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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076157
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】塞栓プラグ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187572
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】山田 真悟
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD53
4C160DD65
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】
編み目を細かくして塞栓能力を確保するとともに、塞栓プラグの縮径性を確保することができる塞栓プラグを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明にかかる塞栓プラグ100は、ワイヤ11の編み込み構造からなり、延伸状態ではデリバリーカテーテル又はシース内に挿通可能なように細く形成され、開放状態では放射方向に拡張展開して血管内を押圧して留置し、血管を塞栓する塞栓プラグ100において、塞栓プラグ100は、複数本のワイヤ11を1本とみなして編み込み及び織り込みされてなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ編み込み構造からなり、延伸状態ではデリバリーカテーテル又はシース内に挿通可能なように細く形成され、開放状態では放射方向に拡張展開して血管内を押圧して留置し、血管を塞栓する塞栓プラグにおいて、
前記塞栓プラグは、複数本のワイヤを1本とみなして編み込み及び織り込みされてなることを特徴とする塞栓プラグ。
【請求項2】
前記複数本のワイヤは、横並びに並列して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の塞栓プラグ。
【請求項3】
前記複数本のワイヤは、少なくとも1本は、線径が異なることを特徴とする請求項1に記載の塞栓プラグ。
【請求項4】
前記織り込みは、平織り、綾織り、朱子織りのいずれかの構造であることを特徴とする請求項1に記載の塞栓プラグ。
【請求項5】
前記塞栓プラグは、開放状態で拡張展開した状態で円盤状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塞栓プラグ。
【請求項6】
前記塞栓プラグは、開放状態で拡張展開した状態で円盤状に形成された円盤部が複数並列に配置されていることを特徴とする1から4のいずれか1項に記載の塞栓プラグ。
【請求項7】
前記塞栓プラグは、開放状態で拡張展開した状態で円盤状に形成された円盤部が3つ以上並列に配置されており、両端部の円盤部以外の円盤部の直径は、両端の円盤部の直径よりも小さく形成されていることを特徴とする1から4のいずれか1項に記載の塞栓プラグ。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塞栓プラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
経皮的に動静脈に留置し、血流を遮断させる血管塞栓用デバイスとして、ワイヤ編み込み構造からなる塞栓プラグがある(特許文献1)。こうしたワイヤの編み込み構造からなる塞栓プラグは、軸方向に延伸させることで編み目形状は変形し、外径が縮径する。縮径により細くなることで留置用カテーテルを通じて血管内を進行できる。進行後、治療箇所の到達地点で延伸をほどいて外径を拡張させ、血管壁に拡張力を与えることで位置ずれをしない留置となる。そして、留置した状態では、編み目が細かいほど隙間が小さくなり、塞栓能力は高くなり、血流を止めることができる。このように塞栓プラグにおいては、縮径機能と塞栓能力の2要素が必要不可欠であるが、塞栓能力を高めるために編み目を細かくし過ぎると延伸時の編み目形状の変形が困難になり、縮径量は減少する。逆に編み目を粗くするとスムーズな変形は可能になるが塞栓能力が低下する。よって、塞栓プラグとは留置カテーテルを挿通可能な縮径を満たす条件下で、できる限り編み目が細かいものが好適である。こうした条件を少しでも満たすために、現市場においては、編み込んだワイヤを2層、3層と多層に重ねることで編み目の細かさの条件を補う製品が広く使用されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、多層構造の塞栓プラグは単層構造と比べて塞栓能力は高いが1層と比較して全体的に硬さを生じ、過大な押圧になり、血管損傷などの悪影響、デリバリーカテーテル挿通時の抵抗も増え、塞栓プラグ留置時においても変形操作の支障となり、治療に悪影響を及ぼす可能性があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2014/110589
