(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076161
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/26 20190101AFI20240529BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20240529BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240529BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L58/27
B60L50/60
B60H1/22 671
B60H1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187580
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 邦和
【テーマコード(参考)】
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA34
3L211DA29
3L211DA48
3L211EA56
3L211EA83
3L211GA26
3L211GA47
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD08
5H125CD09
5H125EE25
5H125EE41
5H125EE42
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE64
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】バッテリを熱源とする暖房を効率的に行うことが可能な電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリ1が車両を駆動する駆動系(モータ4、インバータ3)に電力供給することで車両100を駆動させ、車両100が走行中のバッテリ1の温度が所定の適正温度範囲となるようにバッテリ1を冷却する冷却制御を実行する電動車両の制御方法であって、バッテリ1の蓄熱を利用して車室内44の暖房を行うとともに、暖房が実行されると予測された場合に適正温度範囲の下限値を当該下限値の初期値よりも高くなるように更新する、下限値を初期値よりも高くなるように更新するとともに駆動系からの排熱を受けた冷媒をバッテリに循環してバッテリを加熱制御する、下限値を初期値よりも高くなるように更新するとともにヒータによりバッテリを加熱制御する、のいずれかを実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリが車両を駆動する駆動系に電力供給することで前記車両を駆動させ、前記車両が走行中の前記バッテリの温度が所定の適正温度範囲となるように前記バッテリを冷却する冷却制御を実行する電動車両の制御方法であって、
前記バッテリの蓄熱を利用して車室内の暖房を行うとともに、前記暖房が実行されると予測された場合に、
前記適正温度範囲の下限値を前記下限値の初期値よりも高くなるように更新する、
前記下限値を前記初期値よりも高くなるように更新するとともに前記駆動系からの排熱を受けた冷媒を前記バッテリに循環して前記バッテリを加熱制御する、
前記下限値を前記初期値よりも高くなるように更新するとともにヒータにより前記バッテリを加熱制御する、のいずれかを実行する電動車両の制御方法。
【請求項2】
前記車両が目的地に到着して停止し、その後前記車両が再起動したときに前記暖房が実行されると予測された場合に、前記車両が前記目的地に到着する時刻から所定時間だけ前の設定時刻以降において前記下限値を前記初期値よりも高くなるように更新する、又は前記下限値を前記初期値よりも高くなるように更新し前記加熱制御を実行する請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項3】
前記車両が停止した後再起動したときの外気温度が所定の閾値温度よりも低いときに前記再起動時に前記暖房が実行されると予測された場合に、
前記暖房を実行するのに必要な前記バッテリの温度となる起動時目標温度を算出し、
前記車両が停止してから前記再起動するまでの保管時間と、前記起動時目標温度と、外気温度に基づいて前記車両の停止時に要求される前記バッテリの温度となる停止時目標温度を算出し、
前記停止時目標温度が前記適正温度範囲よりも高い値となる場合に前記設定時刻以降において前記適正温度範囲が前記停止時目標温度を含むように前記適正温度範囲の上限値を更新する請求項2に記載の電動車両の制御方法。
【請求項4】
前記車両が停止した後再起動したときの外気温度が所定の閾値温度よりも低い場合に前記再起動時に前記暖房が実行されると予測された場合に、
前記暖房を実行するのに必要な前記バッテリの温度となる起動時目標温度を算出し、
前記車両が停止してから前記再起動するまでの保管時間と、前記起動時目標温度と、外気温度に基づいて前記車両の停止時に要求される前記バッテリの温度となる停止時目標温度を算出し、
前記冷却制御は、前記バッテリの温度が前記適正温度範囲の上限値に到達すると前記バッテリの冷却を開始し、その後前記バッテリの温度が前記下限値に到達すると前記バッテリの冷却を停止する制御であり、
前記停止時目標温度が前記上限値よりも高い場合に前記設定時刻以降において前記上限値を前記停止時目標温度以上の温度となるように更新し、
前記停止時目標温度が前記上限値よりも低く且つ前記下限値よりも高い場合に前記設定時刻以降において前記下限値を前記停止時目標温度と略同一の温度となるように更新する請求項2に記載の電動車両の制御方法。
【請求項5】
前記車両が停止するまで前記バッテリの温度が所定の監視温度を超えた状態である場合に前記適正温度範囲の更新を行わない請求項3又は請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項6】
前記車両の走行中の前記バッテリの要求出力に基づいて、前記バッテリが前記要求出力を出力可能な最大温度を算出し、
前記設定時刻以降に設定される前記上限値を、前記最大温度を超えないように設定する請求項3又は請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項7】
前記設定時刻以降に設定される前記上限値を前記バッテリの耐熱上限温度を超えないように設定する請求項3又は請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項8】
前記暖房が実行されているときの外気温度を表す過去情報を記憶し、
前記過去情報に基づいて前記閾値温度を設定する請求項3又は請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項9】
前記閾値温度、前記設定時刻、前記保管時間、前記起動時目標温度を前記車両のドライバの入力操作により更新する請求項3又は請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項10】
前記車両の停止前における前記バッテリの加熱の必要性を判断する蓄熱フラグがON状態となると前記車両の停止前の前記バッテリの加熱を実行し、前記車両が停止するまで前記蓄熱フラグがOFF状態を維持する場合に前記車両の停止前の前記バッテリの加熱を実行しない場合において、
前記蓄熱フラグを前記ON状態にするための第1判断項目、前記蓄熱フラグを前記OFF状態にするための第2判断項目を追加又は削除する更新を可能とする請求項3又は請求項4に記載の電動車両の制御方法。
【請求項11】
バッテリと、
前記バッテリから電力供給を受けて車両を駆動させる駆動系と、
前記バッテリを冷却する冷却手段と、
前記車両が走行中の前記バッテリの温度が所定の適正温度範囲となるように前記冷却手段を制御する制御部と、を含む電動車両の制御装置であって、
