(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007624
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】センサモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01P 15/08 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G01P15/08 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108809
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】516025450
【氏名又は名称】株式会社ゴフェルテック
(71)【出願人】
【識別番号】519450639
【氏名又は名称】アドヴァンシング・プラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】伊永 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 敦志
(72)【発明者】
【氏名】川崎 孝明
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検出ヘッドのカバーが回路基板等に対して密着状態で一体化されたセンサモジュールの製造方法において、カバーとなる硬化性材料を金型のキャビティ内に注入する際に、回路基板が所定の位置から動かないようにする。
【解決手段】検出素子11が取り付けられるとともにケーブル20が接続された回路基板12を金型30のキャビティα内に配置する部品配置工程と、回路基板12が配置されたキャビティα内に流動状態の硬化性材料を注入する材料注入工程と、キャビティα内に注入された硬化性材料を硬化させる材料硬化工程とを経ることによって、硬化後の硬化性材料が、回路基板12及び検出素子11に対して密着状態で一体化されたカバーとなるようにするとともに、材料注入工程において回路基板12がキャビティα内で動かないように回路基板12を位置決めする基板位置決め機構41,42,43を設けた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出素子が取り付けられた回路基板をカバーで保護した検出ヘッドと、
先端部を回路基板に接続され、基端側をカバー外に導き出されたケーブルと
を備えたセンサモジュールの製造方法であって、
検出素子が取り付けられるとともにケーブルが接続された回路基板を金型のキャビティ内に配置し、ケーブルの基端側をキャビティ外に取り出した状態とする部品配置工程と、
回路基板が配置されたキャビティ内に流動状態の硬化性材料を注入する材料注入工程と、
キャビティ内に注入された硬化性材料を硬化させる材料硬化工程と
を経ることによって、
硬化後の硬化性材料が、回路基板及びそれに取り付けられた検出素子に対して密着状態で一体化されたカバーとなるようにするとともに、
材料注入工程において回路基板がキャビティ内で動かないように回路基板を位置決めする基板位置決め機構を設けた
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法。
【請求項2】
基板位置決め機構が、
回路基板における複数箇所に設けられた、回路基板を一面側から他面側に貫通する複数の位置決め孔と、
金型からキャビティ内に突出して設けられた複数の位置決めピンと
で構成され、
部品配置工程において、それぞれの位置決めピンをそれぞれの位置決め孔に挿通させることで、回路基板に平行な方向で回路基板が位置決めされる
請求項1記載のセンサモジュールの製造方法。
【請求項3】
位置決め孔の内径が、位置決めピンの外径に略一致された請求項2記載のセンサモジュールの製造方法。
【請求項4】
位置決め孔が、回路基板における四隅部に設けられた請求項3記載のセンサモジュールの製造方法。
【請求項5】
基板位置決め機構が、金型からキャビティ内に突出して設けられた位置決め凸部とされ、
部品配置工程において、位置決め凸部の先端に回路基板の一側又は他側の面を当てることで、回路基板に垂直な方向で回路基板が位置決めされる
請求項1記載のセンサモジュールの製造方法。
【請求項6】
位置決め凸部が、金型に対して着脱可能に設けられた請求項5記載のセンサモジュールの製造方法。
【請求項7】
材料注入工程において、硬化性材料を100MPa以下の圧力で金型のキャビティ内に流し込む請求項1~6いずれか記載の温度センサモジュールの製造方法。
【請求項8】
検出素子が取り付けられた回路基板をカバーで保護した検出ヘッドを備えたセンサモジュールの製造方法であって、
検出素子が取り付けられた回路基板を金型のキャビティ内に配置する部品配置工程と、
回路基板が配置されたキャビティ内に流動状態の硬化性材料を注入する材料注入工程と、
キャビティ内に注入された硬化性材料を硬化させる材料硬化工程と
を経ることによって、
硬化後の硬化性材料が、回路基板及びそれに取り付けられた検出素子に対して密着状態で一体化されたカバーとなるようにするとともに、
材料注入工程において回路基板がキャビティ内で動かないように回路基板を位置決めする基板位置決め機構を設けた
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサや温度センサ等のセンサモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサや温度センサ等のセンサモジュールは、一般的に、ケーブルの先端側に検出ヘッドを取り付けた構造を有している。この種のセンサモジュールにおいて、検出ヘッドは、特許文献1の
図2に示されるように、加速度や温度等の被検出量を検出するための検出素子(同文献における「センサ素子4」)が取り付けられた回路基板(同文献における「回路基板5」)と、検出素子及び回路基板を保護するカバー(同文献における「カバー1」、「ケース2」及び「ベース3」)とで構成されていることが多い。
【0003】
ところが、従来のセンサモジュールは、上記のように、検出素子や回路基板をカバーで覆って保護していても、カバーの隙間から水やホコリが入るおそれや、検出ヘッドが衝撃を受けた際に検出素子や回路基板がカバー内で動いて傷つくおそれがあった。このため、従来のセンサモジュールは、必ずしも、防水性や耐腐食性や堅牢性に優れたものであるとは言えず、過酷な環境では使用しにくかった。
【0004】
このような実状に鑑みて、本出願人は、特許文献2の
図5に示すように、ケーブル(同文献の「ケーブル40」)を接続した回路基板(同文献の「基盤30」)を検出素子(同文献の「熱検知体10」)とともに金型(同文献の「金型4」)のキャビティ内に配置し、そのキャビティ内に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等の硬化性材料(同文献の「硬化性材料51」)を注入して硬化させることによって、その硬化後の硬化性材料が検出ヘッドのカバー(同文献の「カバー50」)となるようにしたセンサモジュール(同文献の「温度センサモジュール1」)を提案している。
【0005】
特許文献1のセンサモジュールでは、検出ヘッドのカバーが、検出素子(熱検知体)や回路基板(基板)に対して密着状態で一体化された硬化性材料によって形成されているため、検出素子(熱検知体)や回路基板(基板)が、カバー内で動かないようになっている。このため、検出ヘッドの堅牢性を高めることが可能となっている。また、検出素子や回路基板等の部品をカバーでしっかりと封止し、検出ヘッドの防水性や耐腐食性を高めることも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-148492号公報
