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特開2024-76165ロッドの製造方法及び経皮的脊柱安定化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076165
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ロッドの製造方法及び経皮的脊柱安定化システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
A61B17/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187587
(22)【出願日】2022-11-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000193612
【氏名又は名称】ミズホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴徳
(72)【発明者】
【氏名】石原 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大輝
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL44
4C160LL63
(57)【要約】
【課題】、術者の経験や勘等に依存することなく、各患者にとって最適な矯正効果が得られるロッドの製造方法を提供する。
【解決手段】ロッドの製造方法は、脊柱の各椎骨に装着され、体内埋没材として構成されるロッドの製造方法であって、過去の多数の症例に基づいて、患者の骨盤の形態角ごとに、最適な弯曲を有するロッド形状をそれぞれ導き、当該ロッド形状に基づきロッドを製造する。これにより、術者の経験や勘等に依存することなく、各患者にとって最適な矯正効果が得られる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱の各椎骨に装着され、体内埋没材として構成されるロッドの製造方法であって、
過去の多数の症例に基づいて、患者の骨盤の形態角ごとに、最適な弯曲を有するロッド形状をそれぞれ導き、当該ロッド形状に基づきロッドを製造することを特徴とするロッドの製造方法。
【請求項2】
過去の多数の症例に基づいて、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状、及び体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状をそれぞれデータとして取得するロッド形状取得工程と、
該ロッド形状取得工程にて取得した、多数の、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状を、患者の骨盤の形態角ごとの群に分類する形態角分類工程と、
該形態角分類工程にて、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、骨盤の形態角ごとに近似曲線を算出し、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得する近似ロッド形状取得工程と、
前記ロッド形状取得工程にて取得した、同一患者に対して、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較して、形態角ごとにロッドの変形量を算出するロッド変形量算出工程と、
該ロッド変形量算出工程によって形態角ごとに算出した変形量を、前記近似ロッド形状取得工程において取得した形態角ごとのロッド形状に加味して、形態角ごとに最適な弯曲を有するロッド形状を導き、当該ロッド形状に基いてロッドを製造するロッド製造工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のロッドの製造方法。
【請求項3】
前記形態角分類工程と、前記近似ロッド形状取得工程との間に、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、各形態角において、ロッドの、設定された複数の全長ごとの群に分類するロッド長分類工程を備え、
前記近似ロッド形状取得工程では、前記形態角分類工程及び前記ロッド長分類工程にて取得した、各形態角において、ロッドの全長ごとの群にそれぞれ分類された多数のロッド形状に基づいて近似曲線を算出して、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得することを特徴とする請求項2に記載のロッドの製造方法。
【請求項4】
前記変形量は、腰椎前弯角度の差を含むことを特徴とする請求項2に記載のロッドの製造方法。
【請求項5】
前記ロッド製造工程では、
前記形態角が40°~49°の範囲では、最適な弯曲を有するロッド形状が複数設定され、
また、前記形態角が50°~59°の範囲でも、最適な弯曲を有するロッド形状が複数設定されることを特徴とする請求項2に記載のロッドの製造方法。
【請求項6】
過去の多数の症例に基づいて、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状をデータとして取得するロッド形状取得工程と、
該ロッド形状取得工程にて取得した、体内に設置前に曲げ加工された多数のロッド形状を、患者の骨盤の形態角ごとの群に分類する形態角分類工程と、
該形態角分類工程にて、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、骨盤の形態角ごとに近似曲線を算出し、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得する近似ロッド形状取得工程と、
該近似ロッド形状取得工程にて取得した形態角ごとのロッド形状に基づいてロッドを製造するロッド製造工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のロッドの製造方法。
【請求項7】
