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  • 特開-非接触式体温変動検知システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076108
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】非接触式体温変動検知システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20240529BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240529BHJP
   A61B 5/0507 20210101ALI20240529BHJP
【FI】
A61B5/01
A61B5/11 110
A61B5/0507
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187505
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】300008483
【氏名又は名称】ハートランド・データ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】二木 宣好
(72)【発明者】
【氏名】落合 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】藤貫 芳夫
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB32
4C038VC20
4C117XB01
4C117XE13
4C117XE48
4C117XJ12
4C117XJ13
4C127AA10
4C127GG18
(57)【要約】
【課題】被測定者が発熱したと推定される体温変動を非接触で検知できる非接触式体温変動検知システムを提供する。
【解決手段】非接触式体温変動検知システム1の心拍数情報取得装置10は、被測定者Pに照射した電波の反射波を受信して被測定者Pの拍動による体表面の振動に基づいて心拍数情報を取得し、体温変動検知装置20は、心拍数情報取得装置10により取得された心拍数情報に基づく検出心拍数と、被測定者Pの発熱により増加すると推定される心拍数とを比較して、発熱による体温変動を検知し、検知結果を表示装置30によって報知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者に照射した電波の反射波を受信し、前記被測定者の拍動による体表面の振動に基づいて心拍数情報を取得する心拍数情報取得装置と、
前記心拍数情報取得装置により取得された前記心拍数情報に基づく検出心拍数から前記被測定者の体温を推定し、推定される体温が前記被測定者の正常体温範囲を超えることで、前記被測定者の発熱による体温変動を検知する体温変動検知装置と、
を含むことを特徴とする非接触式体温変動検知システム。
【請求項2】
前記体温変動検知装置は、前記被測定者の平熱時における心拍数を平熱基準値とし、発熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を発熱判定値とし、前記平熱基準値と前記発熱判定値とを加算した心拍数を発熱基準値とし、前記検出心拍数が前記発熱基準値に達することで、前記被測定者の発熱による体温変動を検知することを特徴とする請求項1に記載の非接触式体温変動検知システム。
【請求項3】
前記体温変動検知装置は、高熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を高熱判定値とし、前記平熱基準値と前記高熱判定値とを加算した心拍数を高熱基準値とし、前記検出心拍数が前記発熱基準値に達することで、前記被測定者が高熱を発していると推定される状態を検知することを特徴とする請求項2に記載の非接触式体温変動検知システム。
【請求項4】
前記体温変動検知装置は、体温の概日リズムに基づいて、時刻に応じた値を前記平熱基準値に設定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の非接触式体温変動検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者が発熱したと推定される体温変動を非接触で検知できる非接触式体温変動検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
