(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076208
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電極研磨装置及び切削具
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20240529BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20240529BHJP
B23B 5/16 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B23K11/30 350
B23K11/11 540
B23B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187659
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 登
【テーマコード(参考)】
3C045
4E165
【Fターム(参考)】
3C045CA06
3C045CA30
4E165BB32
(57)【要約】
【課題】スポット溶接用電極の先端部の研磨性を向上させることができる電極研磨装置及び切削具を提供する。
【解決手段】駆動モータ62により回転駆動してスポット溶接用の電極72の表面を研磨する切削具10を備えた電極研磨装置1において、前記切削具は、円盤状に形成され、中央部に電極受け穴24を有し、該電極受け穴の内壁部に前記電極の周面部表面を研磨する略円弧状の周面部研磨ブレード26を備えたホルダ20Aと、前記ホルダに積層配置され、前記ホルダと対向する表面に、前記電極受け穴から露出する前記電極の先端部表面を研磨する先端部研磨ブレード55を有する先端部用研磨盤50と、を備え、前記ホルダは、前記電極受け穴に受け止められた前記電極の中心を回転中心として回転し、前記先端部用研磨盤は、前記ホルダの前記回転中心から偏心した回転軸Qまわりに回転することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータにより回転駆動してスポット溶接用の電極の表面を研磨する切削具を備えた電極研磨装置において、
前記切削具は、
円盤状に形成され、中央部に電極受け穴を有し、該電極受け穴の内壁部に前記電極の周面部表面を研磨する略円弧状の周面部研磨ブレードを備えたホルダと、
前記ホルダに積層配置され、前記ホルダと対向する表面に、前記電極受け穴から露出する前記電極の先端部表面を研磨する先端部研磨ブレードを有する先端部用研磨盤と、
を備え、
前記ホルダは、前記電極受け穴に受け止められた前記電極の中心を回転中心として回転し、
前記先端部用研磨盤は、前記ホルダの前記回転中心から偏心した回転軸まわりに回転することを特徴とする電極研磨装置。
【請求項2】
前記切削具は、前記ホルダを一対備え、
前記先端部用研磨盤は、両面に前記先端部研磨ブレードを備え、
一対の前記ホルダは、前記先端部用研磨盤の両面に積層配置されたことを特徴とする請求項1に記載の電極研磨装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記先端部用研磨盤と対向する面に円形の凹部を有し、
前記先端部用研磨盤は、外周面に第1のギヤ歯を有するとともに、前記ホルダと対向する面に、前記凹部の内径よりも小さい直径を有する柱状の凸部を有し、
前記先端部研磨ブレードは、前記凸部の端部表面に設けられ、
前記切削具は、
前記ホルダの前記凹部に嵌め込まれる円盤状に形成され、中心から偏心した位置に、前記先端部用研磨盤の前記凸部が嵌入される貫通孔を有するプレートと、
前記先端部用研磨盤の外径よりも大きい内径を有する円環板状に形成され、内周面に前記第1のギヤ歯と噛み合う第2のギヤ歯を有するとともに、前記ホルダと一体に回転する環状ホルダと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極研磨装置。
【請求項4】
前記駆動モータによって回転する駆動用ギヤを備え、
前記ホルダ及び/又は前記環状ホルダは、外周面に、前記駆動用ギヤと噛合う第3のギヤ歯を有することを特徴とする請求項3に記載の電極研磨装置。
【請求項5】
駆動モータにより回転駆動され、スポット溶接用の電極を押し付けて研磨する切削具において、
円盤状に形成され、中央部に電極受け穴を有し、該電極受け穴の内壁部に前記電極の周面部表面を研磨する略円弧状の周面部研磨ブレードを備えたホルダと、
前記ホルダに積層配置され、前記ホルダと対向する表面に、前記電極受け穴から露出する前記電極の先端部表面を研磨する先端部研磨ブレードを有する先端部用研磨盤と、
を備え、
前記ホルダは、前記電極受け穴に受け止められた前記電極の中心を回転中心として回転し、