前記形態角分類工程と、前記近似ロッド形状取得工程との間に、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、各形態角において、ロッドの複数の全長ごとの群に分類するロッド長分類工程を備え、
前記近似ロッド形状取得工程では、前記形態角分類工程及び前記ロッド長分類工程にて取得した、各形態角において、ロッドの全長ごとの群にそれぞれ分類された多数のロッド形状に基づいて近似曲線を算出して、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得することを特徴とする請求項6に記載のロッドの製造方法。
【請求項8】
体内埋没材を経皮的に体内に挿入して脊柱に装着することで、脊柱を安定化させることが可能な経皮的脊柱安定化システムであって、
前記体内埋没材は、請求項1~7に記載された製造方法により製造されたロッドを含むことを特徴とする経皮的脊柱安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊柱の各椎骨に装着され、体内埋没材として構成されるロッドの製造方法、及びこのロッドを含む体内埋没材を経皮的に体内に挿入して脊柱に装着することで脊柱を安定化させることが可能な経皮的脊柱安定化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の背中の正中を大きく切開して、その切開部分から椎弓根スクリュ及びロッド等を体内に挿入しつつ、脊柱に装着することで、脊柱の安定性を高めたり、脊柱変形を矯正するなど、脊柱を安定化させる外科的治療が行われている。このような、脊柱変形矯正固定術では、チタン合金、コバルトクロム合金などの生体親和材料にて製造されたロッドを、椎弓根にねじ込ませた椎弓根スクリュなどで保持することによって、脊柱を矯正して固定する。ロッドは、通常、手術中、すなわち椎弓根スクリュに保持される直前にベンダーなどの手術器具を利用して、術者の手によって曲げられ、しかも、椎弓根スクリュに強固に保持される前(仮止め状態)においても必要に応じて、術者の手によってロッドの弯曲が微調整されることもある。
【0003】
そして、曲げられたロッドの形状(ロッドの弯曲)によって、矯正後の脊柱の状態が概ね決定する。そのため、ロッドの弯曲は、脊柱変形矯正固定術において重要な要素であり、術者の経験や勘に左右されるという課題がある。また、このように、これまでの脊柱変形矯正固定術では、手術中に、術者によって直線状のロッドが専用の手術器具により適宜曲げられているが、これにより、ロッドの表面に傷(例えばノッチ等)が付き、ノッチ形成によるロッドの剛性低下、ひいては、術後の矯正損失やロッドの折損等のリスクが高まり、その問題が指摘されている。
【0004】
また、近年では、低侵襲手術として、患者の背中から経皮的に(数個の小切開孔から)椎弓根スクリュ及びロッド等を体内に挿入して各椎骨に固定し、脊柱を安定化させる術式が採用されている。このような経皮的な術式によって脊柱を安定化させる方法は、背中を大きく切開する術式に比べて、手術に伴う出血量が減少して、手術時間も短縮することができ、しかも、手術部位感染も減少するなど、多くの点で患者にとって有利となる。このような、低侵襲手術では、上述した、ロッドの弯曲に対する課題が顕著になり、大きな問題となる。それは、このような低侵襲手術では、ロッドが、椎弓根スクリュに保持される直前にベンダーなどの手術器具を利用して術者の手によって曲げられるが、当該曲げられたロッドを経皮的に挿入した後は、ロッドの弯曲を微調整することが容易にできないためである。
【0005】
また、患者の背中を大きく切開する術式は、脊椎骨組織に付着している筋肉や靭帯類全てを剥離し、術野を展開して、脊柱のアライメントを脊柱安定化システム(スクリュやロッドを含む)により矯正しているために、ロッドへの負荷が小さく、ロッドの、体内への設置前の弯曲状態に対する設置後の弯曲状態の変形量が小さくなる。これに対して、経皮的な術式は、脊椎骨組織に付着している筋肉や靭帯類を剥離せずに、脊柱のアライメントを脊柱安定化システムにより矯正しているために、ロッドへの負荷が大きく、ロッドの、体内への設置前の弯曲程度に対する設置後の弯曲程度の変形量が大きくなる。そのために、経皮的な術式では、患者の背中を切開する術式にて得た、設置前のロッドの曲げ加工(どの程度の弯曲)についての経験や勘が全く通用せず、設置前のロッドの弯曲をあらためて検証して構築する必要がある。
【0006】
なお、特許文献1には、選択された骨性の身体構造体内に係合する複数の取付手段に係合させる外科用連結装置を成形する方法であって、各取付手段は成形される連結装置に係合する係合部分を有しており、(a)前記複数の取付手段の位置についてディジタル化されたデータを提供するステップ、(b)前記取付手段の係合部分と成形された連結装置との許容可能な距離に相当する許容差範囲を決定するステップ、(c)前記複数の取付手段の各位置の近似値を求める曲線関数を見出すステップ、(d)前記複数の取付手段の各位置において、前記曲線関数により成形される前記連結装置の位置を計算するステップ、(e)前記計算された連結装置の位置と前記複数の取付手段の各位置との較差に基づいて誤差を計算するステップ、(f)前記誤差が前記許容差範囲を超えているかどうかを決定し、もし超えているならばより高次の曲線関数を決定するステップ、(g)前記誤差が前記許容差範囲内であれば、前記曲線関数を用いて、前記連結装置の長さ方向に沿って複数の曲げ点を有する曲げ曲線を生成するステップであって、該複数の曲げ点は、所定の距離毎に分布している、前記ステップ、(h)いくつかの曲げ点を排除して曲げ点の数を減少させ、次の残りの直接隣接している曲げ点間で、除去された曲げ点を直線で置き換えるステップ、(i)残りの曲げ点で修正された曲げ曲線を生成するステップ、および(j)前記残りの曲げ点の各々で、曲げ工具を用いて前記連結装置上で実施される曲げ点のための曲げ加工指示を生成するステップを含む、方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5572898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の係る外科用連結装置を成形する方法においても、上述した従来技術と同様に、手術中に術者が手術器具を用いて直線状ロッドを曲げ加工するために、上述した課題を解決することは不可能である。