老人ホームなどの介護施設では、要介護者の健康状態を把握するために、体温や血圧などのバイタルを定期的あるいは不定期に測定し、適切な対処を行うことが望まれている。しかしながら、認知機能の低下などにより、検温や血圧測定で他者に触られることを嫌がる要介護者もおり、強い抵抗を受けて適切なバイタル測定を行えなかったり、強引にバイタル測定を行うことで要介護者に強いストレスを与えてしまったりする。また、スマートウォッチのように、体の適所に装着することでバイタル測定可能な小型機器もあるが、認知機能の低下した要介護者の中には、小型機器が装着されていることを不快に感じて、小型機器を外そうと暴れたり、小型機器を破損させたりする場合もある。このような要介護者をバイタル情報の被測定者とする場合、被測定者を拘束せずに非接触でバイタル測定を行えることが望ましい。
【0003】
そこで、測定対象の人体に向けて電波を送信し、人体の表面にて反射した反射波を受信し、所定の演算を行うことで高精度に平均心拍周期を求めることができる心拍計測方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、特許文献1に記載の心拍計測方法で用いる24GHz帯からミリ波帯の電波は、衣服や寝具を透過して人体の表面位置を正確に捉えることができるので、介護施設などでの利用に適している。さらに、特許文献1に記載の心拍計測方法では、心拍数に加えて呼吸数を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-213772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された心拍計測方法では、体温を求めることができない。介護施設などでは、要介護者のバイタル情報として体温は重要であり、抵抗力の弱った高齢の要介護者が発熱したような場合には、迅速な対処が求められる。したがって、特許文献1に記載の心拍計測方法にて、要介護者の心拍数や呼吸数を非接触で計測するだけでは不十分であり、体温計測は従前通り、要介護者や介護者にとって少なからぬ負担となってしまう。
【0006】
また、赤外線センサにより皮膚の表面温度を測定する非接触式の体温計が広く用いられているが、検温のためには、要介護者の顔面や手首などに体温計を近づけなければならないので、要介護者に拒絶されて、上手く検温できない場合もあり、介護者にとって使い勝手が良いとは言えない。
【0007】
なお、介護施設などで要介護者の体温測定を行うのは、発熱している状態を知るためであり、必ずしも体温としての温度情報が必要なわけではない。要介護者それぞれ異なる平熱の状態から高い体温(発熱が疑われる温度)に変動した状態を知ることができれば、いち早く発熱への適切な対処を行うことができる。
【0008】
そこで、本発明は、被測定者が発熱したと推定される体温変動を非接触で検知できる非接触式体温変動検知システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、被測定者に照射した電波の反射波を受信し、前記被測定者の拍動による体表面の振動に基づいて心拍数情報を取得する心拍数情報取得装置と、前記心拍数情報取得装置により取得された前記心拍数情報に基づく検出心拍数から前記被測定者の体温を推定し、推定される体温が前記被測定者の正常体温範囲を超えることで、前記被測定者の発熱による体温変動を検知する体温変動検知装置と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記非接触式体温変動検知システムにおいて、前記体温変動検知装置は、前記被測定者の平熱時における心拍数を平熱基準値とし、発熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を発熱判定値とし、前記平熱基準値と前記発熱判定値とを加算した心拍数を発熱基準値とし、前記検出心拍数が前記発熱基準値に達することで、前記被測定者の発熱による体温変動を検知しても良い。
【0011】
