(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076144
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】効率的な干渉抑制制御のための処理装置、制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/16 20090101AFI20240529BHJP
H04W 88/12 20090101ALI20240529BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W88/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187555
(22)【出願日】2022-11-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度総務省、「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 晴久
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067AA13
5K067DD11
5K067DD57
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】複数のスケジューラが複数の無線ユニットを共用する環境における効率的な干渉抑制制御を可能とすること。
【解決手段】複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置は、その複数のセルにおける複数の端末装置のトラフィックの量、無線品質、通信品質、及び、無線リソースの使用量に関する第1の情報を収集し、複数の端末装置のうち、複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の第1の情報を集約して1つの第2の情報を生成し、第2の情報を制御装置へ通知し、制御装置から、第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを受信し、第1の無線リソースを、第1の領域に存在する端末装置に割り当てる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置であって、
前記複数のセルにおける複数の端末装置のトラフィックの量、無線品質、通信品質および無線リソースの使用量に関する第1の情報を収集する収集手段と、
前記複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の前記第1の情報を集約して1つの第2の情報を生成する集約手段と、
前記第2の情報を制御装置へ通知する通知手段と、
前記制御装置から、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを受信する受信手段と、
前記第1の無線リソースを、前記第1の領域に存在する端末装置に割り当てる割り当て手段と、
を有することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記集約手段は、前記複数の端末装置のうち前記複数のセルのそれぞれオーバーラップしていない第2の領域に存在する端末装置について収集した複数の前記第1の情報を集約して、セルごとに1つの第3の情報を生成し、
前記通知手段は、さらに、前記第3の情報を前記制御装置へ通知し、
前記受信手段は、前記第2の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第2の無線リソースのセルごとの割り当てを受信し、
前記割り当て手段は、前記第2の領域に存在する端末装置に対して、当該端末装置が属しているセルに対応する前記第2の無線リソースを割り当てる、
ことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記通知手段は、さらに、複数の端末装置のうち前記複数のセルのそれぞれオーバーラップしていない第2の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の前記第1の情報を前記制御装置へ通知し、
前記受信手段は、前記第2の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第2の無線リソースのセルごとの割り当てを受信し、
前記割り当て手段は、前記第2の領域に存在する端末装置に対して、当該端末装置が属しているセルに対応する前記第2の無線リソースを割り当てる、
ことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記割り当て手段は、前記第1の領域に存在する端末装置に前記第1の無線リソースを割り当てた後に、当該第1の無線リソースに余剰があった場合、前記第2の領域に存在する端末装置に当該余剰の無線リソースを割り当てる、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記通知手段は、前記複数の端末装置のうち前記第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の前記第1の情報を、前記第2の情報を前記制御装置へ通知する周期より長い周期ごとに、前記制御装置へ通知する、ことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記通知手段は、前記第1の領域において互いにオーバーラップするセルのリストを、前記第2の情報と関連付けて前記制御装置へ通知する、ことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置から、前記複数のセルにおける複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集された複数の第1の情報が集約されて生成された1つの第2の情報を受信する受信手段と、
前記第2の情報に基づいて、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを決定する決定手段と、
前記第1の無線リソースの情報を、前記処理装置へ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
