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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076044
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】アウトソール構造およびシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/26 20060101AFI20240529BHJP
   A43C 13/04 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A43B13/26 A
A43C13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187404
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新見 嘉崇
(72)【発明者】
【氏名】氏島 敏量
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA11
4F050HA56
4F050HA60
4F050HA85
4F050JA03
4F050JA06
4F050LA01
4F050MA70
4F050MA84
(57)【要約】
【課題】スタッドの耐久性の向上を図るとともに、スタッドの地面への貫入量をより高めることが可能な構成を備えるアウトソール構造およびシューズを提供する。
【解決手段】シューズ用のアウトソール構造であって、シューズの底面に配置されるアウトソール本体10と、アウトソール本体10から突出するように設けられるスタッド20と、を備え、スタッド20は、アウトソール本体10から突出するように設けられるスタッド芯21と、スタッド芯21の周囲を覆うようにしてスタッド芯21に装着される中空構造22hのスタッドカバー22と、を含み、スタッド芯21の裾部には、スタッド芯21の周囲を取り囲み、アウトソール本体10の厚み方向に凹む環状凹部211が設けられ、スタッドカバー22の底部は、環状凹部211に嵌まり込むように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズ用のアウトソール構造であって、
前記シューズの底面に配置されるアウトソール本体と、
前記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッドと、
を備え、
前記スタッドは、
前記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッド芯と、
前記スタッド芯の周囲を覆うようにして前記スタッド芯に装着される中空構造のスタッドカバーと、を含み、
前記スタッド芯の裾部には、前記スタッド芯の周囲を取り囲み、前記アウトソール本体の厚み方向に凹む環状凹部が設けられ、
前記スタッドカバーの底部は、前記環状凹部に嵌まり込むように設けられている、
アウトソール構造。
【請求項2】
前記スタッド芯は、前記アウトソール本体側に位置する第1の太さ領域を有する第1柱部と、前記第1柱部から見て前記アウトソール本体とは反対側において前記第1柱部に連通し、前記第1の太さ領域よりも小さい第2の太さ領域を有する第2柱部とを含み、
前記スタッドカバーは、前記スタッド芯の前記第1柱部と前記第2柱部の外面に沿って前記スタッド芯の周囲を覆っている、
請求項1に記載のアウトソール構造。
【請求項3】
前記スタッドカバーの前記中空構造は、先端部まで貫通している構造である、
請求項1に記載のアウトソール構造。
【請求項4】
前記アウトソール本体および前記スタッド芯は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、
前記スタッドカバーは、熱可塑性ポリウレタンである、
請求項1に記載のアウトソール構造。
【請求項5】
シューズ用のアウトソール構造であって、
前記シューズの底面に配置されるアウトソール本体と、
前記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッドと、
を備え、
前記スタッドは、
前記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッド芯と、
前記スタッド芯の周囲を覆うようにして前記スタッド芯に装着される中空構造のスタッドカバーと、含み、
前記スタッドカバーは、前記アウトソール本体側に位置する第1の太さ領域を有する第1カバー部と、前記第1カバー部から見て前記アウトソール本体とは反対側において前記第1カバー部に連通し、前記第1カバー部よりも小さい第2の太さ領域を有する第2カバー部とを有する、
アウトソール構造。
【請求項6】
