(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076141
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】皮膚化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240529BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240529BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240529BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240529BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240529BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20240529BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20240529BHJP
B01F 23/43 20220101ALI20240529BHJP
B01F 101/21 20220101ALN20240529BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/86
A61Q19/00
B01J13/00 A
B01F23/41
B01F23/43
B01F101:21
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187552
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】川口 大地
【テーマコード(参考)】
4C083
4G035
4G065
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC432
4C083AC482
4C083AD042
4C083BB04
4C083BB13
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE01
4C083FF05
4G035AB38
4G035AB40
4G065AA01
4G065AB01X
4G065AB05X
4G065AB12X
4G065AB32X
4G065AB33X
4G065BA06
4G065BA07
4G065BB06
4G065CA03
4G065DA02
4G065EA01
4G065FA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、油剤、界面活性剤、グリセリン及び水を含有する皮膚化粧料において、油剤を安定させ素早く水相に分散させる方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、(A)油剤と、(B)ノニオン性界面活性剤と、(C)グリセリンと、(D)水とを含む皮膚化粧料の製造方法であって、(A)油剤と(B)界面活性剤とを混合し、そこへ(C)グリセリンを添加し分散させたあとに、(D)水を加えることを特徴とする。本発明によれば、(A)油剤が多量(高濃度)であっても、水相に安定的に素早く分散させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)油剤と、(B)ノニオン性界面活性剤と、(C)グリセリンと、(D)水とを含む皮膚化粧料の製造方法であって、(A)油剤と(B)界面活性剤とを混合し、そこへ(C)グリセリンを添加し分散させたあとに、(D)水を加えることを特徴とする皮膚化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記(B)成分が、PRG-13-デシルテトラデセス-24であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量に対する前記(B)成分の含有量の値(B/A)が3以上であることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量に対する、前記(A)成分及び前記(B)成分の含有量の合計の値((A+B)/C)が0.8以下であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関するものである。詳細には、高濃度の油性成分を水相に安定的に素早く分散させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚化粧料には、使用感触に優れており、肌の保湿効果があることだけでなく、保湿効果以外の肌への美容効果があることが求められている。そのため、皮膚化粧料には肌への美容効果や製品の市場訴求性を期待して様々な有効成分が添加される。そのような有効成分は、一般的には油溶性の高い成分(油性成分)であり、全重量における水の占める割合が高い皮膚化粧料に安定的に、かつ素早く分散させることは工夫が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6734562号公報
【特許文献2】特許第6726392号公報
【特許文献3】特開2020-105077公報
【特許文献4】特許第6180294号公報
【特許文献5】特開2019-131507公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の油剤、界面活性剤、グリセリン及び水を含有する皮膚化粧料においては、前記4成分を同時に混ぜただけでは、油剤の安定性を担保することができない。また、油剤及び界面活性剤の混合物を、グリセリン及び水の混合物に添加しただけでは、油剤及び界面活性剤の混合物を全体的に均一に分散させるのに時間がかかる。そこで、本発明は、油剤、界面活性剤、グリセリン及び水を含有する皮膚化粧料において、油剤を安定させ素早く水相に分散させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題について鋭意検討したところ、(A)油剤と、(B)ノニオン界面活性剤と、(C)グリセリンと、(D)水とを含む皮膚化粧料の製造方法であって、(A)油剤と(B)ノニオン界面活性剤とを混合し、そこへ(C)グリセリンを添加し分散させたあとに、(D)水を加えることで、前記(A)成分を安定的に素早く水相に分散させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、皮膚化粧料の製造方法において、(A)油剤を安定的に、素早く水相に分散させる皮膚化粧料の製造方法を提供するものである。
[1](A)油剤と、(B)ノニオン界面活性剤と、(C)グリセリンと、(D)水とを含む皮膚化粧料の製造方法であって、(A)油剤と(B)ノニオン界面活性剤とを混合し、そこへ(C)グリセリンを添加し分散させたあとに、(D)水を加えることを特徴とする皮膚化粧料の製造方法。
本発明によれば、(A)油剤が多量(高濃度)であっても、水相に安定的に素早く分散させることができる。
[2]前記(B)成分が、PRG-13-デシルテトラデセス-24であることを特徴とする[1]に記載の製造方法。
この特徴によれば、(A)油剤を水相に安定的に素早く分散させる効果をより発揮することができる。