前記受信手段は、前記複数の端末装置のうち前記複数のセルのそれぞれオーバーラップしていない第2の領域に存在する端末装置について収集された複数の前記第1の情報が集約されて生成された、セルごとに1つの第3の情報をさらに受信し、
前記決定手段は、前記第3の情報に基づいて、前記第2の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第2の無線リソースのセルごとの割り当てを決定し、
前記通知手段は、前記第2の無線リソースの情報を前記処理装置へ通知する、
ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記受信手段は、前記複数の端末装置のうち前記複数のセルのそれぞれオーバーラップしていない第2の領域に存在する端末装置について収集された複数の前記第1の情報をさらに受信し、
前記決定手段は、受信した前記第1の情報に基づいて、前記第2の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第2の無線リソースのセルごとの割り当てを決定し、
前記通知手段は、前記第2の無線リソースの情報を前記処理装置へ通知する、
ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項10】
前記決定手段は、前記第2の領域に存在する端末装置の通信に必要な無線リソースの量から、前記第1の無線リソースについて設定したマージンの大きさに基づく量を減じた量の無線リソースを、前記第2の無線リソースとして決定する、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記受信手段は、前記複数の端末装置のうち前記第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の前記第1の情報を、前記第2の情報を受信する周期より長い周期ごとに受信し、
前記決定手段は、当該第1の領域に存在する端末装置についての前記第1の情報に基づいて当該第1の領域における端末装置の通信に必要な無線リソースの量を前記第1の無線リソースの量として算出し、前記第2の情報を受信した場合に、当該第2の情報に基づいて前記第1の無線リソースの量を更新する、ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項12】
前記決定手段は、前記第1の無線リソースの初期値として所定量の無線リソースを決定し、前記第2の情報を受信した場合に、当該第2の情報に基づいて前記第1の無線リソースの量を更新する、ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項13】
複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置によって実行される制御方法であって、
前記複数のセルにおける複数の端末装置のトラフィックの量、無線品質、通信品質、及び、無線リソースの使用量に関する第1の情報を収集することと、
前記複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の前記第1の情報を集約して1つの第2の情報を生成することと、
前記第2の情報を制御装置へ通知することと、
前記制御装置から、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを受信することと、
前記第1の無線リソースを、前記第1の領域に存在する端末装置に割り当てることと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
制御装置によって実行される制御方法であって、
複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置から、前記複数のセルにおける複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集された複数の第1の情報が集約されて生成された1つの第2の情報を受信することと、
前記第2の情報に基づいて、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを決定することと、
前記第1の無線リソースの情報を、前記処理装置へ通知することと
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置に備えられたコンピュータに、
前記複数のセルにおける複数の端末装置のトラフィックの量、無線品質、通信品質、及び、無線リソースの使用量に関する第1の情報を収集させ、
前記複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の前記第1の情報を集約して1つの第2の情報を生成させ、
前記第2の情報を制御装置へ通知させ、
前記制御装置から、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを受信させ、
前記第1の無線リソースを、前記第1の領域に存在する端末装置に割り当てさせる、
ためのプログラム。
【請求項16】
制御装置に備えられたコンピュータに、
複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置から、前記複数のセルにおける複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集された複数の第1の情報が集約されて生成された1つの第2の情報を受信させ、
前記第2の情報に基づいて、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを決定させ、
前記第1の無線リソースの情報を、前記処理装置へ通知させる
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける干渉抑制制御の効率化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいて、様々なサービスの特性に適した無線アクセスネットワーク(RAN)の構成を効率的に提供することが要求されている。このために、各サービスに対する無線リソースの配分を決定するコントローラと、各サービスに対応し、そのコントローラによって配分された無線リソースを端末装置に割り当てるスケジューラ機能を有する機能部とを用いるネットワークが検討されている。このようなコントローラは、Open-Radio Access Network(O-RAN)におけるRAN Intelligent Controller(RIC)に対応し、スケジューラは、Distributed Unit(DU)に対応する。DUは、Radio Unit(RU)に接続され、自装置が管理する通信サービスのための無線リソースを、RUを介して端末装置に割り当てて、端末装置に通信サービスを提供する。なお、RUは、例えば、ベースバンド処理や無線周波数の処理などを実行し、無線リソースを使用して端末装置と通信を行うインタフェースとなる機能部である。