【特許文献2】特開2021-096170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のセンサモジュールでは、金型のキャビティ内に硬化性材料を注入する際に、その硬化性材料の圧力によって回路基板が押され、回路基板がキャビティ内を動くおそれがあった。このため、回路基板に取り付けられた検出素子の位置や向きが変わってしまい、検出素子が被検出量を正確に検出できなくなるおそれがあった。例えば、加速度センサでは、検出素子が傾いてしまうと、ズレた方向の加速度を検出するようになる。加えて、回路基板がキャビティ内を動くと、回路基板に接続されたケーブルが引っ張られた状態となり、ケーブルと回路基板との接続が外れるおそれや、ケーブルが切断するおそれもある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、検出ヘッドのカバーが検出素子や回路基板に対して密着状態で一体化されたセンサモジュールの製造方法であって、検出ヘッドのカバーとなる硬化性材料を金型のキャビティ内に注入する際に、回路基板が所定の位置から動かないようにして、検出精度の低下や不良品の発生が生じないようにしたセンサモジュールの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、
検出素子が取り付けられた回路基板をカバーで保護した検出ヘッドと、
先端部を回路基板に接続され、基端側をカバー外に導き出されたケーブルと
を備えたセンサモジュールの製造方法であって、
検出素子が取り付けられるとともにケーブルが接続された回路基板を金型のキャビティ内に配置し、ケーブルの基端側をキャビティ外に取り出した状態とする部品配置工程と、
回路基板が配置されたキャビティ内に流動状態の硬化性材料を注入する材料注入工程と、
キャビティ内に注入された硬化性材料を硬化させる材料硬化工程と
を経ることによって、
硬化後の硬化性材料が、回路基板及びそれに取り付けられた検出素子に対して密着状態で一体化されたカバーとなるようにするとともに、
材料注入工程において回路基板がキャビティ内で動かないように回路基板を位置決めする基板位置決め機構を設けた
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法
を提供することによって解決される。
【0010】
ここで、「硬化性材料」とは、流動状態(軟化状態)から硬化状態へと変化する材料のことをいう。硬化性材料としては、加熱すると軟化して冷却すると硬化するもの(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)や、逆に加熱すると硬化するもの(熱硬化性樹脂や熱硬化性エラストマー等)や、空気中の水分と反応して硬化するもの(縮合反応型のシリコーン樹脂等)や、水分が蒸発することで硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルション等)や、化学反応により硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルションや紫外線硬化樹脂等)等が例示される。また、「金型」は、金属に限定されない。金型は、樹脂型や、セラミックス型や、木版型や、石膏型等であってもよい。
【0011】
本発明のセンサモジュールの製造方法のように、検出ヘッドのカバー(硬化性材料)を、回路基板及びそれに取り付けられた検出素子に対して密着状態で一体化させて形成することによって、検出素子や回路基板がカバーの内部でぐらつかないように固定することや、検出ヘッドの剛性を高めることができる。このため、検出ヘッドの堅牢性を高めることができる。また、検出素子や回路基板等の部品をカバーでしっかりと封止した状態とすることもできる。このため、検出ヘッドの防水性や耐腐食性を高めることもできる。
【0012】
加えて、基板位置決め機構を設けたため、金型のキャビティ内に硬化性材料を注入する際(材料注入工程の際)に、回路基板やそれに取り付けられた検出素子がキャビティ内で動かないようにすることができる。このため、検出ヘッドにおける検出素子の向きや位置のバラつきを抑えることで、検出精度を高めることができる。加えて、ケーブルの外れや切断を防ぎ、不良品の発生を抑えることもできる。
【0013】
本発明のセンサモジュールの製造方法において、基板位置決め機構は、上記の機能(材料注入工程の際に回路基板をキャビティ内で動きにくくする機能)を発揮できるのであれば、その構成を特に限定されない。基板位置決め機構としては、例えば、以下の2パターンが挙げられる。
【0014】
1つ目は、基板位置決め機構を、回路基板における複数箇所に設けられた、回路基板を一面側から他面側に貫通する複数の位置決め孔と、金型からキャビティ内に突出して設けられた複数の位置決めピンとで構成するパターンである。このパターンでは、部品配置工程において、それぞれの位置決めピンをそれぞれの位置決め孔に挿通させることで、回路基板に平行な方向で回路基板が位置決めされる。これにより、回路基板がキャビティ内を水平方向(回路基板に平行な方向)に動かないようにすることができる。以下においては、このパターンの基板位置決め機構を「ピン挿通タイプの基板位置決め機構」と呼ぶことがある。
【0015】
ピン挿通タイプの基板位置決め機構を採用する場合には、位置決め孔の内径を、位置決めピンの外径に略一致させることが好ましい。というのも、位置決め孔の内径を位置決めピンの外径よりも大きくしすぎてしまうと、位置決め孔の内周面と位置決めピンの外周面との隙間が大きくなる。このため、その隙間の分だけ、回路基板がキャビティ内を横方向に動いてしまうおそれがあるからである。また、その隙間によって、回路基板の傾きが許容されてしまい、回路基板が傾いた状態で硬化性材料が硬化されるおそれもあるからである。この点、位置決め孔の内径を位置決めピンの外径に略一致させておくことで、上記の不具合の発生を抑えることができる。
【0016】
また、ピン挿通タイプの基板位置決め機構を採用する場合には、位置決め孔を、回路基板における四隅部に設けることが好ましい。これにより、複数の位置決め孔を、回路基板における互いに離れた位置に配置することができる。したがって、位置決めピンで回路基板をバランスよく支持するだけでなく、回路基板の位置決め精度を高めることができる。
【0017】
2つ目は、基板位置決め機構を、金型からキャビティ内に突出して設けられた位置決め凸部とするパターンである。このパターンでは、部品配置工程において、位置決め凸部の先端に回路基板の一側又は他側の面を当てることで、回路基板に垂直な方向で回路基板が位置決めされる。これにより、回路基板がキャビティ内を高さ方向(回路基板に垂直な方向)に動かないようにすることができる。以下においては、このパターンの基板位置決め機構を「凸部当接タイプの基板位置決め機構」と呼ぶことがある。
【0018】
凸部当接タイプの基板位置決め機構を採用する場合には、位置決め凸部を、金型に対して着脱可能に設けることが好ましい。これにより、位置決め凸部の高さを、センサモジュール(検出素子)の種類に応じて切り替えることが可能になる。例えば、検出素子が回路基板の上面に固定されている場合を例に挙げると、回路基板をキャビティ内に配置した際に、回路基板の上側に形成される隙間や、下側に形成される隙間は、検出素子の厚さ(高さ)に応じて変わってくる。このため、位置決め凸部の高さも、検出素子の厚さによって変わる。この点、位置決め凸部を着脱可能としておくことで、位置決め凸部を高さの異なる別のものに交換することが可能になる。
【0019】
