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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076206
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電源コンセント
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/66 20060101AFI20240529BHJP
   H01R 13/713 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H01R13/66
H01R13/713
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187654
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】下岡 達矢
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和記
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB21
5E021FC13
5E021KA09
5E021KA11
5E021LA01
5E021MA19
5E021MB03
(57)【要約】
【課題】 コンセント内部での接続不良を温度センサを用いず、簡易な構成で検出可能な電源コンセント装置を提供する。
【解決手段】 プラグ挿入口2に挿入された電源プラグ11と、刃受けバネ7との接続に異常が発生したら、それを検出する異常検出回路12を有している。プラグ挿入口2と刃受けバネ7との間に配置されて、プラグ挿入口2に挿入された栓刃11aに接触する一方で、刃受けバネ7とは絶縁されている接触金具8を有し、異常検出回路12は刃受けバネ7と接触金具8との間の電位差を計測して、計測した電位差が所定値以上であったら、異常発生と判断する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグ挿入口に挿入された電源プラグの栓刃と、刃受けバネとの接続に異常が発生したら、それを検出する異常検出回路を備えた電源コンセントであって、
弾性を有して前記栓刃と複数の接触部を備え、前記刃受けバネとは絶縁されている接触金具を有し、
前記異常検出回路は、前記刃受けバネと前記接触金具との間の電位差を計測して、計測した電位差が所定値以上であったら、異常発生と判断することを特徴とする電源コンセント。
【請求項2】
前記接触金具は、前記プラグ挿入口と前記刃受けバネとの間に配置されることを特徴とする請求項1記載の電源コンセント。
【請求項3】
前記接触金具は、前記栓刃を挟持する挟持片を有し、
前記挟持片の幅は、前記プラグ挿入口の長手方向の幅より広く形成されて成ることを特徴とする請求項2記載の電源コンセント。
【請求項4】
警報を発報する発報部を備え、
前記異常検出回路が異常発生と判断したら、前記発報部が発報動作することを特徴とする請求項3記載の電源コンセント。
【請求項5】
前記刃受けバネに電源を供給する電路を遮断する遮断手段を有し、
前記異常検出回路が異常発生と判断したら、前記遮断手段が前記電路を遮断することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電源コンセント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源コンセントに関し、詳しくは接続された電源プラグの接続不良を検知できる電源コンセントに関する。
【背景技術】
【0002】
電源コンセントで発生する異常発熱は、接続した電源プラグの栓刃間において発生するトラッキング放電による外部での発熱と、電源プラグの差し込み不良や、刃受けバネの経年劣化による緩み等による接続不良で発生する内部での発熱の2種類に分けることができる。トラッキング放電による発熱の対策は、種々提案されており、製品化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、電源コンセントの内部で発生する発熱の対策としては、温度を計測して必要に応じて電源を遮断するものがある。例えば特許文献2では、電源コンセントの刃受けバネ(刃受け部)に温度センサを配置して、検出温度が所定温度を超えたら刃受けバネへの電力供給を遮断した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-351207号公報
【特許文献2】特許第7033762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電源コンセント内部での接続不良(栓刃と刃受けバネの間の接続不良)を検出する技術は、温度センサを必要とするのに加え、温度を算出して所定値と比較判定する回路を必要とするため、回路構成が複雑であった。加えて、気温等の周囲の温度の影響を受け易く、誤動作する場合があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、コンセント内部での接続不良を温度センサを用いず、簡易な構成で検出可能な電源コンセントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、本発明は、プラグ挿入口に挿入された電源プラグの栓刃と、刃受けバネとの接続に異常が発生したら、それを検出する異常検出回路を備えた電源コンセントであって、弾性を有して栓刃と複数の接触部を備え、刃受けバネとは絶縁されている接触金具を有し、異常検出回路は、刃受けバネと接触金具との間の電位差を計測して、計測した電位差が所定値以上であったら、異常発生と判断することを特徴とする。
