(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076164
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備及びガスタービンの制御方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/46 20060101AFI20240529BHJP
F02C 9/28 20060101ALI20240529BHJP
F01D 21/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F02C9/46
F02C9/28 Z
F01D21/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187586
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白岩 崇
(72)【発明者】
【氏名】松本 照弘
(72)【発明者】
【氏名】藤村 大輝
(72)【発明者】
【氏名】古田 喜則
(72)【発明者】
【氏名】宮内 宏太郎
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071AB01
3G071BA22
3G071FA02
3G071GA06
(57)【要約】
【課題】ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することが可能なガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備及びガスタービンの制御方法を提供する。
【解決手段】ガスタービン用の制御装置は、前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部を備え、前記燃料指令値算出部は、前記ガスタービンの回転数の時間変化量に基づいて前記ガスタービンの回転数の急減を検知するように構成された回転数急減検知部と、前記回転数急減検知部により前記ガスタービンの回転数の急減が検知されたとき、前記回転数の低下に対応するように前記燃料指令値を制限するように構成された燃料指令値制限部と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンを制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部を備え、
前記燃料指令値算出部は、
前記ガスタービンの回転数の時間変化量に基づいて前記ガスタービンの回転数の急減を検知するように構成された回転数急減検知部と、
前記回転数急減検知部により前記ガスタービンの回転数の急減が検知されたとき、前記回転数の低下に対応するように前記燃料指令値を制限するように構成された燃料指令値制限部と、
を含む
ガスタービン用の制御装置。
【請求項2】
前記ガスタービンの所定部位における燃焼ガスの温度が、前記所定部位における前記燃焼ガスの上限基準温度に対応するように決定されるとともに該上限基準温度よりも低い規定温度より高いか否かを判定するように構成された温度条件判定部を備え、
前記燃料指令値制限部は、前記温度条件判定部により前記燃焼ガスの温度が前記規定温度よりも高いと判定され、かつ、前記回転数急減検知部により前記回転数の急減が検知されたとき、前記燃料指令値を制限するように構成された
請求項1に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項3】
前記燃料指令値算出部は、前記ガスタービンの出力値と目標出力値との偏差に基づいて前記燃料指令値を算出するように構成され、
前記燃料指令値制限部は、前記偏差に基づき算出された前記燃料指令値を制限するように構成された
請求項1又は2に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項4】
前記ガスタービンの回転数に基づき前記目標出力値の上限値を算出するように構成された目標出力上限値算出部と、
前記ガスタービンの設定負荷値、及び、前記目標出力値の前記上限値に基づいて前記目標出力値を算出するように構成された目標出力値算出部と、
を備える
請求項3に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項5】
前記目標出力上限値算出部は、前記設定負荷値に、前記ガスタービンの回転数に応じたバイアス値を乗算することで、前記目標出力値の前記上限値を算出するように構成された
請求項4に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項6】
前記目標出力値算出部は、前記目標出力値が減少する場合には、前記目標出力値が増加する場合に比べて大きな変化率で前記目標出力値を変化させるように構成された
請求項5に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項7】
前記燃料指令値制限部は、前記ガスタービンの回転数が急減したときにおける前記燃料指令値の上限値を算出するように構成された燃料指令上限値算出部を含み、
前記燃料指令上限値算出部は、