前記バッテリの蓄熱を利用して車室内の暖房を行う暖房装置と、
前記駆動系からの排熱を受けた冷媒を前記バッテリに循環する冷媒循環装置と、
前記バッテリを加熱するヒータと、をさらに含み、
前記制御部は、前記冷媒循環装置、及び前記ヒータを制御可能とされ、
前記暖房装置が起動されると予測された場合に、
前記適正温度範囲の下限値を前記下限値の初期値よりも高くなるように更新する、
前記下限値を前記初期値よりも高くなるように更新するとともに前記冷媒循環装置を起動する、
前記下限値を前記初期値よりも高くなるように更新するとともに前記ヒータを起動する、のいずれかを実行する電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電動車両において、車両を駆動する駆動系に電力を供給するバッテリの蓄熱を熱源として車室内の暖房を行う内容を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、バッテリが冷えている状態で暖房を行うことは困難である。
【0005】
本発明は、バッテリを熱源とする暖房を効率的に行うことが可能な電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動車両の制御方法は、バッテリが車両を駆動する駆動系に電力供給することで車両を駆動させ、車両が走行中のバッテリの温度が所定の適正温度範囲となるようにバッテリを冷却する冷却制御を実行する電動車両の制御方法である。この制御方法では、バッテリの蓄熱を利用して車室内の暖房を行うとともに、暖房が実行されると予測された場合に、適正温度範囲の下限値を当該下限値の初期値よりも高くなるように更新する、下限値を初期値よりも高くなるように更新するとともに駆動系からの排熱を受けた冷媒をバッテリに循環してバッテリを加熱制御する、下限値を初期値よりも高くなるように更新するとともにヒータによりバッテリを加熱制御する、のいずれかを実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、暖房を実行する前にバッテリを加熱して蓄熱させるので、バッテリを熱源とする暖房を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)が適用される車両の構成を説明するブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両が走行中の冷媒及び空気の循環を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両が目的地に到着する直前の状態であって車両の再起動時に暖房を行うことが予測される場合に、事前にバッテリを加熱する場合を示す。
【
図4】
図4は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両の再起動時にバッテリを熱源として車室内を暖房する場合を示す。
【
図5】
図5は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の制御フロー図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)において、停車時バッテリ目標温度、更新用の冷却開始温度、更新用の冷却停止温度を算出するロジックを説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の第1のタイムチャートであって、停車時バッテリ目標温度が冷却開始温度よりも高い場合を示す。
【
図8】
図8は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の第2のタイムチャートであって、停車時バッテリ目標温度が冷却開始温度と冷却停止温度の間に位置する場合を示す。
【
図9】
図9は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両の再起動時にバッテリを熱源として車室内を暖房する場合の第1変形例を示す。
【
図10】
図10は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両の再起動時にバッテリを熱源として車室内を暖房する場合の第2変形例を示す。
【
図11】
図11は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の第1のタイムチャートの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[車両100の構成]
図1は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)が適用される車両100の構成を説明するブロック図である。車両100は電動車両である。電動車両とは駆動源としてモータ4(フロントモータ4f、リアモータ4r)を備え、前輪9f及び後輪9rにモータ4が発生するトルクに起因した駆動力を発生させることによって走行する車両100をいう。
【0011】
図1に示すように、車両100は、フロント駆動システムfdsと、リア駆動システムrdsと、バッテリ1と、コントローラ2(制御部)とを備える。
【0012】
フロント駆動システムfdsはバッテリ1から電力の供給を受け、コントローラ2による制御の下で前輪9fを駆動する。フロント駆動システムfdsは、フロントインバータ3f、フロントモータ4f、フロントギアボックス5f、フロント回転センサ6f、フロント駆動軸8f、前輪9f等を備える。添字のfはフロント側の構成であることを示す。前輪9fは車両100が備える4つの駆動輪9のうち、相対的に車両100の前方向にある一対の駆動輪9である。車両100の前方向とは、運転者の搭乗席の向き等に応じて形式的に定める所定の方向である。フロント駆動システムfdsにより、前輪9fは車両100の駆動力を発生する駆動輪9として機能する。
【0013】
リア駆動システムrdsはバッテリ1から電力の供給を受け、コントローラ2による制御の下で後輪9rを駆動する。リア駆動システムrdsはフロント駆動システムfdsと対称に、リアインバータ3r、リアモータ4r、リアギアボックス5r、リア回転センサ6r、リア駆動軸8r、後輪9rを備える。添字のrはリア側の構成であることを示す。後輪9rは車両100が備える4つの駆動輪9のうち、相対的に車両100の後方向にある一対の駆動輪9である。車両100の後方向とは、車両100の前方向に対して逆向きの方向をいう。リア駆動システムrdsにより、後輪9rは車両100の駆動力を発生する駆動輪9として機能する。
【0014】
バッテリ1はインバータ3を介してモータ4に接続し、放電することによってモータ4に駆動電力を供給する。また、バッテリ1はモータ4から回生電力の供給を受けることによって充電できる。フロント駆動システムfdsにおいて、バッテリ1はフロントインバータ3fを介してフロントモータ4fに接続する。同様に、リア駆動システムrdsにおいて、バッテリ1はリアインバータ3rを介してリアモータ4rに接続する。
【0015】
コントローラ2は車両100の制御装置であり、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成されるコンピュータである。コントローラ2は車両100の車両変数に基づいて、フロントモータ4f及びリアモータ4rを制御するための制御信号を生成する。車両変数とは、車両100の全体又は車両100を構成する各部の動作状態又は制御状態を示す情報であり、検出、計測、又は演算等により得ることができる。車両変数は例えば、アクセル開度APO、前後G及び横G、車速V、勾配値、操舵角、車輪速のほか、フロントモータ4fの回転数Nmf、リアモータ4rの回転数Nmr、三相交流電流等を含む。コントローラ2はこれらの車両100変数を用いて、フロントモータ4f及びリアモータ4rをそれぞれ制御する。