【0009】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、術者の経験や勘等に依存することなく、各患者にとって最適な矯正効果が得られるロッドの製造方法、及び当該製造方法にて製造されたロッドを含む経皮的脊柱安定化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段として、請求項1のロッドの製造方法に係る発明は、脊柱の各椎骨に装着され、体内埋没材として構成されるロッドの製造方法であって、過去の多数の症例に基づいて、患者の骨盤の形態角ごとに、最適な弯曲を有するロッド形状をそれぞれ導き、当該ロッド形状に基づきロッドを製造することを特徴とするものである。
【0011】
なお、骨盤の形態角(PI)は、個人固有の角度であって、当該形態角を基準に、解剖学的に正常な脊柱のアライメント(椎骨の配列)が構築されることになる。すなわち、形態角の違いによって、胸椎の後弯角度、腰椎の前弯角度が異なり、骨盤の形態に応じて、胸椎及び腰椎がバランスをとった結果となる。そして、請求項1の発明では、患者の骨盤の形態角ごとに、最適なロッド形状、すなわち最適な弯曲を有するロッド形状をそれぞれ導き、術者の経験や勘等に依存することなく、当該ロッドを脊柱変形に対して矯正、固定することで、正常な脊柱のアライメントに近づくことが可能になる、すなわち、各患者にとって最適な矯正効果を得ることができる。要するに、請求項1の発明では、各患者固有の形態角(PI)ごとに、最適なロッド形状を導くので、患者に対して、セミオーダーメイド治療が実現されることになる。
【0012】
請求項2のロッドの製造方法に係る発明は、請求項1に記載の発明において、過去の多数の症例に基づいて、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状、及び体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状をそれぞれデータとして取得するロッド形状取得工程と、該ロッド形状取得工程にて取得した、多数の、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状を、患者の骨盤の形態角ごとの群に分類する形態角分類工程と、該形態角分類工程にて、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、骨盤の形態角ごとに近似曲線を算出し、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得する近似ロッド形状取得工程と、前記ロッド形状取得工程にて取得した、同一患者に対して、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較して、形態角ごとにロッドの変形量を算出するロッド変形量算出工程と、該ロッド変形量算出工程によって形態角ごとに算出した変形量を、前記近似ロッド形状取得工程において取得した形態角ごとのロッド形状に加味して、形態角ごとに最適な弯曲を有するロッド形状を導き、当該ロッド形状に基いてロッドを製造するロッド製造工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0013】
なお、各患者の脊柱変形の矯正に対する硬軟程度や、手術環境下、例えば、椎体間にLIFケージを設置後の手術環境下の場合、各患者において、形態角が略同じ程度であっても、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較すると、ロッドの変形量が大幅に相違する場合がある。このような事情に鑑み、請求項2の発明では、特に、ロッド形状取得工程にて取得した、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較して、形態角ごとにその変形量を算出するロッド変形量算出工程と、該ロッド変形量算出工程によって形態角ごとに算出した変形量を、近似ロッド形状取得工程において取得した形態角ごとのロッド形状に加味して、形態角ごとに最適なロッド形状を導き、当該ロッド形状に基いてロッドを製造するロッド製造工程と、を備えているので、各患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度を高めることができる。
【0014】
請求項3のロッドの製造方法に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記形態角分類工程と、前記近似ロッド形状取得工程との間に、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、各形態角において、ロッドの、設定された複数の全長ごとの群に分類するロッド長分類工程を備え、前記近似ロッド形状取得工程では、前記形態角分類工程及び前記ロッド長分類工程にて取得した、各形態角において、ロッドの全長ごとの群にそれぞれ分類された多数のロッド形状に基づいて近似曲線を算出して、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得することを特徴とするものである。
請求項3の発明では、ロッド長分類工程では、各形態角において、ロッド長ごとの群に分類してロッド形状を得ているので、さらに各患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度を高めることができる。
【0015】
請求項4のロッドの製造方法に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記変形量は、腰椎前弯角度の差を含むことを特徴とするものである。
請求項4の発明では、少なくとも、ロッドの変曲点から腰椎側の腰椎前弯角(LL)の差を算出することで、変形量を精度良く算出することができる。