前記先端部用研磨盤は、前記ホルダの前記回転中心から偏心した回転軸まわりに回転することを特徴とする切削具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接用電極を研磨する電極研磨装置及び該電極研磨装置に用いられる切削具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製パネルを溶接する方法として、複数枚のパネルを重ね合わせた母材を加圧しながら電流を流し、パネル間で発生した抵抗熱によりパネル同士を溶接する抵抗溶接が知られている。抵抗溶接の一つであるスポット溶接では、一対の電極によって重ね合わされたパネルを挟み込んで加圧することで、パネル同士を接触させて溶接部の通電性を確保している。
【0003】
スポット溶接において、溶接品質を保つためには、母材に当接する電極の先端部の状態が重要となる。しかしながら、多打点溶接によって、電極の先端部が摩耗したり、母材表面のメッキ等が溶接時に電極の表面に付着して電極表面に合金化した金属層が形成されたりすると、溶接品質の低下につながることとなる。
【0004】
溶接品質を維持するために、電極研磨装置を用いて電極表面を研磨し、電極の表面状態を維持している。例えば、特許文献1には、電極の表面に接触してこれを研磨する切削具を備えた電極研磨装置が記載されている。
【0005】
図5は、従来の電極研磨装置の切削具90を説明する側面図である。切削具90において、スポット溶接装置の電極72,74に接触する研磨ブレード92は、電極72,74の先端から基端側に向かって電極表面に接触するように円弧状に形成されている。この電極研磨装置では、一対の電極72,74を研磨ブレード92に押付けた状態で、駆動モータによって切削具90を電極72,74の中心と一致する中心軸まわりに回転させる。
図6は、従来の電極研磨装置における切削具90の研磨ブレード92の電極72に対する移動量を説明する図である。
図6において矢印で示すように、電極72に対する研磨ブレード92の移動量は、電極72の中心から径方向外側へ向かって大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、溶接対象となる母材の材料が多種にわたり、多種の母材に対して溶接を行うスポット溶接装置では、電極の先端部表面に多種母材の金属材料が合金化した硬い合金化層が形成されることがある。上述したように、スポット溶接では母材に当接する電極の先端部の状態が重要となるが、従来の電極研磨装置では、電極の先端部に対する研磨ブレードの移動量が小さいことから、電極の先端部に付着した合金化層を十分に除去することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、スポット溶接用電極の先端部の研磨性を向上させることができる電極研磨装置及び切削具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、駆動モータにより回転駆動してスポット溶接用の電極の表面を研磨する切削具を備えた電極研磨装置において、前記切削具は、円盤状に形成され、中央部に電極受け穴を有し、該電極受け穴の内壁部に前記電極の周面部表面を研磨する略円弧状の周面部研磨ブレードを備えたホルダと、前記ホルダに積層配置され、前記ホルダと対向する表面に、前記電極受け穴から露出する前記電極の先端部表面を研磨する先端部研磨ブレードを有する先端部用研磨盤と、を備え、前記ホルダは、前記電極受け穴に受け止められた前記電極の中心を回転中心として回転し、前記先端部用研磨盤は、前記ホルダの前記回転中心から偏心した回転軸まわりに回転することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、駆動モータにより回転駆動され、スポット溶接用の電極を押し付けて研磨する切削具において、円盤状に形成され、中央部に電極受け穴を有し、該電極受け穴の内壁部に前記電極の周面部表面を研磨する略円弧状の周面部研磨ブレードを備えたホルダと、前記ホルダに積層配置され、前記ホルダと対向する表面に、前記電極受け穴から露出する前記電極の先端部表面を研磨する先端部研磨ブレードを有する先端部用研磨盤と、を備え、前記ホルダは、前記電極受け穴に受け止められた前記電極の中心を回転中心として回転し、前記先端部用研磨盤は、前記ホルダの前記回転中心から偏心した回転軸まわりに回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電極研磨装置及び研削具によれば、スポット溶接用電極の先端部の研磨性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である電極研磨装置の要部を模式的に示す一部断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である切削具の分解斜視図である。
【
図5】従来の電極研磨装置の切削具を説明する側面図である。
【
図6】従来の電極研磨装置における切削具の電極に対する移動量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である電極研磨装置1の要部を模式的に示す一部断面図である。電極研磨装置1は、スポット溶接用の電極72,74の表面を研磨する装置である。電極研磨装置1は、切削具10と、切削具10の周囲に設けられたギヤ歯と噛み合う駆動用ギヤ60と、駆動用ギヤ60を回転駆動させる駆動モータ62と、を備える。切削具10は、駆動用ギヤ60を介して駆動モータ62によって回転力を付与される。
