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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076120
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240529BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 300A
B60C11/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187523
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三好 康介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐人
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔
(72)【発明者】
【氏名】早苗 隆平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB11
3D131BC18
3D131BC35
3D131BC51
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB83X
3D131EB95X
3D131EB98X
3D131EB99X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】ディモールド性を確保しつつ、氷上性能及び荷重耐久性を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】本発明は、トレッド部2を有するタイヤに関する。トレッド部2の第1ブロック13に設けられた第1サイプ15は、サイプ長さ方向と直交する横断面、及び、第1ブロック13の踏面と平行な断面の両方において、ジグザグ状に延びている。第1サイプ15は、タイバー18により、第1部分16と第2部分17とに区分されている。第1部分16のサイプ底部16dには、第1拡幅部21が連通しており、第2部分17のサイプ底部17dには、第2拡幅部22が連通している。第1拡幅部21は、外側部31と、内側部32とを含む。外側部31は、一対の第1円弧溝壁部31aからなる。内側部32は、一対の第2円弧溝壁部32aからなる。第1拡幅部21と第2拡幅部21とは、互いに連通していない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、複数の第1ブロックとを含み、
前記複数の第1ブロックのそれぞれには、少なくとも1つの第1サイプが設けられており、
前記第1サイプは、サイプ長さ方向と直交する横断面、及び、前記第1ブロックの踏面と平行な断面の両方において、ジグザグ状に延びており、
前記第1サイプは、それぞれ、サイプ底部からタイヤ半径方向外側に局所的に隆起し、かつ、前記踏面の手前で終端する少なくとも1つのタイバーにより、サイプ長さ方向に少なくとも第1部分と第2部分とに区分され、
前記第1部分のサイプ底部には、前記第1部分の幅よりも大きい溝幅を有する第1拡幅部が連通しており、
前記第2部分のサイプ底部には、前記第2部分の幅よりも大きい溝幅を有する第2拡幅部が連通しており、
少なくとも前記第1拡幅部は、タイヤ半径方向の外側部と、タイヤ半径方向の内側部とを含み、
前記第1拡幅部の横断面において、
前記外側部は、前記第1サイプのサイプ中心線側に凸となる一対の第1円弧溝壁部からなることにより、前記サイプ底部からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に増加し、
前記内側部は、前記第1サイプの前記サイプ中心線側とは反対側に凸となる一対の第2円弧溝壁部からなることにより、前記第1拡幅部の底までタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に減少し、
前記第1拡幅部と前記第2拡幅部とは、互いに連通していない、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1拡幅部は、その全長さに亘り、前記第1部分のサイプ長さ方向に沿って直線状に延びている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1円弧溝壁部の曲率半径は、前記第2円弧溝壁部の曲率半径よりも大きい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第2拡幅部は、タイヤ半径方向の外側部と、タイヤ半径方向の内側部とを含み、
前記第2拡幅部の横断面において、
前記外側部は、前記第1サイプのサイプ中心線側に凸となる一対の第1円弧溝壁部からなることにより、前記サイプ底部からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に増加し、
