(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076028
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20240529BHJP
E03C 1/23 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187369
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】阪井 健治
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DB03
2D061DE13
(57)【要約】
【課題】
排水口が開口状態にある場合に、栓蓋部に対して加えられた応力を緩衝可能な排水栓装置を提供する。
【解決手段】
槽体Bに形成された排水口1を開閉可能な排水栓装置について、排水口1から連続する排水流路を形成する排水部3と、排水部3と連通するガイド部6と、昇降することで排水口1を開閉する栓蓋部21と、排水部3内に配置され、栓蓋部21を支持する支持部22とを有する弁部材2と、ガイド部6内を進退することで、前記支持部22と当接して栓蓋部21を昇降させる昇降部7とを備え、昇降部7は、排水口1が開口状態である場合において栓蓋部21に対して排水口1の閉口方向へ向けて応力が加わった時に、弾性変形することで応力を緩衝する撓み部75を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体に形成された排水口を開閉可能な排水栓装置について、
前記排水口から連続する排水流路を形成する排水部と、
前記排水部と連通するガイド部と、
昇降することで前記排水口を開閉する栓蓋部と、前記排水部内に配置され、前記栓蓋部を支持する支持部とを有する弁部材と、
前記ガイド部内を進退することで、前記支持部と当接して前記栓蓋部を昇降させる昇降部とを備え、
前記昇降部は、前記排水口が開口状態である場合において前記栓蓋部に対して前記排水口の閉口方向へ向けて応力が加わった時に、弾性変形することで前記応力を緩衝する撓み部を有することを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記支持部及び前記昇降部の一方又は両方は、前記排水流路の外側に向けて下向きに傾斜する傾斜面を有し、
前記栓蓋部は、前記昇降部の進退に伴い前記支持部が前記傾斜面の傾斜に沿って変位することで昇降することを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記昇降部は、前記撓み部が弾性変形した状態より更に前記栓蓋部に応力が加えられると、前記傾斜面の傾斜に沿って前記ガイド部内を進退することで前記栓蓋部を下降させ、前記排水口を閉口させることを特徴とする請求項2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記栓蓋部は、
前記昇降部が前記ガイド部内を後退した際に上昇し、
前記昇降部が前記ガイド部内を前記排水部へ向けて前進した際に下降することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面ボウルやシンク、浴槽等の槽体に形成された排水口の開閉を行う排水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された排水栓装置は、排水口から連続する排水流路を形成する排水部(排水配管)と、排水口を開閉する栓蓋部(弁体)と、栓蓋部を支持する昇降部とを備える。当該排水栓装置は、昇降部がガイド部(枝管部)内を進退することにより栓蓋部が昇降し、排水口を開閉する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の排水栓装置は、排水口が開口状態にある場合に、栓蓋部に対して排水口の閉口方向へ向けて応力が加えられた際、当該応力を緩衝することができず昇降部等の部材が破損する恐れがあるという課題が生じる。尚、衝撃を緩衝するための機構を弁部材の内部に構成すると、弁部材が大型化してしまう上、機構が複雑となるという課題が生じる。
