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  • 特開-輸液バッグ外装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076060
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】輸液バッグ外装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240529BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187424
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井口 依久乃
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB21
3E086BB85
3E086CA28
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK06D
4F100AK07A
4F100AK42C
4F100AK62B
4F100AK63B
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CB03E
4F100EH17B
4F100EH17D
4F100EH66C
4F100EJ38A
4F100EJ38E
4F100GB16
4F100HB31A
4F100JL12E
4F100JN02C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】輸液バッグ外装材において、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護して、屈曲によるピンホールの発生を抑えることのできる、輸液バッグ外装材を提供すること。
【解決手段】プラスチックフィルムから構成される積層体からなる包装材料であって、積層体は、外層と、第一接着層と、中間層と、第二接着層と、シーラント層をこの順に備え、中間層は、200~800nm波長域の光線透過率が1%以下である金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、第一接着層と第二接着層とは、溶融押し出しされた樹脂であり、外層は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、第一接着層側に印刷層を備え、溶融押し出しされた樹脂は、酸化防止剤含有量は0wt%以上0.15wt%未満であることを特徴とする、輸液バッグ外装材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムから構成される積層体からなる包装材料であって、
前記積層体は、外層と、第一接着層と、中間層と、第二接着層と、シーラント層をこの順に備え、
前記中間層は、200~800nm波長域の光線透過率が1%以下である金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第一接着層と第二接着層とは、溶融押し出しされた樹脂であり、
前記外層は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、第一接着層側に印刷層を備え、
前記溶融押し出しされた樹脂は、酸化防止剤含有量は0wt%以上0.15wt%未満であることを特徴とする、輸液バッグ外装材。
【請求項2】
前記第一接着層は、エチレン-1・ヘキセン共重合体物を主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の輸液バッグ外装材。
【請求項3】
前記シーラント層は二軸延伸されていることを特徴とする、請求項1に記載の輸液バッグ外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料の中でも医療現場などで使うための、遮光性を有して内部に輸液バッグの収納が可能な、外装材に関するものである。特に、屈曲破断や屈曲ピンホールに対する耐性に優れる輸液バッグ外装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸液バッグは、もともとはガラス製のアンプルやバイアルが使用されたことに起源を発し、現代の医療現場において、プラスチックボトルやプラスチックバッグに姿を変えて、頻繁に使用されている。
【0003】
その種類もさまざまなものがあり、その機能も進化を遂げてきた。また二次容器としての輸液バッグ外装材も、輸液バッグの薬剤の変質、劣化を防止することや、清潔さを保持するなどの役割を担うものである。一般に輸液バッグの二次容器は積層体で構成され、その場合には必要とされる機能を積層体の各層で分担して、全体の機能を発現させるものである。
【0004】
例えば、アミノ酸、ビタミンB2を含む輸液バッグを包装する二次包装には、アミノ酸の酸化劣化を防ぐための酸素バリア性、ビタミンB2の光劣化を防ぐための可視光~紫外線領域の遮光性、製剤の水分蒸散による重量変化を抑えるための水蒸気バリア性などが求められる。
【0005】
また特に、輸液バッグの中には容量が1000ml以上のものがあり、自重が重いため更に輸送時や取り扱い時に起こる、衝撃や屈曲による破断や、それらに起因するピンホールに対する耐性が重視される。
【0006】
屈曲による破断やピンホール耐性に対しては、延伸ポリアミドフィルムを積層が有効ではあるが、コスト面の問題が発生すること、また更に遮光性は別の層で付与する必要が出てくる。
【0007】
遮光性については、シーラント層にカーボンブラックを練り込んで遮光シーラント層とすることが効果的であるが、これもコスト面の問題と、無機物を練り込むことによるシーラント層の脆弱化の恐れがある。