【0014】
図2は、電極研磨装置1によって研磨される一対の電極72,74を備えたスポット溶接装置70の模式図である。スポット溶接装置70は、例えば、自動車等の車両の製造工程(車体を構成するパネルの接合など)で用いられる。スポット溶接装置70は、少なくとも一部が重ね合わされた複数枚の金属製のパネル81,82からなる母材80を一対の電極72,74で挟持し、電極72,74間を加圧しつつ通電することでパネル81,82同士を溶接する。
【0015】
スポット溶接装置70は、第1の電極72と、第1の電極72と同軸上に対向配置される第2の電極74と、制御装置76と、を備える。第2の電極74は、スポット溶接装置70の装置本体に固定されており、第1の電極72、は第2の電極74に対して接近・離間可能に構成されている。本実施形態において各電極72,74の先端部72a,74aは、平面状に形成されている。
【0016】
制御装置76は、例えばCPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス等を有して構成される。制御装置76は、記憶部に記憶されたプログラムに基づいて、第1の電極72の移動、これらの母材80に対する加圧力、並びに各電極72,74に供給される溶接電流の電流値などを制御する。
図2では、第1のパネル81と第2のパネル82とからなる母材80において、第1及び第2のパネル81,82の積層部分を第1及び第2の電極72,74で挟持加圧し、溶接する様子を示している。溶接が進むと、第1及び第2のパネル81,82の間にナゲット84が形成される。
【0017】
スポット溶接装置70の各電極72,74は、多打点溶接など、溶接を繰り返すことにより表面が損傷したり摩耗したりする。また、母材80を溶接した際に溶融した母材材料が付着して電極72,74の表面に合金化層が形成されることもある。このように電極72,74の摩耗や合金化層の形成によって、電極72,74の表面状態が変化すると意図した通電性能が得られず溶接品質が低下するため、電極72,74の表面の研磨が必要となる。
【0018】
図3は、電極研磨装置1に装着される切削具10の分解斜視図である。本実施形態において、切削具10は、第1及び第2の電極72,74を同時に研磨可能に構成されている。切削具10は、周面部研磨ブレード26を有する一対の周面部研磨ブレード用ホルダ(ホルダ)20A,20Bと、各周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bに取付けられるプレート30A,30Bと、環状ホルダ40と、先端部研磨ブレード55を有する先端部用研磨盤50と、を備える。切削具10にて、周面部研磨ブレード用ホルダ20A及び20Bは同一形状に形成され、プレート30A及び30Bは同一形状に形成されているため、以下の説明では、一方の周面部研磨ブレード用ホルダ20A及び一方のプレート30Aについて詳説する。
【0019】
周面部研磨ブレード用ホルダ20Aは、円盤状に形成されており、その中心部に、電極72を受け止める電極受け穴24を有する。電極受け穴24は、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aを貫通しており、電極受け穴24の内壁部には、スポット溶接用の電極72の周面部表面を研磨する周面部研磨ブレード26が取付けられている。具体的には、電極受け穴24は、周方向の一部に、径方向外側に窪んだ窪み部25を有しており、この窪み部25に周面部研磨ブレード26が着脱可能に取付けられている。周面部研磨ブレード25は、スポット溶接用の電極72の周面部72bを研磨するものであり、周面部72bに沿った略円弧状の刃を有している。
【0020】
周面部研磨ブレード用ホルダ20Aの外周面には、全周に亘ってギヤ歯(第3のギヤ歯)22が形成されている。また、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aにおいて、先端部用研磨盤50と対向する面、すなわち電極72の先端側に位置する面には、プレート30Aを嵌め込み設置するための円形の凹部28が形成されている。
【0021】
プレート30Aは、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aの凹部28に嵌め込まれる円盤状に形成されており、円板の中心から偏心した位置に円形の貫通孔32を有している。貫通孔32は、後述する先端部用研磨盤50の凸部54が嵌入される孔である。プレート30Aは、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aと一体となって回転する。
【0022】
