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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076082
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】センサ付軸受装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 3/08 20060101AFI20240529BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20240529BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240529BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G01D3/08
F16C41/00
F16C19/06
F16C19/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187465
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 寛
【テーマコード(参考)】
2F075
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F075AA05
2F075AA11
2F075EE06
2F075EE09
2F075FF10
3J217JA02
3J217JA13
3J217JA15
3J217JA16
3J217JA24
3J217JB14
3J217JB17
3J217JB34
3J217JB37
3J217JB84
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA22
3J701FA23
3J701FA24
3J701FA26
(57)【要約】
【課題】センサ素子を含む電子回路を内蔵したセンサ付軸受装置において、簡単な構成で電磁ノイズから電子回路を確実に保護できるようにする。
【解決手段】センサ素子を含む電子回路2に接続される電源線4、グランド線5、信号グランド線6および信号線7を含む入出力回路3に、3つの保護素子8、9、10を3段構成で配置し、2段目の保護素子9を絶縁型素子として、外来の電磁ノイズのエネルギーを徐々に減衰させることにより、センサ素子を含む電子回路2を確実に保護し、その電子回路2の故障や劣化を防止できるようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部とセンサ部とを備え、前記センサ部にセンサ素子を含む電子回路を内蔵したセンサ付軸受装置において、
前記電子回路と直流電源、グランドおよび信号入出力端子とをそれぞれ接続する電源線、グランド線および信号線を含む入出力回路に、3つの保護素子を3段構成で配置し、その3つの保護素子のうちの2段目の保護素子を絶縁型素子または非絶縁型素子としたことを特徴とするセンサ付軸受装置。
【請求項2】
前記3つの保護素子の配置は、1段目の保護素子の定格以下の定格を有する保護素子を3段目に配置し、2段目の保護素子は1段目の保護素子よりも高い特性インピーダンスを有する保護素子を配置するものであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項3】
前記入出力回路は、前記2段目の保護素子を絶縁型素子とし、その絶縁型素子として、トランスと、スイッチングトランジスタと、整流ダイオードと、出力コンデンサとからなるフライバックコンバータを配置するとともに、前記1段目の保護素子として、グランドに接続された電源側サージアブソーバを配置し、前記3段目の保護素子として、前記電子回路内の内部グランドに接続された電子回路側サージアブソーバを配置したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項4】
前記電源側サージアブソーバと前記電子回路側サージアブソーバの少なくとも一方が、TVSダイオードからなることを特徴とする請求項3に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項5】
前記電源側サージアブソーバと前記電子回路側サージアブソーバの少なくとも一方が、コンデンサ、バリスタまたはツェナーダイオードからなることを特徴とする請求項3に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項6】
