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特開2024-76102集中状態評価方法、集中状態評価プログラムおよび集中状態評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076102
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】集中状態評価方法、集中状態評価プログラムおよび集中状態評価装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240529BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B5/02 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187499
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】早石 育央
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA19
4C017AB02
4C017AC16
4C017AC28
4C017BC14
4C017BC21
4C038PP05
4C038PQ06
(57)【要約】
【課題】デスクワーク中のユーザーの集中状態を正確に評価できる方法を提供する。
【解決手段】コンピューターは、ユーザーの基準脈波情報に基づいて安静期間および特定作業期間の各期間における拍動間隔を計測する第1計測ステップと、ユーザーの対象脈波情報に基づいてデスクワーク期間における拍動間隔を計測する第2計測ステップと、第1計測ステップまたは第2計測ステップで計測された拍動間隔に基づき、rMSSDを集中状態の指標値として算出し、安静期間、特定作業期間およびデスクワーク期間の各期間に対応する指標値群を求める指標値算出ステップと、安静期間に対応する指標値群および特定作業期間に対応する指標値群をそれぞれ基準として、デスクワーク期間に対応する指標値群を分析することで、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態を評価する評価ステップと、を実施する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターによりユーザーの集中状態を評価する方法であって、前記コンピューターは、
前記ユーザーに装着された脈波センサーにより検出された脈波を示す情報であって、かつ、前記ユーザーの安静期間および特定作業期間の各期間における脈波を示す情報である基準脈波情報を取得し、前記基準脈波情報に基づいて前記安静期間および前記特定作業期間の各期間における拍動間隔を計測する第1計測ステップと、
前記脈波センサーにより検出された脈波を示す情報であって、かつ、前記ユーザーの任意のデスクワーク期間における脈波を示す情報である対象脈波情報を取得し、前記対象脈波情報に基づいて前記デスクワーク期間における拍動間隔を計測する第2計測ステップと、
前記第1計測ステップまたは前記第2計測ステップで計測された拍動間隔に基づき、所定時間ごとの隣接する拍動間隔の差の2乗の平均値の平方根であるrMSSDを集中状態の指標値として算出し、前記安静期間、前記特定作業期間および前記デスクワーク期間の各期間に対応する指標値群を求める指標値算出ステップと、
前記安静期間に対応する前記指標値群および前記特定作業期間に対応する前記指標値群をそれぞれ基準として、前記デスクワーク期間に対応する前記指標値群を分析することで、前記デスクワーク期間における前記ユーザーの集中状態を評価する評価ステップと、を実施する、集中状態評価方法。
【請求項2】
前記評価ステップは、
前記安静期間の前記指標値群に基づいて安静閾値を決定すると共に、前記特定作業期間の前記指標値群に基づいて作業閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記デスクワーク期間の前記指標値群を、前記安静閾値および前記作業閾値に基づいて、複数の集中レベルに分けるレベル分けステップと、を含む、請求項1に記載の集中状態評価方法。
【請求項3】
前記評価ステップは、
前記レベル分けステップ前、前記デスクワーク期間に対応する前記指標値群の分析範囲を前記作業閾値および前記安静閾値に基づいて複数の区間に分け、前記デスクワーク期間の前記指標値群を、前記区間毎に、当該区間に対応する範囲に正規化する正規化ステップをさらに含む、請求項2に記載の集中状態評価方法。
【請求項4】
前記特定作業期間は、作業の種類が互いに異なる複数の作業期間を含んでおり、
前記閾値決定ステップは、前記作業閾値として、前記作業期間ごとに対応する複数の閾値を決定する、請求項2に記載の集中状態評価方法。
【請求項5】
前記第2計測ステップは、前記対象脈波情報に基づいて前記デスクワーク期間における拍動間隔および脈拍をそれぞれ計測し、
前記評価ステップは、
前記デスクワーク期間において前記脈拍が所定範囲外である脈拍異常期間を特定し、前記レベル分けステップ前、前記デスクワーク期間の前記指標値群から、前記脈拍異常期間に対応する前記指標値を除去するデータ選別ステップをさらに含む、請求項2に記載の集中状態評価方法。
【請求項6】
前記評価ステップは、前記レベル分けステップ後、前記デスクワーク期間における前記複数の集中レベルの経時的な変化を示す結果情報を生成する分析ステップをさらに含む、請求項2に記載の集中状態評価方法。
【請求項7】
前記評価ステップは、前記レベル分けステップ後、前記デスクワーク期間における前記集中レベル毎の時間割合を示す結果情報を生成する分析ステップをさらに含む、請求項2に記載の集中状態評価方法。
