(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076073
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240529BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240529BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240529BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
C09J7/38
C09J11/08
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187442
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠介
(72)【発明者】
【氏名】立石 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 滋夫
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AB01
4J004CA01
4J004CB01
4J004CE03
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J004FA09
4J040BA172
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4J040CA091
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4J040DM011
4J040HB01
4J040JB09
4J040KA31
4J040MA14
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】頬部に対する粘着剤層の付着安定性及び再付着性に優れており、さらに、取外し時の痛みの発生や取外し後のべたつきの発生が抑制されたマスクを提供すること。
【解決手段】マスク用基布と、前記基布の内側表面に設けられた粘着剤層とを備えており、
前記粘着剤層が粘着基剤と(A)テルペン系樹脂と(B)水素添加ロジングリセリンエステルと(C)流動パラフィンとを含有し、
前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量が前記粘着剤層全体に対して8~22質量%の範囲内にあり、
前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量に対する前記(A)テルペン系樹脂の含有量の質量比がA/B=0.3~2.0の範囲内にあり、
前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルとの合計含有量が前記粘着剤層全体に対して20~35質量%の範囲内にあり、
前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの合計含有量に対する前記(C)流動パラフィンの含有量の質量比がC/(A+B)=1.0~3.0の範囲内にある
ことを特徴とするマスク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク用基布と、前記基布の内側表面に設けられた粘着剤層とを備えており、
前記粘着剤層が粘着基剤と(A)テルペン系樹脂と(B)水素添加ロジングリセリンエステルと(C)流動パラフィンとを含有し、
前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量が前記粘着剤層全体に対して8~22質量%の範囲内にあり、
前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量に対する前記(A)テルペン系樹脂の含有量の質量比がA/B=0.3~2.0の範囲内にあり、
前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルとの合計含有量が前記粘着剤層全体に対して20~35質量%の範囲内にあり、
前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの合計含有量に対する前記(C)流動パラフィンの含有量の質量比がC/(A+B)=1.0~3.0の範囲内にある
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記粘着剤層が前記基布の左右両端の内側表面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記粘着剤層の縦方向の長さが2~10cmの範囲内にあり、幅が0.5~3cmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記粘着基剤が、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、ポリウレタン系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤及び水性高分子からなるハイドロゲルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関し、より詳しくは、耳かけ紐がないマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塵や埃、ダニ等のハウスダスト、花粉、カビ、細菌、ウイルス等の侵入を防止するためのマスクとして、耳かけ紐がなく、粘着部を頬に貼り付けて使用するマスクが知られている。
【0003】