【0016】
請求項5のロッドの製造方法に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記ロッド製造工程では、前記形態角が40°~49°の範囲では、最適な弯曲を有するロッド形状が複数設定され、また、前記形態角が50°~59°の範囲でも、最適な弯曲を有するロッド形状が複数設定されることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、各患者の脊柱変形の矯正に対する硬軟程度や、特殊な手術環境下、例えば、椎体間にLIFケージを設置後の手術環境下などを考慮して、最適な弯曲を有するロッド形状を選択することができ、この点からも、各患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度を高めることができる。
【0017】
請求項6のロッドの製造方法に係る発明は、請求項1に記載の発明において、過去の多数の症例に基づいて、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状をデータとして取得するロッド形状取得工程と、該ロッド形状取得工程にて取得した、体内に設置前に曲げ加工された多数のロッド形状を、患者の骨盤の形態角ごとの群に分類する形態角分類工程と、該形態角分類工程にて、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、骨盤の形態角ごとに近似曲線を算出し、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得する近似ロッド形状取得工程と、該近似ロッド形状取得工程にて取得した形態角ごとのロッド形状に基づいてロッドを製造するロッド製造工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の発明では、各患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度について若干の懸念はあるものの、体内にロッドを設置した状態のロッド形状をデータとして取得せず、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較してロッドの変形量を算出しないので、ロッド製造時の弯曲に係る分析を容易にすることができる。
【0019】
請求項7のロッドの製造方法に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記形態角分類工程と、前記近似ロッド形状取得工程との間に、骨盤の形態角ごとの群に分類された多数のロッド形状に基づいて、各形態角において、ロッドの複数の全長ごとの群に分類するロッド長分類工程を備え、前記近似ロッド形状取得工程では、前記形態角分類工程及び前記ロッド長分類工程にて取得した、各形態角において、ロッドの全長ごとの群にそれぞれ分類された多数のロッド形状に基づいて近似曲線を算出して、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得することを特徴とするものである。
請求項7の発明では、ロッド長分類工程では、各形態角において、ロッド長ごとの群に分類してロッド形状を得ているので、請求項6の発明に比べて、各患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度を高めることができる。
【0020】
請求項8の経皮的脊柱安定化システムに係る発明は、体内埋没材を経皮的に体内に挿入して脊柱に装着することで、脊柱を安定化させることが可能な経皮的脊柱安定化システムであって、前記体内埋没材は、請求項1~7に記載された製造方法により製造されたロッドを含むことを特徴とするものである。
請求項8の発明では、経皮的な術式に十分に精通していない術者であっても、経皮的脊柱安定化システムとして採用されるロッドを、各患者にとって最適な弯曲を有するロッド形状を得ることができ、各患者にとって最適な矯正効果を得ることができる。また、経皮的な術式、すなわち脊椎骨組織に付着している筋肉や靭帯類を剥離せずに、脊柱のアライメントを脊柱安定化システムにより矯正しており、ロッドへの負荷が大きく、ロッドの、体内への設置前の弯曲状態に対する設置後の弯曲状態の変形量が大きくなる経皮的な術式に採用されるロッドに対して、最適なロッド形状を得ることができ、各患者にとって最適な矯正結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るロッドの製造方法では、ロッドの弯曲に関し、術者の経験や勘等に依存することなく、各患者にとって最適な矯正効果が得られるロッド形状を有するロッドを製造することができる。また、本発明に係る経皮的脊柱安定化システムでは、経皮的な術式に適し、各患者によって最適な矯正効果が得られるロッド形状を有するロッドを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態に係る経皮的脊柱安定化システム1を示す模式図である。
図2図2は、矢状面上での脊柱のバランスを示す図である。
図3図3は、図2のA部拡大図である。
図4図4は、第1実施形態に係るロッドの製造方法を示すフロー図である。
図5図5(a)は、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状の多数のデータから、形態角分類工程にて形態角30°~39°の範囲に分類され、またロッド長分類工程にてロッドの全長ごとに分類された多数のロッド形状を示し、(b)は、分類された多数のロッド形状から近似曲線(平均曲線)を算出し、当該曲線を有する単一のロッド形状(中心軸線)を示す図である。
図6図6は、脊柱の胸椎T10~仙骨Sまでの角度パラメータを示す図である。
図7図7は、ロッド形状取得工程、形態角分類工程、ロッド長分類工程及び近似ロッド形状取得工程を経て取得した、例えば、形態角(PI)40°~49°全長305mmのロッド形状を示す図である。
図8図8は、形態角(PI)ごとに算出された、T10-L1後弯角、腰椎前弯角(LL)及び下位腰椎前弯角(LLL)である。