【0003】
各RUは、それぞれ、電波を端末装置まで所定電力で届かせることができる範囲、又は、電波を所定電力でRUまで届かせることができるような端末装置の存在する範囲である、通信可能範囲(セル)を形成する。複数のRUは、それぞれ別個のセルを形成し、それらがそれぞれ異なる地理的範囲をカバーすることにより、端末装置に対して地理的な位置によらずに十分な品質の通信サービスを提供することができる。各RUが形成するセルの端部は、他のRUが形成するセルの端部とオーバーラップすることがあり、その場合、一方のRUが送出した電波が、他方のRUが送出した電波に干渉し、また、一方のRUへ端末装置が送信した電波が、他方のRUにおいて他の端末装置が送信した電波に干渉してしまいうる。このため、セル端の端末装置の通信に関して、干渉を抑制するためのリソース割り当てが行われる必要がある。例えば、DUは、通信サービスを提供する端末装置ごとの情報を短周期で収集し、2つ以上のRUがそれぞれ形成するセルが重複する領域に滞在する端末装置の通信のために、その2つ以上のRUが共通の無線リソースを使用するように制御を実行しうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cloud Architecture and Deployment Scenarios for O-RAN Virtualized RAN、2022年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなネットワークをさらに柔軟に使用するために、1つのRUを、複数のDUが共有する構成が検討されている(非特許文献1)。対応するセルがオーバーラップする複数のRUが1つのDUのみによって使用される場合には、それらの複数のRUにおける干渉抑制制御をその1つのDUにおいて実行することができる。このため、複数のRUが、その1つのDUへ、短周期で端末装置の情報を通知し、そのDUが適切にリソースを割り当てることにより、干渉を十分に抑制することができる。一方で、複数のRUが複数のDUによって共有されている場合、各RUにおいて使用可能な無線リソースがRICによって複数のDUに分配されることとなる。この場合、RICに対して端末装置の情報が通知される必要があるが、多数のDUからRICへ膨大な数の端末装置に関する情報が短周期で送受信される場合、RICとDUとの間の通信回線の容量を圧迫し、適時に制御を行うことができず、制御の効率が劣化してしまいうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のスケジューラが複数の無線ユニットを共用する環境における効率的な干渉抑制制御を可能とする技術を提供する。
【0007】
本発明の一態様による処理装置は、複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置であって、前記複数のセルにおける複数の端末装置のトラフィックの量、無線品質、通信品質、及び、無線リソースの使用量に関する第1の情報を収集する収集手段と、前記複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集した複数の前記第1の情報を集約して1つの第2の情報を生成する集約手段と、前記第2の情報を制御装置へ通知する通知手段と、前記制御装置から、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを受信する受信手段と、前記第1の無線リソースを、前記第1の領域に存在する端末装置に割り当てる割り当て手段と、を有する。
【0008】
本発明の一態様による制御装置は、複数のセルにおける無線リソースの割り当てを行う処理装置から、前記複数のセルにおける複数の端末装置のうち前記複数のセルのうちの少なくとも2つのセルがオーバーラップする第1の領域に存在する端末装置のそれぞれについて収集された複数の第1の情報が集約されて生成された1つの第2の情報を受信する受信手段と、前記第2の情報に基づいて、前記第1の領域に存在する端末装置の通信に使用すべき第1の無線リソースの割り当てを決定する決定手段と、前記第1の無線リソースの情報を、前記処理装置へ通知する通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、複数のスケジューラが複数の無線ユニットを共用する環境における効率的な干渉抑制制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、例えば、Open Radio Access Network(O-RAN)に基づく構成を有し、RIC101、DU111~DU117、RU121~RU123を含んで構成される。RIC101は、O-RANのRAN Intelligent Controllerであり、概ねリアルタイム(Near-RT)の制御を行うNear-RT RICと、長周期的なポリシ制御などを実行する非リアルタイム(Non-RT) RICと、を含む。なお、ここでは、Near-RT RICの機能を用いて、各DUに対して使用すべき無線リソース(周波数・時間リソース)を指示する。DU111~DU117は、O-RANのDistributed Unitであり、RIC101によって割り当てられた無線リソースを、自装置が使用するRUを介して端末装置へ割り当てるスケジューリング機能を有する。RUは、O-RANのRadio Unitであり、DUの制御の下で、端末装置との間の無線通信を実行する。なお、
図1においては、DU111及びDU112は、RU121を使用し、DU113及びDU114はRU122を使用し、DU116及びDU117はRU123を使用し、DU115は、RU121~RU123を使用する例を示している。換言すれば、RU121は、DU111、DU112及びDU115により共用され、RU122は、DU113、DU114及びDU115により共用され、RU123は、DU116、DU117及びDU115により共用される。なお、O-RANの構成では、これらの機能部の他に、Central Unit(CU)などを含むが、
