(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076036
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】車両用警告装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240529BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08B21/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187383
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
【テーマコード(参考)】
5C086
5H181
【Fターム(参考)】
5C086AA60
5C086BA22
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA08
5C086DA33
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA18
5C086FA20
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181FF22
5H181FF33
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】車両走行中に運転者による携帯機器の操作を検知した場合に警告を行いながら、所定の条件を満たす場合には特定の機能についての操作制限を緩和し、安全性と利便性を両立させる。
【解決手段】車両の走行中に、運転者の状態及び携帯機器の使用状態に応じて運転者に警告を発する車両用警告装置であり、運転者の視線の方向を含む視線情報と、運転者の特定部位の動きを示す動き情報と、携帯機器の画面の状態を示す画面情報とを取得し、これらに基づいて、運転者の状態と運転者による携帯機器の使用状態を判定し、判定結果に応じて運転者に対する警告レベルを決定する警告レベル判定部と、警告レベルに応じて、警告レベルが高いほど強い警告を行う警告部と、を備え、警告レベル判定部は、携帯機器における使用中の機能が予め使用が許可された許可機能である場合に警告レベルを低下させる、車両用警告装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行中に、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態に応じて運転者に警告を発する車両用警告装置であって、
運転者の視線の方向を含む視線情報を取得する視線情報取得部と、
運転者の特定部位の動きを示す動き情報を取得する動き情報取得部と、
前記携帯機器の画面の状態を示す画面情報を取得する機器情報取得部と、
前記視線情報、前記動き情報、及び、前記画面情報に基づいて、運転者の状態と運転者による前記携帯機器の使用状態を判定し、判定結果に応じて運転者に対する警告レベルを決定する警告レベル判定部と、
前記警告レベルに応じて、前記警告レベルが高いほど強い警告を行う警告部と、を備え、
前記警告レベル判定部は、前記携帯機器における使用中の機能が予め使用が許可された許可機能である場合に警告レベルを低下させる、車両用警告装置。
【請求項2】
前記警告レベル判定部は、前記画面情報に基づいて前記携帯機器の使用中の機能が許可機能であるか否かを判別する、請求項1に記載の車両用警告装置。
【請求項3】
前記許可機能はナビケーション機能である、請求項1又は請求項2に記載の車両用警告装置。
【請求項4】
前記画面情報は、前記携帯機器の画面の点灯状態を示す点灯情報と、前記許可機能の使用中に画面に表示される機能特定情報とを含む、請求項1又は請求項2に記載の車両用警告装置。
【請求項5】
前記機能特定情報は、アイコンまたは二次元コードである請求項4に記載の車両用警告装置。
【請求項6】
前記警告レベル判定部は、前記車両が高度運転支援モードによる走行中である場合に、警告レベルを低下させる、請求項1又は請求項2に記載の車両用警告装置。
【請求項7】
前記警告レベル判定部は、前記車両の走行速度を示す速度情報を取得し、前記走行速度が速いほど警告レベルを上げる、請求項1又は請求項2に記載の車両用警告装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用警告装置、特に、車両走行中の運転者による携帯機器に対する操作について警告を行う車両用警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末等の携帯機器の普及に伴い、所謂「ながらスマホ」、すなわち、車両走行中に運転者が携帯機器を凝視したり操作したりする事例が散見されるようになっている。運転者によるこのような行為は、車両事故を誘発する虞があることから、運転者による携帯機器の操作等を制限するための技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ドライバの特定部位の位置情報と特定部位近傍の光の反射率の差異に基づいて、ドライバがスマートフォン等を操作しているか否かを判定し、ドライバがスマートフォン等の機器を操作していると判定した場合に、安全な運転をするように促す情報処理装置が開示されている。
