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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076137
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】物標検出装置及び物標検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/52 20060101AFI20240529BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G01S13/52
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187544
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】矢野 邦哲
(72)【発明者】
【氏名】星 将広
【テーマコード(参考)】
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL04
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AE07
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK14
(57)【要約】
【課題】本開示は、監視エリア内において、測距センサを定点監視に適用するのではなく、測距センサを移動体に搭載するときにも、各信号点群を動体物標又は静止物標として正しく判定することを目的とする。
【解決手段】本開示は、各信号点群の方位に基づいて、測距センサ1と各信号点群とを結ぶ方向での移動体M1に対する各信号点群の相対速度を、測距センサ1の正面方向と平行方向での移動体M1に対する各信号点群の相対速度に補正する相対速度補正部22と、測距センサ1の正面方向と平行方向での移動体M1に対する各信号点群の相対速度が、移動体M1の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、同一ではない/ほぼ同一であるときに、各信号点群をそれぞれ動体物標/静止物標として判定する動体物標判定部24と、を備えることを特徴とする物標検出装置2である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される測距センサから、各信号点群の距離に関する情報と、各信号点群の方位に関する情報と、前記測距センサと各信号点群とを結ぶ方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度に関する情報と、を取得する信号点群取得部と、
各信号点群の方位に基づいて、前記測距センサと各信号点群とを結ぶ方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度を、前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度に補正する相対速度補正部と、
前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度が、前記移動体の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、同一ではない/ほぼ同一であるときに、各信号点群をそれぞれ動体物標/静止物標として判定する動体物標判定部と、
を備えることを特徴とする物標検出装置。
【請求項2】
前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する相対速度が、距離及び/又は方位によらないでほぼ同一である各信号点群に基づいて、周辺静止物標に対する前記移動体の絶対速度を推定する移動体速度推定部、をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標検出装置。
【請求項3】
前記移動体に搭載される前記測距センサと別個の速度センサから、静止座標系に対する前記移動体の絶対速度の情報を取得する移動体速度取得部、をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標検出装置。
【請求項4】
前記相対速度補正部は、前記測距センサの正面方向から90度の側面方向を除いて、前記測距センサの正面方向から所定角度までの方向範囲において、前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度への補正を実行し、
