(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076101
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】3層ガラス組立体
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20240529BHJP
E06B 3/663 20060101ALI20240529BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20240529BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
E06B3/663 K
C03C27/06 101H
B32B17/06
B32B3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187498
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】300088186
【氏名又は名称】株式会社エクセルシャノン
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 和規
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 梓
【テーマコード(参考)】
2E016
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
2E016BA09
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC03
4F100AB01E
4F100AB04E
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AG00C
4F100AK01E
4F100AK03E
4F100AK09
4F100AK15E
4F100AK51
4F100AK52
4F100AK57
4F100BA05
4F100DC21E
4F100DC22E
4F100GB07
4F100JD11D
4F100JD11E
4F100JJ07
4G061AA04
4G061AA28
4G061BA01
4G061CB02
4G061CB14
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD22
4G061CD24
4G061DA26
(57)【要約】
【課題】 製作コストが充分に抑制されているにも拘らず、室外側からの火炎及び/又は室内側からの火炎に対して充分な防火特性を備えている3層ガラス組立体を提供する。
【解決手段】 3層ガラス組立体は、通常ガラスと、通常ガラスの片側に所定間隔をおいて配設された片側非耐熱ガラスと、通常ガラスの他側に所定間隔をおいて配設された他側非耐熱ガラスとから構成されている。片側非耐熱ガラスの通常ガラスに対面する内面及び/又は他側非耐熱ガラスの通常ガラスに対面する内面には低放射膜が被覆されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常ガラスと、該通常ガラスの片側に所定間隔をおいて配設された片側非耐熱ガラスと、該通常ガラスの他側に所定間隔をおいて配設された他側非耐熱ガラスとから構成され、該片側非耐熱ガラスの該通常ガラスに対面する内面及び/又は該他側非耐熱ガラスの該通常ガラスに対面する内面には低放射膜が被覆されている、ことを特徴とする3層ガラス組立体。
【請求項2】
該低放射膜の垂直放射率は0.15以下である、請求項1記載の3層ガラス組立体。
【請求項3】
該片側非耐熱ガラス及び/又は該他側非耐熱ガラスは、JIS R3222で規定されている表面圧縮応力が90MPa以上である又はJIS R3206で規定されているガラスの破片状態が50×50mmの正方形領域内の破片数が200個以上である強化ガラスである、請求項1又は2記載の3層ガラス組立体。
【請求項4】
該通常ガラスの周縁部と該片側非耐熱ガラスの周縁部との間及び該通常ガラスの周縁部と該他側非耐熱ガラスの周縁部との間には、夫々、スペーサ部材が配設されており、該スペーサ部材の各々はその内周面及び両側面を規定している金属板製補強片と合成樹脂製部材とを含んでいる、請求項1記載の3層ガラス組立体。
【請求項5】