前記第1カバー部と前記第2カバー部とは、曲面により連結されている、
請求項5に記載のアウトソール構造。
【請求項7】
前記スタッドカバーは平面視において接地面が折れ曲がった形状に設けられている、
請求項5に記載のアウトソール構造。
【請求項8】
前記アウトソール本体および前記スタッド芯は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、
前記スタッドカバーは、熱可塑性ポリウレタンである、
請求項5に記載のアウトソール構造。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアウトソール構造を有する靴底と、
前記靴底の上に配置されるアッパーと、
を備えたシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、アウトソール構造およびシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ等で着用されるシューズのアウトソールとして、アウトソール本体から突出する突起(スパイク)が設けられているアウトソール構造が挙げられる。たとえば、ベースボール用スパイクには大きく分けて「スタッドスパイク」および「金具スパイク」の2種類がある。スタッドスパイクは、金具スパイクと比較して、足への負担軽減、軽量性などに利点がある。
【0003】
このようなアウトソール構造を開示するものとして、たとえば、特開2020-6068号公報(特許文献1)および特開2001-46113号公報(特許文献2)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-6068号公報
【特許文献2】特開2001-46113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、このようなアウトソール構造において、スタッドの耐久性(スタッド折れの回避)の向上が求められるとともに、スタッドの地面への貫入量をより高めることが要求される。
【0006】
本開示の目的は、スタッドの耐久性の向上を図るとともに、スタッドの地面への貫入量をより高めることが可能な構成を備えるアウトソール構造およびシューズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示の一局面に従ったアウトソール構造は、シューズ用のアウトソール構造であって、上記シューズの底面に配置されるアウトソール本体と、上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッドと、を備え、上記スタッドは、上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッド芯と、上記スタッド芯の周囲を覆うようにして上記スタッド芯に装着される中空構造のスタッドカバーと、を含み、上記スタッド芯の裾部には、上記スタッド芯の周囲を取り囲み、上記アウトソール本体の厚み方向に凹む環状凹部が設けられ、上記スタッドカバーの底部は、上記環状凹部に嵌まり込むように設けられている。
【0008】
この開示の他の局面に従ったアウトソール構造は、シューズ用のアウトソール構造であって、上記シューズの底面に配置されるアウトソール本体と、上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッドと、を備え、上記スタッドは、上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッド芯と、上記スタッド芯の周囲を覆うようにして上記スタッド芯に装着される中空構造のスタッドカバーと、含み、上記スタッドカバーは、上記アウトソール本体側に位置する第1の太さ領域を有する第1カバー部と、上記第1カバー部から見て上記アウトソール本体とは反対側において上記第1カバー部に連通し、上記第1カバー部よりも小さい第2の太さ領域を有する第2カバー部とを有する。
【0009】
この開示の一局面に従ったシューズは、上記アウトソール構造と、上記アウトソール構造の上に配置されるアッパーと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
この開示によれば、スタッドの耐久性の向上を図るとともに、スタッドの地面への貫入量をより高めることが可能な構成を備えるアウトソール構造およびシューズの提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態のアウトソール構造を備えたシューズの斜視図である。
図2】本実施の形態のアウトソール構造を備えたシューズの底面図である。
図3】本実施の形態のスタッドの内部構造を示す図である。
図4】他の構造のスタッドの内部構造を示す図である。
図5】他の構造のスタッドの内部構造を示す図である。