前記動体物標判定部は、前記測距センサの正面方向から90度の側面方向を除いて、前記測距センサの正面方向から前記所定角度までの方向範囲において、各信号点群についての前記動体物標又は前記静止物標としての判定を実行する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の物標検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の物標検出装置が備える各処理部が実行する各処理ステップを、前記物標検出装置としてのコンピュータに順に実行させるための物標検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各信号点群を動体物標又は静止物標として判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
監視エリア内(倉庫内又はオフィス内等)において、周辺障害物等の静止物標によるクラッタを抑圧したうえで、人間等の動体物標による信号成分を抽出する技術が、需要を高めており、非特許文献1及び非特許文献2等に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】レーダー装置の変遷、[online]、日本無線株式会社、[令和4年9月30日検索]、<URL:https://www.jrc.co.jp/jp/about/activities/technical_information/report60/pdf/JRCreview60_06.pdf>
【非特許文献2】動体検知のための複数の方法、[online]、Secure Insights、[令和4年9月30日検索]、<URL:https://www.axis.com/blog/secure-insights-jp/2019/05/29/motion-detection/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1では、レーダセンサのMTI(Moving Target Indicator)を用いて、各信号点群を動体物標又は静止物標として判定する。つまり、各信号点群のドップラ速度の相違に基づいて、各信号点群を動体物標又は静止物標として判定する。しかし、レーダセンサを定点監視に適用するのではなく、レーダセンサを移動体に搭載するときには、各信号点群を動体物標又は静止物標として判定することができない。なぜならば、移動体に対する各信号点群の相対速度が同一であっても、各信号点群の方位が同一でなければ、各信号点群のドップラ速度は同一でないからである。
【0005】
非特許文献2では、カメラ又は赤外線センサを用いて、各画素領域を動体物標又は静止物標として判定する。つまり、前フレームと現フレームとの差分に基づいて、各画素領域を動体物標又は静止物標として判定する。しかし、カメラ又は赤外線センサを定点監視に適用するのではなく、カメラ又は赤外線センサを移動体に搭載するときには、各画素領域を動体物標又は静止物標として判定することができない。なぜならば、本来では静止している物標を動体物標として誤って判定する可能性が高いことから、本来から動いている物標のみを動体物標として正しく判定することが困難であるからである。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、監視エリア内において、測距センサを定点監視に適用するのではなく、測距センサを移動体に搭載するときにも、各信号点群を動体物標又は静止物標として正しく判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、各信号点群の方位に基づいて、測距センサと各信号点群とを結ぶ方向での移動体に対する各信号点群の相対速度(ドップラ速度)を、測距センサの正面方向と平行方向での移動体に対する各信号点群の相対速度(正面方向速度)に補正する。ここで、移動体に対する各信号点群の相対速度が同一であるが、各信号点群の方位が同一でなければ、各信号点群の「ドップラ速度」は同一でないが、各信号点群の「正面方向速度」は同一である。そこで、各信号点群の「正面方向速度」が、移動体の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、同一ではない/ほぼ同一であるときに、各信号点群をそれぞれ動体物標/静止物標として判定する。
【0008】