図1では、説明を簡単にするために、本実施形態に関連する機能部のみを示している。また、これらの構成は一例であり、例えばO-RANと異なる規格の同様の構成を用いるネットワークに対して以下の議論が適用されてもよい。また、当然ながら、DUとそのDUが使用するRUとの関係や、DUやRUの数などは、
図1の例に限定されない。すなわち、以下で説明する議論の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更及び変形がなされうる。
【0013】
図1の例において、RU121~RU123は、それぞれ、セル131~セル133を形成し、そのセルの範囲内に存在する端末装置との無線通信を行う。例えば、RU121は、セル131の範囲内の端末装置(User Equipment、UE141~UE143)との無線通信を実行し、RU122は、セル132の範囲内のUE142、UE144、及びUE145との無線通信を実行し、RU123は、セル133の範囲内のUE142、UE143、UE145、及びUE146との無線通信を実行する。ここで、UE142は、セル131~セル133の3つのセルがオーバーラップする位置に存在しており、UE143は、セル131とセル133がオーバーラップする位置に存在しており、また、UE145は、セル132とセル133がオーバーラップする位置に存在している。このような位置に存在するUEの通信は、オーバーラップするセルのうちの1つのセルにのみ着目して制御すると、他のセルの通信に干渉を及ぼすことが想定される。例えば、セル131にのみ着目してUE142のための無線リソースを割り当て、セル132において、同じ無線リソースをUE144に割り当てられた場合、UE142が受信する無線信号に、UE144へ宛てられた無線信号が干渉し、また、UE142が送信した無線信号がRU122に到達して、UE144が送信した無線信号に干渉してしまいうる。
【0014】
これに対して、セルがオーバーラップする位置に存在するUEに、そのオーバーラップするセルを提供する複数のRUで同じ無線リソースを割り当てるようにすることで、干渉を抑制することができる。例えば、セル131~セル133の全てにおいて、UE142のために共通の無線リソースを割り当てる制御が行われうる。このような制御は、例えば、RU121~RU123の全てを利用可能なDU115によって、Coordinated Multi-Point(CoMP)技術を用いて行われうる。
【0015】
一方で、DU115が各RUを用いて利用可能な無線リソースは、RIC101によって決定される。このため、RIC101が、UE142などのようなCoMPの対象とすべきUEを特定するために、各UEの情報を収集する必要がある。RIC101は、短周期で各UEの情報を収集して、その情報に基づいて、例えばUE142に対して同じ無線リソースを割り当てるようにDU115に指示しうる。これにより、UE142の通信に関連する干渉を抑制することができる。しかしながら、膨大なUEについてのこのような短周期の情報収集は、RIC101とDUとの間の通信回線の容量を浪費してしまい、その通信回線での通信遅延などにより干渉抑制制御が適切に動作しなくなってしまいうる。また、情報収集の周期を長くすることにより、通信回線の容量の浪費を抑制することができるが、その場合、適時に干渉抑制制御を行うことができなくなってしまいうる。
【0016】
本実施形態では、このような事情に鑑み、UEごとの情報ではなく、CoMPの対象となるUEの集合に関する情報を、RIC101へ伝達するようにする。例えば、従来のO-RANや3GPP(登録商標)規格において規定されている、特定のスライスや5QI(5G QoS Identifier)に属するUEのみを対象として収集された情報を送受信するためのサブカウンタを流用して、CoMPの対象となるUE群又はCoMPの対象でないUE群を対象とするサブカウンタを用いるようにしうる。そして、RIC101は、そのようなCoMPの対象となるUE群又はCoMPの対象でないUE群に関する情報を用いて、各DUへの無線リソースの割り当てを決定する。
【0017】
一例において、CoMPに関与するセルのリストが定義され、そのリストに含まれるセルの組み合わせにおけるCoMPの対象となっているUEがどの程度の量の物理リソースブロック(PRB)を使用したかの平均値を、そのCoMPを制御するDUにおいて集計する。なお、PRBの量は、上りリンクと下りリンクとのいずれか一方又はその両方について集計されうる。例えば、
図1のUE142のようなUEに対して、セル131~セル133からなるセルのリストが定義され、その3つのセルにまたがってCoMPを用いた通信が行われるUE群におけるPRBの使用量が、そのセルのリストに関するCoMPを使用するUE群に関するリソースの使用量として集計される。また、UE145のようなUEに対して、セル132及びセル133からなるセルのリストが定義され、その2つのセルにまたがってCoMPを用いた通信が行われるUE群におけるPRBの使用量が、そのセルのリストに関するCoMPを使用するUE群に関するリソースの使用量として集計される。なお、これらのCoMPを使用するUE群に関するリソースの使用量は、例えば、DU115において集計されるが、例えば、セル131~セル133の3つのセルに関する情報をDU115が集計し、セル132及びセル133の2つのセルに関する情報や、セル131及びセル133の2つのセルに関する情報は、対応する2つのRUを使用可能な、DU115と異なるDU(不図示)によって集計されてもよい。また、CoMPを使用しないUE群に関するリソースの使用量は、セル単位で集計される。この集計は、各RUを使用可能なDUの少なくともいずれかによって集計されうる。また、セルのリスト単位に加え、ネットワークスライスや5QIなどを基準として分類されたUE群ごとに、情報が集約されてもよい。集約された情報は、RIC101へ提供される。なお、以下において、CoMPの対象となるUEについての情報は、上述のようにセルのリスト(複数のセルからなる1つの組み合わせ)の単位で収集されるものとする。このとき、DUからRIC101へ提供される情報は、セルのリストの識別情報を含み、そのセルのリストに関して集約された情報と対応する識別情報が関連付けられる。なお、セルのリストの識別情報と、そのリストに含まれる複数のセルとの対応関係を示す情報は、事前にDUからRIC101へ通知されてもよいし、集約した情報と共に通知されてもよい。なお、セルのリストの内容が集約した情報と共に通知される場合、そのリストの識別情報は通知されなくてもよい。すなわち、どのセルの組み合わせに対して集約された情報であるかをRIC101が特定可能である限りにおいて、任意の形式で情報が通知されうる。
