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特開2024-76042液圧装置、液圧モータ、及び、建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076042
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】液圧装置、液圧モータ、及び、建設機械
(51)【国際特許分類】
   F03C 2/08 20060101AFI20240529BHJP
   F16D 25/0638 20060101ALI20240529BHJP
   F16D 55/38 20060101ALI20240529BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20240529BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20240529BHJP
   F16D 121/06 20120101ALN20240529BHJP
【FI】
F03C2/08 B
F16D25/0638
F16D55/38
F16D65/18
F16D121:16
F16D121:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187402
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正隆
(72)【発明者】
【氏名】小森 悦朗
【テーマコード(参考)】
3H084
3J057
3J058
【Fターム(参考)】
3H084AA25
3H084BB26
3H084BB30
3H084CC21
3J057AA04
3J057BB04
3J057CA03
3J057CA11
3J057DA06
3J057HH04
3J057JJ10
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA70
3J058AA78
3J058AA79
3J058BA12
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC78
3J058FA17
(57)【要約】
【課題】揺動回転体に対するロックとその解除をスムーズに、かつ、確実に行うことができる液圧装置、液圧モータ、及び、建設機械を提供する。
【解決手段】液圧装置は、第1ブロック、第2ブロック、揺動回転体、回転規制軸、第1摩擦板、第2摩擦板、押圧機構を備える。第1ブロックは複数の内歯を有する。第2ブロックは第1ブロックに対して相対回転可能である。揺動回転体は内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置され、内歯と外歯の間に作動室を形成する。回転規制軸は揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、揺動回転体の揺動回転を許容しつつ揺動回転体と第2ブロックを相対回転不能に連結する。第1摩擦板は揺動回転体と連動して回転する。第2摩擦板は第2ブロックまたは第1ブロックに回転を規制される。押圧機構は第1摩擦板と第2摩擦板を押し付ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、
前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、
前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、
前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、
を備えている液圧装置。
【請求項2】
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板は環状に形成され、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板は、前記回転規制軸の外周側に配置されている請求項1に記載の液圧装置。
【請求項3】
前記揺動回転体の揺動成分を前記第1ブロックの回転中心軸線を中心する同期回転として取り出す回転変換ブロックを備え、
前記第1摩擦板は、前記回転変換ブロックに相対回転不能に支持されている請求項1または2に記載の液圧装置。
【請求項4】
前記第1摩擦板は、前記揺動回転体の端面に相対回転不能に取り付けられている請求項1または2に記載の液圧装置。
【請求項5】
前記第1摩擦板は、前記回転規制軸の外周に相対回転不能に取り付けられている請求項1または2に記載の液圧装置。
【請求項6】
前記押圧機構は、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板に押し付け力を付与する押圧部材と、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板が摩擦接触する方向に前記押圧部材を付勢する付勢装置と、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板の摩擦接触が解除される方向に前記押圧部材を変位させる制動解除装置と、
を備えている請求項1または2に記載の液圧装置。
【請求項7】
前記制動解除装置は、導入された作動液の圧力によって前記押圧部材を摩擦解除方向に変位させるピストン装置によって構成されている請求項6に記載の液圧装置。
【請求項8】
前記押圧部材、前記付勢装置、及び、前記ピストン装置は、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板とともに、前記回転規制軸の外周側に配置されている請求項7に記載の液圧装置。
【請求項9】
内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、
前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、
前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
前記揺動回転体の揺動回転をロックするブレーキ機構と、
を備え、
前記ブレーキ機構の少なくとも一部は、前記回転規制軸の外周側に配置されている液圧装置。
【請求項10】
前記ブレーキ機構は、
前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、
前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、
を備えている請求項9に記載の液圧装置。
【請求項11】
内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、
前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、
前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
作動液を前記作動室に供給する供給通路と、
前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、
前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、
前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、
前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、
を備えている液圧モータ。
【請求項12】
内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、
前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、
前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
作動液を前記作動室に供給する供給通路と、
前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、
前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、
前記揺動回転体の揺動回転をロックするブレーキ機構と、
を備え、
前記ブレーキ機構の少なくとも一部は、前記回転規制軸の外周側に配置されている液圧モータ。
【請求項13】
走行駆動部と、
作動液の圧力を受けて前記走行駆動部を動作させる液圧モータと、を備え、
前記液圧モータは、
内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、
前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、
前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
作動液を前記作動室に供給する供給通路と、
前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、
前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、
前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、
前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、
を備えている建設機械。
【請求項14】
走行駆動部と、
作動液の圧力を受けて前記走行駆動部を動作させる液圧モータと、を備え、
前記液圧モータは、
内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、
前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、
前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、
作動液を前記作動室に供給する供給通路と、
前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、