【請求項8】
コンピューターにより読み取り実行可能な集中状態評価プログラムであって、
前記コンピューターに、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の集中状態評価方法を実施させる、集中状態評価プログラム。
【請求項9】
ユーザーに装着された脈波センサーにより検出された脈波を示す情報であって、かつ、前記ユーザーの安静期間、特定作業期間および任意のデスクワーク期間の各期間における脈波を示す情報である脈波情報を取得し、前記脈波情報に基づいて前記各期間における拍動間隔を計測する計測部と、
前記計測部により計測された拍動間隔に基づき、所定時間ごとの隣接する拍動間隔の差の2乗の平均値の平方根であるrMSSDを集中状態の指標値として算出し、前記安静期間、前記特定作業期間および前記デスクワーク期間の各期間に対応する指標値群を求める指標値算出部と、
前記安静期間に対応する前記指標値群および前記特定作業期間に対応する前記指標値群をそれぞれ基準として、前記デスクワーク期間に対応する前記指標値群を分析することで、前記デスクワーク期間における前記ユーザーの集中状態を評価する評価部と、を備える、集中状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中状態評価方法、集中状態評価プログラムおよび集中状態評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザーの生体情報を取得し、当該生体情報から当該ユーザーの身体状態を評価する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の方法は、ユーザーの脈拍を検出し、脈拍数や脈波伝播速度に基づいた統計的解析を行うことにより、ユーザーのストレスレベルを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-190025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ユーザーの脈波などの生体情報には個人差があるため、特許文献1に記載のような統計的解析を用いる方法では、個々のユーザーの正確な身体状態を評価することは難しい。
また、近年、デスクワークに関する業務効率化が求められていることを鑑み、本発明者は、ユーザーの身体状態として、デスクワーク中におけるユーザーの集中状態を評価することを検討している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様の集中状態評価方法は、コンピューターによりユーザーの集中状態を評価する方法であって、前記コンピューターは、前記ユーザーに装着された脈波センサーにより検出された脈波を示す情報であって、かつ、前記ユーザーの安静期間および特定作業期間の各期間における脈波を示す情報である基準脈波情報を取得し、前記基準脈波情報に基づいて前記安静期間および前記特定作業期間の各期間における拍動間隔を計測する第1計測ステップと、前記脈波センサーにより検出された脈波を示す情報であって、かつ、前記ユーザーの任意のデスクワーク期間における脈波を示す情報である対象脈波情報を取得し、前記対象脈波情報に基づいて前記デスクワーク期間における拍動間隔を計測する第2計測ステップと、前記第1計測ステップまたは前記第2計測ステップで計測された拍動間隔に基づき、所定時間ごとの隣接する拍動間隔の差の2乗の平均値の平方根であるrMSSDを集中状態の指標値として算出し、前記安静期間、前記特定作業期間および前記デスクワーク期間の各期間に対応する指標値群を求める指標値算出ステップと、前記安静期間に対応する前記指標値群および前記特定作業期間に対応する前記指標値群をそれぞれ基準として、前記デスクワーク期間に対応する前記指標値群を分析することで、前記デスクワーク期間における前記ユーザーの集中状態を評価する評価ステップと、を実施する。
【0006】
上記第1態様の集中状態評価方法において、前記評価ステップは、前記安静期間の前記指標値群に基づいて安静閾値を決定すると共に、前記特定作業期間の前記指標値群に基づいて作業閾値を決定する閾値決定ステップと、前記デスクワーク期間の前記指標値群を、前記安静閾値および前記作業閾値に基づいて、複数の集中レベルに分けるレベル分けステップと、を含むことが好ましい。
【0007】
上記第1態様の集中状態評価方法において、前記評価ステップは、前記レベル分けステップ前、前記デスクワーク期間に対応する前記指標値群の分析範囲を前記作業閾値および前記安静閾値に基づいて複数の区間に分け、前記デスクワーク期間の前記指標値群を、前記区間毎に、当該区間に対応する範囲に正規化する正規化ステップをさらに含むことが好ましい。
【0008】
上記第1態様の集中状態評価方法において、前記特定作業期間は、作業の種類が互いに異なる複数の作業期間を含んでおり、前記閾値決定ステップは、前記作業閾値として、前記作業期間ごとに対応する複数の閾値を決定することが好ましい。
【0009】
上記第1態様の集中状態評価方法において、前記第2計測ステップは、前記対象脈波情報に基づいて前記デスクワーク期間における拍動間隔および脈拍をそれぞれ計測し、前記評価ステップは、前記デスクワーク期間において前記脈拍が所定範囲外である脈拍異常期間を特定し、前記レベル分けステップ前、前記デスクワーク期間の前記指標値群から、前記脈拍異常期間に対応する前記指標値を除去するデータ選別ステップをさらに含むことが好ましい。
【0010】
上記第1態様の集中状態評価方法において、前記評価ステップは、前記レベル分けステップ後、前記デスクワーク期間における前記複数の集中レベルの経時的な変化を示す結果情報を生成する分析ステップをさらに含むことが好ましい。