該金属板製補強片は0.1mm乃至0.2mmの厚さを有する、請求項4記載の3層ガラス組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3層ガラス組立体、更に詳細には建造物の各種窓或いは各種扉の如き障子に装備される3層ガラス組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1乃至3には、障子に装備される3層ガラス組立体が開示されている。下記特許文献1に開示されている3層ガラス組立体は、中央に位置する非耐熱ガラスと、この非耐熱ガラスの片側に所定間隔をおいて配設された耐熱ガラスと、非耐熱ガラスの他側に所定間隔をおいて配設された非耐熱ガラスとから構成されている。耐熱ガラスの外側面(中央に位置する非耐熱ガラスに対面する面の反対側面)には、低放射膜(Low-E膜)が被覆されている。下記特許文献2に開示されている3層ガラス組立体は、中央に位置する非耐熱ガラスと、この非耐熱ガラスの片側に所定間隔をおいて配設された耐熱ガラスと、中央に位置する非耐熱ガラスの他側に所定間隔をおいて配設された非耐熱ガラスとから構成されている。中央に位置する非耐熱ガラスの他側に配設されている非耐熱ガラスの内面(中央に位置する非耐熱ガラスに対面する面)には低放射膜が被覆されている。下記特許文献3に開示されている3層ガラス組立体は、中央に位置するソーダライムガラスと、このソーダライムガラスの片側に所定間隔をおいて配設されたソーダライムガラスと、中央に位置するソーダライムガラスの他側に所定間隔をおいて配設されたソーダライムガラスから構成されている。中央に位置するソーダライムガラスの片側面、中央に位置するソーダライムガラスの片側に位置するソーダライムガラスの内面(中央に位置するソーダライムガラスに対面する面)及び中央に位置するソーダライムガラスの他側に位置するソーダライムガラスの内面(中央に位置するソーダライムガラスに対面する面)には夫々低放射膜が被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-97901号公報
【特許文献2】特開2014-133675号公報
【特許文献3】特開2020-169114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上述したとおりの従来の3層ガラス組立体には、高価な耐熱ガラスを含んでいる故に製作コストが高価である(上記特許文献1及び2に開示されている3層ガラス組立体)、ガラスの露呈された外面に低放射膜が被覆されている故に低放射膜が短期間のうちに損傷されてしまう虞がある(上記特許文献1に開示されている3層ガラス組立体)、強化ガラスが使用されていないので防犯特性が低い(特許文献1乃至3に開示されている3層ガラス組立体)、防火特性が低い(特許文献1及び3に記載されている3層ガラス組立体)、室外側からの火炎に対しては防火特性を有するが室内側からの火炎に対しては防火特性が低い(特許文献2に開示されている3層ガラス組立体)、という解決すべき問題が存在する。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、製作コストが充分に抑制されているにも拘らず、室外側からの火炎及び/又は室内側からの火炎に対して充分な防火特性を備えている、新規且つ改良された3層ガラス組立体を提供することである。
【0006】
本発明の他の技術的課題は、上記主たる技術的課題の達成に加えて充分な防犯特性を備えている、新規且つ改良された3層ガラス組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討及び実験を重ねた結果、耐熱ガラスを使用することなく、中央に位置するガラスを通常ガラスとし、両側に位置するガラスにおける中央に位置するガラスに対面する内面に低放射膜を被覆することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成することができる3層ガラス組立体として、通常ガラスと、該通常ガラスの片側に所定間隔をおいて配設された片側非耐熱ガラスと、該通常ガラスの他側に所定間隔をおいて配設された他側非耐熱ガラスとから構成され、該片側非耐熱ガラスの該通常ガラスに対面する内面及び/又は該他側非耐熱ガラスの該通常ガラスに対面する内面には低放射膜が被覆されている、ことを特徴とする3層ガラス組立体が提供される。
語句「通常ガラス」は、一般にフロートガラスと称されているガラスの如く比較的安価な非耐熱且つ非強化ガラスを意味する。
【0009】
上記他の技術的課題は、該片側非耐熱ガラス及び/又は該他側非耐熱ガラスは、JISR3222で規定される表面圧縮応力が90MPa以上である又はJIS R3206で規定されているガラスの破片状態が50×50mmの正方形領域内の破片数が200個以上である強化ガラスである形態によって達成される。
【0010】