また、前記非接触式体温変動検知システムにおいて、前記体温変動検知装置は、高熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を高熱判定値とし、前記平熱基準値と前記高熱判定値とを加算した心拍数を高熱基準値とし、前記検出心拍数が前記発熱基準値に達することで、前記被測定者が高熱を発していると推定される状態を検知しても良い。
【0012】
また、前記非接触式体温変動検知システムにおいて、前記体温変動検知装置は、体温の概日リズムに基づいて、時刻に応じた値を前記平熱基準値に設定しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る非接触式体温変動検知システムによれば、心拍数情報取得装置により非接触で取得された被測定者の心拍数情報に基づいて、体温変動検知装置が被測定者の発熱による体温変動を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る非接触式体温変動検知システムの概略構成図である。
図2】体温変動検知装置に予め設定しておく検知条件の第1例の説明図である。
図3】体温の概日リズムを示す特性図である。
図4】体温変動検知装置に予め設定しておく検知条件の第2例の説明図である。
図5】第2実施形態に係る非接触式体温変動検知システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。まず、図1に示すのは、第1実施形態に係る非接触式体温変動検知システム1の概略構成である。この非接触式体温変動検知システム1では、心拍数情報取得装置10から被測定者Pに照射した電波の反射波を受信し、被測定者Pの拍動による体表面の振動に基づいて心拍数情報を取得する。心拍数情報取得装置10から心拍数情報が入力される体温変動検知装置20は、被測定者Pの体温を推定し、推定される体温が被測定者Pの正常体温範囲を超える発熱検知範囲に達することで、被測定者Pの発熱による体温変動を検知し、表示装置30により体温変動を表示させる。すなわち、被測定者Pの体温変動が表示される表示装置30を介護者等が見ていれば、被測定者Pの発熱状態をいち早く知ることができ、迅速に適正な対処を行える。なお、心拍数情報取得装置10と体温変動検知装置20との通信および体温変動検知装置20と表示装置30との通信には、有線接続を用いても無線接続を用いても構わない。
【0016】
心拍数情報取得装置10は、送信アンテナ11aより照射したミリ波の反射波を受信アンテナ11bで検出するミリ波レーダーセンサー11と、ミリ波レーダーセンサー11の検出信号を加工処理する演算手段12と、図示を省略した電源と、をパッケージ化した小型のユニット構造にでき、部屋の壁や天井などに設置する。心拍数情報取得装置10は、被測定者Pの心拍数を計測し続ける常時駆動式でも良いし、一定時間毎あるいは所定のイベント発生時に起動して被測定者Pの心拍数を計測する間欠駆動式でも良い。
【0017】
心拍数情報取得装置10のミリ波レーダーセンサー11は、2~3メートル離れた位置の被測定者Pから十分な強度の反射波を受信できることが望ましい。また、送信アンテナ11aと受信アンテナ11bを複数(例えば、送信アンテナ11aを2本,受信アンテナ11bを4本)備えるMIMO方式のミリ波レーダーセンサー11を用いれば、検知エリア内にいる複数の被測定者Pの心拍数をそれぞれ求められる検出情報を取得できる。心拍数情報取得装置10の演算手段12は、コンピュータ機能と心拍数演算プログラム等を組み込んだカスタムICチップなどで構成でき、ミリ波レーダーセンサー11の検出信号を所定のアルゴリズムで演算することにより、呼吸数情報や心拍数情報(拍動周期や1分間の脈拍数など)を求める。なお、演算手段12で行う心拍数情報の演算アルゴリズムは特に限定されず、公知既存の適宜な演算手法を採用して構わない。
【0018】
体温変動検知装置20は、取得心拍数記録手段21を備え、心拍数情報取得装置10から送信された心拍数情報をタイムスタンプと共に連続記憶しておき、後からでも心拍数の変化を時系列に確認することができる。なお、心拍数情報取得装置10から複数の被測定者Pの心拍数情報を受けた場合には、それぞれの被測定者Pを識別できるように、取得心拍数記録手段21に記録してゆく。また、心拍数情報取得装置10から被測定者Pの呼吸数情報が送信される場合には、取得心拍数と同様に取得呼吸数を記録してゆく取得呼吸数記録手段を設けても良い。この取得心拍数記録手段21は、最新の心拍数情報を含む表示用データを表示装置30に送信することで、表示装置30の表示部31に心拍数情報が可視表示される。表示部31に表示する内容は特に限定されず、最新の心拍数のみを表示しても良いし、一定時間遡って心拍数の変化を示すグラフとして表示しても良い。
