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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076104
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20240529BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20240529BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F04D29/44 F
F04D29/66 H
F04D29/28 P
F04D29/28 C
F04D29/44 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187501
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】枡谷 穣
(72)【発明者】
【氏名】中庭 彰宏
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB46
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB69
3H130BA03A
3H130BA03C
3H130BA66A
3H130BA66C
3H130CA02
3H130CA03
3H130CA08
3H130CA13
3H130CB09
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DB02Z
3H130DB03Z
3H130DB13Z
3H130DC12Z
3H130DG02Z
3H130DG04Z
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EA07J
(57)【要約】
【課題】サージ点流量を小流量化しつつ、動力損失による効率低下を抑制することができる遠心圧縮機を提供する。
【解決手段】本開示の遠心圧縮機では、ケーシングは、流体が流れる導入流路、排出流路、及びインペラを収容してカバーとともに導入流路と排出流路を連通させる外側通路を形成する対向面を有するインペラ収容部を有する。外側通路には、一対のシール部が設けられている。カバーは、外側通路における一対のシール部の間でカバーを径方向に貫通する連通部を有する。連通部は、ディスクとカバーとの間の領域と外側通路とを連通させる。加えて、導入流路は、基準点から下流側に向かってチップ側平坦面の円弧の中心角が30°となる位置である限界点を有する。ケーシングは、外側通路における一対のシール部の間の領域と導入流路とを連通させる循環流路を有する。循環流路における導入流路側の出口側開口は、限界点よりも上流側に位置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転可能な回転軸と、
前記回転軸の前記軸線方向に配列されて、前記軸線方向一方側から流入する流体を径方向外側に圧送するインペラであって、前記回転軸に固定されたディスク、該ディスクに設けられた複数のブレード、及び、前記複数のブレードを覆うとともに前記軸線方向他方側に向かうに従って径方向外側に延びるカバーを備えたインペラと、
前記回転軸及び前記インペラを囲うケーシングであって、前記インペラに流入する流体が流れる導入流路、前記インペラから圧送される流体が流れる排出流路、及び前記インペラを収容して前記カバーとともに前記導入流路と前記排出流路を連通させる外側通路を形成する対向面を有するインペラ収容部を有するケーシングと、
前記外側通路に設けられて、前記軸線方向に離間して配置された一対のシール部と、
を備え、
前記カバーは、前記外側通路における一対の前記シール部の間で前記カバーを径方向に貫通し、前記ディスクと前記カバーとの間の領域と前記外側通路とを連通させる連通部を有し、
前記導入流路は、前記軸線を含む断面視で、
径方向に直線状に延びるチップ側平坦面を有するストレート部と、
前記チップ側平坦面の径方向内側の端部から前記インペラに向かう円弧状をなすチップ側湾曲面を有する湾曲部と、
前記チップ側平坦面と前記チップ側湾曲面との境界である基準点と、
前記基準点から下流側に向かって前記チップ側平坦面の円弧の中心角が30°となる位置である限界点と、
を有し、
前記ケーシングは、前記外側通路における一対の前記シール部の間の領域と前記導入流路とを連通させるとともに、前記導入流路側の出口側開口が前記断面視で前記限界点に又は前記限界点よりも上流側に位置している循環流路を有する遠心圧縮機。
【請求項2】
前記循環流路の前記導入流路側の出口側開口が、前記断面視で前記基準点に又は前記基準点よりも上流側に位置している請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記循環流路の前記導入流路側の出口側開口が、前記インペラの最外径端に対応する前記導入流路中の最外径位置よりも下流側に位置している請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記ストレート部に設けられたリターンベーンあるいは入口ガイドベーンをさらに備え、
前記循環流路の前記導入流路側の出口側開口が、前記リターンベーンあるいは前記入口ガイドベーンの後縁よりも下流側に開口している請求項3に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記連通部と前記循環流路における入口側開口とが前記外側通路を挟んで互いに対向している請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記循環流路の出口側開口側の部分である出口側領域が、出口側開口に向かうに従って径方向内側に向かって湾曲するように延びている請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項7】