【0016】
フロントインバータ3fは、コントローラ2が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることで、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換し、フロントモータ4fに供給する電流を調節する。同様に、リアインバータ3rは、コントローラ2が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることで、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換し、リアモータ4rに供給する電流を調節する。また、フロントインバータ3fは回生制動力によってフロントモータ4fで発生する交流電流を直流電流に逆変換し、バッテリ1に供給する電流を調節する。同様に、リアインバータ3rは回生制動力によってリアモータ4rで発生する交流電流を直流電流に逆変換し、バッテリ1に供給する電流を調節する。
【0017】
フロントモータ4f及びリアモータ4rは例えば三相交流モータであり、接続するインバータ3から供給される交流電流により駆動力(トルクと回転数Nmとの積)を発生する。フロントモータ4fが発生した駆動力はフロントギアボックス5f及びフロント駆動軸8fを介して前輪9fに伝達する。同様に、リアモータ4rが発生した駆動力はリアギアボックス5r及びリア駆動軸8rを介して後輪9rに伝達する。フロントモータ4f及びリアモータ4rはそれぞれ前輪9f及び後輪9rに連れ回されて回転する場合に回生制動力を発生し、車両100の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0018】
ギアボックス5(フロントギアボックス5f、リアギアボックス5r)は、例えば複数の歯車から構成され、モータ4の回転数Nmを減じて駆動軸8に伝達する減速機(不図示)と、車両100の操舵時に左右の駆動輪9の回転数に差を発生させるデファレンシャルギア(不図示)を含む。
【0019】
フロント回転センサ6f及びリア回転センサ6rは、各々が接続するモータ4の回転子位相を検出し、コントローラ2に出力する。コントローラ2では、フロント回転センサ6fの出力に基づきフロントモータ4fの回転数Nmfが検出され、リア回転センサ6rの出力に基づきリアモータ4rの回転数Nmrが検出される。フロント電流センサ7f及びリア電流センサ7rは、各々が接続するモータ4に流れる電流を検出し、コントローラ2に出力する。本実施形態では、フロント電流センサ7fは、フロントモータ4fの三相交流電流を検出し、リア電流センサ7rは、リアモータ4rの三相交流電流を検出する。
【0020】
車両100は、上記したフロント回転センサ6f及びフロント電流センサ7f、リア回転センサ6r及びリア電流センサ7rの他に各種センサ15を備える。各種センサ15は、例えばアクセル開度センサ15a、バッテリ温度センサ15b、外気温度センサ15c、車速センサ15dを備える。
【0021】
アクセル開度センサ15aはアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APOを検出する。バッテリ温度センサ15bはバッテリ1の温度を検出する。外気温度センサ15cは外気温度を検出する。車速センサ15dは車両100の車速Vを検出する。加速度センサは、車両100の前後方向の加速度(及び左右方向の加速度)を検出する。
【0022】
その他の各種センサ15として、加速度センサ、ブレーキセンサ、勾配センサ、操舵角センサを備える。加速度センサは、車両100の前後方向の加速度(及び左右方向の加速度)を検出する。ブレーキセンサは、ブレーキペダルの操作の有無を検知する。勾配センサは車両100の走行路勾配である勾配値を検出する。操舵角センサは、ステアリングホイールの操舵角を検出する。
【0023】
コントローラ2は、ドライバが要求する要求駆動力(要求トルクと回転数Nmとの積)を車両100の車両100変数に基づいてフロントモータ4fとリアモータ4rに配分する。
【0024】
ナビゲーション装置20は、車両100の現在地(又は出発地)から目的地(又は経由地)までの走行経路の情報を包含する地図情報を生成してコントローラ2に出力する。車両100の現在地(出発地)を示す位置情報は例えばGPS(Global Postioning System)により取得し、ナビゲーション装置20が有する地図情報上の道路にマッチングさせることにより得られる。目的地の位置情報は、ドライバの入力操作により地図情報上の目的地を特定することにより得られる。ここで、目的地とは、例えばナビゲーションの最終地点であり、車両100が最終的に停止する位置、すなわちイグニッションをOFFにする位置である。走行経路の情報はナビゲーション装置20が、地図情報において現在地(出発地)と目的地を結ぶ経路を選択することにより得られる。地図情報(走行経路の情報)には、目的地までの距離の情報、走行経路を構成する道路の位置の情報等が含まれる。
【0025】
[制御装置の構成]
図2は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両100が走行中の冷媒及び空気の循環を示す図である。
図3は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両100が目的地に到着する直前の状態であって車両100の再起動時に暖房を行うことが予測される場合に、事前にバッテリ1を加熱する場合を示す。
図4は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両100の再起動時にバッテリ1を熱源として車室内44を暖房する場合を示す。
【0026】
本実施形態の電動車両の制御装置の制御対象となる車両100は、バッテリ1、チラー41、空調ユニット42、ヒータコア43、モータ4/インバータ3(パワートレイン)を有する。
【0027】
バッテリ1とチラー41の間には、冷媒(冷却水)を循環させてバッテリ1とチラー41との間で熱交換を行う第1冷媒循環経路51が配置され、チラー41と空調ユニット42の間には、冷媒(例えばHFC134a等の代替フロン)を循環させてチラー41と空調ユニット42との間で熱交換を行う第2冷媒循環経路52が配置されている。
【0028】
モータ3/インバータ3とヒータコア43との間には、冷媒(冷却水)を循環させてモータ3/インバータ3とヒータコア43との間で熱交換を行う第3冷媒循環経路53が配置され、モータ4/インバータ3とバッテリ1の間には、冷媒(冷却水)を循環させてモータ4/インバータ3とバッテリ1との間で熱交換を行う第4冷媒循環経路54が配置されている。各循環経路には、冷媒を循環させる循環ポンプ(不図示)が配置されている。
【0029】
空調ユニット42、ヒータコア43、及び車室内44の間には、車室内44の空気を加熱するための第1空気循環経路55が配置されている。
【0030】
チラー41は、第1冷媒循環経路51と第2冷媒循環経路52との間で熱交換を行うものである。
【0031】
ヒータコア43は、第4冷媒循環経路54と第1空気循環経路55との間で熱交換を行うものである。なお、図示は省略するが、モータ4/インバータ3、ヒータコア43は、ラジエータとの間で冷媒を流通させる循環経路にも連通している。
【0032】
空調ユニット42は、外気と第2冷媒循環経路52との間、外気と車室内44の空気との間、第2冷媒循環経路52と車室内44の空気との間で熱交換を行うものである。空調ユニット42は、冷媒ガスを圧縮して高温高圧の圧縮冷媒ガスを吐出するコンプレッサ(不図示)と、圧縮冷媒ガスと外気との間で熱交換を行って、圧縮冷媒ガスの熱を外気に放熱することで圧縮冷媒ガスを冷却・凝縮させて液体冷媒にするコンデンサ(不図示)と、高圧の液体冷媒を膨張させて低圧・低温の液体冷媒とする膨張弁(不図示)と、液体冷媒と車室内空気との熱交換を行って車室内空気の熱を吸収することで車室内空気を冷却し液体冷媒を蒸発させて冷媒ガスとするエバポレータ421を含む。また空調ユニット42は、第1空気循環経路55に空気を循環させるファン(不図示)を有する。