具体的には、本開示は、移動体に搭載される測距センサから、各信号点群の距離に関する情報と、各信号点群の方位に関する情報と、前記測距センサと各信号点群とを結ぶ方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度に関する情報と、を取得する信号点群取得部と、各信号点群の方位に基づいて、前記測距センサと各信号点群とを結ぶ方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度を、前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度に補正する相対速度補正部と、前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度が、前記移動体の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、同一ではない/ほぼ同一であるときに、各信号点群をそれぞれ動体物標/静止物標として判定する動体物標判定部と、を備えることを特徴とする物標検出装置である。
【0009】
この構成によれば、監視エリア内において、測距センサを移動体に搭載するときにも、静止物標の各信号点群の正面方向速度を、移動体の絶対速度の逆方向速度に揃えることにより、各信号点群を動体物標又は静止物標として正しく判定することができる。
【0010】
また、本開示は、前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する相対速度が、距離及び/又は方位によらないでほぼ同一である各信号点群に基づいて、周辺静止物標に対する前記移動体の絶対速度を推定する移動体速度推定部、をさらに備えることを特徴とする物標検出装置である。
【0011】
この構成によれば、監視エリア内において、周辺障害物等の静止物標が存在するときにも、車速パルスセンサ又は慣性計測装置等の速度センサを移動体に搭載することなく、周辺静止物標に対する移動体の絶対速度(ひいては逆方向速度)を推定することができる。
【0012】
また、本開示は、前記移動体に搭載される前記測距センサと別個の速度センサから、静止座標系に対する前記移動体の絶対速度の情報を取得する移動体速度取得部、をさらに備えることを特徴とする物標検出装置である。
【0013】
この構成によれば、監視エリア内において、周辺障害物等の静止物標が存在しないときにも、車速パルスセンサ又は慣性計測装置等の速度センサを移動体に搭載することにより、静止座標系に対する移動体の絶対速度(ひいては逆方向速度)を取得することができる。
【0014】
また、本開示は、前記相対速度補正部は、前記測距センサの正面方向から90度の側面方向を除いて、前記測距センサの正面方向から所定角度までの方向範囲において、前記測距センサの正面方向と平行方向での前記移動体に対する各信号点群の相対速度への補正を実行し、前記動体物標判定部は、前記測距センサの正面方向から90度の側面方向を除いて、前記測距センサの正面方向から前記所定角度までの方向範囲において、各信号点群についての前記動体物標又は前記静止物標としての判定を実行することを特徴とする物標検出装置である。
【0015】
この構成によれば、測距センサの正面方向から90度の側面方向から離れた方向と比べて、測距センサの正面方向から90度の側面方向に近い方向において、各信号点群のドップラ速度から各信号点群の正面方向速度への補正精度が低下するところ、各信号点群についての動体物標又は静止物標としての判定を回避することができる。
【0016】
また、本開示は、以上に記載の物標検出装置が備える各処理部が実行する各処理ステップを、前記物標検出装置としてのコンピュータに順に実行させるための物標検出プログラムである。
【0017】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0018】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本開示は、監視エリア内において、測距センサを定点監視に適用するのではなく、測距センサを移動体に搭載するときにも、各信号点群を動体物標又は静止物標として正しく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の物標検出システムの構成を示す図である。
図2】第1実施形態の物標検出処理の手順を示す図である。
図3】第1実施形態の物標検出処理の具体例を示す図である。
図4】第1実施形態の物標検出処理の実装結果を示す図である。
図5】第1実施形態の物標検出処理の実装結果を示す図である。
図6】第1実施形態の物標検出処理の実装結果を示す図である。
図7】第1実施形態の物標検出処理の実装結果を示す図である。
図8】第2実施形態の物標検出システムの構成を示す図である。
図9】第2実施形態の物標検出処理の手順を示す図である。
図10】第2実施形態の物標検出処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0022】
(第1実施形態の物標検出システムの構成)
第1実施形態では、監視エリア内(倉庫内又はオフィス内等)において、測距センサを移動体に搭載するときにも、かつ、周辺障害物等の静止物標が存在するときにも、各信号点群を人間等の動体物標又は周辺障害物等の静止物標として正しく判定する。