【0008】
そこで、低コストで、酸素バリア性、水蒸気バリア性、遮光性を備えた中間層として、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することが行われている。
【0009】
しかしながら、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、遮光性には優れるものの、屈曲によるピンホールに関しては耐性に乏しく、それをおぎなう方策を必要とする。
【0010】
これらの対策として、例えば積層体中に印刷基材としての適性を有し、耐摩擦性にも優れる、厚さ50μm程度の延伸ポリプロピレンフィルムを用いることも有効である。
【0011】
あるいは、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに対し、溶融押し出し樹脂を表裏に配して両側から挟み込んで、輸液バッグ外装材が外力によって屈曲した時の衝撃を吸収する層とすることも可能である。
【0012】
また、特許文献1には、延伸ポリプロピレンフィルム/接着層/バリアフィルム/接着層/シーラントの積層構成において、いずれかの層間にポリブタジエン系樹脂のアンカーコート層を設けて、積層体の繰り返し折曲げに対する耐久性を付与する提案がなされている。
【0013】
しかしながら、特許文献1では屈曲に対して層間の密着力の向上に注目し、積層体全体の屈曲に対する耐性を向上させようとして、各層にアンカーコートを設け、ポリブタジエン系樹脂のアンカーコートも用いるとしているが、これは層間強度を向上させることにのみ注目したものであって、最も破断しやすい中間層の保護に注目したものではなく、過剰な層構成となり、効果も十分なものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2020-200104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、輸液バッグ外装材において、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護して、屈曲によるピンホールの発生を抑えることのできる、輸液バッグ外装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
プラスチックフィルムから構成される積層体からなる包装材料であって、
前記積層体は、外層と、第一接着層と、中間層と、第二接着層と、シーラント層をこの順に備え、
前記中間層は、200~800nm波長域の光線透過率が1%以下である金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第一接着層と第二接着層とは、溶融押し出しされた樹脂であり、
前記外層は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、第一接着層側に印刷層を備え、
前記溶融押し出しされた樹脂は、酸化防止剤含有量は0wt%以上0.15wt%未満であることを特徴とする、輸液バッグ外装材である。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、
前記第一接着層は、エチレン-1・ヘキセン共重合体物を主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の輸液バッグ外装材である。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、
前記シーラント層は二軸延伸されていることを特徴とする、請求項1に記載の輸液バッグ外装材である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、輸液バッグ外装材において、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護して、屈曲によるピンホールの発生を抑えることのできる、輸液バッグ外装材を提供することが可能である。
【0020】
輸液バッグ外装材が、プラスチックフィルムから構成される積層体からなる包装材料であって、積層体は、外層と、第一接着層と、中間層と、第二接着層と、シーラント層をこの順に備えていることによって、積層体は輸液バッグを収納する輸液バッグの形態にシーラント層のシールによって製袋可能である。
【0021】
また、中間層は、200~800nm波長域の光線透過率が1%以下である金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであることによって、輸液バッグの外装材はアルミニウム箔に匹敵する遮光性を有し、例えば、アミノ酸、ビタミンB2を含む輸液バッグを包装する二次包装として、アミノ酸の酸化劣化を防ぐための酸素バリア性、ビタミンB2の光劣化を防ぐための可視光~紫外線領域の遮光性、製剤の水分蒸散による重量変化を抑えるための水蒸気バリア性などを具備することができる。
【0022】
第一接着層と第二接着層とは、溶融押し出しされた樹脂であり、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに対し、中間層を表裏両側から挟み込んで、良好なラミネート強度を発現せしめ、輸液バッグ外装材が外力によって屈曲した時の衝撃を吸収する層とすることが可能である。
【0023】
また、溶融押し出しされた樹脂は、酸化防止剤含有量は0wt%以上0.15wt%未満であることによって、積層体のラミネート強度の発現に、より効果をもたらす。
【0024】
また、外層は二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、第一接着層側に印刷層を備えることにより、印刷基材としての適性を有し、耐摩擦性にも優れる輸液バッグ外装材とすることができる。