本発明のセンサモジュールの製造方法において、材料注入工程を行う際に、金型のキャビティ内に硬化性材料をどの程度の圧力で注入するかは、特に限定されない。しかし、硬化性材料の注入圧(射出圧)を高くしすぎると、材料注入工程時にケーブルと回路基板との接続部分に掛かる負担が大きくなる。また、その射出圧によって、ケーブル自体が断線するおそれや、検出素子や回路基板等の部品が破損するおそれもある。このため、硬化性材料の射出圧は、100MPa以下とすることが好ましい。
【0020】
ところで、上述した構成(回路基板を位置決めするための構成)は、検出ヘッドにケーブルが接続されていないセンサモジュールを製造する場合でも好適に採用することができる。すなわち、上記課題は、
検出素子が取り付けられた回路基板をカバーで保護した検出ヘッドを備えたセンサモジュールの製造方法であって、
検出素子が取り付けられた回路基板を金型のキャビティ内に配置する部品配置工程と、
回路基板が配置されたキャビティ内に流動状態の硬化性材料を注入する材料注入工程と、
キャビティ内に注入された硬化性材料を硬化させる材料硬化工程と
を経ることによって、
硬化後の硬化性材料が、回路基板及びそれに取り付けられた検出素子に対して密着状態で一体化されたカバーとなるようにするとともに、
材料注入工程において回路基板がキャビティ内で動かないように回路基板を位置決めする基板位置決め機構を設けた
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法
を提供することによっても解決される。
【0021】
このように、検出ヘッドにケーブルを接続しなくても、検出ヘッドによる検出結果は、無線によって出力することができる。このため、検出ヘッドにケーブルを接続しない場合には、検出ヘッドには、無線通信を行うための無線通信手段が設けられる。無線通信手段としては、無線基板やRF基板等が例示される。この無線通信手段は、検出ヘッドに後付けできなくもないが、上記の部品配置工程において金型のキャビティ内に配置しておくことが好ましい。また、無線通信手段は、上記の回路基板上に設けることもできる。これにより、無線通信手段も検出ヘッドのカバー(硬化性材料)に対して密着状態で一体化させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によって、検出ヘッドのカバーが検出素子や回路基板に対して密着状態で一体化されたセンサモジュールの製造方法であって、検出ヘッドのカバーとなる硬化性材料を金型のキャビティ内に注入する際に、回路基板が所定の位置から動かないようにして、検出精度の低下や不良品の発生が生じないようにしたセンサモジュールの製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の製造方法で得られるセンサモジュールの一例を示した一部破断斜視図である。
【
図2】本発明の製造方法で使用する金型の一例を示した斜視図である。
【
図3】回路基板にケーブルを接続した状態を示した斜視図である。
【
図4】ケーブルが接続された回路基板を金型のキャビティ内に配置している様子を示した斜視図である。
【
図5】回路基板が配置された金型の型締めを行っている様子を示した斜視図である。
【
図6】金型のキャビティ内に硬化性材料を注入する様子を示した断面図である。
【
図7】検出ヘッドに形成されたカバー空乏域を埋める様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のセンサモジュールの製造方法の実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる実施形態は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の技術的範囲は、以下で述べる実施形態に限定されない。本発明のセンサモジュールの製造方法や、それにより製造されるセンサモジュールには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0025】
また、以下の説明で使用する各図には、x軸、y軸及びz軸からなる直交座標系を示している。この直交座標系の各軸の向きは、異なる図面間においても一致させている。以下の説明では、x軸正側を「右」側、x軸負側を「左」側、y軸正側を「後」側、y軸負側を「前」側、z軸正側を「上」側、z軸負側を「下」側と呼ぶことがある。しかし、これは、各部材の相対的位置関係や、各操作の相対的方向を説明するためであり、各部材の絶対的位置や、各操作の絶対的方向を限定するものではない。
【0026】
1.センサモジュールの概要
まず、本発明の製造方法で製造されるセンサモジュールについて説明する。
図1は、本発明の製造方法で得られるセンサモジュールの一例を示した一部破断斜視図である。このセンサモジュールは、検出ヘッド10と、ケーブル20とで構成される。検出ヘッド10は、検出素子11が取り付けられた回路基板12をカバー13で保護したものとなっている。一方、ケーブル20は、その先端部を回路基板11に接続され、その基端側をカバー13の外側に導き出されている。
【0027】
1.1 検出素子
検出素子11は、対象物や対象空間の物理的性質(機械的性質、電磁気的性質、熱的性質又は音響的性質等)や化学的性質を、化学的原理を用いて検出するためのものである。検出素子11の種類は、センサモジュールの用途に応じて適宜決定される。検出素子11が検出する物理量としては、加速度や、温度や、力や、光量や、電場や、磁場等が例示され、検出素子11が検出する化学量としては、濃度等が例示される。本実施形態においては、検出素子11として、加速度を検出するものを用いている。
【0028】
1.2 回路基板
回路基板12は、検出素子11による検出結果を所定の信号(通常、電気信号)に変換してケーブル20に出力するためのものである。このため、回路基板12には、信号の変換等を行うための電子回路が設けられるとともに、ケーブル20を接続するためのケーブル接続部12aが設けられる。本実施形態においては、矩形状を為す回路基板27の縁部付近の4箇所にケーブル接続部12aを設けている。回路基板12は、通常、各種電子部品を実装したプリント基板とされる。
【0029】
ケーブル接続部12aに対するケーブル20の接続方法は、特に限定されず、螺子や端子やソケット等を用いるものであってもよいが、本実施形態においては、はんだ付けを採用している。はんだ付けは、接続対象(ケーブル接続部12aとケーブル20)を電気的に良好に接続(接合)することができる。また、細いケーブル(後述する細ケーブル21)でも緻密に接続固定することができる
【0030】
1.3 カバー
カバー13は、検出素子11が取り付けられた回路基板11の周囲を覆って、検出素子11や回路基板11を水やホコリ等から保護するためのものである。
【0031】
このカバー13に相当する部材は、従来のセンサモジュールでも設けられている。しかし、従来のセンサモジュールでは、カバー13に相当する部材が、複数の部材(例えば、回路基板11の一側を覆う第一カバーと、回路基板11の他側を覆う第二カバー)によって構成されており、これらの複数の部材(第一カバー及び第二カバー)を、回路基板11の周囲に配置して互いに組み付けることで、回路基板11の周囲がカバー13で覆われた状態となるようにしていた。
【0032】
このため、従来のセンサモジュールでは、カバー13を構成する複数の部材の隙間(第一カバーと第二カバーとの境界部に形成される隙間)や、カバー13とケーブル20との隙間から、水やホコリが侵入するおそれがあった。加えて、カバー13の内面と、検出素子11や回路基板11の外面との間には、空間(空隙)が形成される。このため、検出ヘッド10が衝撃を受けた際に、検出素子11や回路基板12がカバー13内で動いて傷つくおそれがあった。したがって、従来のセンサモジュールは、必ずしも、防水性や耐腐食性や堅牢性に優れたものであるとは言えず、過酷な環境では使用しにくかった。
【0033】