例えば、実開平7-386号公報(特許文献1)、特開2007-20983号公報(特許文献2)、特開2014-8367号公報(特許文献3)及び実用新案登録第3231212号公報(特許文献4)には、マスク本体の左右両端や四隅に粘着部を備えているマスクが開示されており、この粘着部を頬に貼り付けることによってマスクを顔面に装着することができることも記載されている。また、特開平11-128378号公報(特許文献5)及び特開2011-10903号公報(特許文献6)には、マスク本体の周辺部に粘着部が形成されているマスクが開示されており、この粘着部を肌に密着させることによって、マスクと顔面との間に隙間が生じることなく、マスクを顔面に装着することができることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-386号公報
【特許文献2】特開2007-20983号公報
【特許文献3】特開2014-8367号公報
【特許文献4】実用新案登録第3231212号公報
【特許文献5】特開平11-128378号公報
【特許文献6】特開2011-10903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粘着部を頬等に貼り付けることによって顔面に装着する従来のマスクは、粘着部と頬との付着安定性や再付着性が必ずしも十分なものではなく、また、マスクを取外す際に痛みが発生したり、取外した後にべたつきが残る場合があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、頬部に対する粘着剤層の付着安定性及び再付着性に優れており、さらに、取外し時の痛みの発生や取外し後のべたつきの発生が抑制されたマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)テルペン系樹脂、(B)水素添加ロジングリセリンエステル及び(C)流動パラフィンを特定の割合で配合することによって、取外し時の痛みや取外し後のべたつきがなく、付着安定性及び再付着性に優れた粘着剤層が形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0009】
[1]マスク用基布と、前記基布の内側表面に設けられた粘着剤層とを備えており、前記粘着剤層が粘着基剤と(A)テルペン系樹脂と(B)水素添加ロジングリセリンエステルと(C)流動パラフィンとを含有し、前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量が前記粘着剤層全体に対して8~22質量%の範囲内にあり、前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量に対する前記(A)テルペン系樹脂の含有量の質量比がA/B=0.3~2.0の範囲内にあり、前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルとの合計含有量が前記粘着剤層全体に対して20~35質量%の範囲内にあり、前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの合計含有量に対する前記(C)流動パラフィンの含有量の質量比がC/(A+B)=1.0~3.0の範囲内にある、マスク。
【0010】
[2]前記粘着剤層が前記基布の左右両端の内側表面に設けられている、[1]に記載のマスク。
【0011】
[3]前記粘着剤層の縦方向の長さが2~10cmの範囲内にあり、幅が0.5~3cmの範囲内にある、[1]又は[2]に記載のマスク。
【0012】
[4]前記粘着基剤が、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、ポリウレタン系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤及び水性高分子からなるハイドロゲルからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載のマスク。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、頬部に対する粘着剤層の付着安定性及び再付着性に優れており、さらに、取外し時の痛みの発生や取外し後のべたつきの発生が抑制されたマスクを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のマスクの好適な一実施態様を示す模式図である。
【
図2】本発明のマスクの好適な他の一実施態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
本発明のマスクは、マスク用基布と、前記基布の内側表面に設けられた粘着剤層とを備えるものであり、前記粘着剤層は、粘着基剤と(A)テルペン系樹脂と(B)水素添加ロジングリセリンエステルと(C)流動パラフィンとを含有するものである。
【0017】
本発明に用いられる粘着基剤としては特に制限はなく、例えば、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、ポリウレタン系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤、水性高分子からなるハイドロゲル等が挙げられる。これらの粘着基剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの粘着基剤の中でも、粘着剤層が基布の裏側に染み出すことなく展延でき、かつ基布と粘着剤層との間の投錨性が維持されるという観点から、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、ポリウレタン系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤が好ましく、ゴム系粘着基剤がより好ましい。
