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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076243
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187722
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601DE04
4C601EE04
4C601HH15
4C601HH29
4C601HH31
4C601JB30
4C601JB45
4C601JC16
4C601KK02
(57)【要約】
【課題】カラードプラ法における鏡面反射エコーに起因するアーチファクトを少ない演算量で低減すること。
【解決手段】 実施形態に係る超音波診断装置は、送信部、受信部、ビームフォーミング部、フィルタ部、主成分分析部及びコヒーレント加算部を有する。送信部は、互いに送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信をパケット単位で繰り返す。受信部は、複数の超音波送信にそれぞれ対応する複数の受信信号を受信する。ビームフォーミング部は、複数の受信信号にそれぞれビームフォーミングを施す。フィルタ部は、複数の初期画像に対して送信角及び/又は送信始点が同じグループ毎にMTIフィルタを施す。主成分分析部は、複数のMTI画像に対して送信角及び/又は送信始点が同じパケット毎に主成分分析を施す。コヒーレント加算部は、複数の主成分画像に対してパケット毎にコヒーレント加算を施して複数のコヒーレント加算画像を生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子を有する超音波プローブを介して、互いに送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信をパケット単位で繰り返す送信部と、
前記超音波プローブを介して、前記複数の超音波送信にそれぞれ対応する複数の受信信号を受信する受信部と、
前記複数の受信信号にそれぞれビームフォーミングを施して複数の初期画像を生成するビームフォーミング部と、
前記複数の初期画像に対して前記送信角及び/又は送信始点が同じグループ毎にMTIフィルタを施して複数のMTI画像を生成するフィルタ部と、
前記複数のMTI画像に対して前記送信角及び/又は送信始点が同じパケット毎に主成分分析して複数の主成分画像を生成する主成分分析部と、
前記複数の主成分画像に対して前記パケット毎にコヒーレント加算を施して複数のコヒーレント加算画像を生成するコヒーレント加算部と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記複数のコヒーレント加算画像に対して血流パラメータ演算処理を施して血流パラメータの空間分布を表す血流画像を生成する血流パラメータ演算処理部を更に備える、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記血流画像を表示機器に表示する表示制御部を更に備える、請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記血流パラメータ演算処理部は、前記複数のコヒーレント加算画像に対してパワー加算処理を施して、前記血流画像として、前記血流パラメータである血流パワーの空間分布を表す血流パワー画像を生成する、請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記複数の超音波送信に亘り超音波が送信される空間領域が重複するように、前記複数の超音波送信を繰り返す、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記送信部は、前記送信角及び/又は送信始点の異なる前記複数の超音波送信として、偏向角の異なる複数の平面波送信を実行する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記送信部は、前記複数の超音波送信として、複数の拡散波送信を実行する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記送信部は、前記複数の超音波送信として、複数の遠方フォーカス送信を実行する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記ビームフォーミング部は、前記ビームフォーミングとして、前記送信角及び/又は送信始点に依存せずに、空間的に同一位置にある画素の複素画素値を計算するピクセルビームフォーミングを施す、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記フィルタ部は、現時点から遡って所定個数のパケットに属する前記複数の初期画像に対してのみ前記MTIフィルタを施す、請求項1記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信角の異なる複数の平面波を送信してコヒーレントに加算するコヒーレント平面波コンパウンド(CPWC:Coherent Plane Wave Compounding)法がある。CPWCは、カラードプラにも応用されている。CPWCは、高フレームレートと高分解能との両立が可能で有用であるが、鏡面反射体がある場合、アーチファクトが水平又は円弧上に広い範囲で発生してしまう。このアーチファクトは、同一空間に対して繰り返し超音波送信を行うカラードプラでは特に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-217172号公報
