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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076047
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】立管ユニット用フレーム
(51)【国際特許分類】
   E04F 17/08 20060101AFI20240529BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20240529BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E04F17/08 Z
F16L3/00 H
F16L1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187407
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513154223
【氏名又は名称】株式会社クリマテック
(71)【出願人】
【識別番号】522459443
【氏名又は名称】株式会社クリマ・ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】大道 康之
(72)【発明者】
【氏名】大友 章弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】堤 淳祥
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】小内 真
(72)【発明者】
【氏名】片山 祥仁
(72)【発明者】
【氏名】金沢 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫃本 耕二
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AB04
3H023AC05
(57)【要約】
【課題】加工が容易で軽量な配管ユニット用フレームを提供する。
【解決手段】配管43を設置するための立管ユニット用フレーム30であって、複数の縦フレーム31と、複数の縦フレーム31の間に配置された複数の横フレーム32と、を備え、複数の縦フレーム31と複数の横フレーム32のうちの少なくとも一部が長繊維補強発泡成形体で構成され、長繊維補強発泡成形体は、熱硬化性樹脂と、長繊維補強材と、を含み、熱硬化性樹脂100質量部に対し、長繊維補強材が30質量部以上200質量部以下であり、比重が1.5以下、線膨張係数が1.5×10-5以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を設置するための立管ユニット用フレームであって、
複数の縦フレームと、
前記複数の縦フレームの間に配置された複数の横フレームと、を備え、
前記複数の縦フレームと前記複数の横フレームのうちの少なくとも一部が長繊維補強発泡成形体で構成され、
前記長繊維補強発泡成形体は、
熱硬化性樹脂と、長繊維補強材と、を含み、
前記熱硬化性樹脂100質量部に対し、前記長繊維補強材が30質量部以上200質量部以下であり、
比重が1.5以下、線膨張係数が1.5×10-5以下である、
立管ユニット用フレーム。
【請求項2】
前記縦フレームと前記横フレームとがビスにより連結され、
前記ビスが挿入された箇所の周囲の前記縦フレームまたは前記横フレームの表面には凹部が設けられている
請求項1に記載の立管ユニット用フレーム。
【請求項3】
前記縦フレームと前記横フレームとがビスにより連結され、
前記縦フレームと前記横フレームの1つの連結部に対して複数のビスが挿入されている
請求項1に記載の立管ユニット用フレーム。
【請求項4】
前記複数のビスは、前記縦フレームまたは前記横フレームの長辺方向または短辺方向に対して傾斜する直線上に位置する
請求項3に記載の立管ユニット用フレーム。
【請求項5】
前記ビスの長さは、前記縦フレームおよび前記横フレームの短辺方向の長さを合わせた長さよりも短い
請求項2または3に記載の立管ユニット用フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内において配管を設置するための構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内には、給水、給湯用などの給水管や、汚水や空調ドレン水を排水する排水管など、各種の配管が設置され、建物が高層の場合には多層階にわたりこれらの配管が縦方向に設置されている。