前記循環流路に設けられて、前記循環流路にフィン翼をさらに備える請求項1から6のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、過給機、ガスタービン、産業用空気設備等に用いられ、遠心力を利用してガスの流体を圧縮する遠心圧縮機が開示されている。この遠心圧縮機は、回転軸に固着されたディスクと、ディスク設けられた複数枚のブレードと、これらブレードを囲うように設けられたカバーとを有するインペラと、インペラを収納するケーシングとを備える。
インペラのカバーとケーシングとの隙間は、循環流路となっている。この循環流路は、インペラの外側流路と、インペラへの流体を導入する導入流路とを連通させている。さらに、カバーには、カバーを貫通し循環流路に連通する抽出流路が形成されている。
【0003】
サージ点流量付近では、循環流路の開口のうち、抽出流路側の入口側開口と、インペラの吸入口側の出口側開口との間で、壁面が流体から受ける圧力(以下、この圧力を壁圧と称する。)の差が大きくなる。この壁圧差によって、抽出流路から循環流路を経由してインペラの吸入口に流体が供給される。これにより、サージ点流量が小流量化する。
一方で、設計点流量付近では、循環流路における入口側開口と出口側開口との壁圧差が小さくなるため、循環流路内を流体が流れにくくなる。このため、設計点流量付近では、動力損失を抑え、流体をインペラ内に効率良く流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6265000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるような遠心圧縮機では、出口側開口は、ケーシングとインペラとの境界に位置することになる。また、ケーシング内に形成されたインペラに流体を導入する流路は、径方向内側に向かうに従いインペラ側に湾曲している。このため、インペラに導入される直前で流速が増大し、壁圧が減少する。よって、出口側開口は、壁圧が減少する壁面に位置することになり、入口側開口と出口側開口との壁圧差が大きくなる。このため、設計点流量付近でも循環流路内を流体が流れることになり、動力損失が増大し、動作効率が低下してしまうことが課題とされていた。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、サージ点流量を小流量化しつつ、動力損失による効率低下を抑制することができる遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る遠心圧縮機は、軸線回りに回転可能な回転軸と、前記回転軸の前記軸線方向に配列されて、前記軸線方向一方側から流入する流体を径方向外側に圧送するインペラであって、前記回転軸に固定されたディスク、該ディスクに設けられた複数のブレード、及び、前記複数のブレードを覆うとともに前記軸線方向他方側に向かうに従って径方向外側に延びるカバーを備えたインペラと、前記回転軸及び前記インペラを囲うケーシングであって、前記インペラに流入する流体が流れる導入流路、前記インペラから圧送される流体が流れる排出流路、及び前記インペラを収容して前記カバーとともに前記導入流路と前記排出流路を連通させる外側通路を形成する対向面を有するインペラ収容部を有するケーシングと、前記外側通路に設けられて、前記軸線方向に離間して配置された一対のシール部と、を備え、前記カバーは、前記外側通路における一対の前記シール部の間で前記カバーを径方向に貫通し、前記ディスクと前記カバーとの間の領域と前記外側通路とを連通させる連通部を有し、前記導入流路は、前記軸線を含む断面視で、径方向に直線状に延びるチップ側平坦面を有するストレート部と、前記チップ側平坦面の径方向内側の端部から前記インペラに向かう円弧状をなすチップ側湾曲面を有する湾曲部と、前記チップ側平坦面と前記チップ側湾曲面との境界である基準点と、前記基準点から下流側に向かって前記チップ側平坦面の円弧の中心角が30°となる位置である限界点と、を有し、前記ケーシングは、前記外側通路における一対の前記シール部の間の領域と前記導入流路とを連通させるとともに、前記導入流路側の出口側開口が前記断面視で前記限界点に又は前記限界点よりも上流側に位置している循環流路を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の遠心圧縮機によれば、サージ点流量を小流量化しつつ、動力損失による効率低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る遠心圧縮機の縦断面図である。
図2】本開示の実施形態に係る遠心圧縮機の一部を拡大した縦断面図である。
図3図2の循環流路周辺の拡大図である。
図4】本開示の実施形態に係るインペラの作用効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(遠心圧縮機の構成)
以下、本開示の実施形態に係る遠心圧縮機100について、図1から図4を参照して説明する。
図1に示すように、遠心圧縮機100は、回転軸1と、インペラ2と、ケーシング3と、ベーン4と、シール部5(図2参照)と、フィン翼6(図2参照)とを備える。
【0011】
回転軸1は、一方向に延びる円柱状に形成されている。
以下では、回転軸1の軸線Oを単に軸線Oと称する。この軸線Oを基準として、周方向及び径方向を定義する。
【0012】
インペラ2は、回転軸1の軸線O方向に複数段配列されている。本実施形態では、5段のインペラ2が軸線O方向に配列されている。各インペラ2は、軸線O方向一方側から流入する流体Gを径方向外側に圧送する。
流体Gは、いわゆる作動流体である。流体Gの例として、例えば空気等が挙げられる。
【0013】