前記ガスタービンの回転数と、前記ガスタービンの設定負荷値に対する負荷の割合を示す負荷係数との相関関係に基づいて、前記ガスタービンの現在の回転数に対応する前記負荷係数を取得し、
前記設定負荷値に対応する燃料指令値及び前記負荷係数に基づいて、前記燃料指令値の前記上限値を算出する
ように構成された
請求項1又は2に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項8】
ガスタービンと、
前記ガスタービンを制御するように構成された請求項1又は2に記載の制御装置と、
を備えるガスタービン設備。
【請求項9】
ガスタービンの制御方法であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するステップを備え、
前記燃料指令値を算出するステップは、
前記ガスタービンの回転数の時間変化量に基づいて前記ガスタービンの回転数の急減を検知するステップと、
前記ガスタービンの回転数の急減が検知されたとき、前記回転数の低下に対応するように前記燃料指令値を制限するステップと、
を含む
ガスタービンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備及びガスタービンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの所定負荷(例えば定格負荷)での運転中に、例えばガスタービンに接続される発電機が連系する電力系統の系統周波数の急激な低下等により、ガスタービンの回転数が急減することがある。ガスタービンの回転数が急減すると、ガスタービンの圧縮機の吸気量が低下するため、ガスタービン出力に対応する燃料供給量の割合が急激に増加し、タービン入口温度が制限値を超過するおそれがある。タービン入口温度が過度に高いとガスタービンの部品の損傷につながり得る。そこで、ガスタービンの回転数の急減時にタービン入口温度が過度に上昇しないようにするための技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ガスタービンの回転数の急減時等においてタービン入口温度が制限値を超える可能性を低減するためのガスタービンの制御装置が記載されている。この制御装置では、パラメータ(計測値)から算出されるタービン入口温度の推定値と、タービン入口温度の上限値との偏差に基づいて、ガスタービンに与えられる燃料指令値(燃焼器への燃料供給量を示す制御指令値)の上限値を算出し、この上限値を用いて燃料指令値を制限するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば特許文献1に記載されるような従来の制御方法では、以下の理由から、ガスタービンの回転数急減時にタービン入口温度が制限値を超過する可能性がある。
【0006】
従来の制御では、例えばガスタービンから排出される排ガスの温度が排ガス温度制限値を超過しないように燃料指令値を制御することで、タービン入口温度がタービン入口温度制限値を超過しないようにしている。しかし、タービン入口温度の変化が排ガス温度の変化として現れるまでの時間遅れがあるため、ガスタービン回転数の急減時には、制御に遅れが生じ、タービン入口温度が制限値を超過してしまう場合があると考えられる。
【0007】
また、ガスタービン回転数が急低下すると、ガスタービンの圧縮機の吸気量が急低下し、これにより車室圧が急低下する。そうすると、燃料供給ノズルの差圧が拡大することにより燃料供給量が増加してしまい、これによりタービン入口温度がより大きく上昇しやすい。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することが可能なガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備及びガスタービンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用の制御装置は、
ガスタービンを制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部を備え、
前記燃料指令値算出部は、
前記ガスタービンの回転数の時間変化量に基づいて前記ガスタービンの回転数の急減を検知するように構成された回転数急減検知部と、
前記回転数急減検知部により前記ガスタービンの回転数の急減が検知されたとき、前記回転数の低下に対応するように前記燃料指令値を制限するように構成された燃料指令値制限部と、
を含む。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン設備は、
ガスタービンと、
前記ガスタービンを制御するように構成された上述の制御装置と、
を備える。
【0011】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの制御方法は、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するステップを備え、
前記燃料指令値を算出するステップは、
前記ガスタービンの回転数の時間変化量に基づいて前記ガスタービンの回転数の急減を検知するステップと、