また、特許文献2には、赤外線センサにより測定した車両の室内の熱分布と、シフトセンサにより検知したシフトポジションに基づき、車両の走行中に運転手が携帯装置を使用していると判断した場合に、運転手に対し警告を行う警告装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-111508号公報
【特許文献2】特開2018-156539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、例えば、携帯機器に搭載されたナビゲーション機能を使用して目的地までの走行路や走行時間を確認する等、運転に必要な情報を携帯機器から取得する運転者が増加している。車両走行中の携帯機器の操作は厳しく制限すべきであるものの、特定の機能の操作・使用については、安全性が担保される場合に限り、許容してもよい場合もある。
【0006】
しかしながら、上述した従来の情報処理装置または警告装置は、運転者が携帯機器を操作していると判断した場合には一律に警告を行うものであるため、実質的に、携帯機器の操作・使用は全面的に禁止行為として扱われることとなる。このため、運転に必要な情報を得るための機能であっても一切の使用が許容されず、利便性を欠く場合がある。
【0007】
本発明は、このような状況に対処することを課題としている。すなわち、車両走行中に運転者による携帯機器の操作を制限するための注意喚起を行いながら、特定の機能に関する操作については制限を緩和し、安全性と利便性を両立させること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明による車両用警告装置は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様は、車両の走行中に、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態に応じて運転者に警告を発する車両用警告装置であって、運転者の視線の方向を含む視線情報を取得する視線情報取得部と、運転者の特定部位の動きを示す動き情報を取得する動き情報取得部と、前記携帯機器の画面の状態を示す画面情報を取得する機器情報取得部と、前記視線情報、前記動き情報、及び、前記画面情報に基づいて、運転者の状態と運転者による携帯機器の使用状態を判定し、判定結果に応じて運転者に対する警告レベルを決定する警告レベル判定部と、前記警告レベルに応じて、前記警告レベルが高いほど強い警告を行う警告部と、を備え、前記警告レベル判定部は、前記携帯機器における使用中の機能が予め使用が許可された許可機能である場合に警告レベルを低下させる、車両用警告装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する運転支援装置によれば、車両走行中に運転者による携帯機器の操作を検知した場合に警告を行いながら、所定の条件を満たす場合には特定の機能についての操作制限を緩和し、安全性と利便性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用警告装置を含む車両用制御システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用警告装置が搭載された車室内を撮像した画像の一例を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用警告装置が搭載された車室内を撮像した画像の一例を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用警告装置が搭載された車室内で使用される携帯機器の画面の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用警告装置の記憶部に記憶された、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態と当該状態に応じた警告レベルとが対応付けられたテーブルの一例を示す説明図であり、一般機能使用時の警告レベル判定に関するテーブルを示す。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両用警告装置の記憶部に記憶された、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態と当該状態に応じた警告レベルとが対応付けられたテーブルの一例を示す説明図であり、許可機能使用時の警告レベル判定に関するテーブルを示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る車両用警告装置の記憶部に記憶された、警告レベルと警告レベルに応じた警告メッセージが対応付けられたテーブルの一例を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る車両用警告装置における警告処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る車両用警告装置において、一般機能使用時の警告レベルの判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係る車両用警告装置において、許可機能使用時の警告レベルの判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用警告装置は、車両用制御システム1の一部として機能し、車両100に設けられる。