ケーシング3は、回転軸1及びインペラ2を径方向外側から囲っている。ケーシング3は、軸線O方向に延びる円筒状に形成されている。ケーシング3の内部には、回転軸1が設けられている。回転軸1は、ケーシング3を軸線Oに沿って貫通している。ケーシング3の軸線O方向両端部には、それぞれジャーナル軸受7が設けられている。また、ケーシング3の軸線O方向他方側には、スラスト軸受8が設けられている。回転軸1は、これらジャーナル軸受7とスラスト軸受8とによって軸線O回りに回転可能に支持されている。
【0014】
ケーシング3の軸線O方向一方側には、外部から流体Gを取り入れるための吸気口9が設けられている。ケーシング3の軸線O方向他方側には、ケーシング3内部で圧縮された流体Gを排気するための排気口10が設けられている。
【0015】
ケーシング3の内側には、これら吸気口9と排気口10とを連通し、縮径と拡径を繰り返す内部空間が形成されている。この内部空間は、複数のインペラ2を収容するとともに、流体Gの流路11の一部を構成している。
以下では、この流路11上における吸気口9が位置する側を上流側と称し、排気口10が位置する側を下流側と称する。よって、上流側は軸線O方向一方側と同一の向きを指し、下流側は軸線O方向他方側と同一の向きを指す。
【0016】
ベーン4は、各インペラ2の上流側に設けられている。複数のベーン4は、リターンベーン4aと、入口ガイドベーン4bと、を含む。
リターンベーン4aは、流路11内おける、軸線O方向に隣り合うインペラ2間の各領域に複数設けられている。
入口ガイドベーン4bは、流路11内おける、1段目のインペラ2の上流側に設けられている。
シール部5、及びフィン翼6は、ケーシング3内に設けられている(図2参照)。これらシール部5、及びフィン翼6については、後に詳述する。
【0017】
(インペラの構成)
続いて、インペラ2の構成について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、複数段のインペラ2のうち2段目以降のいずれかのインペラ2について図示している。
図2に示すように、インペラ2は、ディスク20と、ブレード21と、カバー22とを備える。
なお、以下では、2段目以降のインペラ2を例に本開示の構成を説明するが、以下に説明する本開示の構成は、1段目のインペラ2にも適用可能である。
【0018】
(ディスク)
ディスク20は、回転軸1の外周面に固定されている。ディスク20は、軸線O方向から見て略円形の断面を有する。ディスク20は、軸線Oを含む断面視で、軸線O方向の一方側から他方側に向かうに従って、径方向の寸法が次第に拡大するように形成されている。このため、ディスク20は、おおむね円錐状に形成されている。
【0019】
(ブレード)
ブレード21は、上記のディスク20の軸線O方向における両面のうち、上流側を向く円錐面上に周方向に並んで複数配列されている。各ブレード21は、軸線Oを中心として径方向外側に向かって放射状に延在している。より詳しくは、ブレード21は、ディスク20の上流側の面から上流側に向かって立設された薄板によって形成されている。各ブレード21は、軸線O方向から見た場合、周方向の一方側から他方側に向かうように湾曲している。
【0020】
(カバー)
カバー22は、複数のブレード21を覆う筒状の部材である。カバー22は、軸線O方向他方側に向かうに従って径方向外側に延びている。
また別の観点では、カバー22は、ブレード21の端縁に設けられている。このため、上記複数のブレード21は、このカバー22とディスク20とによって軸線O方向から挟持されている。これにより、カバー22、ディスク20、及び互いに隣り合う一対のブレード21同士の間には空間が形成される。この空間は、ケーシング3内の上記流路11の一部を構成している。
【0021】
カバー22は、円筒部23と、テーパ部24とを有する。円筒部23は、カバー22の上流側を構成している。円筒部23は、軸線O方向に直線状に延びている。テーパ部24は、カバー22の下流側を構成している。テーパ部24は、円筒部23の端部から軸線O方向で下流側(後段のインペラ2側)に延び、軸線O方向で下流側に向かうに従って漸次径方向に拡径するように形成されている。
また、カバー22は、径方向に貫通した連通部25を有する。
【0022】
(連通部)
連通部25は、円筒部23とテーパ部24との境界に形成されている。連通部25は、カバー22の周方向全周にわたって形成されたスリットである。すなわち、連通部25は、軸線O方向から見てリング状に形成されている。連通部25は、流体Gを吸入するインペラ2の上流側(スロート側)に形成されている。さらに、連通部25は、カバー22を径方向に貫通し、軸線Oを含む断面視で、径方向内側に向かうにしたがって軸線O方向他方側に漸次傾斜するように直線状に形成されている。さらに、連通部25は、インペラ2内の圧縮流路26の流路断面に対して沿うように延在している。
また、連通部25の径方向内側の端部25aは、軸線Oを含む断面視で、径方向内側に向かうに従い軸線O方向に漸次拡径されたテーパ状に形成されている。さらに、連通部25の端部25a側の内周面は、湾曲形状に形成され、カバー22の内周面に滑らかに接続されている。
【0023】
以下では、インペラ2内の隣り合うブレード21間に形成された流路11の一部を、圧縮流路26と称する。圧縮流路26は、ディスク20の外周面に沿って軸線O方向他方側(下流側)に向かうに従って径方向外側に湾曲している。
【0024】
(インペラ周辺の構成)
続いて、各インペラ2周辺の構成について、詳細に説明する。
図2図3に示すように、ケーシング3は、導入流路30と、排出流路40と、リターン流路41と、インペラ収容部42と、循環流路70とを内部に有する。
【0025】
(導入流路)
導入流路30は、インペラ2に流入する流体Gが流れる流路11である。導入流路30は、ケーシング3内の上記流路11の一部を構成している。導入流路30は、各インペラ2の上流側に設けられている。
【0026】
(ストレート部)
導入流路30は、軸線Oを含む断面視で、ストレート部31と、湾曲部32と、基準点33と、限界点34とを有する。