前記入出力回路の2段目の保護素子を絶縁型素子とし、前記電源線、グランド線および信号線をそれぞれ導電シートで覆ったシールド線とし、そのシールド線のシールド部は、前記グランド線と絶縁したうえで、前記軸受部の軸受外輪と軸受内輪からなる2つの軸受輪のうちの固定側となる軸受輪に接続する、もしくは、組込対象である機械設備のボディに接続する、もしくは、地面に直接接地することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項7】
前記入出力回路は、前記2段目の保護素子を非絶縁型素子とし、その非絶縁型素子としてコイルを配置するとともに、前記1段目の保護素子として、グランドに接続された電源側サージアブソーバを配置し、前記3段目の保護素子として、前記電子回路内の内部グランドに接続された電子回路側サージアブソーバを配置したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項8】
前記電源側サージアブソーバと前記電子回路側サージアブソーバの少なくとも一方が、TVSダイオードからなることを特徴とする請求項7に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項9】
前記電源側サージアブソーバと前記電子回路側サージアブソーバの少なくとも一方が、コンデンサ、バリスタまたはツェナーダイオードからなることを特徴とする請求項7に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項10】
前記電源線、グランド線および信号線をそれぞれ導電シートで覆ったシールド線とし、そのシールド線のシールド部は、前記電源側サージアブソーバの接続部で前記グランド線と接続したうえで、前記軸受部の軸受外輪と軸受内輪からなる2つの軸受輪のうちの固定側となる軸受輪に接続する、もしくは、組込対象である機械設備のボディに接続する、もしくは、地面に直接接地することを特徴とする請求項7に記載のセンサ付軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種回転装置の振動や温度、回転等を検出するセンサを備えたセンサ付軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、屋外や工場等に設置する機械設備に組み込む軸受装置の周辺には、振動や温度、回転等を検出する各種センサを設置し、その機械設備の稼働状況や、コンディション等をモニタリングしている。
【0003】
一方、一般的なセンサを構成する電子回路は電磁ノイズ等に弱いため、外来の電磁ノイズ(以下、単に「ノイズ」とも称する。)の多い厳しい環境においては、ノイズに強いセンサが求められている。外来ノイズへの耐性を高めるためには、一般に、電子回路に保護素子(ノイズ除去素子)等のデバイスを配置することが多い。
【0004】
しかし、電子回路にノイズへの耐性を高めるためのデバイスを配置することは、電子回路の大型化、コストアップ、部品点数の増加による故障率上昇等の信頼性低下を招いてしまうことが多い。このため、小型で安価でシンプルなデバイスを電子回路の適所に配置する技術が求められている。
【0005】
このような要求に対し、例えば、特許文献1では、センサ付軸受装置において、センサが接続される電子回路の電源端子とアース端子との間にコンデンサと抵抗器を直列に組むことにより、センサの電源端子に印加される過電圧や電磁ノイズを吸収している。
【0006】
また、特許文献2では、センサ付軸受装置において、電子回路の基板に接地(フレームグランド)回路を設け、電源線およびグランド線に対してコンデンサと抵抗を用いて接続し、この接地回路の接地パターンをアースとなるセンサ筐体に接続する構造とすることにより、外来ノイズや内蔵回路からのノイズを除去して、各種のノイズに起因する電子回路の誤動作や破損を防止するようにしている。
【0007】
また、特許文献3では、電気機器のセンサ部と受信部との間にトランスを挿入して、そのトランスのコイルの両端に電圧抑制素子を挿入し、トランスの巻数比を調整することによりサージ等の不要信号に対する抑制電圧を任意に調整できるようにしてる。この構成によれば、トランスの部分でセンサ部と受信部との間を絶縁することができるため、センサ部を高電圧部に配置した場合に受信部に高電圧が印加されるのを防ぐことができる。