車両用制御システム1は、車両100の走行に必要な種々の電子機器類、及び、これらの電子機器類を制御する複数の車載ECU(Electronic Control Unit)を備えている。各電子機器及び各車載ECU等は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワーク3により相互に通信可能に接続されると共に、中継装置としてのセントラルゲートウェイ(CGW)4に接続されて車両用制御システム1を構成する。
【0013】
各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成することができる。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
以下の説明において、本実施形態にかかる車両用警告装置(警告ECU10)に直接関与しない電子機器等についての詳細な説明及び図示は省略する。
【0014】
図1に示すように、車両用制御システム1は、車載ECUとして、警告ECU10、乗員監視ECU20、車内カメラECU30、及び報知ECU40を含んで構成されている。各車載ECUは、各車載ECUの制御対象である電子機器に接続され、車載ネットワーク3から取得する情報(データ)に基づいて各々が接続された電子機器の動作を制御する。また、各車載ECUは、接続された電子機器から取得した各電子機器の動作に係る情報を車載ネットワーク3へ出力する。
【0015】
つまり、本実施形態では、警告ECU10、乗員監視ECU20、車内カメラECU30、及び報知ECU40が相互に情報の送受信を行い、警告ECU10では、乗員監視ECU20及び車内カメラECU30から受信した情報に基づいて運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態を監視し、監視結果に応じた警告に関する制御信号を報知ECU40に送信することで、運転者に警告を発する。警告ECU10の詳細は後述する。
【0016】
乗員監視ECU20は、車両に乗車している乗員を監視する乗員監視装置(DMS:Driver Monitoring System)の一部を構成し、乗員監視装置に含まれるカメラ、マイク、乗員を照らす照明機器、座席シートに設けられる着座センサ、ドアの開閉センサ(いずれも図示せず)等の電子機器を制御することにより乗員を監視する。
【0017】
例えば、乗員監視ECU20では、カメラ21によって撮像された画像に基づいて乗員の視線を監視し、監視結果としての視線情報を車載ネットワーク3に出力する。具体的には、乗員監視ECU20では、カメラ21によって撮像された画像から、乗員の視線の方向と、視線の先の目標物の位置座標を算出し、視線の方向、算出した位置座標及び位置座標の変位に関する情報などの少なくとも何れかを含む視線情報を車載ネットワーク3に出力する。
【0018】
車内カメラECU30は、車内カメラ31に接続され、車内カメラ31を制御して運転者の手や指などの特定部位の動きを監視すると共に、運転席及び運転席周辺にある携帯機器の状態を監視する。車内カメラ31は、天井やピラー等の運転席よりも上方位置から運転席及び運転者を撮像可能な位置に設けられ、撮像した画像を車内カメラECU30に出力する。車内カメラECU30では、車内カメラ31によって撮像された画像に基づいて、運転者の特定部位の動きを示す動き情報と携帯機器の画面の状態を示す画面情報を抽出する。
【0019】
より具体的には、車内カメラECU30は、車内カメラ31によって撮像された画像に基づいて、運転者の手や指などの特定部位の位置座標を算出し、位置座標の変位を特定部位の動き情報として車載ネットワーク3に出力する。また、車内カメラECU30は、車内カメラ31によって撮像された画像に基づいて、少なくとも、携帯機器の画面の点灯状態を示す点灯情報を含む画面情報を車載ネットワーク3に出力する。また、車内カメラECU30は、携帯機器の画面に使用中の機能(アプリケーション)を特定するためのアイコンや、QRコード(登録商標)などの二次元コードが表示されている場合には、これ機能特定情報として画面情報に含めて車載ネットワーク3に出力する。なお、携帯機器の画面の位置座標と、画面の位置座標の変位を画面情報に含めてもよい。
【0020】
図2及び
図3に、車内カメラ31によって撮像される画像の一例を示す。
車内カメラ31では、天井やピラー等の運転席よりも上方位置から運転席及び運転者を撮像するため、例えば、ステアリング5、運転席正面のメーター32、表示装置42などの車載機器、ダッシュボード43、運転者の手や指等の特定部位81、運転者が把持している携帯機器80の画面等を視野に含む画像を撮像することができる。
【0021】
図2では、運転者が手81で携帯機器80を把持している画像の例を示している。
