(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076228
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20240529BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240529BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240529BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240529BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240529BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240529BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187701
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】390011877
【氏名又は名称】富士化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寶田 光仁
(72)【発明者】
【氏名】大貫 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小山 晴樹
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC15
4C076CC18
4C076CC26
4C076CC29
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4C076EE16B
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4C076GG12
4C076GG14
4C086AA01
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA10
4C086ZA59
4C086ZA89
4C086ZB21
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】服用しやすい剤型・大きさ、包装や流通に十分な硬度及び十分な崩壊性を有するニンデニブエタンスルホン酸塩を含有する錠剤を提供する。
【解決手段】ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を含むニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を含むニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤。
【請求項2】
さらに結合剤及び/又は界面活性剤を含む、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩の含量が錠剤の全質量に対して、ニンテダニブとして35質量%以上である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項4】
錠剤の質量が250~500mg、硬度が4~20kgである、請求項1に記載の錠剤。
【請求項5】
賦形剤が乳糖及び結晶セルロースから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項6】
崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン及びデンプングリコール酸ナトリウムから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項7】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩の平均粒子径が0.1~50μmである、請求項1に記載の錠剤。
【請求項8】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び結合剤を液体の存在下で混合し、造粒する工程を含む、ニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤の製造方法。
【請求項9】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤及び崩壊剤を混合し混合末を得る工程、その混合末に滑沢剤を混合し打錠を得る工程を含む、ニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤の製造方法。
【請求項10】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び結合剤を混合・圧縮し造粒末を得る工程、その造粒末に滑沢剤及び崩壊剤を混合し打錠を得る工程を含む、ニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩を含有する錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩は下記式で示される化合物であり、チロシンキナーゼ阻害作用により特発性肺線維症、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患及び進行性線維化を伴う間質性肺疾患の治療剤として、ソフトカプセル剤の形態で販売されている(非特許文献1)。ソフトカプセル剤の形状は一般にオブロング型であり、サイズはニンテダニブエタンスルホン酸塩100mgカプセルでは長径約16.3mm、直径約6.2mm、重さ約440mg、150mgカプセルでは長径約17.6mm、直径約7.1mm、重さ約620mgである。
【0003】
【0004】
ニンテダニブエタンスルホン酸の水への溶解度はpHに依存し、pH1では約10mg/mLに対し、pH7では0.001mg/mL未満であり、BCSクラスは2~4である。特許文献1には、ニンテダニブエタンスルホン酸を速放出製剤にするため、薬物を中鎖脂肪酸トリグリセリド、ハードファット及びレシチンの溶液に懸濁させて充填したソフトカプセルが開示されているが(特許文献1)、ここで示されているソフトカプセルは薬物含量150mgで重量が620mg以上と大きいため経口摂取しにくいという問題があった。また、ソフトカプセルは汎用的な固形製剤製造装置を用いることができず、専用設備を用いる必要がある。
