(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076081
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187461
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】平井 規晋
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA06
2H500CA26
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】高温高湿下での帯電性及び耐久性に優れた静電荷像現像用トナーに関すること。
【解決手段】非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂が、非晶質ポリエステルセグメント(a)と、環状ラクトンが開環重合した結晶性ポリエステルセグメント(c)とがエステル結合を介して結合した結晶性ブロックポリマー(C)を含有する、静電荷像現像用トナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂が、非晶質ポリエステルセグメント(a)と、環状ラクトンが開環重合した結晶性ポリエステルセグメント(c)とがエステル結合を介して結合した結晶性ブロックポリマー(C)を含有する、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の合計含有量が、結着樹脂中、80質量%以上100質量%以下である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
結晶性ブロックポリマー(C)における、非晶質ポリエステルセグメント(a)の結晶性ポリエステルセグメント(c)に対する質量比が、2/98以上40/60以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
環状ラクトンが、ε-カプロラクトンである、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
非晶質ポリエステル樹脂の結晶性ブロックポリマー(C)に対する質量比が、70/30以上98/2以下である、請求項1~4いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラス転移点の異なる第1の樹脂(a1)及び第2の樹脂(a2)と、第3の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)とを有する樹脂粒子(C)からなるトナーであって、前記第1の樹脂(a1)及び前記第2の樹脂(a2)が、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されており、前記第3の樹脂(b)が、非結晶性のポリヒドロキシカルボン酸骨格を有することを特徴とするトナーが開示されている。
【0003】
特許文献2には、有機微粒子(A)が分散された、液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素(X)中に、樹脂(B)の溶剤(S)溶液(L)、着色剤分散液(C)、および必要によりワックス分散液(D)を分散させることにより、樹脂(B)、着色剤(k)、溶剤(S)、および必要によりワックス(w)を含有する樹脂粒子(Y1)の表面に有機微粒子(A)が固着された樹脂粒子(Z1)を形成させ、(Z1)を(X)で処理し、次いで得られた(Z1)が(X)と(S)を含有する分散媒体中に分散された分散体(Q)から(X)と(S)を除去する工程を含む樹脂粒子(Z)の製造方法であって、樹脂(B)がラクトン開環重合物(p)を必須構成成分とする結晶性部(a)と非結晶性部(b)から構成される樹脂であり、着色剤分散液(C)が、着色剤(k)、酸価とアミン価の合計(mgKOH/g)が20以上250以下である分散剤(l)、溶剤(S)、および圧力が2MPa以上である液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素(X)を混合し、その後減圧膨張して(X)を気化させ除去することで得られた、メジアン径1μm以下の(k)が(S)中に分散された分散液である樹脂粒子の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、ポリエステルブロックA及びフルオロ基を有するポリエステルブロックBを有するブロック共重合体を含む母体粒子を有し、前記ブロック共重合体は、タッピングモード原子間力顕微鏡を用いて、断面の位相像を観察すると、位相の遅れが小さい前記ポリエステルブロックA由来のドメイン中に位相の遅れが大きい前記ポリエステルブロックB由来のドメインが分散しており、前記ポリエステルブロックB由来のドメインは、平均ドメインサイズが10nm以上45nm以下であることを特徴とするトナーが開示されている。
【0005】
特許文献4には、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナー又は前記トナーとキャリアを含む静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を加圧定着する定着工程を含む画像形成方法であって、前記トナーが結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックを有するブロック共重合体を含み、前記定着時の最大圧力が1MPa以上10MPa以下であることを特徴とする画像形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-53657号公報
【特許文献2】特開2011-94137号公報
【特許文献3】特開2013-80052号公報
【特許文献4】特開2007-114635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トナーの結着樹脂として、低温定着性を高めるために、非晶質ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂と併用することが検討されている。
【0008】
しかしながら、結晶性ポリエステル樹脂により低温定着性は向上するものの、結晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子表面に露出すると帯電性や耐久性が低下する。特に、高温高湿下ではトナー表面がより可塑化されるために帯電性や耐久性の低下が顕著である。
【0009】
本発明は、高温高湿下での帯電性及び耐久性に優れた静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂が、非晶質ポリエステルセグメント(a)と、環状ラクトンが開環重合した結晶性ポリエステルセグメント(c)とがエステル結合を介して結合した結晶性ブロックポリマー(C)を含有する、静電荷像現像用トナーに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の静電荷像現像用トナーは、高温高湿下での帯電性及び耐久性において優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の静電荷像現像用トナーは、非晶質ポリエステル樹脂と、非晶質ポリエステルセグメント(a)と環状ラクトンが開環重合した結晶性ポリエステルセグメント(c)とがエステル結合を介して結合した結晶性ブロックポリマー(C)を含有するものであり、本発明の効果が奏される理由の詳細は定かではないが、以下のように推察される。
【0013】
本発明は、結晶性ポリエステルの末端に非晶質ポリエステルを修飾した結晶性ブロックポリマー(C)を使用することで、結晶性ポリエステル樹脂を効率よく非晶質ポリエステル樹脂中に分散させることができる。一般的に、疎水性の高い結晶性ポリエステル樹脂は非晶質ポリエステル樹脂中へ分散させにくく、トナー中で高分散状態を保つことが難しい。これに対し、本発明における結晶性ブロックポリマー(C)は、非晶質ポリエステルセグメント(a)の末端から等しく環状ラクトンが開環重合して形成されるため、結晶性ポリエステルセグメント(c)の組成分布が狭く、かつ未反応のブロック化していない結晶性ポリエステルセグメントが極めて少ない。その結果、結晶性ポリエステルの末端に非晶質ポリエステルを修飾させた結晶性ブロックポリマー(C)は、トナー中での分散性が改善しトナー表面への露出が抑制されるため、本発明のトナーは、高温高湿下においても帯電性や耐久性が大きく向上するものと考えられる。