図3では、携帯機器80がダッシュボード43の所定の位置に固定された画像の例を示している。このような画像を動画として取得又は静止画として連続的に取得することにより、運転者の手や指の動きについての動き情報、携帯機器の画面の位置を示す位置座標及び位置座標の変位を取得することができる。
図2及び
図3では、携帯機器80の画面に、後述するQRコード(登録商標)82が表示されている。
【0022】
図4に、携帯機器80の画面の一例を示す。
図4の例では、携帯機器80において、ナビゲーション機能が使用されている場合の画面を示している。
図4の例では、画面の端部に、ナビゲーション機能が使用されていることを示す機能特定情報としてのQRコード(登録商標)82が表示されている。車内カメラ31では、取得した画像にこのようなQRコード(登録商標)が含まれていた場合に、QRコード(登録商標)を機能特定情報として画面情報に含めることができる。携帯機器80の画面には、機能特定情報として、QRコード(登録商標)はもちろん、これ以外のマトリクス式又はスタック式の二次元コードや、アイコン、透かしなどを表示することができる。
【0023】
報知ECU40は、例えば、スピーカ41及び表示装置42と接続され、警告ECU10からの制御信号に従い、車両100の運転者に警告レベルに応じた警告を行うようスピーカ41又は表示装置42を制御する。
【0024】
スピーカ41は、報知指示に従って、警告レベルに対応付けて定められた警告メッセージ(後述)を音声として出力したり、所定の警告音などを出力したりすることができる。スピーカ41は、必ずしも報知や警告用に設ける必要はなく、例えば、車載オーディオ装置やナビゲーションシステムのスピーカと兼用することができる。
【0025】
表示装置42は、例えば、ダッシュボードに備えられる表示パネルや、フロントウィンドウに投影するHUD(Head-Up Display)などから構成され、乗員が視認可能な画像を表示する。表示装置42がHUDである場合、車両100のフロントウィンドウに警告レベルに応じたメッセージや画像を表示して、車両100の乗員、特に運転者に対して警告を行うことができる。
【0026】
報知ECU40は、この他にも、例えば、運転者が着座する運転座席のシートを振動させるシートバイブレータや、ステアリングを振動させるステアリングバイブレータを制御することで、警告レベルに応じて、運転者に振動によって警告を発することができる。
【0027】
続いて、車両用警告装置としての警告ECU10について説明する。
図1に示すように、警告ECU10は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM112、RAM113及び、記憶部114を備えている。
CPU111は、ROM112に格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行する。本実施形態では、CPU111は、ROM112に格納されたプログラムを例えばRAM113等のメモリに読み込んで実行することにより、
図1に示す視線情報取得部11、動き情報取得部12、画面情報取得部13、警告レベル判定部14、及び警告部15として機能する。
【0028】
また、記憶部114には、CPU111が視線情報取得部11、動き情報取得部12、画面情報取得部13、警告レベル判定部14、及び警告部15として動作するために必要な情報が記憶されている。以下、視線情報取得部11、動き情報取得部12、画面情報取得部13、警告レベル判定部14、及び警告部15について説明する。
【0029】
視線情報取得部11は、運転者の視線の方向を含む視線情報を取得する。本実施形態では、視線情報取得部11は、車載ネットワーク3を介して乗員監視ECU20から視線情報を取得する。取得する視線情報には、乗員の視線の方向と、視線の先の目標物の位置座標及び位置座標の変位に関する情報などの少なくとも何れかが含まれている。視線情報を取得することで、後述する警告レベル判定部14において、運転者の視線が前方にあるか否か(わき見運転をしていないか否か)、携帯機器の画面を凝視しているかなどを判定することができる。
【0030】
動き情報取得部12は、運転者の特定部位の動きを示す動き情報を取得する。本実施形態では、動き情報取得部12は、車載ネットワーク3を介して車内カメラECU30から動き情報を取得する。動き情報には、少なくとも、運転者の手や指などの特定部位の位置座標と、位置座標の変位に係る情報とが含まれている。動き情報を取得することで、後述する警告レベル判定部14では、画面情報と併せて、例えば、運転者の指や手が、携帯機器の画面に触れている等の携帯機器の操作が疑われるような動きがあるか否かを判定することができ、携帯機器の使用状態を判定することができる。
【0031】
画面情報取得部13、携帯機器の画面の状態を示す画面情報を取得する。本実施形態では、画面情報取得部13は、車載ネットワーク3を介して車内カメラECU30から画面情報を取得する。画面情報には、少なくとも、携帯機器の画面の点灯状態を示す点灯情報と、携帯機器の画面に使用中の機能(アプリケーション)を特定するアイコンや、QRコード(登録商標)などの二次元コードが表示されている場合にはこれらの機能特定情報が含まれる。また、携帯機器の画面の位置座標と、位置座標の変位を画面情報に含めてもよい。