【0019】
また、体温変動検知装置20は、平熱基準値記憶手段22、発熱判定値記憶手段23、高熱判定値記憶手段24、変動状態判定手段25を備え、被測定者Pの発熱による体温変動、被測定者Pが高熱を発していると推定される状態を検知できる。これには、心拍数と体温に強い相関が見られるという医療分野で広く知られている知見を用いる。例えば、「推定体温〔℃〕=平常時体温〔℃〕+(検出脈拍数〔bpm〕-平常時脈拍数〔bpm〕)÷10×0.55」という推定温度の演算式が知られている。この式は、「体温が0.55〔℃〕上昇すると、心拍数が10〔回/分〕増える」ことを意味しており、平常時体温〔℃〕と平常時脈拍数〔bpm〕が既知であれば、心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数〔bpm〕から推定体温〔℃〕が一意に定まることを示す。
【0020】
ここで、図2の検知条件説明図に基づき、体温変動検知装置20が用いる検知条件の第1例について説明する。図2においては、被測定者Pの平熱(平常時体温)が36.5〔℃〕であり、平常時体温に対応する平常時脈拍数(平熱基準値N)が65〔bpm〕である。そこで、体温変動検知装置20の平熱基準値記憶手段22には、平熱36.5〔℃〕と心拍数の平熱基準値65〔bpm〕を記憶させておく。そして、変動状態判定手段25は、平熱基準値記憶手段22に記憶されている平熱36.5〔℃〕および平熱基準値65〔bpm〕と、心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数とを推定体温の演算式に適用して推定体温を求める。すなわち、心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数が65〔bpm〕であれば、推定体温=平常時体温=36.5〔℃〕となる。
【0021】
また、感染症法においては発熱を37.5〔℃〕以上と定義しているので、この定義を検知条件に採用した場合、図2においては、被測定者Pの平熱36.5〔℃〕から37.5〔℃〕未満であれば、正常体温範囲と看做される。しかしながら、被測定者Pの体温が37.5〔℃〕に達して発熱検知範囲の温度域に入ると、被測定者Pが発熱している状態と判定する。被測定者Pの体温が平熱から発熱と判定されるまでの温度差10〔℃〕は、心拍数が平常時より18回増加した回数に等しい。そこで、体温変動検知装置20の発熱判定値記憶手段23には発熱判定値M1として+18回を記憶させておき、変動状態判定手段25は、平熱基準値Nと発熱判定値M1を加算した発熱基準値=N+M1=65+18=83〔bpm〕を求めておく。すなわち、被測定者Pの平熱時における心拍数を平熱基準値Nとし、発熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を発熱判定値M1とし、平熱基準値Nと発熱判定値M1とを加算した心拍数を発熱基準値N+M1とし、これらの値を被測定者Pの発熱により生じた体温変動の検知に用いる。
【0022】
そして、心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数が発熱基準値以上(83〔bpm〕以上)になると、変動状態判定手段25は、被測定者Pが発熱している状態と判定し、発熱検知信号を表示装置30へ出力する。すなわち、発熱基準値N+M1を発熱検知範囲の下限に設定することで、変動状態判定手段25は、検出心拍数との比較により被測定者Pが発熱していると推定される状態を検知できる。なお、正常体温範囲と発熱検知範囲の境界となる発熱基準値は、発熱検知範囲の下限として用いる場合に限らず、正常体温範囲の上限として用いても良い。その場合は、検出心拍数が発熱基準値を超えることを、発熱の検知条件とすれば良い。
【0023】