【0011】
上記第1態様の集中状態評価方法において、前記評価ステップは、前記レベル分けステップ後、前記デスクワーク期間における前記集中レベル毎の時間割合を示す結果情報を生成する分析ステップをさらに含むことが好ましい。
【0012】
本開示の第2態様の集中状態評価プログラムは、コンピューターにより読み取り実行可能な集中状態評価プログラムであって、前記コンピューターに、第1態様の集中状態評価方法を実施させる。
【0013】
本開示の第3態様の集中状態評価装置は、ユーザーに装着された脈波センサーにより検出された脈波を示す情報であって、かつ、前記ユーザーの安静期間、特定作業期間および任意のデスクワーク期間の各期間における脈波を示す情報である脈波情報を取得し、前記脈波情報に基づいて前記各期間における拍動間隔を計測する計測部と、前記計測部により計測された拍動間隔に基づき、所定時間ごとの隣接する拍動間隔の差の2乗の平均値の平方根であるrMSSDを集中状態の指標値として算出し、前記安静期間、前記特定作業期間および前記デスクワーク期間の各期間に対応する指標値群を求める指標値算出部と、前記安静期間に対応する前記指標値群および前記特定作業期間に対応する前記指標値群をそれぞれ基準として、前記デスクワーク期間に対応する前記指標値群を分析することで、前記デスクワーク期間における前記ユーザーの集中状態を評価する評価部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態の集中状態評価装置の概略構成を示すブロック図。
図2】上記実施形態の集中状態評価装置における評価部の構成を示すブロック図。
図3】上記実施形態の集中状態評価方法の第1段階を説明するためのフローチャート。
図4】上記実施形態の集中状態評価方法の第2段階を説明するためのフローチャート。
図5図3のフローチャートの処理で得られる指標値の推移を例示するグラフ。
図6】上記実施形態の集中状態評価方法における正規化ステップを説明するためのグラフ。
図7】デスクワーク期間における集中度の推移および集中レベルを例示するグラフ。
図8】デスクワーク期間における集中レベル毎の時間割合を例示する円グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の集中状態評価装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の集中状態評価装置1は、人体に装着可能に構成されるウェアラブル機器として構成され、ユーザーの任意のデスクワーク中の集中状態を評価するであり、脈波センサー2、信号処理部3、ディスプレイ4、操作部5、メモリー6およびプロセッサー7を備える。
【0016】
脈波センサー2は、ユーザーの脈波を検出するセンサーであり、例えば、受光部および発光部を含む光電センサーである。この光電センサーでは、発光部から射出される光が生体(例えばユーザーの手首)に対して照射され、その反射光または透過光が受光部で受光され、受光部が受光量に応じた信号を出力する。ここで、生体での光の反射量または吸収量は、血管内の血流量に応じて変化するため、光電センサーから出力される信号の大きさは、脈動に対応して増減する。これにより、脈波センサー2は、時系列に沿って信号値が増減する脈波信号を出力する。ただし、脈波センサー2は、光電センサーに限定されず、心電計や超音波センサー等、他のセンサーであってもよい。
【0017】
信号処理部3は、脈波センサー2から出力された脈波信号をサンプリングするサンプリング回路、脈波信号を増幅する増幅回路、脈波信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを備える。信号処理部3は、これらの各回路により脈波信号を信号処理し、信号処理された脈波信号をプロセッサー7に入力する。
【0018】
ディスプレイ4は、プロセッサー7の制御によって、各種情報を表示させる表示部である。
操作部5は、ユーザーにより入力操作を受け付ける。操作部5は、例えば、ボタン等であってもよいし、ディスプレイ4と一体的に構成されたタッチパネルであってもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、集中状態評価装置1にディスプレイ4や操作部5が設けられる構成を例示するが、このような構成に限定されない。例えば、集中状態評価装置1と通信可能に接続される外部機器がディスプレイ4や操作部5を備えてもよい。外部機器としては、例えば、スマートフォン等の携帯型端末装置やパーソナルコンピューター等を例示できる。
【0020】
メモリー6は、ユーザー集中状態を評価する評価プログラムを含む各種プログラムや、各種プログラムで使用される各種データが記録される記録媒体である。
【0021】
プロセッサー7は、例えばMPU(Micro Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)、または、DSP(Digital Signal Processor)等であり、メモリー6に記憶された各種プログラムを読み込み実行することで各種演算処理を実施する。そして、プロセッサー7は、メモリー6に記録された集中状態評価プログラムを読み込み実行することで、計測部72、指標値算出部73および評価部74として機能する。ただし、プロセッサー7の全部または一部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用ハードウェアにより実現されてもよい。
【0022】
信号取得部71は、脈波センサー2に制御指令を出力したり、脈波センサー2から信号処理部3を介して脈波信号を取得したりする。また、信号取得部71は、取得した脈波信号を脈波情報(例えば後述する基準脈波情報または対象脈波情報)としてメモリー6に記憶させる。脈波情報は、時系列に沿った脈波信号の信号値の変化を含み、ユーザーの脈波を示す情報である。