【0005】
また、特許文献2には、ニンテダニブエタンスルホン酸塩を糖アルコール、ヒプロメロースエステル類、(メタ)アクリル酸系重合体類等の担体と共に溶融造粒することにより薬物粒子の固体分散体を得た後、医薬添加物と混合打錠した錠剤が開示されている。しかし、この方法は、130℃以上で数分間溶融造粒するため不純物増加の問題があり、特にニンテダニブエタンスルホン酸塩を非晶質化した場合の不純物含量は閾値を超えているため実際的ではなく、また、固体分散体化するため硬化油や糖アルコールなどの担体を配合する必要があるためニンテダニブエタンスルホン酸塩180.6mg含有錠で、重量630mgと錠剤サイズが大きく服用性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/147220号
【特許文献2】国際公開第2022/138549号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「オフェブ(登録商標)カプセル100mg,オフェブ(登録商標)カプセル150mg」医薬品インタビューフォーム,2022年3月改訂(第10版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、服用しやすい剤型・大きさ、包装や流通に十分な硬度及び十分な崩壊性を有するニンデニブエタンスルホン酸塩を含有する錠剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、課題解決のため鋭意検討を行った結果、ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を混合・圧縮成型する工程、又はニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤を造粒した後、滑沢剤を混合・圧縮成型する工程、を含む方法により前述の課題を満たすニンテダニブスルホン酸塩錠剤が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の1)~10)に係るものである。
1)ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を含むニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤。
2)さらに結合剤及び/又は界面活性剤を含む、1)の錠剤。
3)ニンテダニブエタンスルホン酸塩の含量が錠剤の全質量に対して、ニンテダニブとして35質量%以上である、1)の錠剤。
4)錠剤の質量が250~500mg、硬度が4~20kgである、1)の錠剤。
5)賦形剤が乳糖及び結晶セルロースから選ばれる1種以上である、1)の錠剤。
6)崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン及びデンプングリコール酸ナトリウムから選ばれる1種以上である、1)の錠剤。
7)ニンテダニブエタンスルホン酸塩の平均粒子径が0.1~50μmである、1)の錠剤。
8)ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び結合剤を液体の存在下で混合し、造粒する工程を含む、ニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤の製造方法。
9)ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤及び崩壊剤を混合し混合末を得る工程、その混合末に滑沢剤を混合し打錠を得る工程を含む、ニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤の製造方法。
10)ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び結合剤を混合・圧縮し造粒末を得る工程、その造粒末に滑沢剤及び崩壊剤を混合し打錠を得る工程を含む、ニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、服用しやすい剤型・大きさ、包装や流通に十分な硬度及び十分な崩壊性を有するニンデニブエタンスルホン酸塩錠剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において特に明記していない場合を除き、各医薬添加物の用途は医薬品添加物辞典の医薬添加剤の用途による。
本発明のニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤(以下、「本発明の錠剤」とも称す)は、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を含むものであり、必要に応じてさらに結合剤及び/又は界面活性剤を含むものである。
【0013】
本発明において、ニンテダニブエタンスルホン酸塩は、(化学名:(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボン酸メチル)のエタンスルホン酸塩であり、下記式で表される化合物である。
また、溶媒和物となっていてもよく、溶媒和物としては水和物、アルコール和物が挙げられる。
【0014】
【0015】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩の溶解度はpH依存であり、低pHでは約10mg/mLであるが中性では0.001mg/mL以下と難溶性である。そのため、粒子サイズは製造に問題がない範囲で小さいほうがよく、粒子サイズとしては例えば、平均粒子径が0.1~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは7~21μmのものを用いることができる。平均粒子径とは、メディアン径(D50:積算分布曲線の50%に相当する粒子径)を意味し、体積を基準として算出される。平均粒子径は公知の方法、測定機器を用いて行うことができ、例えばレーザー光散乱方式粒度分布測定や動的光散乱方式粒度分布測定などの方法により測定することができる。
