(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076024
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20240529BHJP
【FI】
H01R12/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187363
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】中村 恵介
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA30
5E223AC13
5E223AC35
5E223BA01
5E223BA08
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB24
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD02
5E223DB08
(57)【要約】
【課題】導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物の導体に電気的に接続することができるコネクタを提供する。
【解決手段】インナーコンタクト18は、プラグコンタクト13の凹部13Cの内側面に接触してプラグコンタクト13に電気的に接続される第1接点部P1と、第1接点部P1とは嵌合軸Cを挟んだ反対側で且つ第1接点部P1よりも凹部13Cの基端に近い位置における凹部13Cの内面に接触する第2接点部P2と、プラグコンタクト13のフランジ13Bの裏面に対向する第3接点部P3とを有し、シート状導電部材15の一部が、嵌合軸Cに沿った方向においてフランジ13Bの裏面とインナーコンタクト18の第3接点部P3との間に挟まれ、フランジ13Bの裏面がシート状導電部材15の表面に接触し、第3接点部P3がシート状導電部材15の裏面に接触する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合軸に沿って延びる凹部の内側面の少なくとも一部を形成する軸方向伸長部と、前記軸方向伸長部に連結され且つ前記凹部の基端から前記嵌合軸に直交する方向に延びる直交方向伸長部とを有する導電性のプラグコンタクトと、
一部が前記凹部内に挿入された状態で支持され且つ弾性変形可能な導電性のインナーコンタクトと
を備え、
前記インナーコンタクトは、前記軸方向伸長部により形成された前記凹部の内側面に接触して前記プラグコンタクトに電気的に接続される第1接点部と、前記第1接点部とは前記嵌合軸を挟んだ反対側で且つ前記第1接点部よりも前記凹部の前記基端に近い位置における前記凹部の内側面に接触する第2接点部と、前記嵌合軸に直交する方向に延び且つ前記直交方向伸長部に対向する第3接点部とを有し、
少なくとも一方の面に導体が露出しているシート状の接続対象物の一部が、前記嵌合軸に沿った方向において前記プラグコンタクトの前記直交方向伸長部の裏面と前記インナーコンタクトの前記第3接点部との間に挟まれ、前記直交方向伸長部の裏面が前記接続対象物の表面に接触し、前記第3接点部が前記接続対象物の裏面に接触することにより、前記導体が前記接続対象物の表面に露出する場合は、前記プラグコンタクトが直接前記導体に電気的に接続され、前記導体が前記接続対象物の裏面に露出する場合は、前記プラグコンタクトが前記インナーコンタクトを介して前記導体に電気的に接続されるコネクタ。
【請求項2】
前記インナーコンタクトは、屈曲された1枚の帯状金属板から形成され、前記帯状金属板の一端に前記第2接点部が配置され、前記帯状金属板の他端に前記第3接点部が配置され、前記帯状金属板の前記一端と前記他端の間に前記第1接点部が配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記インナーコンタクトは、
前記嵌合軸を横切るように前記嵌合軸に直交する方向に延びる横断部と、
前記横断部の一端から前記嵌合軸に沿い且つ前記凹部の前記基端に向かって延びる第1伸長部と、
前記第1伸長部の先端から前記嵌合軸に直交する方向に延びる腕部と、
前記横断部の他端から前記嵌合軸に沿い且つ前記凹部の前記基端に向かって延びる第2伸長部と
を有し、
前記第1接点部は、前記横断部と前記第1伸長部の連結部分に配置され、
前記第2接点部は、前記第2伸長部の先端に配置され、
前記第3接点部は、前記腕部の先端に配置されている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記インナーコンタクトは、前記第1接点部と前記第2接点部と前記第3接点部により前記プラグコンタクトに3点支持されている請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記インナーコンタクトは、前記嵌合軸に直交する方向に突出し且つ先端に前記第1接点部が配置された引っ掛け部を有し、
前記プラグコンタクトは、前記凹部の内側に形成され且つ前記引っ掛け部を受け止める受け止め部を有する請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1接点部と前記第3接点部との間の前記嵌合軸に直交する方向における距離LXに対する前記第1接点部と前記第2接点部との間の前記嵌合軸に沿った方向における距離LZの比率LZ/LXは、前記引っ掛け部が前記受け止め部に受け止められた場合の互いに接触する前記引っ掛け部と前記受け止め部により形成される接平面に垂直な法線の前記嵌合軸に直交する方向に対する傾きS以下である請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記凹部内に挿入される突起を有するボトムインシュレータを備え、
前記突起は、前記インナーコンタクトが収容される収容溝を有する請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記プラグコンタクトは、前記嵌合軸に沿って延び且つ内側に前記凹部が形成された筒状部と、前記筒状部の基端から前記嵌合軸に直交する方向に延びるフランジとを有し、
前記軸方向伸長部は、前記筒状部からなり、
前記直交方向伸長部は、前記フランジからなる請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記プラグコンタクトの前記筒状部が貫通し且つ前記フランジよりも小さいコンタクト用貫通孔が形成されたトップインシュレータを備える請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記プラグコンタクトは、屈曲された板状部材から形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記プラグコンタクトは、前記嵌合軸を挟んで互いに前記嵌合軸に直交する方向に対向する一対の前記軸方向伸長部を有し、
前記凹部は、前記一対の前記軸方向伸長部の間に形成され、
前記第1接点部は、前記一対の前記軸方向伸長部のうち一方の前記軸方向伸長部に接触し、