前記内側部は、前記第1サイプの前記サイプ中心線側とは反対側に凸となる一対の第2円弧溝壁部からなることにより、前記第2拡幅部の底までタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に減少している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2拡幅部は、その全長さに亘り、前記第2部分のサイプ長さ方向に沿って直線状に延びている、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第2拡幅部において、前記第1円弧溝壁部の曲率半径は、前記第2円弧溝壁部の曲率半径よりも大きい、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1拡幅部の前記横断面における最大幅は、前記第1サイプの前記横断面における幅の2.0~6.0倍である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2拡幅部の前記横断面における最大幅は、前記第1サイプの前記横断面における幅の2.0~6.0倍である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記複数の第1ブロックは、前記トレッド部のトレッド端を構成している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1拡幅部の底から前記タイバーのタイヤ半径方向の外端までの高さは、前記第1ブロックの踏面から前記第1拡幅部の底までの最大の深さの30%~80%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1サイプの長さ方向に沿った断面における前記タイバーの幅は、0.5~5.0mmである、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、冬期での使用を前提とした空気入りタイヤが提案されている。このタイヤの外側ショルダー陸部は、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝によって複数の外側ショルダーブロックに区分されている。外側ショルダーブロックの少なくとも1つは、タイヤ周方向に延びる第1縦細溝によって、外側トレッド端側の第1ブロック片と、内側トレッド端側の第2ブロック片とに区分されている。また、前記第1ブロック片には、複数の第1サイプが設けられ、前記第2ブロック片には、複数の第2サイプが設けられている。さらに、第2ブロック片の第2サイプの合計本数は、第1ブロック片の第1サイプの合計本数よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-195051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、冬期での使用を前提としてトレッド部にサイプが設けられたタイヤには、氷上性能のさらなる向上が求められている。一方、前記タイヤは、接地荷重に起因する陸部の倒れ込みにより、サイプの底部に歪が生じ易く、ひいては前記底部を起点としたクラックが生じ易い。このため、前記タイヤは、接地荷重に対するサイプの底部の耐久性(以下、「荷重耐久性」という)についても、改善が求められている。
【0005】
一方、サイプが設けられたタイヤは、加硫成形時におけるディモールド性(加硫成形時における離型のし易さを意味する)も確保する必要がある。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ディモールド性を確保しつつ、氷上性能及び荷重耐久性を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、複数の第1ブロックとを含み、前記複数の第1ブロックのそれぞれには、少なくとも1つの第1サイプが設けられており、前記第1サイプは、サイプ長さ方向と直交する横断面、及び、前記第1ブロックの踏面と平行な断面の両方において、ジグザグ状に延びており、前記第1サイプは、それぞれ、サイプ底部からタイヤ半径方向外側に局所的に隆起し、かつ、前記踏面の手前で終端する少なくとも1つのタイバーにより、サイプ長さ方向に少なくとも第1部分と第2部分とに区分され、前記第1部分のサイプ底部には、前記第1部分の幅よりも大きい溝幅を有する第1拡幅部が連通しており、前記第2部分のサイプ底部には、前記第2部分の幅よりも大きい溝幅を有する第2拡幅部が連通しており、少なくとも前記第1拡幅部は、タイヤ半径方向の外側部と、タイヤ半径方向の内側部とを含み、前記第1拡幅部の横断面において、前記外側部は、前記第1サイプのサイプ中心線側に凸となる一対の第1円弧溝壁部からなることにより、前記サイプ底部からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に増加し、前記内側部は、前記第1サイプの前記サイプ中心線側とは反対側に凸となる一対の第2円弧溝壁部からなることにより、前記第1拡幅部の底までタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に減少し、前記第1拡幅部と前記第2拡幅部とは、互いに連通していない、タイヤである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ディモールド性を確保しつつ、氷上性能及び荷重耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のトレッド部の断面図である。