【0033】
図2に示すように、空調ユニット42は、第2冷媒循環経路52の冷媒を冷却する場合には、第2冷媒循環経路52をエバポレータ421に接続する。また、空調ユニット42は、走行中に車室内44を暖房する際には、第1空気循環経路55(55a、55b)により車室内44の空気を加熱する。
【0034】
ヒータ45は、例えばPTC(Positive Temperature Coefficinet )ヒータであり、バッテリ1を直接加熱する、又は第1冷媒循環経路51に供給される冷媒(冷却水)を加熱することでバッテリ1を加熱する。
【0035】
第3冷媒循環経路53は、車両100が起動(イグニッションがON)のときは冷媒を循環し、車両100が停止(イグニッションがOFF)となると冷媒の循環を停止する。
【0036】
第4冷媒循環経路54は、モータ4/インバータ3の排熱をバッテリ1に供給することでバッテリ1を加熱する。なお、第4冷媒循環経路54及びヒータ45は、バッテリ1に対する負荷(出力)がのみでは、バッテリ1の温度が後述の停止時バッテリ目標温度(TOFF)に到達できない場合に用いる。
【0037】
図2、
図3、
図4に示す第1冷媒循環経路51、第2冷媒循環経路52、第3冷媒循環経路53、第4冷媒循環経路54において実線の矢印で図示されたものは冷媒が循環している状態を示し、破線の矢印で図示されたものは冷媒の循環が停止している状態を示す。同様に、第1空気循環経路55の実線の矢印で図示されたものは空気が循環している部分を表し、破線の矢印で図示されたものは空気の循環が停止している部分を表す。
【0038】
コントローラ2には、バッテリ温度、外気温度、車速、地図情報が入力される。地図情報には、車両100の走行経路の情報、車両100の現在地の位置情報、車両100の目的地の位置情報等が含まれる。コントローラ2は、記憶装置21、バッテリ温調制御装置22、空調制御装置23を含む。
【0039】
なお、本実施形態では、例えば夕方帰宅するため車両100を目的地(自宅)まで走行して停止(イグニッションをOFF)し、翌朝、車両100を起動(イグニッションをON)して走行を開始する際に車室内44を暖房する場合を想定している。
【0040】
記憶装置21は、例えばドライバが、毎日同じ経路を走行する場合において、ドライバが車両100を停止する時刻の情報、次の日に車両100を起動する時刻の情報、ドライバが暖房を要求する閾値温度(後述の第2閾値温度(TTH2))の情報を記憶している。また、記憶装置21は、バッテリ1に蓄熱するか否かの判断結果となる蓄熱フラグ(ON、OFF)を生成してバッテリ温調制御装置22及び空調制御装置23に出力する。
【0041】
記憶装置21は、車両100が起動(イグニッションがON)する際に蓄熱フラグ(OFF)を生成する。記憶装置21は位置情報と車速に基づいて、車両100が目的地に到着する時刻を算出する。そして、記憶装置21は、外気温度が後述の第2閾値温度(TTH2)よりも低い場合であって到着時刻から所定時間(tTH)前に蓄熱フラグ(ON)を生成する。
【0042】
ここで、外気温度は、車両100が走行中の外気温度でもよく、車両100が停止後(イグニッションがOFF)、次に車両100が起動(イグニッションがON)するときの外気温度(天気予報から得られる情報)としてもよい。
【0043】
また所定時間(tTH)は、車両100の停止(イグニッションがOFF)時のバッテリ温度が、その後車両100が起動(イグニッションがON)したときにバッテリ1を熱源としてドライバが所望する暖房が可能となる温度にまで上昇させるのに必要な時間である。所定時間は、固定値としてもよく、また走行中のバッテリ1の負荷と車両100が目的地に到着するまでの当該負荷の継続時間(所定時間(tTH))との積が所定値(後述の停止時バッテリ目標温度(TOFF)に相当する物理量)となる条件のもと、負荷の大きさに基づいて当該所定時間(tTH)を算出してもよい。
【0044】
なお、記憶装置21は、車両100が停止(イグニッションがOFF)しても最後に生成した蓄熱フラグ(ON、OFF)を記憶する。また、記憶装置21は、前記の外気温度及び所定時間(tTH)に関わらず、ドライバがバッテリ1による暖房を要求するため、バッテリ強制蓄熱スイッチ(不図示)をONにすると、蓄熱フラグ(ON)を生成する。
【0045】
バッテリ温調制御装置22は、車両100の走行中において、バッテリ温度が所定の冷却開始温度(例えば42℃)に到達すると第1冷媒循環経路51及び第2冷媒循環経路52の冷媒を循環させることでバッテリ1を冷却し、その後バッテリ温度が所定の冷却停止温度(例えば35℃)に到達すると第1冷媒循環経路51及び第2冷媒循環経路52の冷媒の循環を停止させることでバッテリ1の冷却を停止する冷却制御を実行する。
【0046】
バッテリ温調制御装置22は、蓄熱フラグがOFFのとき、冷却開始温度及び冷却停止温度はそれぞれ初期値に設定する。
【0047】
バッテリ温調制御装置22は、蓄熱フラグがOFFからONに切り替わると冷却開始温度及び冷却停止温度、又は冷却停止温度を更新する(後述)。また、このときバッテリ温調制御装置22は、
図3に示すように、ヒータ45をON状態にする、又は第4冷媒循環経路54の冷媒を循環させることでバッテリ1を加熱制御する。
【0048】
バッテリ温調制御装置22は、車両100が停止(イグニッションがOFF)すると、ヒータ45を停止し、又は第4冷媒循環経路54の冷媒の循環を停止するが、最後に入力された蓄熱フラグ(ON、OFF)を記憶する。
【0049】
バッテリ温調制御装置22は、蓄熱フラグ(ON)を記憶した状態で蓄熱フラグ(OFF)が入力されると、
図4に示すように、第1冷媒循環経路51及び第2冷媒循環経路52の冷媒を循環させる。このとき、空調ユニット42は、後述のように、第2冷媒循環経路52と第1空気循環経路55との熱交換が可能な接続状態となっている。
【0050】
空調制御装置23は、空調ユニット42を制御するものである。車両100の走行中において、空調制御装置23は、第1空気循環経路55(55a、55b)により車室内44を暖房するように空調ユニット42の接続状態を設定する。
【0051】
空調制御装置23は、蓄熱フラグ(ON、OFF)が入力されるとこれを記憶する。
【0052】
空調制御装置23は、車両100が停止(イグニッションがOFF)しても最後に入力された蓄熱フラグ(ON、OFF)を記憶する。
【0053】
空調制御装置23は、蓄熱フラグ(ON)を記憶した状態で蓄熱フラグ(OFF)が入力されると、
図4に示すように、第2冷媒循環経路52が第1空気循環経路55(55a、55c)と熱交換できるように空調ユニット42の接続状態を切り替える。
【0054】
その後、バッテリ温調制御装置22は、第3冷媒循環経路53(ヒータコア43)の温度が所定温度に到達すると、第1冷媒循環経路51及び第2冷媒循環経路52の冷媒の循環を停止する。また、空調制御装置23は、第3冷媒循環経路53(ヒータコア43)の温度が当該所定温度に到達すると、空調ユニット42の空気の連通状態を第1空気循環経路55(55a、55c)から第1空気循環経路55(55a、55b)に切り替え、ヒータコア43を熱源として車室内44の空気を加熱する。
【0055】
[制御フロー]
図5は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の制御フロー図である。
【0056】
ステップS01において、コントローラ2(記憶装置21)は、ドライバがバッテリ強制蓄熱スイッチをONにしたか否かを判断し、YESであればステップS10に移行し、NOであればステップS02に移行する。
【0057】
ステップS02において、コントローラ2(記憶装置21)は、車両100の現在地の位置情報及び目的地の位置情報を取得する。