【0005】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、その目的は、排水口が開口状態にある場合に、栓蓋部に対して加えられた応力を緩衝可能な排水栓装置を提供することである。又、当該応力を緩衝するための機構を簡単なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、槽体に形成された排水口を開閉可能な排水栓装置について、
前記排水口から連続する排水流路を形成する排水部と、
前記排水部と連通するガイド部と、
昇降することで前記排水口を開閉する栓蓋部と、前記排水部内に配置され、前記栓蓋部を支持する支持部とを有する弁部材と、
前記ガイド部内を進退することで、前記支持部と当接して前記栓蓋部を昇降させる昇降部とを備え、
前記昇降部は、前記排水口が開口状態である場合において前記栓蓋部に対して前記排水口の閉口方向へ向けて応力が加わった時に、弾性変形することで前記応力を緩衝する撓み部を有することを特徴とする排水栓装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記排水栓装置においては、排水口が開口状態にある場合に栓蓋部に対して加えられた応力を緩衝し、部材の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る排水栓装置の排水口の閉口状態を示す断面図である。
【
図2】第一実施形態に係る排水栓装置の排水口の開口状態を示す断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る排水栓装置の弁部材を示す断面図である。
【
図4】第一実施形態に係る排水栓装置の昇降部を示す断面図である。
【
図6】第一実施形態に係る排水栓装置の(a)排水口の開口状態とした時の昇降部近傍を示す断面図、(b)排水口を閉口状態とした時の昇降部近傍を示す断面図である。
【
図7】(a)
図6(b)より栓蓋部に対して排水口の閉口方向へ向けて応力が加えられた状態を示す断面図、(b)
図7(a)より更に応力が加えられた状態を示す断面図である。
【
図8】第一実施形態に係る排水栓装置の排水口が開口状態にある場合に、栓蓋部に対して排水口の閉口方向へ向けて強く応力が加えられた状態を示す断面図である。
【
図9】第二実施形態に係る排水栓装置の排水口の閉口状態を示す断面図である。
【
図10】第二実施形態に係る排水栓装置の(a)排水口の開口状態とした時の昇降部近傍を示す断面図、(b)排水口を閉口状態とした時の昇降部近傍を示す断面図である。
【
図11】(a)
図10(b)より排水口の閉口方向へ向けて応力が加えられた状態を示す断面図、(b)
図11(a)より更に応力が加えられた状態を示す断面図である。
【
図12】第二実施形態に係る排水栓装置の排水口が開口状態にある場合に、栓蓋部に対して排水口の閉口方向へ向けて強く応力が加えられた状態を示す断面図である。
【
図13】第三実施形態に係る排水栓装置の排水口の閉口状態を示す断面図である。
【
図14】第三実施形態に係る排水栓装置の(a)排水口の開口状態とした時の昇降部近傍を示す断面図、(b)排水口を閉口状態とした時の昇降部近傍を示す断面図である。
【
図15】(a)
図14(b)より排水口の閉口方向へ向けて応力が加えられた状態を示す断面図、(b)
図15(a)より更に応力が加えられた状態を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の態様に係る排水栓装置は、槽体に形成された排水口を開閉可能な排水栓装置について、
前記排水口から連続する排水流路を形成する排水部と、
前記排水部と連通するガイド部と、
昇降することで前記排水口を開閉する栓蓋部と、前記排水部内に配置され、前記栓蓋部を支持する支持部とを有する弁部材と、
前記ガイド部内を進退することで、前記支持部と当接して前記栓蓋部を昇降させる昇降部とを備え、
前記昇降部は、前記排水口が開口状態である場合において前記栓蓋部に対して前記排水口の閉口方向へ向けて応力が加わった時に、弾性変形することで前記応力を緩衝する撓み部を有することを特徴とする排水栓装置である。