【0016】
本発明のニンテダニブエタンスルホン酸塩錠剤においては、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の含有率を高めて錠剤サイズを小さくさせることができる。ニンテダニブエタンスルホン酸塩の配合量は、錠剤の全質量に対して、ニンテダニブとして25~70質量%、好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~50質量%である。ニンテダニブエタンスルホン酸塩の含量としては1錠中にニンテダニブとして60~250mgであり、好ましくは120.4mgまたは180.6mgである。
【0017】
本発明の錠剤において用いられる賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖及びブドウ糖などの糖類、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール及びキシリトール等などの糖アルコール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン及びタピオカデンプンなどのデンプン類、デキストリン、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられ、好ましくは乳糖、結晶セルロースが挙げられる。
賦形剤の配合量は、錠剤の全質量に対して、1~70質量%、好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。
【0018】
本発明の錠剤において用いられる崩壊剤としては、特には制限されないが、例えばカルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系崩壊剤、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム等のデンプン系崩壊剤、クロスポビドン等を用いることができ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンが挙げられ、さらに好ましくはクロスポビドンが挙げられる。
崩壊剤の配合量は、錠剤の全質量に対して、0.5~20質量%、好ましくは0.5~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。
【0019】
本発明の錠剤において用いられる滑沢剤としては、特には制限されないが、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、好ましくはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
滑沢剤の配合量は、錠剤の全質量に対して、0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
なお、外部滑沢法によって滑沢剤が素錠表面に局在することを含む。
【0020】
本発明の錠剤において用いられる結合剤としては、特には制限されないが、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒプロメロース等のセルロース系結合剤、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン等のデンプン系結合剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム等のケイ酸系結合剤、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、ゼラチン、プルラン、ポビドン、カルボキシビニルポリマー等が挙げられ、好ましくはセルロース系結合剤が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
結合剤の配合量は、錠剤の全質量に対して、1~15質量%、好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1.5~7質量%である。
【0021】
本発明の錠剤において用いられる界面活性剤としては、レシチン、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート、ポリソルベート80、ポリオキシエチレングリコールエステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。好ましくはレシチン、ポリソルベート80またはラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0022】
上記の賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を配合する場合、これらの一部または全てを含むプレミックス賦形剤を換わりに添加することができる。プレミックス賦形剤としては、例えば、エフメルト(富士化学工業社製)、Kollitab DC87L(BASF社製)、GRANFILLER-D(ダイセル社製)、HiSIRAD(ダイセル社製)、ODIFUL(大同活性工業社製)PROSOLV EASTtab(JRS Pharma社製)、PROSOLV ODT G2(JRS Pharma社製)などを用いることができる。
【0023】
本発明の錠剤を製造するために用いることができる、上記の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤以外の医薬品添加物としては、例えば、着色剤、甘味剤及び香料等が挙げられ、具体的には以下のとおりである。
【0024】
着色剤としては、例えば、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カラメル、タルク等が挙げられる。
【0025】
甘味剤としては、例えば、砂糖、オリゴ糖、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びステビアから選ばれる1種又は2種以上の甘味料が挙げられる。
【0026】
香料としては、例えば、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ベルガモット、柚子、カボス、スダチ、ストロベリー、アップル、ピーチ、ヨーグルト、杏仁豆腐などの風味の香料が挙げられる。