[3]前記(A)成分の含有量に対する前記(B)成分の含有量の値(B/A)が3以上であることを特徴とする、[2]に記載の製造方法。
この特徴によれば、(A)油剤を水相に安定的に素早く分散させる効果をより発揮することができる。
[4]前記(C)成分の含有量に対する、前記(A)成分及び前記(B)成分の含有量の合計の値((A+B)/C)が0.8以下であることを特徴とする、[3]に記載の製造方法。
この特徴によれば、(A)油剤を水相に安定的に素早く分散させる効果をより発揮することができる。また、(A)油剤及び(B)界面活性剤の混合物を水相に素早く分散させる効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、油剤、ノニオン界面活性剤、グリセリン及び水を含有する皮膚化粧料の製造方法において、油剤を安定させ素早く水相に分散することができる皮膚化粧料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る皮膚化粧料の製造方法の実施形態について、詳細に説明する。
なお、本実施形態に記載する皮膚化粧料の製造方法については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0009】
((A)油剤)
油剤とは、皮膚の表面に滑らかに伸び、皮膚から水分を蒸散させない油溶性の成分である。エモリエント剤と呼ばれることもある。本発明に用いられる油剤は、通常化粧料に配合され得る油剤であれば特に限定されるものでなく、例えば、油脂、精油、シリコーン油、ロウ類、炭化水素、高級アルコール、高級脂肪酸、エステル類、フッ素油ならびにアルキルグリセリルエーテルとその脂肪酸エステル、リン脂質等が挙げられる。これらは、1種単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0010】
油脂は、脂質の一種で、天然由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物を指す。油脂としては、アボガド油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、等の固体油脂などが挙げられる。
【0011】
精油は、ティーツリーオイル(tea tree oil)、スギ油、ヒバ油、ヒノキ油、ユーカリ油、ラベンダー油、ジャスミン油、ローズ油、レモン油、オレンジ油等が挙げられる。
【0012】
シリコーン油は、有機基のついたケイ素と酸素が化学結合により交互に連なった合成高分子である。シリコーン油は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。例えば、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン(ポリアルキレングリコール変性シリコーン等)、平均重合度が650~10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等を挙げることができる。
上記アミノ変性シリコーンとしては、例えば、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0013】
ロウ(ワックス)類は、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化合物である。ロウ類としては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ホホバ油、蜜ロウおよびラノリンロウを挙げることができる。
【0014】
炭化水素は、炭素と水素よりなる化合物である。例えば、流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、イソパラフィン類、オゾケライト、セレシン、ポリエチレン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、合成スクワラン、スクワレン、水添スクワラン、リモネンおよびテレビン油等が挙げられる。
【0015】
高級アルコールは、炭素数6(C6)以上の一価アルコールである。高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、フィトステロール、フィトスタノール、コレステロール、コレスタノール、ラノステロールおよびエルゴステロール等を挙げることができる。
【0016】
高級脂肪酸は、炭素数12(C12)以上の脂肪酸である。高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸およびラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0017】
エステル類は、脂肪酸とアルコールとの脱水反応によって得られる化合物である。例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルへキシル、エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、脂肪酸(C10-30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0018】
リン脂質とは、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質のことをいう。リン脂質は、両親媒性を持ち、脂質二重層を形成して糖脂質やコレステロールと共に細胞膜の主要な構成成分となるほか、生体内でのシグナル伝達にも関わると言われている。リン脂質若しくはリン脂質誘導体は、特に制限されないが、グリセロリン脂質やスフィンゴリン脂質等が挙げられる。具体的には、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、水添レシチン等が挙げられる。
【0019】
本発明における(A)油剤の含有量は、特に制限されるものではないが、皮膚用化粧料全体を基準として、0.01~1.0質量%であることが、本発明の効果を発揮する限りにおいて望ましい。含有量の下限値としては、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。また、含有量の上限値としては、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることがよりさらに好ましい。0.1質量%以上であれば、十分な肌のうるおい効果や深いしわ改善効果が得られる。一方、1.0質量%以下であれば、べたつきや皮膚化粧料の経時での析出物の発生などが生じにくい。ここで、(A)油剤として2種以上含む場合には、上記含有量はそれらの成分の合計量を示す。
【0020】
((B)ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤は、水溶液中においてイオンに解離しない水酸基やエーテル結合を親水基としてもっている界面活性剤のことである。ノニオン界面活性剤としては、例えば、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEモノ脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、アルキルポリグルコシド類等が挙げられる。POEアルキルエーテル類の具体例としては、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEラノリン、POEフィトステロール等が挙げられる。