【特許文献2】特開2005-261951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、編み目を細かくして塞栓能力を確保するとともに、塞栓プラグの縮径性を確保することができる塞栓プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる塞栓プラグは、ワイヤ編み込み構造からなり、延伸状態ではデリバリーカテーテル又はシース内に挿通可能なように細く形成され、開放状態では放射方向に拡張展開して血管内を押圧して留置し、血管を塞栓する塞栓プラグにおいて、
前記塞栓プラグは、複数本のワイヤを1本とみなして編み込み及び織り込みされてなることを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる塞栓プラグは、複数本のワイヤを1本とみなして編み込み及び織り込みされてなることから、編み目を細かくして塞栓能力を確保可能であるとともに、複数本のワイヤを1本とみなしていることから塞栓プラグを構成する1本1本のワイヤは、通常の1本ずつで編み込んだ塞栓プラグを構成するワイヤに対して細いワイヤを使用することができる。そのため、塞栓プラグの縮径性をも確保することができる。
【0008】
また、本発明にかかる塞栓プラグにおいて、前記複数本のワイヤは、横並びに並列して配置されていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、複数本のワイヤを編み込み及び織り込みした場合であっても、複数本のワイヤで太い糸となることを防止でき、縮径性の高い塞栓プラグとすることができる。
【0009】
また、本発明にかかる塞栓プラグにおいて、前記複数本のワイヤは、少なくとも1本は、線径が異なることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、張力を上げることなくラジアルフォースを上げることができる。
【0010】
さらに、本発明にかかる塞栓プラグにおいて、前記織り込みは、平織り、綾織り、朱子織りのいずれかの構造であることを特徴とするものであってもよい。かかる織り込み構造を採用することによって、編み目を細かくして塞栓能力を確保可能であるとともに、塞栓プラグの縮径性をも確保することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかる塞栓プラグにおいて、前記塞栓プラグは、開放状態で拡張展開した状態で円盤状に形成されていることを特徴とするものであってもよい。このような円盤状に形成することによって、延伸状態から最も大きく拡張させることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる塞栓プラグにおいて、前記塞栓プラグは、開放状態で拡張展開した状態で円盤状に形成された円盤部が複数並列に配置されていることを特徴とするものであってもよい。円盤部を複数並列に配置することによって、塞栓力の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる塞栓プラグにおいて、前記塞栓プラグは、開放状態で拡張展開した状態で円盤状に形成された円盤部が3つ以上並列に配置されており、両端部の円盤部以外の円盤部の直径は、両端の円盤部の直径よりも小さく形成されていることを特徴とするものであってもよい。このように、直径が小さい円盤を混ぜることで留置時の長さが小さくなるため、留置できるシチュエーションの選択肢が多くなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかる塞栓プラグ100の実施形態を示す側面図である。
図2】本発明にかかる塞栓プラグ100の別実施形態を示す側面図である。
図3】本発明にかかる塞栓プラグ100の編み込み状態を示す模式図である。
図4】本発明にかかる塞栓プラグ100及び比較例1,2の断面図である。
図5】本発明にかかる塞栓プラグ100の別実施形態を示す断面図である。
図6】本発明にかかる塞栓プラグ100がデリバリーカテーテルに挿入された状態を示す図である。
図7】本発明にかかる塞栓プラグ100が血管内に留置された状態を示す図である。
図8】本発明にかかる塞栓プラグ100の試験結果を示す図である。
