3]充填ステップ(ST30)
充填ステップ(ST30)では、上述したように、充填部30(図1A参照)において、充填物M30の充填を行う。
【0038】
[B-4]養生ステップ(ST40)
養生ステップ(ST40)では、上述したように、養生室41(図1A参照)において養生が行われ、基材M11とアルカリ刺激剤M12との反応が進行し、ジオポリマー固化体M40が作製される。
【0039】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、準備ステップ(ST10)において、ケイ素元素、アルミニウム元素の他に、カルシウム元素を組成に含む基材M11をジオポリマー材料として準備する。このとき、準備ステップ(ST10)では、二酸化炭素を固定化する固定化処理を基材M11に施す。これにより、本実施形態では、二酸化炭素と、基材M11においてカルシウム元素を組成に含む化合物(CaO等)との間で反応が生じ、基材M11に二酸化炭素が固定化された状態になる。したがって、本実施形態では、ジオポリマー材料を用いた場合であっても、二酸化炭素を効率的に固定化することができるので、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能である。
【0040】
[D]実施例
以下より、上記実施形態の実施例および比較例について、表1を用いて説明する。
【0041】
表1において、(例1)から(例3)は、実施例に相当し、(例C1)は、比較例に相当する。つまり、(例1)から(例3)では、基材M11は、ケイ素元素とアルミニウム元素との他に、カルシウム元素を組成に含む。これに対して、(例C1)では、基材M11は、ケイ素元素とアルミニウム元素とを組成に含むが、カルシウム元素を組成に含まない。
【0042】
【表1】
【0043】
[1]ジオポリマー固化体の形成
各例においてジオポリマー固化体M40を作製した手順について、順次、説明する。
【0044】
(例1)
(例1)では、まず、表に示すように、ジオポリマー材料として、二酸化炭素の固定化処理が施された基材M11とアルカリ刺激剤M12とを準備した。具体的には、基材M11として、高炉スラグと石炭灰とを準備し、アルカリ刺激剤M12として、KOH(水酸化カリウム)を準備した。この他に、水を準備した。
【0045】
二酸化炭素の固定化処理を実行する際には、基材M11が収容されたデシケータの内部にCOガスを導入した。ここでは、デシケータの内部は、温度が常温(23℃)であって、湿度が90%以上の状態に維持した。COガスは、COガスボンベから流量計とガス洗浄瓶とを介してデシケータの内部に導入された。これにより、COガスは、飽和水蒸気量の水蒸気を含む状態でデシケータの内部に導入された。
【0046】
つぎに、基材M11とアルカリ刺激剤M12とを含む混合物を混練することによって、混練物M20を作成した。ここでは、表に示す配合割合で各材料の混合物を作製し、混練した(高炉スラグと石炭灰との重量比が、4:6)。
【0047】
つぎに、混練物M20をモールド(充填容器300に相当)に充填し、その充填された充填物M30について養生を行った(養生期間:2週間)。このようにして、本例のジオポリマー固化体M40を作製した。
【0048】
(例2),(例3),(例C1)
(例2),(例3),(例C1)では、表に示すように、ジオポリマー材料の配合が(例1)の場合と異なる。
【0049】
具体的には、(例2)および(例3)では、(例1)と同様に、基材M11として、高炉スラグと石炭灰とを準備し、アルカリ刺激剤M12として、KOH(水酸化カリウム)を準備し、表に示す配合割合で各材料の混合物を作製し、混練した((例2)は、高炉スラグと石炭灰との重量比が、5:5。(例3)は、高炉スラグと石炭灰との重量比が、6:4))。
【0050】
これに対して、(例C1)では、基材M11として、メタカオリンとSiO(シリカ)を準備し、アルカリ刺激剤M12として、KSiO水溶液(濃度30重量%)を準備し、表に示す配合割合で各材料の混合物を作製し、混練した。
【0051】
この点を除き、(例2),(例3),(例C1)では、(例1)の場合と同様に、ジオポリマー固化体M40の作製を行った。
【0052】
[2]評価結果
表に示すように、各例について、二酸化炭素固定化量と一軸圧縮強度とを求めた。
【0053】
[2-1]二酸化炭素固定化量
二酸化炭素固定化量の算出は、二酸化炭素の固定化処理を実施前の炭素量と実施後の炭素量との差分値に基づいて、実施した。
【0054】
二酸化炭素固定化量は、表に示すように、カルシウム元素を含む基材M11を用いた(例1)から(例3)が、カルシウム元素を含まない基材M11を用いた(例C1)よりも著しく多かった。
【0055】
[2-2]一軸圧縮強度
一軸圧縮強度は、50mmΦ×100mmの供試体を用いて実施した。
【0056】
一軸圧縮強度は、表に示すように、(例1)から(例3)のいずれも、(例C1)と同等であり、実用上の問題がないことが確認された。
【0057】
[E]変形例
上記の実施形態では、ジオポリマー材料のうち、基材M11に二酸化炭素を固定化する固定化処理を実施する場合について説明したが、これに限らない。
【0058】