前記ガスタービンの回転数の急減が検知されたとき、前記回転数の低下に対応するように前記燃料指令値を制限するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することが可能なガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備及びガスタービンの制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係るガスタービン設備の概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る制御装置の演算ロジックを示すブロック図である。
【
図4】ガスタービンの回転数と後述する負荷係数との相関関係の一例を示すグラフである。
【
図5】負荷係数と燃料指令値との相関関係の一例を示すグラフである。
【
図6】燃焼ガスの上限基準温度の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0015】
(ガスタービン設備の構成)
図1は、幾つかの実施形態に係る制御装置が適用されるガスタービン設備の概略構成図である。
図1に示すように、ガスタービン設備100は、ガスタービン1と、ガスタービン1の運転を制御するための制御装置20と、を含む。
【0016】
ガスタービン1は、空気を圧縮するための圧縮機2と、燃料(例えば天然ガス等)を燃焼させて燃焼ガスを発生させるための燃焼器3と、燃焼器3で発生した燃焼ガスにより回転駆動されるように構成されたタービン4と、を含む。圧縮機2とタービン4とは、回転シャフト5を介して接続されている。
【0017】
燃焼器3には、燃料供給ライン9を介して燃料(天然ガス等)が供給されるとともに圧縮機2からの圧縮空気が送り込まれるようになっており、この圧縮空気を酸化剤として燃料が燃焼され、燃焼ガスが発生するようになっている。燃焼器3に供給される燃料の流量は、燃料供給ライン9に設けられた燃料バルブ7によって調整可能になっている。
【0018】
燃焼器3で発生した燃焼ガスはタービン4に導かれ、タービン4を回転駆動させる。タービン4で仕事を終えた燃焼ガスは、排ガスとしてタービン4から排出されるようになっている。
図1に示すように、タービン4には回転シャフト5を介して発電機6が連結され、タービン4によって発電機6が駆動されて電力が生成されるようになっていてもよい。
発電機6で生成された電力は、図示しない遮断機又は変圧器等を介して電力系統へと送電されるようになっていてもよい。
【0019】
図1に示すガスタービン設備100は、ガスタービン1の回転シャフト5の回転数(ガスタービン1のロータの回転数)を計測するように構成された回転数計測部8を含む。回転数計測部8は、エンコーダ等の回転数センサを含んでもよい。
【0020】
また、
図1に示すガスタービン設備100は、ガスタービン1に駆動される発電機6での発電電力(有効電力;ガスタービンの出力)を計測するように構成された出力計測部10を含む。
【0021】
また、
図1に示すガスタービン設備100は、ガスタービン1の所定部位における燃焼ガスの温度を計測するための温度計測部を含む。
図1に示すように、温度計測部は、タービン4から排出された排ガスの温度(排ガス温度;EXT)を計測するための排ガス温度計測部12を含んでもよい。排ガス温度計測部12は、タービン4からの排ガスが導かれる排熱回収ボイラ等のダクトにおける排ガスの温度を計測するように構成されていてもよい。あるいは、温度計測部は、タービン4内においてタービン翼列の下流側の位置における燃焼ガスの温度(ブレードパス温度;BPT)を計測するためのブレードパス温度計測部14を含んでもよい。
【0022】
回転数計測部8、出力計測部10及び温度計測部(排ガス温度計測部12及び/又はブレードパス温度計測部14)によって取得された計測値を示す信号は、制御装置20に送られるようになっている。
【0023】
(制御装置及び制御のフロー)
図2は、一実施形態に係る制御装置20の概略構成図である。
図2に示すように、制御装置20は、燃料指令値算出部22及び記憶部23を備えている。制御装置20は、回転数計測部8、出力計測部10及び/又は温度計測部(排ガス温度計測部12及び/又はブレードパス温度計測部14)から、各種計測値を示す信号を受け取り、該信号を処理するように構成される。制御装置20での演算結果は、燃料バルブ7に送られ、燃料バルブ7は該演算結果に基づき動作するようになっていてもよい。
【0024】
燃料指令値算出部22は、ガスタービン1に与えられる燃料指令値FIを算出するように構成される。燃料指令値FIは、燃焼器3への燃料供給量を示す制御指令値である。この燃料指令値FIに基づいて、燃料バルブ7の開度が調節されるようになっている。制御装置20は、燃焼器3への燃料供給量が燃料指令値FIに合致するように、燃料バルブ7の開度を調節するように構成されていてもよい。
【0025】
記憶部23は、制御装置20への入出力や制御装置20での演算結果等を記憶するように構成される。記憶部23は、制御装置20を構成する計算機の主記憶装置又は補助記憶装置を含んでもよい。
【0026】