【0008】
また、特許文献4では、複数のコンバータを並列冗長運転する場合、各コンバータ間の電流バランスをとる電流制御を、各コンバータのなかで最大の電流に各コンバータの電流を合わせる最大電流制御方式とすることにより、コンバータに故障が生じたときでもコンバータ回路を保護できるようにしている。
【0009】
また、特許文献5では、定格電圧42Vを伴う自動車搭載電源網において、電圧12Vまでの短絡耐性を有するセンサを用いる場合に、短絡時には、給電線路上での電流上昇を検出して電流制限する、もしくは、センサ用給電線路がスイッチングエレメントによって切り離されるようにすることにより、センサの障害の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-240486号公報
【特許文献2】特開2007-292678号公報
【特許文献3】実開平7-36548号公報
【特許文献4】特開平8-126315号公報
【特許文献5】特表2005-533478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、電源線や信号出力線に印加される過電圧や、雷サージ(直撃雷サージ、誘導雷サージ)、電気回路系統の過渡現象による開閉サージ、電源機器の故障による過電圧等の電磁ノイズの電圧や電流が大きい場合、すなわち電磁ノイズのエネルギーが大きい場合、従来の保護素子や保護回路だけでは電子回路の故障を防止できないおそれがある。
【0012】
すなわち、上記特許文献1、2であげられているコンデンサと抵抗からなる保護素子は比較的小さなノイズは除去可能であるが、ノイズ電圧が高くなると、その電圧がそのまま電子回路に印加され、過電圧に弱い半導体部品等は容易に破壊される。
【0013】
また、特許文献1では、保護素子としてコンデンサと抵抗の代わりにバリスタ型サージアブソーバを用いることも提案しているが、ノイズ電流が大きくなると、サージアブソーバのクランプ電圧も大きくなり、その電圧がそのまま電子回路に印加され、コンデンサと抵抗を用いた場合と同様、半導体部品等は容易に破壊される。
【0014】
なお、上記特許文献3で提案されている回路は、センサ部から入力されるサージ等の不要信号に対する抑制電圧を調整することや、センサ部と受信部との間を絶縁することはできるが、受信部の電源線から入ってくる電磁ノイズ等に対する対策はとられていない。
【0015】
また、上記特許文献4は、複数のコンバータを並列冗長運転する場合の保護システムを提案しており、電源線から入ってくる電磁ノイズ等に対する対策については言及していない。
【0016】
また、上記特許文献5で提案されている回路は、センサ用給電線路の短絡時に、従来の電圧12Vの短絡耐性を持つセンサを42Vの自動車搭載電源から保護するものであり、雷サージ、電気回路系統の過渡現象による開閉サージ、電源機器の故障による過電圧等への対策はとられていない。
【0017】
そこで、本発明は、センサ素子を含む電子回路を内蔵したセンサ付軸受装置において、簡単な構成で電磁ノイズから電子回路を確実に保護できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明は、軸受部とセンサ部とを備え、前記センサ部にセンサ素子を含む電子回路を内蔵したセンサ付軸受装置において、前記電子回路と直流電源、グランドおよび信号入出力端子とをそれぞれ接続する電源線、グランド線および信号線を含む入出力回路に、3つの保護素子を3段構成で配置し、その3つの保護素子のうちの2段目の保護素子を絶縁型素子または非絶縁型素子とした(構成1)。ここで、「3段構成」とは、入力側(電源側)から順に1段目、2段目、3段目とするものである(以下同じ)。
【0019】
上記の構成1によれば、入出力回路に3段構成で配置された3つの保護素子だけで、入力側から入ってくる電磁ノイズのエネルギーを徐々に減衰させることにより、センサ素子を含む電子回路を確実に保護し、その電子回路の故障や劣化を防止することができる。
【0020】
ここで、前記3つの保護素子の配置を、1段目の保護素子の定格以下の定格を有する保護素子を3段目に配置し、2段目の保護素子は雷サージのような過渡現象で1段目の保護素子よりも高い特性インピーダンス(サージインピーダンス)を有する保護素子を配置するものとすれば(構成2)、3段目の保護素子に印加される電磁ノイズのエネルギーを低減でき、電磁ノイズのエネルギーをより効果的に減衰させることができる。