図9図9は、パターン1~6において、ロッド形状取得工程にて取得した体内設置後ロッド形状(患者)腰椎前弯角度、患者矯正目標腰椎前弯角度、ロッド変形量算出工程にて取得した変形量、ロッド製造工程にて取得した最終ロッド形状腰椎前弯角度を示す図である。
図10図10は、パターン1~6において、最終的に算出したロッド形状(中心軸線)を示している。
図11図11は、第2実施形態に係るロッドの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図1図11に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係る経皮的脊柱安定化システム1は、成人脊柱変形症であって、例えば、変性後側弯症や、腰椎すべり症、転位性脊椎腫瘍等様々な外科的治療に採用されるものである。図1に示すように、本実施形態に係る経皮的脊柱安定化システム1は、脊柱の各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれる複数の椎弓根スクリュ2と、脊柱の頭尾方向に沿って配置される各椎弓根スクリュ2の頭部2Aに連結されるロッド3と、を備え、脊柱変形を矯正して安定化させるものである。
【0024】
本実施形態に係る経皮的脊柱安定化システム1は、患者の背中から経皮的に(数個の小切開孔から)椎弓根スクリュ2及びロッド3等を体内に挿入して各椎骨に固定するものである。当該ロッド3が、本実施形態に係る製造方法にて製造される。なお、本実施形態では、経皮的脊柱安定化システム1に加え、隣接する腰椎間にLIFケージ4が介装されている。なお、LIFケージ4は、側方経路腰椎椎体間固定術(LLIF)に採用されるケージである。図1では、LIFケージ4は3箇所介装されている。
【0025】
そして、本発明の第1及び第2実施形態に係るロッド3の製造方法では、過去の多数の症例に基づいて、患者の骨盤の形態角(PI)ごとに、最適な弯曲を有するロッド形状をそれぞれ導き、当該ロッド形状に基づきロッド3を製造している。なお、上述しているように、図2及び図3に示す骨盤の形態角(PI)は、個人固有の角度であって、当該形態角(PI)を基準に、解剖学的に正常な脊柱のアライメント(椎骨の配列)が構築されることになる。すなわち、形態角(PI)の違いによって、胸椎の後弯角度、腰椎の前弯角度が異なり、骨盤の形態に応じて、胸椎及び腰椎がバランスをとった結果となる。
【0026】
まず、第1実施形態に係るロッド3の製造方法を説明する。第1実施形態に係るロッド3の製造方法は、図4に示すように、ロッド形状取得工程S1→形態角分類工程S2→ロッド長分類工程S3→近似ロッド形状取得工程S4→ロッド変形量算出工程S5→ロッド製造工程S6をこの順序で実施する。まず、ロッド形状取得工程S1では、過去の多数の症例に基づいて、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状、及び体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状をそれぞれデータとして取得する。
【0027】
ロッド形状取得工程S1において、まず、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状のデータを取得する。具体的には、設置前に曲げ加工されたロッド3の画像をCAD(Computer Aided Design)に読み込む。続いて、CADに読み込んだロッド3の中心軸線に沿って所定間隔で手動にて複数プロットする。続いて、複数プロットした各座標を計測して、その各座標を基に近似曲線(3次式)を算出する。続いて、当該近似曲線を中心軸線としたロッド形状(2次元)を算出する。続いて、データとして蓄積した曲げ加工された多数のロッド形状に対して、それぞれ変曲点の座標を算出する。
【0028】
また、ロッド形状取得工程S1において、次に、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状のデータを取得する。具体的に、ロッド3を含む椎弓根スクリュ2が患者の脊柱に装着された状態のX線画像をCADに読み込む。続いて、ロッド3と、椎弓根スクリュ2の頭部2Aとの連結部分、詳しくは、ロッド3と椎弓根スクリュ2の頭部2Aとが重なった部位の中心位置を手動にて複数プロットする(椎弓根スクリュ2と同じ数量)。続いて、複数プロットした各座標を計測して、その各座標を基に近似曲線(3次式)を算出する。続いて、当該近似曲線を中心軸線としたロッド形状(2次元)を算出する。続いて、データとして蓄積した、体内に設置後の多数のロッド形状に対して、それぞれ変曲点の座標を算出する。
【0029】
次に、形態角分類工程S2を実施する。形態角分類工程S2では、ロッド形状取得工程S1にて取得した、多数の、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状を、患者の骨盤の形態角(PI)ごとの群に分類する。骨盤の形態角(PI)は、例えば、30°~39°の範囲、40°~49°の範囲、50°~59°の範囲、60°以上の範囲の4種類に設定される。次に、ロッド長分類工程S3を実施する。ロッド長分類工程S3では、形態角(PI)ごと(上述した4種類)に、ロッド3の、設定された全長ごとの群に分類する。ロッド3の全長は、例えば、285mm、295mm、305mm、320mmの4種類に設定される。なお、本実施形態では、ロッド3の全長が、285mm、295mm、305mm、320mmの4種類に設定されているが、この4種類に限定されることはない。
【0030】