制御装置20は、プロセッサ(CPU等)、主記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶装置及びインターフェース等を備えた計算機を含む。制御装置20は、インターフェースを介して、回転数計測部8、出力計測部10及び/又は温度計測部(排ガス温度計測部12及び/又はブレードパス温度計測部14)から信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、主記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の燃料指令値算出部22の機能が実現される。
【0027】
制御装置20での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、例えば補助記憶装置に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは主記憶装置に展開される。プロセッサは、主記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0028】
図3は、一実施形態に係る制御装置20の燃料指令値算出部22の演算ロジックを示すブロック図である。
図3に示す燃料指令値算出部22は、第1~第4指令値(FI_1~FI_4)をそれぞれ算出するように構成された第1指令値算出部30、第2指令値算出部38、第3指令値算出部40及び第4指令値算出部42と、第1~第4指令値(FI_1~FI_4)から最小値を選択して燃料指令値FIとして出力するように構成された最小値選択部44と、を含む。
【0029】
第1指令値算出部30は、出力計測部10で計測されるガスタービン1の実出力値である現在出力値PA、及び、ガスタービン1の目標出力値PT等を受け取り、これらの値に基づく燃料指令値である第1指令値FI_1を算出するように構成される。
【0030】
第1指令値算出部30は、ガスタービン1の現在出力値PAと目標出力値PTとの偏差(PA-PT)に基づいて、例えば比例演算及び/又は積分演算を行うことにより、第1指令値FI_1を算出してもよい。
【0031】
目標出力値PTは、燃料指令値算出部22を構成する目標出力値算出部24で算出されてもよい。目標出力値算出部24は、上位制御装置等から、ガスタービン1に要求される負荷(例えば定格負荷等)に対応する設定負荷値LDを取得し、該設定負荷値LD等に基づいて上述の目標出力値PTを算出するように構成される。
【0032】
第2指令値算出部38は、回転数計測部8で計測されるガスタービン1の回転数(現在回転数)rA、及び、目標回転数rTを受け取り、これらの値に基づく燃料指令値である第2指令値FI_2を算出するように構成される。目標回転数rTは、目標出力値PT等に基づいて算出されたものであってもよい。
【0033】
第3指令値算出部40は、排ガス温度計測部12で計測される排ガス温度(EXT)の現在値、及び、予め設定される該排ガス温度の制限値を受け取り、これらの値に基づく燃料指令値である第3指令値FI_3を算出するように構成される。排ガス温度の制限値は、予め記憶部23に記憶されていてもよい。
【0034】
第4指令値算出部42は、ブレードパス温度計測部14で計測されるブレードパス温度(BPT)の現在値、及び、予め設定される該ブレードパス温度の制限値を受け取り、これらの値に基づく燃料指令値である第4指令値FI_4を算出するように構成される。ブレードパス温度の制限値は、予め記憶部23に記憶されていてもよい。
【0035】
最小値選択部44は、第1~第4指令値算出部30,38,40,42で算出された第1~第4指令値(FI_1~FI_4)を入力として受け取り、これらの第1~第4指令値(FI_1~FI_4)から最小値を選択して、燃料指令値FIとして出力するように構成される。燃料指令値FIは、燃料指令値算出部22からの出力として、ガスタービン1に与えられるようになっている。
【0036】
幾つかの実施形態では、燃料指令値算出部22は、ガスタービン1の回転数の急減を検知するための回転数急減検知部28と、ガスタービン1の回転数の急減が検知されたときに燃料指令値FIを制限するための燃料指令値制限部31と、をさらに含む。
【0037】
回転数急減検知部28は、ガスタービン1の回転数の時間変化量に基づいてガスタービン1の回転数の急減を検知するように構成される。回転数急減検知部28は、回転数計測部8によるガスタービン1の回転数の計測値(現在回転数rA)を受け取り、該計測値に基づいて、ガスタービン1の回転数の時間変化量を算出してもよい。回転数急減検知部28は、規定時間内のガスタービン1の回転数低下量が規定値以上であるときに、ガスタービン1の回転数が急減したことを検知するように構成されてもよい。回転数急減検知部28は、例えば、ガスタービン1の回転数の規定時間前(例えば10秒前)の計測値rA_1と、最新の計測値rA_2との差分(rA_1-rA_2)が規定値以上である場合に、ガスタービン1の回転数が急減したことを検知するようになっていてもよい。回転数急減検知部28は、ガスタービン1の回転数の急減を検知したら、該回転数の急減を示す回転数急減信号SIGを出力するようになっていてもよい。
【0038】
燃料指令値制限部31は、回転数急減検知部28によりガスタービン1の回転数の急減が検知されたとき(すなわち、回転数急減検知部28から回転数急減信号SIGを受け取ったら)、ガスタービン1の回転数の低下に対応するように燃料指令値FIを制限するように構成される。