前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、
前記揺動回転体の揺動回転をロックするブレーキ機構と、
を備え、
前記ブレーキ機構の少なくとも一部は、前記回転規制軸の外周側に配置されている建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧装置、液圧モータ、及び、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の走行駆動部等では、駆動源として液圧モータが用いられることがある。この種の用途で用いられる液圧モータとして、筒部の内側に揺動回転体が回転可能に配置され、筒部と揺動回転体の間に、作動液が順次吸排される複数の作動室が形成されたものが知られている。
【0003】
この液圧モータは、筒部の内周に複数の内歯が設けられ、揺動回転体の外周面に、筒部の内歯よりも歯数の少ない(例えば、一つ歯数が少ない。)複数の外歯が形成されている。内歯は揺動回転体の外歯と噛み合うように接することにより、筒部と揺動回転体の間に複数の作動室を形成する。液圧モータは、作動室に作動液を供給するための供給通路と、作動室から作動液を排出するための排出通路を備えている。
【0004】
また、この液圧モータには、上記の筒部を有する第1ブロックとは別体の第2ブロックが設けられている。第1ブロックと第2ブロックのいずれか一方が装置本体に固定される固定ブロックとされ、他方が作動液の液圧によって回転する出力回転ブロックとされている。
【0005】
揺動回転体は、第2ブロックに対して回転規制軸によって連結されている。揺動回転体には、スプライン孔が形成され、そのスプライン孔に、回転規制軸の一端が首振り可能に噛み合わされている。回転規制軸の他端は、第2ブロックに形成されたスプライン孔に同様に首振り可能に噛み合わされている。回転規制軸は、揺動回転体の偏心回転(揺動回転)を許容しつつ、揺動回転体を第2ブロックに相対回転不能に連結している。さらに、この液圧モータには、作動室に対する供給通路と排出通路の連通位置を揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部が設けられている。
【0006】
この液圧モータは、流路切換部の機能によって作動室に対する供給通路と排出通路の連通位置が周方向に順次切り換わると、作動液の液圧による回転力が揺動回転体に作用する。このとき、揺動回転体の外歯と第1ブロックの内歯との噛み合い状態での滑りにより、第1ブロックと第2ブロックのいずれか一方が、揺動回転体の揺動回転に対して所定の減速比に減速されて回転する。
【0007】
ところで、この種の液圧モータが建設機械の走行駆動部等で使用されるときには、液圧モータが非作動状態のときに、出力回転ブロックの不測の回転を規制できることが望まれる。このため、この要望に対応し得る液圧モータとして、ブレーキ機構(ロック機構)を備えたものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1に開示される液圧モータは、揺動回転体の軸方向の端面にスプライン孔と同軸にロック孔が設けられ、揺動回転体の軸方向の端面に対向するモータケースの端部壁に、ロック孔に挿入可能なロックピンが配置されている。ロックピンは、揺動回転体のロック孔の揺動軌道(旋回軌道)に対峙する位置に配置され、付勢部材であるばねによって揺動回転体の方向に付勢されている。また、揺動回転体のスプライン孔に挿入される回転規制軸には、油圧によって進退操作されるロック解除ロッドが取り付けられている。ロック解除ロッドは、ロックピンがロック孔に嵌り合った状態のときに、ロックピンの先端部を押圧することによって、ロックピンとロック孔のロックを解除することができる。
この液圧モータでは、モータの作動が停止すると、ロック孔の揺動軌道上に対峙して配置されているロックピンが、ばね部材の付勢力を受けてロック孔に嵌り合う。液圧モータは、これによって揺動回転体の揺動回転がロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-220341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示される液圧モータは、揺動回転体のロック孔がロックピンと対峙する揺動位置まで移動したときに、ロックピンがロック孔に嵌り合うことで、揺動回転体の揺動回転をロックする構造とされている。このため、液圧モータの停止状況によっては、ロックピンを確実にロック孔に嵌めることが難しい場合がある。
また、ロックピンによるロック開始時やロック解除時には、ロックピンやロック孔の周縁部に過大な負荷が作用することが懸念される。
【0011】
さらに、特許文献1に開示される液圧モータは、ブレーキ機構(ロック機構)を構成するロックピンが、揺動回転体の軸方向の端面とモータケースの端部壁の間の狭いスペースに配置されている。このため、スペース的な制約により、ブレーキ機構(ロックピン等)を確実な制動力を得ることができる充分な容量とすることが難しい。そして、ブレーキ機構(ロックピン等)の容量を増大させようとすると、液圧モータ全体の大型化を招くことになる。
【0012】
なお、特許文献1には、上記の構成の液圧モータが開示されているが、第1ブロックと第2ブロックのいずれか一方を回転動力の入力される動力入力部とし、動力入力部に入力される回転動力によって、内歯と外歯の間に形成される複数の作動室の容積を漸減変化させる液圧ポンプも知られている。
この場合も、特許文献1に記載されるものと同様のブレーキ機構を設けるようにすれば、液圧ポンプの停止時における揺動回転体の不測の回転を規制することができる。しかし、この場合も、上述した特許文献1に開示の液圧モータと同様の不都合が生じる。
【0013】
本発明は、揺動回転体に対するロックとその解除をスムーズに、かつ、確実に行うことができる液圧装置、液圧モータ、及び、建設機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係る液圧装置は、内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、を備えている。
【0015】
上記の構成において、第1摩擦板と第2摩擦板が押圧機構によって相互に押し付けられていないときには、揺動回転体の揺動回転は制限されない。
このため、液圧装置が液圧モータである場合には、複数の作動室に順次給排される作動液の圧力を受けて揺動回転体が揺動回転し、その揺動回転が所定の減速比に減速されて第1ブロックと第2ブロックのいずれか一方から外部に出力される。
また、液圧装置が液圧ポンプである場合には、第1ブロックと第2ブロックのいずか一方が回転駆動されると、複数の作動室の容積が順次増減変化し、吸入通路から吸入された作動液が吐出通路に吐出される。
一方、液圧装置の停止時に、第1プレートと第2プレートが押圧機構によって押し付けられると、揺動回転体と連動する第1摩擦板の回転がロックされ、その結果、揺動回転体の揺動回転もロックされる。
上記の構成の液圧装置は、第1摩擦板と第2摩擦板の摩擦接触によって揺動回転体の揺動回転をロックするため、液圧装置の作動が完全に停止する前に第1摩擦板と第2摩擦板の押圧が開始しても、揺動回転体の揺動回転をスムーズに、しかも、揺動回転体の回転位相に拘らず確実にロックすることができる。
【0016】
前記第1摩擦板と前記第2摩擦板は環状に形成され、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板は、前記回転規制軸の外周側に配置されるようにしても良い。
【0017】
この場合、環状の第1摩擦板と第2摩擦板が回転規制軸の外周側に配置されるため、回転規制軸の外周側で効率良く大きな制動トルクを得ることができる。
【0018】
液圧装置は、前記揺動回転体の揺動成分を前記第1ブロックの回転中心軸線を中心する同期回転として取り出す回転変換ブロックを備え、前記第1摩擦板は、前記回転変換ブロックに相対回転不能に支持されるようにしても良い。
【0019】
この場合、揺動回転体の揺動挙動の回転成分のみを回転変換ブロックによって取り出し、その回転変換ブロックに対して第1摩擦板と第2摩擦板による制動力を作用させる。この場合、揺動回転する揺動回転体に直接制動トルクを付与する場合に比較して、必要な制動トルクを小さくすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、ブレーキ機構の小型化を図ることができる。
【0020】
前記第1摩擦板は、前記揺動回転体の端面に相対回転不能に取り付けられるようにしても良い。
【0021】
この場合、揺動回転する揺動回転体に直接制動トルクを付与するものであるため、回転変換ブロックを設ける場合に比較して部品点数を少なくすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、製品コストの低減を図ることができる。
【0022】
前記第1摩擦板は、前記回転規制軸の外周に相対回転不能に取り付けられるようにしても良い。
【0023】
この場合、揺動回転体と同期して揺動回転する回転規制軸に制動トルクを付与するものであるため、構成部品の少ない簡単な構成によって揺動回転体を制動することができる。したがって、本構成を採用した場合には、製品コストの低減を図ることができる。
【0024】
前記押圧機構は、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板に押し付け力を付与する押圧部材と、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板が摩擦接触する方向に前記押圧部材を付勢する付勢装置と、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板の摩擦接触が解除される方向に前記押圧部材を変位させる制動解除装置と、を備えるようにしても良い。
【0025】
この場合、揺動回転体の変位を制動するときには、制動解除装置をオフにする。このとき、押圧部材は付勢装置に付勢されて第1摩擦板と第2摩擦板を相互に押し付ける。この結果、第1摩擦板と揺動回転体の変位が制動される。