【特許文献2】特開2018-122082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、カラードプラ法における鏡面反射エコーに起因するアーチファクトを少ない演算量で低減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る超音波診断装置は、送信部、受信部、ビームフォーミング部、フィルタ部、主成分分析部及びコヒーレント加算部を有する。送信部は、複数の振動子を有する超音波プローブを介して、互いに送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信をパケット単位で繰り返す。受信部は、前記超音波プローブを介して、前記複数の超音波送信にそれぞれ対応する複数の受信信号を受信する。ビームフォーミング部は、前記複数の受信信号にそれぞれビームフォーミングを施して複数の初期画像を生成する。フィルタ部は、前記複数の初期画像に対して前記送信角及び/又は送信始点が同じグループ毎にMTIフィルタを施して複数のMTI画像を生成する。主成分分析部は、前記複数のMTI画像に対して前記送信角及び/又は送信始点が同じパケット毎に主成分分析して複数の主成分画像を生成する。コヒーレント加算部は、前記複数の主成分画像に対して前記パケット毎にコヒーレント加算を施して複数のコヒーレント加算画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示す図である。
図2図2は、送信フォーカスを掛けたときの鏡面反射体アーチファクトの発生機序を説明するための図である。
図3図3は、平面波送信のときの鏡面反射体アーチファクトの発生機序を説明するための図である。
図4図4は、1方向の平面波送信によるカラードプラ法のパワー表示の血流画像を例示する図である。
図5図5は、本実施形態に係る超音波診断装置による超音波検査の処理手順を示す図である。
図6図6は、図5に示す超音波検査の処理手順を模式的に示す図である。
図7図7は、図5のステップS4において実行される主成分抽出処理による鏡面反射体アーチファクトの低減機序を説明するための図である。
図8図8は、図5のステップS6において生成された血流パワー画像を例示する図である。
図9図9は、多重反射信号の発生機序を説明するための図である。
図10図10は、変形例1に係る拡散波送信を説明するための図である。
図11図11は、変形例2に係る遠方フォーカス送信を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成例を示す図である。図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波プローブ101と装置本体102とを有する。装置本体102は、送信回路103、受信回路104、送受信制御回路105、ビームフォーミング回路106、メモリ107、Bモード処理回路108、ドプラ処理回路109、処理回路110、記憶装置111、表示機器114、入力機器112及び通信機器113を有する。超音波プローブ101と装置本体102とは着脱可能に接続されている。
【0009】
超音波プローブ101は、超音波の送受波を担う探触子である。超音波プローブ101は、1次元又は2次元に配列された複数の振動子を有している。各振動子は、送信回路103から供給される駆動信号を受けて超音波を送信する。各駆動信号には、超音波プローブ101全体から送信される超音波を任意の波面に集束するための遅延時間が付与されている。発生された超音波は、対象患者内の音響インピーダンスの不整合面で反射される。各振動子は、対象患者内で反射した超音波(反射波)を受けてエコー信号に変換する。超音波プローブ101は、リニアプローブやコンベックスプローブ、セクタプローブその他の如何なる配列方式でもよい。
【0010】
送信回路103は、複数の振動子を有する超音波プローブ101を介して、互いに送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信をパケット単位で繰り返す。具体的には、送信回路103は、送受信制御回路105からの制御に従い、互いに送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信を送信するように各振動子に遅延時間を付与して駆動信号を供給する。送信回路103は、複数の超音波送信に亘り超音波が送信される空間領域が重複するように、複数の超音波送信を繰り返す。本実施形態に係る超音波送信の方式としては、平面波送信や拡散波送信、遠方フォーカス送信等が利用可能である。
【0011】
受信回路104は、超音波プローブ101を介して、送信回路103により送信された複数の超音波送信にそれぞれ対応する複数の受信信号を受信する。具体的には、受信回路104は、超音波プローブ101に搭載される複数の振動子に接続される。ここで、各振動子はチャネルに対応する。受信回路104は、チャネル毎に増幅回路、A/D変換回路及び直交検波回路を有する。増幅回路は、振動子からのエコー信号を増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換回路は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換する。直交検波回路は、デジタルのエコー信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号)と直交信号(Q信号)とに変換する。I信号及びQ信号を特に区別しないときは受信信号と呼ぶことにする。受信信号は、ビームフォーミング回路106に供給される。
【0012】
送受信制御回路105は、互いに送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信を用いた超音波走査を実行するように送信回路103と受信回路104とを同期的に制御する。
【0013】