この点、本発明の製造方法で製造されるセンサモジュールでは、
図1に示すように、カバー13を、検出素子11や回路基板12の外面に対して密着状態で一体化させている。したがって、カバー13の内部には、空間(空隙)が殆ど存在しない状態となっており、検出素子11や回路基板12等の部品が、カバー13の内部でぐらつかないようになっている。また、検出ヘッド10の剛性を高くすることもできる。このため、検出ヘッド10の堅牢性を高めることができる。
【0034】
加えて、カバー13は、その全体が一体的に形成されている。また、検出素子11や回路基板12と同様、ケーブル20の先端部の外面も、カバー13に密着して一体化した状態となっている。このため、カバー13には、その内部に通じる隙間が存在しない状態となっている。したがって、カバー13によって、検出素子11や回路基板12等の部品がしっかりと封止され、検出ヘッド10の防水性や耐腐食性が高まっている。
【0035】
このように、本発明の製造方法で製造されるセンサモジュールは、カバー13を上記のように構成したことによって、検出ヘッド10の堅牢性や防水性や耐腐食性が高められており、過酷な環境での使用にも耐えることができる。このカバー13は、カバー13を成形する金型内に、回路基板12(検出素子11を取り付け、ケーブル20を接続した状態の回路基板12)を配置し、その状態で金型内に硬化性材料(熱可塑性樹脂等)を注入して硬化させることで得ることができる。本発明の製造方法は、このカバー13を成形する硬化性材料を金型内に注入する際に生じる不具合を解消するものである。これについては、後で詳しく説明する。
【0036】
1.4 ケーブル
ケーブル20は、回路基板12によって変換された電気信号を外部へ出力するためのものである。検出素子11や回路基板12を外部から制御可能とする場合には、その制御を行うための信号も、このケーブル20を通じて回路基板12へと入力される。このため、
図1に示すように、ケーブル20の先端部は、回路基板12のケーブル接続部12aに接続される。
【0037】
本実施形態において、ケーブル20は、複数系統(
図1の例では4系統)の細ケーブル21を共通のシース22内に収めたマルチケーブルとなっている。それぞれの細ケーブル21の先端部は、回路基板12の4箇所に設けられたそれぞれのケーブル接続部12aに接続される。また、ケーブル20の先端側外周部には、樹脂製のブッシュ部23を取り付けている。このブッシュ部23は、検出ヘッド10との境界部分のケーブル20を保護し、その境界部分でケーブル20が急角度で折れ曲がらないようにするためのものである。
【0038】
2. センサモジュールの製造方法
続いて、本発明のセンサモジュールの製造方法について説明する。
図2は、本発明の製造方法で使用する金型30の一例を示した斜視図である。金型30は、通常、複数の分割型(
図2の例では、第一分割型31及び第二分割型32)で構成されるところ、
図2(a)には、一方の分割型(第一分割型31)を示し、
図2(b)には、他方の分割型(第二分割型32)を示している。本実施形態において、第一分割型31は、下側に配される下型となっており、第二分割型32は、上側に配される上型となっている。
図2(b)では、図示の便宜上、第二分割型32の上下をひっくり返して描いている。
【0039】
図2に示すように、金型30(第一分割型31及び第二分割型32)には、キャビティαとケーブル挿通孔βが設けられている。キャビティαは、検出ヘッド10(
図1)のカバー13を成形する硬化性材料(熱可塑性樹脂等)を注入するための空間である。このため、第一分割型31と第二分割型32とを型締めすると、キャビティαは、カバー13に倣った形状となる。一方、ケーブル挿通孔βは、ケーブル20(
図1)を金型30のキャビティαの外部へと取り出すための部分である。本実施形態においては、ケーブル挿通孔βを、第一分割型31と第二分割型32との境界部に設けており、第一分割型31と第二分割型32とを型締めすると、ケーブル挿通孔βが、ケーブル20に倣った形状となるようにしている。
【0040】
図1に示すセンサモジュールは、後述するケーブル接続工程と、部品配置工程と、材料注入工程と、材料硬化工程と、仕上げ工程とを経ることによって製造される。
図2に示した金型30は、部品配置工程以降の工程において用いられる。以下、これらの工程について詳しく説明する。
【0041】
2.1 ケーブル接続工程
図3は、回路基板12にケーブル20を接続した状態を示した斜視図である。ケーブル接続工程は、
図3に示すように、ケーブル20の先端部(細ケーブル21の先端部)を、回路基板12のケーブル接続部12aに接続する工程である。既に述べたように、本実施形態においては、はんだ付けによって、それぞれの細ケーブル21を、それに対応するケーブル接続部12aに接続している。回路基板12には、検出素子11も取り付けられている。
【0042】
2.2 部品配置工程
上記のケーブル接続工程を終えると、続いて、部品配置工程を行う。
図4及び
図5に、部品配置工程を行っている様子を示す。部品配置工程は、
図4及び
図5に示すように、ケーブル20が接続された回路基板12を金型30のキャビティαの内部に配置し、ケーブル20の基端側を、金型30に設けられたケーブル挿通孔βを通じてキャビティαの外部に取り出した状態とする工程である。
【0043】
本実施形態においては、
図4に示すように、まず、ケーブル20が接続された回路基板12を、下型となる第一分割型31に対して位置決めした後、
図5に示すように、上型となる第二分割型32を、第一分割型31(下型)に対して組み付けることによって、回路基板12が金型30のキャビティαの内部に配置された状態となるようにしている。
【0044】
ただし、ケーブル20が接続された回路基板12を、キャビティαの内部に配置しただけでは、回路基板12やケーブル20の位置や向き(金型30に対する位置や向き)が定まらない。このため、検出素子11の位置や向きも定まらず、検出素子11が、その検出対象(本実施形態においては加速度)を正確に検出できなくなるおそれがある。また仮に、検出素子11を正しい位置に正しい向きで配置できたとしても、後述する材料注入工程で、金型30のキャビティαに硬化性材料51(
図6を参照)する際に、検出素子11や回路基板12が硬化性材料51から圧力を受けて移動するおそれがある。
【0045】
このため、本発明の製造方法においては、金型30に対して回路基板12を位置決めするための基板位置決め機構を設けている。基板位置決め機構の具体的な構造は、特に限定されないが、本実施形態においては、位置決めピン41と、位置決め孔42と、位置決め凸部43とが、基板位置決め機構として機能するようにしている。位置決めピン41及び位置決め凸部43は、金型30側(第一分割型31側)に設けており、位置決め孔42は、回路基板12に設けている。
【0046】
位置決めピン41及び位置決め孔42は、回路基板12を水平方向(x-y面に平行な方向)で位置決めするためのものである。
図4に示すように、位置決めピン41を位置決め孔42に挿通することで、回路基板12が水平方向で位置決めされる。通常、位置決めピン41及び位置決め孔42は、複数組設けられ、位置決めピン41と位置決め孔42は、同数とされる。本実施形態においては、平面視矩形状を為す回路基板12における四隅部に、計4個の位置決め孔42を設けており、それぞれの位置決め孔42に対応する位置に、計4本の位置決めピン41を設けている。これにより、回路基板12をバランスよく支持し、回路基板12の位置決め精度を高めることができる。
【0047】