【0039】
図3に示す例示的な実施形態では、燃料指令値算出部22は、燃料指令値制限部31としての第1指令値制限部32を含む。第1指令値制限部32は、回転数急減検知部28によりガスタービン1の回転数の急減が検知されたとき、ガスタービン1の回転数の低下に対応するように第1指令値FI_1を制限するように構成される。
【0040】
第1指令値制限部32は、第1指令値FI_1(燃料指令値)を制限するための第1指令上限値算出部34(燃料指令上限値算出部)を含んでもよい。第1指令上限値算出部34は、ガスタービン1の回転数に基づいて、第1指令値FI_1(燃料指令値)を制限するための第1指令上限値(燃料指令上限値)を算出するように構成されてもよい。
【0041】
第1指令上限値算出部34は、例えば以下のようにして第1指令上限値(燃料指令上限値)を算出するようにしてもよい。ここで、
図4は、ガスタービンの回転数と、後述する負荷係数との相関関係(第1相関関係)の一例を示すグラフである。
図5は、上述の負荷係数と燃料指令値との相関関係(第2相関関係)の一例を示すグラフである。
【0042】
まず、第1指令上限値算出部34は、ガスタービン1の回転数(現在回転数r
A;回転数計測部8による計測値)を取得するとともに、ガスタービン1の回転数と、設定負荷値L
D(定格負荷等)に対する負荷の割合を示す負荷係数との相関関係である第1相関関係を取得する(
図4参照)。第1相関関係は、ガスタービン1の回転数と上述の負荷係数との相関関係を示すマップ、テーブル、又は関数であってもよい。なお、
図4に示すグラフでは、負荷係数は、設定負荷値L
D(全負荷;定格負荷等)における負荷係数が1であり、かつ、無負荷における負荷係数がゼロとなるように、設定されている。第1相関関係は、予め取得されて記憶部23に記憶されたものであってもよい。そして、第1相関関係に、ガスタービン1の現在回転数r
Aを適用することで、現在回転数r
Aに対応する負荷係数b
Lが取得される。
【0043】
次に、第1指令上限値算出部34は、上述の負荷係数と、燃料指令値(ここでは第1指令値FI_1)との相関関係である第2相関関係を取得する。第2相関関係は、上述の負荷係数と燃料指令値との相関関係を示すマップ、テーブル、又は関数であってもよい。なお、
図5に示すグラフでは、設定負荷値L
D(全負荷;定格負荷等)に対応する第1指令値がFI_1_100%であり、無負荷に対応する第1指令値がFI_1_0%である。第2相関関係は、予め取得されて記憶部23に記憶されたものであってもよい。そして、第2相関関係に、上述の第1相関関係から取得された負荷係数b
Lを適用することで、現在回転数r
Aに対応する第1指令値(燃料指令値)FI_1_b
Lが取得される。
【0044】
第1指令上限値算出部34は、このように取得された第1指令値(燃料指令値)FI_1_bLを、第1指令上限値FI_1_max(燃料指令上限値)として算出して出力する。
【0045】
第1指令値制限部32は、ガスタービン1の現在出力値PA及び目標出力値PTに基づき算出された第1指令値FI_1が第1指令上限値FI_1_max未満であるときは、第1指令値FI_1をそのまま第1指令値FI_1として算出及び出力するとともに、ガスタービン1の現在出力値PA及び目標出力値PTに基づき算出された第1指令値FI_1が第1指令上限値FI_1_max以上であるときは、第1指令上限値FI_1_maxを第1指令値FI_1として算出及び出力する。
【0046】
このように、第1指令値算出部30では、第1指令上限値FI_1_max以下の範囲内の値として第1指令値FI_1が算出され(すなわち、第1指令値FI_1が第1指令上限値FI_1_max以下に制限され)、最小値選択部44に出力される。
【0047】
最小値選択部44では、上述のように制限された第1指令値FI_1を含む燃料指令値の選択肢(第1~第4指令値(FI_1~FI_4))のうち最小値が、最終的な燃料指令値FIとして選択される。したがって、このように取得される燃料指令値FIは、ガスタービン1の回転数の低下に対応するように制限されたものである。
【0048】
上述の実施形態では、ガスタービン1の回転数の急減が検知された場合に、排ガスの温度計測値等に依らず、回転数の低下に対応して燃料指令値(燃焼器への燃料供給量を示す制御指令値;具体的には第1指令値FI_1)を制限するようにしたので、ガスタービン1の回転数の急減時に、迅速に燃料指令値(第1指令値FI_1)を制限することができる。よって、ガスタービン1の回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、燃料指令値算出部22は、ガスタービン1の所定部位における燃焼ガスの温度(例えば、上述の排ガス温度又はブレードパス温度)が該所定部位における燃焼ガスの上限基準温度Tsよりも低い規定温度Tthより高いか否かを判定するように構成された温度条件判定部36を備える。
【0050】
ここで、
図6は、燃焼ガスの上限基準温度Tsの一例を示すグラフである。
図6のグラフは、車室圧(横軸)と燃焼ガス温度(ここでは一例として排ガス温度;縦軸)との関係を示すものである。上限基準温度Tsは、例えば