【0027】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩は患者以外の吸収・摂取を防止するため、本発明の錠剤は、フィルムコーティング錠であるのが好ましい。フィルムコートは、通常の医薬品でも用いられるフィルムコート剤、可塑剤、流動化剤、色素及びこれらを溶解/懸濁するための溶媒などを用いることができる。
【0028】
ここで、フィルムコート剤としては、特には制限されないが、例えばカルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系フィルムコート剤、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、好ましくはセルロース系フィルムコート剤が挙げられ、より好ましくはヒプロメロースが挙げられる。
【0029】
可塑剤としては、特には制限されないが、例えばポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000等)、クエン酸トリエチル、グリセリン、ヒマシ油、ポロキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、マクロゴール、ラウロマクロゴール、トリアセチン等が挙げられ、好ましくはトリアセチンが挙げられる。
【0030】
フィルムコート用の滑沢剤としては、特には制限されないが、例えばタルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、重質無水ケイ酸、水酸化アルミナマグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム等が挙げられ、好ましくはステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられる。
【0031】
フィルムコート用の色素としては、前記着色剤として挙げたものが使用でき、識別性の観点から好ましくは三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄や酸化チタンが挙げられる。
【0032】
本発明の錠剤は、配合するニンテダニブエタンスルホン酸塩の含量により錠剤サイズは異なるが、例えば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩120.4mg錠や180.6mg錠の場合には、通常の丸錠では直径5~12mm、厚さ1~6mmの錠剤サイズとなる。また、カプレット錠、オーバル錠などの異形錠としてよく、長径8~20mm、短径3~8mm程度である。
【0033】
本発明の錠剤は、日本薬局方の溶出試験方法において、溶出液第一液、パドル法50回転で、60分後のニンテダニブ溶出率は、70%以上であり、好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。さらには、同条件でニンテダニブ85%溶出時間は60分以内であり、好ましくは45分以内であり、さらに好ましくは30分以内である。
【0034】
本発明の錠剤は、温度、シェアなどが低い条件で製造するため、薬物由来の分解物、酸化物、結合物などの類縁物質の形成が少ない。類縁物質の量としては薬物に対して、総類縁物質は2.0%以下、個々の類縁物質は0.5%以下である。好ましくは類縁物質は1.0%以下、個々の類縁物質は0.25%以下である。ここでの類縁物資量はHPLCなどによって測定される、薬物量に対する類縁物質の量である。
【0035】
本発明の錠剤は安定性に優れている。ここで安定性とは経時変化による崩壊性や溶出性の低下が抑制されること、類縁物質の増加が抑制されていること、薬物含量の低下が抑制されていることである。
【0036】
以下本発明の錠剤の製造方法について説明する。
本発明の錠剤は、直打法、乾式造粒法又は湿式造粒法のいずれかで製造することができる。
直打法は公知の方法で行うことができ、例えば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤などを適宜混合し、圧縮成型する。賦形剤、崩壊剤、結合剤などは、予め造粒したものを用いることができる。また、賦形剤、崩壊剤、結合剤などの成分を含むプレミックス賦形剤を用いることができる。この造粒方法は医薬品の分野で公知の方法で行うことができ、例えば、後述の乾式造粒または湿式造粒の条件で行うことができる。
【0037】
乾式造粒方法としては、通常医薬品の分野で行なわれている方法でよく、造粒時に液体成分を用いずに、原料の凝集力を高めて造粒する造粒方法であり、湿式造粒方法としては、撹拌造粒、転動造粒や流動層造粒等の製造方法行うことができ、流動層造粒や撹拌造粒により製造するのがより好ましい。
湿式造粒方法では、ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び結合剤を水やエタノール等の液体の存在下で混合し、造粒が行われる。
流動層造粒の場合、例えば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤及び崩壊剤などを均一に混合した後、流動層造粒機に投入し、結合剤溶液をスプレーして造粒し、造粒・乾燥する。流動層乾燥機の条件-入熱温度、排熱温度、噴霧速度などは使用する機器によって適宜設定する。
【0038】
撹拌造粒の場合、例えば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤及び崩壊剤などを撹拌造粒機に投入し、結合剤溶液を添加して造粒したのち、乾燥する。乾燥方法は棚乾燥、流動層乾燥等、いずれでもよい。乾燥条件としては、乾燥温度20~100℃程度、乾燥時間10分~20時間程度であり、目的とする水分になるように乾燥するのが好ましい。
【0039】
得られた乾燥造粒物は必要に応じて篩により篩過し、整粒する。
当該整粒造粒物は、滑沢剤、必要に応じて崩壊剤、界面活性剤などを加えて均一に混合して打錠用混合末としたのち圧縮成型する。
【0040】
乾式造粒法では、意図的な水の添加無しでニンテダニブエタンスルホン酸塩、賦形剤、崩壊剤及び結合剤を圧密化・解砕し、造粒が行われる。