【0018】
前記ゴム系粘着基剤としては、例えば、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。前記合成ゴムとしては、例えば、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブテン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム等が挙げられる。これらのゴム系粘着基剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのゴム系粘着基剤の中でも、頬部に対する粘着剤層の付着安定性及び再付着性に優れており、さらに、取外し時の痛みの発生や取外し後のべたつきの発生が抑制されるという観点から、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、及びこれらの混合物が好ましい。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の具体例としては、Quintac(登録商標)3570C(商品名、日本ゼオン株式会社製)、SIS5002、SIS5229、SIS5505、SIS5505P(商品名、JSR株式会社製)、SIBSTAR(登録商標)T102(商品名、株式会社カネカ製)等が挙げられ、また、ポリイソブチレンには、いわゆるブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)も含まれ、具体例としては、Oppanol(登録商標)N50、N80、N100、N150、B11、B12、B50、B80、B100、B120、B150、B220(商品名、BASF社製)、JSR(登録商標)Butyl065、268、365(商品名、JSR株式会社製)、X_Butyl(登録商標)RB100、101-3、301、402(商品名、ARLANXEO社製)、Exxon(登録商標)Butyl065、065S、068、068S、268、268S、365、365S(商品名、Exxon Mobile社製)、Butyl065、268、365(商品名、日本ブチル株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
前記アクリル系粘着基剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリルモノマーの単独重合体及び共重合体が挙げられ、より具体的には、DURO-TAK 87-2097、87-2194、87-2196、87-2287、87-2516、87-2852、87-4287、及び87-900A(商品名、ヘンケル社製)、並びにMAS811、MAS683(商品名、コスメディ製薬株式会社製)が挙げられる。これらのアクリル系粘着基剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ポリウレタン系粘着基剤としては、例えば、脂肪族系ポリウレタン粘着基剤、芳香族系ポリウレタン粘着基剤が挙げられる。これらのポリウレタン系粘着基剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記シリコーン系粘着基剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーンゴムを主成分とする粘着基剤が挙げられ、より具体例には、BIO-PSA X7-4201、BIO-PSA 7-4102、BIO-PSA 7-4202、BIO-PSA 7-4302、BIO-PSA Q7-4501、360Medical fluid 1000CS、及びMDX4-4210(商品名、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社製)が挙げられる。これらのシリコーン系粘着基剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記水性高分子からなるハイドロゲルとしては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物等を主成分とするものが挙げられる。これらのハイドロゲルは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0023】
このような粘着基剤の含有量としては、前記粘着剤層全体に対して、15~35質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましく、26~30質量%が更に好ましい。粘着基剤の含有量が前記下限未満になると、前記粘着剤層の凝集力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記粘着剤層の粘着力が低下する傾向にある。
【0024】
本発明に用いられる(B)水素添加ロジングリセリンエステルは、ロジンを水素添加し、グリセリンでエステル化した固形樹脂であり、粘着付与剤として作用するものである。
【0025】
本発明において、前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量は、前記粘着剤層全体に対して8~22質量%の範囲内にあることが必要である。成分(B)の含有量が前記下限未満になると、マスクを取外す際に痛みが発生したり、取外した後にべたつきが発生する。他方、成分(B)の含有量が前記上限を超えると、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が低下する。また、マスクを取外す際の痛みの発生や取外した後のべたつきの発生が確実に抑制されるという観点から、成分(B)の含有量の下限としては、11質量%以上が好ましく、13.5質量%以上がより好ましい。他方、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が向上するという観点から、成分(B)の含有量の上限としては、19質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0026】
