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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076084
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/04 20060101AFI20240529BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240529BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240529BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240529BHJP
【FI】
B60L3/04 D
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187468
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
(72)【発明者】
【氏名】景浦 宏一
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】原 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 大輔
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA20
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC29
5H125CD04
5H125DD08
5H125EE23
5H125EE25
5H125EE26
5H125EE27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バッテリ回路遮断の確実性を向上した作業車両を提供する。
【解決手段】走行用電動機10と作業機用電動機を備えた作業車両において、走行用電動機10及び作業機用電動機を駆動する高圧バッテリ11と車両コントローラに給電する低圧バッテリ13を備え、高圧バッテリ11又は低圧バッテリ13のマイナス側端子11b,13b側にバッテリ回路遮断装置30を設け、走行車体に設けた衝撃センサの検知に基づいてバッテリ回路遮断装置30を作動する構成とした。そしてこのバッテリ回路遮断装置30は、高圧バッテリ11の本体上面のマイナス側端子11bに接続される配線31途中に、ガスや空気の導入によって膨張するバッグ32を設け、このバッグ32が膨張するとマイナス側端子11bを高圧バッテリ11から外して回路遮断する構成とした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)を走行する走行用電動機(10)と走行車体(1)に装着する作業機(4)を駆動する作業機用電動機(16)を備えた作業車両において、走行用電動機(10)及び作業機用電動機(16)を駆動する高圧バッテリ(11)と、車両コントローラ(20)に給電する低圧バッテリ(13)を備え、高圧バッテリ(11)又は低圧バッテリ(13)のマイナス側端子(11b,13b)側にバッテリ回路遮断装置(30)を設け、走行車体(1)に設けた衝撃センサ(34)の検知に基づいてバッテリ回路遮断装置(30)を作動する構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
バッテリ回路遮断装置(30)は、高圧バッテリ(11)の本体上面のマイナス側端子(11b)に接続される配線(31)途中に、ガスや空気の導入によって膨張するバッグ(32)を設け、このバッグ(32)が膨張するとマイナス側端子(11b)を高圧バッテリ(11)から外して回路遮断する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
高圧バッテリ(11)の上部に対向して冷却スプレー装置(37)を配置し、バッテリ監視装置(24)からの異常高温情報に基づいて、冷却スプレー作動装置を作動する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
高圧バッテリ(11)の上部に対向して消火装置(38)を配置し、バッテリ監視装置(24)からの異常高温情報に基づいて、消火装置作動装置を作動する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
高圧バッテリ(11)及び低圧バッテリ(13)のバッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧を演算し、作業機用電動機(16)への給電を遮断して作業機(4)を停止し、走行用電動機(10)のみに給電した走行が可能か否か判定し、走行可能であるときは走行を継続するよう構成した請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
継続走行中に高圧バッテリ(11)及び低圧バッテリ(13)のバッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧の時間変化量を演算し予め設定した所定値を越えて変化する場合には、走行用電動機(10)への給電を遮断し走行停止する構成とした請求項5に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式の作業車両の安全に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両において、車両衝突事故発生時の加速度を加速度センサで検出し、遮断器が動作してバッテリを断路させ、バッテリと制御装置間を切ることにより、バッテリから制御装置を介して電動機に電流が流れなくなり、車両を停止する構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-236602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、車両衝突事故発生時に車両の暴走を防止することで安全であるが、芝刈作業機や農用トラクタのような作業車両は比較的低速で走行するため、衝突が発生しても検知できない場合がある。