図9】本発明にかかる塞栓プラグ100の水流抵抗試験の試験方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明にかかる塞栓プラグ100を模式的に表した図である。図2は、塞栓プラグ100の別実施形態を表す図である。図3は、塞栓プラグ100の編み目構造を表した模式図である。
【0017】
本発明にかかる塞栓プラグ100は、血管の内径以上の直径に拡張可能なプラグ本体10と、このプラグ本体10の先端に形成される先端部20と、塞栓プラグ100を留置する際に操作するプッシャーワイヤ40と連結される離脱部30と、を備えている。
【0018】
先端部20は、プラグ本体10の編み目又は織り目を構成するワイヤ11の先端側を束ねた状態で固定する部材である。この先端部20は、X線透視下での視認性を向上させるために、X線不透過の材料を使用してもよい。
【0019】
プラグ本体10は、血管内でデリバリーカテーテル50から開放された際に、放射方向に拡張して血管内に留置し、血管内の血流を閉塞する機能を有する部分である。プラグ本体10は、ワイヤを使用した編み込み又は織り込み構造となっている。編み込み構造又は織り込み構造は、図3に示すように、2本~10本のワイヤ11を1本の編み線のようにみなして(図3では、3本を横並びに配置した状態のものを1本とみなして)、編み込み又は織り込んだ構造を有している。この際の織り構造は、平織り、綾織り、朱子織りのいずれの構造も採用することができる。なお、使用するワイヤ11は、複数のワイヤを1本とみなしていることから、通常の1本で編み込んだプラグ本体と比較して、血管壁への押圧を同じにする場合には、細いワイヤを使用することができる。好ましくは、0.020mm~0.100mmの太さのワイヤを使用するよい。塞栓プラグ100の外形形態は、延伸状態でデリバリーカテーテル50内に挿通可能な程度の縮径が可能であり、かつ留置位置で血管の内径より大きな径となるように拡張可能であれば、特に限定するものではない。好ましくは、図1に示すように、拡張状態(開放状態)では円盤状となるような形態となるように作製するとよい。このような円盤状に形成することによって、延伸状態から大きく拡張させることができる。また、円盤状の厚み(長手方向の幅)を薄くすることによって、留置時に置ける長さが短くなるため、留置できるシチュエーションの選択肢が多くなるという効果がある。さらに、図2に示すように、このような円盤状の形態を有する円盤部12を2つ以上(図2では3つ並列してある。)くびれ部13を介して並列して形成してもよい。この際に、3つ以上並列して繋いで配置する仕様においては、両端以外の円盤部12aは、両端に配置される円盤部12と比較して、血管に対する押圧力を低く設定できるので、両端に配置される円盤部12よりも直径が小さい円盤を混ぜることができる。このように、直径が小さい円盤を混ぜることで留置時の長さが小さくなるため、留置できるシチュエーションの選択肢が多くなるという効果がある。
【0020】
このように、複数本のワイヤ11を並列させて編み込むことによって以下の効果を有する。図3に示す2オーバー2アンダーの綾織で説明すると、本発明にかかるプラグ本体10の断面(図4B)と、同様の編みピッチAの単線編みで作製された比較例1によるプラグ本体110の断面(図4A)と比較すると、比較例1のプラグ本体110は、ワイヤの曲率は小さいままであるので、ワイヤ同士にかかる張力は変化せずしなやかさは維持されるが、隙間Bが大きくなるため血流の塞栓能力が低下する。これに対し、隙間Cを同じ幅にして単線編みで作製された比較例2によるプラグ本体120の断面(図4C)と比較すると、比較例2によるプラグ本体120のワイヤは、編みピッチDが短くなり、ワイヤの曲率が大きくなってワイヤ同士の張力が高くなる。よって、プラグ本体のしなやかさは失われ、伸縮性が減少し、撚れ易くなるという欠点がある。これに対し、本発明にかかるプラグ本体10では、隙間を小さくしたままで、ワイヤ11の張力を低く保つことができ、血流の塞栓能力が高く、しなやかな塞栓プラグ100を提供することができる。
【0021】
プラグ本体10の編み込み又は織り込み構造の変形例が図5に示されている。これらは、複数本のワイヤ11を並列させて編み込む際に、複数本のワイヤの太さが異なるものと使用してある。かかる構造を採用したことによって、張力を上げることなくラジアルフォース(直径を小さく潰した場合の反力)を上げることができる。例えば、図5Aは、3本並列したワイヤの真ん中のワイヤを残り2本と比較して直径の大きいワイヤを使用した編み込み又は織り込み構造を示している。図5Bは、すべて異なる径からなる3本のワイヤを直径の短い順に並べて配置した編み込み又は織り込み構造を示している。かかる構造を採用したことによって、張力を上げることなくラジアルフォースを上げることができる。また、図5Bに示すように、交差するワイヤの接触率を高くすることができる。