【0058】
ステップS03において、コントローラ2(記憶装置21)は、現在時刻の情報及び車速の情報を取得する。
【0059】
ステップS04において、コントローラ2(記憶装置21)は、目的地への到着時刻を予測する。
【0060】
ステップS05において、コントローラ2(記憶装置21)は、車両100が目的地に到着するまでの時間が所定時間(tTH)以内となったか否かを判断し、YESであればステップS06に移行し、NOであればステップS05に留まる。
【0061】
ステップS06において、コントローラ2(記憶装置21)は、バッテリ1の現在温度を取得する。
【0062】
ステップS07において、コントローラ2(記憶装置21)は、バッテリ1の現在温度が所定の第1閾値温度(TTH1)以下であるか否かを判断し、YESであればステップS08に移行し、NOであればENDに移行する。ここで、第1閾値温度(TTH1)はバッテリ1の耐熱上限温度よりも低く、且つ冷却開始温度(TCH)よりも高い温度であり、後述のステップS10の制御を禁止するための温度である。車両100の走行中のバッテリ1の温度は、冷却開始温度(TCH)と当該冷却開始温度(TCH)よりも低い冷却停止温度(TCL)の範囲(適正温度範囲)となるように制御されるが、何等かの原因でバッテリ1の温度が当該適正温度範囲を超えた場合は、バッテリ1に蓄熱するための制御が不要となるので後述のステップS10の制御を禁止する。
【0063】
ステップS08において、コントローラ2(記憶装置21)は、外気温度を取得する。ここで外気温度は、前記のように外気の現在温度でもよく、また後の再起動時に予測される外気温度でもよい。
【0064】
ステップS09において、コントローラ2(記憶装置21)は、外気温度が第2閾値温度(TTH2)以下か否かを判断し、YESであればステップS10に移行し、NOであればENDに移行する。
【0065】
ここで、第2閾値温度(TTH2)は、ドライバが暖房を必要と判断する上限温度であり、車両100の走行中にドライバが暖房を実行した際の外気温度の情報であって、記憶装置21に記憶されたものが適用される。また第2閾値温度(TTH2)はドライバが任意に設定することもできる。
【0066】
ステップS10において、コントローラ2(バッテリ温調制御装置22)は、冷却開始温度(TCH)及び冷却停止温度(TCL)をそれぞれ初期値から更新する、又は冷却停止温度(TCL)を初期値から更新する。
【0067】
なお、バッテリ温調制御装置22は、記憶装置21から蓄熱フラグ(OFF)が入力されると冷却開始温度(TCH)を及び冷媒停止温度(TCL)をそれぞれ初期値に戻す。
【0068】
また、ステップS07を省略してもよい。この場合、コントローラ2は、バッテリ1の温度が第1閾値温度(TTH1)に到達するとバッテリ1の出力を制限することで、バッテリ1の温度を低下させる。
【0069】
[冷媒開始温度、冷媒停止温度]
図6は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)において、停車時バッテリ目標温度、更新用の冷却開始温度、更新用の冷却停止温度を算出するロジックを説明するための図である。
【0070】
図6に示すように、バッテリ温調制御装置22は、到着時刻算出部221、保管時間算出部222、要求熱量算出部223、起動時バッテリ目標温度算出部224、多次元マップ225、上限温度マップ226、選択部227、演算部228を含む。
【0071】
到着時刻算出部221には、現在時刻の情報、現在地の位置情報、目的地の位置情報、走行経路の情報、車速の情報が入力される。
【0072】
到着時刻算出部221は、走行経路に沿った現在地と目的地との距離を算出し、当該距離を車速で除算することで目的地に到達するまでの走行時間を算出し、現在時刻に走行時間を加算することで到着時刻の情報を算出する。
【0073】
保管時間算出部222は、記憶装置21が記憶している過去の車両100の起動時刻と前記到着時刻との差分、又はドライバの入力操作により予約設定された起動時刻と前記到着時刻との差分に基づいて保管時間(車両100のイグニッションがOFFとなっている時間)を算出する。
【0074】
要求熱量算出部223は、設定された暖房の温度(第2閾値温度(T
TH2))と外気温度との差分と空気の比熱に基づいて車室内44(
図2等)を暖房するのに必要な要求熱量を算出する。
【0075】
起動時バッテリ目標温度算出部224は、要求熱量をバッテリ1の比熱で除算した値と、外気温度に基づいて、車両100の起動(イグニッションがON)時に要求される起動時バッテリ目標温度(TON)を算出する。
【0076】
多次元マップ225は、保管時間、起動時バッテリ目標温度(TON)、外気温度に基づいて車両100が目的地に到着して停止(イグニッションがOFF)するときに要求されたバッテリ1の温度に対応する暫定目標温度(TOFF1)を算出する。
【0077】
例えば、外気温度が-10℃で車両100が停止(イグニッションがOFF)してから10時間後に車両100を再起動(イグニッションがON)して暖房する場合と、外気温度が5℃で車両100が停止してから8時間後に車両100を再起動して暖房する場合ではバッテリ1に求められる暫定目標温度(TOFF1)(停止時バッテリ目標温度(TOFF))は異なる。
【0078】
そこで、多次元マップ225は、保管時間と起動時バッテリ目標温度を座標軸する座標空間において、暫定目標温度(TOFF1)を定めるためのマップ(等高線)を有している。座標空間において、保管時間と起動時バッテリ目標温度が表す座標点が変化しても同一の等高線に当該座標点が重なる場合は、同一の暫定目標温度(TOFF1)となる。マップは、保管時間が長くなるほど、又は起動時バッテリ目標温度が高くなるほど暫定目標温度(TOFF1)が高くなるように設定されている。
【0079】
さらに多次元マップ225は、互いに温度が異なる複数の外気温度に対応して複数のマップを有している。多次元マップ225では、座標点に変化はなくても外気温度が低下するほど暫定目標温度(TOFF1)が高くなるように設定されている。
【0080】
上限温度マップ226は、例えばアクセル開度(APO)に基づいてバッテリ1の上限温度(Tmax)を算出する。ここで、バッテリ1は所定の設定温度(耐熱上限温度よりも低い温度)を超えるとその出力が制限されるが、設定温度から高くなるほどバッテリ1の最大出力が低くなるように制限される。よって、車両100が所定のアクセル開度(APO)(要求出力)で走行している場合に、当該アクセル開度に係る出力が制限を受けないようにするための上限温度(Tmax)を算出する。なお、走行中のバッテリ1の出力の制限を許容する場合、上限温度(Tmax)をバッテリ1の耐熱上限温度に設定してもよい。
【0081】
選択部227は、暫定目標温度(TOFF1)及び上限温度(Tmax)のうち値の低い方を停止時バッテリ目標温度(TOFF)として選択する。
【0082】
演算部228は、停止時バッテリ目標温度(TOFF)に基づいて更新用の冷却開始温度及び冷却停止温度を算出する。
【0083】
このとき、停止時バッテリ目標温度(TOFF)が冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0、例えば42℃)よりも高い場合(例えば50℃)、演算部228は、冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)を、停止時バッテリ目標温度(TOFF)よりも高くなる(例えば55℃)ように設定する。また、演算部228は、冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)を、その初期値(TCL0、例えば35℃)よりも高い温度であって停止時バッテリ目標温度(TOFF)よりも低い値(例えば45℃)に設定する。より望ましくは、演算部228は、冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)を冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)よりも高い温度であって停止時バッテリ目標温度(TOFF)よりも低い値に設定する。