前記第2接点部は、前記一対の前記軸方向伸長部のうち他方の前記軸方向伸長部に接触する請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記プラグコンタクトを保持するトップインシュレータを備え、
前記凹部は、前記プラグコンタクトの前記軸方向伸長部および前記トップインシュレータにより形成され、
前記第2接点部は、前記凹部の一部を形成する前記トップインシュレータに接触する請求項10に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、少なくとも一方の面に導体が露出しているシート状の接続対象物に接続されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、着用するだけで心拍数、体温等のユーザの生体情報を取得することができる、いわゆるスマート衣料が注目を浴びている。このスマート衣料は、計測箇所に配置された電極を備え、電極に計測機器としてのウエアラブルデバイスを電気的に接続することで、生体情報をウエアラブルデバイスに伝送することが可能となる。
電極とウエアラブルデバイスとの接続は、例えば、電極から引き出された導体に接続されるコネクタを用いることにより行うことができる。
【0003】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1に、
図25に示されるようなコネクタが開示されている。コネクタは、フレキシブル基板1を間に挟んでフレキシブル基板1の両側に配置されたハウジング2およびベース部材3を有し、コンタクト4の筒状部4Aがハウジング2のコンタクト用貫通孔2Aに通され、コンタクト4のフランジ4Bがハウジング2とフレキシブル基板1の表面に露出する導体1Aとの間に挟まれる。
【0004】
この状態で、ベース部材3をハウジング2に向けて押し込むことで、
図26に示されるように、ベース部材3の突起3Aが、フレキシブル基板1を間に挟んでコンタクト4の突起収容部4Cに挿入され、突起収容部4Cの内面が導体1Aに所定の接触力で接触し、これによりコンタクト4が導体1Aに電気的に接続される。
また、
図25に示されるように、ベース部材3に突出形成されたハウジング固定用ポスト3Bをハウジング2のポスト収容部2Bに圧入することで、ハウジング2とベース部材3が、互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたコネクタにウエアラブルデバイスを嵌合することにより、導体からなる電極にウエアラブルデバイスを接続することができる。
しかしながら、導体1Aがフレキシブル基板1の裏面上に露出している場合には、特許文献1のコネクタでは、導体1Aをコンタクト4に電気的に接続することができないという問題がある。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物の導体に電気的に接続することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るコネクタは、
嵌合軸に沿って延びる凹部の内側面の少なくとも一部を形成する軸方向伸長部と、軸方向伸長部に連結され且つ凹部の基端から嵌合軸に直交する方向に延びる直交方向伸長部とを有する導電性のプラグコンタクトと、
一部が凹部内に挿入された状態で支持され且つ弾性変形可能な導電性のインナーコンタクトと
を備え、
インナーコンタクトは、軸方向伸長部により形成された凹部の内側面に接触してプラグコンタクトに電気的に接続される第1接点部と、第1接点部とは嵌合軸を挟んだ反対側で且つ第1接点部よりも凹部の基端に近い位置における凹部の内側面に接触する第2接点部と、嵌合軸に直交する方向に延び且つ直交方向伸長部の裏面に対向する第3接点部とを有し、
少なくとも一方の面に導体が露出しているシート状の接続対象物の一部が、嵌合軸に沿った方向においてプラグコンタクトの直交方向伸長部の裏面とインナーコンタクトの第3接点部との間に挟まれ、直交方向伸長部の裏面が接続対象物の表面に接触し、第3接点部が接続対象物の裏面に接触することにより、導体が接続対象物の表面に露出する場合は、プラグコンタクトが直接導体に電気的に接続され、導体が接続対象物の裏面に露出する場合は、プラグコンタクトがインナーコンタクトを介して導体に電気的に接続されるものである。
【0009】
インナーコンタクトは、屈曲された1枚の帯状金属板から形成され、帯状金属板の一端に第2接点部が配置され、帯状金属板の他端に第3接点部が配置され、帯状金属板の一端と他端の間に第1接点部が配置されていることが好ましい。
さらに、インナーコンタクトは、嵌合軸を横切るように嵌合軸に直交する方向に延びる横断部と、横断部の一端から嵌合軸に沿い且つ凹部の基端に向かって延びる第1伸長部と、第1伸長部の先端から嵌合軸に直交する方向に延びる腕部と、横断部の他端から嵌合軸に沿い且つ凹部の基端に向かって延びる第2伸長部とを有し、第1接点部は、横断部と第1伸長部の連結部分に配置され、第2接点部は、第2伸長部の先端に配置され、第3接点部は、腕部の先端に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、インナーコンタクトは、第1接点部と第2接点部と第3接点部によりプラグコンタクトに3点支持されていることが好ましい。
インナーコンタクトは、嵌合軸に直交する方向に突出し且つ先端に第1接点部が配置された引っ掛け部を有し、プラグコンタクトは、凹部の内側に形成され且つ引っ掛け部を受け止める受け止め部を有することができる。
【0011】
第1接点部と第3接点部との間の嵌合軸に直交する方向における距離LXに対する第1接点部と第2接点部との間の嵌合軸に沿った方向における距離LZの比率LZ/LXは、引っ掛け部が受け止め部に受け止められた場合の互いに接触する引っ掛け部と受け止め部により形成される接平面に垂直な法線の嵌合軸に直交する方向に対する傾きS以下であることが好ましい。
凹部内に挿入される突起を有するボトムインシュレータを備え、突起は、インナーコンタクトが収容される収容溝を有することができる。
【0012】
プラグコンタクトは、嵌合軸に沿って延び且つ内側に凹部が形成された筒状部と、筒状部の基端から嵌合軸に直交する方向に延びるフランジとを有し、軸方向伸長部は、筒状部からなり、直交方向伸長部は、フランジからなるように構成することができる。
この場合、プラグコンタクトの筒状部が貫通し且つフランジよりも小さいコンタクト用貫通孔が形成されたトップインシュレータを備えることが好ましい。
【0013】
プラグコンタクトは、屈曲された板状部材から形成することもできる。
この場合、プラグコンタクトは、嵌合軸を挟んで互いに嵌合軸に直交する方向に対向する一対の軸方向伸長部を有し、凹部は、一対の軸方向伸長部の間に形成され、第1接点部は、一対の軸方向伸長部のうち一方の軸方向伸長部に接触し、第2接点部は、一対の軸方向伸長部のうち他方の軸方向伸長部に接触するように構成することができる。