【0023】
第1実施形態の物標検出システムの構成を図1に示す。物標検出システムD1は、測距センサ1、物標検出装置2及び物標表示装置3を備える。測距センサ1は、車両等の移動体M1に搭載される、レーダセンサ又はLiDAR(Light Detection And Ranging)センサ等である。ただし、LiDARセンサは、距離及び方位のみならず、ドップラ速度を取得する必要がある。物標検出装置2は、各信号点群を動体物標又は静止物標として判定する。物標表示装置3は、動体物標の距離、方位及び速度を表示するとともに、静止物標の距離、方位及び速度を重畳して表示してもよい。
【0024】
物標検出装置2は、信号点群取得部21、相対速度補正部22、移動体速度推定部23及び動体物標判定部24を備える。物標検出装置2は、図2に示す物標検出プログラムを、コンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0025】
第1実施形態の物標検出処理の手順を図2に示す。第1実施形態の物標検出処理の具体例を図3に示す。図3では、監視エリア内(倉庫内又はオフィス内等)において、周辺障害物等の静止物標T0、T2、T3が存在し、人間等の動体物標T1が存在する。
【0026】
信号点群取得部21は、移動体M1に搭載される測距センサ1から、各信号点群の距離に関する情報と、各信号点群の方位に関する情報と、測距センサ1と各信号点群とを結ぶ方向での移動体M1に対する各信号点群の相対速度(第1実施形態の以下の説明では、「ドップラ速度」という。)に関する情報と、を取得する(ステップS1)。
【0027】
図3では、測距センサ1の正面方向をY軸方向とし、測距センサ1の側面方向をX軸方向とし、移動体M1の進行方向をY軸方向とする。静止物標T0の方位は、測距センサ1の正面方向であり、静止物標T0のドップラ速度は、移動体M1に近づく方向にV’である。動体物標T1の方位は、測距センサ1の正面方向から角度αの方向であり、動体物標T1のドップラ速度は、移動体M1に近づく方向にV’である。静止物標T2の方位は、測距センサ1の正面方向から角度αの方向であり、静止物標T2のドップラ速度は、移動体M1に近づく方向にV’である。静止物標T3の方位は、測距センサ1の正面方向から角度αの方向であり、静止物標T3のドップラ速度は、移動体M1に近づく方向にV’である。静止物標T0、T2、T3及び動体物標T1の距離は、問わない。
【0028】
相対速度補正部22は、各信号点群の方位に基づいて、各信号点群のドップラ速度を、測距センサ1の正面方向と平行方向での移動体M1に対する各信号点群の相対速度(第1実施形態の以下の説明では、「正面方向速度」という。)に補正する(ステップS2)。
【0029】
図3では、静止物標T0の正面方向速度は、移動体M1に近づく方向にV(=V’/cоs(0)=V’)である。動体物標T1の正面方向速度は、移動体M1に近づく方向にV(=V’/cоs(α))である。静止物標T2の正面方向速度は、移動体M1に近づく方向にV(=V’/cоs(α))である。静止物標T3の正面方向速度は、移動体M1に近づく方向にV(=V’/cоs(α))である。
【0030】
移動体速度推定部23は、正面方向速度が距離及び/又は方位によらないでほぼ同一である各信号点群に基づいて、周辺静止物標に対する移動体M1の絶対速度を推定する(ステップS3)。ここで、正面方向速度が距離及び/又は方位によらないでほぼ同一である各信号点群は、周辺静止物標によるものである。一方で、正面方向速度が距離及び/又は方位によっては相違している各信号点群は、人間等の動体物標によるものである。
【0031】
図3では、周辺静止物標に対する移動体M1の絶対速度は、正面方向速度V、V、Vが距離及び/又は方位によらないでほぼ同一である静止物標T0、T2、T3に基づいて、測距センサ1の正面方向にV(≒V、V、V)である。
【0032】
動体物標判定部24は、各信号点群の正面方向速度が、周辺静止物標に対する移動体M1の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、同一ではないときに、各信号点群を動体物標として判定する(ステップS4、NO、S5)。
【0033】
動体物標判定部24は、各信号点群の正面方向速度が、周辺静止物標に対する移動体M1の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、ほぼ同一であるときに、各信号点群を静止物標として判定する(ステップS4、YES、S6)。
【0034】
図3では、静止物標T0、T2、T3の正面方向速度V、V、Vは、周辺静止物標に対する移動体M1の絶対速度Vの逆方向速度と比べて、ほぼ同一であり、静止物標T0、T2、T3は、周辺障害物等の静止物標として正しく判定される。動体物標T1の正面方向速度Vは、周辺静止物標に対する移動体M1の絶対速度Vの逆方向速度と比べて、同一ではなく、動体物標T1は、人間等の動体物標として正しく判定される。