この構成によれば、刃受けバネと接触金具との間で所定値以上の電位差が発生したら、即ち電源コンセントと電源プラグの間で所定値以上の電圧降下が発生したら、異常検出回路が異常発生と判断する。よって、電源プラグの接続不良を温度センサを使用しない簡易な構成で検知できる。そして、接触金具は弾性を有して複数の接触部を備えるため、栓刃との接触が刃受けバネより先に不安定になる事態を防ぐことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、上記構成において、接触金具は、プラグ挿入口と刃受けバネとの間に配置されることを特徴とする。
この構成によれば、刃受けバネ奥部の構造を変更する必要がないため、簡易な設計変更で接触金具を取り付けることができる。
【0009】
本発明の別の態様は、上記構成において、接触金具は、栓刃を挟持する挟持片を有し、
挟持片の幅は、プラグ挿入口の長手方向の幅より広く形成されて成ることを特徴とする請求項2記載の電源コンセント。
この構成によれば、接触金具の幅は、プラグ挿入口の長手方向の幅より広いため、プラグがどのような角度でコンセントに接続されても、電源プラグは接触金具に確実に接触する。
【0010】
本発明の別の態様は、上記構成において、警報を発報する発報部を備え、
異常検出回路が異常発生と判断したら、発報部が発報動作することを特徴とする請求項3記載の電源コンセント。
この構成によれば、接続不良を検知したら、発報報知するため、認識し易い。
【0011】
本発明の別の態様は、上記構成において、刃受けバネに電源を供給する電路を遮断する遮断手段を有し、
異常検出回路が異常発生と判断したら、遮断手段が電路を遮断することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電源コンセント。
この構成によれば、刃受けバネと接触金具との間に電位差が発生したら電路が遮断されるため、接続不良により電源コンセントが発熱するのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、刃受けバネと接触金具との間で所定値以上の電位差が発生したら、即ち電源コンセントと電源プラグの間で所定値以上の電圧降下が発生したら、異常発生と判断する。よって、電源プラグの接続不良を温度センサを使用しない簡易な構成で検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る電源コンセントの一例を示す正面図である。
図2】A-A線端面図である。
図3】接触金具の斜視図である。
図4】接触金具とプラグ挿入口の関係を示す説明図である。
図5】異常検出回路の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,2は本発明に係る電源コンセントの一例を示し、図1は正面図、図2はA-A線端面図である。電源コンセント1は、電源プラグ11(図5に示す)を接続するプラグ挿入口2、及び電源コンセント1の出力をオン/オフする操作レバー3等を備えた前面板4aと、各種構成部材を収容する箱状の本体ケース4bとでハウジング4が形成され、本体ケース4bは壁面に埋設された図示しないスイッチボックスに収容されるよう構成されている。
また、5は接続された電源プラグ11の栓刃11a(図5に示す)の間で発生するトラッキング放電を検知するためのトラッキング検知孔、6は警報を発するブザーを備えた発報部である。
【0015】
尚、図1に示す電源コンセント1は、電源プラグ11を接続するプラグ挿入口2を2つ有し、2つの電源プラグ11の接続を可能としている。また、双方にアース端子9を備えている。
【0016】
そして図2に示すように、ハウジング4内には、プラグ挿入口2から挿入された電源プラグ11の栓刃11aを挟持する刃受けバネ7が配置され、刃受けバネ7の前方でありプラグ挿入口2と刃受けバネ7の間には、挿入された栓刃11aに接触する接触金具8が配置されている。
また、12は後述する異常検出回路、13は刃受けバネ7に接続された電路L(図5に示す)を遮断する遮断回路を示している。異常検出回路12は、刃受けバネ7と電源プラグ11との接続異常を検知する回路であり、またトラッキング放電を検出する回路である。遮断回路13は、電路Lと刃受けバネ7との接続を遮断する回路である。
尚、操作レバー3によっても電路Lの遮断/接続は実施される。
【0017】
刃受けバネ7、接触金具8は、金属板を折り曲げて形成されている。刃受けバネ7は、挿入された電源プラグ11の栓刃11aを挟持するための挟持片7aを有している。挟持片7aの挟持部は、栓刃11aの厚みより狭く形成され、挿入された栓刃11aを確実に挟持して電気的接続を実施する。
【0018】
図3,4は、接触金具8の説明図であり、図3は斜視図、図4がプラグ挿入口2との関係を示す正面説明図である。接触金具8は、コ字状に折り曲げ形成され、刃受けバネ7と同様に栓刃11aを挟持するよう構成されている。即ち、2点の接触部を有している。