体温変動検知装置20の変動状態判定手段25より発熱検知信号を受信した表示装置30は、表示部31にて被測定者Pが発熱している旨の表示を行うなどして、介護者等に注意を促す。なお、表示装置30に発熱報知ランプ32(図1中、破線で示す)を設けておき、被測定者Pが発熱していることを介護者らが気付き易いように発熱報知ランプ32を点灯あるいは点滅させるようにしても良い。
【0024】
また、感染症法においては高熱を38.0〔℃〕以上と定義しているので、この定義を検知条件に採用した場合、図2においては、被測定者Pの体温が38.0〔℃〕に達して高熱検知範囲の温度域に入ると、被測定者Pが高熱を発している状態と判定する。被測定者Pの体温が平熱から高熱と判定されるまでの温度差15〔℃〕は、心拍数が平常時より27回増加した回数に等しい。そこで、体温変動検知装置20の高熱判定値記憶手段24には高熱判定値M2として+27回を記憶させておき、変動状態判定手段25は、平熱基準値Nと高熱判定値M2を加算した高熱基準値=N+M2=65+27=92〔bpm〕を求めておく。すなわち、高熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を高熱判定値M2とし、平熱基準値Nと高熱判定値M2とを加算した心拍数を高熱基準値N+M2とし、被測定者Pが高熱を発した状態の検知に用いる。
【0025】
そして、心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数が高熱基準値以上(92〔bpm〕以上)になると、変動状態判定手段25は、被測定者Pが高熱を発している状態と判定し、高熱検知信号を表示装置30へ出力する。すなわち、高熱基準値N+M2を高熱検知範囲の下限に設定することで、変動状態判定手段25は、検出心拍数との比較により被測定者Pが高熱を発していると推定される状態を検知できる。
【0026】
体温変動検知装置20の変動状態判定手段25より高熱検知信号を受信した表示装置30は、表示部31にて被測定者Pが高熱を発している旨の表示を行うなどして、介護者等に注意を促す。なお、表示装置30に高熱報知ランプ33(図1中、破線で示す)を設けておき、被測定者Pが高熱を発していることを介護者らが気付き易いように高熱報知ランプ33を点灯あるいは点滅させるようにしても良い。なお、高熱基準値は発熱基準値よりも高い値となるので、当然ながら高熱検知範囲は発熱検知範囲に含まれており、発熱検知と高熱検知が同時に成立。そのため、表示装置30の発熱報知ランプ32と高熱報知ランプ33が同時に点灯あるいは点滅することとなるが、発熱検知よりも高熱検知の重要度を印象づけるように、発熱報知ランプ32と高熱報知ランプ33を排他的に制御しても良い。例えば、発熱検知範囲を高熱検知範囲の下限未満に設定することで、検出心拍数が発熱検知範囲を超えて高熱検知範囲に達したとき、変動状態判定手段25からの発熱検知信号が停止し、新たに高熱検知信号が表示装置30に入力されるようになるので、発熱報知ランプ32を消灯させ、高熱報知ランプ33を点灯あるいは点滅させる報知が可能となる。例えば、黄色に発光する発熱報知ランプ32が消灯して、赤色の高熱報知ランプ33が点滅するような報知を行うと、被測定者Pの体温が高熱と推定される状態にまで上がっていることを介護者等に印象づけることができる。
【0027】
なお、表示装置30に合成音声出力手段34(図1中、破線で示す)を設けておき、被測定者Pが発熱した状態あるいは高熱を発している状態である旨を合成音声で出力することにより、介護者等に気付かせるようにしても良い。また、体温変動検知装置20に、低体温の判定機能を設け、心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数から演算した被測定者Pの体温が正常体温範囲の下限を下回り、低体温検知範囲(図1中、破線で示す)に達した場合には、低体温検知信号を表示装置30へ出力させ、被測定者Pが低体温状態である旨を報知させても良い。
【0028】