【0010】
上記第1の態様によれば、排水口が開口状態にある場合に栓蓋部に対して加えられた応力を緩衝し、部材の破損を防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明の第2の態様では、第1の態様において、前記支持部及び前記昇降部の一方又は両方は、前記排水流路の外側に向けて下向きに傾斜する傾斜面を有し、
前記栓蓋部は、前記昇降部の進退に伴い前記支持部が前記傾斜面の傾斜に沿って変位することで昇降するように構成しても良い。
【0012】
また、本発明の第3の様態では、第2の様態において、前記昇降部は、前記撓み部が弾性変形した状態より更に前記栓蓋部に応力が加えられると、前記傾斜面の傾斜に沿って前記ガイド部内を進退することで前記栓蓋部を下降させ、前記排水口を閉口させるように構成しても良い。
【0013】
上記第2及び第3の様態によれば、排水口が開口状態にある場合に栓蓋部に対して加えられた応力が、撓み部の弾性変形による緩衝可能な応力を上回った際に、昇降部がガイド部内を進退することで栓蓋部を下降させることで、部材の破損を防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明の第4の様態では、第1乃至第3の様態において、前記栓蓋部は、
前記昇降部が前記ガイド部内を後退した際に上昇し、
前記昇降部が前記ガイド部内を前記排水部へ向けて前進した際に下降するように構成しても良い。
【0015】
上記第4の様態によれば、昇降部がガイド部内を後退した際に栓蓋部が上昇することから、栓蓋部を取り外した際に排水流路内への昇降部の突出量を抑えることができる。
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。又、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
[第一実施形態]
図1乃至
図8に示す本発明は、槽体Bの底部にあって、槽体B内に貯留された湯水を排出する排水口1を開閉する排水栓装置であり、弁部材2、排水部3、ガイド部6、昇降部7、伝達部9、操作部10を備えている。
図5は昇降部7の進退方向に直交する断面図である。
【0018】
槽体Bは上方が開放された箱状の洗面ボウルである。槽体Bの底面には開口が形成されており、排水部3が取り付けられることによって排水口1及び排水口1から連続する排水流路が形成されている。一方、槽体Bの側面に、槽体B内の水位が所定以上となった際に溢れ水を排出するオーバーフロー排水口(図示せず)が形成されている。
又、槽体Bの縁部には操作部10が取り付けられている。
【0019】
弁部材2は栓蓋部21、支持部22、目皿25を有し、操作部10に加えられた操作に基づいて進退した昇降部7が支持部22と当接して栓蓋部21が昇降することで排水口1を開閉する。
栓蓋部21は平面視円形であって、外周には排水口1の周縁、即ち後述する排水口部材4の開口上端の周縁と当接可能なパッキンが嵌着されている。又、栓蓋部21の裏面には支持部22が嵌合されている。
支持部22は栓蓋部21の裏面より下方へ向けて延設された金属製の軸部23と、軸部23の下端に形成された樹脂製且つ円錐状の載置部24から成る。
載置部24には排水が通過するための開口が複数形成されているとともに、
図1乃至
図3に示すように、排水流路の外側に向けて下向きに傾斜する第二傾斜面241を有し、栓蓋部21の上昇時には第二傾斜面241の下端が昇降部7に載置される。
目皿25は排水部3の内径と略同一の外径を有する略円形状であり、網目状の捕集部によって排水中に混入する毛髪等を捕集する。
【0020】
排水部3は排水口部材4、継手部材5の縦管部51から成り、槽体Bに取り付けられることによって排水口1及び排水口1から連続する排水流路を形成する。又、継手部材5には排水部3と連通するガイド部6が形成されている。尚、排水部3は下流側において排水トラップ等を介して床下配管と連続し、槽体Bから流入した排水を下流側へと排出する。
【0021】