図6】本実施の形態のスタッドの外観を示す図である。
図7】比較例1のスタッドの外観を示す図である。
図8】比較例2のスタッドの外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
このアウトソール構造およびシューズの実施の形態について、以下、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一又はそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。以下の説明では、足長方向、足幅方向、前方、後方等の用語が用いられる場合がある。これら方向を示す用語は、地面等の平坦面に置かれたシューズ100を着用した着用者の視点から見た方向を示す。例えば、前方は、つま先側を指し、後方は、踵側を指す。また、内側又は内足側は、足幅方向における足の第1趾(母指)側を指し、外側又は外足側は、足幅方向における足の第5趾側を指す。
【0013】
以下に示すシューズは、野球用の「スタッドスパイク」タイプのシューズを図示したものであるが、必ずしも野球用に限定されるものでなく、例えば、サッカーやラグビーなど他のスポーツを含め、広くスポーツ等で着用されるシューズに適用することが可能である。
【0014】
(シューズ100/アウトソール構造110A)
図1および図2を参照して、実施の形態におけるシューズ100およびアウトソール構造110Aについて説明する。図1は、アウトソール構造110Aを備えたシューズの斜視図、図2は、アウトソール構造110Aを備えたシューズ100の底面図である。
【0015】
図1および図2には、左足用のシューズが示されているが、以下に示す開示は、右足にも適用可能である。この場合、右足用のシューズは、右足用のシューズと左右対称な形状、あるいは、概ねそれに準じる形状に設けられる。
【0016】
図1を参照して、シューズ100は、アウトソール構造110Aが設けられた靴底110と、アッパー120とを備えている。靴底110は、足の足裏を覆う部材であり、略偏平な形状を有している。アッパー120は、挿入された足の甲側の部分の全体を少なくとも覆う形状を有しており、靴底110の上方に位置している。
【0017】
アッパー120は、アッパー本体121と、シュータン122と、シューレース123とを有している。このうち、シュータン122およびシューレース123は、いずれもアッパー本体121に固定または取り付けられている。
【0018】
アッパー本体121の上部には、足首の上部と足の甲の一部とを露出させる上側開口部が設けられている。一方、アッパー本体121の下部には、一例としては、靴底110によって覆われる下側開口部が設けられており、他の例としては、当該アッパー本体121の下端が袋縫いされること等で底部が形成されている。
【0019】
シュータン122は、アッパー本体121に設けられた上側開口部のうち、足の甲の一部を露出させる部分を覆うようにアッパー本体121に縫製、溶着あるいは接着またはこれらの組み合わせ等によって固定されている。アッパー本体121およびシュータン122としては、たとえば織地や編地、不織布、合成皮革、樹脂等が用いられ、特に通気性や軽量性が求められる靴においては、ポリエステル糸を編み込んだダブルラッセル経編地が利用される。
【0020】
シューレース123は、アッパー本体121に設けられた足の甲の一部を露出させる上側開口部の周縁を足幅方向において互いに引き寄せるための紐状の部材からなり、当該上側開口部の周縁に設けられた複数の孔部に挿通されている。アッパー本体121に足が挿入された状態においてこのシューレース123を締め付けることにより、アッパー本体121を足に密着させることが可能になる。
【0021】
(アウトソール構造110A)
図2を参照して、靴底110には、アウトソール構造110Aが設けられている。このアウトソール構造110Aは、シューズ100の靴底110の底面に配置されるアウトソール本体10と、このアウトソール本体10から突出するように設けられるスタッド20A、スタッド20B、および、スタッド20Cを含む。
【0022】
スタッド20Aおよびスタッド20Bは、アウトソール本体10の前足部R1に配置され、スタッド20Cは、後足部R3に配置されている。ここで、靴底110は、地面側から平面視した状態における長軸方向である前後方向(図2中の左右方向)に沿って、足の足趾部と踏付け部とを支持する前足部R1、足の踏まず部を支持する中足部R2、および、足の踵部を支持する後足部R3に区画される。
【0023】
靴底110は、平面視した状態における長軸方向と交差する方向である足幅方向に沿って、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)である内足側の部分(図中に示すS1側の部分)と、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)である外足側の部分(図中に示すS2側の部分)とに区画される。