【0027】
ストレート部31を構成する軸線O方向に対向した一対の壁面は、軸線Oを含む断面視で、それぞれ径方向に直線状に延びている。
以下では、ストレート部31を構成するこれら一対の壁面のうち、軸線O方向他方側の壁面を「チップ側平坦面35」と称し、軸線O方向一方側の壁面を「ハブ側平坦面36」と称する。
また、上記ストレート部31には、複数のリターンベーン4aが設けられている。
【0028】
(リターンベーン)
複数のリターンベーン4aは、軸線Oを中心として放射状に配列されている。これら複数のリターンベーン4aは、軸線Oの周囲で周方向に間隔を空けて配列されている。
【0029】
(湾曲部)
湾曲部32は、ストレート部31の下流端から径方向内側に向けて延びている。湾曲部32は、径方向内側に向かうに従ってインペラ2側に湾曲している。湾曲部32は、下流端でインペラ2内の圧縮流路26と連通されている。湾曲部32を構成する軸線O方向に対向した一対の壁面は、軸線Oを含む断面視で、それぞれストレート部31の壁面の径方向内側の端部からインペラ2に向かうに従って円弧状をなしている。
以下では、湾曲部32を構成するこれら一対の壁面のうち、軸線O方向他方側の壁面を「チップ側湾曲面37」と称し、軸線O方向一方側の壁面を「ハブ側湾曲面38」と称する。
チップ側湾曲面37は、チップ側平坦面35の径方向内側の端部と滑らかに連続している。ハブ側湾曲面38は、ハブ側平坦面36の径方向内側の端部と滑らかに連続している。
【0030】
(基準点、及び限界点)
基準点33は、チップ側平坦面35とチップ側湾曲面37との境界である。
限界点34は、基準点33よりも下流側の位置である。より詳細には、限界点34は、基準点33から下流側に向かってチップ側平坦面35の円弧の中心角θが30°となる位置である。
【0031】
(排出流路)
排出流路40は、インペラ2から圧送される流体Gが流れる流路11である。排出流路40は、ケーシング3内の上記流路11の一部を構成している。排出流路40は、各インペラ2の下流側に設けられている。
排出流路40は、上流端でインペラ2内の圧縮流路26と連通されている。排出流路40は、軸線Oを含む断面視で、圧縮流路26から径方向外側に直線状に延びている。
【0032】
(リターン流路)
リターン流路41は、前段のインペラ2から圧送された流体Gを後段のインペラ2に戻す流路11である。リターン流路41は、ケーシング3内の上記流路11の一部を構成している。リターン流路41は、軸線Oを含む断面視で、径方向内側に向けて開口するU字状に形成されている。リターン流路41は、前段側の排出流路40と後段側の導入流路30とを接続している。より詳細には、リターン流路41の上流端は、排出流路40の下流端と直接接続されている。また、リターン流路41の下流端は、導入流路30の上流端と直接接続されている。
【0033】
(インペラ収容部)
インペラ収容部42は、ケーシング3内に設けられた内部空間である。インペラ収容部42には、インペラ2が収容されている。インペラ収容部42は、インペラ2毎に1つずつ形成されている。インペラ収容部42は、インペラ2の軸線O方向両側の導入流路30と排出流路40とを接続している。インペラ収容部42は、インペラ2のカバー22を径方向外側から覆う対向面43を有する。対向面43は、カバー22と径方向で対向している。対向面43は、カバー22とともに導入流路30と排出流路40とを連通させる外側通路60を形成している。
【0034】
(外側通路)
外側通路60の軸線O方向一方側の端部は、導入流路30の下流端に接続されている。外側通路60の軸線O方向他方側の端部は、排出流路40の上流端に接続されている。外側通路60は、軸線O回りに、周方向全周にわたって形成されている。
外側通路60は、外周通路61と、第1接続通路62と、第2接続通路63とを有する。
【0035】
外周通路61は、軸線Oを含む断面視で、カバー22の外周面に沿って、軸線O方向に延びている。外周通路61は、直線通路64と、湾曲通路65とを有する。直線通路64は、カバー22の円筒部23の外周面によって形成される通路である。直線通路64は、軸線Oを含む断面視で、軸線O方向に直線状に延びている。湾曲通路65は、カバー22のテーパ部24の外周面によって形成される通路である。湾曲通路65は、直線通路64の軸線O方向他方側の端部から、軸線O方向で一方側から他方側に向かうに従って径方向外側に位置するように漸次湾曲している。
【0036】
第1接続通路62は、外周通路61の軸線O方向一方側の端部に設けられている。第1接続通路62は、軸線Oを含む断面視で、外周通路61の軸線O方向一方側の端部から径方向内側に直線状に延びている。第1接続通路62は、導入流路30に接続されている。
【0037】
第2接続通路63は、外周通路61の軸線O方向他方側の端部に設けられている。第2接続通路63は、軸線Oを含む断面視で、外周通路61の軸線O方向他方側の端部から軸線O方向他方側に直線状に延びている。第2接続通路63は、排出流路40に接続されている。
【0038】
上記の外側通路60には、軸線O方向に離間して配置された一対のシール部5が設けられている。より詳細には、一対のシール部5は、外側通路60のうち外周通路61に設けられている。
【0039】
(シール部)
シール部5は、流体Gが外側通路60を通じて漏れ出ることを防止する。以下では、一対のシール部5のうち軸線O方向一方側のシール部5を「第1シール部51」と称し、軸線O方向他方側のシール部5を「第2シール部52」と称する。
【0040】
第1シール部51は、直線通路64に配置されている。第1シール部51は、軸線O方向に直線状に延びた通常のラビリンスシールである。
第1シール部51は、軸線O方向に配列された複数の第1フィン51aを有する。各第1フィン51aは、周方向に延在する円環状に形成されている。第1フィン51aは、ケーシング3側に形成されている。より詳細には、第1フィン51aは、インペラ収容部42の対向面43に形成されている。第1フィン51aの径方向内側端は、インペラ2のカバー22の外周面に、クリアランスを僅かにあけて対向している。