図3図1の複数の第1ブロックの拡大図である。
図4】第1サイプによって区分される空間を概念的に示す拡大斜視図である。
図5図3のA-A線断面図である。
図6図3の第1サイプの第1ブロックの踏面と平行な断面図である。
図7図3のB-B線断面図である。
図8図5の第1拡幅部の拡大図である。
図9図3のC-C線断面図における第2拡幅部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、冬期での使用を前提としている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして用いられる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、重荷重用のタイヤに適用されても良い。
【0011】
トレッド部2は、2つのトレッド端Teの間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、これらの周方向溝3に区分された複数の陸部4とを含んでいる。
【0012】
トレッド端Teは、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0013】
前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気入りタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、本明細書において、特に断りの無い限り、前記寸法の測定方法には、公知の方法を適宜適用することができる。
【0014】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0015】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0016】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0017】
本実施形態のトレッド部2には、4本の周方向溝3が設けられている。これらの周方向溝3は、2本のクラウン周方向溝5と、2本のショルダー周方向溝6とで構成されている。2本のクラウン周方向溝5は、タイヤ赤道Cを挟む様に配置されている。2本ショルダー周方向溝6は、2本のクラウン周方向溝5を挟む様に配置されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0018】
周方向溝3は、タイヤ周方向に直線状に延びるものや、ジグザグ状に延びるもの等、種々の態様を採用し得る。
【0019】
図2には、トレッド部2の断面図が示されている。図2は、トレッド部2の断面を概念的に示すものであり、トレッド部2の平面視において観察されるサイプや横溝の断面は、図2において省略されている。図2に示されるように、周方向溝3の溝幅は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。周方向溝3の最大の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TW(図1に示す)の2.0%~5.0%である。また、周方向溝3の最大の深さd1は、例えば、5~15mmである。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離に相当する。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、上述の周方向溝3によって5つの陸部4に区分されている。これら5つの陸部4は、1つのクラウン陸部7と、2つのミドル陸部8と、2つのショルダー陸部9とによって構成されている。クラウン陸部7は、2つのクラウン周方向溝5の間に区分されている。ミドル陸部8は、クラウン周方向溝5とショルダー周方向溝6との間に区分されている。ショルダー陸部9は、ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に区分されており、トレッド端Teを含んでいる。
【0021】
本発明のトレッド部2には、複数の横溝10が設けられている。これにより、各陸部4が、横溝10によって区分された複数のブロック11を含むブロック列として構成されている。また、トレッド部2は、複数の第1ブロック13を含んでいる。本実施形態の複数の第1ブロック13は、ショルダー陸部9に含まれている。したがって、複数の第1ブロック13は、トレッド端Teを構成している。
【0022】
図3には、複数の第1ブロック13の拡大図が示されている。図3に示される複数の第1ブロック13は、図1の左側のショルダー陸部9に含まれる。図3に示されるように、複数の第1ブロック13のそれぞれには、少なくとも1つの第1サイプ15が設けられている。望ましい態様として、本実施形態の複数の第1ブロック13のそれぞれには、複数の第1サイプ15が設けられている。
【0023】