従来、このような縦方向に配置された配管を建物内に固定するものとして、例えば特許文献1に示されるような立管ユニット用フレームが知られている。この特許文献1に示される立管ユニット用フレームは、チャネル材などの複数の鋼材をボルト結合や溶接により組み立てた強固な構造体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-299688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、配管を固定する作業は建物内のパイプスペースなどの限られた狭い場所で行わなければならないため、設置に使用できる重機に制限がある。
しかしながら、特許文献1の立管ユニット用フレームは、鋼材を用いた構造体であるがために立管ユニット用フレーム自体が相当な重量を有し、この立管ユニット用フレームに配管を固定した場合にはさらに重量が増大し、配管を取り付けた立管ユニット用フレームの現場への搬入や、設置作業は容易ではなく、設置が困難であった。
また、鋼材を用いた構造体であるがために、立管ユニット用フレーム自体の強度が高すぎ、施工現場に適した形状への加工が困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、加工が容易で軽量な配管ユニット用フレームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
「1」本発明に係る立管ユニット用フレームは、配管を設置するための立管ユニット用フレームであって、複数の縦フレームと、前記複数の縦フレームの間に配置された複数の横フレームと、を備え、前記複数の縦フレームと前記複数の横フレームのうちの少なくとも一部が長繊維補強発泡成形体で構成され、前記長繊維補強発泡成形体は、熱硬化性樹脂と、長繊維補強材と、を含み、前記熱硬化性樹脂100質量部に対し、前記長繊維補強材が30質量部以上200質量部以下であり、比重が1.5以下、線膨張係数が1.5×10-5以下である、立管ユニット用フレーム。
「2」前記縦フレームと前記横フレームとがビスにより連結され、前記ビスが挿入された箇所の周囲の前記縦フレームまたは前記横フレームの表面には凹部が設けられている「1」に記載の立管ユニット用フレーム。
「3」前記縦フレームと前記横フレームとがビスにより連結され、前記縦フレームと前記横フレームの1つの連結部に対して複数のビスが挿入されている「1」に記載の立管ユニット用フレーム。
「4」前記複数のビスは、前記縦フレームまたは前記横フレームの長辺方向または短辺方向に対して傾斜する直線上に位置する「3」に記載の立管ユニット用フレーム。
「5」前記ビスの長さは、前記縦フレームおよび前記横フレームの短辺方向の長さを合わせた長さよりも短い「2」または「3」に記載の立管ユニット用フレーム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工が容易で軽量な配管ユニット用フレームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る立管ユニット用フレームがパイプスペースに設置されている状態を示す縦断面図である。
図2図1に示す立管ユニット用フレームの斜視図である。
図3図1に示す立管ユニット用フレームにおける横フレームに設けられたほぞを示す図である。
図4図1に示す立管ユニット用フレームにおける縦フレームに設けられたほぞ穴を示す図である。
図5図1に示す立管ユニット用フレームの縦フレームや横フレームを製造する製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(立管ユニット用フレーム30)
図1に示すように、本発明の立管ユニット用フレーム30は、建物の上下階を連通するパイプスペースPS内に配置されており、建物の各階に配置されている。
立管ユニット用フレーム30には、給水管41、排水管42、空調用配管(不図示)、ガス配管(不図示)等の配管43、およびそれらを固定する固定治具(不図示)や保温材(不図示)などが集約され、立管ユニット40とされる。
【0010】
図2に示すように、本発明の立管ユニット用フレーム30は、建物の上下階方向に沿った縦フレーム31と、縦フレーム31間に水平方向に架設される横フレーム32とが組み立てられて形成されている。