【0024】
本実施の形態では、前足部R1の内足側(S1側)と外足側(S2)とのつま先側の境界の1ヶ所にスタッド20Aが設けられ、前足部R1の内足側(S1)の3ヶ所にスタッド20Aが設けられ、前足部R1の外足側(S2)の3ヶ所にスタッド20Aが設けられている。前足部R1の内足側(S1側)と外足側(S2)との中央領域の境界近傍(足の母趾の近傍、図中に示すQ1の近傍)の1ヶ所にスタッド20Bが設けられている。さらに、後足部R3の内足側(S1)の2ヶ所にスタッド20Cが設けられ、後足部R3の外足側(S2)の2ヶ所にスタッド20Cが設けられている。スタッド20A、スタッド20Bおよびスタッド20Cは、内部構造および外形形状が異なる。以下、各スタッドの内部構造および外形形状について詳細に説明する。
【0025】
(スタッド20A)
図3を参照して、スタッド20Aの詳細構造について説明する。図3はスタッド20Aの内部構造を示す図である。図においては、シューズ100の使用状態とは天地を逆にして図示しており、図の上側が地面側となる。図3において、(A)中のX1-X2線矢視断面図が、(B)に示す断面図であり、(A)中のY1-Y2線矢視断面図が、(C)に示す断面図である。以下、図4および図5においても同様である。
【0026】
図3を参照して、このスタッド20Aは、アウトソール本体10から地面側に突出するように設けられるスタッド芯21と、このスタッド芯21の周囲を覆うようにしてスタッド芯21に装着される中空構造22hを有するスタッドカバー22とを含む。スタッド芯21は、アウトソール本体10と一体に構成されても良いし、アウトソール本体10とは別部材で構成されてもよいが、生産性および耐久性の観点から一体的に構成されていることが好ましい。スタッド20Aのアウトソール本体10から地面側全高(h)は、約7.0mm~23.0mm程度である。
【0027】
アウトソール本体10およびスタッド芯21には、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)を用いるとよい。スタッド20Aの土台となるアウトソール本体10にTPAを採用することで、スタッド20A全体の硬度を高めることができる。これにより、折れにくく、貫入量の高いスタッド20Aとなる。一方、スタッドカバー22には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を用いることが好ましい。スタッドカバー22の材料としてTPUを使用することによって、接地面に対する耐摩耗性を高めることができる。
【0028】
スタッド芯21の裾部には、スタッド芯21の周囲を取り囲み、アウトソール本体10の厚み方向に凹む環状凹部211が設けられている。さらに、スタッドカバー22の底部22tは、環状凹部211に嵌まり込むように設けられている。
【0029】
環状凹部211の深さとしては、スタッド芯21の裾部のアウトソール本体10の表面からの盛り上がり高さ(図中のh1寸法)が、2.0mm~7.0mm程度、深さ方向(図中のh2寸法)に、1.0mm~6.0mm程度の深さであるとよい。
【0030】
このように、スタッドカバー22の底部22tが、環状凹部211に嵌まり込むように設けることで、スタッドカバー22の射出成形時に、インサート部品の固定が安定する樹脂流れとなり、生産安定性を向上し、スタッドカバー22とスタッド芯21との接着性が高まる。その結果、スタッド20Aの耐久性を高めることができる。さらに、スタッド20Aの中心部にスタッド芯21を貫通させることで、スタッド20Aの硬度を高め、スタッド20Aの変形を抑制することができる。この構成により、スタッド20Aの耐久性の向上を図るとともに、スタッド20Aの地面への貫入量をより高めることを可能とする。
【0031】
スタッド芯21は、X1-X1線矢視断面図で見た場合に、アウトソール本体10側に位置する第1の太さ領域を有する第1柱部21aと、第1柱部21aから見てアウトソール本体10とは反対側(地面側)において第1柱部21aに連通し、第1の太さ領域よりも小さい第2の太さ領域を有する第2柱部21bとを含み、スタッドカバー22の中空構造22hは、スタッド芯21の第1柱部21aと第2柱部21bの外面に沿ってスタッド芯21の周囲を覆うように設けられている。
【0032】
第1柱部21aは、地面側に向かうに従って徐々に幅が小さくなる形態を有している。第2柱部21bも、地面側に向かうに従って徐々に幅が小さくなる形態を有している。第1柱部21aと第2柱部21bとの連結領域は、曲面からなる段差領域21cにより連続する形態を有している。
【0033】