【0023】
計測部72は、メモリー6から脈波情報を取得し、当該脈波情報を解析することで、脈拍や脈の拍動間隔(RRI;R-R Interval)を計測する。なお、脈拍やRRIの単位は、例えばmsである。
【0024】
指標値算出部73は、計測部72により計測された拍動間隔に基づき、rMSSD(rMSSD;root Mean Square of Successive Differences)を集中状態の指標値として算出する。ここで、rMSSDとは、所定時間ごとの隣接する拍動間隔の差の2乗の平均値の平方根であり、所定時間ごとの脈拍の拍動間隔の変化の度合いを示す値である。なお、所定時間は、後述する安静期間、特定作業期間およびデスクワーク期間の各時間よりも十分に短い単位時間(例えば3分間)である。
例えば、指標値算出部73は、以下の式(1)によりrMSSDを算出できる。以下の式(1)において、Nは、上述の所定期間における拍動間隔の数であり、xiは、当該所定期間におけるi番目の拍動間隔である。
【数1】
【0025】
データ選別部742は、指標値算出部73により算出された指標値群から異常値になる可能性のある指標値(ノイズ値)を除去することで、データ選別を行う。データ選別部742の具体的な説明は後述する。
【0026】
評価部74は、安静期間に対応する指標値群および特定作業期間に対応する指標値群のそれぞれを基準としてデスクワーク期間に対応する指標値群を分析することで、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態を評価する。この評価部74は、図2に示すように、閾値決定部741、データ選別部742、正規化部743、レベル分け部744および分析部745を含む。これらの詳細については後述する。
【0027】
(集中状態評価方法)
本実施形態の集中状態評価方法について説明する。本実施形態の集中状態評価方法は、上述の集中状態評価装置1を用いて、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態を評価する方法であり、当該方法では、以下の安静期間、特定作業期間およびデスクワーク期間がそれぞれ設定される。
【0028】
安静期間は、ユーザーの覚醒状態(非睡眠状態)において、ユーザーが何ら作業を行わず、安静に過ごす期間である。
特定作業期間は、ユーザーが特定の定型作業を行う期間である。本実施形態の特定作業期間は、作業の種類が互いに異なる複数の作業期間として、第1作業期間および第2作業期間を含む。例えば、第1作業期間では、ユーザーの収束的思考を促す定型作業として任意の暗算テストが実施され、第2作業期間では、ユーザーの発散的思考を促す定型作業として任意の創造性テストが実施される。
デスクワーク期間は、ユーザーが任意のデスクワークを行う期間である。デスクワークの種類は特に限定されず、例えばユーザーの日常の業務である。また、デスクワーク期間は、業務中の休憩時間を含んでもよいし、互いに異なる業務内容の複数の期間を含んでもよい。
【0029】
なお、本実施形態において、ユーザーは、安静期間(1回目)、第1作業期間、安静期間(2回目)、第2作業期間、および、デスクワーク期間を、この順に過ごすものとする。ここで、安静期間(1回目、2回目)、第1作業期間および第2作業期間は、予め定められた時間を有することが好ましい。デスクワーク期間は、予め定められた時間を有してもよいし、ユーザーの開始操作および終了操作によって決定される時間を有してもよい。
以下の説明では、安静期間の開始から第2作業期間の終了までの期間をまとめて基準期間と称する場合がある。
【0030】
まず、集中状態評価装置1は、図3のフローチャートを実施する。なお、図3のフローチャートの開始前、ユーザーは、ユーザー自身の生体部(例えばユーザーの手首)に対して集中状態評価装置1を装着しているものとする。
【0031】
図3のフローチャートでは、まず、ユーザーが基準期間を過ごす間、信号取得部71が脈波センサー2から信号処理部3を介して脈波信号を取得し、基準脈波情報としてメモリー6に記憶させる。そして、計測部72が基準脈波情報を取得し、当該基準脈波情報を解析することで拍動間隔(RRI)を計測する(ステップS11)。ここで、基準脈波情報は、基準期間の各期間(安静期間(1回目)、第1作業期間、安静期間(2回目)および第2作業期間)に対応付けられた脈波情報を含んでおり、計測部72は、各期間における拍動間隔を計測できる。
【0032】
なお、ステップS11では、ユーザーが操作部5に対して基準期間の各期間の開始操作を行ってもよい。この場合、信号取得部71は、ユーザーの開始操作に応じて、基準期間の各期間に対応づけられた脈波信号を取得し、基準脈波情報としてメモリー6にできる。
あるいは、ステップS11では、ユーザーが操作部5に対して基準期間の開始操作を行い、予め定められた基準期間の各期間の時間の経過によって当該各期間が遷移してもよい。この場合、信号取得部71は、ユーザーの開始操作後、予め定められた基準期間の各期間の時間の経過に応じて、当該各期間に対応づけられた脈波情報を取得できる。この場合、プロセッサー7は、ディスプレイ4または不図示の音声手段により、各期間の開始および終了をユーザーに案内してもよい。
【0033】
次に、指標値算出部73が、ステップS11で計測された拍動間隔に基づき、基準期間の各期間における指標値(すなわちrMSSD)を算出する(ステップS12)。ここで、指標値算出部73は、安静期間(例えば1回目および2回目の合計、または、1回目および2回目のいずれか一方)に対応する指標値群と、第1作業期間に対応する指標値群と、第2作業期間に対応する指標値群とを求めることができる。