図1Dは、第1実施形態の変形例に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。
【0059】
図1Dに示すように、基材M11の他に、アルカリ刺激剤M12に二酸化炭素を固定化する固定化処理を実施してもよい。
【0060】
具体的には、アルカリ刺激剤貯蔵部12が貯蔵するアルカリ刺激剤M12に二酸化炭素ガスを導入することによって、固定化処理が実行される。例えば、アルカリ刺激剤M12が水酸化カリウム水溶液である場合には、二酸化炭素ガスの導入によって、水酸化カリウムと二酸化炭素との間において反応が生じ、炭酸カリウムが生成される。
【0061】
図示を省略しているが、基材M11に二酸化炭素を固定化する固定化処理を実施せずに、アルカリ刺激剤M12に二酸化炭素を固定化する固定化処理を実施してもよい。すなわち、本実施形態では、基材M11とアルカリ刺激剤M12との少なくとも一つに二酸化炭素を固定化してもよい。
【0062】
<第2実施形態>
[A]二酸化炭素固定装置1
図2Aは、第2実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。図2Bは、第2実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
【0063】
図2Aに示すように、本実施形態では、準備部10において二酸化炭素の固定化処理を実行する他に、第1実施形態の場合(図1A参照)と異なり、混練部20においても二酸化炭素の固定化処理を実行するように、二酸化炭素固定装置1が構成されている。つまり、本実施形態では、図2Bに示すように、準備ステップ(ST10)において二酸化炭素の固定化処理を実行する他に、混練ステップ(ST20)においても二酸化炭素の固定化処理を実行する。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0064】
図2Aに示すように、本実施形態の二酸化炭素固定装置1では、混練部20においても二酸化炭素の固定化処理を実行するために、混練槽21の内部に二酸化炭素ガスを導入するように構成されている。
【0065】
混練槽21の内部に二酸化炭素ガスを導入することで、例えば、二酸化炭素と、基材M11において二酸化炭素の固定化が実行されていないカルシウム化合物(CaO等)との間で反応が生じ、二酸化炭素の固定化処理が実行される。また、アルカリ刺激剤M12と二酸化炭素との間で反応が生じ、二酸化炭素の固定化処理が実行される。
【0066】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、準備ステップ(ST10)および混練ステップ(ST20)において、二酸化炭素を固定化する固定化処理が実行される。したがって、本実施形態では、ジオポリマー材料を用いた場合であっても、二酸化炭素を効率的に固定化することができるので、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能である。
【0067】
[C]変形例
上記の実施形態では、準備ステップ(ST10)および混練ステップ(ST20)において、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する場合について説明したが、これに限らない。準備ステップ(ST10)で二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行せずに、混練ステップ(ST20)において二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行してもよい。すなわち、本実施形態の二酸化炭素固定方法では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)との少なくとも一つにおいて、二酸化炭素を固定化してもよい。
【0068】
<第3実施形態>
[A]二酸化炭素固定装置1
図3Aは、第3実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。図3Bは、第3実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
【0069】
図3Aに示すように、本実施形態では、準備部10および混練部20において二酸化炭素の固定化処理を実行する他に、第2実施形態の場合(図2A参照)と異なり、充填部30においても二酸化炭素の固定化処理を実行するように、二酸化炭素固定装置1が構成されている。つまり、本実施形態では、図3Bに示すように、準備ステップ(ST10)および混練ステップ(ST20)において二酸化炭素の固定化処理を実行する他に、充填ステップ(ST30)においても二酸化炭素の固定化処理を実行する。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0070】
図3Aに示すように、本実施形態の二酸化炭素固定装置1では、充填部30においても二酸化炭素の固定化処理を実行するために、例えば、充填台31に載置された充填容器300の内部に二酸化炭素ガスを導入するように構成されている。
【0071】