図6に示すように、車室圧によって変化してもよい。また、規定温度Tthは、上限基準温度Tsから一定の温度Taだけ低い温度(Ts-Ta)として定義されてもよく、上限基準温度Tsと同様に、車室圧によって変化してもよい。
【0051】
燃料指令値制限部31(
図3では第1指令値制限部32)は、温度条件判定部36により燃焼ガスの温度が規定温度Tthよりも高いと判定され、かつ、回転数急減検知部28によりガスタービン1の回転数の急減が検知されたときに、燃料指令値(
図3では第1指令値FI_1)を、例えば既に述べた手順で制限するように構成される。
【0052】
ガスタービン1の所定部位における燃焼ガスの温度が上限基準温度Tsよりもある程度低い場合には、仮にガスタービン1の回転数が急減して、これによりタービン入口温度がある程度上昇したとしても、タービン入口温度が制限値を超えることは考えにくい。この点、上述の実施形態によれば、ガスタービン1の所定部位における燃焼ガス温度が、上限基準温度Tsに対応するととともに上限基準温度Tsよりも低い規定温度Tthよりも高いときに限り、ガスタービン1の回転数の急減時に燃料指令値(例えば第1指令値FI_1)を制限し、該燃焼ガス温度が上述の規定温度Tth以下である場合(即ち、燃焼ガス温度が上限基準温度Tsよりもある程度低い場合)には、ガスタービン1の回転数が急減したとしても、これにより燃料指令値(例えば第1指令値FI_1)を制限しない。このように、不要なときにまで燃料指令値を制限しないので、ガスタービン1に要求される出力を達成しやすくなるとともに、上述したようにタービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、燃料指令値算出部22は、ガスタービン1の回転数(回転数計測部8により取得される現在回転数rA)に基づき目標出力値PTの上限値である目標出力上限値PT_maxを算出するように構成された目標出力上限値算出部26を含む。そして、目標出力値算出部24は、ガスタービン1の上述の設定負荷値LD、及び、目標出力上限値PT_maxに基づいて目標出力値PTを算出するように構成される。
【0054】
目標出力上限値算出部26は、例えば以下のようにして目標出力上限値PT_maxを算出するようにしてもよい。
【0055】
まず、第1指令上限値算出部34は、ガスタービン1の回転数(現在回転数r
A;回転数計測部8による計測値)を取得するとともに、記憶部23等から上述の第1相関関係(即ち、ガスタービン1の回転数と、設定負荷値L
D(定格負荷等)に対する負荷の割合を示す負荷係数との相関関係;
図4参照)を取得する。そして、第1相関関係に、ガスタービン1の現在回転数r
Aを適用し、現在回転数r
Aに対応する負荷係数b
Lを取得する。
【0056】
そして、設定負荷値LDに対して負荷係数bL(ガスタービン1の回転数に応じたバイアス値)を乗算することで、目標出力上限値PT_maxを算出する。
【0057】
目標出力値算出部24は、設定負荷値LDが目標出力上限値PT_max未満であるときは、設定負荷値LDをそのまま目標出力値PTとして算出及び出力するとともに、設定負荷値LDが目標出力上限値PT_max以上であるときは、目標出力上限値PT_maxを目標出力値PTとして算出及び出力するようにしてもよい。
【0058】
上述の実施形態によれば、ガスタービン1の回転数に基づき目標出力上限値PT_maxが算出され、該目標出力上限値によって制限された目標出力値PTを用いて燃料指令値(例えば第1指令値FI_1)が算出される。したがって、ガスタービン1の回転数が急減した場合において、目標出力値PTをこのように制限しない場合に比べて、ガスタービン1の出力値と目標出力値PTとの偏差の絶対値を小さくすることができ、これにより、該偏差に基づく燃料指令値(第1指令値FI_1)の急増を抑制することができる。よって、ガスタービン1の回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過をより効果的に抑制することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、目標出力値算出部24は、目標出力値PTが減少する場合には、目標出力値PTが増加する場合に比べて大きな変化率で目標出力値PTを変化させるように構成される。
【0060】
上述の実施形態では、算出される目標出力値PTが減少する場合には、算出される目標出力値PTが増大する場合に比べて大きい変化率で目標出力値PTを変化させるようにしたので、ガスタービン1の回転数の急減時において、目標出力値PTを比較的迅速に減少させることができる。これにより、目標出力値PTに基づいて算出される燃料指令値(例えば第1指令値FI_1)も比較的迅速に減少するため、ガスタービン1の回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過をより効果的に抑制することができる。
【0061】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0062】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用の制御装置(20)は、