【0018】
なお、この特徴は、例えば、3GPP規格のTS28.552に記載のデータトラフィックのために使用される下りリンク又は上りリンクのPRBの量(Mean DL/UL PRB used for data traffic)の規定を、セルのリストごとの測定に関する規定を含むように変更することによって実現されうる。
【0019】
CoMPの対象となるUE群とCoMPの対象でないUE群との少なくともいずれかについて集計される情報は、リソース量に限られない。例えば、下りリンク又は上りリンクの通信遅延などの通信品質に関する情報が集計されてもよい。これは、例えば、3GPP規格のTS28.552に記載の下りリンク又は上りリンクの遅延の分布(Distribution of DL/UL delay)の規定を、セルのリストごとの測定に関する規定を含むように変更することによって実現されうる。また、下りリンク又は上りリンクのトラヒックの量に関する情報が集計されてもよい。これは、例えば、O-RANに関する規格のWG3 E2 Service Model: Key Performance Measurementにおける、下りリンク又は上りリンクの送信データ量(Transmitted Data Volume)や、CUからDUへ(下りリンクで)又はDUからCUへ(上りリンクで)送信されるPacket Data Convergence Protocol(PDCP) Protocol Data Unit(PDU)のデータ量(DL/UL PDCP PDU Data Volume)に関して、QoSレベルやS-NSSAIごとの測定についての規定を、セルIDリストごとの測定に関する規定を含むように変更することによって実現されうる。
【0020】
なお、上述の集計対象の情報は一例であり、これらの情報と異なる情報が集計されてもよい。例えば、上述の例では、PRBの量について平均値が集計されるが、中央値や最小値又は最大値など、他の統計量が特定されてもよい。また、例えば受信信号強度、信号対雑音比、信号対干渉および雑音比等の無線品質を示す情報が集計されてもよい。
【0021】
また、各DUは、各端末装置における無線品質、トラフィック、CoMPの要否などの情報を、長周期でRIC101へ通知するようにしてもよい。RIC101は、この情報に基づいて、各UEへ割り当てるべき無線リソースの傾向を特定し、その特定した傾向に基づいて、各DUへ割り当てるべき無線リソースの量を特定しうる。
【0022】
RIC101は、上述のようにして収集した情報に基づいて、各DUに割り当てる無線リソースを決定する。例えば、RIC101は、UEごとの長周期でのSINRなどの無線品質情報及びトラフィック情報に基づいて、長周期での必要な無線リソースの量を推定する。例えば、セルmとセルnとがオーバーラップする位置に存在するi番目のUEのトラフィックの量(bit)をv
iとし、そのUEの無線品質に対応する周波数利用効率(bit/Hz)をc
iとした場合に、セルmとセルnとがオーバーラップする位置に存在するUEのCoMPによる通信のために要求される周波数リソースの量ω
K,m,nは、以下の式に従って推定されうる。
なお、Kは、本実施形態における長周期のタイムステップであり、上述のような無線品質、トラフィック、CoMPの要否などの情報が収集される周期ごとに1が加算される値である。また、推定値ω
K,m,nは、例えばDUにおいて算出され、RIC101に通知されてもよい。また、この推定値に代えて、例えば初期値として所定値が用いられてもよいし、また、例えば、前回割り当てられた無線リソースの量が割り当てられてもよい。
【0023】
そして、RIC101は、上述のようにして受信した、CoMPの対象とするUE群についての情報に基づいて、実際に割り当てる無線リソースの量の補正係数を算出しうる。例えば、補正係数ε
k,m,nは、以下のようにして算出されうる。
なお、kは、本実施形態における短周期のタイムステップであり、上述のようなCoMPの対象とするUE群についての情報が取得される周期ごとに1が加算される値である。また、u
k,m,nは、セルmとセルnの組のリソース使用率を示し、d
k,m,nは、セルmとセルnの組の品質劣化度を示す値である。また、u
th及びd
thは、それぞれ、リソース使用率及び品質劣化度の閾値である。また、σ
incは、無線リソースの量のマージンを増やす場合の所定の係数であり、σ
decは、無線リソースの量のマージンを減らす場合の所定の係数である。また、E
k,m,nは、ε
k,m,nのNタイムステップ分の移動平均であり、以下のように算出される。
【0024】
上述の補正係数を算出するための式の一番上の条件は、リソース使用率が閾値より高く、かつ、品質劣化度が閾値より低い場合の値を示しており、不必要に大量のリソースが割り当てられているわけではなく、かつ、例えば品質劣化が起きていない場合に相当する。この場合は、前回の補正係数εk-1,m,nが適正な値であったものとして、その値が維持される。上述の補正係数を算出するための式の二段目の条件は、リソース使用率が閾値より高く、かつ、品質劣化度が閾値より高い場合の値を示しており、例えばリソースが使い尽くされて品質劣化が起きている場合に相当する。この場合は、前回の補正係数を用いて割り当てられたリソースの量が不十分であることが想定される。このため、補正係数εk,m,nを、前回の補正係数εk-1,m,nより大きくし、より多くの無線リソースが割り当てられるようにする。上述の補正係数を算出するための式の二段目の条件は、リソース使用率が閾値より低い場合の値を示しており、例えばリソースが大きく余っている場合に相当する。この場合、補正係数εk,m,nを、前回の補正係数εk-1,m,nより小さくし、割り当てられる無線リソースの量を少なくして、割り当てられたが使用されないリソースの量を減らすようにする。
【0025】
なお、リソース使用率u
k,m,n及び品質劣化度d
k,m,nは、以下のように算出されうる。
ただし、sは、CoMPを実行するDUに属するサービスを示す値であり、Sは、そのようなサービスの集合を示す。また、w