【0034】
次に、閾値決定部741が、指標値に関する作業閾値Vt1,Vt2、および、安静閾値Vt3を算出する(ステップS13)。
具体的には、閾値決定部741は、基準期間内で隣り合う期間同士の境界を含む所定の除去期間に対応する指標値を、ステップS12で算出される全体の指標値群から除去する。この除去期間は、指標値を算出する際の所定時間以上であることが好ましい。
その後、第1作業期間に対応する指標値群の中央値を作業閾値Vt1として算出し、第2作業期間に対応する指標値群の中央値を作業閾値Vt2として算出し、安静期間に対応する指標値群の中央値を安静閾値Vt3として算出する。
なお、通常、作業閾値Vt1,Vt2<安静閾値Vt3という大小関係となる。また、本実施形態では、作業閾値Vt1<作業閾値Vt2であるが、作業閾値Vt1,Vt2の大小関係は逆であってもよい。また、作業閾値Vt1,Vt2、および、安静閾値Vt3のそれぞれは、各期間の指標値群の中央値であることに限定されず、他の計算方法で求められてもよい。
以下、作業閾値Vt1,Vt2、および、安静閾値Vt3を単に閾値Vt1~Vt3と称する場合がある。
【0035】
以上により、図3のフローチャートが終了する。図3のフローチャートの処理によれば、図5のグラフに示すようなデータが取得される。なお、図5には、基準期間における指標値の推移と、当該基準期間の各期間の指標値群から算出された閾値Vt1~Vt3とが例示される。
【0036】
次に、集中状態評価装置1は、図4のフローチャートを実施する。なお、図4のフローチャートは、上記ステップS13の終了直後に開始されてもよいし、上記ステップS13の終了後、任意のインターバル期間の経過後に開始されてもよい。
【0037】
図4のフローチャートでは、まず、ユーザーがデスクワーク期間を過ごす間、信号取得部71が脈波センサー2から信号処理部3を介して脈波信号を取得し、対象脈波情報としてメモリー6に記憶させる。そして、計測部72が対象脈波情報を解析することで脈拍および拍動間隔(RRI)を計測する(ステップS21)。ここで、対象脈波情報は、デスクワーク期間に対応付けられた脈波情報を含んでおり、計測部72は、デスクワーク期間における拍動間隔を計測できる。
【0038】
なお、ステップS21では、ユーザーが操作部5に対してデスクワーク期間の開始操作および終了操作を行ってもよい。この場合、信号取得部71は、操作部5に対するユーザーの操作に応じて、デスクワーク期間に対応づけられた脈波情報を取得できる。
あるいは、ステップS21では、ユーザーが操作部5に対してデスクワーク期間の開始操作を行い、予め定められた時間の経過によってデスクワーク期間が終了してもよい。この場合、信号取得部71は、ユーザーの開始操作後、予め定められたデスクワーク期間の時間の経過に応じて、当該デスクワーク期間に対応づけられた脈波情報を取得できる。この場合、プロセッサー7は、ディスプレイ4または不図示の音声手段により、デスクワーク期間の終了をユーザーに案内してもよい。
【0039】
次に、指標値算出部73が、ステップS21で計測された拍動間隔に基づき、デスクワーク期間における指標値(すなわちrMSSD)を算出する(ステップS22)。これにより、指標値算出部73は、デスクワーク期間に対応する指標値群を求めることができる。
なお、ステップS22は、ステップS21の終了前に開始されてもよい。この場合、指標値算出部73は、ステップS21で所定時間の拍動間隔が計測されるごとに指標値を算出してもよい。
【0040】
次に、データ選別部742が、ステップS22で算出された指標値群から、異常値になる可能性のある指標値(ノイズ値)を除去する(ステップS23)。
ここで、データ選別部742は、以下に挙げる方法(1)~(6)のうち、少なくとも1つの方法または複数の方法の組み合わせによりノイズ値を特定できる。
(1)ステップS21で計測された脈拍に基づき、脈拍が120bpm以上または54bpm以下である期間(脈拍異常期間)を特定し、脈拍異常期間に対応する指標値をノイズ値として特定する。
(2)ステップS21で計測された拍動間隔に基づき、拍動間隔が400ms以下または1500ms以上である(拍動間隔異常期間)を特定し、拍動間隔異常期間に対応する指標値をノイズ値として特定する。
(3)ステップS22で算出された指標値を値の大きさ順に並べかえたデータを作成し、当該データを等分(例えば10等分)することで複数のグループを作成し、一番目のグループおよび最後のグループに属する指標値をノイズ値として特定する。
(4)デスクワーク期間を複数の区間に分け、ステップS22で算出された指標値群について各区間の平均mおよび標準偏差σを求め、各区間の2σの範囲外となる指標値をノイズ値として特定する。
(5)指標値の許容誤差の絶対値K1を設定し、ステップS22で算出された各指標値が、ステップS22で算出された指標値群の全体平均との間にK1以上の差を有する場合、ノイズ値として特定する。
(6)指標値の許容誤差となる絶対値K2を設定し、ステップS22で算出された各指標値が、その隣接する指標値との間にK2以上の差を有する場合、ノイズ値として特定する。
なお、上記方法(1),(2)において、脈拍異常期間を特定するための脈拍の閾値、および、拍動間隔異常期間を特定するための拍動間隔の閾値は、それぞれ任意に設定可能である。また、上記方法(5),(6)は、それぞれ、ステップS22で算出された指標値群のノイズレベルに応じて、複数回実施してもよい。
【0041】
次に、正規化部743が、ステップS23で選別された指標値群について、正規化を行う(ステップS24)。