【0025】
外層が印刷層を有することにより、輸液バッグの取り扱い方法などの必要な情報の表示や、バーコードの表示などを行うことができる。
【0026】
また、特に請求項2に記載の発明によれば、第一接着層を、エチレン-1・ヘキセン共重合体物を主成分とすることにより、すなわち材料をC6のメタロセン触媒ポリエチレンとして分子の揃った側鎖の長いものとすることで、衝撃に対するクッション性を向上させる効果が得られる。
【0027】
また、特に請求項3に記載の発明によれば、シーラント層は二軸延伸されたものであることによって、シーラント層自身が破断強度の高いものとして、積層体の機械的強度を向上させることに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明に係る輸液バッグ外装材の一実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0030】
図1は、本発明に係る輸液バッグ外装材の一実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【0031】
本発明は包装材料のうち輸液バッグ外装材に係るものであって、プラスチックフィルムから構成される積層体(10)からなる。
【0032】
本発明において、この積層体(10)は輸液バッグ外装材の外側になる面から、外層(1)と、第一接着層(2)と、中間層(7)と、第二接着層(5)と、シーラント層(6)とをこの順に備えて構成されている。
【0033】
図1に示すように、上記積層体(10)の各層に加えて、外層(1)には第一接着層(2)側に、印刷層(8)が設けられている。印刷層(8)は、輸液バッグ外装材の、外側から見て可視である。
【0034】
中間層(7)は、200~800nm波長域の光線透過率が1%以下である金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムである。これはポリエチレンテレフタレートフィルム(3)に、金属蒸着層(4)を設けたものである。これによって光線透過率は低く抑えられて、輸液バッグの内容物の薬剤の、外光による劣化、分解等を防止することが可能である。
【0035】
また金属蒸着層(4)を設ける基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(3)を用いていることから、輸液バッグの外装材としての機械的強度の向上に効果的であり、また金属蒸着に対しての適性も優れており、価格面でも利点を有する。このような点からは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(3)には二軸延伸されたフィルムを使用することが好ましい。
【0036】
例えば、中間層(7)にアルミニウム蒸着層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、アルミニウム箔に匹敵する遮光性を有し、かつ耐屈曲ピンホール性はアルミニウム箔では実現できないため、輸液バッグ外装材として大きな利点を有する。
【0037】
第一接着層(2)と第二接着層(5)とは、溶融押し出しされた樹脂である。溶融押し出しによる、プラスチックフィルムの接着、積層であることによって、積層体(10)を押し出し装置付きのラミネータを使うなどして、生産性良く製造することに効果的である。
【0038】
また、我々は本発明を鋭意検討する過程で、ピンホールの発生メカニズムに注目してその直接の対策の考案に注力した。すなわち、屈曲に対して、まず印刷された外層(1)と第一接着層(2)が剥がれ、次いで中間層(7)が破断し、更に第一接着層(2)およびシーラント層(6)が破断、最終的に外層(1)も破断することを突き止めた。
【0039】
したがって、中間層(7)である金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの破断を抑え込むことが重要と考えられ、これに対してはこの中間層(7)を、伸びやすい樹脂で表裏から挟み込むことが効果的であることを見出した。
【0040】
更にこの押し出しされた樹脂の酸化防止剤含有量を0wt%以上0.15wt%未満とすることによって、積層体(10)の良好なラミネート強度を発現させ、屈曲によるピンホールの低減を実現させた。
【0041】
すなわち我々は、本発明を鋭意検討する過程で以下の知見を得るに至った。すなわち、一定の範囲を超えた酸化防止剤が、ラミネートにおいて樹脂の酸化によるラミネート強度の発現を阻害する恐れがあると考え、本発明に規定する範囲であることが積層体(10)の良好なラミネート強度を発現させることに効果的であることを見出した。
【0042】
本発明に規定する範囲は、具体的には、酸化防止剤含有量が0wt%以上0.15wt%未満であり、これによって、積層体のラミネート強度の発現に、より効果をもたらすものである。
【0043】
外層(1)は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、第一接着層(2)側に印刷層(8)を備えている。したがって、印刷層(8)は輸液バッグの外装材の外側になる面から可視である。
【0044】
輸液バッグ外装材が、印刷層(8)を有することにより、輸液バッグの内容物に関する情報や、輸液バッグの取り扱い方法などの情報の表示や、バーコードの表示などを行うことができる。
【0045】
外層(1)に用いられる、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが印刷層(8)を備えることにより、印刷基材としての適性を有し、耐摩擦性にも優れる輸液バッグ外装材とすることができる。
【0046】
また、本発明において、特に第一接着層(2)は、エチレン-1・ヘキセン共重合体物を主成分とすることができる。
【0047】