sは、サービスsに対する重み係数であり、δ
s,k,m,nは、セルm及びセルnの組においてCoMPを行うサービスsのUE群の品質劣化度を示している。
【0026】
ここで、δ
s,k,m,nは、例えば、遅延要求がないサービスに対して
のように算出され、遅延要求のあるサービスに対して
のように算出されうる。
【0027】
RIC101は、上述のようにして取得したω
K,m,nとε
k,m,nを用いて、セルm及びセルnの組に関してCoMP用に割り当てる無線リソースの量W
k,m,nを、W
k,m,n=ε
k,m,n・ω
K,m,nのように算出する。RIC101は、例えば、
図1の例では、セル131とセル132とがオーバーラップするがセル133とオーバーラップしない領域、セル132とセル133とがオーバーラップするがセル131とオーバーラップしない領域、セル131とセル133とがオーバーラップするがセル132とオーバーラップしない領域、及び、セル131~セル133がオーバーラップする領域、のそれぞれについて、上述のようにして、リソースの量W
k,131,132、W
k,132,133、W
k,131,133、W
k,131,132,133を算出する。そして、RIC101は、これらの量のリソースが(周波数および時間領域で)互いに重ならないように、各DUへ割り当てるリソースを決定する。なお、
図1の例では、DU115のみが、これらの領域でのCoMPによる通信を行うため、これらのリソースを全てDU115に割り当てるが、これに限られない。例えば、ネットワークスライスごとに異なるDUがスケジューリングしてもよく、その場合、上述の計算において、さらに各DUが担当するネットワークスライスごとに分類して、必要なリソース量を決定しうる。そして、RIC101は、例えば第1のネットワークスライスに関する量W
s1,k,131,132、W
s1,k,132,133、W
s1,k,131,133、W
s1,k,131,132,133のリソースを、第1のネットワークスライスを担当するDU115に割り当て、第2のネットワークスライスに関する量W
s2,k,131,132、W
s2,k,132,133、W
s2,k,131,133、W
s2,k,131,132,133のリソースを、その第2のネットワークスライスの通信を担当する他のDU(不図示)に割り当てうる。
【0028】
また、RIC101は、各セルの、他のセルとオーバーラップしない領域に存在するUEのためのリソースの割り当て量を、例えば、CoMPの対象ではないUE群に関して、上述の手法と同様にして品質劣化度や無線リソース使用率を用いて決定しうる。なお、RIC101は、CoMPの対象ではないUE群については、UEごとの情報を収集して必要なリソース量を算出してもよい。そして、RIC101は、特定した量のリソースを、例えば周波数および時間領域において割り当てる。なお、例えば、セル131とセル132とがオーバーラップするがセル133とオーバーラップしない領域に割り当てられたリソースは、セル133において使用しても干渉が生じないか又は十分に小さくなる。このため、セル131やセル132とオーバーラップしないセル133の領域に存在するUE用のリソースは、セル131とセル132とがオーバーラップするがセル133とオーバーラップしない領域に割り当てられたリソースを使用することができる。このようにして、RIC101は、相互に干渉しないように、各DUに対して無線リソースを割り当てる。RIC101は、DUへ、そのDUが関連するリソースの割り当てを通知する。例えば、RIC101は、セル131の他のセルとオーバーラップしない領域に滞在すると共に、例えばDU111によって提供されるネットワークスライスの通信を行うUEのための無線リソースを、DU111に割り当てる。同様に、RIC101は、セル131の他のセルとオーバーラップしない領域に滞在すると共に、例えばDU112によって提供されるネットワークスライスの通信を行うUEのための無線リソースを、DU112に割り当てる。さらに、RIC101は、セル131の他のセルとオーバーラップしない領域に滞在すると共に例えばDU115によって提供されるネットワークスライスの通信を行うUEのための無線リソースと、セル132やセル133とオーバーラップする領域に滞在するUEのための無線リソースとを、DU115に割り当てる。
【0029】
DUは、割り当てられた無線リソースの範囲内で、UEに対して無線リソースを割り当てる。例えば、DU115は、セル131~セル133の3つのセルの組み合わせに対して割り当てられた無線リソースを用いて、UE142にリソースを割り当て、セル131とセル133との組み合わせに対して割り当てられた無線リソースを用いて、UE143にリソースを割り当て、また、セル132とセル133との組み合わせに対して割り当てられた無線リソースを用いて、UE145にリソースを割り当てる。
【0030】
なお、CoMPの対象となるUEのためのリソースは、係数εk,m,nによって、実際に使用されるリソースの量に一定のマージンを加えて設定した量を有することが想定される。このマージンの分のリソースが使用されないと、リソースの浪費につながってしまう。このため、例えば、CoMPの対象となるUE群のためのリソースのうち、実際に使用されないマージン分に相当するリソースを、CoMPの対象でないUE群の通信に割り当てるようにしてもよい。例えば、DU115は、CoMPの対象となるセルのオーバーラップ部分に存在するUE群に対してRIC101によって割り当てられた無線リソースのうち、使用されなかった分のリソースを、セル131~セル133のそれぞれにおける他のセルと重複していない部分に存在するUEの通信のために割り当てうる。また、RIC101は、このような割り当てを前提として、CoMPの対象外のUE群の通信のための無線リソースの割り当て量を減らしてもよい。例えば、セルcに関するCoMPの対象外のUE群の通信のために用意されるべき無線リソースの量がεk,c・ωK,cで表現されるものとする。また、そのセルcとセルnの組み合わせに対してRIC101によってCoMP通信のために割り当てられたリソースの量が、上述のようにして、Wk,c,n=εk,c,n・ωK,c,nと決定されたものとする。このとき、マージンの量は、Wk,c,n-ωK,c,nと表すことができる。すると、マージンの合計は、Σn(Wk,c,n-ωK,c,n)と表現される。このマージンの全てが使用されないと仮定すれば、CoMPの対象外のUE群の通信のために用意されるべき無線リソースの量をこのマージン分だけ減じても、このマージン部分をCoMPの対象外のUE群に割り当てることにより、リソースの不足がないことが想定される。このため、RIC101は、例えば、CoMPの対象外のUE群に割り当てるリソース量WK,cを、WK,c=εk,c・ωK,c-Σn(Wk,c,n-ωK,c,n)のように算出してもよい。なお、一例において、RIC101は、1未満の定数αを用いて、WK,c=εk,c・ωK,c-α・Σn(Wk,c,n-ωK,c,n)のように、WK,cを算出してもよい。以上のようにして、リソースの浪費を抑制することができる。なお、例えばDU115は、まずCoMPの対象とするUE群に対してリソースを割り当て、その後に、CoMPの対象でないUE群に対してリソースを割り当てうる。