ガスタービン(1)を制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値(上述の燃料指令値FI及び/又は第1指令値FI_1)を算出するための燃料指令値算出部(22)を備え、
前記燃料指令値算出部は、
前記ガスタービンの回転数の時間変化量に基づいて前記ガスタービンの回転数の急減を検知するように構成された回転数急減検知部(28)と、
前記回転数急減検知部により前記ガスタービンの回転数の急減が検知されたとき、前記回転数の低下に対応するように前記燃料指令値を制限するように構成された燃料指令値制限部(31)と、
を含む。
【0063】
上記(1)の構成によれば、ガスタービンの回転数の急減が検知された場合に、排ガスの温度計測値等に依らず、回転数の低下に対応して燃料指令値(燃焼器への燃料供給量を示す制御指令値)を制限するようにしたので、ガスタービンの回転数の急減時に、迅速に燃料指令値を制限することができる。よって、ガスタービンの回転数が急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0064】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記制御装置は、
前記ガスタービンの所定部位における燃焼ガスの温度が、前記所定部位における前記燃焼ガスの上限基準温度(Ts)に対応するように決定されるとともに該上限基準温度よりも低い規定温度(Tth)より高いか否かを判定するように構成された温度条件判定部(36)を備え、
前記燃料指令値制限部は、前記温度条件判定部により前記燃焼ガスの温度が前記規定温度よりも高いと判定され、かつ、前記回転数急減検知部により前記回転数の急減が検知されたとき、前記燃料指令値を制限するように構成される。
【0065】
燃焼ガスの温度が上限基準温度よりもある程度低い場合には、仮にガスタービンの回転数が急減して、これによりタービン入口温度がある程度上昇したとしても、タービン入口温度が制限値を超えることは考えにくい。この点、上記(2)の構成によれば、燃焼ガス温度が、上限基準温度に対応するととともに上限基準温度よりも低い規定温度よりも高いときに限り、ガスタービンの回転数の急減時に燃料指令値を制限し、燃焼ガス温度が上述の規定温度以下である場合(即ち、燃焼ガス温度が上限基準温度よりもある程度低い場合)には、ガスタービンの回転数が急減したとしても、これにより燃料指令値を制限しない。このように、不要なときにまで燃料指令値を制限しないので、ガスタービンに要求される出力を達成しやすくなるとともに、上記(1)で述べたようにタービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0066】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記燃料指令値算出部は、前記ガスタービンの出力値(PA)と目標出力値(PT)との偏差に基づいて前記燃料指令値を算出するように構成され、
前記燃料指令値制限部は、前記偏差に基づき算出された前記燃料指令値を制限するように構成される。
【0067】
ガスタービンの回転数が急減するとき、ガスタービンの出力値と目標出力値との偏差に基づく燃料指令値は急増する傾向がある。この点、上記(3)の構成によれば、ガスタービンの回転数が急減するときに、ガスタービンの出力値と目標出力値との偏差に基づく燃料指令値を迅速に制限するようにしたので、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0068】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記制御装置は、
前記ガスタービンの回転数に基づき前記目標出力値の上限値(例えば上述の目標出力上限値PT_max)を算出するように構成された目標出力上限値算出部(26)と、
前記ガスタービンの設定負荷値(LD)、及び、前記目標出力値の前記上限値に基づいて前記目標出力値を算出するように構成された目標出力値算出部(24)と、
を備える。
【0069】
上記(4)の構成によれば、ガスタービンの回転数に基づき目標出力値の上限値を算出し、該上限値によって制限された目標出力値を用いて燃料指令値を算出する。したがって、ガスタービンの回転数が急減した場合において、目標出力値を上述のように制限しない場合に比べて、ガスタービンの出力値と目標出力値との偏差の絶対値を小さくすることができ、これにより、該偏差に基づく燃料指令値の急増を抑制することができる。よって、ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過をより効果的に抑制することができる。
【0070】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記目標出力上限値算出部は、前記設定負荷値に、前記ガスタービンの回転数に応じたバイアス値(例えば上述の負荷係数bL)を乗算することで、前記目標出力値の前記上限値を算出するように構成される。
【0071】
上記(5)の構成によれば、ガスタービンの設定負荷値に、回転数に応じたバイアス値を乗算することで、回転数に応じた目標出力値の上限値を算出することができる。よって、このように算出した上限値によって制限された目標出力値を用いて、燃料指令値を適切に算出することができる。