ビームフォーミング回路106は、複数の受信信号にそれぞれビームフォーミングを施して複数の初期画像を生成する。換言すれば、ビームフォーミング回路106は、1回の超音波送信に対して1枚の初期画像を生成する。各初期画像は、各超音波送信に対応する受信領域における反射波強度値の空間分布を表す。このようなビームフォーミングの方式としては、一例として、ピクセルビームフォーミングが用いられる。ピクセルビームフォーミングは、送信角及び/又は送信始点に依存せずに、空間的に同一位置にある画素の複素画素値を計算するビームフォーミングである。ビームフォーミング回路106は、任意のプロセッサにより実現可能である。
【0014】
メモリ107は、初期画像のデータを記憶する。メモリ107としては、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、半導体記憶装置等の任意の記憶装置が用いられればよい。
【0015】
Bモード処理回路108は、メモリ107から初期画像を読み出してBモード処理を施してBモード画像を生成する。Bモード画像の各画素は、反射波の信号強度を輝度値で表現する。Bモード処理回路108は、任意のプロセッサにより実現可能である。
【0016】
ドプラ処理回路109は、メモリ107から初期画像を読み出してカラードプラ処理を施して血流画像を生成する。本実施形態に係るドプラ処理回路109は、鏡面反射エコーによる血流像に含まれるアーチファクトが低減された血流画像を生成する。図1に示すように、ドプラ処理回路109は、MTIフィルタ回路115、主成分分析回路116、コヒーレント加算回路117及び血流パラメータ演算回路118を有する。MTIフィルタ回路115、主成分分析回路116、コヒーレント加算回路117及び血流パラメータ演算回路118は、任意のプロセッサにより実現可能である。
【0017】
MTIフィルタ回路115は、複数の初期画像に対して前記送信角及び/又は送信始点が同じグループ毎にMTI(Moving Target Indicator)フィルタを施して複数のMTI画像を生成する。主成分分析回路116は、複数のMTI画像に対して送信角及び/又は送信始点が同じパケット毎に主成分分析して複数の主成分画像を生成する。コヒーレント加算回路117は、複数の主成分画像に対して前記パケット毎にコヒーレント加算を施して複数のコヒーレント加算画像を生成する。血流パラメータ演算回路118は、複数のコヒーレント加算画像に対して血流パラメータ演算処理を施して血流パラメータの空間分布を表す血流画像を生成する。血流パラメータ演算回路118は、複数のコヒーレント加算画像に対してパワー加算処理を施して、血流画像として、血流パラメータである血流パワーの空間分布を表す血流パワー画像を生成する。なお、血流パラメータは、血流パワーの他、血流の速度や分散等でもよい。
【0018】
処理回路110は、超音波診断装置100を統括するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する。処理回路110は、記憶装置111に記憶されている超音波診断プログラムを実行することで、送受信制御回路105、Bモード処理回路108、ドプラ処理回路109、記憶装置111、入力機器112、通信機器113及び表示機器114を制御する。一例として、処理回路110は、血流パラメータ演算回路118により生成された血流画像を表示機器114に表示する。処理回路111は、表示制御部の一例である。
【0019】
記憶装置111は、各種データを記憶するROMやRAM、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶装置111は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶装置111は、超音波診断装置100の超音波診断プログラム等を記憶する。
【0020】
入力機器112は、タッチパネルや操作パネル上の各種ユーザインターフェースである。操作者は、超音波診断装置100に対する各種操作や指令を入力機器112により入力することが可能である。なお、入力機器112は、マイクロフォンにより収集された音声信号を指示信号に変換する音声認識装置でもよい。
【0021】
通信機器113は、LAN(Local Area Network)等を介してPACS(Picture Archiving and Communication System)サーバやHIS(Hospital Information System)サーバ、MWM(Modality Worklist Management)サーバ等の間でデータ通信する通信インタフェースである。
【0022】
表示機器114は、処理回路110からの指令に従い各種データを表示する。表示機器114としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが適宜使用可能である。なお、表示機器114としてプロジェクタが設けられてもよい。
【0023】
以下、本実施形態に係る超音波診断装置100の詳細について説明する。以下の説明において、超音波送信の方式は、平面波送信であるとする。平面波送信において送信回路103は、送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信として、偏向角の異なる複数の平面波送信を実行する。偏向角は、平面波の中心軸と当該振動子群の振動子面とが成す角度により規定される。
【0024】
ここで、本実施形態の低減対象である鏡面反射体によるアーチファクト(以下、鏡面反射体アーチファクト)について説明する。
【0025】
図2は、送信フォーカスを掛けたときの鏡面反射体アーチファクトの発生機序を説明するための図である。図3は、平面波送信のときの鏡面反射体アーチファクトの発生機序を説明するための図である。図2に示すように、送信フォーカスを掛ける場合、鏡面反射体からの強エコーは、送信フォーカスの掛かった範囲内しかアーチファクトとして現れない。しかし、図3に示すように、平面波送信の場合、広範囲に亘りアーチファクトが現れる。