図3(B)において、アウトソール本体10の表面からの第1柱部21aの高さh3は、5.0mm~9.0mm程度、段差領域21cの高さh4は、1.0mm~3.0mm程度、第2柱部21bの高さh5は、2.0mm~5.0mm程度である。また、第1柱部21aの幅は、5.0mm~12.0mm程度、第2柱部21bの幅は、1.0mm~8.0mm程度である。
【0034】
スタッドカバー22は、アウトソール本体10側に位置する第1の太さ領域を有する第1カバー部22aと、第1カバー部22aから見てアウトソール本体10とは反対側(接地側)において第1カバー部22aに連通し、第1カバー部22aよりも小さい第2の太さ領域を有する第2カバー部22bとを有する。第1カバー部22aと第2カバー部22bとは、曲面領域22cにより連結されているとよい。図3(C)において、アウトソール本体10の表面からの第1カバー部22aの高さh7は、3.0mm~11.0mm程度、曲面領域22cの高さh8は、1.0mm~3.0mm程度、第2カバー部22bの高さh9は、3.0mm~9.0mm程度である。
【0035】
このように、スタッド20Aの形態が、接地面22s側に向かって細くなることで、スタッド20Aの地面への貫入量をより高める一方で、スタッド芯21の体積を増やし、スタッド20Aの硬度を高めることができる。
【0036】
スタッドカバー22の中空構造22hは、スタッドカバー22の接地面22sまで貫通している構造であるとよい。中空構造22hが接地面22sまで貫通していることにより、スタッドカバー22の射出成形時に、エアだまりの発生を防止し、成形性を良くすることで、スタッド20Aの耐久性を高めることができる。
【0037】
スタッドカバー22の接地面22sは、平面視において折れ曲がった形状に設けられているとよい。具体的には、接地面22sにおいて、第1接地面22s1および第2接地面22s2を有し、第1接地面22s1および第2接地面22s2は、所定の角度で交差するように設けられている。スタッド20Aにおいて、第1接地面22s1および第2接地面22s2が交差する内角α1は、約135度程度である。また、第1接地面22s1の端部には、第1面取り22s3が施され、第2接地面22s2の端部には、第2面取り22s4が施されている。
【0038】
このように、接地面22sを折れ曲がった形状にすることで、スタッド20Aの貫入量の向上を図ることができる。さらに、接地面22sの内角側を、図2に示すように、所定の向きとなるように配置することで、靴底110に要求される地面に対するグリップ力の向上を図ることを可能とする。
【0039】
(スタッド20B)
次に、図4を参照して、スタッド20Bの詳細構造について説明する。図4はスタッド20Bの内部構造を示す図である。このスタッド20Bの基本構造は、上記したスタッド20Aと同じである。相違点は、スタッド芯21の形態およびスタッドカバー22の形態の相違である。
【0040】
スタッド20Bのスタッド芯21を、スタッド20Aのスタッド芯21とX1-X2断面で比較した場合には、図4(B)において、環状凹部211の深さとしては、スタッド芯21のアウトソール本体10の表面からの盛り上がり高さ(図中のh1寸法)が、2.0mm~7.0mm程度、深さ方向(図中のh2寸法)に、1.0mm~6.0mm程度の深さである。
【0041】
アウトソール本体10の表面からの第1柱部21aの高さh3は、5.0mm~9.0mm程度、段差領域21cの高さh4は、1.0mm~3.0mm程度、第2柱部21bの高さh5は、2.0mm~5.0mm程度である。第1柱部21aの幅は、5.0mm~12.0mm程度、第2柱部21bの幅は、1.0mm~8.0mm程度である。
【0042】
図4(C)において、アウトソール本体10の表面からの第1カバー部22aの高さh7は、3.0mm~11.0mm程度、曲面領域22cの高さh8は、3.0mm~5.0mm程度、第2カバー部22bの高さh9は、1.0mm~7.0mm程度である。
【0043】
スタッド20Bは、上記したように、足の母趾の近傍(図2中に示すQ1の近傍)に設けられる。この位置では、母趾を中心とした回転動作が重要となるため、上記したスタッド20Bの外形が好適となる。
【0044】
(スタッド20C)
次に、図5を参照して、スタッド20Cの詳細構造について説明する。図5はスタッド20Cの内部構造を示す図である。このスタッド20Cの基本構造は、上記したスタッド20Aと同じである。相違点は、スタッド芯21の形態およびスタッドカバー22の形態の相違である。
【0045】
スタッド20Cのスタッド芯21を、スタッド20Aのスタッド芯21とX1-X2断面で比較した場合には、図5(B)において、環状凹部211の深さとしては、スタッド芯21のアウトソール本体10の表面からの盛り上がり高さ(図中のh1寸法)が、2.0mm~7.0mm程度、深さ方向(図中のh2寸法)に、1.0mm~6.0mm程度の深さである。
【0046】