【0041】
第2シール部52は、湾曲通路65の導入流路30側の端部に配置されている。第2シール部52は、軸線O方向他方側に向かうに従って径方向外側に位置する階段状に形成されたラビリンスシールである。
【0042】
第2シール部52は、段差部53と、第2フィン52aとを有する。
段差部53は、インペラを外周側から囲うように、周方向全周にわたって設けられている。段差部53は、内周側段差部53aと、外周側段差部53bとを有する。
内周側段差部53aは、インペラ2側に、インペラ2と一体形成されている。より詳細には、内周側段差部53aは、カバー22の外周面に形成されている。内周側段差部53aは、軸線O方向他方側に向かうに従って径方向外側に位置するように階段状に形成されている。
【0043】
外周側段差部53bは、ケーシング3側に、ケーシング3と一体形成されている。より詳細には、外周側段差部53bは、インペラ収容部42の対向面43に形成されている。外周側段差部53bは、内周側段差部53aとの径方向の離間距離を一定以上に保ちつつ、軸線O方向他方側に向かうに従って径方向外側に位置するように階段状に形成されている。
【0044】
第2フィン52aは、軸線O方向に複数配列されている。各第2フィン52aは、周方向に延在する円環状に形成されている。第2フィン52aは、ケーシング3側に形成されている。より詳細には、第2フィン52aは、外周側段差部53bの内周面に形成されている。第2フィン52aの径方向内側端は、内周側段差部53aの外周面に、クリアランスを僅かにあけて対向している。
【0045】
なお、外側通路60におけるこれら一対のシール部5の間の領域は、インペラ2のカバー22に形成された連通部25によってディスク20とカバー22との間の領域(圧縮流路26)と連通されている。
また、ケーシング3内部の外側通路60の径方向外側には、循環流路70が形成されている。
【0046】
(循環流路)
循環流路70は、外側通路60における一対のシール部5の間の領域と導入流路30とを連通させている。循環流路70は、軸線O回りに、周方向全周にわたって形成されている。
以下では、循環流路70の2つの開口のうち、外側通路60側の開口を「入口側開口71」と称し、導入流路30側の開口を「出口側開口72」と称する。
入口側開口71は、インペラ2のカバー22に形成された連通部25と外側通路60を挟んで互いに対向している。
【0047】
出口側開口72は、軸線Oを含む断面視で限界点34よりも上流側に位置している。本実施形態では、出口側開口72の径方向内側端が、軸線Oを含む断面視で基準点33に位置している。より詳細には、出口側開口72の下流側の端部が、軸線Oを含む断面視で基準点33と重なる位置に設けられている。さらには、出口側開口72は、リターンベーン4aの下流側の後縁15aよりも下流側に開口している。また、出口側開口72は、インペラ2の最外径端27に対応する導入流路30中の最外径位置39よりも下流側に位置している。
【0048】
また、循環流路70は、入口側領域73と、中間領域74と、出口側領域75とを有する。
入口側領域73は、循環流路70のうち入口側開口71を有する領域である。入口側領域73は、軸線Oを含む断面視で、外側通路60に向かうに従って湾曲形状に形成されている。
【0049】
中間領域74は、入口側領域73から導入流路30側に延びている。本実施形態の中間領域74は、第1直線領域76と、湾曲領域77と、第2直線領域78とを有する。
第1直線領域76は、軸線Oを含む断面視で、入口側領域73から径方向外側に延び、径方向外側に向かうに従って軸線O方向一方側に傾斜するように直線状に形成されている。
【0050】
湾曲領域77は、第1直線領域76の入口側領域73とは反対側の端部に設けられている。湾曲領域77は、軸線O方向一方側に延び、軸線O方向一方側に向かうに従って径方向内側に湾曲するように延びている。
第2直線領域78は、湾曲領域77の第1直線領域76とは反対側の端部から軸線O方向で軸線O方向一方側に直線状に延びている。
【0051】
出口側領域75は、中間領域74の入口側領域73とは反対側の端部に設けられている。出口側領域75は、循環流路70の出口側開口72側の部分である。出口側領域75は、軸線Oを含む断面視で、出口側開口72に向かうに従って、径方向内側に向かって湾曲するように延びている。
また、上記循環流路70のうち中間領域74の第2直線領域78には、フィン翼6が設けられている。
【0052】
(フィン翼)
フィン翼6は、循環流路70を内側から支持する支柱として機能する。また、フィン翼6は、ケーシング3のうち、循環流路70によって径方向外側から囲われた島部44を支持している。フィン翼6は、循環流路70内に周方向に複数配列されている。
【0053】
(遠心圧縮機の動作)
続いて、本実施形態に係る遠心圧縮機100の動作について説明する。
回転軸1及びインペラ2の回転に伴い吸気口9から流路11内に取り込まれた流体Gは、1段目の導入流路30を経て、インペラ2中の圧縮流路26に流入する。インペラ2は、回転軸1の回転に伴って軸線O回りに回転していることから、圧縮流路26中の流体Gには、軸線Oから径方向外側に向かう遠心力が付加される。加えて、圧縮流路26の断面積は径方向外側から内側にかけて次第に拡大していることから、流体Gは徐々に減速し圧縮される。これにより、高圧の流体Gが、圧縮流路26から後続の排出流路40に送り出される。
【0054】
圧縮流路26から圧送された高圧の流体Gは、その後、排出流路40、リターン流路41、導入流路30を順に通過する。2段目以降のインペラ2、及び流路11においても同様の圧縮が加えられる。最終的には、流体Gは、所望の圧力状態となって排気口10から不図示の外部機器に供給される。
【0055】
(作用効果)