排水口部材4は上端に外向きの鍔部を有する中空且つ円筒状の管体であり、側面にはナットと螺合する雄螺子及び排水口部材4の内外を貫通する穴が形成されている。又、排水口部材4は外周にアダプター41が配置されており、当該アダプター41を介してナットと鍔部により槽体Bの底面に形成された開口周縁を挟持することによって槽体Bに取り付けられている。排水口部材4は内部に排水流路を形成し、槽体Bに取り付けられた状態において、当該排水流路の上端が排水口1として機能する。
【0022】
継手部材5は断面視略T字状の管体であって、排水口1及び排水口部材4から連続する排水流路を形成する縦管部51と、縦管部51から略水平方向へ向けて分岐するガイド部6から成り、縦管部51の上端は排水口部材4の下端と連結しているとともに、縦管部51の下端は排水トラップと接続されている。
【0023】
ガイド部6は
図1乃至
図3に示すように、継手部材5の側面より外側に向けて略水平方向に突設されており、一端は排水部3(縦管部51)と連通し、他端はナットによって閉塞されている。又、ガイド部6の内部には昇降部7が進退可能に配置された収納部61が形成されている。
収納部61は昇降部7が進退可能な程度の幅を有し、
図5に示すように、上面部62、側面部63、下面部64から成り、上面部62に対して下面部64側がやや幅広に形成された断面視略台形となっている。
【0024】
昇降部7は断面視略三角形状の部材であって、一端が伝達部9に連結され、操作部10に加えられた操作に応じてガイド部6内を進退可能となっており、第一傾斜面71、頂部72、下垂部73から構成されている。
第一傾斜面71は排水流路の外側に向けて下向きに傾斜し、排水流路の外側の端部が伝達部9に連結されている。又、第一傾斜面71は、前述した弁部材2に形成された第二傾斜面241とほぼ同一角度で傾斜している。
頂部72は第一傾斜面71の排水流路の中心側の端部であり、栓蓋部21が上昇状態にある時、載置部24が載置される。又、昇降部7が排水流路の外側に向けて最も後退した状態において、頂部72のみが排水流路内に突出する。
下垂部73は頂部72から下方に向けて延設され、
図1及び
図2に示すように、その下端はガイド部6の下面部64には当接せず、下面部64との間には数ミリ程度の隙間が設けられている。
撓み部75は昇降部7に対して応力が加わった際に弾性変形する箇所であり、本実施形態においては第一傾斜面71、特に第一傾斜面71の下端が撓み部75に相当する。
ここで、昇降部7は
図5に示すように、進退方向に対して直交する断面視において、上面部77、側面部78、下面部79から成り、上面部77に対して下面部79がやや幅広に形成された略台形であって、側面部78が中心より下方において一部膨出している。従って、排水栓装置を組み立てる際に、昇降部7をガイド部6に対して上下逆方向に挿入しようとすると、昇降部7の側面部78がガイド部6の側面部63と干渉し、正しい方向でしか挿入することができないようになっている。
【0025】
伝達部9は樹脂製のアウターチューブと、アウターチューブ内に配置された金属製のインナーワイヤより成るレリースワイヤであって、一端が操作部10に接続されているとともに、他端が昇降部7に接続されている。当該伝達部9は操作部10の変位に伴いインナーワイヤがアウターチューブ内を摺動することによって操作部10へ加えられた操作を昇降部7へと伝達する。又、昇降部7が変位した場合には、昇降部7の変位に伴いインナーワイヤがアウターチューブ内を摺動することによって、昇降部7の変位を操作部10へと伝達する。
【0026】
操作部10は槽体Bの縁部に対し、手動操作によって上下に変位可能に取り付けられた軸体であり、下端に接続された伝達部9を介して昇降部7を進退させることが可能となっている。
【0027】
上記各部材から成る排水栓装置の動作及び作用について説明する。尚、
図1、
図2、及び
図6乃至
図8において、装置の動作の理解を容易にするため、載置部24に形成された開口の一部を省略している。
【0028】
図1に示すように、弁部材2が下降した状態において、栓蓋部21の周囲に嵌着されたパッキンが排水口部材4と当接し、排水口1を閉口している。又、
図6(a)に示すように、昇降部7はガイド部6内を排水流路の中心側へ向けて前進し、頂部72は排水流路(縦管部51)の中心まで達している。