詳しく、そのロッド長によって分類する方法を説明する。すなわち、X線画像にて取得したロッド形状は、ロッド3と、各椎弓根スクリュ2の頭部2Aとの連結部位を複数プロットして得たものであり、そのロッド形状の全長が、設定された各ロッド全長に沿うようにして適宜ロッド形状をそれぞれ算出する。例えば、X線画像から取得したロッド形状の全長が275mm程度であれば、当該ロッド形状をその全長が285mm、295mm、305mm、320mmになるように適宜相似比により拡大させて、全長285mm、295mm、305mm、320mmのロッド形状をそれぞれ算出する。また、例えば、X線画像から取得したロッド形状の全長が300mm程度であれば、当該ロッド形状をその全長が285mm、295mm、305mm、320mmになるように適宜相似比により拡縮させて、全長285mm、295mm、305mm、320mmのロッド形状をそれぞれ算出する。このように、X線画像から得た全てのロッド形状の全長を285mm、295mm、305mm、320mmの4種類の全長になるように適宜相似比により拡縮させることで、X線画像から得た全てのロッド形状を4種類の全長にそれぞれ分類している。
【0031】
そして、ロッド形状取得工程S1にて取得した、多数の、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状は、形態角(PI)ごとに4種類、さらにロッド3の全長ごとに4種類、全16種類に分類される。なお、図5(a)では、X線画像にて取得したロッド形状(中心軸線)が、形態角(PI)30°~39°の範囲において、ロッド3の全長4種類(285mm、295mm、305mm、320mm)に分類された多数のロッド形状(中心軸線)が図示されている。
【0032】
次に、近似ロッド形状取得工程S4を実施する。近似ロッド形状取得工程S4では、ロッド形状取得工程S1、及び形態角分類工程S2及びロッド長分類工程S3にて取得した、全16種類ごとに分類された多数のロッド形状(中心軸線)に基づいて、全16種類ごとにロッド形状の近似曲線(平均曲線)を算出し、全16種類ごとに当該曲線を有する単一のロッド形状を取得している。図5(b)では、形態角(PI)30°~39°の範囲において、ロッド3の全長4種類(285mm、295mm、305mm、320mm)に分類された多数のロッド形状(中心軸線)に基づいて、単一のロッド形状(中心軸線)が図示されている。要するに、ロッド形状取得工程S1、形態角分類工程S2、ロッド長分類工程S3及び近似ロッド形状取得工程S4を経て、全16種類ごとに単一のロッド形状が導かれる。
【0033】
なお、図7には、ロッド形状取得工程S1、形態角分類工程S2、ロッド長分類工程S3及び近似ロッド形状取得工程S4を経て取得した、例えば、形態角(PI)40°~49°全長305mmのロッド形状を示している。なお、全16種類ごとに算出されたロッド形状に対して、その変曲点の座標(位置)を算出しておく。また、全16種類ごとに算出されたロッド形状に対して、X線画像を基に、特有の算出方法を用いることで、T10-L1後弯角、腰椎前弯角(LL)及び下位腰椎前弯角(LLL)等を算出しておく。なお、図8は、近似ロッド形状取得工程S4にて算出された、形態角(PI)ごとのロッド形状に対する、T10-L1後弯角、腰椎前弯角(LL)、下位腰椎前弯角(LLL)及び変曲点の位置を示している。なお、近似ロッド形状取得工程S4では、形態角(PI)ごと、及びロッド長ごとの全16種類のロッド形状が算出されているが、形態角(PI)ごとの、10-L1後弯角、腰椎前弯角(LL)及び下位腰椎前弯角(LLL)及び変曲点の位置は、ロッド長(4種類)に関わらず一定である。
【0034】
次に、ロッド変形量算出工程S5を実施する。ロッド変形量算出工程S5は、ロッド形状取得工程S1にて取得した、同一患者に対して、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較して、形態角(PI)ごとにロッド3の変形量を算出する。具体的には、ロッド形状取得工程S1にて取得済みである、同一の患者において、X線画像における体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状(図に描いたもの)とを、CAD上で互いの変曲点が一致するように重ね合わせる。続いて、CAD上において、X線画像における体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とにおいて、その変形量として腰椎前弯角(LL)(図6参照)の差を算出する。この変形量を図9に示している。この変形量は、形態角(PI)ごと、すなわち図9のパターン1~6では、腰椎前弯角(LL)の差として5°~15°で推移している。
【0035】
次に、ロッド製造工程S6を実施する。ロッド製造工程S6では、ロッド変形量算出工程S5によって、形態角(PI)ごとに算出した変形量(腰椎前弯角(LL)の差)を、近似ロッド形状取得工程S4において取得した形態角(PI)ごと(及びロッド長ごと)に算出した単一のロッド形状に加味して、形態角(PI)ごと(及びロッド長ごと)にロッド形状を導き、当該ロッド形状に基いてロッド3を製造する。詳しくは、図9を参照して、パターン1(形態角(PI):30°~39°)では、変形量が10°であるので、目標患者矯正後の腰椎前弯角(LL)35°に変形量10°を加算して、最終ロッド形状の腰椎前弯角(LL)を45°とする。そして、近似ロッド形状取得工程S4にて取得した、形態角(PI)30°~39°の範囲における、全長285mm、295mm、305mm、320mm全てのロッド形状において、その腰椎前弯角(LL)を45°に設定する。パターン1(形態角(PI):30°~39°)では、最終ロッド形状の変曲点は第2腰椎(L2)の位置となる。
【0036】
また、パターン2(形態角(PI):40°~49°)では、変形量が5°であるので、目標患者矯正後の腰椎前弯角(LL)45°に変形量5°を加算して、最終ロッド形状の腰椎前弯角(LL)を50°とする。そして、近似ロッド形状取得工程S4にて取得した、形態角(PI)40°~49°の範囲における、全長285mm、295mm、305mm、320mm全てのロッド形状において、その腰椎前弯角(LL)を50°に設定する。さらに、パターン4(形態角(PI):40°~49°)では、変形量が15°であるので、目標患者矯正後の腰椎前弯角(LL)45°に変形量15°を加算して、最終ロッド形状の腰椎前弯角(LL)を60°とする。そして、近似ロッド形状取得工程S4にて取得した、形態角(PI)40°~49°の範囲における、全長285mm、295mm、305mm、320mm全てのロッド形状において、その腰椎前弯角(LL)を60°に設定する。パターン2及び4(形態角(PI):40°~49°)では、最終ロッド形状の変曲点は第1腰椎(L1)の位置となる。