上記構成の遠心圧縮機100では、一対のシール部5が外側通路60に設けられている。一対のシール部5は、軸線O方向に離間して配置されている。これにより、インペラ2のカバー22の外周面とインペラ収容部42の内周面との隙間への流体Gの漏れを抑制することができる。
【0056】
さらに、カバー22は、外側通路60における一対のシール部5の間でカバー22を径方向に貫通する連通部25を有する。連通部25は、ディスク20とカバー22との間の領域と外側通路60とを連通させる。加えて、導入流路30は、基準点33から下流側に向かってチップ側平坦面35の円弧の中心角θが30°となる位置である限界点34を有する。また、ケーシング3は、外側通路60における一対のシール部5の間の領域と導入流路30とを連通させる循環流路70を有する。循環流路70の出口側開口72は、限界点34よりも上流側に位置している。
【0057】
これにより、サージ点流量付近では、出口側開口72と入口側開口71との壁圧差によって、循環流路70内に流体Gを流し、インペラ2内部(圧縮流路26)から導入流路30に流体Gを抽気することができる。さらに、チョーク点流量付近でも、出口側開口72と入口側開口71との壁圧差によって、循環流路70内に流体Gを流すことができる。これにより、チョーク状態ではサージ状態とは逆に、導入流路30の途中からインペラ2内部(圧縮流路26)に流体Gを抽気することができる。
【0058】
よって、サージング時にはインペラ2内における流れの途中から導入流路30へ流体Gが抽気されることにより不安定な流量域が下がり、また、チョーク時には導入流路30の途中からインペラ2内における流れの途中へ流体Gが抽気されることにより最大流量が増加することとなる。従って、図4に示すように、サージング現象が起こる流量域を小流量側へ移動させることができるとともに、特に高回転時においてチョーク状態となる流量域を大流量側へ移動させることができ、作動範囲を拡大させることができる。
【0059】
ここでチップ側湾曲面37に沿う流れは、チップ側湾曲面37の軸線O方向中間部付近で流速が最大となり、壁圧が最も低くなる。上記構成によれば、限界点34は、チップ側湾曲面37の壁圧が最も低い部分よりも上流側に位置している。さらに、循環流路70の出口側開口72は、限界点34よりも上流側に位置している。このため、出口側開口72での壁圧の大幅な減少を抑制することができる。これにより、設計点流量付近で出口側開口72の壁圧が意図せず低下し、出口側開口72と入口側開口71との壁圧差が増大することを抑制することができる。よって、設計点流量付近では、壁圧差による循環流路70内の流れが抑制され、循環流路70内を流体Gが流れることによる動力損失の発生が抑制される。従って、設計点流量付近における、動力損失による動作効率の低下を抑制することができる。
以上のように、本実施形態の遠心圧縮機100によれば、サージ点流量を小流量化及びチョーク点流量を大流量化しつつ、動力損失による効率低下を抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、循環流路70の導入流路30側の出口側開口72が、軸線Oを含む断面視で基準点33に位置している。
【0061】
チップ側平坦面35では、流速は大きく変化しないため、これにともない壁圧もほぼ一定となる。上記構成によれば、循環流路70の出口側開口72は、壁圧が略一定の領域に位置している。このため、出口側開口72での壁圧の減少をより一層抑制することができる。従って、壁圧差による循環流路70内の流れがより一層抑制されるので、動力損失による効率低下をより一層抑制することができる。
【0062】
本実施形態では、循環流路70の導入流路30側の出口側開口72が、インペラ2の最外径端27に対応する導入流路30中の最外径位置39よりも下流側に位置している。
【0063】
これにより、出口側開口72がインペラ2から過度に離間することを抑制することができる。このため、例えばサージ点流量付近やチョーク点流量付近で、流体Gが流れる流路11内を流れる距離を短くすることができる。よって、循環流路70内を流体Gが流れる過程で生じる圧力損失を低減することができるので、効率低下をより一層抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、循環流路70の導入流路30側の出口側開口72が、リターンベーン4aの後縁15aよりも下流側に開口している。
【0065】
これにより、例えばサージ点流量付近で、循環流路70から出口側開口72を通じて導入流路30内に供給される流体Gがリターンベーン4aに衝突することがなくなる。これにより、導入流路30の主流と循環流路70からの流れとをスムーズに合流させることができる。よって、出口側開口72における流体Gの混合損失の増加を抑制させることができる。よって、効率低下をより一層抑制することができる。
【0066】
本実施形態では、連通部25と循環流路70における入口側開口71とが外側通路60を挟んで互いに対向している。
【0067】
これにより、例えばサージ点流量付近やチョーク点流量付近で、連通部25と循環流路70との間の流体Gの流れをスムーズにすることができる。よって、流体Gが連通部25と循環流路70間を流れる際に生じる圧力損失を低減することができるので、効率低下をより一層抑制することができる。
【0068】
本実施形態では、循環流路70の出口側開口72側の部分である出口側領域75が、出口側開口72に向かうに従って径方向内側に向かって湾曲するように延びている。
【0069】
これにより、例えばサージ点流量付近で、導入流路30内の流れに沿って、出口側開口72から導入流路30に向けて流体Gを流すことができる。このため、導入流路30の主流と循環流路70からの流れとをよりスムーズに合流させることができる。よって、出口側開口72における流体Gの混合損失の増加をより一層抑制させることができる。したがって、効率低下をより一層抑制することができる。
【0070】
本実施形態では、遠心圧縮機100は、循環流路70にフィン翼6をさらに備える。