また、プラグコンタクトを保持するトップインシュレータを備え、凹部は、プラグコンタクトの軸方向伸長部およびトップインシュレータにより形成され、第2接点部は、凹部の一部を形成するトップインシュレータに接触するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、インナーコンタクトは、軸方向伸長部により形成された凹部の内側面に接触してプラグコンタクトに電気的に接続される第1接点部と、第1接点部とは嵌合軸を挟んだ反対側で且つ第1接点部よりもプラグコンタクトの凹部の基端に近い位置における凹部の内側面に接触する第2接点部と、嵌合軸に直交する方向に延び且つ直交方向伸長部の裏面に対向する第3接点部とを有し、接続対象物の一部が、嵌合軸に沿った方向においてプラグコンタクトの直交方向伸長部の裏面とインナーコンタクトの第3接点部との間に挟まれ、直交方向伸長部の裏面が接続対象物の表面に接触し、第3接点部が接続対象物の裏面に接触することにより、導体が接続対象物の表面に露出する場合は、プラグコンタクトが直接導体に電気的に接続され、導体が接続対象物の裏面に露出する場合は、プラグコンタクトがインナーコンタクトを介して導体に電気的に接続されるので、導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物の導体に電気的に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】接続対象物に接続された実施の形態1に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係るコネクタの分解斜視図である。
【
図3】実施の形態1のコネクタに用いられるトップインシュレータを示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1のコネクタに用いられるボトムインシュレータを示す斜視図である。
【
図5】ボトムインシュレータに形成された突起を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す斜視図である。
【
図7】実施の形態1のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す断面図である。
【
図8】実施の形態1のコネクタに接続される接続対象物を斜め上方から見た斜視図である。
【
図9】実施の形態1のコネクタに接続される接続対象物を斜め下方から見た斜視図である。
【
図10】実施の形態1のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す斜視図である。
【
図11】実施の形態1のコネクタに用いられるインナーコンタクトを
図10とは異なる角度から見た斜視図である。
【
図12】実施の形態1のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す側面図である。
【
図13】組み立て途中におけるコネクタを斜め下方から見た斜視図である。
【
図14】接続対象物に接続された実施の形態1のコネクタを示す部分側面断面図である。
【
図16】実施の形態2のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す斜視図である。
【
図17】実施の形態2のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す断面図である。
【
図18】接続対象物に接続された実施の形態2のコネクタを示す部分側面断面図である。
【
図19】接続対象物に接続された実施の形態3に係るコネクタを示す部分斜視図である。
【
図20】実施の形態3のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す斜視図である。
【
図21】接続対象物に接続された実施の形態3のコネクタを示す部分側面断面図である。
【
図22】接続対象物に接続された実施の形態4に係るコネクタを示す部分斜視図である。
【
図23】実施の形態4のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す斜視図である。
【
図24】接続対象物に接続された実施の形態4のコネクタを示す部分側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係るコネクタ11を示す。コネクタ11は、例えば、ウエアラブルデバイスを嵌合するための衣服側コネクタとして使用されるもので、絶縁性材料からなるハウジング12を有している。ハウジング12には、4つのプラグコンタクト13が保持され、さらに、ハウジング12により、シート状導電部材15が保持されている。シート状導電部材15は、コネクタ11が接続されるシート状の接続対象物を構成している。
4つのプラグコンタクト13は、互いに平行な2列に配列された状態で、シート状導電部材15に対して垂直に突出するように配置されている。
【0017】
ここで、便宜上、シート状導電部材15がXY面に沿って延び、4つのプラグコンタクト13の配列方向をY方向、4つのプラグコンタクト13がそれぞれ突出する方向を+Z方向と呼ぶことにする。Z方向は、コネクタ11が相手側コネクタと嵌合する嵌合方向となる。
【0018】
図2に、コネクタ11の分解斜視図を示す。コネクタ11は、トップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17を有しており、これらトップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17によりハウジング12が構成されている。
【0019】
トップインシュレータ16の-Z方向側に4つのプラグコンタクト13が配置され、4つのプラグコンタクト13の-Z方向側にシート状導電部材15が配置されている。さらに、シート状導電部材15の-Z方向側に4つのインナーコンタクト18が配置され、4つのインナーコンタクト18の-Z方向側にボトムインシュレータ17が配置されている。4つのインナーコンタクト18は、4つのプラグコンタクト13にそれぞれ対応している。
【0020】
図3に示されるように、トップインシュレータ16は、+Z方向に向かって開いている凹部16Aと、凹部16A内に形成された4つのコンタクト用貫通孔16Bを有している。凹部16Aは、図示しない相手側コネクタの一部が収容される相手側コネクタ収容部を構成するものであり、4つのコンタクト用貫通孔16Bは、4つのプラグコンタクト13に対応している。また、トップインシュレータ16の-Z方向を向いた面に、それぞれ-Z方向に突出する複数のボス16Cが形成されている。
【0021】
図4に示されるように、ボトムインシュレータ17は、平板部17Aを有し、平板部17Aの+Z方向を向いた表面上に4つのコンタクト配置領域17Bが区画されている。コンタクト配置領域17Bは、シート状導電部材15を介して対応するプラグコンタクト13を配置するための円形の領域である。4つのコンタクト配置領域17Bには、それぞれ、コンタクト配置領域17Bの中央部から+Z方向に突出する4つの突起17Cが形成されている。
また、平板部17Aには、トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の貫通孔17Dが形成されている。
【0022】
