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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076125
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20240529BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C19/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187528
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】湯川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松波 翔
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BA02
3D131BC01
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC24
3D131BC31
3D131BC38
3D131BC44
3D131BC55
3D131CB03
3D131LA13
(57)【要約】
【課題】 効率的に吸音することでノイズ性能を向上し得る空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 本発明は、トレッド部2を有する空気入りタイヤ1である。空気入りタイヤ1は、トレッド部2の内面側にスポンジ状の吸音体5が配されている。吸音体5の23℃における25%圧縮時の硬さH(N)と吸音体5のタイヤ半径方向の高さT(mm)との比(H/T)は、1.0~2.5である。吸音体5の高さT(mm)とタイヤ軸方向の幅W(mm)との比(T/W)は、0.25~1.20である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部の内面側にスポンジ状の吸音体が配されており、
前記吸音体の23℃における25%圧縮時の硬さH(N)と前記吸音体のタイヤ半径方向の高さT(mm)との比(H/T)は、1.0~2.5であり、
前記吸音体の前記高さT(mm)とタイヤ軸方向の幅W(mm)との比(T/W)は、0.25~1.20である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記吸音体の前記比(H/T)が、1.2~2.1である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記吸音体の前記比(T/W)が、0.65~1.13である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記吸音体のセル数は、38~50個/25mmである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記吸音体のタイヤ子午線断面における断面形状は、矩形状である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記吸音体のタイヤ子午線断面における断面積は、タイヤ子午線断面におけるタイヤ内腔の断面積の5%~15%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記吸音体は、両面テープ、接着剤、粘着剤又はシーラント材を介して前記トレッド部の前記内面側に固着される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記吸音体は、ウレタンフォームから形成される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部を有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部の内面側にスポンジ状の吸音体が固着された空気入りタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1は、制音体の高さや形状と、そのスポンジ材の硬さ、引張強さ及び比重とを特定することで、長期にわたりロードノイズを低減し得る空気入りタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-306302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸音体が固着された空気入りタイヤは、トレッド部の内面側にスポンジ状の吸音体が固着することにより、コスト増加、重量増加及び蓄熱の影響により、コストパフォーマンス、操縦安定性能、低燃費性能、耐久性能等の各性能が低下する場合があり、より効率的に吸音し得る空気入りタイヤが望まれていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、効率的に吸音することでノイズ性能を向上し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部の内面側にスポンジ状の吸音体が配されており、前記吸音体の23℃における25%圧縮時の硬さH(N)と前記吸音体のタイヤ半径方向の高さT(mm)との比(H/T)は、1.0~2.5であり、前記吸音体の前記高さT(mm)とタイヤ軸方向の幅W(mm)との比(T/W)は、0.25~1.20である、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上述の構成を備えることにより、効率的に吸音してノイズ性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の正規状態の空気入りタイヤ1を示す回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。ここで、「正規状態」とは、空気入りタイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、空気入りタイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0010】
「正規リム」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、当該規格がタイヤ毎に定めるリムRであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。「正規リム」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、リム組み可能であって、エア漏れを生じさせないリムRのうち、最もリム径が小さく、その中で最もリム幅が小さいリムRである。
【0011】
「正規内圧」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定める空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。「正規内圧」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める空気圧である。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、環状に延びるトレッド部2と、トレッド部2のタイヤ軸方向の両側の一対のサイドウォール部3と、サイドウォール部3のそれぞれのタイヤ半径方向の内側のビード部4とを有している。
【0013】