本発明における(B)界面活性剤としては、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類が好ましく、PRG-13-デシルテトラデセス-24がより好ましい。
また、ノニオン界面活性剤は、1種単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0021】
なお、PRG-13-デシルテトラデセス-24は、デシルテトラデカノールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加重合したものであり、下記式1で表される。なお、下記式1のnは平均24、mは平均13である。
【数1】
【0022】
(B)界面活性剤のHLB値としては、特に制限されるものではないが、本発明の効果を発揮する限りにおいては、HLB値が10以上15以下であることが好ましい。本発明において、HLB値(親水性・親油性バランス)は、グリフィン(Griffin)の式(J,Soc,Cosmet,Chem.,1,311(1949);5,249(1953))により計算されるものである。2種以上の界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLB値(以下、混合HLBと記す)は、各界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて加重平均したものであり、次式で求められる。
混合HLB値=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
(HLBxは、界面活性剤XのHLB値を示す。Wxは、HLBxの値を有する界面活性剤Xの質量(g)を示す。)
【0023】
本発明における(B)界面活性剤の含有量は、特に制限されるものではないが、皮膚用化粧料全体を基準として、0.05~1質量%であることが、本発明の効果を発揮する限りにおいて好ましい。含有量の下限値としては、0.1質量%以上であることが、より好ましい。含有量の上限値としては、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明における(A)油剤の含有量に対する(B)界面活性剤の含有量の値(B/A)は、特に制限されるものではないが、水相への(A)油剤の安定性及び素早い分散性の効果の観点からは、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0025】
((C)グリセリン)
グリセリンとは、3価のアルコールの一種である。水に非常に溶けやすく、無色透明の糖蜜状液体で、甘味を持ち、保湿剤や潤滑剤として用いられるものである。
【0026】
本発明における(C)グリセリンの含有量は、特に制限されるものではないが、皮膚用化粧料全体を基準として、0.05~10質量%であることが、本発明の効果を発揮する限りにおいて好ましい。含有量の下限値としては、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。含有量の上限値としては、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以下であることがさらにより好ましくい。(C)グリセリンの含有量が、1.0質量%以下の場合、感触が良くなる効果がある。
【0027】
本発明における(C)グリセリンの含有量に対する(A)油剤の含有量及び(B)界面活性剤の含有量の合計((A+B)/C)は、特に制限されるものではないが、水相への(A)油剤の安定性及び素早い分散性を発揮する観点からは、2.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
【0028】
((D)水)
水とは、化学式H2Oで表される化合物である。水は様々な水溶性物質を溶かし込むために最も汎用されている溶媒であり、またその水溶性物質を溶かし込む性質および安全性・安定性の側面から水溶性基剤としても最も汎用されている。本発明における水の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、水道水、純水、蒸留水、RO水、イオン交換水、精製水、海洋深層水、天然深層水等が挙げられる。
【0029】
本発明における(D)水の含有量は、特に制限されるものではないが、皮膚用化粧料全体を基準として、80~97質量%であることが、本発明の効果を発揮する限りにおいて好ましい。80質量%以上であると、水以外の成分の含有量の調整が容易であり、97質量%以下であると、水相への(A)油剤の安定性及び素早い分散性の効果を発揮しやすい。
【0030】
(その他の成分)
本発明の製造方法により製造される皮膚化粧料は、上述した成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば、成分(B)を除く界面活性剤、増粘剤、粉体(色素、樹脂、顔料)、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、ミネラル塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、パール化剤、中和剤、pH調整剤、植物エキス、酵素、ビタミン類、アミノ酸等の成分を適宜配合することができる。
【0031】
成分(B)を除く界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤が例示できる。本発明に用いられる成分(B)を除く界面活性剤は、通常化粧料に配合され得る界面活性剤であれば特に限定されるものでない。これらは、1種単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0032】
カチオン界面活性剤とは、水溶液中においてイオンに電離した際、親水基の部分がプラスの電気を帯びる界面活性剤である。カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩類、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩等の環式4級アンモニウム塩類および塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0033】
モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化アルキル(28)トリメチルアンモニウム、塩化ジPOE(2)オレイルメチルアンモニウム、塩化ジPOEステアリルメチルアンモニウム、塩化POE(1)POP(25)ジエチルメチルアンモニウム、塩化POPメチルジエチルアンモニウム、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。特に好ましくは、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウムおよび塩化セチルトリメチルアンモニウムである。
【0034】