本実施形態における立管ユニット用フレーム30は、直方体の四隅の長辺に対応する位置に縦フレーム31が配置された、4つの長方形の側面で構成された直方体状とされており、隣接する縦フレーム31同士は複数の横フレーム32で連結されている。なお、連結とは縦フレーム31と横フレーム32とが互いに嵌合する場合だけでなく、縦フレーム31と横フレーム32の側面がビスなどにより固定されて当接している場合を含む。
【0011】
(縦フレーム31)
縦フレーム31は、建物の床スラブSで区切られた各階の床から天井までの高さ以下の長さを有する柱であり、2本以上の縦フレーム31の間に横フレーム32が配置される。
本実施形態における立管ユニット用フレーム30は直方体状であり、少なくとも4本の縦フレーム31が、直方体の四隅の長辺として配置されている。なお、直方体状の立管ユニット用フレーム30の1つの側面に3本以上の縦フレーム31が配置されていてもよく、この場合、直方体のいずれか1つの側面上であって、2本の縦フレーム31の間に1本以上の縦フレーム31が配置される。
搬送中に固定された配管43の端部が破損しないよう、配管43の下端が縦フレーム31の下端から突出していないことが好ましく、縦フレーム31の長さは固定される配管43の長さよりも長いことが好ましい。なお、縦フレーム31の長さは固定される配管43の長さよりも長くてもよい。縦フレーム31の長さは、例えば1m以上3m以下とされている。
縦フレーム31の断面形状は長方形または正方形が好ましい。
縦フレーム31には配管43を固定するための治具が固定されていてもよい。
【0012】
(横フレーム32)
横フレーム32は、2本の縦フレーム31の間に配置される梁である。横フレーム32は2本の縦フレーム31の間に2本以上設けられていてもよい。なお、横フレーム32の小口面(端面)は縦フレーム31の側面に当接していなくてもよく、例えば横フレーム32の端部の側面と縦フレーム31の側面とが当接し、横フレーム32の小口面(端面)が露出していてもよく、このような場合も、横フレーム32は2本の縦フレーム31の間に配置されている場合に含む。
本実施形態における立管ユニット用フレーム30は直方体状であり、少なくとも4本の縦フレーム31のそれぞれを接続するよう複数の横フレーム32が配置されている。
横フレーム32の上下方向(縦フレーム31の長手方向)における配置高さは任意であるが、異なる平面上にある2つの横フレーム32は1つの縦フレーム31に対して上下方向が同じ高さとなる位置に連結されると、縦フレーム31と横フレーム32との嵌合構造や連結部材が干渉し、連結部の強度が低下する恐れがある。そこで、1つの縦フレーム31に対して、異なる2つの平面上にある複数の横フレーム32を連結する場合、異なる2つの平面上にある複数の横フレーム32は互いに異なる高さ位置となるよう、縦フレーム31と連結することが好ましい。
横フレーム32の長さは、例えば0.25m以上1m以下とされている。
横フレーム32の断面形状は長方形または正方形が好ましい。
横フレーム32には配管43を固定するための治具が固定される。横フレーム32には、配管固定治具の移動を防止するための凹凸が設けられていてもよい。
【0013】
縦フレーム31と横フレーム32との接合は、互いを連結するための連結部材として釘やビス、ねじ、ボルト・ナットおよびこれらと連結される板状の金具を用いてもよい。
ビスで連結する場合、ビスの頭部(ドライバー先端が係合する箇所)のフレーム31、32側の面が円錐状のテーパ形状のいわゆる皿頭のビスが一般的であり、皿頭のビスの頭部までフレーム31、32へ挿入すると円錐状の皿頭がフレーム31、32へと侵入してフレーム31、32が繊維方向に割れる恐れがある。そこで、ビスを打ち込む前に設けられる穴の周囲のフレーム31、32表面に対し、皿頭の形状に対応した円錐状の凹部を設けることが好ましい。
また、1つの縦フレーム31と横フレーム32の連結部分を1本のビスで連結すると、ビスを回転軸として縦フレーム31および横フレーム32が相対的に回転してしまう。そこで、縦フレーム31と横フレーム32の連結にはビスを2本以上用いることが好ましい。また、複数のビスを設ける場合、縦フレーム31と横フレーム32の連結部において、縦フレーム31または横フレーム32の長辺方向または短辺方向に対して傾斜する直線上に位置するよう複数のビスを打ち込むことが好ましい。これにより、ビスを回転軸として縦フレーム31および横フレーム32が相対的に回転することを防ぐことができる。