【0021】
上記構成1または2において、前記入出力回路は、前記2段目の保護素子を絶縁型素子とし、その絶縁型素子として、トランスと、スイッチングトランジスタと、整流ダイオードと、出力コンデンサとからなるフライバックコンバータ(スイッチングによるDC/DC変換回路)を配置するとともに、前記1段目の保護素子として、グランドに接続された電源側サージアブソーバを配置し、前記3段目の保護素子として、前記電子回路内の内部グランドに接続された電子回路側サージアブソーバを配置したものを採用することが望ましい(構成3)。
【0022】
すなわち、雷サージや開閉サージ等は電源線に重畳することが多いので、電源線とグランド線の間に1段目の保護素子として電源側サージアブソーバを配置して、ノイズのエネルギーをグランド線へ逃がすことが有効である。また、ノイズのエネルギーが大きく、電源側サージアブソーバに発生するクランプ電圧が高くなりすぎる場合に備えて、2段目の保護素子としてトランスを含む絶縁回路を配置し、直列に特性インピーダンスを追加することにより過渡電流を下げるようにする。2段目の保護素子で過渡電流を下げることにより、3段目の保護素子としての電子回路側サージアブソーバの定格を、例えば上記構成2のように1段目以下に下げることができる。そして、3段目の保護素子でノイズのエネルギーをさらにグランド線へ逃がすことにより、センサ素子を含む電子回路へ伝播するサージ電圧を一層低減することができる。
【0023】
ここで、上記構成3において、前記電源側サージアブソーバと前記電子回路側サージアブソーバの少なくとも一方は、TVSダイオードからなるものを採用することができ(構成4)、コンデンサ、バリスタまたはツェナーダイオードからなるものを採用することもできる(構成5)。
【0024】
また、上記構成1乃至5のいずれにおいても、前記入出力回路の2段目の保護素子を絶縁型素子とした場合には、前記電源線、グランド線および信号線をそれぞれ導電シートで覆ったシールド線とし、そのシールド線のシールド部は、前記グランド線と絶縁したうえで、前記軸受部の軸受外輪と軸受内輪からなる2つの軸受輪のうちの固定側となる軸受輪に接続する、もしくは、組込対象である機械設備のボディに接続する、もしくは、地面に直接接地する構成とすれば(構成6)、電磁ノイズのエネルギーが大きい場合でも、より確実に電子回路の故障を防止できるようになる。
【0025】
一方、電磁ノイズのエネルギーが小さい場合は、上記構成1または2において、前記入出力回路は、上記構成3と異なり、前記2段目の保護素子を非絶縁型素子とし、その非絶縁型素子としてコイルを配置するとともに、上記構成3と同様に、前記1段目の保護素子として、グランドに接続された電源側サージアブソーバを配置し、前記3段目の保護素子として、前記電子回路内の内部グランドに接続された電子回路側サージアブソーバを配置したものを採用しても(構成7)、電子回路の誤動作や破損を防止することができる。
【0026】
ここで、上記構成7において、前記電源側サージアブソーバと前記電子回路側サージアブソーバの少なくとも一方は、TVSダイオードからなるものを採用することができ(構成8)、コンデンサ、バリスタまたはツェナーダイオードからなるものを採用することもできる(構成9)。
【0027】
また、上記構成1または2において前記入出力回路の2段目の保護素子を非絶縁型素子とした場合や、上記構成7乃至9のいずれかにおいて、前記電源線、グランド線および信号線をそれぞれ導電シートで覆ったシールド線とし、そのシールド線のシールド部は、前記電源側サージアブソーバの接続部で前記グランド線と接続したうえで、前記軸受部の軸受外輪と軸受内輪からなる2つの軸受輪のうちの固定側となる軸受輪に接続する、もしくは、組込対象である機械設備のボディに接続する、もしくは、地面に直接接地することにより(構成10)、電子回路に含まれるセンサ素子等の故障をより確実に防止できるようになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のセンサ付軸受装置は、上述したように、センサ素子を含む電子回路に接続される電源線、グランド線および信号線を含む入出力回路に、3つの保護素子を3段構成で配置し、2段目の保護素子を絶縁型素子または非絶縁型素子とすることにより、外来の電磁ノイズのエネルギーを徐々に減衰させるようにしたものであるから、センサ素子を含む電子回路を確実に保護して、その電子回路の故障や劣化を防止することができる。したがって、外来の電磁ノイズが多い環境においても、電子回路の破損や誤動作を生じず、同時に外部環境に対する不要輻射やノイズを発生させない、良好なEMC性能(電磁両立性)を発揮することができる。また、その入出力回路は、電磁ノイズ対策が3つの保護素子の追加だけで実施される簡素なものとすることができ、信頼性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態のセンサ付軸受装置の縦断面図