上記弁部材2が下降している状態において、使用者によって操作部10が引き上げられると、引き上げられた操作部10の変位が伝達部9によって昇降部7へと伝えられ、昇降部7がガイド部6内を排水流路の外側に向けて後退する。当該昇降部7の後退に伴い、昇降部7の第一傾斜面71と支持部22(載置部24)の第二傾斜面241が当接すると、第一傾斜面71(第二傾斜面241)の勾配に沿って弁部材2が上昇し、同じく上昇した栓蓋部21に嵌着されたパッキンが排水口部材4から離間することで排水口1が開口する。尚、昇降部7の第一傾斜面71と載置部24の第二傾斜面241とが当接すると、昇降部7の進退方向の応力が第一傾斜面71(第二傾斜面241)によって上下方向の応力に変換されるが、昇降部7の下面部79は収納部61の下面部64に当接しているため、昇降部7は下方へ変位することなく、弁部材2に対してのみ上方への応力が働き、弁部材2及び栓蓋部21を上昇させる。
【0029】
尚、
図2及び
図6(b)に示すように、操作部10が上限まで引き上げられると、昇降部7は頂部72を除く全ての部分がガイド部6内に配置されるとともに、載置部24の下端が頂部72に載置され、栓蓋部21の上昇状態が保持される。この時、使用者が弁部材2を取り外すと、排水流路内には頂部72のみが僅かに突出するのみとなり、清掃が容易且つ意匠性が良い。
【0030】
次に、操作部10が下方へと押し込まれると、操作部10の変位が伝達部9によって昇降部7へと伝えられ、昇降部7がガイド部6内を排水流路の中心側へ向けて前進する。当該昇降部7の前進に伴い、弁部材2が第一傾斜面71(第二傾斜面241)の勾配に沿って自重により漸次下降し、同じく下降した栓蓋部21に嵌着されたパッキンが再び排水口部材4と当接することで排水口1を閉口する。
【0031】
ここで、
図2及び
図6(b)に示すように、弁部材2が上昇し、排水口1が開口状態にある場合において、槽体B内に物品を入れる等することで栓蓋部21に対して下方、即ち排水口1の閉口方向へ向けて応力が加わると、
図7(a)に示すように、撓み部75が弾性変形して当該応力を緩衝する。この時、撓み部75の弾性変形に伴い栓蓋部21がやや下降するが、栓蓋部21に対して加えられていた応力が消失すると、撓み部75が元の形状に復帰することにより、再び栓蓋部21も元の位置にまで上昇する。
【0032】
栓蓋部21に対して加えられた応力によって撓み部75が弾性変形した際、頂部72は排水流路の中心側に向けて突出する様に変形し、頂部72に載置されていた支持部22は第一傾斜面71と当接する。そのため、上記撓み部75が弾性変形した状態より更に栓蓋部21に対して排水口1が閉口する方向へと応力が加えられると、
図7(b)に示すように、第一傾斜面71(第二傾斜面241)の勾配に沿って昇降部7が排水流路の中心側へと前進し、弁部材2(栓蓋部21)を下降させる。そして、栓蓋部21に嵌着されたパッキンが排水口部材4と当接することによって、排水口1が閉口される。
栓蓋部21に作用する応力は、排水口1が閉口したことで栓蓋部21や排水口部材4等に作用する形となり、昇降部7へ応力が作用することは無くなり、昇降部7や撓み部75の破損を防止することができる。
又、昇降部7の変位が伝達部9によって操作部10へと伝達され、操作部10は下方へと変位する。
【0033】
尚、栓蓋部21に対して下方へ向けて強く応力が加えられると、昇降部7が変位する前に撓み部75が過度に変形し、昇降部7が破損する恐れがある。しかし、本発明においては下垂部73と下面部64との間に隙間が形成されているため、栓蓋部21に対して下方へ向けて強く応力が加えた場合には、
図8に示すように、下垂部73がガイド部6の下面部64に当接する。これにより、過度な変形に伴う撓み部75の破損を防止することができる。
【0034】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明の排水栓装置においては、栓蓋部21に対して応力が加えられた際に撓み部75が弾性変形することによって当該応力を緩衝し、部材の破損を防止することが可能となる。又、栓蓋部21に対して更に応力が加えられると、昇降部7が前進することで栓蓋部21が下降可能となり、撓み部75の弾性変形によって緩衝できない程の応力が加えられたとしても確実に部材の破損を防止することが可能となる。又、下垂部73によって、撓み部75が過度に弾性変形することを防止することができる。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、