【0084】
また、起動時の暖房を効率的に行うため、冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)を停止時バッテリ目標温度(TOFF)と同じ値、又は略同一の値に設定してもよい。
【0085】
なお、バッテリ1の温度が更新後の冷却開始温度(TCH1)に到達したときに、例えば第1冷媒循環経路51及び第2冷媒循環経路52の冷媒の流量を適宜制御することで、バッテリ温度を略一定に維持可能である場合、当該更新値(TCH1)を停止時バッテリ目標温度(TOFF)と同じ値に設定し、冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)をその初期値(TCL0)と同じ値に設定(すなわち、更新しない)し、車両100が停止するまで、バッテリ温度を冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)と略一定となるように制御してもよい。
【0086】
また、停止時バッテリ目標温度(TOFF)が冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)よりも低く、且つ冷却停止温度(TCL)の初期値(TCL0)よりも高い場合、演算部228は、冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)を初期値(TCH0)と同じに設定する、すなわち、冷却開始温度(TCH)を更新しない。また、演算部228は、冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)を、停止時バッテリ目標温度(TOFF)と同一の値、又は略同一の値に設定する。
【0087】
さらに、停止時バッテリ目標温度(TOFF)が冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)及び冷却停止温度(TCL)の初期値(TCL0)のいずれよりも低い場合、演算部228は冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)を初期値(TCH0)と同じに設定し、冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)を初期値(TCL0)と同じに設定する。すなわち、演算部228は、冷却開始温度(TCH)及び冷却停止温度(TCL)を更新しない。
【0088】
[タイムチャート]
図7は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の第1のタイムチャートであって、停車時バッテリ目標温度(T
OFF)が冷却開始温度(初期値(T
CH0))よりも高い場合を示す。
【0089】
初期状態(以後のタイムチャートも同様)において、車両100のイグニッションはOFFであり、バッテリ温度は、第1閾値温度(TTH1)よりも低い値であって冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)と冷却停止温度(TCL)の初期値(TCL0)の間に位置し、外気温度は第2閾値温度(TTH2)よりも低く、蓄熱フラグはOFFであるとする。また外気温度は時間経過とともに徐々に低下するものとする。
【0090】
時刻t0においてイグニッション(IGN)をONにし車両100が走行を開始する。これによりバッテリ温度が上昇するが、バッテリ温度が冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)に到達するとバッテリ温調制御装置22は、バッテリ1の冷却を開始し、その後バッテリ温度が冷却停止温度(TCL)の初期値(TCL0)に到達するとバッテリ1の冷却を停止する冷却制御を繰り返す。
【0091】
時刻t1において、バッテリ温度が第1閾値温度(TTH1)よりも低く、外気温度が第2閾値温度(TTH2)よりも低く、且つ目的地までの時間が所定時間(tTH)となったところで記憶装置21が蓄電フラグ(ON)を生成する。
【0092】
バッテリ温調制御装置22は、蓄電フラグ(ON)が入力されると、起動時バッテリ温度(TON)及び停止時バッテリ温度(TOFF)を算出する。そして、バッテリ温調制御装置22は、停止時バッテリ温度(TOFF)が冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)よりも高い値であると判断し、これにより冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)と冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)を算出する。
【0093】
そして、時刻t2からイグニッションがOFFになる時刻t3の間で、バッテリ温度が冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)となるとバッテリ1の冷却を開始しその後バッテリ1の温度が冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)になるとバッテリ1の冷却を停止する冷却制御が1回、又は2回以上繰り返される。
【0094】
時刻t3において車両100の目的地に到着までの時間がゼロになり、車両100が停止してイグニッションがOFFになるが蓄熱フラグ(ON)は維持される。また、このときバッテリ温度は、冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)と冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)の間のいずれかの温度となる。そして、時刻t3から時刻t4にかけて自然放熱によりバッテリ1の温度が低下する。
【0095】
時刻t4において、イグニッションがONになると蓄熱フラグはOFFとなる。一方、バッテリ温度は予め算出した起動時バッテリ目標温度(TON)若しくはこれに近接した温度となっており、バッテリ1を熱源とした暖房を十分に行うことができる。
【0096】
一方、時刻t1以降において冷却開始温度(TCH)及び冷却停止温度(TCL)の更新が実行されない場合、バッテリ温度は時刻t3まで、冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)と冷却停止温度(TCL)の初期値(TCL0)の間で振動する。そして、時刻t3においてイグニッションがOFFとなり、バッテリ温度は冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)と冷却停止温度(TCL)の初期値(TCL0)の間のいずれかの温度であるが、時刻t3から時刻t4にかけて自然放熱によりバッテリ温度が低下する。よって、時刻t4においてバッテリ温度が起動時バッテリ目標温度(TON)よりも低い温度となり、バッテリ1を熱源とした暖房が困難になることがわかる。
【0097】
図8は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の第2のタイムチャートであって、停車時バッテリ目標温度(T
OFF)が冷却開始温度(初期値(T
CH0))と冷却停止温度(初期値(T
CL0))の間に位置する場合を示す。時刻t0の状態は
図7に示す状態と同様である。
【0098】