【0014】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、非晶質ポリエステルセグメント(a)と、環状ラクトンが開環重合した結晶性ポリエステルセグメント(c)とがエステル結合を介して結合した結晶性ブロックポリマー(C)を含有する。
【0015】
非晶質ポリエステルセグメント(a)は、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合により形成される。
【0016】
アルコール成分としては、帯電性の観点から、式(I):
【0017】
【0018】
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表される化合物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0019】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0020】
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0021】
カルボン酸成分としては、高温高湿下での帯電性の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物が好ましい。
【0022】
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物及びアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、低温定着性の観点から、テレフタル酸又はイソフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0023】
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0024】
他のカルボン酸成分としては、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、炭化水素基で置換されたコハク酸誘導体、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0025】
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含有されていてもよい。
【0026】
なお、本明細書において、マクロモノマーやヒドロキシカルボン酸は、アルコール成分及びカルボン酸成分には含めない。
【0027】
カルボン酸成分のカルボキシ基のアルコール成分の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下である。
【0028】
非晶質ポリエステルセグメント(a)は、例えば、原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは160℃以上、より好ましくは200℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて形成することができる。
【0029】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0030】
結晶性ポリエステルセグメント(c)は、環状ラクトンの開環重合により形成される。
【0031】
環状ラクトンとしては、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等が挙げられ、これらの中では、高温高湿下での耐久性の観点から、ε-カプロラクトンが好ましい。
【0032】
環状ラクトンの開環重合は、例えば、非晶質ポリエステルセグメント(a)と環状ラクトンを混合し、80~140℃程度に加熱して、行うことができる。
【0033】
結晶性ブロックポリマー(C)における、非晶質ポリエステルセグメント(a)の結晶性ポリエステルセグメント(c)に対する質量比(非晶質ポリエステルセグメント(a)/結晶性ポリエステルセグメント(c))は、高温高湿下での耐久性の観点から、好ましくは2/98以上、より好ましくは5/95以上、さらに好ましくは10/90以上であり、低温定着性の観点から、好ましくは40/60以下、より好ましくは30/70以下、さらに好ましくは20/80以下である。
【0034】
結晶性ブロックポリマー(C)の軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0035】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。
結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である。
一方、非晶質樹脂は、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0036】
結晶性ブロックポリマー(C)の融点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは48℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0037】
結晶性ブロックポリマー(C)の酸価は、帯電安定性の観点から、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは4mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
【0038】
結晶性ブロックポリマー(C)の水酸基価は、帯電安定性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下である。
【0039】
結晶性ブロックポリマー(C)の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0040】
結晶性ブロックポリマー(C)の含有量は、結着樹脂中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0041】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0042】
非晶質ポリエステル樹脂は、前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と、芳香族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
【0043】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0044】
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0045】
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、前記と同様の化合物が挙げられるが、テレフタル酸が好ましい。
【0046】
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0047】
芳香族ジカルボン酸系化合物以外のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸系化合物、3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、炭化水素基で置換されていてもよいコハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、これらの酸の無水物及びアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0049】
脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。
【0050】
3価以上のカルボン酸系化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0051】
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、軟化点を高くする観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。