また、人間の体温は概日リズムとして一日(24時間)の時刻に応じた変化を呈することが知られており(例えば、図3の体温変化を参照)、直腸などで測る深部体温は昼間に上昇して夜間に低下する傾向にある。例えば、朝の9時頃に定期的な検温を行っている場合、図3に示すように、被測定者Pの平熱は36.5〔℃〕に設定するのが妥当であるものの、17時頃~23時頃までの平熱は37.5〔℃〕以上になっている。このため、17時~23時の間に心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数は、発熱基準値N+M1=83〔bpm〕に達することから、被測定者Pは平熱であるにもかかわらず、変動状態判定手段25が発熱による体温変動と判定してしまうという誤検知が生じる。高熱基準値N+M2についても同様に、被測定者Pは微熱程度であるにもかかわらず、変動状態判定手段25が高熱を発した状態と判定してしまうという誤検知が生じる。
【0029】
このような誤検知を低減するために、深部体温の平均値(例えば、上限値と下限値の中間である37.0〔℃〕辺り)を平熱に設定する対応も考えられるが、そのためには被測定者Pの概日リズムを知る必要がある。検温を嫌う要介護者が被測定者Pであった場合、短時間毎に体温を測定して概日リズムを記録するのは非常に困難である。しかしながら、本実施形態の非接触式体温変動検知システム1により、被測定者Pの心拍数を常時あるいは比較的短い時間毎に取得して記録しておけば、心拍数変動から推定できる体温の変化を記録できるので、体温の概日リズムを非接触で得ることが可能である。この概日リズムを複数日にわたって記録し、日毎の概日リズムを比較すれば平均的な概日リズムを推定でき、一日単位での妥当な平均体温を決定できる。また、推定される体温の概日リズムに応じて、適切な発熱判定値M1および高熱判定値M2を設定することで、体温変動の誤検知を低減でき、非接触式体温変動検知システム1としての信頼性を高めることができる。
【0030】
上述した体温変動検知装置20に適用する第1例の検知条件では、被測定者Pの平常時体温〔℃〕と、このときの平常時脈拍数〔bpm〕を一定値として設定しておき、発熱判定値M1および高熱判定値M2の検知条件も演算により求まる一定値としたが、検知条件はこれに限定されるものではない。例えば、被測定者Pの体温を測る時刻によって平熱が変化する概日リズムを加味した検知条件を設定すれば、発熱による体温変動をより適切に検知することが可能となる。
【0031】
そこで、体温の概日リズムを加味した第2例の検知条件(図4を参照)を体温変動検知装置20に適用して、被測定者Pの発熱による体温変動や高熱状態を適切に判定できるようにした非接触式体温変動検知システム1について説明する。なお、実測した深部体温の変化(実測体温変化)は、様々な要因により微小な変動が混入してしまい、これをそのまま体温の概日リズムとして用いるのは望ましくない。そこで、体温上昇あるいは体温低下の傾向を許容誤差範囲内で平滑化した体温の変化(平滑化体温変化)を被測定者Pの概日リズムとして、体温変動検知装置20が用いるものとする。
【0032】
第2例の検知条件による体温変動の検知を可能にするため、体温変動検知装置20の平熱基準値記憶手段22には、被測定者Pの体温の概日リズムを記憶させておき、計時手段26から供給される時刻情報に基づいて、現在時刻に対応する平熱基準値Nを変動状態判定手段25に供給する。なお、平熱基準値記憶手段22には、24時間分の概日リズムとして、時間と心拍数との対応表を記憶させておいても良いし、時刻から心拍数を一意に求められる関係式を記憶させておいても良い。あるいは、所定時間幅を代表する1つの心拍数を平熱基準値として用いるようにしても良い。例えば、20時~22時の時間範囲では21時の体温(約37.6〔℃〕)を平熱とした心拍数を、22時~24時の時間範囲では23時の体温(約37.55〔℃〕)を平熱とした心拍数を、0時~2時の時間範囲では1時の体温(約37.35〔℃〕)を平熱とした心拍数を、2時~4時の時間範囲では3時の体温(約36.8〔℃〕)を平熱とした心拍数を、4時~6時の時間範囲では5時の体温(36.45〔℃〕)を平熱とした心拍数を、6時~8時の時間範囲では7時の体温(36.35〔℃〕)を平熱とした心拍数を、8時~10時の時間範囲では9時の体温(約36.45〔℃〕)を平熱とした心拍数を、10時~12時の時間範囲では11時の体温(約36.95〔℃〕)を平熱とした心拍数を、12時~14時の時間範囲では13時の体温(約37.25〔℃〕)を平熱とした心拍数を、14時~16時の時間範囲では15時の体温(約37.4〔℃〕)を平熱とした心拍数を、16時~18時の時間範囲では17時の体温(約37.5〔℃〕)を平熱とした心拍数を、18時~20時の時間範囲では19時の体温(約37.6〔℃〕)を平熱とした心拍数を用いる。