すなわち、第一接着層(2)において、材料をモノマーがC6のメタロセン触媒ポリエチレンとすることで分子の揃った側鎖の長いことの特徴を生かして、クッション性を上げることにより、ピンホール低減のためのラミネート強度向上により効果的であることを見出した。
【0048】
シーラント層(6)は、二軸延伸されているものとすることができる。二軸延伸されていることでシーラント自身を破断強度の強いものとすることができ、この場合にも屈曲によるピンホール低減により効果的である。
【0049】
また、シーラント層(6)は2層以上の多層にすることも可能であり、屈曲によるピンホール低減の効果の点でより好ましい。
【0050】
さらに、複数のシーラント層(6)のうち、少なくとも1層に、少なくとも3種以上のエチレン-1・ヘキセン共重合体物を主成分とするポリエチレン重合物を含むものとすることができ、屈曲によるピンホール低減の効果の点でより好ましい。
【0051】
以下、本発明を実現するための工程について、いくつかの具体例を示しながら説明を加える。
【0052】
(印刷工程)
外層(1)として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを印刷基材として用いる。二軸延伸ポリプロピレンフィルムの第1接着層(2)側の面に輸液バッグの内容物に関する情報、絵柄、バーコード、取り扱いの説明、など必要な情報を印刷し、目視での視認性、或いはバーコードなどの読み取り精度向上のための不透明インク層を更にベタ版で塗工する。更に第一接着層(2)との接着性を向上させるためのポリブタジエン系のアンカー材を塗工することができる。
【0053】
この外層(1)には、開封時において輸液バッグ外装材の天面幅方向の易開封性を付与するために、例えば刃物加工による開封誘導線を設けておくことが望ましい。
【0054】
また印刷層(8)は、輸液バッグ外装材の一部に設けるのでもよく、また輸液バッグ外
装材の全面に渡って設けるのでもよい。
【0055】
ここで、印刷層(8)の印刷方法、および印刷インキには、とくに制約を設けるものではない。既知の印刷方法、印刷材料の中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、人体への安全性などを考慮すれば適宜選択してよい。
【0056】
たとえば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性、プラスチックフィルムへの印刷適性、および絵柄等の高精細度において好ましく用いることができる。
【0057】
(押し出しラミネート工程)
中間層(7)の金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの表裏両面を押し出しラミネート用の樹脂で挟んで外層(1)とシーラント層(6)を両側に積層する。押し出しラミネート用の樹脂は厚さ15~20μmとすることができる。また、シーラント層(6)は、多層とすることができる。
【0058】
より接着力を上げるためには、金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの表裏両面に2液型のポリエステル系のイソシアネートのアンカー層を設けることがより効果的である。
【0059】
(製袋工程)
輸液バッグの外装材として、輸液バッグを収納する袋としての形状は、収納される輸液バッグの形態によって、三方製袋、スタンディングパウチ、ガゼット袋などとすることができる。店頭陳列等の目的がない輸液バッグは、主にコスト面で優位な三方製袋とすることが一般的である。サイドシール部とボトムシール部を行ったのち、抜き型で製品形態に仕上げることができる。
【0060】
製袋のためのシールは、シーラント同士を対向させた状態で、例えばヒートシールによって製袋することができる。
【0061】
(使用方法)
輸液バッグの外装材に輸液バッグを収納したのち、上部に天シールを行う。天シールより下方に開封誘導線を設け、この線に沿って開封を行うことができる。開封誘導線が易開封機構を備える場合にはより容易な開封が可能であり、また開封誘導線があることで、輸液バッグの取り出しに十分な開口幅を得ることができる。
【0062】
但し、易開封機構が例えば刃物加工である場合に、加工線が中間層(7)に達することを避けることによって、輸液バッグ外装材の遮光性、酸素・水蒸気バリア性は担保される。
【0063】
このようにして本発明によれば輸液バッグ外装材において、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護して、屈曲によるピンホールの発生を抑えることのできる、輸液バッグ外装材を提供することが可能である。
【実施例0064】
以下本発明を、実施例によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0065】
評価用の積層体サンプルを作成し、評価項目について評価した。評価項目は下記の通りである。
【0066】
(評価項目及び評価方法)
屈曲試験:
ゲルボ屈曲試験機を用いて行う。
積層体をA4サイズに切り出して筒状に巻き付ける。
5℃の環境下で2000回の屈曲ののち、テレピン油をシーラント側から塗工し、1時
間静置させたのち、ピンホール数をカウントした。
【0067】
<実施例1>
以下の構成の積層体を作成し評価した。
輸液バッグ外装材の外側となる面から、
外層/第一接着層/中間層/第二接着層/シーラント層
とした。
各層の構成は以下のとおりである。
・外層:延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラFOS#50 厚さ50μm)を用いて、印刷層を設けた。
・第一接着層:密度0.918の酸化防止剤無添加の低密度ポリエチレン(LDPE)(日本ポリエチレン LC600A)