【0031】
以上のようにして、DUからRICへ、UEごとの情報ではなく、CoMPの対象となる、セルが重複する領域に存在するUE群について、その重複するセルのグループ単位の情報を送信することにより、DUとRICとの間の通信回線の浪費を防ぎながら、短周期での干渉抑制制御を行うことが可能となる。また、DUは、CoMPの対象外のUE群についても、UEごとの情報ではなく、他のセルと重複しないセルの領域に存在するCoMP対象外のUE群についての情報を、セル単位で送信することにより、DUとRICとの間の通信回線の浪費を防ぐことができる。また、RICは、CoMPの対象のUE群へ割り当てられるリソースのマージンの量を考慮して、CoMPの対象外のUE群へのリソース量を調整することができる。これにより、無線リソースを効率的に利用することが可能となる。なお、DUは、UEごとの情報を長周期で送信してもよく、これにより一定周期ごとに、基準となる割り当てリソース量を調整することができる。なお、このようなUEごとの情報についてはDUからRICへ通知されなくてもよい。例えば、RIC101は、CoMP対象のUE群に割り当てるリソース量の初期値として事前に定められた所定量を利用してもよく、その初期値を用いた通信において、上述のようにリソース使用率と品質劣化度とを特定して、リソースの割り当て量を逐次的に更新するようにしてもよい。一例において、上述の所定量は十分に大きい値であってもよい。そして、リソース使用率が低いことにより、上述のようにしてリソース割り当て量を逐次的に減らし、一定時間後に適切なリソース量が割り当てられるようにしてもよい。これによれば、CoMPの対象のUE群へ割り当てられるリソースの量が少ないことによる、それらのUE群の通信品質の低下を防ぐことが可能となる。
【0032】
(装置構成)
図2を用いて、DU及びRICのハードウェア構成例について説明する。DU及びRICは、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び、通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、DU及びRICが実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、O-RANや3GPP規格に従うシグナリングなどの通信のための回路によって構成される。
【0033】
図3は、DUの機能構成例を示す図である。DUは、例えば、情報収集部301、情報通知部302、割り当て情報受信部303、及び、リソース割り当て部304を含んで構成される。なお、
図3では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、DUが有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、DUは、O-RANのDUが一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0034】
情報収集部301は、例えば、自装置がRUを介して通信サービスを提供しているセルに存在しているUEに関する情報を収集する。情報収集部301は、例えば、各UEにおける無線通信品質を示す情報や、そのUEが通信すべきトラフィックの量を特定する情報を収集しうる。情報収集部301は、CoMPの対象とするUE群について、収集した情報を集約する。例えば、情報収集部301は、CoMPの対象とするUE群に含まれるUEのそれぞれについてのトラフィックの量や実際の通信において割り当てたPRBの量の平均値などを算出する。なお、情報収集部301は、例えば、CoMPの対象とするUE群が、それぞれ異なる組み合わせのセルがオーバーラップしている領域に存在する場合には、そのセルの組み合わせごとに、情報を集約しうる。一例において、DUは、2つのセルのみを用いて通信している場合、オーバーラップする領域は1通りしか存在しないため、全てのCoMPの対象とするUEについて情報を集約する。一方で、DUは、3つ以上のセルを用いて通信している場合、オーバーラップする領域は複数通り存在するため、それぞれ異なる組み合わせのセルがオーバーラップしている複数の領域のそれぞれについて、それぞれ別個に、CoMPの対象とするUEについて情報を集約しうる。また、情報収集部301は、例えば、CoMPの対象とするUEのうち、所定のネットワークスライスの通信を行うUEの情報と、それ以外のUEの情報とを別個に集約してもよい。同様に、情報収集部301は、例えば、CoMPの対象とするUEのうち、所定の5QIに対応する通信を行うUEの情報と、それ以外のUEの情報とを別個に集約してもよい。さらに、情報収集部301は、CoMPの対象としないUE群についても同様にして情報を集約してもよい。なお、情報収集部301は、CoMPの対象としないUE群の情報については集約しなくてもよい。
【0035】
情報通知部302は、情報収集部301において収集及び集約した情報を、所定の周期でRICへ通知する。なお、情報通知部302は、長周期で、UEごとの情報をRICへ通知し、短周期で、集約した情報をRICへ通知してもよい。また、情報通知部302は、集約した情報のみをRICへ通知するようにしてもよい。
【0036】
割り当て情報受信部303は、情報通知部302によって通知した情報に基づいて、RICから自装置に割り当てられた無線リソースを示す情報を受信する。この情報は、例えば、CoMP用のリソースと、それ以外のリソースとを区別して示す。なお、CoMP用のリソースは、セルの組み合わせごとに示されうる。また、CoMP用のリソースは、セルの組み合わせに関して、その組み合わせに含まれるセルの全てについて共通の周波数および時間リソースを含む。なお、割り当て情報受信部303が受信する情報は、異なるセルの組み合わせに対しては、それぞれ相異なる周波数および時間リソースを含み、各リソースに対して、セルのどの組み合わせに関して割り当てられているかを示す情報を含む。一方で、CoMP用でないリソースは、セルごとにリソースが割り当てられる。なお、CoMP用でないリソースは、CoMP用のリソースの一部と重複してもよい。