【0033】
また、発熱を平熱+0.5〔℃〕とした場合、発熱判定値は0.5〔℃〕に対応する脈拍増加回数である+9回を用いれば良い。よって、発熱判定値記憶手段23には発熱判定値として「+9」を記憶させておく。また、高熱を平熱+1.0〔℃〕とした場合、高熱判定値は1.0〔℃〕に対応する脈拍増加回数である+18回を用いれば良い。よって、高熱判定値記憶手段24には高熱判定値として「+18」を記憶させておく。
【0034】
変動状態判定手段25は、心拍数情報取得装置10から心拍数情報を取得した時刻に、計時手段26が計時する時刻に応じた平熱基準値N(例えば、65〔bpm〕)と、発熱判定値記憶手段23に記憶された発熱判定値M1(例えば、+9回)とを取得し、発熱基準値N+M1(例えば、74〔bpm〕)を求め、検出心拍数と発熱基準値との対比を行う。「検出心拍数<発熱基準値」であれば正常体温範囲と推定されるので、変動状態判定手段25は発熱検知信号を出力しない。一方、「検出心拍数≧発熱基準値」であれば正常体温範囲を超えているので、高熱判定値記憶手段24に記憶された高熱判定値M2(例えば、+18回)を取得し、高熱基準値N+M2(例えば、83〔bpm〕)を求め、検出心拍数と高熱基準値との対比を行う。そして、「検出心拍数<高熱基準値」であれば発熱検知範囲と推定されるので、変動状態判定手段25は発熱検知信号を出力し、「検出心拍数≧高熱基準値」であれば高熱検知範囲と推定されるので、変動状態判定手段25は高熱検知信号を出力する。
【0035】
以上のように、体温変動検知装置20に第2例の検知条件を適用した場合でも、心拍数情報取得装置10により取得した心拍数情報に基づく検出心拍数から、被測定者Pの発熱による体温変動および被測定者Pが高熱を発していると推定される状態を的確に検知できる。しかも、平熱基準値Nとしては、予め用意しておいた体温の概日リズムにおける計測時の平熱に対応する心拍数を用いるので、計測時刻における被測定者Pの平熱が基準となり、平熱が低い時刻でも平熱が高い時刻でも、精度良く発熱状態(高熱状態を含む)を検知できる。
【0036】
なお、心拍数情報取得装置10が、複数の被測定者Pからそれぞれの心拍数情報を取得できるような場所に配置されている場合、心拍数情報取得装置10は、被測定者Pを特定可能な識別子を付けて心拍数情報を体温変動検知装置20へ送信する。そして、体温変動検知装置20は、識別子によって特定できる被測定者Pそれぞれの取得心拍数を記録すると共に、被測定者Pそれぞれの発熱による変動状態を判定できるように構成しておけば良い。また、表示装置30は、識別子によって特定できる被測定者Pそれぞれの情報を識別できるように表示あるいは報知できる構成としておけば良い。
【0037】
上述した第1実施形態の非接触式体温変動検知システム1では、被測定者Pの心拍数情報に基づく体温変動をモニターすることで、要介護者である被測定者Pの見守りに適しているものの、介護者等が表示装置30の表示内容を確認できないところにいると、被測定者Pの発熱が検知されても、迅速な対応を行うことができない。そこで、図5に示す第2実施形態の非接触式体温変動検知システム1′では、通信手段27を備える体温変動検知装置20′を用いることで、心拍数情報取得装置10から取得した心拍数情報に基づく取得心拍数の記録情報、発熱検知信号、高熱検知信号などを管理装置40に送信できるようにしたものである。
【0038】
管理装置40は、各所の体温変動検知装置20′より無線通信(あるいは有線通信)でダイレクトに送信される情報や、各所の体温変動検知装置20′より公衆通信回線等のネットワークNを介して送信される情報を受信する情報受信手段41を備える。情報受信手段41により受信した情報は、収集情報管理手段42によって体温変動検知装置20′毎に管理される。また、収集情報から発熱や高熱などの報知が必要な報知状況であるか否かを報知状況判定手段43が判定し、報知が必要な状況であれば、報知情報送信手段44によって、発熱等の状況に該当する被測定者Pがいる介護施設の職員(介護者)などが所持する情報端末装置50へ報知情報を送信する。
【0039】