また、揺動回転体の制動を解除するときには、制動解除装置をオンにする。これにより、押圧部材は、第1摩擦板と第2摩擦板の摩擦接触を解除する方向に変位する。この結果、第1摩擦板と揺動回転体に制動トルクが作用しなくなる。
【0026】
前記制動解除装置は、導入された作動液の圧力によって前記押圧部材を摩擦解除方向に変位させるピストン装置によって構成されるようにしても良い。
【0027】
この場合、液圧装置の作動時には、作動液の圧力がピストン装置に導入される。これにより、押圧部材が摩擦解除方向に変位し、第1摩擦板と第2摩擦板の間に制動トルクが生じなくなり、揺動回転体の自由な揺動回転が可能になる。
また、液圧装置が停止すると、作動液の圧力がピストン装置に導入されなくなる。これにより、押圧部材は、付勢装置の付勢力を受け、第1摩擦板と第2摩擦板を摩擦接触させるようになる。この結果、揺動回転体は制動される。
本構成の液圧装置では、液圧装置の作動時には、作動液の圧力によってブレーキ機構が自動的に解除され、液圧装置の停止時には、作動液の圧力の低下によって自動的に第1摩擦板と第2摩擦板が押し付けられる。したがって、本構成を採用した場合には、ブレーキ機構の操作が不要になる。
【0028】
前記押圧部材、前記付勢装置、及び、前記ピストン装置は、前記第1摩擦板と前記第2側摩擦板とともに、前記回転規制軸の外周側に配置されるようにしても良い。
【0029】
この場合、ブレーキ機構の主要な構成部材が回転規制軸の外周側に配置されるため、ブレーキ機構の主要な構成部材が回転規制軸と軸方向でラップすることになる。したがって、本構成を採用した場合には、液圧装置全体を軸方向に短縮することが可能になる。
【0030】
本発明の他の態様に係る液圧装置は、内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、前記揺動回転体の揺動回転をロックするブレーキ機構と、を備え、前記ブレーキ機構の少なくとも一部は、前記回転規制軸の外周側に配置されている。
【0031】
上記の構成において、ブレーキ機構が制動解除状態のときには、揺動回転体の回転は制限されない。
このため、液圧装置が液圧モータである場合には、複数の作動室に順次給排される作動液の圧力を受けて揺動回転体が揺動回転し、その揺動回転が所定の減速比に減速されて第1ブロックと第2ブロックのいずれか一方から外部に出力される。
また、液圧装置が液圧ポンプである場合には、第1ブロックと第2ブロックのいずか一方が回転駆動されると、複数の作動室の容積が順次増減変化し、吸入通路から吸入された作動液が吐出通路に吐出される。
一方、液圧装置の停止時に、ブレーキ機構による制動が行われると、揺動回転体の揺動回転がロックされる。
上記の構成の液圧装置は、ブレーキ機構の少なくとも一部が、回転規制軸の外周側に配置されているため、スペース的に充分な余裕のある回転規制軸の外周域にブレーキ機構が配置されることになる。したがって、本構成の液圧装置を採用した場合には、液圧装置全体の大型化を抑制しつつ、ブレーキ機構の容量を増大させることができる。
【0032】
前記ブレーキ機構は、前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、を備えるようにしても良い。
【0033】
この場合、第1摩擦板と第2摩擦板の摩擦接触によって揺動回転体の揺動回転を制動する。このため、液圧装置の作動が完全に停止する前に第1摩擦板と第2摩擦板の押圧が開始しても、揺動回転体の揺動回転をスムーズに、しかも、揺動回転体の回転位相に拘らず確実にロックすることができる。
【0034】
本発明の一態様に係る液圧モータは、内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、作動液を前記作動室に供給する供給通路と、前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、を備えている。
【0035】
本発明の他の態様に係る液圧モータは、内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、作動液を前記作動室に供給する供給通路と、前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、前記揺動回転体の揺動回転をロックするブレーキ機構と、を備え、前記ブレーキ機構の少なくとも一部は、前記回転規制軸の外周側に配置されている。
【0036】
本発明の一態様に係る建設機械は、走行駆動部と、作動液の圧力を受けて前記走行駆動部を動作させる液圧モータと、を備え、前記液圧モータは、内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、作動液を前記作動室に供給する供給通路と、前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、前記揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、前記第2ブロックまたは前記第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、前記第1摩擦板と前記第2摩擦板を押し付ける押圧機構と、を備えている。
【0037】
本発明の他の態様に係る建設機械は、走行駆動部と、作動液の圧力を受けて前記走行駆動部を動作させる液圧モータと、を備え、前記液圧モータは、内周に複数の内歯を有する第1ブロックと、前記第1ブロックに対して相対回転可能である第2ブロックと、前記内歯よりも歯数が少ない複数の外歯を有し、前記第1ブロックの内側に揺動回転可能に配置されるとともに、前記内歯と前記外歯の間に作動室を形成する揺動回転体と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、前記揺動回転体の内周部から径方向と交差する方向に延び、前記揺動回転体の揺動回転を許容しつつ前記揺動回転体と前記第2ブロックを相対回転不能に連結する回転規制軸と、作動液を前記作動室に供給する供給通路と、前記作動室から前記作動液を排出する排出通路と、前記作動室に対する前記供給通路と前記排出通路の連通位置を前記揺動回転体の揺動回転方向に沿って切り換える流路切換部と、前記揺動回転体の揺動回転をロックするブレーキ機構と、を備え、前記ブレーキ機構の少なくとも一部は、前記回転規制軸の外周側に配置されている。
【発明の効果】
【0038】
上述した本発明の一態様に係る液圧装置は、揺動回転体と連動して回転する第1摩擦板と、第2ブロックまたは第1ブロックに回転を規制された第2摩擦板と、第1摩擦板と第2摩擦板を押し付ける押圧機構とを備え、押圧機構によって第1摩擦板と第2摩擦板を押し付けることによって揺動回転体の揺動回転をロックする。したがって、本態様に係る液圧モータを採用した場合には、揺動回転体に対するロックとその解除をスムーズに、かつ、確実に行うことができる。
【0039】
上述した本発明の他の態様に係る液圧モータは、ブレーキ機構の少なくとも一部が、回転規制軸の外周側に配置されている。このため、本液圧装置では、スペース的に充分な余裕のある回転規制軸の外周域にブレーキ機構が配置されることになるため、液圧装置全体の大型化を抑制しつつ、ブレーキ機構の容量を増大させることができる。したがって、本態様に係る液圧モータを採用した場合には、揺動回転体に対するロックとその解除をスムーズに、かつ、確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、実施形態の建設機械の側面図である。
図2図2は、第1実施形態の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、第1実施形態の変形例の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
図5図5は、第2実施形態の液圧モータ(液圧装置)の一部の縦断面図である。
図6図6は、第3実施形態の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
図7図7は、制動解除状態の第3実施形態の液圧モータ(液圧装置)の一部の縦断面図である。
図8図8は、第3実施形態の変形例の液圧モータ(液圧装置)の一部の縦断面図である。
図9図9は、第4実施形態の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
図10図10は、制動解除状態の第4実施形態の液圧モータ(液圧装置)の一部の縦断面図である。
図11図11は、第5実施形態の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
図12図12は、制動解除状態の第5実施形態の液圧モータ(液圧装置)の一部の縦断面図である。
図13図13は、第6実施形態の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
図14図14は、制動解除状態の第6実施形態の液圧モータ(液圧装置)の一部の縦断面図である。
図15図15は、第7実施形態の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態や変形例では、共通部分に同一符号を付して重複する説明を一部省略するものとする。
【0042】
(建設機械)
図1は、建設機械の一形態であるショベル1を側方から見た概略構成図である。
ショベル1は、旋回体2と、走行体3と、を備えている。旋回体2は、走行体3の上に旋回可能に設けられている。旋回体2には、走行駆動部や旋回体2の各部を液圧によって駆動するための液圧駆動システム4が搭載されている。走行体3は、例えば、路面に接地するクローラ5(走行駆動部)を有し、クローラ5が後述する実施形態の液圧モータ(液圧装置)によって駆動される。ショベル1は、これによって路面上を走行可能とされている。
なお、走行体3の走行駆動部はクローラ5に限定されるものでなく、車輪等であっても良い。
【0043】
旋回体2は、操作者が搭乗可能なキャブ6と、操作者によって操作される多関節動作部7と、を備えている。キャブ6上には、操作者が着座するシート8と、シート8に着座した操作者によって操作されるレバーやスイッチ等の複数の操作部9a,9bが配置されている。
【0044】