なお、ビスの長さとしては、少なくとも縦フレーム31または横フレーム32の短辺方向長さを貫通してビス先端が横フレーム32または縦フレーム31の側面に挿入する長さがあればよいが、横フレーム32と縦フレーム31の短辺方向の長さを合わせた長さよりも短いことが好ましい。これにより、フレーム31、32の連結部を貫通してフレーム31、32内外に突出したビスの先端によって配管43が傷つけられたりするのを防止することができる。言い換えると、縦フレーム31と横フレーム32の短辺方向を合わせた長さは、ビスの長さよりも長いことが好ましく、強度を考慮すると、縦フレーム31および横フレーム32の短辺方向の長さはビスの長さの半分以上あることが好ましい。
ボルト・ナットで連結する場合、縦フレーム31と横フレーム32の接合箇所に貫通穴を設けてもよいし、縦フレーム31と横フレーム32にボルトの端部が挿入される雌ねじ部を有する盲ナットを埋設してもよい。また図3および図4に示すように、一方のフレーム(図示の例では、横フレーム32)の端面に凸部として設けたほぞ33を、他方のフレーム(図示の例では、縦フレーム31)の側面に凹部として設けたほぞ穴34に嵌合させることで接合してもよいし、金具とほぞ33による嵌合を組み合わせてもよい。
【0014】
縦フレーム31と横フレーム32で構成された直方体状の立管フレームの1つ側面において、長方形である側面の対角線上にブレース(筋交い)を配置してもよい。ブレースは、後述する長繊維補強発泡成形体であっても、金属製であってもよい。
【0015】
縦フレーム31と横フレーム32は、工場であらかじめ接合されて立管ユニット用フレーム30として製造されていることが好ましく、さらに工場であらかじめ各種の配管43が固定された立管ユニット40とされていることが好ましい。
立管ユニット40は工場から施工現場までの輸送および施工現場における移動を行いやすくするため、立管ユニット用フレーム30の接地面に着脱可能な車輪等を設けてもよい。
【0016】
縦フレーム31と横フレーム32の少なくとも一方は、長繊維補強材を発泡性の熱硬化性樹脂に含侵させて発泡硬化させた長繊維補強発泡成形体とされる。熱硬化性樹脂であることで、立管ユニット用フレーム30に固定された給湯管などの高温の管や、立管ユニット40が設置されたパイプスペースPS内が高温になっても、縦フレーム31および横フレーム32が熱により変形しにくく、立管ユニット用フレーム30が熱により変形するのを防止できる。
なお、縦フレーム31と横フレーム32の一方を長繊維補強発泡成形体とし、他方を金属製としてもよく、複数の縦フレーム31と複数の横フレーム32で構成された立管フレームのうち、一部の縦フレーム31および/または横フレーム32を金属製としてもよい。
【0017】
(長繊維補強発泡成形体)
長繊維補強発泡成形体に使用する繊維束は、複数の長繊維補強材が一方向に引き揃えられて形成されものである。繊維束を構成するための長繊維補強材は、特に限定されないが、例えばロービングやヤーンのようにストランドをバインダーで軽く付着させて紐状としたものが好適に用いられる。中でも、発泡性樹脂組成物の含浸が容易であり、成形が容易であり、かつ成形体の機械的物性に優れているため、ロービングが好ましく用いられる。
【0018】
上記ストランドを構成するフィラメントは、モノフィラメントであってもよく、フィブリル(髭状に繊維が突き出たもの)化繊維であってもよい。
長繊維補強材の材質についても特に限定されず、ガラス繊維、炭素繊維等の無機長繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の有機長繊維が挙げられる。特に、ガラス長繊維が好適である。
これらの長繊維を構成するモノフィラメントの太さは、一般に直径で10~20μmのものが好適に使用される。
【0019】
長繊維補強発泡成形体に使用する発泡性樹脂組成物には硬化前は液状である熱硬化性樹脂を用いる。
熱硬化性樹脂としては、反応前に液状である熱硬化性樹脂が用いられ、熱硬化性樹脂と硬化剤と発泡剤とを含む発泡性樹脂組成物を硬化・発泡させることにより発泡樹脂が構成される。上記熱硬化性樹脂としては、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0020】
長繊維補強発泡成形体に使用する発泡性樹脂組成物は、硬化性樹脂がウレタン系樹脂である発泡硬化性ポリウレタン樹脂組成物であることが好ましい。