ただし、位置決め孔42の内周面と、それに挿入された位置決めピン41の外周面との間に隙間が存在すると、回路基板12が水平方向に位置ズレするおそれがある。また、回路基板12が水平方向に対して傾斜するおそれがある。センサモジュールの心臓部である検出素子11は、回路基板12に取り付けられているため、このような回路基板12の位置ズレや傾きは、検出素子11の検出精度の低下を招くおそれがある。例えば、本実施形態のように、検出素子11が加速度を検出するものである場合には、誤った方向の加速度(本来加速度を検出すべき方向からズレた方向の加速度)が検出されるおそれがある。このため、本実施形態においては、位置決め孔42の内径を、位置決めピン42の外径に略一致させており、上記の隙間ができないようにしている。
【0048】
一方、位置決め凸部43は、回路基板12を上下方向(z軸方向)で位置決めするためのものである。
図4に示すように、位置決め凸部43の上側に回路基板12を載せ、回路基板12の下面に位置決め凸部43の先端面(上端面)を当接させることで、回路基板12が、それ以上下側(z軸方向負側)に移動できない状態となる。このため、回路基板12が上下方向で位置決めされる。本実施形態においては、1個の位置決め凸部43を、回路基板12の中心部に重なる位置(複数本の位置決めピン41からの距離が略等しくなる位置)に設けている。これにより、1つの位置決め凸部43で回路基板12をバランスよく支持することができる。
【0049】
位置決め凸部43は、金型30に対して一体的に形成してもよいが、金型30に対して着脱可能な構造とすることが好ましい。これにより、位置決め凸部43の高さを、検出素子11や回路基板の種類等に応じて切り替えることができる。このため、金型30の汎用性を高めることができる。本実施形態においては、位置決め凸部43と、その周囲に配される位置決めピン41とを、その下側に配された台座部44ごと、金型30から取り外すことができるようにしている。金型30に対する台座部44の固定は、図示省略の固定具(ボルト等)を用いて行われる。
【0050】
以上のように、本実施形態においては、基板位置決め機構によって、金型30に対して回路基板12を位置決めできるようにしている。しかし、回路基板12に接続されたケーブル20は、それ自体が可撓性を有しているため、回路基板12を位置決めしたとしても、ケーブル20の動きを完全に規制することができない。このため、後述する材料注入工程で、金型30のキャビティαに硬化性材料51(
図6を参照)する際に、その硬化性材料51の圧力によってケーブル20がキャビティαの内側から外側に向かって押され、回路基板12に対してケーブル20が引っ張られた状態となるおそれがある。この場合には、ケーブル20と回路基板12との接続が外れるおそれがある。
【0051】
また、本実施形態のように、ケーブル20の先端側外周部にブッシュ部23を取り付けた場合には、ブッシュ部23が所望の位置よりもy軸方向負側に移動するおそれもある。したがって、検出ヘッド10とブッシュ部23との間に隙間ができる等、ブッシュ部23がカバー13に適切に一体化されない可能性がある。この場合には、センサモジュールの外観が悪くなるだけでなく、ブッシュ部23が所望の機能(センサヘッド10との境界部分のケーブル20の折れ曲がりを防ぐ機能)を発揮できなくなるおそれがある。
【0052】
この点、本実施形態では、ケーブル20が金型30のキャビティαの外側に向かって移動しにくくする工夫を施している。すなわち、ケーブル20の先端側を保持するケーブル保持機構を設けることによって、ケーブル20のy軸方向負側への移動を規制している。既に述べたように、ケーブル保持機構としては、「掛止タイプのケーブル保持機構」と、「貫通孔タイプのケーブル保持機構」と、「押圧タイプのケーブル保持機構」との3パターンが挙げられるところ、本実施形態では、「掛止タイプのケーブル保持機構」を採用している。
【0053】
具体的には、
図4に示すように、ケーブル20の先端部付近の外周部に設けた掛止部61と、金型30のケーブル挿通孔β付近に設けた被掛止部62とで、ケーブル保持機構を構成している。本実施形態において、掛止部61は、ブッシュ部23に設けた拡径部としており、被掛止部62は、ケーブル挿通孔βにおけるキャビティα側の端部に設けた段差部としている。金型30のケーブル挿通孔βにケーブル20を保持させる際に、掛止部61を被掛止部62に掛止させることによって、ケーブル20のy軸方向負側への移動を規制することができる。したがって、上記の不具合の発生を抑えることができる。
【0054】
2.3 材料注入工程
上記の部品配置工程を終えると、続いて、材料注入工程を行う。
図6に、材料注入工程を行っている様子を示す。
図6中の金型30は、y-z面に平行な面で切断した断面で示している。材料注入工程は、
図6に示すように、回路基板12が配置されたキャビティαに流動状態の硬化性材料51を注入する工程である。材料注入工程は、金型30を型締めした状態で行われる。キャビティαへの硬化性材料51の注入は、金型30に設けられた材料注入孔(図示省略)を通じて行われる。
【0055】
キャビティαへ注入する硬化性材料51としては、[1]冷却すると硬化するもの(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)や、[2]加熱すると硬化するもの(熱硬化性樹脂や熱硬化性エラストマー等)や、[3]空気中の水分と反応して硬化するもの(縮合反応型のシリコーン樹脂等)や、[4]水分が蒸発することで硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルション等)や、[5]化学反応により硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルションや紫外線硬化樹脂等)等を用いることができる。
【0056】
なかでも、熱可塑性樹脂は、成形性に優れており、硬化性材料51として好適に用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレン(PE)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリ塩化ビニル(PVC)や、ポリスチレン(PS)等が例示される。ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチックや、芳香族ポリアミド(PPA)やポリフェニレンスルファイド(PPS)等のスーパーエンジニアリングプラスチックを採用することもできる。本実施態様の製造方法においては、これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を硬化性材料51として用いている。ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、耐熱性に優れるだけでなく、耐水性や耐薬品性にも優れるという利点を有している。
【0057】
また、本実施形態においては、上記の硬化性材料51を完全溶融状態(液相のみとなった状態。硬化性材料51に繊維等を添加する際には、その添加物を除いた部分が液相となっていればよい。)として、キャビティαに注入している。このため、キャビティαに注入した硬化性材料51が、キャビティαの隅々まで行き渡りやすくなっている。したがって、検出素子11の外面と硬化性材料51との間や、回路基板12の外面と硬化性材料51との間や、ケーブル20の先端部外周面と硬化性材料51との間に、空間(空隙)が形成されにくくなっている。
【0058】
ただし、硬化性材料51として熱可塑性樹脂用いる場合には、熱可塑性樹脂からなる硬化性材料51を流動状態とするために、硬化性材料51を融点以上となるまで加熱する必要がある。このため、硬化性材料51は、加熱された状態でキャビティαに注入されることになる。しかし、本実施形態では、上述したように、回路基板12に対してケーブル20をはんだ付けしている。加えて、検出素子11等の他の部品も、回路基板12に対してはんだ付けされることが多い。このため、硬化性材料51の熱によってはんだが溶けるおそれがある。