図9乃至
図12を用いて上記第一実施形態との相違点を中心に説明する。尚、以下に記載する説明においては、第一実施形態と異なる構成についてのみ説明し、第一実施形態と同一の構成については、特に説明の無い限り同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
上記第一実施形態に係る排水栓装置において、弁部材2と昇降部7には共に傾斜面(第二傾斜面241、第一傾斜面71)が形成されていたが、第二実施形態に係る排水栓装置においては、昇降部7にのみ第一傾斜面71が形成されており、弁部材20には傾斜面が形成されていない。
弁部材20は栓蓋部21、支持部202、目皿25を有し、栓蓋部21と目皿25は第一実施形態と同一であるため説明を省略する。
支持部202は栓蓋部21の裏面より下方へ向けて延設された金属製の軸部23と、軸部23の下端に形成された樹脂製且つ円筒状の載置部204から成り、載置部204は端部が排水部3の内側面に沿って垂下するよう構成されている。
【0037】
第二実施形態に係る本発明の排水栓装置の動作は以下の通りである。尚、第一実施形態と同一の動作については省略する。
【0038】
まず、
図9及び
図10(a)に示すように、弁部材20が下降した状態において、使用者によって操作部10が引き上げられると、引き上げられた操作部10の変位が伝達部9によって昇降部7へと伝えられ、昇降部7がガイド部6内を排水流路の外側に向けて後退する。当該昇降部7の後退に伴い、昇降部7の第一傾斜面71と支持部202(載置部204)の下端が当接すると、第一傾斜面71の勾配に沿って弁部材20が上昇し、同じく上昇した栓蓋部21に嵌着されたパッキンが排水口部材4から離間することで排水口1が開口する。又、
図10(b)に示すように、上昇した栓蓋部21は載置部204が頂部72に載置されることによって、上昇状態が保持される。
【0039】
次に、操作部10が下方へと押し込まれると、操作部10の変位が伝達部9によって昇降部7へと伝えられ、昇降部7がガイド部6内を排水流路の中心側へ向けて前進する。当該昇降部7の前進に伴い、弁部材20が第一傾斜面71の勾配に沿って自重により漸次下降し、同じく下降した栓蓋部21に嵌着されたパッキンが再び排水口部材4と当接することで排水口1を閉口する。
【0040】
上記第二実施形態に係る排水栓装置に関し、弁部材20が上昇し、排水口1が開口状態にある場合において、栓蓋部21に対して下方、即ち排水口1の閉口方向へ向けて応力が加わると、
図11(a)に示すように、撓み部75が弾性変形することによって応力を緩衝する。又、撓み部75が弾性変形した状態から更に応力が加えられた際には、
図11(b)に示すように、第一実施形態と同様に昇降部7が前進し、栓蓋部21が下降する。
尚、栓蓋部21に対して下方へ向けて強く応力が加えられた際には、
図12に示すように、第一実施形態と同様に、下垂部73がガイド部6の下面部64に当接し、過度な変形に伴う撓み部75の破損を防止することができる。
【0041】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、
図13乃至
図15を用いて上記第一実施形態との相違点を中心に説明する。尚、以下に記載する説明においては、第一実施形態と異なる構成についてのみ説明し、第一実施形態と同一の構成については、特に説明の無い限り同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
上記第一実施形態において、昇降部7の第一傾斜面71は排水流路の外側に向けて下向きに傾斜していたが、第三実施形態においては、昇降部70の第一傾斜面701は排水流路の外側に向けて上向きに傾斜する。
【0043】
図13に示すように、昇降部70は断面視略三角形状の部材であって、一端が伝達部9に連結され、操作部10に加えられた操作に応じてガイド部6内を進退可能となっており、第一傾斜面701、頂部702から構成されている。