多関節動作部7は、ブーム10と、アーム11と、バケット12と、を備えている。ブーム10は、基端がキャブ6の前端部に回転軸13aを中心として揺動自在に連結され、アーム11は、基端がブーム10の先端部に回転軸13bを中心として揺動自在に連結されている。また、バケット12は、基端がアーム11の先端部に回転軸13cを中心として揺動自在に連結されている。多関節動作部7は、ブーム10、アーム11、及び、バケット12の各連結部を複合的に動作させることにより、バケット12によって、例えば、土砂や瓦礫等をすくい上げることができる。
多関節動作部7の各連結部は図示しない液圧モータによって駆動可能とされている。各連結部には、後述する液圧モータを採用することもできる。
【0045】
<第1実施形態>
図2は、本実施形態の液圧モータ15(液圧装置)の縦断面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
液圧モータ15は、建設機械の本体部に固定される略円柱状の固定ブロック16と、固定ブロック16に軸受17a,17bを介して回転可能に支持される略円筒状の出力回転ブロック18と、を備えている。出力回転ブロック18は、建設機械のクローラ5(図1参照)等の走行駆動部に連結される。
本実施形態では、出力回転ブロック18が第1ブロックを構成し、固定ブロック16が第2ブロックを構成している。
【0046】
固定ブロック16と出力回転ブロック18は、固定ブロック16の中心軸線と、出力回転ブロック18の回転軸線とが一致している。以下では、これらの中心軸線及び回転軸線を総称して第1軸線c1と称する。また、第1軸線c1と平行な方向を単に「軸方向」、出力回転ブロック18の回転方向を「周方向」、出力回転ブロックの径方向を単に「径方向」と称して説明する場合がある。
【0047】
固定ブロック16は、軸方向の第1方向側(図2における左側)に大径部16Lが配置され、軸方向の第1方向側とは反対側の第2方向側(図2における右側)に大径部16Lよりも外径の小さい小径部16Sが配置されている。大径部16Lと小径部16Sは同軸に、かつ、一体に形成されている。小径部16Sは、出力回転ブロック18の第1方向側の円筒部内に挿入されている。小径部16Sは、この状態で軸受17a,17bを介して出力回転ブロック18を回転可能に支持している。
【0048】
固定ブロック16の大径部16Lには、径方向外側に張り出す外フランジ16Lfが一体に形成されている。外フランジ16Lfは、液圧モータ15を取り付ける建設機械の本体部にボルト締結等によって固定される。また、固定ブロック16の第1方向側の端部には、作動液を供給するための供給回路や作動液を排出するための排出回路が収容される流路ブロック19が取り付けられている。流路ブロック19内の回路は、作動液を貯留する図示しない貯留タンクと、作動液を送り出すための図示しないポンプ装置とに接続されている。
【0049】
出力回転ブロック18は、第2方向側の端部に配置された略円筒状の第1筒部18Fと、第1方向側の端部に配置された第2筒部18Sと、第1筒部18Fと第2筒部18Sの間に挟まれて配置された孔開き円板状の給排プレート18Pと、第1筒部18Fの開口を第2方向側の端部から閉塞する端部カバー18Cと、を備えている。これらの端部カバー18C、第1筒部18F、給排プレート18P、及び、第2筒部18Sは、軸方向に沿って延びる締結ボルト20によって一体に結合されている。
【0050】
第2筒部18Sの第1方向側の端部には、径方向外側に張り出す外フランジ18Sfが一体に形成されている。外フランジ18Sfは、建設機械の走行駆動部(例えば、図1におけるクローラ5)にボルト締結等によって連結される。
出力回転ブロック18を回転可能に支持する軸受17a,17bは、固定ブロック16側の小径部16Sと第2筒部18Sの内周面との間に配置されている。なお、図2中の符号21a,21bは、固定ブロック16側の大径部16Lと出力回転ブロック18側の第2筒部18Sの突き合わせ部を封止するためのメカニカルシールである。
【0051】
本実施形態では、第1筒部18Fが第1ブロックの筒部を構成している。
第1筒部18Fの内周面には、複数のピン溝18Fgが周方向に等間隔に形成されている。各ピン溝18Fgは、軸方向に沿って延びている。ピン溝18Fgは、軸方向から見て半円状に形成されている。各ピン溝18Fgには、円柱状の内歯ピン22が回転可能に収納されている。内歯ピン22は、ピン溝18Fgが半円状に形成されていることから、ピン溝18Fgから径方向内側に半円状に突出した形になる。内歯ピン22は、後述する揺動回転体30の複数の外歯30aが噛み合わされる内歯として機能する。
【0052】
揺動回転体30は、第1筒部18Fの最大内径よりも小径に形成されている。内歯ピン22と揺動回転体30側の外歯30aが噛み合い状態で接すると、第1筒部18Fと揺動回転体30の間には、周方向に沿って複数の作動室35a,35bが形成される。複数の作動室35a,35bは、第1方向側の端部を給排プレート18Pによって閉塞され、第2方向側の端部を端部カバー18Cによって閉塞される。ただし、給排プレート18Pには、作動室35a,35bに作動液を供給したり、排出したりするための複数の図示しない貫通孔が形成されている。
【0053】
給排プレート18Pは、軸方向から見て円環状に形成されている。給排プレート18Pの内周縁部は、第1筒部18Fや第2筒部18Sの内周面よりも径方向内側に張り出している。給排プレート18Pの内周縁部には、厚さ方向に貫通する前述の図示しない複数の貫通孔が形成されている。貫通孔は、第1筒部18Fの内周側の隣り合う内歯ピン22の間に形成される内向きの凹状空間に開口している。
【0054】
給排プレート18Pの第1方向側の端面の内周縁部には、円環状の摺動プレート23が押し当てられている。摺動プレート23は、固定ブロック16の小径部16Sの第2方向側の端面に回転不能に支持されている。ただし、摺動プレート23は、軸方向には変動可能とされ、図示しない付勢部材によって給排プレート18Pの端面に押し当てられている。
【0055】
摺動プレート23には、供給通路24に連通する図示しない供給側の連通孔と、排出通路25に連通する図示しない排出側の連通孔が環状に並んで形成されている。これらの連通孔は、給排プレート18Pの貫通孔と同一半径の円周上に配置されているが、連通孔の個数は、給排プレート18Pの貫通孔の個数よりも一つ分少なく設定されている。摺動プレート23は、給排プレート18Pが第1筒部18Fと一体に第1軸線c1回りに回転するときに、給排プレート18Pとの協働によって作動室35a,35bに対する供給通路24と排出通路25の連通位置を揺動回転体30の揺動回転方向に沿って切り換える。本実施形態では、摺動プレート23と給排プレート18Pが流路切換部を構成している。
なお、供給通路24は、流路ブロック19内の回路の作動液の供給部に接続される通路であり、固定ブロック16に形成されている。排出通路25は、流路ブロック19内の回路の作動液の回収部に接続される通路であり、供給通路24と同様に固定ブロック16に形成されている。
【0056】
また、出力回転ブロック18の第1筒部18Fの内周側には、揺動回転体30が揺動回転可能に配置されている。揺動回転体30は、第1軸線c1を中心とした所定の旋回半径で揺動回転する。揺動回転体30の外周面は、径方向で第1筒部18F側の内歯ピン22と対向している。揺動回転体30の外周の外歯30aは、第1筒部18Fの内周側の内歯ピン22に噛み合わされる。揺動回転体30の外歯30aは、第1筒部18Fの内歯ピン22の歯数よりも僅かに少ない歯数(例えば、一つ少ない歯数)に設定されている。
【0057】
揺動回転体30は、揺動回転動作の間、各外歯30aの歯先から歯底に至る間のいずれかの部位が常に第1筒部18Fの内歯(内歯ピン22)に接触する。これにより、第1筒部18Fの内周面と揺動回転体30の外歯30aとの間に、大きく分けて二つの作動室35a,35bの領域が形成される。二つの作動室35a,35bの領域は、揺動回転体30の周域に、軸方向から見て線対称に形成される。
【0058】
これらの作動室35a,35bの領域には、給排プレート18Pの貫通孔を通して供給通路24や排出通路25に連通する。作動室35a,35bには、前述した摺動プレート23と給排プレート18Pとによる流路切換機能により、揺動回転体30を揺動回転させるように作動液が給排される。上述の二つの作動室35a,35bの領域は揺動回転体30の揺動回転方向に沿って周方向に移動する。
【0059】
また、給排プレート18Pの径方向の内側には、給排プレート18Pを軸方向に貫通する円形状のガイド孔26が形成されている。ガイド孔26には、ニードル軸受等の軸受27を介して回転変換ブロック28が回転可能に支持されている。
【0060】
回転変換ブロック28は、段付き円筒状の外形の略筒状の部材である。回転変換ブロック28は、第2方向側に配置される大径筒部28aと、大径筒部28aの第1方向側に一体に形成された小径筒部28bと、を備えている。大径筒部28aの外周面は、小径筒部28bの外周面及び内周面と同心の円形形状に形成されている。これに対し、大径筒部28aの内周面28aiは、その内周面28aiの円形中心が外周面の円形中心(第1軸線c1)と偏心するように形成されている。つまり、大径筒部28aの内周面28aiは、給排プレート18P側のガイド孔26に対して偏心している。
【0061】
また、揺動回転体30の軸心部には、所定内径のスプライン孔31が形成されている。スプライン孔31は、内周面に軸方向に沿って延びる複数のスプラインが形成されている。スプライン孔31には、後述する回転規制軸32の第2方向側の端部が組み付けられる。なお、図2では、図示の都合上、回転規制軸32は仮想線で示されている。揺動回転体30の第1方向側の内周縁部には、第1方向側に向かって円筒状に突出するボス部33が一体に形成されている。ボス部33は、回転変換ブロック28の大径筒部28aの内周面28ai内に挿入され、ニードル軸受等の軸受34を介して大径筒部28aの内周面28aiに回転可能に支持されている。大径筒部28aの内周面28aiの第1軸線c1からの偏心量は、第1軸線c1を中心とした揺動回転体30の旋回半径と合致するように設定されている。したがって、揺動回転体30は、回転変換ブロック28と軸受34,27を介して給排プレート18Pに揺動回転可能に支持されている。