【0032】
携帯機器の画面の点灯情報には、例えば、明るく点灯している状態、薄暗く点灯している状態などの画面の明るさの程度が異なる情報が含まれている。明るさの程度は、携帯機器の種類や設定状況に依存するものの、一般的には、携帯機器に対する操作が継続している状態では明るく点灯している状態となり、一定時間操作がない場合には薄暗く点灯している状態に移行し、その後、消灯した状態となる。
【0033】
また、特に、携帯機器の画面が明るく点灯している状態では、乗員の視線が携帯機器の画面に向きがちになってしまったり、夜間運転時には輝度差により一時的に暗い箇所(前方)が見えなったりするなどの危険が考えられる。そこで、点灯情報に、このような明るさの程度を示す情報を含めることで、後述する警告レベル判定部14における携帯機器に対する使用状態の判定や警告レベルの判定の際に有用な情報となる。
【0034】
なお、明るく点灯している状態又は薄暗く点灯している状態の何れかであるかは、携帯機器の画面の輝度に対する閾値によって定めることができる。一方、画面の輝度は、画面の点灯色により変化する。すなわち、例えば、携帯機器に尾にて画面のバックライトが最大輝度で点灯している状態での黒色画面と、低輝度で点灯している状態での白色画面では、白色の方が明るく感じられる等、画面の表示色によって表示される画面の明るさの程度が変化することもある。このため、上記した輝度に対する閾値を表示色に応じて変更してもよい。
【0035】
車両走行中の運転者による携帯機器の使用は、携帯機器の画面を凝視したり操作したりすることによって前方不注意となり、車両事故を誘発する虞がある。このため、車両走行中に運転者が携帯機器を使用している場合には、運転者に対して警告(注意喚起)を行う必要がある。このため、画面情報取得部13では、運転者による携帯機器の使用の状態を判定する情報の一つとして携帯機器の画面の点灯状態を示す点灯情報を含む画面情報を取得している。
【0036】
一方、携帯機器に搭載されたナビゲーション機能を使用して目的地までの走行路や走行時間を確認する等、運転に必要な情報を携帯機器から取得する場合もある。ナビゲーション機能などの特定の機能を使用する場合であって、安全性が担保される場合に限っては、その他の機能の使用と同様の警告ではなく、ある程度の使用を許容してよい場合もある。そこで、画面情報に、機能特定情報を含めることで、後述する警告レベル判定部14において、携帯機器で使用中の機能が、予め使用が許容された許可機能であるか否かを判定することができる。
【0037】
動き情報取得部12及び画面情報取得部13は、いずれも車内カメラECU30から、車内カメラ31によって撮像された画像を取得し、当該画像からそれぞれ動き情報と画面情報とを演算により取得してもよい。
【0038】
警告レベル判定部14は、視線情報、動き情報、及び、画面情報に基づいて、運転者の状態と運転者による携帯機器の使用状態とを判定し、判定結果に応じて運転者に対する警告レベルを判定する。また、警告レベル判定部14は、車両100が高度運転支援モードによる制御下で走行しているか否かを示す制御情報や、車速情報を取得し、これらの情報を警告レベルの判定に用いることができる。警告レベル判定部14による警告レベルの判定処理については後述する。
【0039】
警告部15は、警告レベル判定部14によって判定された警告レベルに応じた警告を行う。具体的には、例えば、警告部15は、警告レベルに応じた警告に係る制御信号を、車載ネットワーク3を介して報知ECU40に出力し、報知ECU40を介して運転者に対して警告を行う。警告部15によってなされる警告には、例えば、警告メッセージの音声による出力、警告メッセージの表示、警告音鳴動等が挙げられる。
【0040】
記憶部114には、視線情報取得部11、動き情報取得部12及び画面情報取得部13から受信した情報が記憶されている。また、記憶部114には、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態と当該状態に応じた警告レベルとが対応付けられたテーブル(
図5、
図6照)や、警告レベルと警告レベルに応じた警告メッセージが対応付けられたテーブル(
図7照)などが記憶されている。
【0041】
以下、このように構成された警告ECU10における警告処理について、
図8から
図10のフローチャートに従って説明する。なお、以下の説明においては、携帯機器が許可機能としてナビゲーション機能を使用している場合について説明する。
図8は、警告ECU10による警告処理の流れを示すフローチャートである。
警告ECU10では、視線情報取得部11が運転者の視線情報を取得し(ステップS101)、動き情報取得部12が運転者の手や指の動きに係る動き情報を取得し(ステップS102)、画面情報取得部13が携帯機器の画面情報を取得し(ステップS103)、それぞれ警告レベル判定部14に出力する。
【0042】
警告レベル判定部14では、画面情報に含まれる機能特定情報に基づいて、携帯機器で使用されている機能がナビゲーション機能であるか判定する(ステップS104)。警告レベル判定部14が、機能特定情報に基づいて、携帯機器で使用されている機能がナビゲーション機能でない、すなわち、許可機能でないと判定した場合には(ステップS104)、許可機能以外の機能が使用されているとして、一般機能使用時の警告レベル判定処理(ステップS105)を行う。