また、本発明に用いられる(A)テルペン系樹脂は粘着付与剤として作用するものである。このような(A)テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂(テルペンの単独重合体)、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。前記(A)テルペン系樹脂においては、頬部に対する粘着剤層の付着安定性及び再付着性に優れており、さらに、取外し時の痛みの発生や取外し後のべたつきの発生が抑制されるという観点から、テルペン樹脂が好ましい。
【0027】
本発明において、前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの含有量に対する前記(A)テルペン系樹脂の含有量の質量比は、A/B=0.3~2.0の範囲内にあることが必要である。成分(B)に対する成分(A)の質量比〔A/B〕が前記下限未満になると、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が低下する。他方、成分(B)に対する成分(A)の質量比〔A/B〕が前記上限を超えると、マスクを取外す際に痛みが発生したり、取外した後にべたつきが発生する。また、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が向上するという観点から、質量比〔A/B〕の下限としては、A/B=0.42以上が好ましく、A/B=0.70以上がより好ましい。他方、マスクを取外す際の痛みの発生や取外した後のべたつきの発生が確実に抑制されるという観点から、質量比〔A/B〕の上限としては、A/B=1.45以下が好ましく、A/B=1.00以下がより好ましい。
【0028】
また、本発明において、前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルとの合計含有量は、前記粘着剤層全体に対して20~35質量%の範囲内にあることが必要である。成分(A)と成分(B)の合計含有量が前記下限未満になると、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が低下する。他方、成分(A)と成分(B)の合計含有量が前記上限を超えると、マスクを取外す際に痛みが発生したり、取外した後にべたつきが発生する。また、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が向上するという観点から、成分(A)と成分(B)の合計含有量の下限としては、21質量%以上が好ましく、24質量%以上がより好ましい。他方、マスクを取外す際の痛みの発生や取外した後のべたつきの発生が確実に抑制されるという観点から、成分(A)と成分(B)の合計含有量の上限としては、34質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0029】
さらに、本発明に用いられる(C)流動パラフィンは可塑剤として作用するものである。前記(C)流動パラフィンにおいては、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が向上し、マスクを取外す際の痛みの発生や取外した後のべたつきの発生が確実に抑制されるという観点から、40℃における粘度が34.5~150mm2/sである流動パラフィンが好ましい。
【0030】
本発明において、前記(A)テルペン系樹脂と前記(B)水素添加ロジングリセリンエステルの合計含有量に対する前記(C)流動パラフィンの含有量の質量比はC/(A+B)=1.0~3.0の範囲内にあることが必要である。成分(A)と成分(B)の合計含有量に対する成分(C)の質量比〔C/(A+B)〕が前記下限未満になると、マスクを取外す際に痛みが発生したり、取外した後にべたつきが発生する。他方、成分(A)と成分(B)の合計含有量に対する成分(C)の質量比〔C/(A+B)〕が前記上限を超えると、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が低下する。また、マスクを取外す際の痛みの発生や取外した後のべたつきの発生が確実に抑制されるという観点から、質量比〔C/(A+B)〕の下限としては、C/(A+B)=1.2以上が好ましく、C/(A+B)=1.5以上がより好ましい。他方、前記粘着剤層の付着安定性や再付着性が向上するという観点から、質量比〔C/(A+B)〕の上限としては、C/(A+B)=2.5以下が好ましく、C/(A+B)=2.0以下がより好ましい。
【0031】
さらに、本発明においては、このような粘着剤層に、本発明の効果を阻害しない範囲で、テルペン系樹脂及び水素添加ロジングリセリンエステル以外の粘着付与樹脂(例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂)、溶解補助剤、保湿剤、安定化剤、無機粉体、着色料、着香料、pH調整剤等の各種添加剤が更に含まれていてもよい。
【0032】
本発明のマスクは、このような粘着剤層がマスク用基布の内側表面に設けられたものである。また、本発明のマスクにおいては、例えば、
図1及び
図2に示すように、粘着剤層1がマスク用基布2の左右両端の内側表面に設けられていることが好ましい。
【0033】