具体的には、正規化部743が、ステップS12,S22の少なくとも一方で算出された指標値群を含む任意の範囲から、指標値の最小値Vminおよび最大値Vmaxを決定する。これにより、デスクワーク期間に対応する指標値群について、その分析範囲(最小値Vmin以上かつ最大値Vmax以下の範囲)が決定される。なお、Vmin<Vt1,Vt2であり、Vt3<Vmaxである。
そして、正規化部743が、ステップS13で算出された閾値Vt1~Vt3に基づいて分析範囲を複数の区間に分け、当該区間毎に、ステップS23で選別された指標値群を当該区間に対応する範囲に正規化する。なお、本実施形態において、各区間は、0~1の範囲を分割した分割範囲に対応しており、分析範囲は、全体として0~1の範囲に対応している。
【0042】
ここで、正規化部743による正規化の例について、図6のグラフを参照して説明する。
図6に示すように、正規化部743は、指標値Vxの評価範囲を、最小値Vmin<指標値Vx≦閾値Vt1(区間I1)、閾値Vt1<指標値Vx≦閾値Vt2(区間I2)、閾値Vt2<指標値Vx≦閾値Vt3(区間I3)、および、閾値Vt3<指標値Vx≦最大値Vmax(区間I4)に分ける。
そして、正規化部743は、ステップS23で選別された指標値群を、区間I1~I4ごとに、対応する分割範囲に正規化する。
例えば、最小値Vmin<指標値Vx≦閾値Vt1(区間I1)では、点A(Vmin,1)および点B(Vt1,0.7)を通る直線の式によって、指標値Vxを1から0.7の分割範囲に正規化する。
閾値Vt1<指標値Vx≦閾値Vt2(区間I2)では、点B(Vt1,0.7)および点C(Vt2,0.5)を通る直線の式によって、指標値Vxを0.7から0.5の分割範囲に正規化する。
閾値Vt2<指標値Vx≦閾値Vt3(区間I3)では、点C(Vt2,0.5)および点D(Vt3,0.3)を通る直線の式によって、指標値Vxを0.5から0.3の分割範囲に正規化する。
閾値Vt3<指標値Vx≦最大値Vmax(区間I4)では、点D(Vt3,0.3)および点E(Vmax,0)を通る直線の式によって、指標値Vxを0.3から0の分割範囲に正規化する。
また、指標値Vx≦最小値Vminのときには、指標値Vxを1に変換し、最大値Vmax<指標値Vxのときには、指標値Vxを0に変換する。
以上により、0~1の範囲に正規化された指標値が求められる。以下、正規化された指標値を集中度と称する場合がある。
【0043】
なお、図6の例では、閾値Vt1が正規化される値(正規化閾値Ct1)が0.7であり、閾値Vt2が正規化される値(正規化閾値Ct2)が0.5であり、閾値Vt3が正規化される値(正規化閾値Ct3)が0.3であるが、これらCt1~Ct3の各値は、任意に設定可能である。
また、指標値群が正規化される範囲は、0~1の範囲であることに限定されず、任意の範囲であればよい。また、本実施形態では、指標値から集中度に変換する際、値の大小関係が反転するような変換を行うが、これに限定されない。
【0044】
次に、レベル分け部744が、ステップS24で正規化された閾値群(すなわち集中度群)を複数の集中レベル(すなわちレベルL1~L4)に分ける(ステップS25)。ここで、レベル分けの基準としては、正規化閾値Ct1~Ct3が用いられる。例えば、レベル分け部744は、デスクワーク期間における集中度Cxについて、集中度Cx≦閾値Ct3のときレベルL1と判定し、閾値Ct3<集中度Cx≦閾値Ct2のときレベルL2と判定し、閾値Ct2<集中度Cx≦閾値Ct1のときレベルL3と判定し、閾値Ct1<集中度CxのときレベルL4と判定する。
【0045】
次に、分析部745が、ステップS25でレベル分けされた集中度群を分析する(ステップS26)。
例えば、分析部745は、デスクワーク期間における複数の集中レベル(レベルL1~L4)の経時的な変化を示す結果情報として、図7に例示すようなグラフを生成してもよい。この図7には、デスクワーク期間における集中度の推移と、集中度におけるレベルL1~L4の範囲とによって、レベルL1~L4の経時的な変化が示される。デスクワーク期間の各時間帯に対して業務名(会議、テレワーク、休憩等)が対応づけて記憶されている場合には、各業務に対応する時間帯を区切って表示させてもよい。
また、分析部745は、デスクワーク期間における集中レベル(レベルL1~L4)毎の時間割合を示す結果情報として、図8に例示すような円グラフを生成してもよい。この図8には、デスクワーク期間に対するレベルL1~L4毎の時間割合が、パーセンテージで示される。
【0046】
以上により、図4のフローチャートが終了し、これにより、本実施形態の集中状態評価方法が終了する。なお、プロセッサー7は、操作部5に入力される要求に応じて、上述のステップS26で生成された各種の結果情報をディスプレイ4に表示させたり、他の情報処理装置に送信したりしてもよい。
【0047】
また、本実施形態において、プロセッサー7は、上述の各ステップで取得または算出されたデータをメモリー6に記憶させ、適宜参照することができる。ここで、プロセッサー7は、上述の各ステップで取得または算出されたデータを、ユーザーの識別情報(ユーザーID)に関連付けて、メモリー6に記憶させてもよい。
例えば、任意のユーザーAについて本実施形態の集中状態評価方法が実施される際、プロセッサー7は、ユーザーAのユーザーIDを取得し、当該ユーザーIDに関連付けられたデータがメモリー6に記憶されているか否かを判定する。ユーザーAに関する閾値Vt1~Vt3が既にメモリー6に記憶されている場合、図3のフローチャートの実施を省略してもよい。