図5に示されるように、ボトムインシュレータ17のコンタクト配置領域17Bに形成された突起17Cは、コンタクト配置領域17Bに対応して配置されるプラグコンタクト13の嵌合軸Cに沿ってZ方向に延びるほぼ円柱形状を有しており、突起17CのX方向の両側面および+Z方向端部に、対応するインナーコンタクト18が収容される収容溝17Eが形成されている。収容溝17Eは、突起17Cの-X方向側におけるコンタクト配置領域17Bの表面にまで連続して延びている。
【0023】
4つのプラグコンタクト13は、それぞれ、金属等の導電性材料から形成され、トップインシュレータ16の凹部16Aに図示しない相手側コネクタの一部が収容された場合に、相手側コネクタの対応するコンタクトに接続されるものである。
図6に示されるように、プラグコンタクト13は、嵌合軸Cに沿ってZ方向に延びる円筒形状の筒状部13Aと、筒状部13Aの-Z方向端部からXY面に沿って延びる平板形状のフランジ13Bを有している。筒状部13Aは、軸方向伸長部を構成し、フランジ13Bは、直交方向伸長部を構成している。
図7に示されるように、筒状部13Aの内部には、-Z方向に向かって開放された凹部13Cが形成されており、凹部13Cの内側には、凹部13Cの内面に沿ってXY面上に環状に延びる窪みからなる受け止め部13Dが形成されている。
【0024】
なお、嵌合軸Cは、筒状部13Aの中心を通り且つコネクタ11と相手側コネクタとの嵌合方向であるZ方向に延びる軸である。
また、筒状部13Aは、円筒形状を有しているが、内部に凹部13Cを有するものであれば、断面形状は円形に限らず、楕円、多角形等の各種の断面形状を有することもできる。
なお、4つのプラグコンタクト13は、いずれも、電気信号を伝送するための端子として使用することができる。
【0025】
シート状導電部材15は、それぞれ導体から形成された複数の配線層と、複数の絶縁層とが積層された多層構造を有している。
図8に示されるように、シート状導電部材15には、それぞれシート状導電部材15をZ方向に貫通する4つの円形の開口部15Aが形成されている。4つの開口部15Aは、4つのプラグコンタクト13に対応している。シート状導電部材15の+Z方向を向いた表面上には、それぞれの開口部15Aの-X方向側に隣接して配線層15Bが+Z方向に向けて露出しており、4つの開口部15Aとこれらの開口部15Aに隣接する4つの配線層15B以外の領域には、絶縁層15Cが露出している。
【0026】
開口部15Aは、シート状導電部材15をZ方向に貫通しているので、
図9に示されるように、シート状導電部材15の-Z方向を向いた裏面にも、4つの開口部15Aが見えている。
シート状導電部材15の-Z方向を向いた裏面においては、4つの開口部15Aの-X方向側に隣接して配線層15Dが-Z方向に向けて露出しており、4つの開口部15Aとこれらの開口部15Aに隣接する4つの配線層15D以外の領域には、絶縁層15Eが露出している。
また、
図8および
図9に示されるように、シート状導電部材15の周縁部には、トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の貫通孔15Fが形成されている。
【0027】
図10および
図11に示されるように、インナーコンタクト18は、屈曲された1枚の導電性を有する帯状金属板からなり、X方向に延びる横断部18Aを有している。横断部18Aの-X方向端部から-Z方向に向かって第1伸長部18Bが延び、第1伸長部18Bの-Z方向端部から-X方向に向かって腕部18Cが延び、また、横断部18Aの+X方向端部から-Z方向に向かって第2伸長部18Dが延びている。横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dは、コネクタ11が組み立てられた場合に、対応するプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入される。
【0028】
横断部18Aと第1伸長部18Bの連結部分には、-X方向に突出する引っ掛け部18Eが形成されている。引っ掛け部18Eは、-X方向に向かってアングル状または山形状に突出しており、引っ掛け部18Eの-X方向端部には、-Z方向を向いた第1接点部P1が設定されている。
【0029】
また、第2伸長部18Dの-Z方向端部には、+X方向に向かって凸となるように湾曲した湾曲部18Fが形成されており、湾曲部18Fの+X方向側の表面に+X方向を向いた第2接点部P2が設定されている。
さらに、腕部18Cの-X方向端部には、+Z方向に向かって凸となるように湾曲した湾曲部18Gが形成されており、湾曲部18Gの+Z方向側の表面に+Z方向を向いた第3接点部P3が設定されている。
【0030】
図12に示されるように、インナーコンタクト18は、横断部18Aが嵌合軸Cを横切るように横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dがプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入された場合に、嵌合軸Cに対してわずかに傾斜した姿勢となるが、インナーコンタクト18に外力が作用しない自然の状態において、第1接点部P1から第2接点部P2までのX方向に沿った間隔L11は、プラグコンタクト13の受け止め部13Dから対向する凹部13Cの内面までのX方向に沿った間隔L21より長く設定されている。
【0031】
同様に、インナーコンタクト18に外力が作用しない自然の状態において、第1接点部P1から第3接点部P3までのZ方向に沿った間隔L12は、プラグコンタクト13の受け止め部13Dからフランジ13Bの-Z方向側に配置されたシート状導電部材15の裏面までのZ方向に沿った間隔L22より短く設定されている。
【0032】
このため、横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dがプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入されると、インナーコンタクト18は、
図12に点線で示されるように弾性変形し、第2接点部P2がプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に接触し、第3接点部P3がシート状導電部材15の裏面に接触することとなる。
このような構成のインナーコンタクト18は、例えば、所定の形状に切り抜かれた金属板に曲げ加工を施すことにより容易に作製することができる。
【0033】
トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bと、4つのプラグコンタクト13と、シート状導電部材15の4つの開口部15Aと、4つのインナーコンタクト18と、ボトムインシュレータ17の4つのコンタクト配置領域17Bは、互いにZ方向に整列する位置に配置されている。
また、トップインシュレータ16の複数のボス16Cと、シート状導電部材15の複数の貫通孔15Fと、ボトムインシュレータ17の複数の貫通孔17Dは、互いにZ方向に整列する位置に配置されている。
【0034】
コネクタ11を組み立てる際には、まず、4つのインナーコンタクト18が、ボトムインシュレータ17の4つの突起17Cの収容溝17Eにそれぞれ収容される。