本明細書において、「サイプ」とは、微小な幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合う2つの内壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの開口部には、面取り部が設けられても良い。また、後述されるように、第1サイプ15のサイプ底部には、拡幅部が連通する。
【0024】
図4は、第1サイプ15によって区分される空間を概念的に示す拡大斜視図が示されている。図4において、前記空間には薄くドットが施されている。図5には、第1サイプ15のサイプ長さ方向と直交する断面図が示されている。なお、図5は、後述する第1拡幅部21を含む断面図であり、図3のA-A線断面図に相当する。図6には、第1サイプ15の、第1ブロック13の踏面と平行な断面図が示されている。図4~6に示されるように、本発明の第1サイプ15は、サイプ長さ方向と直交する横断面、及び、第1ブロック13の踏面と平行な断面の両方において、ジグザグ状に延びている。
【0025】
図7には、第1サイプ15の長さ方向に沿った断面図が示されている。図7は、図3のB-B線断面図に相当する。なお、図7では、サイプ壁に構成される凹凸を区分する稜線20が、2点鎖線で概念的に示されている。図7に示されるように、第1サイプ15は、少なくとも1つのタイバー18によって、サイプ長さ方向に少なくとも第1部分16と第2部分17とに区分されている。タイバー18は、サイプ底部からタイヤ半径方向外側に局所的に隆起し、かつ、第1ブロック13の踏面13sの手前で終端している。なお、タイバー18と第1ブロック13の踏面13sとの間の領域では、タイバー18の幅方向の中心線をタイヤ半径方向外側に延長した仮想線(図示省略)が、第1部分16と第2部分17との境界となる。
【0026】
図4に示されるように、第1部分16のサイプ底部16dには、第1拡幅部21が連通している。また、図5に示されるように、第1拡幅部21は、第1部分16の幅よりも大きい溝幅を有している。また、図4に示されるように、第2部分17のサイプ底部17dには、第2部分17の幅よりも大きい溝幅を有する第2拡幅部22が連通している。なお、特に断りの無い限り、本明細書において第1拡幅部21について説明された構成は、第2拡幅部22に適用することができる。
【0027】
図8には、図5で示される第1拡幅部21の拡大図が示されている。図8に示されるように、少なくとも第1拡幅部21は、タイヤ半径方向の外側部31と、タイヤ半径方向の内側部32とを含む。また、第1拡幅部21の横断面において、外側部31は、第1サイプ15のサイプ中心線15c側に凸となる一対の第1円弧溝壁部31aによって構成されている。これにより、外側部31は、第1部分16のサイプ底部16dからタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に増加している。なお、サイプ中心線15cは、第1サイプ15の幅方向の中心位置を示す仮想線を第1拡幅部21の底まで延長したものに相当する。
【0028】
一方、内側部32は、第1サイプ15のサイプ中心線15c側とは反対側に凸となる一対の第2円弧溝壁部32aからなることにより、第1拡幅部21の底までタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に減少している。さらに、図4に示されるように、本発明では、第1拡幅部21と第2拡幅部22とは、互いに連通していない。本発明のタイヤ1は、上述の構成を採用したことにより、ディモールド性を確保しつつ、氷上性能及び荷重耐久性を向上させることができる。その理由は、以下の通りである。
【0029】
本発明のタイヤ1の第1サイプ15は、上述の通りジグザグ状に延びている。また、第1サイプ15は、タイバー18によって第1部分16と第2部分17とに区分されている。このような第1サイプ15は、第1ブロック13に接地荷重が作用したとき、互いに向き合うサイプ壁同士が強固に噛み合い、第1ブロック13の剛性を維持できる。また、タイバー18も第1ブロック13の剛性を維持するのに役立つ。その結果、第1ブロック13の倒れ込みが効果的に抑制され、第1サイプ15のサイプ底部での歪を抑制でき、荷重耐久性が向上する。
【0030】
また、図4に示されるように、本発明の第1サイプ15には、第1拡幅部21及び第2拡幅部22が連通しており、かつ、第1拡幅部21と第2拡幅部22とが互いに連通していないため、第1ブロック13が倒れ込んだ場合であっても、第1サイプ15のサイプ底部において歪が分散し、その損傷を抑制することができる。
【0031】
さらに、上述の機序によって第1ブロック13の倒れ込みが抑制されるため、氷上走行時において接地面積を大きく確保し、かつ、第1サイプ15のエッジ効果によって氷上において大きな摩擦力を得ることができる。また、第1サイプ15が第1拡幅部21及び第2拡幅部22を含むため、第1サイプ15が優れた吸水性能を発揮し、氷上性能をさらに高めることができる。
【0032】
さらに、図8に示されるように、本発明では、第1拡幅部21の横断面において、外側部31が一対の第1円弧溝壁部31aからなり、内側部32が一対の第2円弧溝壁部32aからなるため、加硫成形時において、第1拡幅部21を成形するナイフブレードの先端部を、サイプの内部から滑らかに取り出すことができ、ディモールド性を確保することができる。本発明のタイヤ1は、以上の理由により、ディモールド性を確保しつつ、氷上性能及び荷重耐久性を向上させることができる。