本発明のマスクにおいて、前記粘着剤層の大きさとしては、縦方向の長さが2~10cmの範囲内にあることが好ましく、3~9cmの範囲内にあることがより好ましく、4~8cmの範囲内にあることが特に好ましく、また、幅が0.5~3cmの範囲内にあることが好ましく、0.8~2.5cmの範囲内にあることがより好ましく、1~2cmの範囲内にあることが特に好ましい。前記粘着剤層の縦方向の長さ又は幅が前記下限未満になると、十分な粘着力がえられず、使用時にマスクが顔面から脱落しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、マスク用基布の大きさが大きくなるため、マスクを取外す際の痛みの発生が出やすい傾向にある。なお、本発明において、粘着剤層の縦方向の長さとは、マスクの縦方向(マスクの上下方向)に平行な方向の長さを意味し、粘着剤層の幅とは、マスクの縦方向(マスクの上下方向)に垂直な方向の長さを意味する。例えば、
図1及び
図2に示したマスクにおいては、Lが粘着剤層の縦方向の長さであり、Wが粘着剤層の幅である。また、
図1に示したマスクのように、粘着剤層の縦方向の長さが一定でない場合には、粘着剤層の縦方向の最長部分の長さを粘着剤層の縦方向の長さLとする。
【0034】
また、本発明のマスクにおいて、前記粘着剤層の質量としては、粘着力を確保できる量であれば、特に制限はないが、前記粘着剤層の貼付面の単位面積当たりの質量が160~240g/m2の範囲内にあることが好ましく、180~220g/m2の範囲内にあることがより好ましい。
【0035】
前記マスク用基布としては特に制限はなく、塵や埃、ダニ等のハウスダスト、花粉、カビ、細菌、ウイルス等の侵入を防止するためのマスクに用いられる公知のマスク用基布を採用することができる。このようなマスク用基布の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等のポリビニル;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタン等の合成樹脂が挙げられる。また、このようなマスク用基布の形態としては、例えば、多孔質フィルム、多孔質シート等の通気性を有するフィルムやシート;織布、編布、不織布等の布帛;及びこれらの積層体が挙げられ、本発明のマスクにおいては、このような基布を1枚単独で用いても、2枚以上を重ねて用いてもよい。また、2枚以上を重ねて用いる場合、同じ材質の基布を重ねて用いてもよいし、異なる材質の基布を組合せて用いてもよい。さらに、ウイルス飛沫捕集フィルター内蔵シート等の機能性シートを2枚の基布で挟持した構造を形成してもよい。
【0036】
本発明のマスク用基布が不織布である場合、粘着剤層が基布の裏側に染み出すことなく展延でき、かつ基布と粘着剤層との間の投錨性が維持されるという観点から、不織布の目付としては、80~150g/m
2が好ましく、95~125g/m
2がより好ましい。不織布の厚さとしては0.50~0.70mmが好ましい。不織布の50%伸長時の強さとしては、マスクの縦方向において1.0N/50mm~4.0N/50mmであることが好ましく、マスクの横方向において6.5N/50mm~21.0N/50mmであること好ましい。不織布の引張強さとしては、マスクの縦方向において30N/50mm~60N/50mmであることが好ましく、マスクの横方向において80N/50mm~180N/50mmであることが好ましい。また、不織布の伸び率としては、マスクの縦方向において120%~400%であることが好ましく、マスクの横方向において100%~160%であることが好ましい。なお、本発明において、マスクの縦方向とは、
図1及び
図2に示すように、マスクの上下方向を意味し、マスクの横方向とは、
図1及び
図2に示すように、マスクの上下方向に垂直な方向を意味する。
【0037】
また、本発明のマスクにおいては、前記粘着剤層を保護するために、前記粘着剤層の貼付面上にライナーが備えられていてもよい。なお、このライナーは、マスクの使用時に剥離されるものである。このようなライナーとしては、前記粘着剤層を保護できるものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等のポリビニル;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタン等の合成樹脂や、アルミニウム、紙等の材質からなるフィルムやシート及びこれらの積層体が挙げられる。このようなライナーとしては、前記粘着剤層から容易に剥離できるように、前記粘着剤層と接触する側の面に含シリコーン化合物コート、含フッ素化合物コート等の剥離処理が施されたものであることが好ましい。
【0038】
本発明のマスクは、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、先ず、前記粘着剤層を構成する前記成分を、攪拌機を用いて均一に混合及び/又は溶解し、前記成分を所定の割合で含有する粘着剤組成物を調製する。
【0039】
次に、得られた粘着剤組成物をライナーの面上に所望の単位面積当たりの質量となるように展延して前記粘着剤層を形成した後、前記粘着剤層を前記マスク用基布の内側表面に貼り付けることによって、本発明のマスクを得ることができる。このとき、前記マスク用基布を予め所望の形状に裁断した後、前記粘着剤層を貼り付けてもよいし、前記粘着剤層を前記マスク用基布に貼り付けた後、所望の形状に裁断してもよい。
【0040】
また、本発明のマスクは、前記粘着剤組成物を前記マスク用基布の内側表面上に所望の単位面積当たりの質量となるように展延して前記粘着剤層を形成した後、前記粘着剤層の面上に前記ライナーを貼り合わせることによっても製造することができる。このとき、予め所望の形状に裁断した前記マスク用基布の面上に前記粘着剤層を形成してもよいし、前記ライナーを貼り合わせた後、所望の形状に裁断してもよい。