図2図1の要部を拡大して示す断面図
図3図1のセンサ部の回路の模式図
図4図3の回路の要部の実施例を示す回路図
図5】第2実施形態のセンサ付軸受装置のセンサ部の回路の模式図
図6図5の回路の要部の実施例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2は第1実施形態のセンサ付軸受装置を示す。このセンサ付軸受装置は、内輪21と外輪22との間に転動体としてのボール23が保持器24で保持され、軸受空間の一端側がシール25でシールされた深溝玉軸受からなる軸受部20と、軸受部20のシール25でシールされた側と反対側に設けられるセンサ部30とを備え、内輪21と外輪22のうちの一方を固定側、他方を回転側として機械設備に組み込まれるものである。
【0031】
センサ部30は、軸受部の内輪21の外周面に嵌合された芯金31と、芯金31に装着された磁気エンコーダ32と、軸受部の外輪22の内周面に嵌合された外環33と、外環33に装着されたセンサハウジング34とを備えている。センサハウジング34には、磁気エンコーダ32と対向し、磁気エンコーダ32とともに回転センサを構成するホールIC35と、ホールIC35の脚35aに接続されたプリント基板36とが、モールド樹脂34aで固定されている。そして、そのプリント基板36に、後述する回路を構成する電気部品37が取り付けられている。
【0032】
センサ部30の回路は、図3に模式的に示すように、ホールIC35のホール素子(センサ素子)を含む電子回路(以下、単に「電子回路」とも称する。)2と入出力回路3とを備えている。その電子回路2および入出力回路3は、それぞれ図1および図2のセンサハウジング34に相当するセンサ回路筺体1内に内蔵されており、電子回路2は入出力回路3を介して直流電源(Power)に接続されている。
【0033】
入出力回路3は、電子回路2にそれぞれ接続される電源線4、グランド線5、信号グランド線6および信号線7を含み、その電源線4とグランド線5の間に3つの保護素子8、9、10が3段構成で配置されており、そのうちの2段目の保護素子9が絶縁型素子とされている。そして、2段目の保護素子9は1段目の保護素子よりも高い特性インピーダンスを有する保護素子とされ、3段目の保護素子10の定格は1段目の保護素子9の定格以下とされている。
【0034】
ここで、1段目の保護素子8としてはグランド(GND)に接続されたサージアブソーバ(電源側サージアブソーバ)が、3段目の保護素子10としては電子回路2内の内部グランド(図4参照)に接続されたサージアブソーバ(電子回路側サージアブソーバ)が、それぞれ配置されている。各サージアブソーバ8、10には、コンデンサ、バリスタ、ツェナーダイオード、TVSダイオード等が用いられる。また、2段目の保護素子(絶縁型素子)9としては、トランスを用いた絶縁型回路、詳しくはスイッチングによるDC/DC変換回路が配置されている。
【0035】
また、信号線7と信号グランド線6の間、および信号グランド線6とグランド線5の間にもそれぞれサージアブソーバ11、12が配置され、1段目の保護素子8と2段目の保護素子9の間の電源線4の途中、および信号線7の途中にはそれぞれ整流ダイオード13
、14が配置されている。電源線4の途中の整流ダイオード13および信号線7の途中の整流ダイオード14は、それぞれ十分な逆耐圧を持つものが用いられている。
【0036】
さらに、電磁ノイズのエネルギーが大きい場合には、図3にOptionとして示すように、電源線4、グランド線5、信号グランド線6および信号線7を導電シートで覆ったシールド線15とし、そのシールド線15のシールド部を、グランド線5や信号グランド線6とは絶縁したうえで、このセンサ付軸受装置の組込対象である機械設備のボディ(Body Earth)に接続するようになっている。ここで、シールド線15のシールド部の接続先は、このセンサ付軸受装置の軸受部20の内輪21と外輪22のうちの固定側となる軸受輪としてもよい。また、シールド線15のシールド部を地面に直接接地してもよい。