【0033】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0034】
図1に示されるように、トレッド部2がタイヤ軸方向に4等分されることにより、トレッド部2が、トレッド端Te側の領域である2つの外側領域2Aと、タイヤ赤道C側の領域である2つの内側領域2Bとに区分されたとき、複数の第1ブロック13は、外側領域2Aに含まれる陸部4に配されているのが望ましい。本実施形態では、第1ブロック13がショルダー陸部9に含まれており、複数の第1ブロック13は、トレッド端Teを構成している。これにより、接地圧が大きくなり易いショルダー陸部9に第1サイプ15が配置されるため、荷重耐久性が確実に向上する。
【0035】
図3に示されるように、1つの第1ブロック13には、複数の第1サイプ15が設けられているのが望ましい。本実施形態では、1つの第1ブロック13に4本の第1サイプ15が設けられており、各第1サイプ15が、第1ブロック13をタイヤ軸方向に横断している。また、本実施形態の第1ブロック13には、第1サイプ15の他にはサイプや溝が設けられていない。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、第1ブロック13に、タイヤ周方向に延びる縦細溝が設けられても良い。なお、本明細書の各図では、1つの第1サイプ15の構成について説明されているが、これらの構成は、上述の各第1サイプ15に展開できるのは言うまでもない。
【0036】
タイヤ周方向で隣り合う2つの第1サイプ15の間隔ta(サイプ中心線同士のタイヤ周方向の距離に相当する。)は、例えば、3.0~7.0mmであり、望ましくは4.0~6.0mmである。これにより、第1ブロック13の偏摩耗を抑制しつつ、優れた氷上性能を発揮することができる。
【0037】
図5に示されるように、第1サイプ15は、その横断面において一定の幅W2でタイヤ半径方向に延びている。また、図6に示されるように、第1サイプ15は、上述の一定の幅W2を維持したまま、サイプ長さ方向にも延びている。すなわち、本実施形態の第1サイプ15は、その全体に亘って一定の幅W2で延びている。前記幅W2は、例えば、1.0mm以下が望ましく、より望ましくは0.2~0.7mmである。これにより、荷重耐久性と氷上性能とがバランス良く向上する。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、タイヤ等のゴム製品において不可避な誤差を許容し得る。このため、第1サイプ15の幅は、その測定位置によって変化するものでも良い。この場合、第1サイプ15の幅の最大値W2Mと最小値W2m(図示省略)との比W2M/W2mは、2.0以下が望ましい。また、前記最大値W2Mは、0.4~0.7mmが望ましい。前記最小値W2mは、0.2~0.4mmが望ましい。
【0038】
図7に示されるように、第1ブロック13の踏面13sから第1拡幅部21の底までの最大の深さd3は、4.0~9.0mmである。同様に、第1ブロック13の踏面から第2拡幅部22の底までの最大の深さd4は、4.0~9.0mmである。これにより、荷重耐久性と氷上性能とをバランス良く向上させることができる。なお、望ましい態様として、本実施形態では、上述の深さd3と深さd4とが同一とされる。
【0039】
タイバー18は、例えば、第1サイプ15をサイプ長さ方向に3等分したときの中央の領域に配置されている。より望ましい態様として、本実施形態のタイバー18は、第1サイプ15の長さ方向の中心位置を含むように配置されているのが望ましい。これにより、第1サイプ15の局所的な変形が抑制され、優れた荷重耐久性が発揮される。
【0040】
本実施形態のタイバー18は、例えば、一定の幅でタイヤ半径方向に延びている。また、タイバー18のタイヤ半径方向の外端部18aは、踏面13s側に向かって凸の円弧状の外面を有している。第1サイプ15の長さ方向に沿った断面におけるタイバー18の最大の幅W5は、例えば、0.5~5.0mmである。
【0041】
第1拡幅部21の底からタイバー18のタイヤ半径方向の外端までの高さh1は、第1ブロック13の踏面13sから第1拡幅部21の底までの最大の深さd3の望ましくは30%以上、より望ましくは40%以上であり、望ましくは80%以下、より望ましくは70%以下である。このようなタイバー18は、荷重耐久性と氷上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0042】
図4に示されるように、第1拡幅部21は、横断面における形状及び面積を維持したまま、第1サイプ15のサイプ長さ方向に直線状に延びている。これにより、第1拡幅部21は、第1サイプ15との連通部を除き、一定の断面形状でサイプ長さ方向に延びる柱状に構成されている。また、第1拡幅部21の横断面における図心の集合が、第1拡幅部21の中心軸となり、この中心軸が直線状に延びている。
【0043】