次に、トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bにそれぞれ対応するプラグコンタクト13の筒状部13Aが-Z方向から挿入され、シート状導電部材15を間に挟んで、ボトムインシュレータ17がトップインシュレータ16に向けて+Z方向に押し付けられる。
【0035】
このとき、ボトムインシュレータ17の突起17Cの収容溝17Eに収容されているインナーコンタクト18が+Z方向に押し上げられ、インナーコンタクト18の横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dは、シート状導電部材15の開口部15Bを通して対応するプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入される。また、プラグコンタクト13のフランジ13Bが、シート状導電部材15の対応する開口部15Bの周辺に位置し、インナーコンタクト18の腕部18Cの-X方向端部に形成されている湾曲部18Gの+Z方向側の表面とプラグコンタクト13のフランジ13Bの-Z方向側の裏面の間にシート状導電部材15が挟まれる。
【0036】
また、ボトムインシュレータ17をトップインシュレータ16に押し付けることにより、トップインシュレータ16の複数のボス16Cが、シート状導電部材15の複数の貫通孔15Fおよびボトムインシュレータ17の複数の貫通孔17Dを順次貫通する。そして、
図13に示されるように、ボトムインシュレータ17の-Z方向側に突出する複数のボス16Cの先端を熱変形させることにより、トップインシュレータ16とボトムインシュレータ17が互いに固定され、コネクタ11の組み立てが完了する。
【0037】
図14に示されるように、インナーコンタクト18は、ボトムインシュレータ17の突起17Cにより+Z方向に押し上げられると、弾性変形しつつ、横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dがプラグコンタクト13の凹部13C内を+Z方向に移動し、引っ掛け部18Eは、プラグコンタクト13の凹部13Cの内側に形成されている受け止め部13Dに受け止められる。
【0038】
ここで、
図12に示されるように、インナーコンタクト18に外力が作用しない自然の状態において、第1接点部P1から第2接点部P2までのX方向に沿った間隔L11は、プラグコンタクト13の受け止め部13Dから対向する凹部13Cの内面までのX方向に沿った間隔L21より長く設定されている。
このため、
図14に示されるように、横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dがプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入されると、第1接点部P1および第2接点部P2は、互いのX方向の間隔が狭まるように弾性変位し、それぞれ、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられる。
【0039】
具体的には、第1接点部P1がプラグコンタクト13の凹部13C内の受け止め部13Dに押し付けられ、第2接点部P2が、第1接点部P1とは嵌合軸Cを挟んだ反対側においてプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられる。これら第1接点部P1および第2接点部P2が、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられて接触することで、インナーコンタクト18がプラグコンタクト13に電気的に接続される。
【0040】
また、
図12に示されるように、インナーコンタクト18に外力が作用しない自然の状態において、第1接点部P1から第3接点部P3までのZ方向に沿った間隔L12は、プラグコンタクト13の受け止め部13Dからフランジ13Bの-Z方向側に配置されたシート状導電部材15の裏面までのZ方向に沿った間隔L22より短く設定されている。
【0041】
このため、
図14に示されるように、横断部18Aが嵌合軸Cを横切るように横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dがプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入されると、第3接点部P3は、-Z方向に弾性変位して、プラグコンタクト13のフランジ13Bの-Z方向側に配置されたシート状導電部材15の裏面に接触する。従って、シート状導電部材15の+Z方向側の表面は、プラグコンタクト13のフランジ13Bの裏面に押し付けられ、シート状導電部材15の-Z方向側の裏面は、インナーコンタクト18の第3接点部P3に押し付けられる。
【0042】
ここで、
図8および
図9に示されるように、シート状導電部材15の表面には、開口部15Aの-X方向側に隣接して配線層15Bが露出し、シート状導電部材15の裏面には、開口部15Aの-X方向側に隣接して配線層15Dが露出している。
従って、シート状導電部材15の表面の配線層15Bがプラグコンタクト13のフランジ13Bの裏面に所定の接触圧で接触し、また、シート状導電部材15の裏面の配線層15Dがインナーコンタクト18の第3接点部P3に所定の接触圧で接触する。
【0043】
このため、シート状導電部材15の表面に露出している配線層15Bは、直接プラグコンタクト13に電気的に接続され、シート状導電部材15の裏面に露出している配線層15Dは、インナーコンタクト18を介してプラグコンタクト13に電気的に接続される。すなわち、配線層15Bおよび15Dの双方が、プラグコンタクト13に接続されることとなる。
【0044】
このように、コネクタ11によれば、インナーコンタクト18を用いることにより、シート状導電部材15の表面側に配置された導体からなる配線層15Bと裏面側に配置された導体からなる配線層15Dの双方を、1つのプラグコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
従って、表面側にのみ導体が露出しているシート状導電部材にコネクタ11を接続すれば、プラグコンタクト13をシート状導電部材の表面側の導体に電気的に接続することができ、また、裏面側にのみ導体が露出しているシート状導電部材にコネクタ11を接続すれば、プラグコンタクト13をシート状導電部材の裏面側の導体に電気的に接続することができる。
【0045】
さらに、この実施の形態1におけるシート状導電部材15のように、表面側および裏面側にそれぞれ導体が露出しているシート状導電部材にコネクタ11を接続すれば、プラグコンタクト13をシート状導電部材の表面側の導体と裏面側の導体の双方に電気的に接続することができる。例えば、表面側および裏面側にそれぞれシールド層を構成する導体が露出し、これらのシールド層の間に信号配線層を構成する導体が双方のシールド層から絶縁された状態で積層された多層構造のシート状導電部材を接続対象物とすれば、表面側および裏面側のシールド層に接続されたプラグコンタクト13をグランド電位に接続することで、信号配線層に対するシールド効果が発揮され、電磁波等による外乱の影響を抑制した高精度の信号伝送を行うことが可能となる。
【0046】