環状ホルダ40は、円環板状に形成されており、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aと等しい外径を有するとともに、円盤状に形成された先端部用研磨盤50の外径よりも大きい内径を有している。環状ホルダ40の内周面には、先端部用研磨盤50の外周面に形成されたギヤ歯(第1のギヤ歯)52と噛み合うギヤ歯(第2のギヤ歯)44が形成されている。また、環状ホルダ40の外周面には、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aのギヤ歯22と同数のギヤ歯(第3のギヤ歯)42が形成されている。
【0023】
先端部用研磨盤50は、環状ホルダ40の内部に配置されるとともに、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aに積層配置され、周面部研磨ブレード用ホルダ20Aと対向する面に先端部研磨ブレード55が設けられている。本実施形態の切削具10では、先端部研磨盤50を挟み込むように、先端部研磨盤50の両面に一対の周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bが積層配置される。
【0024】
既述のとおり、先端部用研磨盤50は、円盤状に形成されており、外周面にギヤ歯52が形成されている。本実施形態の先端部用研磨盤50は、両面に、柱状の凸部54を有している。凸部54は、周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bの凹部28の内径よりも小さい直径を有しており、この凸部54の端部表面には平面状の先端部研磨ブレード55が設けられている。先端部研磨ブレード55は、切削具10による電極72,74の研磨時に、各周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bの電極受け穴24から露出する電極72,74の先端部表面を研磨するブレードである。先端部研磨ブレード55の表面積は、電極72の先端部72aの表面積よりも大きい。なお、本実施形態では、先端部用研磨盤50と同軸となるように円柱状の凸部54が設けられているが、凸部54の形状は円柱に限られず、多角柱状であってもよい。先端部用研磨盤50は、両面に設けられた凸部54がプレート30A,30B貫通孔32に嵌め込まれることにより、プレート30A,30Bの回転に伴って一体的に回転する。
【0025】
一対の周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20B及びこれらの間に配置される環状ホルダ40は、ギヤ歯22,42を一致させた状態で、これらを板厚方向に貫通するネジ等の固定具によって固定されている。切削具10は、図示していない電極研磨装置1の装置本体に対して、円盤歯車状の切削具10の中心軸Pまわりに回転可能に設置される。また、
図1に示すように、電極研磨装置1おいて、切削具10は、周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20B及び環状ホルダ40のギヤ歯22,42が、駆動用ギヤ60の外周面に形成されたギヤ歯と噛み合うように設置される。
【0026】
次に、切削具10を備えた電極研磨装置1の動作について説明する。まず、
図1に示すように、一対の電極72,74を一対の周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bの電極受け穴24に挿入して、電極受け穴24で受け止められた状態とするとともに、一対の電極72,74を接近させて切削具10に押付けた状態とする。これにより、切削具10の先端部研磨ブレード55は、電極受け穴24から露出した電極72,74の先端部72a,74aに接触した状態となる。また、切削具10の一対の周面部研磨ブレード26は、各電極72,74の周面部72b,74bに接触した状態となる。
【0027】
この状態で、駆動モータ62を駆動すると、駆動用ギヤ60が回転し、これに伴って駆動用ギヤ60と噛み合う各周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20B及び環状ホルダ40が、中心軸Pを回転中心として一体的に回転する。中心軸Pは、電極72,74の中心軸と一致している。また、各周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bの回転に伴って、各ホルダ20A,20Bと一体化されたプレート30A,30Bが中心軸Pを中心に回転する。さらに、プレート30A,30Bの回転に伴って、プレート30A,30Bの貫通孔32に凸部54が嵌め込まれた先端部研磨盤50が回転する。この際、先端部研磨盤50は、中心軸Pから偏心した回転軸Qまわりに回転する。
【0028】
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dは、駆動モータ62による切削具10の回転状態を説明する図であり、環状ホルダ40と、その内側で回転する先端部研磨盤50と、先端部研磨ブレード55に接触する電極72の先端部72aを実線で示し、プレート30Aを仮想線で示している。切削具10は、
図4Aから
図4B、
図4C及び
図4Dの順で回転する。周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bの外形は、