図5に示されるように、第1拡幅部21の横断面における最大幅L1は、第1サイプ15の横断面における幅の望ましくは2.0倍以上、より望ましくは3.0倍以上であり、望ましくは6.0倍以下、より望ましくは5.0倍以下である。これにより、タイヤ生産時において優れたディモールド性を発揮しつつ、上述の効果が得られる。なお、上述の「第1サイプ15の横断面における幅」とは、本実施形態では一定の幅W2を意味し、幅が測定位置によって異なる場合は、その最大の幅を意味する。
【0044】
図8に示されるように、第1拡幅部21において、第1円弧溝壁部31aの曲率半径r1は、第2円弧溝壁部32aの曲率半径r2よりも大きいのが望ましい。また、前記曲率半径r1は、前記曲率半径r2の5.0倍以下であるのが望ましい。前記曲率半径r2は、サイプの2つの内壁の間の幅の1.2~2.0倍であるのが望ましい。これにより、ディモールド性が確実に向上する。
【0045】
図9には、第2拡幅部22の拡大図が示されている。図9は、図3のC-C線断面図における第2拡幅部22の拡大図に相当する。図9に示されるように、第2拡幅部22は、タイヤ半径方向の外側部41と、タイヤ半径方向の内側部42とを含む。第2拡幅部22の横断面において、外側部41は、第1サイプ15のサイプ中心線15c側に凸となる一対の第1円弧溝壁部41aからなることにより、第2部分17のサイプ底部17dからタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に増加している。また、内側部42は、第1サイプ15のサイプ中心線15c側とは反対側に凸となる一対の第2円弧溝壁部42aからなることにより、第2拡幅部22の底までタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に減少している。これにより、第2拡幅部22を成形するナイフブレードの先端部を、サイプの内部から滑らかに取り出すことができ、ディモールド性をさらに確実に確保することができる。
【0046】
第2拡幅部22は、第1拡幅部21と同じ構成を備えている。すなわち、第1拡幅部21について説明された構成は、第2拡幅部22にも適用することができる。このため、図4に示されるように、第2拡幅部22は、その全長さに亘り、第2部分17のサイプ長さ方向に沿って直線状に延びている。また、図9に示されるように、第2拡幅部22において、第1円弧溝壁部41aの曲率半径r3は、第2円弧溝壁部42aの曲率半径r4よりも大きい。前記曲率半径r3には、上述した第1拡幅部21における曲率半径r1を適用することができる。同様に、前記曲率半径r4には、上述した第1拡幅部21における曲率半径r2を適用することができる。このため、曲率半径r3、r4についての数値範囲の説明は、省略される。
【0047】
同様に、第2拡幅部22の横断面における最大幅L2は、第1サイプ15の横断面における幅の望ましくは2.0倍以上、より望ましくは3.0倍以上であり、望ましくは6.0倍以下、より望ましくは5.0倍以下である。
【0048】
図4に示されるように、第1拡幅部21の容積V1と、第2拡幅部22の容積V2との比はV1/V2は、0.8~1.2程度とされ、本実施形態ではこれらの容積が実質的に同じとされる。
【0049】
別の実施形態では、第1拡幅部21が第2拡幅部22よりもトレッド端Te側に配されており、第1拡幅部21の容積V1が、第2拡幅部22の容積V2よりも大きいものでも良い。この場合、前記容積V1は、前記容積V2の120%~150%が望ましい。この実施形態では、トレッド端Teに近い第1拡幅部21が優れた吸水性を発揮できるため、重点して氷上性能を高めることができ、しかも、ワンダリング性能の向上も期待できる。
【0050】
さらに別の実施形態では、第1拡幅部21が第2拡幅部22よりもトレッド端Te側に配されており、第1拡幅部21の容積V1が、第2拡幅部22の容積V2よりも小さいものでも良い。この場合、前記容積V1は、前記容積V2の50%~80%が望ましい。この実施形態では、トレッド端Teに近い第1拡幅部21の容積が小さいため、トレッド端Te付近での偏摩耗を抑制することができる。
【0051】
図2に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、キャップゴム層Cgとベースゴム層Bgとを含んでいる。キャップゴム層Cgは、トレッド部2の踏面を構成している。ベースゴム層Bgは、キャップゴム層Cgのタイヤ半径方向内側に配されている。キャップゴム層Cgのゴム硬度は、例えば、40~65°である。ベースゴム層Bgは、キャップゴム層Cgよりも大きいゴム硬度を有している。ベースゴム層Bgのゴム硬度は、例えば、50~75°である。なお、本明細書において、ゴム硬度とは、JIS-K6253に準拠し、23℃の環境下におけるデュロメータータイプAによる硬さである。
【0052】
本実施形態では、トレッド部2の踏面から、キャップゴム層Cgとベースゴム層Bgとの境界25までの距離t2は、トレッドゴムの全厚さt1の30%~70%とされる。一方、図5に示されるように、前記境界25から第1拡幅部21及び第2拡幅部22の底までのタイヤ半径方向の最小の距離t3は、0.5mm以上であり、望ましくは1.0~4.0mmである。これにより、第1拡幅部21及び第2拡幅部22の変形に起因する境界25でのゴムの剥離が効果的に抑制される。