【0035】
つまり、監視エリア内において、測距センサ1を移動体M1に搭載するときにも、静止物標の各信号点群の正面方向速度を、移動体M1の絶対速度の逆方向速度に揃えることにより、各信号点群を動体物標又は静止物標として正しく判定することができる。
【0036】
そして、監視エリア内において、周辺障害物等の静止物標が存在するときにも、車速パルスセンサ又は慣性計測装置等の速度センサを移動体M1に搭載することなく、周辺静止物標に対する移動体M1の絶対速度(ひいては逆方向速度)を推定することができる。
【0037】
なお、相対速度補正部22は、測距センサ1の正面方向から90度の側面方向を除いて、測距センサ1の正面方向から所定角度-α~αの方向範囲において、各信号点群の正面方向速度への補正を実行してもよい(ステップS2)。
【0038】
また、動体物標判定部24は、測距センサ1の正面方向から90度の側面方向を除いて、測距センサ1の正面方向から所定角度-α~αの方向範囲において、各信号点群についての動体物標又は静止物標としての判定を実行してもよい(ステップS4~S6)。
【0039】
つまり、測距センサ1の視野角が広いときでも、測距センサ1の正面方向から90度の側面方向から離れた方向と比べて、測距センサ1の正面方向から90度の側面方向に近い方向において、各信号点群のドップラ速度V’から各信号点群の正面方向速度V=V’/cоs(α)≒V’/cоs(90°)への補正精度が低下するところ、各信号点群についての動体物標又は静止物標としての判定を回避することができる。
【0040】
図3では、移動体M1の進行方向は、直線方向としている。変形例として、移動体M1の進行方向は、旋回方向としてもよい。ただし、各信号点群のドップラ速度V’から各信号点群の正面方向速度V=V’/cоs(α)への補正精度が低下しないように、移動体M1の進行方向は、旋回方向であっても直線方向に近いことが望ましい。
【0041】
(第1実施形態の物標検出処理の実装結果)
第1実施形態の物標検出処理の実装結果を図4に示す。図4の左欄では、監視エリア内(倉庫内)において、測距センサ1(レーダセンサ)を移動体M1に搭載するときにも、かつ、静止物標ST(周辺障害物)が存在するときにも、各信号点群を動体物標MT(人間)又は静止物標ST(周辺障害物)として正しく判定しようとしている。
【0042】
図4の中欄では、測距センサ1の正面方向/側面方向をY軸方向/X軸方向とするPPI(Plan Position Indicator)画像を示す。静止物標ST及び動体物標MTの各信号点群は、PPI画像のみでは区別することができない。
【0043】
図4の右上欄では、測距センサ1と各信号点群との間の直線距離Rを横軸とし、各信号点群のドップラ速度V’及び正面方向速度Vを縦軸とするグラフを示す。相対速度補正前では、静止物標STのドップラ速度V’は、多数のデータがばらついており、動体物標MTのドップラ速度V’は、少数のデータが観測されている。相対速度補正後では、静止物標STの正面方向速度Vは、移動体M1の絶対速度の逆方向速度に揃っており、動体物標MTの正面方向速度Vは、移動体M1の絶対速度の逆方向速度と異なっている。相対速度補正後では、各信号点群の正面方向速度Vに対して、適切な閾値を設定することにより、各信号点群を動体物標MT又は静止物標STとして正しく判定することができる。
【0044】
図4の右下欄では、測距センサ1と各信号点群との間の直線距離Rを横軸とし、各信号点群の信号強度Pを縦軸とするグラフを示す。動体物標MTの信号強度Pのデータは、静止物標STの信号強度Pのデータに埋もれているが、図4の右上欄に示したように、各信号点群を動体物標MT又は静止物標STとして正しく判定することができる。図4の右下欄の最大強度のデータが、ある静止物標STの信号強度Pによるものと考えて、当該静止物標STの正面方向速度Vに基づいて、移動体M1の絶対速度を推定することもできる。
【0045】
第1実施形態の物標検出処理の実装結果を図5~7にも示す。図5~7の左欄でも、監視エリア内(倉庫内)において、測距センサ1(レーダセンサ)を移動体M1に搭載するときにも、かつ、静止物標ST(周辺障害物)が存在するときにも、各信号点群を動体物標MT(人間)又は静止物標ST(周辺障害物)として正しく判定しようとしている。図5の左欄では、動体物標MTは遠距離から接近しており、図6の左欄では、動体物標MTは中距離を経ており、図7の左欄では、動体物標MTは近距離へと接近している。
【0046】