ここで、揺動回転体30の旋回(揺動回転)に伴う回転変換ブロック28の回転は、揺動回転体30の揺動成分を、第1軸線c1を中心とする同期回転として取り出した回転となる。回転変換ブロック28は、揺動回転体30の揺動成分を第1軸線c1を中心とする同期回転として取り出すことができる。
【0062】
固定ブロック16の径方向中央領域には、軸方向に貫通するように機器収容孔36が形成されている。機器収容孔36の軸方向の略中央部には、略円筒状のスプラインブロック37が取り付けられている。スプラインブロック37は固定ブロック16に一体に結合されている。スプラインブロック37にはスプライン孔38が形成されている。スプライン孔38は、その中心軸線が第1軸線c1と合致するように形成されている。スプライン孔38の内周面には、軸方向に沿って延びる複数のスプラインが形成されている。スプライン孔38には、回転規制軸32の第1方向側の端部が組み付けられる。
【0063】
回転規制軸32は、揺動回転体30の内周部から径方向と交差する方向に延びる軸部材であり、揺動回転体30の揺動回転を許容しつつ揺動回転体30と固定ブロック16(第2ブロック)を相対回転不能に連結するものである。
回転規制軸32は、第1方向側の端部の外周に第1外スプライン32Fが形成され、第2方向側の端部の外周に第2外スプライン32Sが形成されている。第1外スプライン32Fと第2外スプライン32Sは、いずれも回転規制軸32の軸方向の中央領域よりも外径寸法が大きくなっている。また、第1外スプライン32Fと第2外スプライン32Sの各スプライン歯は、軸方向の中央領域が径方向外側に最も膨出し、その最大膨出部を中心として歯面高さが軸方向の一端側と他端側に緩やかに減少する略円弧形状に形成されている。
【0064】
回転規制軸32は、第1外スプライン32Fがスプラインブロック37のスプライン孔38に噛み合い、第2外スプライン32Sが揺動回転体30側のスプライン孔31に噛み合うことにより、揺動回転体30の回転(自転)が固定ブロック16によって規制される。また、回転規制軸32は、第1外スプライン32Fと第2外スプライン32Sの各スプライン歯が対応するスプライン孔38,31内で径方向に傾斜することにより、第1軸線c1を旋回中心とした揺動回転体30の揺動回転を許容する。
なお、図2中の符号c2は、回転規制軸32の中心軸線である。回転規制軸32の中心軸線c2は、出力回転ブロック18の回転軸線である第1軸線c1とスプラインブロック37のほぼ中心位置で交差し、この交点を中心として第1軸線c1に対して所定角度に傾斜している。
【0065】
機器収容孔36内のスプラインブロック37よりも第1方向側の領域は、流路ブロック19の前面との間でプレート収容室39を形成している。プレート収容室39には、円板状の押圧プレート40が、当該押圧プレート40を第2方向側に付勢する付勢用スプリング98(付勢装置)とともに収容されている。
【0066】
流路ブロック19には、シリンダ室41内にピストン42が摺動可能に収納されたピストン装置45が設けられている。ピストン42は、シリンダ室41内に軸方向に進退移動可能に収納されている。ピストン42には、当該ピストン42を押圧プレート40に連結するための連結ロッド43が設けられている。押圧プレート40とピストン42は連結ロッド43によって連結されることにより、軸方向に一体移動可能とされている。このため、ピストン42は、押圧プレート40と連結ロッド43を介して付勢用スプリング98の付勢力を受ける。
【0067】
また、ピストン42によって隔成されたシリンダ室41内の第2方向側の空間部は液圧導入通路44に接続されている。ピストン42は、液圧導入通路44からシリンダ室41内に導入された作動液の液圧により、第1方向側に押圧される。この結果、ピストン42に連結された押圧プレート40は、付勢用スプリング98の付勢力に抗して第1方向側に後退する。
本実施形態では、シリンダ室41とピストン42を備えたピストン装置45が、液圧導入通路44とともに制動解除装置を構成している。
【0068】
機器収容孔36内のスプラインブロック37よりも第2方向側の領域には、給排プレート18Pに支持された回転変換ブロック28の小径筒部28bが配置されている。機器収容孔36の小径筒部28bの外周面と対向する領域には、円環板状の複数枚の固定側摩擦板55が取り付けられている。各固定側摩擦板55は、機器収容孔36の内周部に軸方向移動可能に、かつ、相対回転不能に取り付けられている。具体的には、例えば、機器収容孔36の内周面に軸方向に沿う複数のスリット溝が形成され、固定側摩擦板55の外周部に設けられた複数の係止爪がこれらのスリット溝に挿入されている。
なお、第2方向側の端部に配置される固定側摩擦板55は、固定ブロック16側に固定された規制部材によって第2方向側への変位を規制されている。
【0069】
また、回転変換ブロック28の小径筒部28bの外周側には、円環板状の複数枚の回転体側摩擦板56が取り付けられている。なお、図2では、図示の都合上、回転体側摩擦板56は仮想線で示されている。各回転体側摩擦板56は、小径筒部28bの外周部に軸方向移動可能に、かつ、相対回転不能に取り付けられている。具体的には、例えば、小径筒部28bの外周面に軸方向に沿う複数のスリット溝が形成され、回転体側摩擦板56の内周部に設けられた複数の係止爪がこれらのスリット溝に挿入されている。
なお、本実施形態では、回転体側摩擦板56が揺動回転体30と連動して回転する第1摩擦板を構成し、固定側摩擦板55が第2ブロックまたは第1ブロックに回転を規制される第2摩擦板を構成している。本実施形態では、第2摩擦板である固定側摩擦板55が第2ブロックである固定ブロック16に回転を規制されている。
【0070】
固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56は、機器収容孔36と回転変換ブロック28とに囲まれた空間内において、軸方向に交互に配置されている。第1方向側の端部に配置される固定側摩擦板55が外部から第2方向側に向かう押圧力を受けると、交互に配置された固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56は相互に対向する面において摩擦接触する。これにより、回転変換ブロック28には、押圧力に応じた制動力が作用するようになる。回転変換ブロック28は、揺動回転体30の揺動回転と連動して回転する部材であるため、このとき揺動回転体30の揺動回転は、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56の制動作用を受けて制動される。
【0071】
略円筒状のスプラインブロック37には、軸方向に貫通する複数の挿通孔49が形成されている。複数の挿通孔49は、例えば、周方向に等間隔に形成されている。各挿通孔49には、スプラインブロック37よりも軸長の長い押圧ロッド50が軸方向移動可能に挿入されている。各押圧ロッド50の第1方向側の端部は、プレート収容室39内の押圧プレート40の端面に当接可能とされている。また、各押圧ロッド50の第2方向側の端部は、ワッシャ等の仲介部材を介して、第1方向側の端部の固定側摩擦板55に当接可能とされている。
【0072】
液圧モータ15の運転時に、流路ブロック19から液圧導入通路44に高圧の作動液が導入されると、前述のようにピストン42が押圧プレート40とともに付勢用スプリング98の力に抗して第1方向側に移動する。このとき、押圧プレート40は押圧ロッド50の端部から離間し、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56の間には摩擦抵抗が生じなくなる。このため、揺動回転体30には制動力が作用せず、揺動回転体30は自由な揺動回転が可能になる。
【0073】
一方、液圧モータ15の運転が停止すると、液圧導入通路44に高圧の作動液の圧力が作用しなくなる。このため、押圧プレート40が付勢用スプリング98の付勢力を受けて第2方向側に変位し、押圧ロッド50を介して固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56を相互に押し付けるようになる。これにより、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56の間に摩擦抵抗が生じ、回転変換ブロック28の回転が制動される。この結果、揺動回転体30の揺動回転は制動される。
【0074】
なお、本実施形態では、押圧プレート40と押圧ロッド50が、回転体側摩擦板56(第1摩擦板)と固定側摩擦板55(第2摩擦板)に押し付け力を付与する押圧部材を構成している。また、付勢用スプリング98は押圧部材を付勢する付勢装置を構成している。また、ピストン装置45は、回転体側摩擦板56(第1摩擦板)と固定側摩擦板55(第2摩擦板)の摩擦接触が解除される方向に押圧部材を変位させる制動解除装置を構成している。
本実施形態では、押圧部材である押圧プレート40及び押圧ロッド50と、付勢装置である付勢用スプリング98と、制動解除装置であるピストン装置45と、が押圧機構を構成している。さらに、この押圧機構は、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56とともに本実施形態におけるブレーキ機構48を構成している。
【0075】
回転規制軸32は、固定ブロック16の軸方向の略中央に配置されたスプラインブロック37のスプライン孔38と、揺動回転体30のスプライン孔31とに噛み合うように液圧モータ15の軸方向の中央領域に配置されている。本実施形態の液圧モータ15では、この回転規制軸32の外周側にブレーキ機構48の主要部が配置されている。具体的には、回転規制軸32の外周側には、複数の固定側摩擦板55と、回転体側摩擦板56と、押圧ロッド50の一部が配置されている。これらは、回転規制軸32の外周側で、この回転規制軸32と軸方向でラップするように配置されている。
【0076】
つづいて、液圧モータ15の作動について説明する。
供給通路24の作動液が摺動プレート23と給排プレート18Pを通して複数の作動室35a,35bに順次導入されると、作動液の液圧を受けて揺動回転体30が所定の方向に揺動回転する。このとき、複数の内歯ピン22で揺動回転体30の外歯30aと噛み合う第1筒部18Fが、揺動回転体30の揺動回転に追従し所定の減速比に減速されて回転する。この結果、第1筒部18Fを含む出力回転ブロック18が所定の減速比に減速されて回転する。