【0005】
また作業車両には、走行用電動機や作業機用電動機の駆動を司る高圧バッテリと、制御コントローラ及び灯火類への給電を主とした低圧バッテリを装備しており、高圧バッテリから低圧バッテリに充電しており、作動タイミングによっては低圧回路及び充電回路の遮断ができない場合もある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、バッテリ回路遮断の確実性を向上した作業車両を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、走行車体1を走行する走行用電動機10と走行車体1に装着する作業機4を駆動する作業機用電動機16を備えた作業車両において、走行用電動機10及び作業機用電動機16を駆動する高圧バッテリ11と車両コントローラ20に給電する低圧バッテリ13を備え、高圧バッテリ11又は低圧バッテリ13のマイナス側端子11b,13b側にバッテリ回路遮断装置30を設け、走行車体1に設けた衝撃センサ34の検知に基づいてバッテリ回路遮断装置30を作動する構成とした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、バッテリ回路遮断装置30は、高圧バッテリ11の本体上面のマイナス側端子11bに接続される配線31途中に、ガスや空気の導入によって膨張するバッグ32を設け、このバッグ32が膨張するとマイナス側端子11bを高圧バッテリ11から外して回路遮断する構成とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、高圧バッテリ11の上部に対向して冷却スプレー装置37を配置し、バッテリ監視装置24からの異常高温情報に基づいて、冷却スプレー作動装置を作動する構成とした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、高圧バッテリ11の上部に対向して消火装置38を配置し、バッテリ監視装置24からの異常高温情報に基づいて、消火装置作動装置を作動する構成とした。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、高圧バッテリ11及び低圧バッテリ13のバッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧を演算し、作業機用電動機16への給電を遮断して作業機4を停止し、走行用電動機10のみに給電した走行が可能か否か判定し、走行可能であるときは走行を継続するよう構成した。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、継続走行中に高圧バッテリ11及び低圧バッテリ13のバッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧の時間変化量を演算し予め設定した所定値を越えて変化する場合には、走行用電動機10への給電を遮断し走行停止する構成とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1又は請求項2に記載の発明によれば、衝撃センサ34の検知によって、高圧バッテリ11のマイナス側端子11bを外すことによる回路遮断できるので、安全を確保できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、高圧バッテリ11本体に揮発性の高いガスを吹き付け、その気化熱によって高圧バッテリ11の温度を奪い低温化に寄与するものである。また、請求項4に記載の発明によると、バッテリ11発火を来たしてもこれを消火し火災を未然に防止できる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、衝撃センサ34作動後の高圧バッテリ11、低圧バッテリ13の変化状態を確認することで走行可能か判断することができる。圃場の中央で事故が発生の場合等、圃場から脱出できるかを判断できる。
【0016】
請求項6に記載の発明によると、請求項5に記載の効果に加え、継続走行中にバッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧の時間変化量が予め設定した所定値を越えて変化すると走行停止するので、バッテリ11,13への過負荷を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態にかかる作業車両の左側面図である。
図2】ボンネットカバーを開放姿勢にした同上作業車両の左側面図である。
図3】外装を省略した同上作業車両の斜視図である。
図4図3の一部拡大斜視図である。
図5】同上作業車両の走行車体の下方部から見た斜視図である。
図6】同上作業車両のブロック図である。
図7】同上作業車両の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、作業車両は、走行車体1と、走行車体1の前部に左右一対の前輪2が設けられ、走行車体1の後部に左右一対の後輪3が設けられ、走行車体1の下側における前輪2と後輪3の間に芝等を刈取る作業機4が設けられた乗用芝刈り機としている。また、走行車体1の上側の前部に収容部5が設けられ、収容部5の後側には操縦者が搭乗する操縦部6が設けられ、操縦部6の後側には操縦者を保護する安全フレーム(ロプス)8が設けられ、安全フレーム8の下部には作業機4で刈取られた芝等を貯留する集草容器7が設けられている。