【0037】
この第1実施形態のセンサ付軸受装置は上記の構成であり、そのセンサ部30の回路は、雷サージや開閉サージ等の電源線4に重畳するノイズがノーマルモードの正電荷の場合、まず、そのノイズのエネルギーを1段目の保護素子(電源側サージアブソーバ)8でグランド線5へ逃がす。次に、2段目の保護素子(絶縁型素子)9で1次側(直流電源側)と2次側(電子回路2側)を絶縁して高インピーダンスにし、過渡電流を下げることにより、電源線4がノイズの電子回路2への入力経路になることを防止する。そして、3段目の保護素子(電子回路側サージアブソーバ)10でノイズのエネルギーをさらに信号グランド線6を経由してグランド線5へ逃がす。これにより、ノイズのエネルギーが大きく、電源側サージアブソーバ8に発生するクランプ電圧が高くなって、絶縁型素子9の2次側に過渡電圧が伝達される場合でも、電子回路2へ伝達されるサージ電圧を電子回路2内の部品の定格以下に低減させる。
【0038】
すなわち、このセンサ部30の回路では、入出力回路3に3段構成で配置された3つの保護素子8、9、10だけで、入力側から入ってくる電磁ノイズのエネルギーを徐々に減衰させることにより、センサ素子を含む電子回路2を確実に保護し、その電子回路2の故障や劣化を防止することができる。
【0039】
また、信号線7とグランド線5の間にもサージアブソーバ11、12が配置されているので、電磁ノイズにより電源電圧が変動した場合でも、信号線7と電源線4の電位逆転が発生して電子回路2内の部品の故障は生じない。
【0040】
そして、ノイズがノーマルモードの負電荷の場合は、電源側サージアブソーバ8でノイズのエネルギーをグランド線5へ逃がすとともに、電源線4の途中の整流ダイオード13で高インピーダンスにして、電源線4がノイズの電子回路2への入力経路になることを防止する。なお、ノイズがコモンモードの場合は、電源線4とグランド線5の電位差は定格内となるため、問題にはならない。
【0041】
一方、信号線7にノイズが入った場合には、2つのサージアブソーバ11、12によってノイズのエネルギーをグランド線5へ逃がす。そして、ノイズが正電荷の場合は、信号線7の途中の整流ダイオード14で高インピーダンスにして、信号線7がノイズの電子回路2への入力経路になることを防止する。また、ノイズが負電荷の場合は、信号線7と信号グランド線6の間のサージアブソーバ11で、信号線7とグランド線5との電位差が定格内になるように制御する。
【0042】
さらに、図3でOptionとしたようにシールド線15のシールド部を接続することにより、電磁ノイズのエネルギーが大きい場合でも、より確実に電子回路2の故障を防止できるようになる。
【0043】
上述した第1実施形態の回路の要部の実施例を図4に示す。この実施例では、1段目の保護素子(電源側サージアブソーバ)8としてTVSダイオードを、3段目の保護素子(電子回路側サージアブソーバ)10としてツェナーダイオードを用いている。2段目の保護素子(絶縁型素子)9は、トランス9aと、スイッチングトランジスタ9bと、整流ダイオード9cと、出力コンデンサ9dとからなるフライバックコンバータ(スイッチングによるDC/DC変換回路)を用いている。また、信号線7と信号グランド線6の間、および信号グランド線6とグランド線5の間の保護素子(サージアブソーバ)11、12には、それぞれTVSダイオードを用いている。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。ここで、第2実施形態のセンサ付軸受装置の機械的な構成は、図1および図2に示した第1実施形態の構成と同じなので、説明を省略する。また、センサ部30の回路の構成も、第1実施形態と共通する部分が多いので、以下では、図5および図6に基づいて、センサ部30の回路における第1実施形態との相違点を説明する。なお、第1実施形態との共通部分については第1実施形態と同じ符号を付けている。
【0045】
一般に、センサ素子を含む電子回路が非絶縁型コンバータを用いているか、またはコンバータレスの場合、機械体の内部に組み込まれることも多く、電磁ノイズのエネルギーが比較的小さい。そこで、第2実施形態では、図5に示すように、電磁ノイズのエネルギーが小さい場合を対象とし、第1実施形態の絶縁型素子からなる2段目の保護素子9の代わりに非絶縁型素子からなる2段目の保護素子16を配置し、この2段目の保護素子16でノイズを減衰させつつ、1段目と3段目の保護素子8、10でノイズをグランド線5へ逃がすことにより、非絶縁型回路であっても電子回路2の誤動作や破損を防止できるようにしている。