【0022】
離脱部30は、プラグ本体10の編み目を構成するワイヤ11の手元側を束ねた状態で固定するとともに、塞栓プラグを留置領域に送達する際に、プラグ本体10とプッシャーワイヤ40とを連結させたり、離脱させたりすることができるように形成されている。この離脱部30の構造としては、例えばネジ溝を形成し、プッシャーワイヤ40を回転させることで、プラグ本体を離脱可能にしたりする構成が挙げられるが、これに限定するものではない。
【0023】
こうして作製された塞栓プラグ100は、以下のようにして使用される。まず、留置領域の血管径を計測し、この血管径よりも拡張状態において15%~70%程度大きい径となる塞栓プラグ100を用意する。選択した塞栓プラグ100に適合するシース又はガイディングカテーテル50を準備し、Y型コネクタを取付け、ガイドワイヤーを介して血管内に挿入し留置位置まで送達し、ガイドワイヤーを抜去する。
【0024】
その後、図6に示すように、プッシャーワイヤ40で塞栓プラグ100をシース又はガイディングカテーテル50の先端部まで進める。シース又はガイディングカテーテル50を通して確認造影を行い、塞栓プラグ100がシース又はガイディングカテーテル50内で留置位置にあることを確認し、塞栓プラグ100の位置を保持しシース又はガイディングカテーテル50を引くことでプラグを展開する。そして、プッシャーワイヤ40及びシース又はガイディングカテーテル50を一緒に体外に抜去する。これにより、図7に示すように、血管内を閉塞するように塞栓プラグが留置される。
【0025】
本発明にかかる塞栓プラグ100によれば、2本~10本程度のワイヤを1本の編み線のようにみなして、織った構造を有しているため、1本で編んだ場合と比較して、編み目が細かく形成されているため塞栓力が高くなる。これに対し、複数本のワイヤを1本の編み線のようにみなすことにより、細径ワイヤを1層で使用することが可能となるため、2層構造のもののように過大な押圧になることがなく、血管形状や留置位置の状況に合わせて変形することが可能となり、デリバリー時に血管の蛇行に合わせてスムーズに挿通ができるという効果がある。また、複数本における編み構造に加えて、拡張状態では円盤状となるような形態を採用することによって、高い拡張力を確保することができ、血圧によって留置位置がずれる可能性を低減することができ、塞栓プラグの全長の長さを短くすることができるため、留置できるシチュエーションが広くなるという効果を有する。
【0026】
(実施例)
本発明にかかる塞栓プラグ100の実施例1として、図8に示すように、編み線ワイヤの線径40μmを使用し、並列数が4本で1層に編み込み、円盤部が3つ並列配置され、中央の円盤の直径が小さく形成した塞栓プラグを作製した。実施例2として、編み線ワイヤの線径40μmを使用し、並列数が2本で1層に編み込み、円盤部が3つ並列配置され、中央の円盤の直径が小さく形成した塞栓プラグを作製した。比較例として、編み線ワイヤの線径50μmを使用し、並列数が1本で3層に編み込み、2つの円盤部と、その間が円筒形となるように形成した塞栓プラグを作製した。
【0027】
かかる実施例及び比較例を使用し、塞栓性能を比較するため水流抵抗試験を行った。水流抵抗試験は、図9に示すように、ビーカー201の底に直径8mmのシリコンチューブ202(模擬血管)を接続し、シリコンチューブ内に直径12mmの実施例1、実施例2及び比較例の塞栓プラグを留置し、グリセリン溶液203(模擬血液)200mlを流し終えるまでの時間を計測した。その結果は、図8に示すように、実施例1が37.4秒、実施例2が89.7秒であったのに対し、比較例1は34.1秒であった。これにより、本発明にかかる実施例の方が塞栓性能が高いことがわかる。また、ラジアルフォースは、実施例1が2.96N、実施例2が0.97Nであるのに対し、比較例1は、4.07Nと非常に高く、比較例と比較してデリバリー性能が高いことがわかる。さらに、ランディングゾーン留置長さは、実施例1が24mm、実施例2が21mmであるのに対し、比較例1は、38mmであり、比較例1の留置長さが長いことがわかる。これは、本実施例の中央の円盤部の直径が短いことの有利な効果である。
【0028】
10…プラグ本体、11…ワイヤ、12…円盤部、13…くびれ部、20…先端部、30…離脱部、40…プッシャーワイヤ、50…ガイディングカテーテル、100…塞栓プラグ



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9