【0019】
図2図5に示すように、収容部5には、後輪3を駆動する走行用電動機10等に供給する電力を蓄電する高圧バッテリ11が設けられ、高圧バッテリ11はボンネットカバー12で覆われている。
【0020】
併設された前記走行用電動機10と高圧バッテリ11の前部には低圧バッテリ13を配設している。この低圧バッテリ13は、操縦部メーターや前照灯等の各種ランプ類、制御部等に給電しうる構成である。この低圧バッテリ13もボンネットカバー12で覆うことができる。
【0021】
前記走行用電動機10の出力回転は、伝動ベルト14等を経由して車体1中央に配置する静油圧無段変速装置(以下、HST)15を駆動すべく構成している。そしてHST15は公知の構成で油圧ポンプの圧油を受けた油圧モータ出力をもって適宜に変速され後輪3及び前輪2を回転駆動する構成である。
【0022】
また、HST15のポンプ軸は後方に延長されエアコンプレッサ17を駆動できる。
【0023】
さらに前記作業機4を駆動する作業機用電動機16は、車体1後下部の適所に配設されており、この作業機用電動機16と作業機4との間に連結軸を介して駆動力が伝達される構成としている。
【0024】
安全フレーム8は、上下方向に延在する左支柱部8Lと、上下方向に延在する右支柱部8Rと、左支柱部8Lと右支柱部8Rの上部を連結する逆U字形状の連結部8Aから形成されている。
【0025】
次いで、高圧バッテリ11(例えば48V)から供給される高圧電圧によって走行用電動機10及び作業機用電動機16を駆動する制御部について説明する。図 に示すように、走行用電動機10は、相互にCAN(コントローラエリアネットワーク)通信で情報授受が可能に接続された車両コントローラ20と走行用ドライバーユニット21を通じて制御される。一方作業機用電動機16は相互にCAN通信で情報授受が可能に接続された車両コントローラ20と作業機用ドライバーユニット22を通じて制御される。なお、走行用電動機10や作業機用電動機16は、これら電動機10,16がOFFに切り替わると、走行する車体1の慣性力や作業機刈刃の慣性力で回生ブレーキが作動し、回生ブレーキ作動時には高圧バッテリ11を充電する充電装置としての機能を有する。
【0026】
前記車両コントローラ20には車載充電器23、高圧バッテリ11の温度、充電状態、電圧保護、各セル短絡状態を監視するバッテリ監視装置(BMS)24が接続される。そして、この車両コントローラ20は、低圧バッテリ(例えば12V)13に接続されて給電される構成であり、この低圧バッテリ13には、前記高圧バッテリ11からの高圧がDC-DCコンバータ25を経由して降圧されて給電され、充電できる構成である。
【0027】
なお、前記高圧バッテリ11には、車両コントローラ20の出力側に配設する車載充電器23用リレーやバッテリ監視装置24用のリレー(共に図示せず)等のリレー接点を内蔵しており、車両コントローラ20の指令信号に基づいてリレー接点をON,OFFできるよう構成している。
【0028】
次いで、バッテリ回路遮断装置30について説明する。バッテリ回路遮断装置30は、高圧バッテリ11に備えたプラス側端子11aとマイナス側端子11bのうち、マイナス側端子11bに接続する配線31側に設けられるもので、車体1が衝撃を受けた時等の非常時にマイナス側配線31を物理的に遮断することにより、走行用電動機10や作業機用電動機16を強制的に停止できる構成である。具体的には、高圧バッテリ11の本体上面のマイナス側端子11bに接続される配線31途中に、ガスや空気の導入によって膨張するバッグ32を一対に設け、これらバッグ32に固定したブラケット部材33にて前記マイナス側端子11bと配線31端部を保持している。そして底面を高圧バッテリ31本体上面に固定した前記バッグ32が膨張すると、ブラケット部材33を押し上げマイナス側端子11bを高圧バッテリ11から外して回路遮断できる構成である。また、バッグ32の膨張指令は、ボンネット12内面に設けた衝撃センサ34の衝撃検知に基づく構成であり、図外ガス注入手段をONすることによりバッグ32は膨張し得る構成である。
【0029】
ここで、バッグ32としては、事故などで強い衝撃が加わった際に作動して瞬間的に膨らむ自動車のエアバッグシステムを応用してもよい。すなわち、センサが強い衝撃を感知すると、ガス発生装置のスイッチが入り自動的に窒素ガスを送り込んで瞬時に空気が送り込まれてバッグ32を膨らませる構成である。
【0030】
衝撃センサ34の検知によって、高圧バッテリ11のマイナス側端子11bを外すことによる回路遮断できるので、安全を確保できる。特に、高圧バッテリ11に内蔵するリレー接点の遮断構成ではこのリレー接点溶着等による不測の事態、例えば火災等が生じる恐れがあるが、これを解消できる。
【0031】
上記実施例では、マイナス側端子11bを高圧バッテリ11本体から引き抜いて回路遮断をはかる構成としたが、配線31途中に外力で破損する構成を付加しておき、バッグ32の膨張に代替して当該構成に基づく破損によって回路遮断する構成でもよい。
【0032】
前記マイナス側端子11bに接続する配線31に併設してプラス側配線35を設けている。
【0033】
前記バッテリ回路遮断装置30について、上記実施例では高圧バッテリ11側に設けたが、低圧バッテリ13側に設けてもよい。この場合は、衝撃センサ34によってバッグ32を作動する構成に加え、低圧バッテリ13から車両コントローラ20へのバッテリ回路の電圧状況を監視し、異常が検出されると、バッテリ回路遮断装置30が作動するよう構成する。このように構成すると、衝撃センサ34の検知によりバッテリ遮断装置30が作動して低圧バッテリ13のマイナス側端子13bを引き抜いて回路を遮断でき、車両コントローラ20による各種制御を遮断して車体1停止をすることができる。バッテリ回路遮断装置30でマイナス側端子13bを外すため、瞬間に高圧電流が流れようとするが配線の発火には至らない。この点従来技術のような遮断器では、瞬間に高圧電流が流れて遮断器の接点が溶着し、回路遮断ができない場合があるが、上記のように構成することでこのような欠点を解消できる。