【0048】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の集中状態評価方法は、コンピューターとしてのプロセッサー7によりユーザーの集中状態を評価する方法であって、プロセッサー7は、上述したように、計測部72、指標値算出部73および評価部74として機能する。計測部72は、ユーザーの安静期間および特定作業期間の各期間における脈波を示す情報である基準脈波情報を取得し、基準脈波情報に基づいて安静期間および特定作業期間の各期間における拍動間隔を計測する第1計測ステップ(ステップS11)と、ユーザーの任意のデスクワーク期間における脈波を示す情報である対象脈波情報を取得し、対象脈波情報に基づいてデスクワーク期間における拍動間隔を計測する第2計測ステップ(ステップS21)と、を実施する。指標値算出部73は、第1計測ステップまたは第2計測ステップで計測された拍動間隔に基づき、所定時間ごとの隣接する拍動間隔の差の2乗の平均値の平方根であるrMSSDを集中状態の指標値として算出し、安静期間、特定作業期間およびデスクワーク期間の各期間に対応する指標値群を求める指標値算出ステップ(ステップS12,S22)を実施する。評価部74は、安静期間の指標値群および特定作業期間の指標値群のそれぞれを基準として、デスクワーク期間に対応する指標値群を分析することで、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態を評価する評価ステップ(ステップS13,S23~S26)を実施する。
このような方法では、ユーザーの個人的な生体情報として、ユーザーの集中が低い状態の基準情報となる安静期間の指標値群と、ユーザーの集中が高い状態の基準情報となる特定作業期間の指標値群とを取得できる。安静期間および特定作業期間の各指標値群を基準としてデスクワーク期間の指標値群を評価することにより、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態を正確に評価することができる。
なお、rMSSDは、一般的に、副交感神経と強い関係がある。本実施形態では、ユーザに対して集中を要求する特定作業期間と、ユーザに対して安静を要求する安静作業期間との間で、同一ユーザのrMSSDに大きな差が現れる傾向があるため、rMSSDをユーザの集中状態の指標値として利用することができる。
【0049】
本実施形態において、評価部74は、閾値決定部741およびレベル分け部744を含む。閾値決定部741は、安静期間の指標値群に基づいて安静閾値Vt3を決定すると共に、特定作業期間の指標値群に基づいて作業閾値Vt1,Vt2を決定する閾値決定ステップ(ステップS13)を実施する。レベル分け部744は、デスクワーク期間の指標値群を、閾値Vt1~Vt3に基づいて、複数の集中レベルに分けるレベル分けステップ(ステップS25)を実施する。
このような方法によれば、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態を好適に評価することができる。
【0050】
本実施形態において、評価部74は、正規化部743をさらに含む。正規化部743は、レベル分けステップ(ステップS25)より前、デスクワーク期間に対応する指標値群の分析範囲を閾値Vt1~Vt3に基づいて複数の区間I1~I4に分け、デスクワーク期間の指標値群を、区間毎に、当該区間に対応する範囲に正規化する正規化ステップ(ステップS24)を実施する。
このような方法によれば、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態をより正確に評価することができる。
【0051】
本実施形態において、特定作業期間は、作業の種類が互いに異なる複数の作業期間を含んでおり、閾値決定部741は、作業期間ごとに対応する作業閾値Vt1,Vt2を決定する。
このような方法によれば、デスクワーク期間におけるユーザーの集中状態をより正確に評価することができる。
【0052】
本実施形態において、計測部72は、第2計測ステップ(ステップS21)において、対象脈波情報に基づいてデスクワーク期間における拍動間隔および脈拍をそれぞれ計測する。また、評価部74は、データ選別部742をさらに含み、データ選別部742は、デスクワーク期間において脈拍が所定範囲外である脈拍異常期間を特定し、レベル分けステップ(ステップS25)前、デスクワーク期間の指標値群から、脈拍異常期間に対応する指標値を除去するデータ選別ステップ(ステップS23)を実施する。
このような方法によれば、運動時のような高い心拍数や、通常の覚醒時よりも低い心拍数など、評価に適さない心拍数を除外できるため、デスクワーク中の集中状態をより正確に評価することができる。
【0053】
本実施形態において、計測部72は、分析部745をさらに含む。分析部745は、分析ステップ(ステップS26)において、デスクワーク期間における複数の集中レベルの経時的な変化を示す結果情報を生成してもよい。また、分析部745は、分析ステップ(ステップS26)において、デスクワーク期間における集中レベル毎の時間割合を示す結果情報を生成してもよい。
このような方法では、生成された結果情報について、ディスプレイ4などを介してユーザーに提示することで、ユーザーが自身の集中状態を容易に把握できる。
【0054】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、および各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0055】
(変形例1)
上記実施形態では、特定作業期間が第1作業期間および第2作業期間を含むが、これに限定されない。例えば、特定作業期間は、1つの作業期間であってもよいし、3つ以上の作業期間を含んでもよい。この場合、閾値決定部741は、閾値決定ステップ(ステップS13)において、作業期間ごとの作業閾値を算出することで、1つまたは3つ以上の作業閾値を決定してもよい。その結果、集中度は、3つまたは5つ以上のレベルにレベルわけされてもよい。