【0059】
この点、本実施形態においては、はんだを溶かさない温度に保ちながら、硬化性材料51を注入するようにしている。しかし、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の融点は、232~267℃であるのに対して、一般的なはんだの融点は、200℃前後である。このため、融点の高い「高融点はんだ」を使用することもできる。高融点はんだの中には、融点が250℃以上のものや、300℃以上のものもある。
【0060】
また、回路基板12とケーブル20との接続部分等、はんだ付けする部分に断熱シールを施すことによっても、はんだが溶けるのを防止することができる。断熱シールとしては、シリコーン系シーリング材等、断熱性と電気絶縁性に優れた素材を好適に用いることができる。断熱用シーリング材を施すと、その箇所を補強できる(例えば、出力ケーブル20の引き抜きに対する強度を高めることができる等)という副次的な効果も奏される。
【0061】
ところで、既に述べたように、材料注入工程においては、キャビティαに注入される硬化性材料51の圧力によって、回路基板12やケーブル20が金型30に対して動くおそれがあるところ、上記の基板位置決め機構(位置決めピン41、位置決め孔42及び位置決め凸部43)やケーブル保持機構(掛止部61及び被掛止部62)によって、回路基板12やケーブル20が動かないように位置決めされた状態となっている。
【0062】
ただし、上記の基板位置決め機構(位置決めピン41、位置決め孔42及び位置決め凸部43)によっては、回路基板12の上側(z軸方向正側)への移動は規制されない。このため、回路基板12が下側(z軸方向負側)から圧力を受けると、回路基板12が位置決め凸部43から浮き上がるおそれがある。この回路基板12の浮き上がりは、位置決め凸部43に相当する部分を第二分割型32側にも設けて、回路基板12の上面側を押さえ付けるようにすれば、防ぐことができる。
【0063】
しかし、回路基板12の上面側は、検出素子11や他の電子部品が設けられている分、回路基板12の下面側よりも複雑な形態を為している。このため、キャビティαにおける、回路基板12よりも上側の部分は、回路基板12よりも下側の部分と比較して、硬化性材料51の流動が妨げられやすい状態となっている。このため、回路基板12の上面側を押さえ付ける機構(位置決め凸部43に相当する部分)をさらに設けると、その機構によって、硬化性材料51の流動がより妨げられやすくなる。
【0064】
この点、本実施形態においては、キャビティαに硬化性材料51を注入する材料注入孔(図示省略)を第二分割型32(上型)に設けており、回路基板12よりも上側(z軸方向正側)から硬化性材料51を注入するようにしている。これにより、硬化性材料51によって回路基板12が下側(z軸方向負側)に押さえ付けられた状態となるため、回路基板12が位置決め凸部43から浮き上がらないようにすることができる。
【0065】
キャビティαに流し込む硬化性材料51の圧力は、特に限定されない。しかし、硬化性材料51の圧力を高くしすぎると、キャビティαに硬化性材料51が勢いよく流し込まれるようになる。このため、上記のように、回路基板12等が動かないようにする工夫を施していたとしても、回路基板12等が動くおそれがある。また、回路基板12に取り付けられた部品(検出素子11等)が損傷するおそれもある。したがって、硬化性材料51は、100MPa以下の圧力で流し込むことが好ましい。硬化性材料51を流し込む圧力は、50MPa以下とすることが好ましく、10MPa以下とすることがより好ましく、5MPa以下とすることがさらに好ましい。
【0066】
本実施形態においては、硬化性材料51を積極的に加圧することなく(射出成形機におけるスクリュー等で加圧することなく)、略重力のみで落下させることによって、キャビティαの内部に硬化性材料51を流し込んでいる。既に述べたように、本実施形態では、硬化性材料51を完全溶融状態でキャビティαに注入するようにしたため、このような低圧で注入しても、硬化性材料51をキャビティαの隅々に行き渡らせることができる。硬化性材料51をキャビティαに注入した後には、硬化性材料51が上記の材料注入孔を逆流しないように、保圧されることもあるところ、このときの保圧の圧力も、低めに抑えるとよい。
【0067】
2.4 材料硬化工程
上記の材料注入工程を終えると、続いて、材料硬化工程を行う。材料硬化工程は、金型30のキャビティαの内部に注入された硬化性材料51を硬化させる工程である。この材料硬化工程も、金型30を型締めした状態で行われる。硬化性材料51が硬化すると、その硬化性材料51は、検出素子11や、回路基板12や、ケーブル20の先端部に対して密着状態で一体化されたカバー13となる。
【0068】
硬化性材料51を硬化させる方法は、使用する硬化性材料51の種類等によって異なる。例えば、硬化性材料51として、[1]冷却すると硬化するもの(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)を用いた場合には、硬化性材料51を自然冷却することや、又は冷却手段等を用いて硬化性材料51を積極的に冷却することで、硬化性材料51を硬化させることができる。また、硬化性材料51として、[2]加熱すると硬化するもの(熱硬化性樹脂や熱硬化性エラストマー等)を用いた場合には、硬化性材料51の温度を高めることで、硬化性材料51を硬化させることができる。さらに、硬化性材料51として、[3]空気中の水分と反応して硬化するもの(縮合反応型のシリコーン樹脂等)を用いた場合には、硬化性材料51を空気にしばらく接触させることで、硬化性材料51を硬化させることができる。
【0069】
さらにまた、硬化性材料51として、[4]水分が蒸発することで硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルション等)を用いた場合には、硬化性材料51内の水分が自然と蒸発するまで放置する、又は、硬化性材料51を乾燥する等して硬化性材料51内の水分を積極的に蒸発させることで、硬化性材料51を硬化させることができる。そして、硬化性材料51として、[5]化学反応により硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルションや紫外線硬化樹脂等)を用いた場合には、化学反応が開始される状態となってから当該化学反応が終わるまで硬化性材料51をその状態に保つことで、硬化性材料51を硬化させることができる。
【0070】
硬化後の硬化性材料51は、検出ヘッド10のカバー13となる。このカバー13は、上記のように成形したため、検出素子11及び回路基板12の外面に密着状態で一体化されている。また、カバー13は、ケーブル20の先端部付近の外面にも密着状態で一体化されている。
【0071】
2.5 仕上げ工程
上記の材料硬化工程を終えると、金型30を開いて、金型30から検出ヘッド10を取り出し、仕上げ工程を行う。
【0072】
また、本実施形態においては、上記の部品配置工程で、位置決め凸部43の先端面に回路基板12を載せていたため、
図7(a)に示すように、回路基板12の下側(位置決め凸部43が位置していた箇所)に、カバー13で覆われないカバー空乏域13aが形成され、そのカバー空乏域13aを通じて回路基板12が外部に露出した状態となる。仕上げ工程においては、
図7(b)に示すように、このカバー空乏域13aを埋める工程も行われる。
図7(a)は、金型30から取り出した直後の検出ヘッドを示した断面図であり、
図7(b)は、カバー空乏域13aを埋めた後の検出ヘッドを示した断面図である。
【0073】