図4A~
図4Dにおける環状ホルダ40の外形と一致している。
図4Aにおいて、距離dは、周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bの中心軸Pと、先端部研磨盤50の中心である回転軸Qとの偏心距離を示している。
【0029】
図4Aから
図4Dに示すように、周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20B及び環状ホルダ40が反時計回りに回転すると、周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bの回転力がプレート30A,30Bを介して先端部研磨盤50に伝達され、先端部研磨盤50が反時計回りに回転する。この時、先端部研磨盤50は、環状ホルダ40の内周面に形成されたギヤ歯44に噛み合いながら、環状ホルダ40の内側を回転するとともに、先端部研磨盤50の中心を回転軸Qとして回転する。すなわち、先端部研磨盤50は、回転軸Qを中心に自転しつつ、中心軸Pのまわりを公転する遊星歯車の動きをする。
【0030】
図4Bでは、
図4Aにおける先端部研磨ブレード55における電極先端部72aの位置を仮想線で示している。同様に、
図4C及び
図4Dのそれぞれでは、
図4B及び
図4Cのそれぞれの先端部研磨ブレード55における電極先端部72aの位置を仮想線で示している。図示例のように、本実施形態の研削具10では、先端部研磨ブレード55に接触する電極先端部72aの位置が変化し、これにより、先端部72aに対して先端部研磨ブレード55が移動する量を大きくすることができる。
【0031】
スポット溶接装置70の各電極72,74は、多打点溶接や多種の母材80に対する溶接を行うことにより、表面が摩耗したり、表面に溶融した母材80の材料が付着して合金化層が形成されたりする。溶接品質を保持するためには、特に母材80に当接する電極72,74の先端部72a,74aの状態が重要となるため、電極研磨装置1には、先端部72a,74aの研磨性が求められる。
【0032】
上述したように、本実施形態の電極研磨装置1では、電極72,74の先端部72a,74aと周面部72b,74bとをそれぞれ別のブレード、すなわち先端部研磨ブレード55と周面部研磨ブレード26とで研磨するようにし、先端部研磨ブレード55を電極72,74の中心から偏心した回転軸Qで回転させる構造としている。これにより、電極72,74の先端部72a,74aに接触する先端部研磨ブレード55の移動量を大きくして、先端部72a,74aに対する研磨性を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態の切削具10では、先端部用研磨盤50の両面に先端部研磨ブレード55を設け、先端部用研磨盤50の両面に、周面部研磨ブレード26を有する一対の周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bを積層配置した構造としたことで、一対の電極72,74を同時に研磨することができる。また、切削具10は、環状ホルダ40の内部に先端部用研磨盤50を配置して、これらのギヤ44,52を噛み合わせる遊星歯車構造を採用しており、プレート30A,30Bを介して先端部用研磨盤50に駆動力を伝達することで、一つの駆動モータ62により異なる回転軸を有する先端部用研磨盤50と一対の周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bとを同時に回転させることができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、複数の駆動源を用いて各周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bと先端部用研磨盤50とを個別に回転させる構造であってもよい。
【0036】
また、例えば、切削具10は、少なくとも一つの電極72,74が研磨可能となるように、先端部研磨ブレード55を少なくとも一つ有する先端部用研磨盤50と、これに積層される少なくとも一つの周面部研磨ブレード用ホルダ20A,20Bを備える構成であればよい。
【0037】
また、例えば、電極72,74の先端部72a,74aの形状が平面ではなく、曲面やなだらかなR形状である場合には、これに接触する先端部研磨ブレード55の表面形状を電極先端部72a,74aに合わせて変更することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 電極研磨装置
10 切削具
20A,20B 周面部研磨ブレード用ホルダ
22 ギヤ歯
24 電極受け穴
25 窪み部
26 周面部研磨ブレード
28 凹部
30A,30B プレート
32 貫通孔
40 環状ホルダ
42 ギヤ歯
44 ギヤ歯
50 先端部用研磨盤
52 ギヤ歯
55 先端部研磨ブレード
60 駆動用ギヤ
62 駆動モータ
70 スポット溶接装置
72 第1の電極
74 第2の電極
72a,74b 先端部
72b,74b 周面部
76 制御装置
80 母材