アニオン界面活性剤とは、水溶液中においてイオンに電離した際、親水基の部分がマイナスの電気を帯びる界面活性剤のことである。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノまたはジエステル型界面活性剤およびスルホコハク酸エステルが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンは、例えばナトリウムイオン、カリウムイオンおよびトリエタノールアミンのいずれであってもよい。
【0035】
より具体的には、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸およびその塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-ラウロイルメチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸およびミリスチン酸並びにこれらの高級脂肪酸の塩が挙げられ、1種単独または2種以上を使用することができる。
【0036】
両性界面活性剤とは、その分子中の親水基に陽イオンになる部分(カチオン基)と陰イオンになる部分(アニオン気)の両方を持っている界面活性剤である。両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤およびベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
アミノ酸型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(ラウロアンホ酢酸Na)、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエトキシエチル-N’-カルボキシエチルエチレンジアミン二ナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメトキシエチル-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムおよびパーム油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤並びにラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウムおよびラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタインおよびステアリルジヒドロキシエチルベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤並びにラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、生理活性成分を適宜配合することができる。生理活性物質とは、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質であり、例えば、美白剤、抗炎症剤、老化防止剤、紫外線防御剤、収斂剤、抗酸化剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤等が挙げられる。
【実施例0040】
以下、本発明の製造方法に係る実施例を示し、さらに本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(混合方法1)
表1~表5の処方に従って、表1~表5の実施例に係る皮膚化粧料及び表1の比較例に係る皮膚化粧料は以下の混合方法にて調製した。
表1~表5に示す原材料を室温(25℃)の条件下で、(A)油剤と(B)界面活性剤とを混合した後に、(C)グリセリンを混合する。((A)、(B)及び(C)の混合物を第1相とする)。その後、当該第1相に(D)水(第2相)を混合する方法を混合方法1とする。各成分の混合は、混合機(TKホモミキサー、プライミクス社製)を用いて撹拌混合した。
【0042】
なお、実施例2~4においては、(A)油剤と(B)界面活性剤とを混合した混合物に対し、(D1)水が混合された(C)グリセリンを混合する((A)と(B)の混合物と、(C)と(D1)の混合物どうしを混合したものを第1相とする)。その後、当該第1相に(D)水(第2相)を混合する方法を混合方法1とする。各成分の混合は、混合機(TKホモミキサー、プライミクス社製)を用いて撹拌混合した。
【0043】
(混合方法2)
表1の処方に従って、表1の比較例に係る皮膚化粧料を以下の混合方法にて調製した。
表1に示す原材料を室温(25℃)の条件下で、、(A)油剤と(B)界面活性剤と混合したものを第1相とし、(C)グリセリンと(D)水とを混合したものを第2相とし、第1相と第2相とを混合する方法を混合方法2とする。各成分の混合は、混合機(TKホモミキサー、プライミクス社製)を用いて撹拌混合した。
【0044】
(分散性の評価)
上記の混合方法1又は2の混合方法で混合した後に下記の判定基準に基づき目視にて分散性を評価した。
【0045】
(評価基準)
5:極めて速やかに分散し、混合が可能。
4:速やかに分散し、混合が可能。
3:分散し、混合が可能。
2:やや分散しにくく、混合がしにくい。
1:分散しにくく混合がしにくい又は分散混合ができない。
【0046】
(安定性の評価)
本発明の実施例および比較例の皮膚化粧料を50gガラス瓶に充填し、45℃条件、30℃条件及び0℃条件の恒温器に入れて3か月保管した。3か月後に本発明の実施例および比較例の皮膚化粧料を取り出し、その状態を確認した。皮膚化粧料の安定性評価は、下記の項目を用いて、以下の通りに分類した。
【0047】
(安定性の評価基準)
5:極めて良好 (45℃、30℃、0℃のいずれの条件においても、ほとんど変化が見られない)
4:良好 (45℃、30℃、0℃のいずれの条件において、ごくわずかに変色、変臭のいずれかが見られたが、皮膚化粧料の使用品質には問題がない)
3:普通 (45℃、30℃、0℃のいずれの条件において、やや変色、変臭、不均一化のいずれかあるいはいずれもの傾向が見られたが、皮膚化粧料の使用品質には問題がない)
2:やや悪い (45℃、30℃、0℃のいずれの条件において、大きな変色、変臭、不均一化のいずれかあるいはいずれもの傾向が見られた)
1:悪い (45℃、30℃、0℃のいずれの条件において、結晶状のツブの析出や、油分あるいは水分の分離、大きな変色、変臭、不均一化のいずれかあるいはいずれもの傾向が見られた)
【0048】
(使用感(べたつきのなさ)の評価)
専門パネル5名により、本発明の実施例に係る皮膚化粧料を使用直後での肌のべたつきについて下記の評点のつけ方にて官能評価を実施した。評価基準は5名の評点の平均値を用いて、以下の通りに分類した。
【0049】
(べたつきのなさに関する評点基準)
5:べたつきを感じない。
4:べたつきをわずかに感じる。
3:べたつきをやや感じる。
2:べたつきを感じる。
1:べたつきを強く感じ、不快である。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
表1に示したとおり、本発明に係る製造方法で調製した実施例(混合方法1)は、分散性及び安定性のいずれにおいても良好な結果を示した。一方、本発明に係る製造方法ではない、混合方法(2)にて調製した比較例1及び2は、分散性及び安定性のいずれにおいても不良であった。
【0055】
表2~表4に示したとおり、本発明に係る製造方法で調製した実施例(混合方法1)は、分散性及び安定性のいずれにおいても良好な結果を示した。一方、表2に示すように、(C)成分としてグリセリン以外を用いた比較例3及び4においては、安定性が不良であった。