【0052】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含有されていてもよい。
【0053】
カルボン酸成分のカルボキシ基のアルコール成分の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下である。
【0054】
非晶質ポリエステル樹脂は、非晶質ポリエステルセグメント(a)と同様にして、アルコールとカルボン酸系化合物を重縮合させて製造することができる。
【0055】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられる。
【0056】
非晶質ポリエステル樹脂の軟化点は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは145℃以下である。
【0057】
非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは53℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
【0058】
非晶質ポリエステル樹脂の酸価は、帯電安定性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。
【0059】
非晶質ポリエステル樹脂の水酸基価は、帯電安定性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下である。
【0060】
非晶質ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下である。
【0061】
非晶質ポリエステル樹脂の結晶性ブロックポリマー(C)に対する質量比(非晶質ポリエステル樹脂/結晶性ブロックポリマー(C))が、耐熱保存性の観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは75/25以上、さらに好ましくは85/15以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、さらに好ましくは92/8以下である。
【0062】
非晶質ポリエステル樹脂の結晶性ポリエステル樹脂に対する質量比(非晶質ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂)が、耐熱保存性の観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは75/25以上、さらに好ましくは85/15以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、さらに好ましくは92/8以下である。
【0063】
結着樹脂には、前記の非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよく、他の樹脂としては、スチレンアクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられる。
【0064】
非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の合計含有量は、結着樹脂中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、100質量%以下である。
【0065】
結着樹脂の含有量は、トナー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0066】
本発明の静電荷像現像用トナーには、結着樹脂以外に、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0067】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0068】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0069】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0070】
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0071】
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0072】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0073】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0074】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0075】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0076】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、高温高湿下での耐久性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、前記の結晶性ブロックポリマー(C)及び非晶質ポリエステル樹脂、さらに必要に応じて、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の添加剤を含有する混合物を溶融混練する工程(溶融混練工程)を含む方法により得られる。
【0077】
溶融混練に供する混合物は、一度に混練に供しても、分割して混練に供してもよいが、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
【0078】
溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。
【0079】
溶融混練の温度は、樹脂が溶融し、混ざり合う温度であれば特に限定されない。
【0080】
溶融混練工程の後、混練物を粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、必要に応じて、粉砕工程及び分級工程を行ってトナー粒子を得ることが好ましい。ここで、冷却とは、混練物を0℃以上50℃以下まで冷却すること、または、混練物中の結着樹脂のガラス転移温度以下まで冷却することを言う。
【0081】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0082】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、環状シラザン、シリコーンオイル、アミノシラン、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0083】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0084】
トナー粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
【0085】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0086】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0087】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例0088】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定することができる。
【0089】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0090】
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
【0091】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0092】
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶質樹脂はアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に、結晶性樹脂はクロロホルムとジメチルホルムアミドの混合溶媒(クロロホルム:ジメチルホルムアミド=7:3(容量比))に、それぞれ変更する。