なお、それぞれのプラグコンタクト13は、フランジ13Bがトップインシュレータ16とボトムインシュレータ17の間に挟まれることによりトップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17に固定されている。
【0047】
インナーコンタクト18の第1接点部P1および第2接点部P2は、互いのX方向の間隔が狭まるように弾性変位してプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に接触し、第3接点部P3は、-Z方向に弾性変位してシート状導電部材15の裏面に接触するため、
図14に示されるように、インナーコンタクト18は、第1接点部P1がプラグコンタクト13の凹部13Cの受け止め部13Dから+X方向および+Z方向に向かう力F1を受け、第2接点部P2がプラグコンタクト13の凹部13Cの内面から-X方向に向かう力F2を受け、第3接点部P3がシート状導電部材15の裏面から-Z方向に向かう力F3を受けた状態で、プラグコンタクト13に保持されている。
【0048】
すなわち、摩擦力を無視した場合、これら3つの力F1、F2およびF3がつり合った状態にあり、力F1のX方向の分力をF1X、力F1のZ方向の分力をF1Zとすると、
F2=F1X ・・・(1)
F3=F1Z ・・・(2)
の関係が成り立つ。なお、F1、F2、F3、F1X、F1Zは、いずれも絶対値で示されているものとする。
【0049】
また、第1接点部P1を中心とするモーメントのつり合いから、第1接点部P1と第3接点部P3との間のX方向における距離をLX、第1接点部P1と第2接点部P2との間のZ方向における距離をLZとすると、
(F2×LZ)=(F3×LX) ・・・(3)
の関係が成り立つ。
【0050】
上記の式(1)、(2)、(3)から、
(F3/F2)=(F1Z/F1X)=(LZ/LX) ・・・(4)
となる。
【0051】
図15に示されるように、インナーコンタクト18の引っ掛け部18Eがプラグコンタクト13の受け止め部13Dに受け止められた場合の、互いに接触する引っ掛け部18Eと受け止め部13Dにより形成される接平面をT、接平面Tに垂直な法線をNとする。仮に、インナーコンタクト18とプラグコンタクト13の間に作用する摩擦力を無視すると、引っ掛け部18Eの-X方向端部に設定されている第1接点部P1に、プラグコンタクト13の受け止め部13Dから法線Nに沿った力F1が作用する。
【0052】
すなわち、力F1のX方向の分力F1Xに対するZ方向の分力F1Zの比率(F1Z/F1X)は、法線Nの傾きSに等しくなる。
このようにして、インナーコンタクト18に作用する力F1、F2およびF3がつり合い、また、モーメントがつり合った状態で、インナーコンタクト18は、第1接点部P1と第2接点部P2と第3接点部P3によりプラグコンタクト13に3点支持されている。
【0053】
ここで、インナーコンタクト18の代わりに、例えば、腕部18CのX方向の長さがインナーコンタクト18よりも長く、他の部分がインナーコンタクト18と同一であるようなインナーコンタクトを使用することを想定する。第1接点部P1および第2接点部P2の弾性変位は、インナーコンタクト18の場合と同様で、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面から第2接点部P2に作用する力F2の大きさも変わらないものとする。
【0054】
腕部18Cの長さに伴って第1接点部P1と第3接点部P3との間のX方向における距離LXが長くなるため、第1接点部P1を中心とするモーメントをつり合わせようとして、上記の式(3)から、第3接点部P3に作用する-Z方向に向かう力F3が小さくなり、これに伴って、力F1のZ方向の分力F1Zも低減する。一方、力F1のX方向の分力F1Xは、力F2と同様で変わらないため、比率(F1Z/F1X)は、法線Nの傾きSよりも小さくなろうとする。
【0055】
ただし、摩擦力を無視すると、接平面Tからの垂直抗力として法線Nに沿った力F1が第1接点部P1に作用し、力F1のZ方向の分力F1Zの低減分に相当する+Z方向に向かう力が第1接点部P1に作用することとなる。その結果、インナーコンタクト18がプラグコンタクト13から-Z方向に抜け落ちることが防止される。
【0056】
次に、インナーコンタクト18の代わりに、腕部18CのX方向の長さがインナーコンタクト18よりも短く、他の部分がインナーコンタクト18と同一であるようなインナーコンタクトを使用することを想定する。第1接点部P1および第2接点部P2の弾性変位は、インナーコンタクト18の場合と同様で、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面から第2接点部P2に作用する力F2の大きさも変わらないものとする。
【0057】
腕部18Cの長さの縮小化に伴って第1接点部P1と第3接点部P3との間のX方向における距離LXが短くなるため、第1接点部P1を中心とするモーメントをつり合わせようとして、上記の式(3)から、第3接点部P3に作用する-Z方向に向かう力F3が大きくなり、これに伴って、力F1のZ方向の分力F1Zも増大する。一方、力F1のX方向の分力F1Xは、力F2と同様で変わらないため、比率(F1Z/F1X)は、法線Nの傾きSよりも大きくなろうとする。
【0058】
ただし、摩擦力を無視すると、接平面Tからの垂直抗力として法線Nに沿った力F1が第1接点部P1に作用し、力F1のZ方向の分力F1Zの増大分に相当する-Z方向に向かう力が第1接点部P1に作用することとなる。その結果、インナーコンタクト18がプラグコンタクト13から-Z方向に抜けやすくなってしまう。
【0059】
すなわち、インナーコンタクト18をプラグコンタクト13に安定して3点支持させるためには、第1接点部P1と第3接点部P3との間のX方向における距離LXに対する第1接点部P1と第2接点部P2との間のZ方向における距離LZの比率LZ/LXは、引っ掛け部18Eが受け止め部13Dに受け止められた場合の、互いに接触する引っ掛け部18Eと受け止め部13Dにより形成される接平面Tに垂直な法線NのX方向に対する傾きS以下であることが望ましい。
【0060】
インナーコンタクト18とプラグコンタクト13の間に、無視することができない摩擦力が作用する場合であっても、比率LZ/LXを法線Nの傾きS以下にすることで、インナーコンタクト18をプラグコンタクト13に安定して支持することが可能となる。
【0061】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、インナーコンタクト18の引っ掛け部18Eが、プラグコンタクト13の凹部13Cの内側に形成されている受け止め部13Dに受け止められているが、これに限るものではなく、静止摩擦力を利用することで、受け止め部13Dを有しないプラグコンタクトを使用することもできる。
【0062】
図16に、実施の形態2に係るコネクタ21に用いられるプラグコンタクト23を示す。プラグコンタクト23は、実施の形態1におけるプラグコンタクト13と同様に、金属等の導電性材料から形成され、嵌合軸Cに沿ってZ方向に延びる円筒形状の筒状部23Aと、筒状部23Aの-Z方向端部からXY面に沿って延びるフランジ23Bを有している。