例えば、管理装置40の近傍あるいは同じフロアーなど無線通信の可能な範囲にある体温変動検知装置20′a,20′bから発熱検知信号あるいは高熱検知信号を受信した場合、管理装置40は、体温変動検知装置20′a,20′bでモニターしている被測定者Pの担当職員や該当する被測定者Pの近くにいる介護職員が所持している情報端末装置50a,50eを選定し、発熱検知信号あるいは高熱検知信号に基づく報知情報を送信する。これにより、発熱等の疑いがある被測定者Pの元に赴いた介護職員によって迅速な対処を行うことができる。
【0040】
また、管理装置40が設置されている建物とは異なる別棟に入居している被測定者Pや在宅看護を受けている被測定者Pをモニターしている体温変動検知装置20′c,20′d,…,20′hから発熱検知信号あるいは高熱検知信号を受信した場合、管理装置40は、体温変動検知装置20′c,20′d,…,20′hでモニターしている被測定者Pの担当職員や該当する被測定者Pを担当している訪問看護師等が所持している情報端末装置50b,50c,50dを選定し、ネットワークNを介して、発熱検知信号あるいは高熱検知信号に基づく報知情報を送信する。これにより、発熱等の疑いがある被測定者Pの元に赴いた介護職員や訪問看護師等によって迅速な対処を行うことができる。
【0041】
このように、第2実施形態に係る非接触式体温変動検知システム1′においては、管理装置40によって各種情報が集中管理され、必要に応じて情報端末装置50へ報知情報が送信されるので、被測定者Pのバイタルモニターとして設置された表示装置30を頻繁に確認する必要が無く、発熱等を検知したタイミングで必要な情報が送信されるので、介護職員等の煩雑さを解消できるという利点がある。
【0042】
以上、本発明に係る非接触式体温変動検知システムの実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0043】
1,1′ 非接触式体温変動検知システム
10 心拍数情報取得装置
11 ミリ波レーダーセンサー
11a 送信アンテナ
11b 受信アンテナ
12 演算手段
20,20′ 体温変動検知装置
21 取得心拍数記録手段
22 平熱基準値記憶手段
23 発熱判定値記憶手段
24 高熱判定値記憶手段
25 変動状態判定手段
26 計時手段
27 通信手段
30 表示装置
31 表示部
32 発熱報知ランプ
33 高熱報知ランプ
34 合成音声出力手段
40 管理装置
41 情報受信手段
42 収集情報管理手段
43 報知状況判定手段
44 報知情報送信手段
50 情報端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者に照射した電波の反射波を受信し、前記被測定者の拍動による体表面の振動に基づいて心拍数情報を取得する心拍数情報取得装置と、
前記心拍数情報取得装置により取得された前記心拍数情報に基づく検出心拍数から前記被測定者の体温を推定し、推定される体温が前記被測定者の正常体温範囲を超えることで、前記被測定者の発熱による体温変動を検知する体温変動検知装置と、
を含み、
前記体温変動検知装置は、前記被測定者の心拍数を常時あるいは比較的短い時間毎に取得して、心拍数変動から推定できる体温の概日リズムを複数日にわたって記録し、日毎の前記概日リズムより推定される平均的概日リズムにおける体温上昇あるいは体温低下の傾向を許容誤差範囲内で平滑化して被測定者用概日リズムを設定し、前記心拍数情報が取得された時刻に対応する前記被測定者用概日リズムの体温値に基づいて前記正常体温範囲を設定することを特徴とする非接触式体温変動検知システム。
【請求項2】
前記体温変動検知装置は、前記心拍数情報が取得された時刻における前記被測定者用概日リズムの体温値に対応する心拍数を平熱基準値とし、発熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を発熱判定値とし、前記平熱基準値と前記発熱判定値とを加算した心拍数を発熱基準値とし、前記検出心拍数が前記発熱基準値に達することで、前記被測定者の発熱による体温変動を検知することを特徴とする請求項1に記載の非接触式体温変動検知システム。
【請求項3】
前記体温変動検知装置は、高熱と看做し得る体温の上昇値に対応する心拍数を高熱判定値とし、前記平熱基準値と前記高熱判定値とを加算した心拍数を高熱基準値とし、前記検出心拍数が前記発熱基準値に達することで、前記被測定者が高熱を発していると推定される状態を検知することを特徴とする請求項2に記載の非接触式体温変動検知システム