好ましくは、該低放射膜の垂直放射率は0.15以下である。該通常ガラスの周縁部と該片側非耐熱ガラスの周縁部との間及び該通常ガラスの周縁部と該他側非耐熱ガラスの周縁部との間には、夫々、スペーサ部材が配設されており、該スペーサ部材の各々はその内周面及び両側面を規定している金属板製補強片と合成樹脂製部材とを含んでいる。該金属板製補強片は0.1mm乃至0.2mmの厚さを有するのが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の3層ガラス組立体においては、耐熱ガラスが使用されていないので製作コストを抑制することができる。中央に通常ガラスを配設し、両側に位置するガラスにおける中央に位置する通常ガラスに対面する内面に低放射膜を被覆している形態においては、後述する実験例からも明確に理解されるとおり、外側からの火炎及び内側からの火炎の双方に対して充分な防火特性を有する。
【0012】
該片側非耐熱ガラス及び該他側非耐熱ガラスはJIS R3222で規定される表面圧縮応力が90MPa以上である又はJIS R3206で規定されているガラスの破片状態が50×50mmの正方形領域内の破片数が200個以上である強化ガラスである形態によれば、充分な防犯特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従って構成された3層ガラス組立体の好適実施形態を備えた窓を図示する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された3層ガラス組立体の好適実施形態を備えた窓を図示する添付図面を参照して、更に詳述する。
【0015】
図1を参照して説明すると、図示の窓は、全体を番号2で示す窓框と全体を番号4で示す3層ガラス組立体とから構成されている。塩化ビニル樹脂の如き適宜の合成樹脂から形成されているのが好都合である窓框2は、全体として矩形枠形状であり、上框6、下框8及び縦框(図示していない)を含み、上框6及び下框8の両端部は夫々縦框の上端部及び下端部に連結されている。3層ガラス組立体4は窓框2に囲繞されて保持されている。
図1においては、3層ガラス組立体4の左側が室外であり、ガラス組立体4の右側が室内である。窓框2自体及び窓框2による3層ガラス組立体4の保持は、当業者には周知の形態でよく、それ故にこれらの詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0016】
3層ガラス組立体4は、中央に配設された通常ガラス10と、この通常ガラス10の片側(
図1において左側)に所定間隔をおいて配設された片側非耐熱ガラス12と、中央に配設された通常ガラス10の他側(
図1において右側)に配設された他側非耐熱ガラス14とから構成されている。通常ガラス10は、通常の比較的安価な非耐熱且つ非強化ガラス、例えばフロートガラス製法によって形成される一般にフロートガラスと称されるガラスである。片側非耐熱ガラス12及び他側非耐熱ガラス14は、必ずしもそれに限定されるものではないが、通常ガラスに比べて高強度を有するガラス、特にJIS R3222で規定されている表面圧縮応力が90MPa以上である又はJIS R3206で規定されているガラスの破片状態が50×50mmの正方形領域内の破片数が200個以上である強化ガラスであるのが好ましい。片側非耐熱ガラス12と他側非耐熱ガラス14との双方が強化ガラスであるのが好ましいが、所望ならばいずれか一方のみを強化ガラスとすることもできる。
【0017】
片側非耐熱ガラス12の内面(即ち、通常ガラス10に対向する面で、
図1において右側面)には低放射膜16が被覆されている。同様に、他側非耐熱ガラス14の内面(即ち、通常ガラス10に対向する面で、
図1において左側面)にも低放射膜18が被覆されている。低放射膜16及び18は、夫々、片側非耐熱ガラス12の内面及び他側非耐熱ガラス14の内面全体に渡って被覆することもできるが、図示の実施形態においては後述する一次シールよりも内側の領域に被覆されており、片側非耐熱ガラス12の内面及び他側非耐熱ガラス14の内面における周縁領域には被覆されていない。片側非耐熱ガラス12の内面及び他側非耐熱ガラス14の内面の双方に低放射膜16及び18が被覆されているのが好ましいが、所望ならばいずれか一方の内面のみに低放射膜を被覆する。低放射膜16及び18は垂直放射率が0.15以下であるのが好適である。垂直放射率が小さい程、火炎を反射する度合いが高くなり、ガラス中央部の温度上昇が抑制されてガラス周縁部との温度差が低減され、所謂熱割れを可及的に回避することができる。
【0018】