時刻t1において、バッテリ温度は第1閾値温度(TTH1)よりも低く、外気温度が第2閾値温度(TTH2)よりも低く、且つ目的地までの時間が所定時間(tTH)となったところで記憶装置21が蓄電フラグ(ON)を生成する。これにより、バッテリ温調制御装置22は、起動時バッテリ温度(TON)及び停止時バッテリ温度(TOFF)を算出する。そして、バッテリ温調制御装置22は、停止時バッテリ温度(TOFF)が冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)より低く、且つ冷却停止温度(TCL)の初期値(TCL0)よりも高い値であると判断し、これにより冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)を算出し、冷却開始温度(TCH)を維持する。
【0099】
そして、時刻t1からイグニッションがOFFになる時刻t2の間で、バッテリ温度が冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)となるとバッテリ1の冷却を開始しその後バッテリ1の温度が冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)になるとバッテリ1の冷却を停止する冷却制御が1回、又は2回以上繰り返される。
【0100】
時刻t2において車両100の目的地に到着までの時間がゼロになり、車両100が停止してイグニッションがOFFになるが蓄熱フラグ(ON)は維持される。また、このときバッテリ温度は、冷却開始温度(TCH)の初期値(TCH0)と冷却停止温度(TCL)の更新値(TCL1)の間のいずれかの温度となる。そして、時刻t2から時刻t3にかけて自然放熱によりバッテリ1の温度が低下する。
【0101】
時刻t3において、イグニッションがONになると蓄熱フラグはOFFとなる。一方、バッテリ温度は予め算出した起動時バッテリ目標温度(TON)若しくはこれに近接した温度となっており、バッテリ1を熱源とした暖房を十分に行うことができる。
【0102】
一方、時刻t1以降においても冷却停止温度(T
CL)の更新が実行されない場合、バッテリ温度は時刻t2まで、冷却開始温度(T
CH)の初期値(T
CH0)と冷却停止温度(T
CL)の初期値(T
CL0)の間で振動する。この場合も、
図7に示す場合と同様に、時刻t3においてバッテリ温度が起動時バッテリ目標温度(T
ON)よりも低い温度となり、バッテリ1を熱源とした暖房が困難になることがわかる。
【0103】
[変形例]
図9は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両100の再起動時にバッテリ1を熱源として車室内44を暖房する場合(
図4)の第1変形例を示す。
【0104】
第1変形例では、バッテリ1を熱源として車室内44を暖房するための第2空気循環経路56が配置されている。第2空気循環経路56は、車室内44、バッテリ1、空調ユニット42に空気を循環させるものであり、バッテリ1で加熱された空気を、空調ユニット42を介して車室内44に供給している。
【0105】
図10は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)のブロック図であって、車両100の再起動時にバッテリ1を熱源として車室内44を暖房する場合(
図4)の第2変形例を示す。
【0106】
第2変形例では、バッテリ1を熱源として車室内44を暖房するための第5冷媒循環経路57が配置されている。第5冷媒循環経路57は、バッテリ1とヒータコア43との間を冷媒(冷却水)が循環するように配置されている。ヒータコア43では、第5冷媒循環経路57と第1空気循環経路55との間で熱交換が可能となっている。よってバッテリ1からの熱が第5冷媒循環経路57、ヒータコア43、第1空気循環経路55を介して車室内44に伝達され車室内44を暖房可能となる。
【0107】
図11は、本実施形態の電動車両の制御装置(制御方法)の第1のタイムチャートの変形例である。第1のタイムチャートの変形例では、第1冷媒循環経路51及び第2冷媒循環経路52の冷媒の流量を適宜制御してバッテリ1の温度を略一定に保つことができる場合のタイムチャートとなっている。
【0108】
時刻t1において、冷却開始温度(TCH)の更新値(TCH1)を停止時バッテリ目標温度(TOFF)と同じ値に設定し、冷却停止温度(TCL)を更新せず初期値(TCL0)のままとする。
【0109】
時刻t2において、バッテリ温度が冷却開始温度(T
CH)の更新値(T
CH1)に到達すると、第1冷媒循環経路51及び第2冷媒循環経路52の冷媒の流量を適宜制御して、バッテリ温度を時刻t3となるまで略一定に保っている。時刻t3及び時刻t4のバッテリ温度の推移は
図7に示す場合と同様である。
【0110】
[本実施形態の効果]
本実施形態の電動車両の制御方法によれば、バッテリ1が車両100を駆動する駆動系(モータ4、インバータ3)に電力供給することで車両100を駆動させ、車両100が走行中のバッテリ1の温度が所定の適正温度範囲となるようにバッテリ1を冷却する冷却制御を実行する電動車両の制御方法であって、バッテリ1の蓄熱を利用して車室内44の暖房を行うとともに、暖房が実行されると予測された場合に、適正温度範囲の下限値(冷却終了温度(TCL))を下限値(冷却終了温度(TCL))の初期値(TCl0)よりも高くなるように更新する、下限値(冷却終了温度(TCL))を初期値(TCL0)よりも高くなるように更新するとともに駆動系(モータ4、インバータ3)からの排熱を受けた冷媒をバッテリ1に循環してバッテリ1を加熱制御する、下限値(冷却終了温度(TCL))を初期値(TCL0)よりも高くなるように更新するとともにヒータ45によりバッテリ1を加熱制御する、のいずれかを実行する。
【0111】
上記方法により、暖房を実行する前にバッテリ1を加熱して蓄熱させるので、バッテリ1を熱源とする暖房を効率的に行うことができる。
【0112】
本実施形態において、車両100が目的地に到着して停止(イグニッションがOFF)し、その後車両100が再起動(イグニッションがON)したときに暖房が実行されると予測された場合に、車両100が目的地に到着する時刻から所定時間(tTH)だけ前の設定時刻(時刻t1)以降において下限値(冷却終了温度(TCL))を初期値(TCL0)よりも高くなるように更新する、又は下限値(冷却終了温度(TCL))を初期値(TCL0)よりも高くなるように更新し加熱制御を実行する。
【0113】
上記方法により、例えばドライバが通勤で車両100を使用する場合では、退勤の途中でバッテリ1に熱を蓄え、翌朝の出勤時に蓄えた熱を利用して効率的に暖房を行うことができる。
【0114】
本実施形態において、車両100が停止(イグニッションがOFF)した後再起動(イグニッションがON)したときの外気温度が所定の閾値温度(第2閾値温度(TTH2))よりも低いときに再起動(イグニッションがON)時に暖房が実行されると予測された場合に、暖房を実行するのに必要なバッテリ1の温度となる起動時目標温度(起動時バッテリ目標温度(TON))を算出し、車両100が停止(イグニッションがOFF)してから再起動(イグニッションがON)するまでの保管時間と、起動時目標温度(起動時バッテリ目標温度(TON))と、外気温度に基づいて車両100の停止(イグニッションがOFF)時に要求されるバッテリ1の温度となる停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))を算出し、停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))が適正温度範囲よりも高い値となる場合に設定時刻(時刻t1)以降において適正温度範囲が停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))を含むように適正温度範囲の上限値(冷却開始温度(TCH))を更新する。
【0115】
上記方法により、適正温度範囲を変化させることで再起動時のバッテリ1を熱源とする暖房が可能となるので、簡易な方法でバッテリ1を熱源とする暖房を効率的に行うことができる。