【0053】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0054】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0055】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝と、複数の第1ブロックとを含み、
前記複数の第1ブロックのそれぞれには、少なくとも1つの第1サイプが設けられており、
前記第1サイプは、サイプ長さ方向と直交する横断面、及び、前記第1ブロックの踏面と平行な断面の両方において、ジグザグ状に延びており、
前記第1サイプは、それぞれ、サイプ底部からタイヤ半径方向外側に局所的に隆起し、かつ、前記踏面の手前で終端する少なくとも1つのタイバーにより、サイプ長さ方向に少なくとも第1部分と第2部分とに区分され、
前記第1部分のサイプ底部には、前記第1部分の幅よりも大きい溝幅を有する第1拡幅部が連通しており、
前記第2部分のサイプ底部には、前記第2部分の幅よりも大きい溝幅を有する第2拡幅部が連通しており、
少なくとも前記第1拡幅部は、タイヤ半径方向の外側部と、タイヤ半径方向の内側部とを含み、
前記第1拡幅部の横断面において、
前記外側部は、前記第1サイプのサイプ中心線側に凸となる一対の第1円弧溝壁部からなることにより、前記サイプ底部からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に増加し、
前記内側部は、前記第1サイプの前記サイプ中心線側とは反対側に凸となる一対の第2円弧溝壁部からなることにより、前記第1拡幅部の底までタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に減少し、
前記第1拡幅部と前記第2拡幅部とは、互いに連通していない、
タイヤ。
[本発明2]
前記第1拡幅部は、その全長さに亘り、前記第1部分のサイプ長さ方向に沿って直線状に延びている、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記第1円弧溝壁部の曲率半径は、前記第2円弧溝壁部の曲率半径よりも大きい、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記第2拡幅部は、タイヤ半径方向の外側部と、タイヤ半径方向の内側部とを含み、
前記第2拡幅部の横断面において、
前記外側部は、前記第1サイプのサイプ中心線側に凸となる一対の第1円弧溝壁部からなることにより、前記サイプ底部からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に増加し、
前記内側部は、前記第1サイプの前記サイプ中心線側とは反対側に凸となる一対の第2円弧溝壁部からなることにより、前記第2拡幅部の底までタイヤ半径方向内側に向かって溝幅が連続的に減少している、本発明1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明5]
前記第2拡幅部は、その全長さに亘り、前記第2部分のサイプ長さ方向に沿って直線状に延びている、本発明4に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記第2拡幅部において、前記第1円弧溝壁部の曲率半径は、前記第2円弧溝壁部の曲率半径よりも大きい、本発明4に記載のタイヤ。
[本発明7]
前記第1拡幅部の前記横断面における最大幅は、前記第1サイプの前記横断面における幅の2.0~6.0倍である、本発明1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記第2拡幅部の前記横断面における最大幅は、前記第1サイプの前記横断面における幅の2.0~6.0倍である、本発明1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明9]
前記複数の第1ブロックは、前記トレッド部のトレッド端を構成している、本発明1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明10]
前記第1拡幅部の底から前記タイバーのタイヤ半径方向の外端までの高さは、前記第1ブロックの踏面から前記第1拡幅部の底までの最大の深さの30%~80%である、本発明1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明11]
前記第1サイプの長さ方向に沿った断面における前記タイバーの幅は、0.5~5.0mmである、本発明1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0056】
2 トレッド部
3 周方向溝
10 横溝
13 第1ブロック
15 第1サイプ
16 第1部分
16d 第1部分のサイプ底部
17 第2部分
17d 第2部分のサイプ底部
18 タイバー
21 第1拡幅部
22 第2拡幅部
31 外側部
31a 第1円弧溝壁部
32 内側部
32a 第2円弧溝壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9