【0034】
前記バッテリ回路遮断装置30について、上記実施例ではバッグ32の膨張作用を用いたが、バッグ32に代替してコイルばねを用いてもよい。コイル圧縮側に付勢しておき、衝撃センサ34検知に基づいてコイル圧縮側規制具を規制解除側に移行させる構成とすればよい。
【0035】
ところで、作業車両では低速で作業をしているため衝撃センサ34で検出できない衝突事故もある。にもかかわらずエンジン型式との共用も関係して低圧バッテリ13を車体1前方に配備する構成が多く、衝突の場合は軽度といえども低圧バッテリ13損傷の可能性が高い。また、低圧バッテリ13は補機用であり、車両コントローラ20の電源を給電しており、有事の際は、安全制御を作動させることができない場合がある。さらに低速走行の車体1ではバッテリ損傷による火災事故を防止できない場合がある。
【0036】
上記のような事情に鑑みて、低圧バッテリ13回路中に電圧検出手段36を配設し、異常電圧検出に基づいて前記バッテリ回路遮断装置30を作動する構成とする。このように構成することにより、以下のような効果がある。すなわち、仮に衝撃センサ34が衝突を検出できない場合であっても、低圧バッテリ回路に異常が発生すると、電圧検出手段36の電圧異常検出により低圧バッテリ13の回路を遮断する。低圧バッテリ回路の遮断で、高圧バッテリ11から低圧バッテリ13への充電回路も遮断されるため、発火とはならない。従来では充電回路は、つながったままであり、異常高圧となった場合に配線が発火する場合があるが、このような欠点を解消できる。
【0037】
次いで、図5において、高圧バッテリ11の高温異常対応について説明する。ボンネットカバー12の内側で高圧バッテリ11の上部に対向して冷却スプレー装置37を配置し、バッテリ監視装置24からの異常高温情報に基づいて、冷却スプレー作動装置をONし、高圧バッテリ11本体に揮発性の高いガスを吹き付け、その気化熱によって高圧バッテリ11の温度を奪い低温化に寄与するものである。
【0038】
なお、冷却スプレー装置37に加えて、又は代替して消火装置38を設ける構成としてもよい。消火装置38はスプレー式とし、噴射しても感電の恐れのない粉末消火剤を用いる。
【0039】
次いで、図7のフローチャートに基づき、前記衝撃センサ34による検知後の対応制御について説明する。車体1を走行しながら作業機4による作業を開始すると、制御部としての車両コントローラ20は定期的に衝撃センサ34の検知の有無をチェックし(S101)、センサ作動の場合は作業機用電動機16に停止信号を出力し作業機4の回転を停止する(S102)。そして各電気回路、例えばバッテリ監視装置24からの検知信号を入力し、制御部では高圧バッテリ11及び低圧バッテリ13のバッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧を演算し(S103~S106)、作業機4の停止のまま走行運転のみで走行可能か否か判定し(S107)、走行可能であるときは走行可能時間の算出・表示を行い(S108)、走行を継続する。S108でバッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧のいずれかが所定範囲外と判定されると、運転停止すなわち走行用電動機10への出力が停止される(S109)。さらに制御部は、所定時間ごとに上記バッテリ残量、バッテリ温度、バッテリ電圧を確認しつつ変化量が所定範囲内にあるか否か判定する(S110)。所定範囲内にあれば走行を継続するが(S111)、所定範囲外になると運転停止する(S109)。S111の運転継続の場合、バッテリ電圧を監視し必要な充電を行いながら(S112)、目的に達すると(S113)、運転停止する。
【0040】
なお、前記S101で衝撃センサ34検知なしの場合は終了まで作業継続する(S114)。
【0041】
このように構成すると、衝撃センサ34作動後の高圧バッテリ11、低圧バッテリ13の変化状態を確認することで走行可能か判断することができる。圃場の中央で事故が発生の場合等、圃場から脱出できるかを判断できる。
【0042】
なお、衝撃センサ34による検知後の対応制御について、以下の構成を付加することで一層有効である。すなわち、作業車両にGNSS受信システム40を導入し、加速度を検出することにより衝撃センサ34の代用をすることができる。衝撃センサ34の検知あるいはGNSSによる加速度検知に基づいてバッテリ11,13のマイナス側端子を取り外したのち、マイナス側端子11bを絶縁体で保護する構成とする。
【0043】
また、高圧バッテリ11残量が少なくなり、走行用電動機10のみによる倉庫等帰還までのバッテリ必要残量を演算し、作業計画を立案する。このため作業機用電動機16停止状態下での高圧バッテリ11残量による走行可能距離を演算しパネル表示する。この走行用電動機10のみによる走行の場合には、最も効率良い変速状態に変速装置15を自動設定し、所定速度以下のみの走行を許容する構成とする。また、前輪2と後輪3の双方を駆動する四駆状態から後輪3のみの二駆状態に自動切換え制御する。なお上記走行可能距離を演算する場合には、高圧バッテリ11残量と電費に応じた標準値を設け、作業機用電動機16がOFFで走行した距離とその時の電力消費量によって補正する。
【符号の説明】
【0044】
1 車体
4 作業機
10 走行用電動機
11 高圧バッテリ
11b マイナス側端子
13 低圧バッテリ
13b マイナス側端子
16 作業機用電動機
20 車両コントローラ
30 バッテリ回路遮断装置
31 配線
32 バッグ
34 衝撃センサ
37 冷却スプレー装置
38 消火装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7