【0071】
これにより、フィン翼6によって循環流路70の壁面を支持し、循環流路70の強度を向上させることができる。さらに、フィン翼6が循環流路70内に生じた旋回流を除去することができる。よって、入口旋回流によるインペラ2のヘッド低下を抑制することができる。
【0072】
本実施形態では、連通部25は、インペラ2内の圧縮流路26の流路断面に対して沿うように延在している。
これにより、連通部25は、設計点流量付近では、圧縮流路26から循環流路70への流体Gの流れを抑制しつつ、サージ点流量付近では、圧縮流路26から循環流路70に流体Gをスムーズに導くことができる。
【0073】
また、連通部25の径方向内側の端部25aは、軸線Oを含む断面視で、径方向内側に向かうに従い軸線O方向に漸次拡径されたテーパ状に形成されている。このため、循環流路70内に流体が流入しやすくなる。
さらに、連通部25の端部25a側の内周面は、湾曲形状に形成され、カバー22の内周面に滑らかに接続されている。このため、連通部25内に滑らかに流体Gを案内することができる。加えて、インペラ2内の圧縮流路26中を流れる本流に渦が形成されにくくなるため、圧力損失をより一層低減させることができる。
【0074】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0075】
上記実施形態では、循環流路70の出口側開口72は、軸線Oを含む断面視で、導入流路30の限界点34よりも上流側に位置し、さらには出口側開口72の下流端が基準点33に位置しているとしたが、これに限られない。例えば、出口側開口72は、導入流路30の限界点34に位置してもよい。出口側開口72が限界点34に位置する場合、より詳細には、出口側開口72の中心が限界点34と重なっている。
【0076】
また、出口側開口72は、導入流路30の基準点33より上流側に位置してもよい。この場合、出口側開口72の下流端が基準点33よりも上流側に位置している。ただし、動力損失による効率低下を抑制する観点から、出口側開口72の全体が、導入流路30のストレート部31であるチップ側平坦面35上に位置することが好ましい。さらには、出口側開口72の上流端がリターンベーン4aの後縁15aよりも下流側かつ、インペラ2の最外径端27に対応する導入流路30中の最外径位置39よりも下流側に位置することが最も好ましい。
【0077】
上記実施形態では、連通部25と循環流路70における入口側開口71とが外側通路60を挟んで互いに対向しているとしたが、これに限られない。例えば、連通部25と循環流路70における入口側開口71とは、軸線O方向に互いにずれた位置に配置されて、対向していなくてもよい。
【0078】
上記実施形態では、連通部25はカバー22の周方向の全周にわたって設けられたスリットであるとしたが、これに限られない。例えば、連通部25は、周方向に離間して複数設けられた貫通穴の群であってもよい。
【0079】
上記実施形態では、第1シール部51の第1フィン51a、及び第2シール部52の第2フィン52aが、ケーシング3側に形成されている場合について説明したが、これに限られない。例えば、第1フィン51a及び第2フィン52aは、インペラ2側に形成されていてもよい。
【0080】
上記実施形態では、入口側領域73は、軸線Oを含む断面視で、外側通路60に向かうに従って湾曲形状に形成されているとしたが、これに限られない。入口側領域73は、軸線Oを含む断面視で幅が一様な直線状に形成されてもよい。
【0081】
上記実施形態では、出口側開口72を有する出口側領域75が、軸線Oを含む断面視で、出口側開口72に向かうに従って、径方向内側に向かって湾曲するように延びているとしがた、これに限られない。出口側領域75は、軸線Oを含む断面視で幅が一様な直線状に形成されていてもよい。
【0082】
上記実施形態では、2段目以降で上流側にリターンベーン4aがあるステージを例にしたが、1段目で上流側に入口ガイドベーン4bがあるステージでも、上述した本開示の構成を適用できる。このステージにおいて、例えば図1に示すように、循環流路70の導入流路30側の出口側開口72が、入口ガイドベーン4bの後縁15bよりも下流側に開口している。これにより、例えばサージ点流量付近で、循環流路70から出口側開口72を通じて導入流路30内に供給される流体Gが入口ガイドベーン4bに衝突することがなくなり、出口側開口72における流体Gの混合損失の増加を抑制させることができる。
【0083】
<付記>
各実施形態に記載の遠心圧縮機100は、例えば以下のように把握される。
【0084】
(1)第1の態様に係る遠心圧縮機100は、軸線O回りに回転可能な回転軸1と、前記回転軸1の前記軸線O方向に配列されて、前記軸線O方向一方側から流入する流体Gを径方向外側に圧送するインペラ2であって、前記回転軸1に固定されたディスク20、該ディスク20に設けられた複数のブレード21、及び、前記複数のブレード21を覆うとともに前記軸線O方向他方側に向かうに従って径方向外側に延びるカバー22を備えたインペラ2と、前記回転軸1及び前記インペラ2を囲うケーシング3であって、前記インペラ2に流入する流体Gが流れる導入流路30、前記インペラ2から圧送される流体Gが流れる排出流路40、及び前記インペラ2を収容して前記カバー22とともに前記導入流路30と前記排出流路40を連通させる外側通路60を形成する対向面43を有するインペラ収容部42を有するケーシング3と、前記外側通路60に設けられて、前記軸線O方向に離間して配置された一対のシール部5と、を備え、前記カバー22は、前記外側通路60における一対の前記シール部5の間で前記カバー22を径方向に貫通し、前記ディスク20と前記カバー22との間の領域と前記外側通路60とを連通させる連通部25を有し、前記導入流路30は、前記軸線Oを含む断面視で、径方向に直線状に延びるチップ側平坦面35を有するストレート部31と、前記チップ側平坦面35の径方向内側の端部から前記インペラ2に向かう円弧状をなすチップ側湾曲面37を有する湾曲部32と、前記チップ側平坦面35と前記チップ側湾曲面37との境界である基準点33と、前記基準点33から下流側に向かって前記チップ側平坦面35の円弧の中心角θが30°となる位置である限界点34と、を有し、前記ケーシング3は、前記外側通路60における一対の前記シール部5の間の領域と前記導入流路30とを連通させるとともに、前記導入流路30側の出口側開口72が前記断面視で前記限界点34に又は前記限界点34よりも上流側に位置している循環流路70を有する。