図5~7の中欄では、測距センサ1の正面方向/側面方向をY軸方向/X軸方向とするPPI画像を示す。信号代表点は、信号点群の中から抽出され、動体判定点は、代表信号点の中から抽出される。図5の中欄では、動体判定点は遠距離に存在し、図6の中欄では、動体判定点は中距離に存在し、図7の中欄では、動体判定点は近距離に存在する。しかし、動体判定点及び非動体判定点は、PPI画像のみでは区別することができない。
【0047】
図5~7の右欄では、測距センサ1と各信号点群との間の直線距離Rを横軸とし、各信号点群の正面方向速度Vを縦軸とするグラフを示す。信号代表点は、信号点群の中から抽出され、動体判定点は、代表信号点の中から抽出される。相対速度補正後では、非動体判定点の正面方向速度Vは、移動体M1の絶対速度の逆方向速度に揃っており、動体判定点の正面方向速度Vは、移動体M1の絶対速度の逆方向速度と異なっている。相対速度補正後では、各信号点群の正面方向速度Vに対して、適切な閾値を設定することにより、各信号点群を動体判定点又は非動体判定点として正しく判定することができる。そして、図5の右欄では、動体判定点は遠距離から接近しており、図6の右欄では、動体判定点は中距離を経ており、図7の右欄では、動体判定点は近距離へと接近している。
【0048】
(第2実施形態の物標検出システムの構成)
第2実施形態では、監視エリア内(障害物等がない開放空間等)において、測距センサを移動体に搭載するときにも、かつ、周辺障害物等の静止物標が存在しないときにも、各信号点群を人間等の動体物標又は人間以外等の静止物標として正しく判定する。
【0049】
第2実施形態の物標検出システムの構成を図8に示す。物標検出システムD2は、測距センサ4、速度センサ5、物標検出装置6及び物標表示装置7を備える。測距センサ4は、車両等の移動体M2に搭載される、レーダセンサ又はLiDARセンサ等である。ただし、LiDARセンサは、距離及び方位のみならず、ドップラ速度を取得する必要がある。速度センサ5は、車両等の移動体M2に搭載される、測距センサ4と別個の車速パルスセンサ(移動体M2の車輪の空転等があり得る。)又は慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)等である。物標検出装置6は、各信号点群を動体物標又は静止物標として判定する。物標表示装置7は、動体物標の距離、方位及び速度を表示するとともに、静止物標の距離、方位及び速度を重畳して表示してもよい。
【0050】
物標検出装置6は、信号点群取得部61、相対速度補正部62、移動体速度取得部63及び動体物標判定部64を備える。物標検出装置6は、図9に示す物標検出プログラムを、コンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0051】
第2実施形態の物標検出処理の手順を図9に示す。第2実施形態の物標検出処理の具体例を図10に示す。図10では、監視エリア内(障害物等がない開放空間等)において、人間以外等の静止物標T5が存在し、人間等の動体物標T4が存在する。
【0052】
信号点群取得部61は、移動体M2に搭載される測距センサ4から、各信号点群の距離に関する情報と、各信号点群の方位に関する情報と、測距センサ4と各信号点群とを結ぶ方向での移動体M2に対する各信号点群の相対速度(第2実施形態の以下の説明では、「ドップラ速度」という。)に関する情報と、を取得する(ステップS11)。
【0053】
図10では、測距センサ4の正面方向をY軸方向とし、測距センサ4の側面方向をX軸方向とし、移動体M2の進行方向をY軸方向とする。静止物標T5(存在しなくてもよい。)の方位は、測距センサ4の正面方向から角度αの方向であり、静止物標T5のドップラ速度は、移動体M2に近づく方向にV’である。動体物標T4の方位は、測距センサ4の正面方向から角度αの方向であり、動体物標T4のドップラ速度は、移動体M2に近づく方向にV’である。静止物標T5及び動体物標T4の距離は、問わない。
【0054】
相対速度補正部62は、各信号点群の方位に基づいて、各信号点群のドップラ速度を、測距センサ4の正面方向と平行方向での移動体M2に対する各信号点群の相対速度(第2実施形態の以下の説明では、「正面方向速度」という。)に補正する(ステップS12)。
【0055】
図10では、静止物標T5(存在しなくてもよい。)の正面方向速度は、移動体M2に近づく方向にV(=V’/cоs(α))である。動体物標T4の正面方向速度は、移動体M2に近づく方向にV(=V’/cоs(α))である。
【0056】
移動体速度取得部63は、速度センサ5から、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度の情報を取得する(ステップS13)。ここで、速度センサ5は、移動体M2の車輪の空転等があり得ることに留意することが望ましい。そして、速度センサ5は、測距センサ4の測距データの出力と協調して速度データを出力することが望ましい。
【0057】