乾式造粒の方法としては、医薬品の分野で通常行われている乾式造粒法が採用でき、例えば、スラッグ法、ローラーコンパクター法などである。ローラーコンパクターの条件:ロール圧力、ロール回転数、粉体供給スクリュー回転速度などは装置によって異なる。例えば、フロイント産業社製TFminiやTF-208ではロール圧力は2~15MPa、ロール回転数は2~15rpm、粉体供給スクリュー回転速度は、5~30rpmが好ましい。
ローラーコンパクターにより得られたフレークをオシレーター、コーミル、クイックミル、パワーミル等の粉砕機や解砕機で所定の粒度へ粉砕・整粒する。造粒物の粒度は打錠しやすさから、微粉が少ないほうがよく、例えば200mesh以下が少ないほうが好ましい。
【0041】
得られた造粒物に崩壊剤、所望により滑沢剤、界面活性剤及びその他の医薬品添加物を適宜選択して混合した後、圧縮成型することにより錠剤が製造される。
混合は、一般に用いられる混合方法、例えば混合、練合、造粒などにより行うことができる。混合は、例えば高速攪拌混合機、万能練合機、流動層造粒機、V型混合機、タンブラー混合機、二重円錐混合機、リボン型混合機、旋回スクリュー型混合機、袋で手動混合などを用いて行うことができる。
【0042】
前記素錠の製造工程では、更に、造粒物を解砕したり、乾燥したりする処理を含んでもよい。圧縮成型は、医薬品で通常用いられるロータリー打錠機等を用いることができ、打錠時における成形圧は、錠剤の大きさにより異なるが、例えば、φ9.0mmの錠剤では2~22kNであり、好ましくは5~17kNである。この時、設定錠剤硬度は2.0~30kg、好ましくは3.0~25kg、より好ましくは4.0~20kgである。
また、本発明の錠剤は、外部滑沢法により圧縮成型することができる。外部滑沢法を用いる場合、前記乾式造粒物、崩壊剤及び結合剤などを混合した後、圧縮成型することにより、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の素剤を得る。混合方法や圧縮成型などの圧縮成形条件は、前述素錠の製造方法と同じである。
【0043】
フィルムコート剤などを溶解/懸濁させる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、トルエン、ヘキサン、メチルエチルケトン及び水、又はこれらの混合溶媒等が挙げられ、エタノール及び水が好ましく、水がより好ましい。
【0044】
フィルムコーティングは、通常錠剤の水系または非水系のコーティングで用いられている装置で行うことができ、例えば、パンコーティング方式のコーティング装置が挙げられる。
【0045】
当該フィルムコーティング錠において、フィルムコーティング部の被覆量に明確な限定はないが、例えば、300mg/錠質量の素錠に2~20mg/錠の範囲で被覆されることが好ましく,4~12mg/錠の範囲とするのがより好ましく、また、450mg/錠質量の素錠に3~30mg/錠の範囲で被覆されることが好ましく,6~18mg/錠の範囲とするのがより好ましい。
【実施例0046】
以下に実施例、比較例及び試験例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
[直打法による錠剤製造]
ニンテダニブエタンスルホン酸塩(D50:10μm)120.4質量部、乳糖水和物89.6質量部、結晶セルロース60.0質量部、低置換度ヒドロキシプロセルロース15.0質量部、ヒドロキシプロセルロース9.0質量部及び軽質無水ケイ酸3.0質量部割合で混合し、目開き500μmの篩で篩過し混合末を得た。混合末297.0質量部とステアリン酸マグネシウム3.0質量部の割合で混合し、ロータリー式打錠機を用い、回転数30rpmとし、錠剤径9.0mmで成形圧11kNにて打錠し、1錠300mgの素錠を得た。錠剤硬度は92N、崩壊時間は56秒であった。
この素錠に、コーティング装置において、ヒプロメロース5.5%、トリアセチン0.9%、二酸化チタン2.67%、三二酸化鉄0.03%及びタルク0.9%を含むコーティング液を給気温度60℃、排気温度43~46℃で素錠に噴霧し、1錠310mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0048】
(実施例2)~(実施例4)
表1の錠剤成分・配合量に従い実施例1と同様の方法でニンテダニブエタンスルホン酸塩のフィルムコーティング錠を作成した。
【0049】
【0050】
[湿式造粒法による錠剤製造]
(実施例5)
ヒドロキシプロセルロース9.0質量部を水に溶解して10%結合液を調製した。ニンテダニブエタンスルホン酸塩(D50:10μm)120.4質量部、乳糖水和物92.6質量部、結晶セルロース45.0質量部、低置換度ヒドロキシプロセルロース30.0質量部を混合し、高速撹拌造粒機に投入し、撹拌しながら結合液を添加し、造粒物を得た。造粒物を70℃で2時間乾燥後、目開き850μmの篩で師過し、ステアリン酸マグネシウム3.0質量部の割合で混合し、ロータリー式打錠機を用い、回転数30rpmとし、錠剤径9.0mmで成形圧11kNにて打錠し、1錠300mgの素錠を得た。錠剤硬度は92N、崩壊時間は51秒であった。
この素錠に、コーティング装置において、ヒプロメロース5.5%、トリアセチン0.9%、二酸化チタン2.67%、三二酸化鉄0.03%及びタルク0.9%を含むコーティング液を給気温度60℃、排気温度43~46℃で素錠に噴霧し、1錠310mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0051】
(実施例6)~(実施例7)
表2の錠剤成分・配合量に従い実施例5と同様の方法でニンテダニブエタンスルホン酸塩のフィルムコーティング錠を作成した。
【0052】
【0053】
[乾式造粒法による錠剤製造]
(実施例8)
ニンテダニブエタンスルホン酸塩(D50:10μm)120.4質量部、乳糖92.6質量部、低置換度ヒドロキシプロセルロース21.0質量部、結晶セルロース25.0質量部、ヒドロキシプロセルロース6.0質量部、無水ケイ酸3.0質量部及びステアリン酸マグネシウム2.0質量部を混合し、打錠を行った後、解砕し20Meshの篩で整粒子し顆粒を得た。この顆粒270質量部に結晶セルロース20.0質量部、低置換度ヒドロキシプロセルロース9.0質量部、ステアリン酸マグネシウム1.0質量部の割合で混合し、ロータリー式打錠機を用い、回転数30rpmとし、錠剤径9.0mmで成形圧11kNにて打錠し、1錠300mgの素錠を得た。