アウトソール本体10の表面からの第1柱部21aの高さh3は、5.0mm~9.0mm程度、段差領域21cの高さh4は、1.0mm~3.0mm程度、第2柱部21bの高さh5は、2.0mm~5.0mm程度である。第1柱部21aの幅は、5.0mm~12.0mm程度、第2柱部21bの幅は、1.0mm~8.0mm程度である。
【0047】
図5(C)において、アウトソール本体10の表面からの第1カバー部22aの高さh7は、3.0mm~11.0mm程度、曲面領域22cの高さh8は、1.0mm~3.0mm程度、第2カバー部22bの高さh9は、3.0mm~9.0mm程度である。
【0048】
スタッド20Cは、上記したように、後足部R3(図2参照)に配置されている。この位置では、スタッドの安定性が重要となるため、上記したスタッド20Bの外形が好適となる。
【0049】
(スタッド20Aの外形形状における作用効果)
次に、図6から図8を参照して、スタッド20Aの外形形状における作用効果について、比較例を参照しながら説明する。図6は、スタッド20Aの外観を示す図、図7は、比較例1のスタッド20Yの外観を示す図、図8は、比較例2のスタッド20Zの外観を示す図である。図6において、(A)中のX1-X2線矢視図が、(B)に示す側面図であり、(A)中のY1-Y2線矢視図が、(C)に示す側面図である。以下、図7および図8においても同様である。
【0050】
図6に示すスタッド20Aは、図3に示したスタッド20Aと同じである。スタッド20Aは、図6(C)によく現れるように、第1カバー部22aと第2カバー部22bとの間に曲面領域22cが設けられている。このように、曲面領域22cを設けることで、スタッド20Aの貫入量、および、耐久性の向上を可能とする。この作用効果については、上述したスタッド20Bおよびスタッド20Cにおいても同様である。
【0051】
図7に示す比較例1のスタッド20Yにおいては、曲面領域22cが設けられずに、第1カバー部22aが、接地面22sからアウトソール本体10の表面に向けて緩やかに傾斜している。この第1カバー部22aの形態では、スタッド20Yは、地面に対して貫入し難い形状となる。この形状に対して、スタッド20Aの場合には、第1カバー部22aの傾斜が急峻であることから、地面に対して貫入し易い形状である。
【0052】
図8に示す比較例2のスタッド20Zにおいては、第2カバー部22bがアウトソール本体10の表面に対して略垂直となり、曲面領域22cが設けられずに、第1カバー部22aが、第2カバー部22bからアウトソール本体10の表面に向けて緩やかに傾斜している。このスタッド20Zの形態では、根元部がスタッド20Aに比較して細くなるために、スタッド20Zの耐久性が低下し、スタッド20Zの根元部で折れることが懸念される。この形状に対して、スタッド20Aの場合には、第1カバー部22aの根元部は太く設けられていることから、耐久性が高い形状である。
【0053】
上述した例示的な実施の形態は、以下に記載される態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0054】
[態様1]
シューズ用のアウトソール構造であって、
上記シューズの底面に配置されるアウトソール本体と、
上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッドと、
を備え、
上記スタッドは、
上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッド芯と、
上記スタッド芯の周囲を覆うようにして上記スタッド芯に装着される中空構造のスタッドカバーと、を含み、
上記スタッド芯の裾部には、上記スタッド芯の周囲を取り囲み、上記アウトソール本体の厚み方向に凹む環状凹部が設けられ、
上記スタッドカバーの底部は、上記環状凹部に嵌まり込むように設けられている、
アウトソール構造。
【0055】
この[態様1]のアウトソール構造によれば、射出時にインサート部品の固定が安定する樹脂流れとなり、生産安定性が向上し、スタッドカバーとの接着性を高めることで、耐久性を高める。さらに、スタッドの中心部にスタッド芯を貫通させることで硬度を高め、変形しにくい構造が得られる。
【0056】
[態様2]
上記スタッド芯は、上記アウトソール本体側に位置する第1の太さ領域を有する第1柱部と、上記第1柱部から見て上記アウトソール本体とは反対側において上記第1柱部に連通し、上記第1の太さ領域よりも小さい第2の太さ領域を有する第2柱部とを含み、
上記スタッドカバーは、上記スタッド芯の上記第1柱部と上記第2柱部の外面に沿って上記スタッド芯の周囲を覆っている、
[態様1]に記載のアウトソール構造。
【0057】
この[態様2]のアウトソール構造によれば、スタッド芯の体積を増やし、スタッド芯の硬度を高めることができる。
【0058】
[態様3]
上記スタッドカバーの上記中空構造は、先端部まで貫通している構造である、