【0085】
これにより、サージ点流量付近では、出口側開口72と入口側開口71との壁圧差によって、循環流路70内に流体Gを流し、インペラ2内部から導入流路30に流体Gを抽気することができる。
ここでチップ側湾曲面37に沿う流れは、チップ側湾曲面37の軸線O方向中間部付近で流速が最大となり、壁圧が最も低くなる。本態様よれば、限界点34は、チップ側湾曲面37の壁圧が最も低い部分よりも上流側に位置している。さらに、循環流路70の出口側開口72は、限界点34に又は限界点34よりも上流側に位置している。このため、出口側開口72での壁圧の大幅な減少を抑制することができる。これにより、設計点流量付近で出口側開口72の壁圧が意図せず低下し、出口側開口72と入口側開口71との壁圧差が増大することを抑制することができる。
【0086】
(2)第2の態様の遠心圧縮機100は、(1)の態様の遠心圧縮機100であって、前記循環流路70の前記導入流路30側の出口側開口72が、前記断面視で前記基準点33に又は前記基準点33よりも上流側に位置していてもよい。
【0087】
チップ側平坦面35では、流速は大きく変化しないため、これにともない壁圧もほぼ一定となる。本態様によれば、循環流路70の出口側開口72は、壁圧が略一定の領域に位置している。このため、出口側開口72での壁圧の減少をより一層抑制することができる。
【0088】
(3)第3の態様の遠心圧縮機100は、(1)又は(2)の態様の遠心圧縮機100であって、前記循環流路70の前記導入流路30側の出口側開口72が、前記インペラ2の最外径端27に対応する前記導入流路30中の最外径位置39よりも下流側に位置していてもよい。
【0089】
これにより、出口側開口72がインペラ2から過度に離間することを抑制することができる。このため、流体Gが流れる流路11内を流れる距離を短くすることができる。
【0090】
(4)第4の態様の遠心圧縮機100は、(1)から(3)のいずれかの態様の遠心圧縮機100であって、前記ストレート部31に設けられたリターンベーン4aあるいは入口ガイドベーン4bをさらに備え、前記循環流路70の前記導入流路30側の出口側開口72が、前記リターンベーン4aあるいは前記入口ガイドベーン4bの後縁15a,15bよりも下流側に開口していてもよい。
【0091】
これにより、循環流路70から出口側開口72を通じて導入流路30内に供給される流体Gがリターンベーン4aに衝突することがなくなる。これにより、導入流路30の主流と循環流路70からの流れとをスムーズに合流させることができる。よって、出口側開口72における流体Gの混合損失の増加を抑制させることができる。
【0092】
(5)第5の態様の遠心圧縮機100は、(1)から(4)のいずれかの態様の遠心圧縮機100であって、前記連通部25と前記循環流路70における入口側開口71とが前記外側通路60を挟んで互いに対向していてもよい。
【0093】
これにより、連通部25と循環流路70との間の流体Gの流れをスムーズにすることができる。
【0094】
(6)第6の態様の遠心圧縮機100は、(1)から(5)のいずれかの態様の遠心圧縮機100であって、前記循環流路70の出口側開口72側の部分である出口側領域75が、出口側開口72に向かうに従って径方向内側に向かって湾曲するように延びていてもよい。
【0095】
これにより、導入流路30内の流れに沿って、出口側開口72から導入流路30に向けて流体Gを流すことができる。このため、導入流路30の主流と循環流路70からの流れとをよりスムーズに合流させることができる。よって、出口側開口72における流体Gの混合損失の増加をより一層抑制させることができる。
【0096】
(7)第7の態様の遠心圧縮機100は、(1)から(6)のいずれかの態様の遠心圧縮機100であって、前記循環流路70に設けられて、前記循環流路70にフィン翼6をさらに備えてもよい。
【0097】
これにより、フィン翼6によって循環流路70の壁面を支持しすることができる。さらに、フィン翼6が循環流路70内に生じた旋回流を除去することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…回転軸、2…インペラ、3…ケーシング、4…ベーン、4a…リターンベーン、4b…入口ガイドベーン、5…シール部、6…フィン翼、7…ジャーナル軸受、8…スラスト軸受、9…吸気口、10…排気口、11…流路、15a…後縁、15b…後縁、20…ディスク、21…ブレード、22…カバー、23…円筒部、24…テーパ部、25…連通部、25a…端部、26…圧縮流路、27…最外径端、30…導入流路、31…ストレート部、32…湾曲部、33…基準点、34…限界点、35…チップ側平坦面、36…ハブ側平坦面、37…チップ側湾曲面、38…ハブ側湾曲面、39…最外径位置、40…排出流路、41…リターン流路、42…インペラ収容部、43…対向面、44…島部、51…第1シール部、51a…第1フィン、52…第2シール部、52a…第2フィン、53…段差部、53a…内周側段差部53a…外周側段差部、60…外側通路、61…外周通路、62…第1接続通路、63…第2接続通路、64…直線通路、65…湾曲通路、70…循環流路、71…入口側開口、72…出口側開口、73…入口側領域、74…中間領域、75…出口側領域、76…第1直線領域、77…湾曲領域、78…第2直線領域、100…遠心圧縮機、G…流体、O…軸線、θ…中心角
図1
図2
図3
図4