図1を参照して説明を続けると、中央に配設された通常ガラス10の周縁部と片側非耐熱ガラス12の周縁部との間及び中央に配設された通常ガラス10の周縁部と他側非耐熱ガラス14の周縁部との間には、夫々、スペーサ部材20及び22、一次シール材24及び26並びに二次シール材28及び30が配設されている。更に詳述すると、図示の実施形態におけるスペーサ部材20及び22の各々は、合成樹脂製部材20a及び22a並びに金属板製補強片20b及び22bを含んでいる。合成樹脂製部材20a及び22aは塩化ビニル樹脂又はポリオレフィン樹脂の如き適宜の合成樹脂から形成することができる。金属板製補強片20b及び22bは、ステンレス鋼板の如き適宜の金属板から形成されており、0.1乃至0.2mm程度の厚さを有するのが好適である。合成樹脂製部材20a及び22aの各々は、幅方向(
図1において左右方向)に延在する外周壁部とかかる外周壁部の両側から周方向内側に突出する両側脚部とを有する。金属板製補強片20b及び22b各々は、スペーサ部材20及び22の内周面を規定する内周壁部とこの内周壁部から周方向外側に突出しスペーサ部材20及び22の両側面を規定している両側脚部とを有する。金属板製補強片20b及び22bの両側脚部を合成樹脂製部材20a及び22aの両脚部に被嵌し、金属板製補強片20b及び22bの両側脚部の折り曲げ先端部を合成樹脂製部材20a及び22aの両側脚部の基部に係止することによって、合成樹脂製部材20a及び22aと金属板製補強片20b及び22bとが組み合わされている。合成樹脂製部材20a及び22aと金属板製補強片20b及び22bによって規定される空間内にはシリカゲルの如く乾燥剤(図示していない)が充填されているのが好都合である。スペーサ部材20及び22は、合成樹脂製部材20a及び22aを含んでいる故に所要の断熱性を備え、金属板製補強片20b及び22bを含んでいる故に所用の強度を有する。
【0019】
スペーサ部材20の金属板製補強片20bの両側脚部の各々と通常ガラス10との間及び片側非耐熱ガラス12との間には、接着性及びシール性に優れたポリイソブチレン又はウレタン製であるのが望ましい一次シール24が介在されている。同様に、スペーサ部材22の金属板製補強片22bの両側脚部の各々と通常ガラス10との間及び他側非耐熱ガラス14との間にも、接着性及びシール性に優れたポリイソブチレン又はウレタン製であるのが望ましい一次シール26が介在されている。更に、スペーサ部材20の外周側にはポリサルファイド又はシリコーン製であるのが望ましい二次シール28が充填されている。同様に、スペーサ部材22の外周側にもポリサルファイド又はシリコーン製であるのが望ましい二次シール30が充填されている。
【0020】
図示の実施形態においては、片側非耐熱ガラス12と他側非耐熱ガラスの厚さは実質上同一であり、中央に位置する通常ガラス10と片側非低熱ガラス12との間隔と中央に位置する通常ガラス10と他側非耐熱ガラス14との間隔とは実質上で同一ある。そしてまた、スペーサ部材20、一次シール24及び二次シール28は、夫々、スペーサ部材22、一次シール26及び二次シール30と実質上同一である。従って、図示の3層ガラス組立体4は、通常ガラス10の厚さ方向中心を
図1において紙面に垂直な方向に延在する中心面に関して面対象形状である。
【0021】
上述したとおりの3層ガラス組立体4を備えた窓は所要防火特性を備えている。室外側(
図1において左側)が火炎に晒された場合、片側非耐熱ガラス12は耐熱ガラスではないこと及び片側非耐熱ガラス12の外側面(
図1において左側面)には低放射膜が被覆されていないこと等に起因して、片側非耐熱ガラス12は比較的短時間のうちに破損されてしまう。片側非耐熱ガラス12が強化ガラスである場合には片側非耐熱ガラス12は粉砕破裂され小さい破片が生成されるが、通常ガラス10が所謂バリアとして機能し、小さい破片が他側非耐熱ガラス14の内面に被覆されている低放射膜18に干渉してこれを損傷するが阻止される。然るに、本発明者等の経験によれば、片側非耐熱ガラス12が比較的短時間のうちに破損されることなく比較的長時間に渡って維持されると、片側非耐熱ガラス12と通常ガラス10との間の気体が過剰に加熱されて膨張し、これに起因して片側非耐熱ガラス12の破損に先立って通常ガラス10が破損されてしまう傾向がある。そして、片側非耐熱ガラス12の破損に先立って通常ガラス10が破損されてしまうと、後に片側非耐熱ガラス12が破損された際に通常ガラス10が所謂バリアとして機能せず、片側非耐熱ガラス12の破損によって生成された小さい破片が他側非耐熱ガラス14の内面に被覆されている低放射膜18に干渉してこれを損傷してしまう虞があり、そしてまた未だ破損されることなく維持されている片側非耐熱ガラス12と他側非耐熱ガラス14との間の閉じられた比較的狭い空間内で破損された通常ガラス10の破片によっても他側非耐熱ガラス14の内面に被覆されている低放射膜18が損傷されてしまう虞もある。