[態様1]または[態様2]のいずれか1態様に記載のアウトソール構造。
【0059】
この[態様3]のアウトソール構造によれば、スタッド接地面まで貫通させることにより、製造時のエアだまりを防止し、成形性を良くすることで耐久性を高めることができる。
【0060】
[態様4]
上記アウトソール本体および上記スタッド芯は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、
上記スタッドカバーは、熱可塑性ポリウレタンである、
[態様1]から[態様3]のいずれかの態様に記載のアウトソール構造。
【0061】
この[態様4]のアウトソール構造によれば、接地面は耐摩耗性を担保するために熱可塑性ポリウレタンを採用している。さらに、スタッドの土台となるアウトソール本体には硬度が高いポリアミド系熱可塑性エラストマーを採用し、スタッド全体の硬度を高めることで、折れにくく、貫入量の高い仕様となる。
【0062】
さらに、スタッド芯を硬度の高いポリアミド系熱可塑性エラストマーとすることで、既存の熱可塑性ポリウレタンとポリアミド系熱可塑性エラストマーとで構成されたスタッドよりもより高度が高いスタッド仕様とし、貫入量、および、耐久性をより高めることを可能とする。
【0063】
[態様5]
シューズ用のアウトソール構造であって、
上記シューズの底面に配置されるアウトソール本体と、
上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッドと、
を備え、
上記スタッドは、
上記アウトソール本体から突出するように設けられるスタッド芯と、
上記スタッド芯の周囲を覆うようにして上記スタッド芯に装着される中空構造のスタッドカバーと、含み、
上記スタッドカバーは、上記アウトソール本体側に位置する第1の太さ領域を有する第1カバー部と、上記第1カバー部から見て上記アウトソール本体とは反対側において上記第1カバー部に連通し、上記第1カバー部よりも小さい第2の太さ領域を有する第2カバー部とを有する、
アウトソール構造。
【0064】
この[態様5]のアウトソール構造によれば、スタッドの貫入量、および、耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0065】
[態様6]
上記第1カバー部と上記第2カバー部とは、曲面により連結されている、
[態様5]に記載のアウトソール構造。
【0066】
この[態様6]のアウトソール構造によれば、スタッドにかかる力を分散させてスタッドの耐久性の向上を可能とする。
【0067】
[態様7]
上記スタッドカバーは平面視において接地面が折れ曲がった形状に設けられている、
[態様5]または[態様6]いずれかに記載のアウトソール構造。
【0068】
この[態様7]のアウトソール構造によれば、スタッドの貫入量の向上を図ることが可能となる。
【0069】
[態様8]
上記アウトソール本体および上記スタッド芯は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、
上記スタッドカバーは、熱可塑性ポリウレタンである、
[態様5]から[態様7]のいずれかの態様に記載のアウトソール構造。
【0070】
この[態様8]のアウトソール構造によれば、接地面は耐摩耗性を担保するために熱可塑性ポリウレタンを採用している。さらに、スタッドの土台となるアウトソール本体には硬度が高いポリアミド系熱可塑性エラストマーを採用し、スタッド全体の硬度を高めることで、折れにくく、貫入量の高い仕様となる。
【0071】
さらに、スタッド芯を硬度の高いポリアミド系熱可塑性エラストマーとすることで、既存の熱可塑性ポリウレタンとポリアミド系熱可塑性エラストマーとで構成されたスタッドよりもより高度が高いスタッド仕様とし、貫入量、および、耐久性をより高めることを可能とする。
【0072】
[態様9]
[態様1]から[態様8]のいずれか1項に記載のアウトソール構造を有する靴底と、
上記靴底の上に配置されるアッパーと、
を備えたシューズ。
【0073】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10 アウトソール本体、20A,20B,20C,20Y,20Z スタッド、21 スタッド芯、21a 第1柱部、21b 第2柱部、21c 段差領域、22 スタッドカバー、22a 第1カバー部、22b 第2カバー部、22c 曲面領域、22h 中空構造、22s1 第1接地面、22s2 第2接地面、22s 接地面、22s4 第2面取り、22s3 第1面取り、22t 底部、100 シューズ、110A アウトソール構造、110 靴底、120 アッパー、121 アッパー本体、122 シュータン、123 シューレース、211 環状凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8