【0077】
本実施形態の液圧モータ15では、内周に複数の内歯を有する第1ブロックに相当するブロック(18)が出力回転ブロックとされ、回転規制軸32を介して揺動回転体30に連結される第2ブロックに相当するブロック(16)が固定ブロックとされている。しかし、内周に複数の内歯を有する第1ブロックに相当するブロック(18)を固定ブロックとし、回転規制軸32を介して揺動回転体30に連結される第2ブロックに相当するブロック(16)を出力回転ブロックとしても良い。
この場合、図2の出力回転ブロック18に相当するブロックが建設機械の本体部に固定される。この場合、作動室35a,35bに対する作動液の給排が行われると、揺動回転体30の自転成分が回転規制軸32を通して、図2中の固定ブロック16に相当する部分に伝達される。このとき、図2中の固定ブロック16に相当する部分は、所定の減速比に減速されて出力回転する。
【0078】
なお、内周に複数の内歯を有する第1ブロックに相当するブロックを固定ブロックとし、回転規制軸32を介して揺動回転体30に連結される第2ブロックに相当するブロックを出力回転ブロックとしても良いのは、以下で説明する各実施形態や変形例についても同様である。
【0079】
以上のように、本実施形態の液圧モータ15は、ブレーキ機構48が回転体側摩擦板56(第1摩擦板)と固定側摩擦板55(第2摩擦板)と押圧機構(押圧プレート40、押圧ロッド50、付勢用スプリング98、ピストン装置45等)とを備えている。そして、液圧モータ15は、押圧機構によって固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56を押し付けることによって揺動回転体30の揺動回転を制動する。したがって、本実施形態の液圧モータ15を採用した場合には、揺動回転体30に対する制動力の付与と解除をスムーズに、かつ、確実に行うことができる。
【0080】
また、本実施形態の液圧モータ15は、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56が環状に形成され、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56が回転規制軸32の外周側に配置されている。このため、回転規制軸32の外周側で効率良く大きな制動トルクを得ることができる。
【0081】
また、本実施形態の液圧モータ15は、揺動回転体30の揺動成分を第1軸線c1を中心する同期回転として取り出す回転変換ブロック28を備え、ブレーキ機構48の回転体側摩擦板56が回転変換ブロック28に相対回転不能に支持されている。このため、揺動回転体30の揺動成分を回転変換ブロック28の回転として取り出し、その回転変換ブロック28に対してブレーキ機構48の制動力を作用させることができる。この場合、揺動回転する揺動回転体30に制動トルクを直接付与する場合に比較して、必要な制動トルクを小さくすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、ブレーキ機構48の小型化を図ることができる。
【0082】
さらに、本実施形態の液圧モータ15は、ブレーキ機構48の押圧機構が、押圧部材(押圧プレート40及び押圧ロッド50)と、押圧部材を制動方向に付勢する付勢装置(付勢用スプリング98)と、押圧部材を制動解除方向に変位させる制動解除装置(ピストン装置45)と、を備えている。このため、本構成を採用した場合には、簡単な構成でありながら、揺動回転体30に対する確実な制動と制動解除を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態の液圧モータ15は、導入された作動液の圧力によって押圧部材を摩擦解除方向に変位させるピストン装置45によって制動解除装置が構成されている。このため、作動液の液力が高まる液圧モータ15の運転時には、揺動回転体30の制動が自動的に解除され、作動液の液力が低下する液圧モータ15の運転停止時には、揺動回転体30の制動が確実に実行される。
したがって、本構成を採用した場合には、揺動回転体30に対する特別な制動操作や解除操作を行う必要がなく、利用者の利便性が高まる。
【0084】
さらに、本実施形態の液圧モータ15は、ブレーキ機構48の主要部(少なくとも一部)が回転規制軸32の外周側に配置されている。このため、スペース的に充分な余裕のある回転規制軸32の外周域にブレーキ機構48の主要部が配置されることになる。このため、液圧モータ15全体の大型化を抑制しつつ、ブレーキ機構48の容量を増大させることができる。したがって、本実施形態の液圧モータ15を採用した場合には、揺動回転体30に対する制動力の付与と解除をスムーズに、かつ、確実に行うことができる。
【0085】
<変形例>
図4は、本変形例の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。
本変形例の液圧モータ15Aは、基本的な構成は上記の実施形態とほぼ同様とされている。上記の実施形態では、固定ブロック16に形成したプレート収容室39内に付勢用スプリング98が押圧プレートとともに配置されている。これに対し、本変形例では、付勢用スプリング98をシリンダ室41内のピストン42の背部側(第1方向側)に配置している。
【0086】
本変形例の場合、プレート収容室39内の連結ロッド43の周囲に付勢用スプリング98を配置する場合(図2参照)に比較し、複数の付勢用スプリング98をコンパクトに集約して配置することができる。したがって、本変形例の構成を採用した場合には、液圧モータ15Aの小型化を図ることができる。
【0087】
<第2実施形態>
図5は、本実施形態の液圧モータ(液圧装置)の一部の縦断面図である。
本実施形態の液圧モータ115は、基本的な構成は上記の第1実施形態とほぼ同様であるが、揺動回転体30の揺動回転を第1軸線c1を中心とする同期回転として取り出す回転変換ブロック28の配置と回転の取り出し手法が第1実施形態のものと異なっている。第1実施形態では、揺動回転体30の端部にボス部33を設け、そのボス部33の外周面に、回転変換ブロック28側の偏心した内周面28aiを回転可能に支持させている。これに対し、本実施形態では、回転規制軸32の第2方向側寄りの外周面に球状の膨出部51を設け、回転変換ブロック28側の大径筒部28aの内周面28aiに、内周側が凹球面状の滑り軸受52を固定している。
【0088】
滑り軸受52は、第1軸線c1に対して径方向に偏心した大径筒部28aの内周面28aiに固定され、凹球面状の内側の滑り面52aが回転規制軸32側の膨出部51に摺動可能に接触している。滑り面52aは、球面による滑りによって回転規制軸32の首振り挙動を許容する。本実施形態の場合、滑り軸受52と回転変換ブロック28の機能により、回転規制軸32上の膨出部51の揺動回転を、第1軸線c1を中心とした同期回転として取り出すことができる。
【0089】
本実施形態の液圧モータ115は、回転変換ブロック28の配置と揺動成分の取り出し手法が第1実施形態のものと異なるものの、その他の構成は第1実施形態のものと同様である。このため、本実施形態の液圧モータ115の場合も、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
<第3実施形態>
図6は、本実施形態の液圧モータ(液圧装置)の縦断面図である。図7は、図6の要部を拡大した作動状態を示す図である。図6は、ブレーキ機構が作動した状態を示し、図7は、ブレーキ機構が解除された状態を示している。
本実施形態の液圧モータ215は、基本的な構成は上記の第1実施形態とほぼ同様であるが、ブレーキ機構248における押圧機構の構成が第1実施形態のものと異なっている。回転体側摩擦板56(第1摩擦板)と固定側摩擦板55(第2摩擦板)の構成は第1実施形態と同様とされている。
【0091】
押圧機構は、押圧部材である押圧プレート240と、押圧プレート240を制動方向に付勢する付勢用スプリング298と、押圧プレート240を制動解除方向に移動させるピストン装置245(制動解除装置)と、を備えている。この押圧機構は、固定ブロック16の機器収容孔36内のスプラインブロック37よりも第2方向側の領域に配置されている。
【0092】
ピストン装置245は、機器収容孔36の内面に固定された円環状の固定壁57と、端部フランジ58aを有する筒状ピストン58と、を備えている。筒状ピストン58は、固定壁57の内周面に滑り接触する円筒壁58bと、円筒壁58bの第1方向側の端部から径方向外側に張り出す端部フランジ58aと、を有する。筒状ピストン58は、端部フランジ58aの外周面が機器収容孔36の内周面に滑り接触するように、機器収容孔36内に組付けられている。筒状ピストン58の端部フランジ58aと固定壁57に挟まれた空間部は、液圧導入通路44を通して作動液が導入されるピストン室59とされている。
【0093】
押圧プレート240は、円環状の筒部240aと、筒部240aの第1方向側の端部から径方向内側に張り出す規制フランジ240bと、を有する。規制フランジ240bは、筒状ピストン58の外周側に配置され、筒状ピストン58の外周の第2方向側の端部に固定された止輪60によって第2方向側への抜けが規制されている。
【0094】
付勢用スプリング298は、ピストン装置245の固定壁57と押圧プレート240の間に配置されている。押圧プレート240の筒部240aの先端部は、第1方向側の端部の固定側摩擦板55に当接可能とされている。付勢用スプリング298は、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56を相互に押し付ける方向に押圧プレート240を付勢する。
【0095】
液圧モータ215の運転が停止し、液圧導入通路44からピストン室59に高圧の作動液が導入されないときには、図6に示すように、付勢用スプリング298が押圧プレート240を介して固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56に押圧力を付与する。このとき、回転変換ブロック28の回転が制動され、揺動回転体30の揺動回転も制動される。
【0096】