【0043】
一方、携帯機器で使用されている機能がナビゲーション機能であると判定した場合には(ステップS104)、許可機能使用時の警告レベル判定処理(ステップS106)を行う。警告レベル判定処理(ステップS105又はステップS106)によって警告レベルが判定されると、警告部15において、判定された警告レベルに応じた警告に係る制御信号を報知ECU40に出力し、運転者に対して警告を行う。
【0044】
(警告レベル判定部14による警告レベルの判定処理)
警告ECU10における警告レベルの判定処理は、携帯機器において使用が許可された許可機能以外の機能を使用している場合には、一般機能使用時の警告レベル判定処理(
図8のステップS105)を行い、許可機能を使用している場合には、許可機能使用時の警告レベル判定処理(
図8のステップS106)を行っており、携帯機器で使用中の機能に応じて異なる処理を行う。
【0045】
(1)一般機能使用時の警告レベル判定処理
警告レベル判定部14による一般機能使用時の警告レベル判定処理は、
図9のフローチャートに従って行われ、例えば
図5に示すように、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態に応じて警告レベルが決定される。具体的な処理は以下の通りである。
【0046】
警告レベル判定部14は、まず、視線情報に基づいて運転者が脇見をしているか否かを判定する(ステップS201)。
運転者が脇見をしており(ステップS201のYes)、携帯機器の画面が点灯している場合には(ステップS212のYes)、点灯状態の明るさの程度に拘わらず、警告レベルを3.0とする(ステップS215)。
【0047】
運転者が脇見をしており(ステップS201のYes)、携帯機器の画面が点灯していないものの(ステップS201のYes,ステップS212のNo)、運転者の手や指について、携帯機器の操作が疑われるような動きがある場合(ステップS213のYes)は、警告レベル3.0とし(ステップS215)、運転者の手や指が動いていない場合(ステップS213のNo)は、警告レベル2.5とする(ステップS214)。
【0048】
運転者が脇見をしておらず(ステップS201のNo)、携帯機器の画面が点灯している場合には(ステップS202のYes)、点灯状態が暗いか明るいかを判定する(ステップS206)。
【0049】
携帯機器の画面が明るく点灯している場合において(ステップS206のYes)、運転者の手や指について、携帯機器の操作が疑われるような動きがある場合(ステップS209のYes)は、警告レベル2.0とし(ステップS211)、運転者の手や指について、携帯機器の操作が疑われるような動きがない場合(ステップS209のNo)は、警告レベル1.5とする(ステップS210)。
【0050】
携帯機器の画面が明るく点灯していない、すなわち薄暗く点灯している場合において(ステップS206のNo)、運転者の手や指について、携帯機器の操作が疑われるような動きがある場合(ステップS207のYes)は、警告レベル1.0とし(ステップS208)、運転者の手や指について、携帯機器の操作が疑われるような動きがない場合(ステップS207のNo)は、警告レベル0.5とする(ステップS205)。
【0051】
運転者が脇見をしておらず(ステップS201のNo)、携帯機器の画面が点灯していない場合には(ステップS202のNo)、運転者の手や指について、携帯機器の操作が疑われるような動きがあるか否かを判定する(ステップS203)。
運転者の手や指が動いている場合(ステップS203のYes)は、警告レベル0.5とし(ステップS205)、運転者の手や指が動いていない場合(ステップS203のNo)は、警告レベル0とする(ステップS204)。
【0052】
警告レベル判定部14は、車両100が高度運転支援モードによって走行している場合には(ステップS216のYes)、警告レベルを低減させる。すなわち、ステップS201からステップS215で判定した警告レベルから1レベル引き下げた警告レベルを最終的な判定結果とする(ステップS217)。警告レベル判定部14は、車両100が手動運転で走行している場合には(ステップS216のNo)、ステップS201からステップS215で判定された警告レベルを最終的な判定結果とする。なお、警告レベル判定部14は、車両の走行速度を示す車速情報を取得している場合には、車速情報に応じ、車速が早いほど警告レベルを上げる等、最終的な判定結果に反映させることができる。
【0053】
(2)許可機能使用時の警告レベル判定処理
警告レベル判定部14による許可機能使用時の警告レベル判定処理は、
図10のフローチャートに従って行われ、例えば
図6に示すように、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態に応じて警告レベルが決定される。具体的な処理は以下の通りである。
【0054】
警告レベル判定部14は、まず、視線情報に基づいて運転者が脇見をしているか否かを判定する(ステップS301)。