【0037】
なお、パターン2及び4では、同じ形態角(PI)40°~49°において、変形量が5°と15°とに相違することから、最終のロッド形状の腰椎前弯角(LL°)を50°または60°に設定することになるが、これらは、各患者の脊柱変形の矯正に対する硬軟程度や、手術環境下、例えば、椎体間にLIFケージ4を設置後の手術環境下の場合などの事情に鑑みて適宜設定したものになる。そこで、形態角(PI)40°~49°の範囲において、例えば、患者の脊柱変形の矯正に対して硬い(矯正しづらい)と判断された場合などには、パターン4の最終ロッド形状が採用される。
【0038】
さらに、パターン3(形態角(PI):50°~59°)では、変形量が5°であるので、目標患者矯正後の腰椎前弯角(LL)50°に変形量5°を加算して、最終ロッド形状の腰椎前弯角(LL)を55°とする。そして、近似ロッド形状取得工程S4にて取得した、形態角(PI)50°~59°の範囲における、全長285mm、295mm、305mm、320mm全てのロッド形状において、その腰椎前弯角(LL)を55°に設定する。さらにまた、パターン5(形態角(PI):50°~59°)では、変形量が10°(または15°)であるので、目標患者矯正後の腰椎前弯角(LL)55°(または50°)に変形量10°(または15°)を加算して、最終ロッド形状の腰椎前弯角(LL)を65°とする。そして、近似ロッド形状取得工程S4にて取得した、形態角(PI)50°~59°の範囲における、全長285mm、295mm、305mm、320mm全てのロッド形状において、その腰椎前弯角(LL)を65°に設定する。パターン3及び5(形態角(PI):50°~59°)では、最終ロッド形状の変曲点は第1腰椎(L1)の位置となる。
【0039】
なお、パターン3及び5では、同じ形態角(PI)50°~59°において、変形量が5°と10°とに相違することから、最終のロッド形状の腰椎前弯角(LL)を55°または65°に設定することになるが、これらは、各患者の脊柱変形の矯正に対する硬軟程度や、手術環境下、例えば、椎体間にLIFケージ4を設置後の手術環境下の場合などの事情に鑑みて適宜設定したものになる。そこで、形態角(PI)50°~59°の範囲において、例えば、患者の脊柱変形の矯正に対して硬い(矯正しづらい)と判断された場合などには、パターン5の最終ロッド形状が採用される。
【0040】
さらにまた、パターン6(形態角(PI):60°以上)では、変形量が10°であるので、目標患者矯正後の腰椎前弯角(LL)60°に変形量10°を加算して、最終ロッド形状の腰椎前弯角(LL)を70°とする。そして、近似ロッド形状取得工程S4にて取得した、形態角(PI)60°以上における、全長285mm、295mm、305mm、320mm全てのロッド形状において、その腰椎前弯角(LL)を70°に設定する。パターン6(形態角(PI):60°以上)では、最終ロッド形状の変曲点は第1腰椎(L1)の位置となる。図10には、パターン1~6において、最終的に算出したロッド形状(中心軸線)を示している。なお、本実施形態では、パターン1~6において、近似ロッド形状取得工程S4にて算出された全16種類(実質的には形態角(PI)相違による4種類)のロッド形状の腰椎前弯角(LL)、すなわち図9の体内設置後ロッド形状(患者)腰椎前弯角LL(°)の欄の値(パターン1~6の値)は参考値であり、最終ロッド形状を算出する際に直接的に考慮されない。
【0041】
続いて、ロッド製造工程S6では、上述したように最終的に算出されたロッド形状に基づいてロッド3を製造する。例えば、主な製造工程として、機械加工によるストレートロッドの加工後、型によるロッド3の曲げ加工した(プレス加工した)後、アニール処理(アニーリングまたは焼鈍ともいう)を経てロッド3を製造する。アニール処理(熱処理)することで,曲げ加工時にロッド3に発生する残留応力を除去することができる。なお.生体親和性を有する材料粉末、例えば、チタン合金粉末またはコバルトクロム合金粉末を電子ビーム積層造形法により積層成形してロッド3を製造してもよい。
【0042】
なお、第1実施形態では、ロッド変形量算出工程S5にて、CAD上において、X線画像における体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較して得たロッド3の変形量を、腰椎前弯角(LL)の差にて算出したが、変形量の精度を上げるために、変形量として、腰椎前弯角(LL)の差と、ロッド3の変曲点から胸椎側のT10-L1後弯角の差とを考慮して算出しても良い。また、本実施形態では、変形量の評価指標として、腰椎前弯角(LL)の差や、T10-L1後弯角の差を採用しているが、他の評価指標を採用してもよい。
【0043】
また、第1実施形態に係るロッド3の製造方法では、ロッド長分類工程S3を備え、取り扱い(販売戦略等)の観点から最良の形態であるが、最終ロッド形状を設定する過程として、ロッド長分類工程3を必ずしも備える必要はない。すなわち、近似ロッド形状取得工程S4にて算出された、形態角(PI)ごとの、T10-L1後弯角、腰椎前弯角(LL)及び下位腰椎前弯角(LLL)は、ロッド長(4種類)に関わらず一定であり、また、ロッド製造工程S6では、最終ロッド形状を設定する際、パターン1~6(形態角PIの相違)に対して、腰椎前弯角(LL)がそれぞれ相違されており、ロッド長は関与しないので、ロッド長分類工程S3を必ずしも備える必要はない。
【0044】
そして、以上説明した第1実施形態に係るロッド3の製造方法によれば、過去の多数の症例に基づいて、患者の骨盤の形態角(PI)ごとに、最適な弯曲を有するロッド形状をそれぞれ導き、当該ロッド形状に基づきロッド3を製造するので、術者の経験や勘等に依存することなく、経皮的な術式において経験が浅くても、このロッド3を脊柱変形に対して矯正、固定することで、正常な脊柱のアライメントに近づくように矯正することができ、各患者にとって最適な矯正効果を得ることができる。