充填容器300の内部に二酸化炭素ガスを導入することで、例えば、二酸化炭素と、基材M11において二酸化炭素の固定化が実行されていないカルシウム化合物(CaO等)との間で反応が生じ、二酸化炭素の固定化処理が実行される。また、アルカリ刺激剤M12と二酸化炭素との間で反応が生じ、二酸化炭素の固定化処理が実行される。
【0072】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)とにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理が実行される。したがって、本実施形態では、ジオポリマー材料を用いた場合であっても、二酸化炭素を効率的に固定化することができるので、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能である。
【0073】
[C]変形例
上記の実施形態では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)とにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する場合について説明したが、これに限らない。準備ステップ(ST10)および混練ステップ(ST20)で二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行せずに、充填ステップ(ST30)において二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行してもよい。すなわち、本実施形態の二酸化炭素固定方法では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)との少なくとも一つにおいて、二酸化炭素を固定化してもよい。
【0074】
<第4実施形態>
[A]二酸化炭素固定装置1
図4Aは、第4実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。図4Bは、第4実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
【0075】
図4Aに示すように、本実施形態では、準備部10と混練部20と充填部30とにおいて二酸化炭素の固定化処理を実行する他に、第3実施形態の場合(図3A参照)と異なり、養生部40においても二酸化炭素の固定化処理を実行するように、二酸化炭素固定装置1が構成されている。つまり、本実施形態では、図4Bに示すように、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)とにおいて二酸化炭素の固定化処理を実行する他に、養生ステップ(ST40)においても二酸化炭素の固定化処理を実行する。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0076】
図4Aに示すように、本実施形態の二酸化炭素固定装置1では、養生部40においても二酸化炭素の固定化処理を実行するために、例えば、充填容器300が収容された養生室41の内部に二酸化炭素ガスを導入するように構成されている。
【0077】
養生室41の内部に二酸化炭素ガスを導入することで、例えば、二酸化炭素と、基材M11において二酸化炭素の固定化が実行されていないカルシウム化合物(CaO等)との間で反応が生じ、二酸化炭素の固定化処理が実行される。また、アルカリ刺激剤M12と二酸化炭素との間で反応が生じ、二酸化炭素の固定化処理が実行される。
【0078】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)と養生ステップ(ST40)とにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理が実行される。したがって、本実施形態では、ジオポリマー材料を用いた場合であっても、二酸化炭素を効率的に固定化することができるので、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能である。
【0079】
[C]変形例
上記の実施形態では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)と養生ステップ(ST40)とにおいて、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する場合について説明したが、これに限らない。準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)とにおいて二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行せずに、養生ステップ(ST40)において二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行してもよい。すなわち、本実施形態の二酸化炭素固定方法では、準備ステップ(ST10)と混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)と養生ステップ(ST40)との少なくとも一つにおいて、二酸化炭素を固定化してもよい。
【0080】
<第5実施形態>