本実施形態のトレッド部2は、タイヤ半径方向の外面側が走行時に路面に接する接地面2sを構成している。サイドウォール部3は、トレッド部2のタイヤ軸方向の両側からタイヤ半径方向の内側に延びるのが望ましい。トレッド部2とサイドウォール部3との間には、例えば、バットレス部が設けられている。ビード部4は、例えば、リム組みされたときにリムRに接する部分を含んでいる。
【0014】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2の内面側にスポンジ状の吸音体5が配されている。スポンジ状の吸音体5は、内部に複数のセルを有する多孔質材であるのが望ましい。このような吸音体5は、特定の領域の周波数の振動を吸収することができ、空気入りタイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。
【0015】
吸音体5の23℃における25%圧縮時の硬さH(N)と吸音体5のタイヤ半径方向の高さT(mm)との比(H/T)は、好ましくは、1.0~2.5である。また、吸音体5の高さT(mm)とタイヤ軸方向の幅W(mm)との比(T/W)は、好ましくは、0.25~1.20である。ここで、23℃における25%圧縮時の硬さH(N)は、JIS K6400-2の規定に準じて測定された値である。
【0016】
このような吸音体5は、その固有振動数が空気入りタイヤ1の共振周波数に近く、空気入りタイヤ1と共振させることで160~250Hz付近のノイズを減衰することができ、吸音効率を大幅に向上させることができる。このため、本実施形態の空気入りタイヤ1は、効率的に吸音してノイズ性能を向上することができる。
【0017】
すなわち、本実施形態の空気入りタイヤ1は、吸音体5の寸法や硬さを特定の比率に限定することで、別途ウエイト等を設けることなく空気入りタイヤ1と吸音体5と共振させることができる。このような観点から、吸音体5の硬さH(N)と高さT(mm)との比(H/T)は、より好ましくは、1.2~2.1である。また、吸音体5の高さT(mm)と幅W(mm)との比(T/W)は、より好ましくは、0.65~1.13であり、更に好ましくは、0.80~1.00である。
【0018】
より好ましい態様として、吸音体5は、両面テープ、接着剤、粘着剤又はシーラント材を介してトレッド部2の内面側に固着されている。このような吸音体5は、取付作業が容易であり、製造コストを低減させることに役立つ。なお、吸音体5は、例えば、トレッド部2の内面側に固着されることなく配されていてもよい。
【0019】
本実施形態の吸音体5のタイヤ子午線断面における断面形状は、矩形状である。このような吸音体5は、空気入りタイヤ1と共振させ易く、吸音性能を向上させることができる。また、このような吸音体5は、製造が容易であり、製造コストを低減させることに役立つ。
【0020】
本実施形態の吸音体5は、タイヤ周方向に連続して設けられている。このような吸音体5は、空気入りタイヤ1の全周にわたり均等に吸音効果を奏することができる。なお、吸音体5は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、タイヤ周方向に一部に断続する部分を有していてもよく、複数の吸音体5が固着されていてもよい。
【0021】
吸音体5は、例えば、ウレタンフォームから形成されている。ウレタンフォームは、周知の製造方法で形成されたものでよい。このような吸音体5は、量産品から選択可能であり、製造コストを低減させることに役立つ。
【0022】
吸音体5の高さTは、好ましくは、10~80mmである。吸音体5の高さTが10mm以上であることで、吸音体5を空気入りタイヤ1と共振させることができる。吸音体5の高さTが80mm以下であることで、操縦安定性能やリムRへの組み付け作業に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0023】
吸音体5のセル数は、好ましくは、38~50個/25mmである。ここで、セル数は、JIS K6400-1の附属書1に準じて測定された値である。吸音体5のセル数が38個/25mm以上であることで、セルの大きさが過度に大きくなることを抑制し、音抜けを防止し吸音性能を向上させることができる。吸音体5のセル数が50個/25mm以下であることで、セルの大きさが過度に小さくなることを抑制し、一定の通気性を確保し吸音性能を向上させることができる。
【0024】
吸音体5のタイヤ子午線断面における断面積は、好ましくは、タイヤ内腔1aのタイヤ子午線断面における断面積の5%~15%である。ここで、吸音体5の断面積は、内部の空洞のセルを含めた外形から定められる面積である。また、タイヤ内腔1aの断面積は、正規状態の空気入りタイヤ1の内面とリムRの外面とにより囲まれた空間の面積である。
【0025】
吸音体5の断面積がタイヤ内腔1aの断面積の5%以上であることで、吸音体5による吸音効果を確実に奏することができる。吸音体5の断面積がタイヤ内腔1aの断面積の15%以下であることで、吸音体5によるコスト増加、重量増加及び蓄熱作用を抑制することができる。
【0026】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【0027】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0028】
[本発明1]
トレッド部を有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部の内面側にスポンジ状の吸音体が配されており、
前記吸音体の23℃における25%圧縮時の硬さH(N)と前記吸音体のタイヤ半径方向の高さT(mm)との比(H/T)は、1.0~2.5であり、
前記吸音体の前記高さT(mm)とタイヤ軸方向の幅W(mm)との比(T/W)は、0.25~1.20である、
空気入りタイヤ。
【0029】
[本発明2]
前記吸音体の前記比(H/T)が、1.2~2.1である、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
【0030】
[本発明3]
前記吸音体の前記比(T/W)が、0.65~1.13である、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【0031】
[本発明4]
前記吸音体のセル数は、38~50個/25mmである、本発明1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0032】
[本発明5]
前記吸音体のタイヤ子午線断面における断面形状は、矩形状である、本発明1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0033】
[本発明6]
前記吸音体のタイヤ子午線断面における断面積は、タイヤ子午線断面におけるタイヤ内腔の断面積の5%~15%である、本発明1ないし5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0034】
[本発明7]
前記吸音体は、両面テープ、接着剤、粘着剤又はシーラント材を介して前記トレッド部の前記内面側に固着される、本発明1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0035】
[本発明8]
前記吸音体は、ウレタンフォームから形成される、本発明1ないし7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0036】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
5 吸音体
図1