図1の例において、セル131とセル132の組み合わせに対して割り当てられた無線リソースは、セル133における非CoMP通信用に割り当てられてもよい。セル131とセル132の組み合わせに対して割り当てられた無線リソースは、セル133の範囲外に存在するUEの通信のために割り当てられるため、セル133においてそのリソースを使用しても干渉が発生しないか又は十分に小さくなることが予想されるからである。また、非CoMP通信用の無線リソースは、上述のように、CoMP通信用の無線リソースを流用することを前提に、非CoMP通信に必要な量より少ない量の無線リソースでありうる。
【0037】
リソース割り当て部304は、割り当て情報受信部303によって受信された情報に基づいて、セルの各組み合わせに対して割り当てられた無線リソースを、その組み合わせに含まれるセルがオーバーラップする領域に存在するUEのCoMP通信のために割り当てる。また、リソース割り当て部304は、割り当て情報受信部303によって受信された情報に基づいて、個別のセルに割り当てられた無線リソースを、いずれのセルともオーバーラップしない領域に存在するUEの非CoMP通信のために割り当てる。また、リソース割り当て部304は、さらに、CoMP通信のためにリソースを割り当てた後の余剰のリソースを、非CoMP通信のために割り当てる。
【0038】
図4は、RICの機能構成例を示す図である。RICは、例えば、情報受信部401、割り当て決定部402、及び、割り当て情報通知部403を含んで構成される。なお、
図4では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、RICが有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、RICは、O-RANのRICが一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図4の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図4の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0039】
情報受信部401は、DUにおいて収集及び集約された情報を受信する。この情報は、例えば、上述のように、CoMPの対象となるUE群の無線品質やトラフィック量などの情報を集約した情報を含みうる。また、この情報は、CoMPの対象でないUEごとの又はそのUE群について集約された、無線品質やトラフィック量などの情報を含みうる。割り当て決定部402は、受信した情報に基づいて、各DUに対して割り当てる無線リソースを決定する。割り当て決定部402は、CoMPの対象とするUEに割り当てるべき無線リソースと、CoMPの対象としないUEに割り当てるべき無線リソースを別個に決定する。また、割り当て決定部402は、セルのそれぞれ異なる組み合わせについて、それぞれ別個にCoMPの対象とするUEに割り当てるべき無線リソースを決定しうる。なお、割り当て決定部402は、さらに、ネットワークスライスや5QIなどの他の基準に基づいてUEを分類し、その分類ごとにそれぞれ異なる無線リソースを割り当ててもよい。なお、割り当てるリソースの量の決定方法については上述の通りであり、具体的にどのリソースを割り当てるかについては任意である。割り当て情報通知部403は、割り当て決定部402によって決定された無線リソースの割り当てをDUに通知する。
【0040】
(処理の流れ)
続いて、
図5を用いて、本実施形態に係るRICとDUにおいて実行される処理の流れの例について概説する。
【0041】
まず、DUは、自装置がスケジューリングを行う対象であるセルの範囲内に存在しているUEについて、情報を収集する(S501)。DUは、例えばスケジューリングを行う対象のセルを提供するRUに接続中のUEに対して送信する又はそのUEから送信されるトラフィック量や、そのUEにおける無線品質の情報などを取得する。そして、DUは、例えば、CoMPの対象とするUE群について収集した情報を集約して、そのUE群に関する情報を生成する(S502)。なお、DUは、このときに、CoMPの対象としないUE群についても、収集した情報を集約してもよい。そして、DUは、収集・集約した情報を、RICへ通知する(S503)。RICは、その通知された情報に基づいて、各DUに割り当てる無線リソースを決定し(S504)、決定した無線リソースの割り当てを示す情報をDUへ通知する(S505)。なお、RICは、上述のようにCoMPの対象とするUE群と、それ以外のUE群とで別個のリソースを割り当てる。また、CoMPの対象とするUE群が、それぞれ異なる組み合わせのセルがオーバーラップする領域に存在する場合、そのセルの組み合わせごとに別個のリソースが割り当てられる。DUは、受信した割り当て情報に基づいて、CoMPの対象とするUE群に割り当てられた無線リソースを、複数のセルがオーバーラップしている領域に存在するUEの通信のために割り当て、CoMPの対象としないUE群に割り当てられた無線リソースを、セルがオーバーラップしていない領域に存在するUEの通信のために割り当てる(S506)。また、DUは、CoMPの対象とするUE群に割り当てられた無線リソースに余剰があった場合、その余剰分をセルがオーバーラップしていない領域に存在するUEの通信のために割り当てうる。そして、DUは、割り当てたリソースを用いて、RUを介してUEと通信する。
【0042】
以上のようにして、DUとRICとの間の通信回線の浪費を防ぎながら、短周期での干渉抑制制御を行うことが可能となる。また、RICが、CoMPの対象のUE群へ割り当てられるリソースのマージンの量を考慮して、CoMPの対象外のUE群へのリソース量を調整することにより、無線リソースを効率的に利用することが可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0043】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。