また、液圧モータ215の運転が開始し、液圧導入通路44からピストン室59に高圧の作動液が導入されると、図7に示すように、その作動液の圧力を受けて筒状ピストン58が付勢用スプリング298の付勢力に抗して後退する。この結果、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56の間に摩擦力が働かなくなり、回転変換ブロック28と揺動回転体30は自由な回転が可能になる。
【0097】
本実施形態の液圧モータ215は、基本的な構成は第1実施形態のものとほぼ同様であるため、上述した第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
ただし、本実施形態の液圧モータ215は、ブレーキ機構248の付勢装置(付勢用スプリング298)とピストン装置245が、固定側摩擦板55と回転体側摩擦板56とともに、回転規制軸32の外周側に配置されている。このため、ブレーキ機構248の上記の主要な構成部材が回転規制軸32と軸方向でラップすることになる。したがって、本構成を採用した場合には、液圧モータ215全体を軸方向により短縮することが可能になる。
【0098】
<変形例>
図8は、本変形例の液圧モータ215A(液圧装置)の一部の縦断面図である。図8(A)は、ブレーキ機構248Aが作動した状態を示し、図8(B)は、ブレーキ機構248Aが解除された状態を示している。
本変形例の液圧モータ215Aは、基本的な構成は上記の第3実施形態の構成とほぼ同様であるが、ブレーキ機構248Aの構成が若干異なっている。
【0099】
上記の実施形態では、付勢用スプリング298が固定壁57と押圧プレート240の間に配置されているが、本変形性では、付勢用スプリング298はスプラインブロック37とピストン装置245Aの筒状ピストン58の間に配置されている。また、押圧プレート240Aは筒状ピストン58の第2方向側の端面に固定され、若しくは、当接可能とされている。
本変形例の場合にも、上記の実施形態と同様の作用、及び、効果を得ることができる。
【0100】
<第4実施形態>
図9は、本実施形態の液圧モータ315(液圧装置)の縦断面図である。図10は、図9の要部を拡大した作動状態を示す図である。図9は、ブレーキ機構348が作動した状態を示し、図10は、ブレーキ機構348が解除された状態を示している。
本実施形態の液圧モータ315は、ブレーキ機構348以外の構成は、第1実施形態のものとほぼ同様とされている。本実施形態の液圧モータ315では、ブレーキ機構348の回転体側摩擦板356(第1摩擦板)が揺動回転体30の軸方向の端面にボルト締結等によって固定されている。また、本実施形態の液圧モータ315には、揺動回転体30の揺動回転を第1軸線c1を中心とした同期回転として取り出す回転変換ブロックは設けられていない。
【0101】
ブレーキ機構348は、回転体側摩擦板356(第1摩擦板)、及び、固定側摩擦板355(第2摩擦板)と、これらを押圧する押圧機構と、を備えている。押圧機構は、第3実施形態の変形性と同様のピストン装置245Aと付勢用スプリング298とを備えている。
【0102】
ピストン装置245Aは、機器収容孔36の内面に固定された円環状の固定壁57と、端部フランジ58aを有する筒状ピストン58と、を備えている。固定壁57は、機器収容孔36のうちの第2方向側の端部に近接した位置に固定されている。
【0103】
筒状ピストン58は、固定壁57の内周面に滑り接触する円筒壁58bと、円筒壁58bの第1方向側の端部から径方向外側に張り出す端部フランジ58aと、を有する。筒状ピストン58は、端部フランジ58aの外周面が機器収容孔36の内周面に滑り接触するように、機器収容孔36内に組付けられている。筒状ピストン58の端部フランジ58aと固定壁57に挟まれた空間部は、液圧導入通路44を通して作動液が導入されるピストン室59とされている。
【0104】
また、筒状ピストン58の円筒壁58bの第2方向側の端面には、円環状の固定側摩擦板355がボルト締結等によって固定されている。円筒壁58bに固定された固定側摩擦板355の端面(第2方向側の端面)は、揺動回転体30の端面に固定された回転体側摩擦板356の端面(第1方向側の端面)に対向している。
なお、本実施形態では、筒状ピストン58の円筒壁58bの一部が押圧部材を兼ねている。
【0105】
スプラインブロック37と筒状ピストン58の端部フランジ58aの間には、筒状ピストン58を第2方向側に付勢する付勢用スプリング298が配置されている。付勢用スプリング298は、筒状ピストン58に取り付けられた固定側摩擦板355を回転体側摩擦板356に押し付けるように、筒状ピストン58を付勢する。
【0106】
液圧モータ315の運転が停止し、液圧導入通路44からピストン室59に高圧の作動液が導入されないときには、図9に示すように、付勢用スプリング298が筒状ピストン58を介して固定側摩擦板355と回転体側摩擦板356とを押し付ける。このとき、固定側摩擦板355と回転体側摩擦板356の間に摩擦力が働き、揺動回転体30の揺動回転が制動される。
【0107】
また、液圧モータ315の運転が開始し、液圧導入通路44からピストン室59に高圧の作動液が導入されると、図10に示すように、その作動液の圧力を受けて筒状ピストン58が付勢用スプリング298の付勢力に抗して後退する。この結果、固定側摩擦板355と回転体側摩擦板356の間に摩擦力が働かなくなり、揺動回転体30は自由な回転が可能になる。
【0108】
本実施形態の液圧モータ315は、基本的な構成は第1実施形態のものとほぼ同様であるため、上述した第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
ただし、本実施形態の液圧モータ315は、揺動回転する揺動回転体30に直接制動トルクが付与されるものであるため、回転変換ブロックを設ける場合に比較して部品点数を少なくすることができる。したがって、本実施形態の液圧モータ315を採用した場合には、製品コストの低減を図ることができる。
【0109】
<第5実施形態>
図11は、本実施形態の液圧モータ415(液圧装置)の縦断面図である。図12は、図11の要部を拡大した作動状態を示す図である。図11は、ブレーキ機構が作動した状態を示し、図12は、ブレーキ機構が解除された状態を示している。
本実施形態の液圧モータ415の場合も、ブレーキ機構448以外の構成は、第1実施形態のものとほぼ同様とされている。本実施形態の液圧モータ415では、ブレーキ機構448の複数の回転体側摩擦板456(第1摩擦板)が回転規制軸32の外周部に取り付けられている。ブレーキ機構448の複数の固定側摩擦板455(第2摩擦板)は、第1実施形態と同様に固定ブロック16の機器収容孔36の内周面に取り付けられている。
なお、本実施形態の液圧モータ415の場合も、揺動回転体30の揺動回転を第1軸線c1を中心とした同期回転として取り出す回転変換ブロックは設けられていない。
【0110】
複数の固定側摩擦板455は、第1実施形態と同様に、機器収容孔36の内周部に軸方向移動可能に、かつ、相対回転不能に取り付けられている。具体的には、例えば、機器収容孔36の内周面に軸方向に沿う複数のスリット溝が形成され、固定側摩擦板55の外周部に設けられた複数の係止爪がこれらのスリット溝に挿入されている。
【0111】
複数の回転体側摩擦板456は、回転規制軸32の外周部に軸方向移動可能に、かつ、相対回転不能に取り付けられている。この場合も、具体的には、回転規制軸32の外周面に軸方向に沿う複数のスリット溝が形成され、回転体側摩擦板456の内周部に設けられた複数の係止爪がこれらのスリット溝に挿入されている。
【0112】
ブレーキ機構448の一部を構成する押圧機構は、第4実施形態と同様のピストン装置245Aと付勢用スプリング298とを備えている。ここでは、説明が重複するため、ピストン装置245Aの詳細な説明は省略するが、筒状ピストン58における円筒壁58bの第2方向側の端部は押圧部材を兼ねている。
【0113】
液圧モータ415の運転が停止し、液圧導入通路44からピストン室59に高圧の作動液が導入されないときには、図11に示すように、付勢用スプリング298が筒状ピストン58を介して固定側摩擦板455と回転体側摩擦板456に押圧力を付与する。このとき、固定側摩擦板455と回転体側摩擦板456の間に摩擦力が働き、回転規制軸32及び揺動回転体30の揺動回転が制動される。
【0114】
また、液圧モータ415の運転が開始し、液圧導入通路44からピストン室59に高圧の作動液が導入されると、図12に示すように、その作動液の圧力を受けて筒状ピストン58が付勢用スプリング298の付勢力に抗して後退する。この結果、固定側摩擦板455と回転体側摩擦板456の間に摩擦力が働かなくなり、回転規制軸32及び揺動回転体30の自由な回転が可能になる。
【0115】
本実施形態の液圧モータ415は、基本的な構成は第1実施形態のものとほぼ同様であるため、上述した第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
ただし、本実施形態の液圧モータ415は、揺動回転体30と同期して揺動回転する回転規制軸32に制動トルクを付与するものであるため、構成部品の少ない簡単な構成によって揺動回転体30を制動することができる。したがって、本実施形態の液圧モータ415を採用した場合には、製品コストの低減を図ることができる。
【0116】
<第6実施形態>
図13は、本実施形態の液圧モータ515(液圧装置)の縦断面図である。図14は、図13の要部を拡大した作動状態を示す図である。図13は、ブレーキ機構548が作動した状態を示し、図14は、ブレーキ機構548が解除された状態を示している。
本実施形態の液圧モータ515は、ブレーキ機構548以外の概略構成は、第1実施形態の構成に一部類似している。以下、液圧モータ515について、第1実施形態との相違点を中心として説明する。
【0117】
液圧モータ515の出力回転ブロック518は、第1実施形態の第1筒部18Fの第2方向側に第3筒部18Tが配置され、第3筒部18Tの第2方向側の端面に端部カバー18Cが重ねられている。出力回転ブロック518は、端部カバー18C、第3筒部18T、第1筒部18F、給排プレート18P、及び、第2筒部18Sが締結ボルト20で結合されて構成されている。
【0118】