発泡性樹脂組成物が発泡硬化性ポリウレタン樹脂組成物である場合、発泡性樹脂組成物は、少なくともポリオール化合物とポリイソシアネート化合物と発泡剤を含む。また、さらに整泡剤および触媒を含むことが好ましい。
ポリオールとしては、官能基数が3~4のポリオールが好適に使用できる。ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又は変成MDI等のポリイソシアネートとを使用できる。発泡剤としては、水やフロンガスなどを使用できる。
【0021】
長繊維は、長尺形状の長繊維補強発泡成形体の長手方向の全域に渡って分散配置されているのが好ましい。長繊維補強発泡成形体中における長繊維の重量比率は、発泡性樹脂組成物100質量部に対して、50~300質量部が好ましい。
【0022】
(長繊維補強発泡成形体の製造)
図5は長繊維補強発泡成形体を実施するための製造システムの一例である。
図5の製造システムは、ポリオール液タンク11、硬化剤液タンク12、供給装置15、含浸機16、成形用通路19と、を備えている。
【0023】
また、ポリオール液タンク11に貯留されたポリオール液1を供給装置15に供給するためのポリオール液ポンプ21、硬化剤液タンク12に貯留された硬化剤液2を供給装置15に供給するための硬化剤液ポンプ22を備えている。
また、複数の長繊維補強材が一方向に引き揃えられて形成された繊維束6が、図示を省略する搬送手段により、一方向(図示右方向)に連続的に進行するようになっている。
【0024】
含浸機16は、例えば含浸板16aと複数の揉み板16bで構成されたものを使用できる。含浸板16aに代えて、無端ベルトを使用してもよい。含浸板16a又は無端ベルトの温度を所定の温度に調整する温度調節機を備えることも好ましい。
【0025】
成形用通路19は、例えば、4つの金属ベルトの表面で4面を囲むことにより形成された通路を使用できる。
金属ベルトは、成形用通路19内を通過する樹脂含浸繊維束7を熱硬化させると共に、発泡させるために加熱されている。
【0026】
図5の製造システムによる長繊維補強発泡成形体の製造は、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、ポリオール液1をポリオール液ポンプ21により、硬化剤液2を硬化剤液ポンプ22により、各々供給装置15に供給する。これら、ポリオール液1と硬化剤液2を供給装置15内で混合して発泡性樹脂組成物5とし、供給装置15から、進行中の繊維束6に対して、供給する(繊維束に発泡性樹脂組成物を供給する工程)。例えば、散布装置を用いて、発泡性樹脂組成物5を繊維束6に対して散布してもよい。
【0027】
次いで発泡性樹脂組成物5が供給された繊維束6を、含浸機16により処理する。図5に示した含浸機16では、含浸板16a上で揉み板16bにより揉まれることにより、発泡性樹脂組成物5が繊維束6に含浸され、樹脂含浸繊維束7となる(樹脂含浸繊維束を得る工程)。
【0028】
その後、樹脂含浸繊維束7を、成形用通路19内を通過させる。樹脂含浸繊維束7は、成形用通路19内を通過する間に、含浸した発泡性樹脂組成物5が発泡及び硬化することによって、長繊維補強発泡成形体となる(発泡及び硬化させる工程)。得られた長繊維補強発泡成形体は、適宜の長さに切断して使用することができる。
【0029】
得られた長繊維補強発泡成形体は、縦フレーム31と横フレーム32に適した長さおよび形状に切断される。この時、縦フレーム31または横フレーム32の長手方向が、長繊維補強発泡成形体の長繊維補強材の繊維束6の配向方向(長手方向)と平行な方向となるように切断される。このため、立管ユニット用フレーム30の縦フレーム31と横フレーム32の双方が長繊維補強発泡成形体の場合、縦フレーム31の長繊維補強材の繊維束6の配向方向と、横フレーム32の長繊維補強材の繊維束6の配向方向とは互いに直交する方向とされる。
縦フレーム31の長手方向と、長繊維補強材の繊維束6の配向方向が平行であることにより、圧縮強さを高くでき、給水管41、排水管42などの配管が設置されても撓みにくくすることができる。
【0030】
長繊維補強発泡成形体はJIS Z 2102に準拠して測定した比重が2.0以下である。
比重が2.0以下であることで立管ユニット用フレーム30として軽量にすることができ、立管ユニット用フレーム30の製造や搬送、施工を容易にすることができる。