【0046】
また、この第2実施形態では、第1実施形態の信号グランド線6、電源線4の途中の整流ダイオード13および信号線7の途中の整流ダイオード14をなくして、信号線7とグランド線5の間の2箇所にサージアブソーバ17、18を配置するとともに、両サージアブソーバ17、18の間の信号線7の途中に非絶縁型素子19を配置している。
【0047】
さらに、第1実施形態でOptionとしたシールド線15のシールド部を、電源側サージアブソーバ8の接続部でグランド線5と接続したうえで、機械設備のボディ(Body Earth)に接続することにより、電子回路2へのノイズの伝播を防ぎ、電子回路2に含まれるセンサ素子等の故障をより確実に防止できるようにしている。ここで、シールド線15のシールド部は、第1実施形態と同様、このセンサ付軸受装置の軸受部20の内輪21と外輪22のうちの固定側となる軸受輪に接続してもよいし、地面に直接接地してもよい。
【0048】
この第2実施形態のセンサ付軸受装置は上記の構成であり、そのセンサ部30の回路は、電源線4に重畳するノイズがノーマルモードの正電荷の場合、まず、そのノイズのエネルギーを1段目の保護素子(電源側サージアブソーバ)8でグランド線5へ逃がし、次に、2段目の保護素子(非絶縁型素子)16で高インピーダンスにして過渡電流を下げ、3段目の保護素子(電子回路側サージアブソーバ)10にかかる過渡電圧を低減させるようにしている。これにより、電源側サージアブソーバ8のクランプ電圧が高い場合でも、電子回路側サージアブソーバ10のクランプ電圧を下げ、電子回路2へ伝達されるサージ電圧を電子回路2内の部品の定格以下に低減させることができる。
【0049】
また、ノイズがノーマルモードの負電荷の場合でも、正電荷の場合と極性が反対になるだけで、正電荷の場合と同じ作用により、電子回路2へ伝達されるサージ電圧を電子回路2内の部品の定格以下に低減させる。
【0050】
そして、ノイズがコモンモードの場合、電源線4に重畳するノイズは、1段目の電源側サージアブソーバ8でエネルギーをシールドグランド(Shield GND)やボディアース(Body Earth)を介してセンサ回路筺体1へ逃がす。グランド線5のノイズもシールドグランドやボディアースを介してセンサ回路筺体1へ逃がす。
【0051】
一方、信号線7にノイズが入った場合は、まず、1段目のサージアブソーバ17でノイズのエネルギーをグランド線5やシールドグランドへ逃がす。次に、非絶縁型素子19で高インピーダンスにして過渡電流を下げ、3段目のサージアブソーバ18にかかる過渡電圧を低減させる。これにより、1段目のサージアブソーバ17のクランプ電圧が高い場合でも、3段目のサージアブソーバ18のクランプ電圧を下げ、電子回路2へ伝達されるサージ電圧を電子回路2内の部品の定格以下に低減させる。
【0052】
上述した第2実施形態の回路の要部の実施例を図6に示す。この実施例では、各サージアブソーバ)8、10、17、18としてTVSダイオードを用いている。2段目の保護素子(非絶縁型素子)16および信号線7の途中の非絶縁型素子19はコイルであり、具体的にはフェライトビーズを用いている。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0054】
例えば、実施形態ではセンサ部に設けられるセンサが回転センサである例について説明したが、振動や温度等を検出するセンサも、もちろん採用することができる。
【0055】
また、本発明は、実施形態のような深溝玉軸受からなる軸受部を有するものに限らず、各種の軸受からなる軸受部とセンサ部とを備え、センサ部にセンサ素子を含む電子回路を内蔵したセンサ付軸受装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 センサ回路筺体
2 (センサ素子を含む)電子回路
3 入出力回路
4 電源線
5 グランド線
6 信号グランド線
7 信号線
8 1段目の保護素子(電源側サージアブソーバ)
9 2段目の保護素子(絶縁型素子)
10 3段目の保護素子(電子回路側サージアブソーバ)
11、12 サージアブソーバ
13、14 整流ダイオード
15 シールド線
16 2段目の保護素子(非絶縁型素子)
17、18 サージアブソーバ
19 非絶縁型素子
20 軸受部
30 センサ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6