【実施例0041】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で作製したマスクの各種性能評価試験は以下の方法により行った。
【0042】
<試験1>
実施例及び比較例で作製したマスクを、粘着剤層を頬部に付着させて、被験者の顔面に装着した後、所定の時間毎に頬部に対する粘着剤層の付着状態を確認して下記基準で評価し、被験者4名による付着安定性評価の平均スコアを求めた。
5:粘着剤層の剥離なし。
4:粘着剤層の端のみ剥離。
3:粘着剤層の1/3が剥離。
2:粘着剤層の1/2が剥離。
1:顔面からマスクが脱落。
【0043】
また、上記のマスク装着から4時間経過後、マスクを取外した。このときの頬部の痛み、及び取外し後の頬部のべたつきを確認して下記基準で評価し、被験者4名による取外し時の痛みとべたつきの評価の平均スコアを求めた。
(痛み)
5:痛みなし。
4:ほとんど痛みなし。
3:やや痛みあり。
2:痛みあり。
1:著しい痛みあり。
(べたつき)
5:べたつきなし。
4:ほとんどべたつきなし。
3:ややべたつきあり。
2:べたつきあり。
1:著しいべたつきあり。
【0044】
<試験2>
先ず、実施例及び比較例で作製したマスクを、粘着剤層を頬部に付着させて、被験者の顔面に装着し、マスク装着から15分経過後に頬部に対する粘着剤層の付着状態を確認し、マスクを取外した。確認した粘着剤層の付着状態を下記基準で評価し、被験者4名による付着性評価の平均スコアを求めた。
【0045】
次に、取外したマスクを、再び、粘着剤層を頬部に付着させて、被験者の顔面に装着し、最初のマスク装着から30分経過後に頬部に対する粘着剤層の付着状態を確認し、マスクを取外した。確認した粘着剤層の付着状態を下記基準で評価し、被験者4名による再付着性評価の平均スコアを求めた。その後、所定時間毎に、マスクの装着、粘着剤層の付着状態の確認、マスクの取外しを繰返し行い、被験者4名による再付着性評価の平均スコアを求めた。
5:粘着剤層の剥離なし。
4:粘着剤層の端のみ剥離。
3:粘着剤層の1/3が剥離。
2:粘着剤層の1/2が剥離。
1:顔面からマスクが脱落。
【0046】
(実施例1)
表1に示す粘着剤層を構成する成分を同表に示す組成となるようにそれぞれ秤量し、攪拌機を用いて160~200℃で均一になるまで混合して粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物をライナー(剥離処理されたポリエステル製フィルム、幅:36cm)の面上に200g/m
2となるように展延して粘着剤層を形成した後、縦方向の長さ:7.2cm×幅:1.5cmの大きさに裁断し、この粘着剤層をマスク用基布(ポリプロピレン樹脂製不織布)の内側表面の左右両端に貼り付け、
図1に示す形状のマスクを作製した。得られたマスクについて、前記試験1~2を行い、マスクの各種性能を評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
なお、成分としては以下の市販品を用いた。
・スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(JSR株式会社製「SIS5002」)。
・ポリイソブチレン(BASF社製「Oppanol B12SFN」)。
・テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製「YS Resin PX1150N」)。
・水素添加ロジングリセリンエステル(荒川化学工業株式会社製「KE-311E」)。
・流動パラフィン(カネダ株式会社製「ハイコール M-352」)。
【0048】
【0049】
表1に示した結果から明らかなように、(A)テルペン系樹脂、(B)水素添加ロジングリセリンエステル及び(C)流動パラフィンを、成分(B)の含有量、成分(A)と(B)の質量比〔A/B〕、成分(A)と(B)の合計含有量、並びに成分(A)と(B)の合計含有量に対する成分(C)の質量比〔C/(A+B)〕が所定の範囲内となるように、配合することによって、取外し時の痛みや取外し後のべたつきがなく、付着安定性及び再付着性に優れた粘着剤層を備えるマスクが得られることが確認された(実施例1~4)。
【0050】
一方、成分(B)の含有量が多く、成分(A)と(B)の質量比〔A/B〕が小さくなると、取外し時の痛みや取外し後のべたつきは見られなかったが、粘着剤層の付着安定性及び再付着性が低下することが確認された(比較例1~2)。他方、成分(B)の含有量が少なく、成分(A)と(B)の質量比〔A/B〕が大きくなると、粘着剤層の付着安定性及び再付着性は優れているものの、取外し時の痛みや取外し後のべたつきが発生することが確認された(比較例3~4)。
【0051】
また、成分(A)と(B)の合計含有量が少なく、成分(A)と(B)の合計含有量に対する成分(C)の質量比〔C/(A+B)〕が大きくなると、取外し時の痛みや取外し後のべたつきは見られなかったが、粘着剤層の付着安定性及び再付着性が低下することが確認された(比較例5)。他方、成分(A)と(B)の合計含有量が多く、成分(A)と(B)の合計含有量に対する成分(C)の質量比〔C/(A+B)〕が小さくなると、粘着剤層の付着安定性及び再付着性は優れているものの、取外し時の痛みや取外し後のべたつきが発生することが確認された(比較例6)。
以上説明したように、本発明によれば、頬部に対する付着安定性及び再付着性に優れており、さらに、取外し時の痛みの発生や取外し後のべたつきの発生が抑制された粘着剤層を形成することが可能となる。
したがって、本発明のマスクは、優れた付着安定性や再付着性を有し、取外し時の痛みや取外し後のべたつきが発生しにくい粘着剤層を備えているため、耳かけ紐がなく、粘着部を頬に貼り付けて使用するマスクとして有用である。