長繊維補強発泡成形体の比重は、0.3以上1.5以下であることが好ましく、0.3以上1.2以下であることがより好ましい。比重が0.3以上となるように長繊維補強材を配合することで長繊維補強材により曲げ強さや圧縮強さを高くでき、配管43を固定しても撓みにくくすることができる。比重が1.5以下となるように長繊維補強材を配合することで切削などの加工がしやすく、加工時にフレームが繊維方向に沿って割れにくくすることができる。
【0031】
長繊維補強発泡成形体はJIS K 6911に準拠して測定した線膨張係数が1.5×10-5(1/℃)以下である。なお、線膨張係数は長繊維補強材の長尺方向について測定したものである。
線膨張係数が1.5×10-5(1/℃)以下であることで、立管ユニット用フレーム30に固定された給湯管などの高温の管や、立管ユニット40が設置されたパイプスペースPS内が高温になっても、縦フレーム31および横フレーム32が熱により伸びにくく、立管ユニット用フレーム30が熱により変形するのを防止できる。
長繊維補強発泡成形体の線膨張係数は、1.3×10-5(1/℃)以下であることが好ましく、1.0×10-5(1/℃)以下であることがより好ましい。
【実施例0032】
(実施例1)
繊維束6として、ガラス長繊維を用いた。図5の製造システムを用い、ポリオール液1としてプロピレンオキサイド付加ポリエーテルポリオールの100質量部と、硬化剤液2としてジフェニルメタンジイソシアネートの150質量部とを供給装置15に供給し、発泡性樹脂組成物5(熱硬化性樹脂)とした。この発泡性樹脂組成物5を繊維束6(長繊維補強材)の100質量部に対して100質量部供給してから含浸機16で処理し、樹脂含浸繊維束7を得た。この樹脂含浸繊維束7を、多孔質シート8を用いることなく、そのまま、成形用通路19に導入し、通過させて発泡硬化、成形させて長辺が4mで縦横幅(短辺)が50cmの長繊維補強発泡成形体を得た。
得られた長繊維補強発泡成形体を長辺2mで縦横幅(短辺)が5cmの直方体の縦フレーム31と長辺が0.5mで縦横幅(短辺)が5cmの直方体の横フレーム32に切断し、横フレーム32の端部にほぞ33を設ける加工、縦フレーム31にほぞ穴34を設ける加工を施して縦フレーム31と横フレーム32を組み合わせて互いをビスで固定し、図2の立管ユニット用フレーム30を製造した。
【0033】
(実施例2~3、比較例1、2)
発泡樹脂100質量部に対するガラス長繊維の質量部数を表1に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして長繊維補強発泡成形体を得た。
【0034】
表1には、各実施例、各比較例についての縦フレーム31や横フレーム32の比重、縦フレーム31や横フレーム32の線膨張係数の測定結果を示した。さらに、表1には、各実施例、各比較例についての加工性、強度の試験結果を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
(加工性)
各実施例、比較例で得られた縦フレーム31と横フレーム32にほぞ33やほぞ穴34を設け、ビスを打ち込む加工を施した際、横フレーム32と縦フレーム31に生じた割れなどを評価した。表1中の「○」は縦フレーム31及び横フレーム32それぞれ4本いずれにも割れが生じなかったことを示し、「△」は縦フレーム31及び横フレーム32それぞれ4本のうち一部に割れや欠けが生じたことを示し、「×」は縦フレーム31及び横フレーム32それぞれ4本のうちすべてに割れや欠けが生じたことを示す。
【0037】
(強度)
各実施例で製造した立管ユニット用フレーム30の横フレーム32に配管43(積水化学工業株式会社製 ポリエチレン管「ハイパーAW」 長さ4m)を2本設置し、撓みや割れが無いか評価した。配管43は、横フレーム32に対して固定金具によって設置した。表1中の「○」は横フレーム32に撓みが生じなかったことを示し、「△」は横フレームにやや撓みが生じたことを示し、「×」は横フレーム32に撓みが生じてユニットが自立できないほどゆがんだことを示す。
【0038】
以上のような各実施例、各比較例の結果から、比重が1.5以下であることで、加工性が確保されることが確認された。また、線膨張係数が1.5×10-5(1/℃)以下であることで、強度が確保されることが確認された。
【符号の説明】
【0039】
30 立管ユニット用フレーム
31 縦フレーム
32 横フレーム
40 立管ユニット
43 配管
図1
図2
図3
図4
図5