【0093】
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒からテトラヒドロフランに変更する。
【0094】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC 210」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最大ピーク温度を離型剤の融点とする。
【0095】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0096】
〔トナーの体積中位粒径〕
・測定機:コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:マルチサイザーIII バージョン 3.51(ベックマン・コールター(株)製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター(株)製)
・分散液:電解液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王(株)製、HLB(グリフィン)=13.6〕を溶解して5質量%に調整したもの
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0097】
樹脂製造例1
表1に示すアルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、脱水管を備えた流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、230℃まで昇温し8時間反応させた。その後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、220℃まで昇温し、8.0kPaにて反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A1)を得た。
【0098】
樹脂製造例2
表1に示すアルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、脱水管を備えた流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃から230℃まで4時間かけて昇温し、230℃にて6時間反応させた。その後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、220℃まで昇温し、8.0kPaにて反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A2、A3)を得た。
【0099】
【0100】
樹脂製造例3
表2に示すアルコール成分、カルボン酸成分、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、脱水管を備えた流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、230℃まで昇温し8時間反応させた。8.0kPaにて反応を行い、非晶質ポリエステルセグメントを合成した。その後、120℃にて表2に示す環状ラクトンを投入し2時間反応させた後、8.0kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ブロックポリマー(樹脂B1~B5)を得た。
【0101】
【0102】
樹脂製造例4
表3に示すアルコール成分C及びカルボン酸成分Cを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、表3に示すエステル化触媒Cを添加し、8.0kPaにて表3に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C1)を得た。
【0103】
樹脂製造例5
表3に示すアルコール成分A、カルボン酸成分A、及びエステル化触媒Aを、温度計、ステンレス製攪拌棒、脱水管を備えた流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、230℃まで昇温し8時間反応させた。8.0kPaにて反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂を得た。
一方、表3に示すアルコール成分C及びカルボン酸成分Cを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、表3に示すエステル化触媒Cを添加し、8.0kPaにて表3に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
その後、160℃にて非晶質ポリエステル樹脂を投入し、結晶性ポリエステル樹脂と、2時間反応させて結晶性ブロックポリマー(樹脂C2)を得た。
【0104】
【0105】
実施例1~9及び比較例1、2
表4に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー)5質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤(「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製、融点:80℃))3質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は90℃であり、混練物の温度は140℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を140℃から50℃まで1.5時間で冷却し、50℃で、冷却ローラーで圧延冷却した後、45℃で4時間静置後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)5.5μmのトナー粒子を得た。
【0106】
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤として、疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1.5質量部及び疎水性シリカ「RY-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。
【0107】
試験例1〔高温高湿(HH)下での耐久性〕
レーザプリンタ「ページプレスト N-4」(カシオ計算機(株)製、定着:接触定着方式、現像:非磁性一成分現像方式、現像ロール径:2.3cm)にトナーを実装し、温度40℃、相対湿度85%の高温高湿下で黒化率5.5%の斜めストライプのパターンにて、耐刷を行った。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジを確認した。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印刷枚数を、現像ロールにトナーが融着・固着したことによりスジが発生した枚数として、耐久性を評価した。結果を表4に示す。印刷枚数が多いほど、トナーの耐久性に優れる。その枚数は、3,000枚以上が好ましく、4,000枚以上がより好ましく、5,000枚以上がさらに好ましい。
【0108】
試験例2〔高温高湿(HH)下での帯電性〕
「MICROLINE 3010」(沖データ社製、定着:接触定着方式、現像:非磁性一成分現像方式)にトナーを実装し、温度35℃、相対湿度85%の高温高湿下で500枚の画像を得た。50枚目と500枚目の画像を透過型マクベス濃度計「TR-927」を用いて画像濃度を測定し、画像濃度の比の値(500枚目の画像濃度の値/50枚目の画像濃度)から、高温高湿下での帯電性を評価した。結果を表4に示す。比の値が大きいほど、高温高湿下での画像濃度の安定性に優れ、高温高湿下での帯電性が高いといえる。比の値は、0.75以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。
【0109】
【0110】
以上の結果より、実施例1~9では、いずれも高温高湿下での帯電性と耐久性が良好であることが分かる。
これに対して、ブロックポリマーではない結晶性ポリエステル樹脂を用いた比較例1と結晶性ポリエステルセグメントが環状ラクトンの開環重合体ではない結晶性ブロックポリマーを用いた比較例2では、高温高湿下での帯電性と耐久性がいずれも不十分である。