運転者が脇見をしておらず(ステップS301のNo)、携帯機器の画面位置が固定されている場合(ステップS302のYes)、運転者の手や指が動いているか否かを判定する(ステップS303)。なお、ステップS302では、携帯電話の画面位置を示す位置座標の変位があるか否かに基づいて判定され、例えば、
図3に示すように携帯機器がダッシュボードの固定された位置に配置されている場合などに、携帯機器の画面位置が固定されていると判定される。
【0055】
運転者が脇見をしておらず(ステップS301のNo)、携帯機器の画面位置が固定されている場合(ステップS302のYes)において、運転者の手や指が動いていない場合には(ステップS303のNo)、警告レベルを0とし(ステップS304)、運転者の手や指が動いている場合には(ステップS303のYes)警告レベルを0.5とする(ステップS305)。
【0056】
運転者が脇見をしておらず(ステップS301のNo)、携帯機器の画面位置が固定されていない場合(ステップS302のNo)、運転者の手や指が動いているか否かに拘わらず警告レベルを0.5とする(ステップS305)。なお、携帯機器の画面位置が固定されていない場合には、運転者が携帯機器を手に持った状態であると想定されるため、運転者の視線や手、指の動きに拘わらず警告レベルを一律に最大レベルとしてもよい。
【0057】
運転者が脇見をしており(ステップS301のYes)、携帯機器の画面位置が固定されている場合(ステップS306のYes)、運転者の手や指が動いているか否かを判定する(ステップS307)。
運転者が脇見をしており(ステップS301のYes)、携帯機器の画面位置が固定されている場合(ステップS306のYes)において、運転者の手や指が動いていない場合には(ステップS307のNo)、警告レベルを2.5とし(ステップS308)、運転者の手や指が動いている場合には(ステップS307のYes)警告レベルを3.0とする(ステップS309)。
運転者が脇見をしており(ステップS301のYes)、携帯機器の画面位置が固定されていない場合(ステップS306のNo)、運転者の手や指が動いているか否かに拘わらず警告レベルを3.0とする(ステップS309)。
【0058】
警告レベル判定部14は、車両100が高度運転支援モードによって走行している場合には(ステップS310のYes)、警告レベルを低減させる。すなわち、ステップS301からステップS309で判定した警告レベルから1レベル引き下げた警告レベルを最終的な判定結果とする(ステップS311)。警告レベル判定部14は、車両100が手動運転で走行している場合には(ステップS310のNo)、ステップS301からステップS309で判定された警告レベルを最終的な判定結果とする。
【0059】
なお、警告レベル判定部14は、図示しない車速センサから車両の走行速度を示す車速情報を取得することができ、この場合には、車速情報に応じて、車速が早いほど警告レベルを上げる等、最終的な判定結果に反映させることができる。
【0060】
このように、警告レベル判定部14は、携帯機器における使用中の機能が予め使用が許可された許可機能である場合には、一般機能使用時の警告レベル判定処理と異なる処理を行い、所定の条件を満たす場合に、一般機能使用時の警告レベルよりも低い警告レベルを選択する。つまり、車両走行中に、許可機能以外の一般的な機能についての携帯機器が使用された場合には、これを制限するための注意喚起を行い、特定の許可機能に関する使用については所定の条件を満たす場合に使用を許可するよう制限を緩和することで、安全性と利便性を両立させることができる。
【0061】
図1に示すように、車両100に、このような車両用警告装置(警告ECU)を含む車両用制御システム1を搭載することで、車両100では、車両走行時の運転者による携帯機器の使用に対して、適切な警告(注意喚起)を行いつつ、ナビゲーション機能などの予め定めた許可機能については使用制限が緩和されるので、安全性と利便性を両立させることができる。
【0062】
なお、上記した実施形態では、運転者の状態及び運転者による携帯機器の使用状態を、カメラ21によって撮像した画像(乗員監視ECU)と車内カメラ31によって撮像した画像(車内カメラECU)とを用いて取得した各種情報を用いて判定したが、これに限られず、例えば、360°撮像可能なカメラを車内に搭載し、これによって撮像された画像から各種情報を取得する構成とすることもできる。
【0063】
以上述べたように、本実施形態に係る車両用警告装置によれば、車両走行中に運転者による携帯機器の操作を制限するための注意喚起を行いながら、特定の機能に関する操作については制限を緩和し、安全性と利便性を両立させることができる。
【0064】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:車両用制御システム、2:警告レベル、3:車載ネットワーク、4:CGW、10:警告ECU、11:視線情報取得部、12:動き情報取得部、13:画面情報取得部、14:警告レベル判定部、15:警告部、20:乗員監視ECU、21:カメラ、30:車内カメラECU、31:車内カメラ、40:報知ECU、41:スピーカ、42:表示装置、80:携帯機器、100:車両、111:CPU、112:ROM、113:RAM、114:記憶部