・中間層:アルミニウム蒸着層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(凸版印刷 GL-ME-RC 厚さ12μm)
・第二接着層:密度0.918の酸化防止剤無添加低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン LC600A)
・シーラント層:3層二軸延伸・・・外層側からA/B/Cとしたときに、密度がC=A≧Bで且つ二軸延伸しており、A、Cの密度は0.92以上
とした。
なお、第一接着層と外層の間のラミネート強度は1.6N/15mmであった。
【0068】
<実施例2>
以下の構成の積層体を作成し評価した。
輸液バッグ外装材の外側から、
外層/第一接着層/中間層/第二接着層/シーラント層
とした。
各層の構成は以下のとおりである。
・外層:延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラFOS#50 厚さ50μm)を用いて、印刷層を設けた。
・第一接着層:密度0.918の酸化防止剤無添加の低密度ポリエチレン(LDPE)(日本ポリエチレン LC600A)
・中間層:アルミニウム蒸着層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(凸版印刷 GL-ME-RC 厚さ12μm)
・第二接着層:密度0.918の酸化防止剤無添加低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン LC600A)
・シーラント層:3層未延伸・・・外層側からA/B/Cとしたときに、密度はC≧A≧Bで、Cは0.92以上
とした。
なお、第一接着層と外層の間のラミネート強度は1.6N/15mmであった。
【0069】
<実施例3>
以下の構成の積層体を作成し評価した。
輸液バッグ外装材の外側から、
外層/第一接着層/中間層/第二接着層/シーラント層
とした。
各層の構成は以下のとおりである。
・外層:延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラFOS#50 厚さ50μm)を用いて、印刷層を設けた。
・第一接着層:密度0.911の酸化防止剤無添加の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(プライムポリマー SP1071C)
・中間層:アルミニウム蒸着層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(凸版印刷 GL-ME-RC 厚さ12μm)
・第二接着層:密度0.918の酸化防止剤無添加低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン LC600A)
・シーラント層:3層未延伸・・・外層側からA/B/Cとしたときに、密度はC≧A≧Bで、Cは0.92以上
とした。
なお、第一接着層と外層の間のラミネート強度は1.7N/15mmであった。
【0070】
<比較例1>
以下の構成の積層体を作成した。
輸液バッグ外装材の外側から、
外層/第一接着層/中間層/第二接着層/シーラント層
とした。
各層の構成は以下のとおりである。
・外層:延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラFOS#50 厚さ50μm)を用いて、印刷層を設けた。
・第一接着層:密度0.904の酸化防止剤0.15%添加の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)・・・(irgafos168、irganox1010酸化防止剤3%MBをベース樹脂に対して5wt%添加した。)
この部分は、本発明による規定の範囲を逸脱するものである。
・中間層:アルミニウム蒸着層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(凸版印刷 GL-ME-RC 厚さ12μm)
・第二接着層:密度0.918の酸化防止剤無添加低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン LC600A)
・シーラント層:3層未延伸・・・外層側からA/B/Cとしたときに、密度はC≧A≧Bで、Cは0.92以上
とした。
なお、第一接着層と外層の間のラミネート強度は0.6N/15mmであった。
【0071】
評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から見て取れるように、本発明による実施例1~実施例3においては、本発明による規定の範囲を逸脱する比較例1に比べて、評価項目であるピンホール数は優位にあることが明らかである。
【0074】
比較例1においては、・第一接着層に、酸化防止剤が0.15%添加された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いており、この部分は、本発明による規定の範囲を逸脱するものである。その結果、第一接着層と外層の間のラミネート強度が低下したと考えられ、ピンホールの発生が、本発明による実施例1~3に比べて多くなったと考えられる。
【0075】
このようにして本発明によれば輸液バッグ外装材において、金属蒸着膜を表面に有した延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護して、屈曲によるピンホールの発生を抑えることのできる、輸液バッグ外装材を提供することが可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0076】
1・・・外層
2・・・第一接着層
3・・・ポリエチレンテレフタレートフィルム
4・・・金属蒸着層
5・・・第二接着層
6・・・シーラント層
7・・・中間層
8・・・印刷層
10・・・積層体
図1