【0056】
(変形例2)
上記実施形態の集中状態評価方法を実施する際、ユーザーは、安静期間(1回目)、第1作業期間、安静期間(2回目)、第2作業期間、および、デスクワーク期間をこの順に過ごすが、各期間の順序はこれに限られない。
例えば、ユーザーが操作部5を介していずれかの期間を選択する操作を行う場合、信号取得部71は、操作情報の入力に応じて選択期間が開始されたことを判断し、当該選択期間に対応する脈波信号の取得を行うことができる。
また、安静期間の回数は、2回であることに限定されず、1回または3回以上であってもよい。
【0057】
(変形例3)
上記実施形態では、計測部72が拍動間隔だけでなく脈拍を計測しているが、脈拍の利用(例えば脈拍を利用したノイズ値の特定)が行われない場合には、脈拍の計測が省略されてもよい。
【0058】
(変形例4)
上記実施形態では、基準期間およびデスクワーク期間以外の他の期間における脈波情報をさらに取得し、当該脈波情報に基づいて指標値群を算出してもよい。例えば、正規化部743は、ユーザーの1日の覚醒時間帯に対応する指標値群から最小値Vminおよび最大値Vmaxを決定することで、ユーザーの指標値群の分析範囲を決定してもよい。
【0059】
(変形例5)
上記実施形態において、データ選別部742は、デスクワーク期間の指標値群だけでなく、基準期間の指標値群を対象として、ノイズ値を除去する処理を行ってもよい。具体的には、上記実施形態において、データ選別部742は、閾値決定ステップ(ステップS13)の前、基準期間の指標値群からノイズ値を除去するステップを行ってもよい。
【0060】
(変形例6)
上記実施形態では、図3のフローチャートを実施した後、図4のフローチャートを実施するが、これに限定されない。例えば、第1計測ステップ(ステップS11)と、第2計測ステップ(ステップS12)とが実施された後、指標値算出ステップ(ステップS12およびステップS22)がまとめて実施されてもよい。また、第1計測ステップ(ステップS11)と第2計測ステップ(ステップS12)との順序は、逆であってもよい。
【0061】
(変形例7)
上記実施形態の評価ステップでは、評価部74が閾値決定部741、データ選別部742、正規化部743およびレベル分け部744として機能するが、これに限定されない。すなわち、評価ステップは、閾値決定ステップ(ステップS13)、データ選別ステップ(ステップS23)、正規化ステップ(ステップS24)、レベル分けステップ(ステップS25)を含むが、これに限定されない。
例えば、上記実施形態において、データ選別ステップ(ステップS23)が省略される場合、ステップS22で算出された指標値群の全てが利用されてもよい。
また、上記実施形態において、正規化ステップ(ステップS24)が省略される場合、正規化されていない指標値群が閾値Vt1~Vt3に基づいてレベル分けされてもよい。
【0062】
また、上記実施形態において、閾値決定ステップ(ステップS13)やレベル分けステップ(ステップS25)が省略される場合、評価部74は、他の任意の手法によって、デスクワーク期間に対応する指標値群を分析してもよい。例えば、評価部74は、安静期間の指標値の推移範囲および特定作業期間の指標値の推移範囲のそれぞれに対して、デスクワーク期間の指標値の推移範囲が重なる重複範囲を求め、求められた2つの重複範囲の比率によって、デスクワーク期間の指標値群を分析してもよい。このような場合、評価部74は、デスクワーク期間の全体的な集中状態を評価してもよい。
【0063】
(変形例8)
上記実施形態の集中状態評価装置1は、人体に装着可能に構成されるウェアラブル機器として構成されているが、これに限定されない。
例えば、集中状態評価装置1は、スマートフォンやパーソナルコンピューターなどの情報処理装置として構成され、脈波センサー2や信号処理部3を備えなくてもよい。この場合、集中状態評価装置1は、脈波センサー2や信号処理部3を備えるウェアラブル機器と通信可能に構成され、当該ウェアラブル機器から脈波情報を取得してもよい。また、サーバ装置などの外部記憶装置にユーザー毎の脈波情報が記憶されている場合、集中状態評価装置1は、当該外部記憶装置から評価対象のユーザーに対応する脈波情報を取得してもよい。
(変形例9)
上記実施形態の集中状態評価装置1では、1つのプロセッサー7が本発明のコンピューターに相当するが、本発明のコンピューターは、複数のプロセッサーにより構成されてもよい。
例えば、変形例に係る集中状態評価装置は、ウェアラブル機器と、スマートフォンやパーソナルコンピューターなどの情報処理装置とによって構成されてもよく、本実施形態の集中状態評価方法は、ウェアラブル機器のプロセッサーと、情報処理装置のプロセッサーとによって実施されてもよい。この場合、ウェアラブル機器のプロセッサーが、第1計測ステップ(ステップS11)および第2計測ステップ(ステップS21)を実施してもよいし、指標値算出ステップ(ステップS12,S22)をさらに実施してもよい。また、情報処理装置のプロセッサーが残りの各ステップを実施してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…集中状態評価装置、2…脈波センサー、3…信号処理部、4…ディスプレイ、5…操作部、6…メモリー、7…プロセッサー、71…信号取得部、72…計測部、73…指標値算出部、74…評価部、741…閾値決定部、742…データ選別部、743…正規化部、744…レベル分け部、745…分析部、I1~I4…区間、Vmax…最大値、Vmin…最小値、Vt1~Vt3…閾値、Ct1~Ct3…正規化閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8