図17に示されるように、筒状部23Aの内部には、-Z方向に向かって開放された凹部23Cが形成されているが、凹部23Cの内側に、実施の形態1におけるプラグコンタクト13が有するような窪みからなる受け止め部は形成されていない。
【0063】
図18に、シート状導電部材15に接続された実施の形態2のコネクタ21を示す。このコネクタ21は、
図14に示される実施の形態1のコネクタ11において、プラグコンタクト13の代わりにプラグコンタクト23を用いたものであり、その他の部材は、実施の形態1のコネクタ11と同様である。
【0064】
プラグコンタクト23の凹部23Cにインナーコンタクト18の横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dが挿入されると、第1接点部P1および第2接点部P2は、互いのX方向の間隔が狭まるように弾性変位する。これにより、第1接点部P1にプラグコンタクト23の凹部23Cの内面から+X方向に向かう力F1が作用し、第2接点部P2にプラグコンタクト23の凹部23Cの内面から-X方向に向かう力F2が作用する。
【0065】
また、腕部18Cの先端に設定されている第3接点部P3は、プラグコンタクト23のフランジ23Bの-Z方向側に配置されたシート状導電部材15の裏面に接触して-Z方向に弾性変位し、第3接点部P3にシート状導電部材15の裏面から-Z方向に向かう力F3が作用する。
【0066】
この力F3は-Z方向を向いており、プラグコンタクト23からのインナーコンタクト18の抜け落ちが助長されることとなるが、第1接点部P1および第2接点部P2がプラグコンタクト23の凹部23Cの内面に接触してX方向の力F1およびF2を受けているため、第1接点部P1および第2接点部P2に、それぞれ、+Z方向に向かう静止摩擦力F1AおよびF2Aが作用する。
【0067】
そして、力F1、F2、F3と静止摩擦力F1A、F2Aがつり合った状態となることで、インナーコンタクト18はプラグコンタクト23に3点支持される。
このとき、力のつり合いから、
F1=F2 ・・・(5)
F3=F1A+F2A ・・・(6)
の関係が成り立つ。なお、F1、F2、F3、F1A、F2Aは、いずれも絶対値で示されているものとする。
【0068】
また、第1接点部P1を中心とするモーメントのつり合いから、第1接点部P1と第2接点部P2との間のX方向における距離をLX2、第1接点部P1と第3接点部P3との間のX方向における距離をLX3、第1接点部P1と第2接点部P2との間のZ方向における距離をLZ2とすると、
(F2×LZ2)=(F3×LX3)+(F2A×LX2) ・・・(7)
の関係が成り立つ。
【0069】
さらに、プラグコンタクト23の凹部23Cの内面とインナーコンタクト18の第1接点部P1および第2接点部P2との間の静止摩擦係数をMとすると、
F1A=(M×F1) ・・・(8)
F2A=(M×F2) ・・・(9)
の関係が成り立つ。
上記の式(5)~(9)から静止摩擦係数Mを求めると、
M=LZ2/(LX2+2×LX3) ・・・(10)
となる。
【0070】
従って、第1接点部P1と第2接点部P2と第3接点部P3の相互間の距離LX2、LX3およびLZ2より表される比率[LZ2/(LX2+2×LX3)]が、プラグコンタクト23の凹部23Cの内面とインナーコンタクト18の第1接点部P1および第2接点部P2との間の静止摩擦係数M以下である場合に、上記の式(5)~(9)が成立して、インナーコンタクト18がプラグコンタクト23に保持される。
このように、受け止め部を有しないプラグコンタクト23を用いても、インナーコンタクト18を、-Z方向に抜け落ちることなくプラグコンタクト23に安定して3点支持することが可能となる。
【0071】
また、実施の形態1のコネクタ11と同様に、実施の形態2のコネクタ21においても、第1接点部P1および第2接点部P2がプラグコンタクト23の凹部23Cの内面に接触し、第3接点部P3がシート状導電部材15の裏面に接触するので、シート状導電部材15の表面側に配置された配線層15Bと裏面側に配置された配線層15Dの双方を、1つのプラグコンタクト23に電気的に接続することができる。
【0072】
実施の形態3
上記の実施の形態1、2では、プラグコンタクト13、23が、円筒形状の筒状部13A、23Aを有しているが、これに限るものではなく、筒状部を有しないプラグコンタクトを使用することもできる。
【0073】
図19に、実施の形態3に係るコネクタ31の部分斜視図を示す。コネクタ31は、シート状導電部材15を間に挟んでシート状導電部材15のZ方向の両側に配置されるトップインシュレータ36およびボトムインシュレータ37を有しており、トップインシュレータ36にプラグコンタクト33が保持されている。
【0074】
図20に示されるように、プラグコンタクト33は、金属等の導電性材料からなり且つ屈曲された板状部材により形成されており、XY面に沿って延びる平板形状の天板部33Aを有している。天板部33Aの-X方向端部および+X方向端部に、それぞれYZ面に沿って-Z方向に延びる軸方向伸長部33Bおよび33Cが連結され、軸方向伸長部33Bの-Z方向端部には、XY面に沿って-X方向に延びる直交方向伸長部33Dが連結され、軸方向伸長部33Cの-Z方向端部には、XY面に沿って+X方向に延びる直交方向伸長部33Eが連結されている。
【0075】
軸方向伸長部33Bおよび33Cは、互いにX方向に対向しており、軸方向伸長部33Bおよび33Cの間に凹部33Fが形成されている。
このようなプラグコンタクト33は、例えば、圧入によりトップインシュレータ36に保持させることができる。
【0076】
図21に示されるように、トップインシュレータ36に保持されたプラグコンタクト33は、凹部33Fが-Z方向に向かって開放されるように配置されており、トップインシュレータ36とボトムインシュレータ37の間にシート状導電部材15が配置された状態で、ボトムインシュレータ37に保持されたインナーコンタクト18をシート状導電部材15の開口部15Aを通して+Z方向に押し込むことにより、インナーコンタクト18の横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dがプラグコンタクト33の凹部33Fに挿入される。
なお、インナーコンタクト18は、上記の実施の形態1、2で用いられたインナーコンタクト18と同じものである。
【0077】
インナーコンタクト18の第1接点部P1および第2接点部P2が、それぞれ、プラグコンタクト33の軸方向伸長部33Bおよび33Cに接触することで、インナーコンタクト18がプラグコンタクト33に電気的に接続され、第3接点部P3が、-Z方向に弾性変位して、プラグコンタクト33の直交方向伸長部33Dの-Z方向側に配置されたシート状導電部材15の裏面に接触する。
【0078】
これにより、シート状導電部材15の表面に露出している配線層15Bは、直接プラグコンタクト33に電気的に接続され、シート状導電部材15の裏面に露出している配線層15Dは、インナーコンタクト18を介してプラグコンタクト33に電気的に接続される。すなわち、シート状導電部材15の表面側に配置された配線層15Bと裏面側に配置された配線層15Dの双方を、1つのプラグコンタクト33に電気的に接続することができる。