それ故に、片側非耐熱ガラス12は比較的短時間のうちに破損されてしまうことが却って好都合である。中央に位置する通常ガラス10は、当業者には周知の如く、火炎に晒された場合には、その中央部と周縁部との温度差に起因する熱膨張率の相違によって破損されるが、片側非耐熱ガラス12が破損された後に火炎に直接晒されても、ある時間は破損されることなく維持される。通常ガラス10の破損はその中央部と周縁部との温度差に起因する熱膨張率の相違による所謂熱割れであり、強化ガラスの如く小さな破片に破断(粉砕破裂)されることはなく、片側非耐熱ガラス12の破断の後の通常ガラス10の破損によって他側非耐熱ガラス14の内面に被覆されている低放射膜18が損傷されてしまうことは充分に回避される。通常ガラス10が破損された後においては、他側非耐熱ガラス14が火炎に晒されることになるが、他側非耐熱ガラス14の内面、即ち火炎に晒される面には低放射膜18が被覆されている故に、他側非耐熱ガラス14は相当な時間に渡って破損されることなく維持される。3層ガラス組立体4の室内側(
図1において右側)が火炎に晒された場合の挙動は、3層ガラス組立体4の室外側が火炎に晒された場合の上述した挙動と実質上同一である。かような次第であるので、本発明に従って構成された3層ガラス組立体4によれば、室外側の火炎及び室内側火炎の双方に対して、通常の建造物に望まれる充分な防火特性を備える。更に、スペーサ部材20及び22がその内周面と共に両側面を規定している金属板製補強片20b及び22bを含んでいる実施形態においては、金属板製補強片20b及び22bによって片側非耐熱ガラス12と通常ガラス10との間隔及び通常ガラス10と他側非耐熱ガラス14との間が可及的に維持され、これによって防火特性が助長される。
【0022】
また、片側非耐熱ガラス12及び他側非耐熱ガラス14が強化ガラスである場合には、室外側及び室内側において充分な物理的強度が確保され、従って充分な防犯特性が達成される。
【0023】
防火実験例1
株式会社エクセルルシャノンから商品名「ドレーキップ窓」として販売されている内開き内倒し窓の窓框に、
図1に図示するとおりの3層ガラス組立体を装着した。窓框の幅は1185mmで高さは1189mmであった。3層ガラス組立体の幅は955mmで高さは964mmであった。中央に位置する通常ガラスは厚さ3mmの透明フロートガラスで、片側非耐熱ガラス及び他側非耐熱ガラスは共に、JIS R3222で規定されている表面圧縮応力が90MPa以上で且つJIS R3206で規定されているガラスの破片状態が50×50mmの正方形領域内の破片数が200個以上である厚さ4mmの強化ガラスで、両側の非耐熱ガラスの内面には垂直放射率が0.15以下の低放射膜が被覆されていた。中央に位置する通常ガラスと片側非耐熱ガラスとの間隔及び中央に位置する通常ガラスと他側非耐熱ガラスとの間隔は共に15mmであった。
【0024】
上記のとおりの窓について、建築基準法第2条第九号の二ロ及び同法施工玲第109条の2の規定に沿って、室外側から火炎を作用させて防火試験を行った。その結果、試験開始から約3分27秒後に片側(室外側)非耐熱ガラスが破損し、その直後に通常ガラスにひびが発生すると共に局部的な破損によって小片が落下した。しかしながら、20分00秒後においても他側(室内側)非耐熱ガラスは破損されることなく維持され(従って、建築基準法第2条第九号の二ロ及び同法施工玲第109条の2の規定による防火試験に合格)、更に24分00秒経過まで防火試験を継続したが他側非耐熱ガラスは破損されることなく維持された。
【0025】
上記のとおりの防火試験は国土交通大臣に報告され、同大臣から防火試験合格認定書(国住参建第1780号)が供与された。
【0026】
防火実験例2
窓枠の幅は775mmで高さは1189mmであったこと、3層ガラス組立体の幅は545mmで高さは964mmであったこと、及び片側非耐熱ガラス及び他側非耐熱ガラスは共に、JIS R3222で規定されている表面圧縮応力が50MPa程度で且つJIS R3206で規定されているガラスの破片状態が50×50mmの正方形領域内の破片数が40個程度であったことを除き、防火実験例1と同様にして防火試験を行った。その結果、試験開始から約3分59秒後に片側(室外側)非耐熱ガラスが破損し、その直後に通常ガラスにひびが発生すると共に局部的な破損によって小片が落下した。次いで、9分18秒後に他側(室内側)非耐熱ガラスが破損した。
【符号の説明】
【0027】
2:窓框
4:3層ガラス組立体
10:通常ガラス
12:片側非耐熱ガラス
14:他側非耐熱ガラス
16:低放射膜
18:低放射膜
20:スペーサ部材
20a:合成樹脂製部材
20b:金属板製補強片
22:スペーサ部材
22a:合成樹脂製部材
20b:金属板製補強片