図10では、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度は、測距センサ1の正面方向にVである。ここで、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度Vは、静止物標T5(存在しなくてもよい。)の正面方向速度Vとほぼ同一である。一方で、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度Vは、動体物標T4の正面方向速度Vと同一ではない。
【0058】
動体物標判定部64は、各信号点群の正面方向速度が、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、同一ではないときに、各信号点群を動体物標として判定する(ステップS14、NO、S15)。
【0059】
動体物標判定部64は、各信号点群の正面方向速度が、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度と絶対値が同一であり符号が逆符号である逆方向速度と比べて、ほぼ同一であるときに、各信号点群を静止物標として判定する(ステップS14、YES、S16)。
【0060】
図10では、静止物標T5(存在しなくてもよい。)の正面方向速度Vは、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度Vの逆方向速度と比べて、ほぼ同一であり、静止物標T5は、人間以外等の静止物標として正しく判定される。動体物標T4の正面方向速度Vは、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度Vの逆方向速度と比べて、同一ではなく、動体物標T4は、人間等の動体物標として正しく判定される。
【0061】
つまり、監視エリア内において、測距センサ4を移動体M2に搭載するときにも、静止物標の各信号点群の正面方向速度を、移動体M2の絶対速度の逆方向速度に揃えることにより、各信号点群を動体物標又は静止物標として正しく判定することができる。
【0062】
そして、監視エリア内において、周辺障害物等の静止物標が存在しないときにも、車速パルスセンサ又は慣性計測装置等の速度センサ5を移動体M2に搭載することにより、静止座標系に対する移動体M2の絶対速度(ひいては逆方向速度)を取得することができる。
【0063】
なお、相対速度補正部62は、測距センサ4の正面方向から90度の側面方向を除いて、測距センサ4の正面方向から所定角度-α~αの方向範囲において、各信号点群の正面方向速度への補正を実行してもよい(ステップS12)。
【0064】
また、動体物標判定部64は、測距センサ4の正面方向から90度の側面方向を除いて、測距センサ4の正面方向から所定角度-α~αの方向範囲において、各信号点群についての動体物標又は静止物標としての判定を実行してもよい(ステップS14~S16)。
【0065】
つまり、測距センサ4の視野角が広いときでも、測距センサ4の正面方向から90度の側面方向から離れた方向と比べて、測距センサ4の正面方向から90度の側面方向に近い方向において、各信号点群のドップラ速度V’から各信号点群の正面方向速度V=V’/cоs(α)≒V’/cоs(90°)への補正精度が低下するところ、各信号点群についての動体物標又は静止物標としての判定を回避することができる。
【0066】
図10では、移動体M2の進行方向は、直線方向としている。変形例として、移動体M2の進行方向は、旋回方向としてもよい。ただし、各信号点群のドップラ速度V’から各信号点群の正面方向速度V=V’/cоs(α)への補正精度が低下しないように、移動体M2の進行方向は、旋回方向であっても直線方向に近いことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の物標検出装置及び物標検出プログラムは、監視エリア内(倉庫内又はオフィス内等)において、測距センサを用いて、周辺障害物等の静止物標によるクラッタを抑圧したうえで、人間等の動体物標による信号成分を抽出することができる。
【符号の説明】
【0068】
D1:物標検出システム
M1:移動体
1:測距センサ
2:物標検出装置
3:物標表示装置
21:信号点群取得部
22:相対速度補正部
23:移動体速度推定部
24:動体物標判定部
D2:物標検出システム
M2:移動体
4:測距センサ
5:速度センサ
6:物標検出装置
7:物標表示装置
61:信号点群取得部
62:相対速度補正部
63:移動体速度取得部
64:動体物標判定部
T0、T2、T3、T5:静止物標
T1、T4:動体物標
ST:静止物標
MT:動体物標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10