【0079】
また、インナーコンタクト18の第1接点部P1および第2接点部P2が、それぞれ、プラグコンタクト33の軸方向伸長部33Bおよび33Cに接触し、第3接点部P3が、シート状導電部材15の裏面に接触することで、上記の実施の形態2と同様に、インナーコンタクト18は、プラグコンタクト33に3点支持されている。
【0080】
実施の形態4
図22に、実施の形態4に係るコネクタ41の部分斜視図を示す。コネクタ41は、シート状導電部材15を間に挟んでシート状導電部材15のZ方向の両側に配置されるトップインシュレータ46およびボトムインシュレータ47を有しており、トップインシュレータ46にプラグコンタクト43が保持されている。
【0081】
図23に示されるように、プラグコンタクト43は、金属等の導電性材料からなり且つ屈曲された板状部材により形成されており、YZ面に沿って延びる軸方向伸長部43Aと、軸方向伸長部43Aの-Z方向端部から屈曲してXY面に沿って-X方向に延びる直交方向伸長部43Bを有している。
このようなプラグコンタクト43は、例えば、圧入によりトップインシュレータ46に保持させることができる。
【0082】
図24に示されるように、プラグコンタクト43が保持されるトップインシュレータ46は、プラグコンタクト43の軸方向伸長部43Aの+X方向側の表面に面した窪みを有しており、このトップインシュレータ46の窪みとプラグコンタクト43の軸方向伸長部43Aにより、-Z方向に向かって開放された凹部Rが形成されている。
【0083】
トップインシュレータ46とボトムインシュレータ47の間にシート状導電部材15が配置された状態で、ボトムインシュレータ47に保持されたインナーコンタクト18をシート状導電部材15の開口部15Aを通して+Z方向に押し込むことにより、インナーコンタクト18の横断部18Aと第1伸長部18Bと第2伸長部18Dが凹部Rに挿入される。
【0084】
インナーコンタクト18の第1接点部P1が、プラグコンタクト43の軸方向伸長部43Aの+X方向側の表面に接触することで、インナーコンタクト18がプラグコンタクト43に電気的に接続され、第3接点部P3が、-Z方向に弾性変位して、プラグコンタクト43の直交方向伸長部43Bの-Z方向側に配置されたシート状導電部材15の裏面に接触する。
【0085】
これにより、シート状導電部材15の表面に露出している配線層15Bは、直接プラグコンタクト43に電気的に接続され、シート状導電部材15の裏面に露出している配線層15Dは、インナーコンタクト18を介してプラグコンタクト43に電気的に接続される。すなわち、シート状導電部材15の表面側に配置された配線層15Bと裏面側に配置された配線層15Dの双方を、1つのプラグコンタクト43に電気的に接続することができる。
【0086】
また、インナーコンタクト18の第1接点部P1が、プラグコンタクト43の軸方向伸長部43Aに接触し、第2接点部P2が、凹部Rの一部を形成するトップインシュレータ46の窪みの表面に接触し、第3接点部P3が、シート状導電部材15の裏面に接触することで、インナーコンタクト18は、プラグコンタクト43に対して支持されている。
【0087】
なお、上記の実施の形態3、4では、プラグコンタクト33、43が、窪みからなる受け止め部を有していないが、実施の形態1におけるプラグコンタクト13と同様に、プラグコンタクト33の軸方向伸長部33Bおよびプラグコンタクト43の軸方向伸長部43Aに窪みからなる受け止め部を形成し、インナーコンタクト18の引っ掛け部18Eを受け止め部で受け止めるように構成することもできる。
【0088】
上記の実施の形態1~4では、インナーコンタクト18の第1接点部P1および第2接点部P2は、プラグコンタクト13、23、33、43側の凹部13C、23C、33F、Rに収容された際に、互いのX方向の間隔が狭まるように弾性変位しているが、必ずしも弾性変位する必要はない。第1接点部P1および第2接点部P2が弾性変位しなくても、第3接点部P3に嵌合軸Cに沿った方向の力が作用することで、モーメントがつり合うように第1接点部P1および第2接点部P2に嵌合軸Cに直交する方向の力が作用し、インナーコンタクト18が支持されることとなる。
【0089】
上記の実施の形態1~4では、プラグコンタクト13、23、33、43が、シート状導電部材15の表面側に露出している配線層15Bとシート状導電部材15の裏面側に露出している配線層15Dの双方に接続されているが、例えば、シート状導電部材15の裏面側に露出している配線層15Dのみをプラグコンタクト13、23、33、43に接続することもできる。
【0090】
上記の実施の形態1~4において用いられるシート状導電部材15は、多層構造を有しているが、これに限るものではなく、少なくとも一方の面に露出する導体を有するものであればよい。
また、上記の実施の形態1~4では、シート状導電部材15の配線層15Bおよび配線層15Dからなる2層の導体が、1つのプラグコンタクト13、23、33、43に接続されるが、これに限るものではなく、3層以上の導体を1つのプラグコンタクト13、23、33、43に接続することもできる。
【0091】
また、上記の実施の形態1に係るコネクタ11は、4つのプラグコンタクト13を有しているが、プラグコンタクト13の個数に限定されるものではなく、少なくとも、シート状導電部材15の少なくとも一方の面に露出する導体に電気的に接続される1つのプラグコンタクト13を有していればよい。
さらに、上記の実施の形態2~4に係るコネクタ21、31、41において、実施の形態1と同様に、4つのプラグコンタクト23、33、43を有するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 フレキシブル基板、1A 導体、2 ハウジング、2A コンタクト用貫通孔、2B ポスト収容部、3 ベース部材、3A 突起、3B ハウジング固定用ポスト、4 コンタクト、4A 筒状部、4B フランジ、4C 突起収容部、11,21,31,41 コネクタ、12 ハウジング、13,23,33,43 プラグコンタクト、13A,23A 筒状部、13B,23B フランジ、13C,23C,33F,R 凹部、13D 受け止め部、15 シート状導電部材、15A 開口部、15B,15D 配線層、15C,15E 絶縁層、15F 貫通孔、16,36,46 トップインシュレータ、16A 凹部、16B コンタクト用貫通孔、16C ボス、17,37,47 ボトムインシュレータ、17A 平板部、17B コンタクト配置領域、17C 突起、17D 貫通孔、17E 収容溝、18 インナーコンタクト、18A 横断部、18B 第1伸長部、18C 腕部、18D 第2伸長部、18E 引っ掛け部、18F,18G 湾曲部、33A 天板部、33B,33C,43A 軸方向伸長部、33D,33E,43B 直交方向伸長部、C 嵌合軸、P1 第1接点部、P2 第2接点部、P3 第3接点部、L11,L12,L21,L22 間隔、F1,F2,F3 力、F1X,F1Z 分力、LX,LZ,LX2,LX3,LZ2 距離、T 接平面、N 法線、S 傾き、F1A,F2A 静止摩擦力、M 静止摩擦係数。