詳しくは、前面板4aのプラグ挿入口2が形成された部位の裏面に密着する平坦な密着片8aを中央に有している。そして、その両端が後方にコ字状に折り曲げられ、折り曲げた先が更に内側に折り曲げられて弾性を備えた挟持片8bを形成している。形成された挟持片8bは対峙して配置され、栓刃11aを挟持する挟持部14を形成している。
【0019】
密着片8aには、プラグ挿入口2より大きく開設された栓刃挿通孔15を有し、プラグ挿入口2から挿入された栓刃11aは、栓刃挿通孔15を通過して挟持部14に挟持される。更に挿入された栓刃11aは、刃受けバネ7に挟持され接続される。
また、挟持部14の長手方向の幅W2は、図4に示すようにプラグ挿入口2の長手方向の幅W1より広く形成されており、栓刃11aの挿入角度に依らず確実に栓刃11aと接触するよう構成されている。
【0020】
図5は異常検出回路12の概略構成図を示し、電源プラグ11を電源コンセント1に接続した状態を示している。図5に示すように、異常検出回路12は、刃受けバネ7と接触金具8との間の電位差を検出する電圧検出部12a、検出した電位差が所定値を超えたら異常発生と判断する判定部12b等で構成されている。
【0021】
電圧検出部12aは個々の刃受けバネ7と接触金具8との間の電位差を計測し、判定部12bに電位差情報を通知する。判定部12bは、予め設定された閾値を記憶している記憶部12cを有し、電圧検出部12aが計測した電位差が閾値以上の数値であったら異常発生と判断して、異常発生信号を出力する。
遮断回路13は、商用電源Pから刃受けバネ7に至る電路L上に設けられている接点部17を開操作し、電路Lを遮断する。尚、この遮断回路13と接点部17とで遮断手段を構成している。
【0022】
そして、判定部12bが出力する異常発生信号を受けて、発報部5は報知動作し、遮断回路13が遮断動作する。
【0023】
尚、図1の電源コンセント1では、刃受けバネ7と接触金具8の組は4組あるため、電圧検出部12aはこの4組に対して設けられている。また、異常検出回路12の電源は、電路Lの遮断部位より電源側の電路Lから供給(図示せず)されており、遮断回路13が遮断動作しても、異常検出回路12、発報部5には継続して電源が供給される。
【0024】
異常検出回路12の接続不良検出(異常発生の検出)は、以下のように実施される。電源プラグ11が接続されなければ、刃受けバネ7と接触金具8とは絶縁状態にある。そのため、刃受けバネ7は電路Lを介して商用電源等が接続されている一方で、接触金具8は電気的に浮いた状態にあり、両者の間に電位差は発生しない。よって、判定部12bが異常発生と判断することはない。
この状態から、電源プラグ11が接続されて、栓刃11aが刃受けバネ7に接続されると、接触金具8も栓刃11aに接続された状態となり、刃受けバネ7と接触金具8とは接続状態となる。刃受けバネ7と接触金具8との間に接触抵抗が有っても、電源プラグ11に電流が流れなければ、両者の間の電位差は0Vとなり、判定部12bが異常発生と判断することはない。
【0025】
そして、電源プラグ11に電流が流れると、刃受けバネ7と接触金具8との間の接触抵抗により、両者の間に僅かな電位差が発生する。この電位差は正常な接続状態では小さい(所定値に達しない)ため、異常発生と判断しない。
ところが、刃受けバネ7の緩み等で接触抵抗が大きくなると、電圧降下が大きくなる。この値が、記憶部12cに記憶されている閾値を超えると、判定部12bが異常発生と判断する。
【0026】
判定部12bは、異常発生と判断すると異常発生信号を出力し、この信号を受けて発報部5でブザーが起動し、ブザー音が一定時間鳴動する。また、遮断回路13は異常発生信号を受けて接点部17を開操作し、電路Lが遮断される。
尚、遮断された際に操作レバー3はオフ位置に移動するが、操作レバー3のオン操作で復帰させることができ、電路Lは刃受けバネ7に接続される。
【0027】
このように、刃受けバネ7と接触金具8との間で所定値以上の電位差が発生したら、即ち電源コンセント1と電源プラグ11の間で所定値以上の電圧降下が発生したら、異常検出回路12が異常発生と判断する。よって、電源プラグ1の接続不良を温度センサを使用しない簡易な構成で検知できる。そして、接触金具は弾性を有して2点の接触部を備えるため、栓刃との接触が刃受けバネより先に不安定になる事態を防ぐことができる。
また、接触金具8はプラグ挿入口2と刃受けバネ7の間に配置されるため、刃受けバネ7奥部の構造を変更する必要がなく、簡易な設計変更で接触金具8を取り付けることができる。
更に、接触金具8の幅は、プラグ挿入口2の長手方向の幅より広いため、電源プラグ11がどのような角度で電源コンセント1に接続されても、電源プラグ11は接触金具8に確実に接触する。
加えて、接続不良を検知したら、発報部5が報知動作するため異常発生を認識し易いし、電路Lが遮断されるため接続不良により電源コンセント1が発熱するのを防止できる。
【0028】
尚、上記実施形態では、壁面に埋設されたスイッチボックスに取り付ける電源コンセントに関して説明したが、テーブルタップ等の延長コードを備えて引き回しできる電源コンセントに対しても適用できるものである。
【符号の説明】
【0029】
1・・電源コンセント、2・・プラグ挿入口、3・・操作レバー、4・・ケース、6・・発報部、7・・刃受けバネ、8・・接触金具、8b・・挟持片、11・・電源プラグ、11a・・栓刃、12・・異常検出回路、12b・・判定部、12a・・電圧検出部、13・・遮断回路(遮断手段)、14・・挟持部、17・・接点部(遮断手段)、L・・電路。
図1
図2
図3
図4
図5