カバー空乏域13aを埋める材料(空乏域充填材料52)は、流動状態でカバー空乏域13aに流し込まれて硬化される。空乏域充填材料52としては、上記の硬化性材料51と同様、[1]冷却すると硬化するもの(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)や、[2]加熱すると硬化するもの(熱硬化性樹脂や熱硬化性エラストマー等)や、[3]空気中の水分と反応して硬化するもの(縮合反応型のシリコーン樹脂等)や、[4]水分が蒸発することで硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルション等)や、[5]化学反応により硬化するもの(エポキシ樹脂系エマルションや紫外線硬化樹脂等)等を好適に用いることができる。
【0074】
カバー13との相性等を考慮すると、空乏域充填材料52を、硬化性材料51と同一材料とすることが好ましい。本実施形態においても、硬化性材料51で使用したポリブチレンテレフタレート(PBT)を、空乏域充填材料52として使用している。カバー空乏域13aに空乏域充填材料52を流し込む温度や圧力等も、硬化性材料51を流し込むときと同様としている。
【0075】
空乏域充填材料52が硬化すると、空乏域充填材料52がカバー13に一体化した状態となる。ただし、空乏域充填材料52とカバー13との境界面が単純な形状であると、硬化後の空乏域充填材料52がカバー13から脱落するおそれがある。このため、本実施形態においては、
図2に示すように、位置決めピン43の下側(z軸方向負側)に配された台座部44の上面(回路基板12が配される側の面)における複数箇所に凹部45を設けている。
【0076】
これにより、金型30から取り出された後のカバー13には、
図7(a)に示すように、カバー空乏域13aに連続する形で、カバー空乏域13bが形成されるとともに、
カバー13における、カバー空乏域13bと接触する箇所には、凸部13cが形成される。したがって、
図7(b)に示すように、空乏域充填材料52とカバー13との境界面が複雑になり、カバー13に対する空乏域充填材料52の噛みつきが良くなる。このため、硬化後の空乏域充填材料52がカバー13から脱落しにくくすることができる。
【0077】
2.6 完成
上記の仕上げ工程が終わると、センサモジュールが完成する。このセンサモジュールは、検出ヘッド10のカバー13がその内側の部品(検出素子11や回路基板12等)に対して密着状態で一体化されているため、検出ヘッド10は、堅牢性に優れるだけでなく、防水性や耐腐食性にも優れている。
【0078】
また、カバー13を成形する硬化性材料51を注入する際の回路基板12を、基板位置決め機構(位置決めピン41、位置決め孔42及び位置決め凸部43)によって位置決めしたため、回路基板12や検出素子11が、カバー13内における正しい位置に正しい向きで配されている。このため、得られたセンサモジュールは、検出精度の低下を招きにくいものとなっている。
【0079】
さらに、カバー13を成形する硬化性材料51を注入する際のケーブル20の先端側の動きを、ケーブル保持機構(掛止部61及び被掛止部62)によって規制したため、ケーブル20と回路基板12との接続の外れや、ブッシュ部23の位置ずれ等の不具合が発生しにくいものとなっている。
【0080】
3.変形例
本発明の製造方法の変形例について説明する。以下においては、第一変形例から第六変形例までの計6個の変形例を挙げる。各変形例で特に言及しない構成については、
図1~7を用いて説明した上記の実施形態(以下、「標準例」と表記することがある。)と同様の構成を採用することができる。また、各変形例の構成も、お互いが矛盾しない限りは、適宜組み合わせて採用することができる。
【0081】
3.1 第一変形例
図8は、第一変形例を説明する図である。上記の標準例においては、
図3に示すように、ケーブル20の先端側外周部に樹脂製のブッシュ部23を取り付け、そのブッシュ部23の拡径部が、ケーブル保持機構の掛止部61として機能するようにしていた。これに対し、第一変形例では、
図4に示すように、ケーブル20の先端部外周部に、金属製の留め具24を取り付けており、その留め具24に形成された一対の耳部が、ケーブル保持機構の掛止部61として機能するようにしている。留め具24は、カシメ等によってケーブル20に取り付けることができる。第二変形例においても、掛止部61は、金型30に設けられた被掛止部62に掛止される。
【0082】
3.2 第二変形例
図9は、第二変形例を説明する斜視図であり、
図10は、第二変形例を説明する断面図である。上記の標準例においては、
図3に示すように、ケーブル20側に設けた掛止部61と、金型30側に設けた被掛止部62とが、ケーブル保持機構として機能するようにしていた。また、ケーブル接続部12aは、回路基板12の上面側に平面状に設けており、このケーブル接続部12aにケーブル20(細ケーブル21)の先端部を載せ、その上側からはんだ付けするようにしていた。
【0083】
これに対し、第二変形例では、
図9及び
図10に示すように、回路基板12におけるケーブル接続部12a付近を貫通して設けたケーブル保持孔12bが、ケーブル保持機構として機能するようにしている。また、ケーブル接続部12aは、回路基板12を上下方向(z軸方向)に貫通する貫通孔(ケーブル接続孔)の状態で設けており、このケーブル接続孔12aにケーブル20(細ケーブル21)の先端部を通し、そのケーブル接続孔12aをはんだで埋めることによって、はんだ付けするようにしている。これにより、ケーブル接続孔12aでケーブル20(細ケーブル21)を強固にはんだ付けするだけでなく、ケーブル保持孔12bによって、ケーブル20のy軸方向負側への動きを規制することも可能となっている。
【0084】
というのも、ケーブル保持孔12bを通じてケーブル20(
図9及び
図10では細ケーブル21)を回路基板12の一面側(
図9及び
図10では下面側)から他面側(
図9及び
図10では上面側)に通した状態で、ケーブル20(細ケーブル21)の先端部をケーブル接続孔12aに接続すると、ケーブル20(細ケーブル21)の先端部付近は、
図10に示すように、「S」字状に湾曲した状態となる。ケーブル20(細ケーブル21)は、ある程度弾性を有しているため、曲がると真っ直ぐな状態に戻ろうとするところ、上記のように、ケーブル20(細ケーブル21)をケーブル保持孔12b付近で「S」字状に湾曲させることで、ケーブル20(細ケーブル21)がケーブル保持孔12bの内周部や開口端に弾性的に押し当った状態となる。このため、ケーブル20をy軸方向負側に引っ張る力に対してケーブル20が抵抗しやすくなり、ケーブル20がy軸方向負側に移動しにくくなるからである。
【0085】
また、ケーブル20(細ケーブル21)をケーブル保持孔12bに通すことで、ケーブル20にy軸方向負側に引っ張る力が加えられても、その力がケーブル接続部12aに集中しないようにすることもできる。したがって、ケーブル接続部12からケーブル20(細ケーブル21)が外れにくくすることもできる。
【0086】
ケーブル保持孔12bは、通常、それぞれのケーブル接続部12aに併設する状態で、ケーブル接続部12aと同数設けられる。第二変形例においても、4個のケーブル接続部12aに対して、4個のケーブル保持孔12bを設けている。それぞれのケーブル保持孔12bの横幅(x軸方向の幅)は、通常、それに通されるケーブル20(細ケーブル21)の直径D
1(
図10)と同程度とされるが、ケーブル保持孔12bの縦幅W
1(
図10)は、ケーブル20(細ケーブル21)の直径D
1よりも大きくすることが好ましい。換言すると、ケーブル保持孔12bを、y軸方向に延びた長孔状に形成することが好ましい。これにより、ケーブル20(細ケーブル21)が急角度で折れ曲がらないように適度なカーブで湾曲させることが可能になる。同様の理由で、ケーブル接続孔12aも長孔状に形成することが好ましい。
【0087】