【0045】
また、第1実施形態に係るロッド3の製造方法によれば、特に、ロッド変形量算出工程S5を備え、当該ロッド変形量算出工程S5による算出結果を、ロッド製造工程S6における最終のロッド形状に反映させているので、各患者の脊柱変形の矯正に対する硬軟程度や、手術環境下、例えば、椎体間にLIFケージ4を設置後の手術環境下の場合、各患者(形態角(PI)が同じであっても)にとって最適なロッド形状を得ることができる。
【0046】
さらに、第1実施形態に係るロッド3の製造方法では、ロッド長分類工程S3を備え、ロッド長分類工程S3では、各形態角(PI)において、ロッド長ごとの群に分類してロッド形状を得ているので、さらに各患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度を高めることができる。
【0047】
さらにまた、第1実施形態に係るロッド3の製造方法では、ロッド製造工程S6において、患者の形態角(PI)が40°~49°の範囲では、最適な弯曲を有するロッド形状が2タイプ設定され、また、形態角(PI)が50°~59°の範囲でも、最適な弯曲を有するロッド形状が2タイプ設定される。これにより、患者の形態角(PI)が同じであっても、各患者の脊柱変形の矯正に対する硬軟程度や、特殊な手術環境下、例えば、椎体間にLIFケージ4を設置後の手術環境下などをから各患者にとって最適なロッド形状を選択することができ、この点からも、各患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度を高めることができる。
【0048】
さらにまた、第1実施形態に係る製造方法にて製造されたロッド3は、経皮的脊柱安定化システム1に最適である。すなわち、経皮的な術式(低侵襲手術)と、背中を大きく切開する術式とでは、ロッド3への負荷が異なるためにロッド3の変形量が変わり、背中を大きく切開する術式にて経験したロッド3の曲げ具合は全く通用しないためである。しかも、経皮的な術式では、患者の体内ではロッド3の弯曲を微調整することができないので、本実施形態に係る製造方法にて得られる、患者にとって最適なロッド形状により製造されたロッド3が最適となる。しかしながら、背中を大きく切開する術式においても、本実施形態に係るロッドの製造方法を採用し、図9に相当する分析結果を得て最終ロッド形状を設定することができる。この最終ロッド形状は、あくまでも背中を切開する術式に対応するものであって、経皮的な術式には対応することはできない。
【0049】
次に、第2実施形態に係るロッド3の製造方法を説明する。第2実施形態に係るロッド3の製造方法は、図11に示すように、ロッド形状取得工程S101→形態角分類工程S102→ロッド長分類工程S103→近似ロッド形状取得工程S104→ロッド製造工程S106をこの順序で実施する。ロッド形状取得工程S101では、過去の多数の症例に基づいて、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状だけをデータとして取得する。この取得方法は、第1実施形態に係るロッド3の製造方法と同じであるので、その説明を省略する。
【0050】
また、形態角分類工程S102では、ロッド形状取得工程S101にて取得した、多数の、体内に設置前の曲げ加工されたロッド形状を、患者の骨盤の形態角(PI)ごとの群に分類する。第1実施形態に係るロッド3の製造方法と同様に、骨盤の形態角(PI)は、例えば、30°~39°の範囲、40°~49°の範囲、50°~59°の範囲、60°以上の4種類にて設定される。次に、ロッド長分類工程S103を実施する。ロッド長分類工程S103では、各形態角(PI)において(上述した4種類)に、ロッド3の全長ごとの群に分類する。ロッド3の全長は、例えば、285mm、295mm、305mm、320mmの4種類である。
【0051】
次に、近似ロッド形状取得工程S104を実施する。近似ロッド形状取得工程S104では、形態角分類工程S102及びロッド長分類工程S103にて取得した、各形態角(PI)において、ロッド3の全長ごとの群にそれぞれ分類された多数のロッド形状(中心軸線)に基づいて近似曲線(平均曲線)を算出して、当該曲線を有する単一のロッド形状を取得する。
次に、ロッド製造工程S106を実施する。ロッド製造工程S106では、近似ロッド形状取得工程S104で取得した、各形態角(PI)において、ロッド3の全長ごとのロッド形状に基づいてロッド3を製造する。このようにして設定されたロッド形状を有するロッド3は、第1実施形態と同様に、例えば、主な製造工程として、機械加工によるストレートロッドの加工後、型によるロッド3の曲げ加工した(プレス加工した)後、アニール処理(アニーリングまたは焼鈍ともいう)を経て製造される。なお.生体親和性を有する材料粉末、例えば、チタン合金粉末またはコバルトクロム合金粉末を電子ビーム積層造形法により積層成形してロッド3を製造してもよい。
【0052】
なお、第2実施形態に係るロッド3の製造方法においても、ロッド長分類工程S103を備え、取り扱い(販売戦略等)の観点から最良の形態であるが、ロッド長分類工程S103を必ずしも備える必要はない。すなわち、患者にとって最適なロッド形状となる評価指標は、形態角(PI)が主であり、ロッド長は付加的なものであるので、ロッド長分類工程S103を必ずしも備える必要はない。
【0053】
そして、以上説明した第2実施形態に係るロッド3の製造方法では、経皮的な術式が採用される患者にとって最適なロッド形状を得るべくその精度について若干の懸念はあるものの、体内にロッド3を設置した状態のロッド形状をデータとして取得せず、体内に設置された状態で弯曲したロッド形状と、体内に設置前に曲げ加工されたロッド形状とを比較してロッド3の変形量を算出しないので、ロッド製造時の弯曲に係る分析を大幅に簡素化することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 経皮的脊柱安定化システム,3 ロッド
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