[A]二酸化炭素固定装置1
図5Aは、第5実施形態に係る二酸化炭素固定装置1を模式的に示す図である。図5Bは、第5実施形態に係る二酸化炭素固定方法を示すフロー図である。
【0081】
図5Aに示すように、本実施形態の二酸化炭素固定装置1は、第1実施形態(図1A参照)の場合と同様に、準備部10において二酸化炭素の固定化処理を実行するように構成されている。つまり、本実施形態の二酸化炭素固定方法は、図5Bに示すように、第1実施形態(図1C参照)の場合と同様に、準備ステップ(ST10)において二酸化炭素の固定化処理を実行する。
【0082】
しかし、本実施形態の二酸化炭素固定装置1は、図5Aに示すように、第1実施形態(図1A参照)の二酸化炭素固定装置1を構成する混練部20と充填部30とに代わって、混練充填部30bが設けられている。つまり、本実施形態の二酸化炭素固定方法は、図5Bに示すように、第1実施形態(図1C参照)における混練ステップ(ST20)と充填ステップ(ST30)とに代わって、混練充填ステップ(ST30b)を有する。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0083】
本実施形態の二酸化炭素固定装置1において、混練充填部30bは、図5Aに示すように、充填台31bと撹拌機32bとを含み、充填容器300に供給されたジオポリマー材料を混練することによって充填物M30の充填を行うために設けられている(混練充填ステップ(ST30b))。
【0084】
混練充填部30bにおいて、充填台31bは、充填容器300が載置される。充填容器300は、たとえば、ドラム缶である。充填容器300は、ドラム缶の他に、モールド等でもよい。そして、充填容器300は、ジオポリマー材料として、基材貯蔵部11から基材M11が内部に供給され、アルカリ刺激剤貯蔵部12からアルカリ刺激剤M12が内部に供給される。
【0085】
本実施形態では、二酸化炭素の固定化処理が施された基材M11が混練充填部30bに供給される。
【0086】
そして、充填容器300では、撹拌機32bを用いて基材M11とアルカリ刺激剤M12との混合物が混練される。これにより、充填物M30の充填が行われる。充填物M30は、例えば、スラリーである。
【0087】
そして、混練充填部30bにおいて充填物M30が充填された充填容器300は、養生部40に収容され、充填物M30が養生される。
【0088】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、準備ステップ(ST10)において二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行している。したがって、本実施形態では、ジオポリマー材料を用いた場合であっても、二酸化炭素を効率的に固定化することができるので、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を効果的に抑制可能である。
【0089】
つまり、本実施形態の二酸化炭素固定装置1は、アウトドラム式でなく、インドラム式であるが、第1実施形態の場合と同様な効果を奏することができる。
【0090】
[C]変形例
上記の実施形態では、準備ステップ(ST10)において、二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行する場合について説明したが、これに限らない。準備ステップ(ST10)と混練充填ステップ(ST30b)と養生ステップ(ST40)とのそれぞれにおいて二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行してもよい。また、準備ステップ(ST10)と混練充填ステップ(ST30b)と養生ステップ(ST40)とのいずれかにおいて二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行してもよい。つまり、準備ステップ(ST10)と混練充填ステップ(ST30b)と養生ステップ(ST40)との少なくとも1つにおいて二酸化炭素を固定化する固定化処理を実行してもよい。
【0091】
<その他>
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することができる。本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1:二酸化炭素固定装置、10:準備部、11:基材貯蔵部、12:アルカリ刺激剤貯蔵部、20:混練部、21:混練槽、22:撹拌機、30:充填部、30b:混練充填部、31:充填台、31b:充填台、32b:撹拌機、40:養生部、41:養生室、110:二酸化炭素固定化処理部、111:処理容器、112:温度湿度調整部、120:二酸化炭素供給源、121:湿度調整部、300:充填容器、M11:基材、M12:アルカリ刺激剤、M20:混練物、M30:充填物、M40:ジオポリマー固化体、ST10:準備ステップ、ST20:混練ステップ、ST30:充填ステップ、ST30b:混練充填ステップ、ST40:養生ステップ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B