【0072】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記目標出力値算出部は、前記目標出力値が減少する場合には、前記目標出力値が増加する場合に比べて大きな変化率で前記目標出力値を変化させるように構成される。
【0073】
上記(6)の構成によれば、算出される目標出力値が減少する場合には、算出される目標出力値が増大する場合に比べて大きい変化率で目標出力値を変化させるようにしたので、ガスタービンの回転数の急減時において、目標出力値を比較的迅速に減少させることができる。これにより、目標出力値に基づいて算出される燃料指令値も比較的迅速に減少するため、ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過をより効果的に抑制することができる。
【0074】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記燃料指令値制限部は、前記ガスタービンの回転数が急減したときにおける前記燃料指令値の上限値(例えば上述の第1指令上限値FI_1_max)を算出するように構成された燃料指令上限値算出部(例えば上述の第1指令上限値算出部34)を含み、
前記燃料指令上限値算出部は、
前記ガスタービンの回転数と、前記ガスタービンの設定負荷値(LD)に対する負荷の割合を示す負荷係数(bL)との相関関係に基づいて、前記ガスタービンの現在の回転数に対応する前記負荷係数を取得し、
前記設定負荷値に対応する燃料指令値及び前記負荷係数に基づいて、前記燃料指令値の前記上限値を算出する
ように構成される。
【0075】
上記(7)の構成によれば、ガスタービンの回転数と、設定負荷値に対する負荷の割合を示す負荷係数との相関関係に基づいて、ガスタービンの現在の回転数に対応する負荷係数を取得するとともに、設定負荷値に対応する燃料指令値及び上述の負荷係数に基づいて燃料指令値の上限値を算出する。よって、このように算出した上限値に基づいて燃料指令値が制限されるので、ガスタービンの回転数の急減時に、迅速に燃料指令値を制限することができる。よって、ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0076】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン設備(100)は、
ガスタービン(1)と、
前記ガスタービンを制御するように構成された上記(1)乃至(7)の何れか一項に記載の制御装置(20)と、
を備える。
【0077】
上記(8)の構成によれば、ガスタービンの回転数の急減が検知された場合に、排ガスの温度計測値等に依らず、回転数の低下に対応して燃料指令値(燃焼器への燃料供給量を示す制御指令値)を制限するようにしたので、ガスタービンの回転数の急減時に、迅速に燃料指令値を制限することができる。よって、ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0078】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン(1)の制御方法は、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値(例えば上述の燃料指令値FI及び/又は第1指令値FI_1)を算出するステップを備え、
前記燃料指令値を算出するステップは、
前記ガスタービンの回転数の時間変化量に基づいて前記ガスタービンの回転数の急減を検知するステップと、
前記ガスタービンの回転数の急減が検知されたとき、前記回転数の低下に対応するように前記燃料指令値を制限するステップと、
を含む。
【0079】
上記(9)の方法によれば、ガスタービンの回転数の急減が検知された場合に、排ガスの温度計測値等に依らず、回転数の低下に対応して燃料指令値(燃焼器への燃料供給量を示す制御指令値)を制限するようにしたので、ガスタービンの回転数の急減時に、迅速に燃料指令値を制限することができる。よって、ガスタービンの回転数の急減時において、タービン入口温度の制限値超過を効果的に抑制することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0081】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0082】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
5 回転シャフト
6 発電機
7 燃料バルブ
8 回転数計測部
9 燃料供給ライン
10 出力計測部
12 排ガス温度計測部
14 ブレードパス温度計測部
20 制御装置
22 燃料指令値算出部
23 記憶部
24 目標出力値算出部
26 目標出力上限値算出部
28 回転数急減検知部
30 第1指令値算出部
31 燃料指令値制限部
32 第1指令値制限部
34 第1指令上限値算出部
36 温度条件判定部
38 第2指令値算出部
40 第3指令値算出部
42 第4指令値算出部
44 最小値選択部
100 ガスタービン設備