【0116】
本実施形態において、車両100が停止(イグニッションがOFF)した後再起動(イグニッションがON)したときの外気温度が所定の閾値温度(第2閾値温度(TTH2))よりも低い場合に再起動(イグニッションがON)時に暖房が実行されると予測された場合に、暖房を実行するのに必要なバッテリ1の温度となる起動時目標温度(起動時バッテリ目標温度(TON))を算出し、車両100が停止(イグニッションがOFF)してから再起動(イグニッションがON)するまでの保管時間と、起動時目標温度(起動時バッテリ目標温度)と、外気温度に基づいて車両100の停止(イグニッションがOFF)時に要求されるバッテリ1の温度となる停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))を算出し、冷却制御は、バッテリ1の温度が適正温度範囲の上限値(冷却開始温度(TCH))に到達するとバッテリ1の冷却を開始し、その後バッテリ1の温度が下限値(TCL)に到達するとバッテリ1の冷却を停止する制御であり、停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))が上限値(冷却開始温度(TCH))よりも高い場合に設定時刻(時刻t1)以降において上限値(冷却開始温度(TCH))を停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))以上の温度となるように更新し、停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))が上限値(冷却開始温度(TCH))よりも低く且つ下限値(冷却停止温度(TCL))よりも高い場合に設定時刻(時刻t1)以降において下限値(冷却停止温度(TCL))を停止時目標温度(停止時バッテリ目標温度(TOFF))と略同一の温度となるように更新する。
【0117】
上記方法により、適正温度範囲を変化させることで再起動時のバッテリ1を熱源とする暖房が可能となるので、簡易な方法でバッテリ1を熱源とする暖房を効率的に行うことができる。また、バッテリ1の蓄熱時の冷却開始温度(TCH)と冷却停止温度(TCL)の温度幅を狭くすることができるので、バッテリ1の温度を必要以上に上げる必要はなく、これによりバッテリ1の熱による劣化を低減できる。さらに、バッテリ1の蓄熱時の冷却開始温度(TCH)と冷却停止温度(TCL)の温度幅を狭くすることができるので、起動時バッテリ目標温度(TON)の結果となる起動時のバッテリ1の温度のばらつきを低減し、これにより暖房効率のばらつきを低減できる。
【0118】
本実施形態において、車両100が停止するまでバッテリ1の温度が所定の監視温度(第1閾値温度(TTH1))を超えた状態である場合に適正温度範囲の更新を行わない。
【0119】
これにより、バッテリ1に蓄熱するための制御を省略することができる。
【0120】
本実施形態において、車両100の走行中のバッテリ1の要求出力(アクセル開度(APO))に基づいて、バッテリ1が要求出力(アクセル開度(APO))を出力可能な最大温度(Tmax)を算出し、設定時刻(時刻t1)以降に設定される上限値(冷却開始温度(TCH))を、最大温度(Tmax)を超えないように設定する。
【0121】
上記方法により、走行中にバッテリ1の出力が制限され車速が低下する状態を低減できる。
【0122】
本実施形態において、設定時刻(時刻t1)以降に設定される上限値(冷却開始温度(TCH))をバッテリ1の耐熱上限温度を超えないように設定する。
【0123】
上記方法により、バッテリ1の熱による劣化を抑制できる。
【0124】
本実施形態において、暖房が実行されているときの外気温度を表す過去情報を記憶し、過去情報に基づいて閾値温度(第2閾値温度(TTH2))を設定する。
【0125】
上記方法により、ドライバの生活習慣に合わせて暖房の設定が可能となる。
【0126】
本地実施形態において、閾値温度(第2閾値温度(TTH2))、設定時刻(時刻t1)、保管時間、起動時目標温度(起動時バッテリ目標温度(TON))を車両100のドライバの入力操作により更新する。
【0127】
上記方法により、ドライバのニーズに合わせて暖房の設定が可能となる。
【0128】
本実施形態において、車両100の停止前におけるバッテリ1の加熱の必要性を判断する蓄熱フラグがON状態となると車両100の停止前のバッテリ1の加熱を実行し、車両100が停止するまで蓄熱フラグがOFF状態を維持する場合に車両100の停止前のバッテリ1の加熱を実行しない場合において、蓄熱フラグをON状態にするための第1判断項目、蓄熱フラグをOFF状態にするための第2判断項目を追加又は削除する更新を可能とする。
【0129】
第1判断項目としては、例えばバッテリ1の累積使用時間(所定累積使用時間以内)、モータ4及びインバータ3の累積使用時間(所定累積使用時間以内)、曜日(例えば日曜から木曜のいずれかを指すカレンダー機能)等が挙げられる。また第2判断項目としては、例えばバッテリ1の累積使用時間(所定累積使用時間よりも長い時間)、モータ4及びインバータ3の累積使用時間(所定累積使用時間よりも長い)、曜日(例えば金曜と土曜のいずれかを表すカレンダー機能)等が挙げられる。例えばカレンダー機能を判断項目として追加すると、例えば土曜の朝と日曜の朝は暖房を実行しないので、金曜の夜と土曜の夜は車両100の停止前のバッテリ1の加熱を停止することができる。その他、車両100の外部のパラメータ(時間帯、温度、湿度、道路の渋滞状況等)を用いてバッテリ1の蓄熱の必要性を判断する判断項目を更新できる。これらの判断項目の更新は、有線又は無線により、コントローラ2のプログラムを書き換えることにより実現できる。これにより、既存の判断項目ではドライバのニーズに合わせた判断ができない場合は、判断項目の追加や削除ができ、制御装置のアップデートが可能となる。
【0130】
本実施形態の電動車両の制御装置によれば、バッテリ1と、バッテリ1から電力供給を受けて車両100を駆動させる駆動系(モータ4、インバータ3)と、バッテリ1を冷却する冷却手段(チラー41、空調ユニット42、第1冷媒循環経路51、第2冷媒循環経路52、バッテリ温調制御装置22)と、車両100が走行中のバッテリ1の温度が所定の適正温度範囲となるように冷却手段を制御する制御部(コントローラ2、バッテリ温調制御装置22)と、を含む電動車両の制御装置であって、バッテリ1の蓄熱を利用して車室内44の暖房を行う暖房装置(空調ユニット42、ヒータコア43)と、駆動系(モータ4、インバータ3)からの排熱を受けた冷媒をバッテリ1に循環する冷媒循環装置(第4冷媒循環経路54)と、バッテリ1を加熱するヒータ45と、をさらに含み、制御部(コントローラ2、バッテリ温調制御装置22)は、冷媒循環装置(第4冷媒循環経路54)、及びヒータ45を制御可能とされ、暖房装置(空調ユニット42、ヒータコア43)が起動されると予測された場合に、適正温度範囲の下限値(冷却停止温度(TCL))を下限値(冷却停止温度(TCL))の初期値(TCL0)よりも高くなるように更新する、下限値(冷却停止温度(TCL))を初期値(TCL0)よりも高くなるように更新するとともに冷媒循環装置(第4冷媒循環経路54)を起動し、下限値(冷却停止温度(TCL))を初期値(TCL0)よりも高くなるように更新するとともにヒータ45を起動する、のいずれかを実行する。
【0131】
上記構成により、暖房を実行する前にバッテリ1を加熱して蓄熱させるので、バッテリ1を熱源とする暖房を効率的に行うことができる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 バッテリ、2 コントローラ、22 バッテリ温調制御装置、3 インバータ、4 モータ、41 チラー、42 空調ユニット、43 ヒータコア、44 車室内、45 ヒータ、51 第1冷媒循環経路、52 第2冷媒循環冷媒経路、54 第4冷媒循環経路