第1筒部18Fの内周側には、揺動回転体30が揺動回転可能に配置されている。第2筒部18Sは、図示しない軸受を介して固定ブロック16に回転可能に支持されている。また、固定ブロック16の内周部にはスプラインブロック37が一体に固定されている。揺動回転体30とスプラインブロック37には夫々スプライン孔31,38が形成されている。スプラインブロック37のスプライン孔38には、回転規制軸32の一端側の第1外スプライン32Fが首振り可能に嵌め合わされている。揺動回転体30のスプライン孔31には、回転規制軸32の他端側の第2外スプライン32Sが首振り可能に嵌め合わされている。
【0119】
第3筒部18Tの内周側には、回転変換ブロック528が収容されている。回転変換ブロック528は、揺動回転体30の揺動成分を、第1軸線c1を中心する同期回転として取り出すためのブロックである。回転変換ブロック528は、短軸円柱状の大径のブロック本体528Lと、ブロック本体528Lの第1方向側の端面に突設された偏心ボス部528Sと、を備えている。偏心ボス部528Sは、ブロック本体528Lよりも小径の短軸円筒状に形成されている。偏心ボス部528Sは、ブロック本体528Lの中心軸線(第1軸線c1)に対して径方向に所定量偏心して設けられている。偏心ボス部528Sの偏心量は、揺動回転体30の旋回半径(揺動半径)とほぼ同じに設定されている。
【0120】
揺動回転体30の内周縁部には、第2方向に向かって突出する円筒状のボス部533が形成されている。この揺動回転体30のボス部533は、第3筒部18Tの内周空間に向かって軸方向に突出している。ボス部533の内周面はガイド面533aとされている。ボス部533のガイド面533aには、回転変換ブロック528の偏心ボス部528Sが挿入されている。偏心ボス部528Sは、ニードル軸受等の軸受80を介してガイド面533aに回転可能に支持されている。
【0121】
また、回転変換ブロック528のうちの、ブロック本体528Lの第2方向側の端面中央には、円柱状の支持ボス62が形成されている。支持ボス62は、ブロック本体528Lの中心軸線と同軸に形成されている。支持ボス62は、出力回転ブロック518の端部カバー18Cに軸受81を介して回転可能に支持されている。こうして軸受81に支持された回転変換ブロック528は、短軸円筒状のブロック本体528Lが第1軸線c1を中心として回転する。このとき、偏心ボス部528Sは、揺動回転体30の揺動回転(偏心回転)に同期して回転することができる。したがって、回転変換ブロック528は、揺動回転体30の揺動成分を第1軸線c1を中心とする同期回転として取り出すことができる。
【0122】
第3筒部18Tの第2方向側寄りの内周面には、円環板状の複数枚の第2摩擦板70が取り付けられている。各第2摩擦板70は、第3筒部18Tの内周部に軸方向移動可能に、かつ、相対回転不能に取り付けられている。具体的には、例えば、第3筒部18Tの内周面に軸方向に沿う複数のスリット溝が形成され、第2摩擦板70の外周部に設けられた複数の係止爪がこれらのスリット溝に挿入されている。第2方向側の端部に配置される第2摩擦板70は、変位規制部材によって第2方向側への変位を規制されている。
【0123】
また、回転変換ブロック528のブロック本体528Lの外周部には、円環板状の複数の第1摩擦板71が取り付けられている。各第1摩擦板71は、ブロック本体528Lの外周面に軸方向移動可能に、かつ、相対回転不能に取り付けられている。具体的には、例えば、ブロック本体528Lの外周部に軸方向に沿う複数のスリット溝が形成され、第1摩擦板71の内周部に設けられた複数の係止爪がこれらのスリット溝に挿入されている。第2摩擦板70と第1摩擦板71は軸方向に交互に配置されている。第2摩擦板70と第1摩擦板71に軸方向から外力が加わると、摩擦板同士が面で接触して制動力を発生する。
なお、本実施形態では、第1摩擦板71が揺動回転体30と連動して回転する第1摩擦板を構成し、第2摩擦板70が、第2ブロックまたは第1ブロックに回転を規制される第2摩擦板を構成している。本実施形態では、第2摩擦板70が第1ブロックである出力回転ブロック518(第3筒部18T)に回転を規制されている。
【0124】
ここで、第2摩擦板70が取り付けられる第3筒部18Tは、減速済みの回転が出力される出力回転ブロック518側の部材であり、第1摩擦板71が取り付けられる回転変換ブロック528は、揺動回転体30の揺動回転と同期して回転する部材である。このため、第3筒部18Tと回転変換ブロック528の回転は常に回転速度が異なる。このため、上述のように第2摩擦板70と第1摩擦板71の面接触によって制動力が発生すると、第3筒部18Tと回転変換ブロック528がロック状態となり、揺動回転体30の揺動回転がロックされる。
【0125】
ブレーキ機構548の一部を構成する押圧機構は、第1実施形態のものとほぼ同構成のものを採用している。ただし、第3筒部18Tの内周側には、第1方向側の端部の第2摩擦板70と対峙するように終端押圧プレート75が配置されている。終端押圧プレート75は、付勢用スプリング98によって付勢される押圧ロッド50によって押圧され、付勢用スプリング98の付勢力を複数の摩擦板に押圧力として伝達する。
【0126】
本実施形態の液圧モータ515は、具体的な構成は若干異なるものの上述した第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
ただし、本実施形態の液圧モータ515は、回転変換ブロック528とブレーキ機構548の一部(第2摩擦板70、及び、第1摩擦板71等)が揺動回転体30の第2方向側に配置されるため、軸長を短縮するうえでは不利となる。しかし、回転変換ブロック528やブレーキ機構の主要な部材が第3筒部18Tの内側に集約して配置されるため、ブレーキ機構を備えた仕様の液圧モータ515と、ブレーキ機構を備えない液圧モータで多く部品を容易に共用することができる。したがって、本構成を採用した場合には、生産性をより高めることができる。
【0127】
<第7実施形態>
図15は、本実施形態の液圧モータ615(液圧装置)の縦断面図である。
本実施形態の液圧モータ615は、基本的な構成は第6実施形態のものとほぼ同様とされている。ただし、揺動回転体30の揺動成分を第1軸線c1を中心とする同期回転として取り出す手法が第6実施形態のものと異なっている。
【0128】
回転規制軸32の第2方向側の端面には、回転規制軸32の中心軸線と同軸に突出する柱状の突出部73が一体に形成されている。この突出部73の外周面には、球状の膨出部51が形成されている。
【0129】
第3筒部18Tの内周部に配置される回転変換ブロック628には、第1方向側に開口する円形状の偏心穴628aが形成されている。偏心穴628aは、内周面が円形状の穴であり、回転変換ブロック628の中心軸線(第1軸線c1)に対して径方向に偏心して形成されている。回転変換ブロック628の中心軸線に対する偏心穴628aの偏心量は、回転規制軸32の第2方向側の端部の膨出部51の揺動半径(偏心回転半径)と合致するように設定されている。偏心穴628aの内周面には、内周側が凹球面状の滑り軸受52が固定されている。回転規制軸32側の球状の膨出部51は、滑り軸受52の凹球面状の内面によって揺動可能(首振り可能)に支持される。
なお、本実施形態の場合も、回転変換ブロック628は、第2方向側の端面に設けられた支持ボス62が軸受81を介して端部カバー18Cに支持されている。
【0130】
第3筒部18Tの内周部には、第6実施形態と同様に複数の第2摩擦板70が取り付けられている。また、回転変換ブロック628の外周面には、第6実施形態と同様に複数の第1摩擦板71が取り付けられている。
【0131】
本実施形態の液圧モータ615では、揺動回転体30が揺動回転すると、それに伴って回転規制軸32の端部の膨出部51が同期して揺動回転する。このとき、膨出部51が滑り軸受52内で滑りつつ、膨出部51の揺動回転成分が回転変換ブロック628の回転として取り出される。
本実施形態の液圧モータ615は、このように揺動回転体30の揺動成分を第1軸線c1を中心とする同期回転として取り出す手法が異なるものの、その他の構成は第6実施形態のものと同様とされている。このため、第6実施形態のものと同様の基本的な効果を得ることができる。
【0132】
本実施形態の液圧モータ615の場合も、回転変換ブロック628やブレーキ機構648の主要な部材が第3筒部18Tの内側に集約して配置されるため、ブレーキ機構648を備えた仕様の液圧モータ615と、ブレーキ機構648を備えない液圧モータで多く部品を容易に共用することができる。
【0133】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0134】
また、上述した各実施形態の液圧装置は液圧モータであるが、本発明に係る液圧装置は、液圧モータに限定されない。液圧装置は、外部の動力を受けて作動液を吐出する液圧ポンプであっても良い。この場合、液圧ポンプは上記の各実施形態とほぼ同様の構成を採用することができる。上記の各実施形態と同様にブレーキ機構を配置することにより、ポンプ停止時における揺動回転体のロックとロック解除をスムーズに、かつ、確実に行うことができる。
【0135】
また、本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0136】
1…ショベルト(建設機械)、5…クローラ(走行駆動部)、15,15A,115,215,215A,315,415,515,615…液圧モータ(液圧装置)、16…固定ブロック(第2ブロック)、18…出力回転ブロック(第1ブロック)、18F…第1筒部(筒部)、18P…給排プレート(流路切換部)、22…内歯ピン(内歯)、23…摺動プレート(流路切換部)、24…供給通路、25…排出通路、28,528,628…回転変換ブロック、30…揺動回転体、30a…外歯、32…回転規制軸、35a,35b…作動室、40…押圧プレート(押圧部材)、45…ピストン装置(制動解除装置)、48,248,248A,348,448,548,648…ブレーキ機構、50…押圧ロッド(押圧部材)、55,355…固定側摩擦板(第2摩擦板)、56,356…回転体側摩擦板(第1摩擦板)、70…第2摩擦板、71…第1摩擦板、75…終端押圧プレート(押圧部材)、98…付勢用スプリング
図1
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