第一傾斜面701は昇降部70の排水流路の中心側の端部から屈曲し、排水流路の外側に向くよう上向きに傾斜しており、端部には頂部702が形成されている。
頂部702は第一傾斜面701の上端に形成され、栓蓋部21が上昇状態にある時、載置部24が載置される。
撓み部705は昇降部70に対して応力が加わった際に弾性変形する箇所であり、本実施形態においては第一傾斜面701の下端が撓み部705に相当する。
【0044】
第三実施形態に係る本発明の排水栓装置の動作は以下の通りである。尚、第一実施形態と同一の動作については省略する。
【0045】
図13及び
図14(a)に示すように、第三実施形態に係る排水栓装置においては、栓蓋部21が下降した状態にある時、昇降部70は排水流路の外側に向けて後退した状態となっている。ここで、使用者によって操作部10が下方へと押し込まれると、押し込まれた操作部10の変位が伝達部9によって昇降部70へと伝えられ、昇降部70がガイド部6内を排水流路の中心側に向けて前進する。
図14(b)に示すように、昇降部70の前進に伴い、昇降部70の第一傾斜面701と支持部22(載置部24)とが当接すると、第一傾斜面701の勾配に沿って弁部材2が上昇し、同じく栓蓋部21に嵌着されたパッキンが排水口部材4から離間することで排水口1が開口する。
【0046】
次に、操作部10が引き上げられると、操作部10の変位が伝達部9によって昇降部70へと伝えられ、昇降部70が排水流路の外側に向けて後退する。当該昇降部70の後退に伴い、弁部材2が第一傾斜面701の勾配に沿って自重により漸次下降し、同じく下降した栓蓋部21に嵌着されたパッキンが再び排水口部材4と当接することで排水口1を閉口する。
【0047】
上記第三実施形態に係る排水栓装置に関し、弁部材2が上昇し、排水口1が開口状態にある場合において、栓蓋部21に対して下方、即ち排水口1の閉口方向へ向けて応力が加わると、
図15(a)に示すように、撓み部705が弾性変形することによって応力を緩衝する。又、応力が消失した際には撓み部705が元の状態へと復帰し、弁部材2は再び上昇することで排水口1は再び開口状態になる。一方、栓蓋部21に下方に向けて応力が加わった状態より、更に下方に向けて応力が加えられると、撓み部705が弾性変形することにより、支持部22(載置部24)が第一傾斜面701と当接する。そのため、上記撓み部705が弾性変形した状態より更に栓蓋部21に対して排水口1が閉口する方向へと応力が加えられると、
図15(b)に示すように、第一傾斜面701の勾配に沿って昇降部70が排水流路の外側に向けて後退し、弁部材2(栓蓋部21)を下降させる。そして、栓蓋部21に嵌着されたパッキンが排水口部材4と当接することによって、排水口1が閉口される。
【0048】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の排水栓装置は洗面ボウルにのみ取り付けられるものではなく、浴槽やキッチンシンクその他の設備機器に取り付けられても良い。
又、第二実施形態において、昇降部7にのみ第一傾斜面71が形成されており、弁部材20には傾斜面が形成されていなかったが、弁部材20にのみ傾斜面が形成されていても良い。
又、撓み部の形成される箇所は各実施形態において記載された箇所に限られるものではない。例えば、第一実施形態に記載した撓み部75は第一傾斜面71の下端に形成されていたが、第一傾斜面71の一部が薄肉に形成される等によって下端以外が弾性変形するよう構成されても良く、第一傾斜面71の全体が弾性変形するよう構成されても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 排水口
2、20 弁部材
21 栓蓋部
22、202 支持部
23 軸部
24、204 載置部
241 第二傾斜面(傾斜面)
25 目皿
3 排水部
4 排水口部材
41 アダプター
5 継手部材
51 縦管部
6 ガイド部
61 収納部
62 上面部
63 側面部
64 下面部
7、70 昇降部
71、701 第一傾斜面(傾斜面)
72、702 頂部
73 下垂部
75、705 撓み部
77 上面部
78 側面部
79 下面部
9 伝達部
10 操作部
B 槽体