ケーブル20(細ケーブル21)の直径D
1に対するケーブル保持孔12bの縦幅W
1の比W
1/D
1の値は、特に限定されないが、1.5以上とすることが好ましく、2以上とすることがより好ましい。ただし、比W
1/D
1を大きくしすぎる(ケーブル保持孔12bを長く形成しすぎる)と、ケーブル20(細ケーブル21)のカーブが緩くなり、上記の効果が奏されにくくなる。このため、比W
1/D
1は、通常、5以下とされる。ケーブル接続孔12aの横幅や縦幅も、ケーブル保持孔12bと同程度に設定することができる。また、ケーブル接続孔12aからケーブル保持孔12bまでの距離L
1(
図10)は、ケーブル保持孔12bの縦幅W
1と同程度に設定することができる。
【0088】
ところで、ケーブル保持孔12bのエッジ(開口端の角部)が尖っていると、その尖った部分がケーブル20に局所的に当たり、ケーブル20が傷ついたり、切れたりするおそれがある。このため、ケーブル保持孔12bのエッジには、アールを付けている。
【0089】
3.3 第三変形例
図11は、第三変形例を説明する斜視図である。上記の標準例では、カバー13を成形する金型30として、
図2に示すものを用いたのに対して、第三変形例では、
図11に示す金型30を用いて、カバー13を成形するようにしている。第三変形例で使用する金型30には、ケーブル挿通孔βにおける中途部分に、ブッシュ押さえ63を設けている。このブッシュ押さえ63は、ケーブル20の先端側外周部に設けられたブッシュ部23(
図3を参照)のy軸方向負側の端部付近を外側から押さえ付ける部分となっている。
【0090】
ブッシュ部23は、樹脂等によって形成されているため、上記の材料注入工程を行う際には、硬化性材料51から受ける圧力で変形する可能性がある。このため、
図3に示すように、ブッシュ部23に掛止部61(拡径部)を設けていても、ブッシュ部23が変形してケーブル挿通孔βからy軸方向負側に押し出されるおそれがあった。この点、第三変形例のように、ケーブル挿通孔βにブッシュ押さえ63を設けておくことで、ブッシュ部23が変形しても、ブッシュ部23がケーブル挿通孔βから押し出されないようにすることができる。ブッシュ押さえ63は、通常、ケーブル挿通孔βの内周面から内包に突き出る凸部の形態で設けられる。本実施形態においては、ブッシュ押さえ63を、断面三角状の環状凸部としている。
【0091】
3.4 第四変形例
図12は、第四変形例を説明する斜視図である。上記の第三変形例では、
図11に示すように、金型30のケーブル挿通孔βにブッシュ押さえ63を設けており、このブッシュ押さえ63で、ケーブル20の先端側外周部に取り付けられたブッシュ部23を押さえ付けるようになっていた。これに対して、第四変形例では、
図12に示すように、金型30におけるケーブル挿通孔βの中途部分に、内向き凸部64を設けており、この内向き凸部64によって、ケーブル20のシース22を押さえ付けるようになっている。これによっても、ケーブル20がy軸方向で動かないようにすることができる。内向き凸部64は、ケーブル挿通孔βの内周面に沿って環状に設けることもできる。また、内向き凸部64は、ケーブル挿通孔βの中心線方向に隙間を隔てて多段に設けることもできる。これにより、ケーブル20をより強固に保持することが可能になる。
【0092】
3.5 第五変形例
図13は、第五変形例を説明する斜視図である。上記の標準例では、
図2に示すように、台座部44の上面に設けた位置決め凸部43によって、回路基板12を上下方向(z軸方向)で位置決めするようになっていた。このため、
図7に示すように、成形後のカバー13には、位置決め凸部43に倣った形状のカバー空乏域13aが形成され、このカバー空乏域13aを空乏域充填材料52で埋めていた。しかし、カバー13と空乏域充填材料52との密着性が良好でない場合には、カバー13と空乏域充填材料52との境界部から水が侵入し、その水が回路基板12の中央部に到達するおそれがあった。このため、回路基板12やそれに取り付けられた電子部品が誤作動する等の不具合が生じるおそれがあった。
【0093】
この点、第五変形例では、
図13に示すように、位置決め凸部43を設けておらず、その代わりに、位置決めピン41の下側区間に大径部46を設けている。大径部46は、位置決めピン41における上側区間よりも径が大きくなっている。この大径部46の上端面で回路基板12を下側から支えることによって、回路基板12を上下方向(z軸方向)で位置決めすることができる。
【0094】
第五変形例における大径部46は、標準例の位置決め凸部43(
図4)と同様、成形後のカバー13に、硬化性材料51の空乏域(
図7におけるカバー空乏域13aを参照)を形成する。この空乏域も、上述した空乏域充填材料52(
図7)によって埋められる。第五変形例においても、カバー13と空乏域充填材料52との密着性が良好でない場合に、カバー13と空乏域充填材料52との境界部から水が侵入する可能性があることについては、標準例と同様である。しかし、第五変形例の場合には、万が一水が侵入することがあっても、その箇所は、回路基板12の四隅部であり、検出素子11等の電子部品や、回路が配置される回路基板12の中央部は、硬化性材料51によって封止された状態となっている。このため、上記のような不具合の発生を抑えることができる。
【0095】
3.6 第六変形例
図14は、第六変形例を説明する断面図である。上記の標準例では、
図6に示すように、位置決めピン41及び位置決め凸部43を設けた台座部44を第一分割型31(下型)側に設けており、位置決め凸部43の上端面を回路基板12の下側から当接させることで、回路基板12がその場所から下側に移動しないようにしていた。これに対して、第六変形例では、
図14に示すように、位置決めピン41及び位置決め凸部43を設けた台座部44を第二分割型32(上型)側に設けており、位置決め凸部43の下端面を回路基板12の上側から当接させることで、回路基板12がその場所から上側に移動しないようにしている。このため、検出素子11等の機能部分は、位置決め凸部43と干渉しないように、回路基板12の下面側に設けている。
【0096】
第六変形例においては、位置決めピン41は、回路基板12を水平方向(x-y面に平行な方向)で位置決めするだけでなく、回路基板12が重力によって下降しない程度の保持力で、回路基板12を保持する機能も発揮するようになっている。具体的には、位置決めピン41の外周面と、回路基板12の位置決め孔42の内周面との間に生ずる摩擦力等によって、回路基板12が下降しないようにしている。
【0097】
この第六変形例において、金型30のキャビティα内に硬化性樹脂51を注入する材料注入孔70は、第一分割型31(下型)側に設けてもよいが、
図14に示した例では、第二分割型32(上型)における、回路基板12の上側に重ならない位置に設けている。これにより、ゲート70から注入した硬化性材料51が、回路基板12の下側に回り込み、回路基板12を下側から押し上げるようになる。したがって、回路基板12を、位置決め凸部43の下端面と当接する箇所で位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0098】
10 検出ヘッド
11 検出素子
12 回路基板
12a ケーブル接続部
12b ケーブル保持孔
13 カバー
13a カバー空乏域
13b カバー空乏域
13c 凸部
20 ケーブル
21 細ケーブル
22 シース
23 ブッシュ部
24 留め具
30 金型
31 第一分割型(下型)
32 第二分割型(上型)
41 位置決めピン
42 位置決め孔
43 位置決め凸部
44 台座部
45 凹部
46 大径部
51 硬化性材料
52 空乏域充填材料
61 掛止部
62 被係止部
63 ブッシュ押さえ
64 内向き凸部
70 材料注入孔
α キャビティ
β ケーブル挿通孔