【0026】
図4は、1方向の平面波送信によるカラードプラ法のパワー表示の血流画像を例示する図である。図4に示すように、血流画像には円弧状の鏡面反射体アーチファクトAF-1及びAF-2が現れている。鏡面反射体アーチファクトAF-1及びAF-2は、円弧状像の最も輝度の高い部分で鏡面反射が生じている事が原因である。心臓弁や心臓壁、横隔膜等に鏡面反射体アーチファクトAF-1及びAF-2が生じる傾向がある。これは複数の偏向角を用いたコヒーレント平面波コンパウンド(CPWC)を行っても消失しない。鏡面反射体からのエコーが強いため、他の偏向角のデータを加算しても消失しないからである。
【0027】
図5は、本実施形態に係る超音波診断装置100による超音波検査の処理手順を示す図である。図6は、図5に示す超音波検査の処理手順を模式的に示す図である。なお、図6は、一例として、3方向平面波送信且つパケット数16の場合を例示している。ここでパケットとは、1回ずつ順番に実施される複数の送信角の平面波送信及び当該複数の平面波送信にそれぞれ対応する複数のデータの集まりを意味する。図6の例の場合、1パケット毎に3方向の平面波が送信される。1枚の血流画像の生成に使用するパケットの個数は16である。当該個数を処理対象パケット数と呼ぶ。なお、1パケットあたりの平面波送信回数と処理対象パケット数とは、上記例に限定されず、任意の数値に設定可能である。
【0028】
図5及び図6に示すように、送信回路103は、複数の送信角の平面波送信を繰り返す(ステップS1)。図6の例の場合、送信回路103は、送受信制御回路105による制御のもと、超音波プローブ101を介して、3個の送信角θ1、θ2及びθ3の平面波を順番に繰り返し送信する。換言すれば、3個の送信角θ1、θ2及びθ3にそれぞれ対応する3回の平面波送信を1パケットとする超音波送信が複数パケットに亘り繰り返し実行される。複数パケット間においては、平面波を送信する振動子群は異なっていてもよく、換言すれば、走査領域が異なっていてもよい。平面波は、被検体の体内組織により反射される。反射波は、超音波プローブ101によりエコー信号に変換される。エコー信号は、受信回路104により受信信号に変換される。1個の受信信号は、1個の平面波送信に対応する。
【0029】
1個のパケットPAに含まれる3個の送信角θ1、θ2及びθ3の平面波は、送信対象の空間領域が重複するように送信される。送信角θは、平面波と超音波プローブ101の振動子群の送信面とが成す角度に規定される。送信角θ2は、送信角θ=0あるとする。送信角θ1は送信角θ2よりもプラスの角度であり、送信角θ3は送信角θ2よりもマイナスの角度である。もちろん、送信角θの種類は3種類に限定されず、2種類以上であれば個数に制限はない。
【0030】
ステップS1が行われるとビームフォーミング回路106は、平面波送信毎にピクセルビームフォーミングを実行する(ステップS2)。ピクセルビームフォーミングとは、送信角にかかわらず空間的に同一位置にある画素の複素画素値を計算するビームフォーマーの処理を示す。ステップS2においてビームフォーミング回路106は、平面波送信毎に受信信号に対してピクセルビームフォーミングを施して初期画像を生成する。
【0031】
ステップS2が行われるとMTIフィルタ回路115は、送信角単位でMTIフィルタを実行する(ステップS3)。ステップS3においてMTIフィルタ回路115は、時系列で生成される初期画像のうちの、現時点から遡って処理対象パケット数(図6の場合は16個)のパケットに属する複数の初期画像を処理対象として選択する。MTIフィルタ回路115は、選択された処理対象の複数の初期画像に対してMTIフィルタを施す。ステップS3~S7は、最新のパケットの超音波送信が行われる毎に実行される。
【0032】
具体的には、MTIフィルタ回路115は、処理対象の複数の初期画像の中から、送信角が同一のグループに属する初期画像を、処理対象パケット数分だけ集め、MTIフィルタを施す。例えば、パケットPA16が処理対象パケットであり処理対象の送信角がθ2である場合、送信角θ2の初期画像を直近の16個のパケットPA16~PA1から集め、送信角θ2に関する16個の初期画像に対してMTIフィルタを施す。そしてMTIフィルタ回路115は、MTIフィルタが施された画像(MTI画像)を出力する。各パケットの各送信角についてMTI画像が生成される。
【0033】
MTIフィルタは、画像データのうちの組織成分を除去して血流成分のみを抽出するフィルタである。具体的には、MTIフィルタは、パケット方向に関するハイパスフィルタにより実現される。ここで、パケット方向とは、送信時刻の順方向又は逆方向に対応する。MTIフィルタは、パケット方向に関する主成分分析を行い主成分以外を血流成分として出力するフィルタが用いられてもよい。
【0034】
ステップS3が行われると主成分分析回路116は、パケット単位で主成分抽出を実行する(ステップS4)。より詳細には、ステップS4において主成分分析回路116は、ステップS3において生成されたMTI画像に対して、パケットPA単位で送信角θ方向に関する主成分分析を実行して主成分を抽出する。一例として、パケットPA16に関する送信角θ1のMTI画像、送信角θ2のMTI画像及び送信角θ3のMTI画像に対して主成分抽出処理を施す。主成分抽出処理により、送信角に関してエコー強度が特異的であることに起因する鏡面反射体アーチファクトを低減させることができる。抽出された主成分に関する画像は主成分画像として出力される。
【0035】
ステップS4における主成分分析の処理手順は以下の通りである。まず、ステップS4における入力信号ベクトルxi,jは、下記(1)式で数式表現される。ここで、入力信号ベクトルxi,jは、MTI画像の画素値のベクトル表記を意味する。i=1~Nx×Nzである。Nxは、方位方向のデータ点数、Nzは深さ方向のデータ点数である。j=1~Lである。Lは、パケット数であり、図6の例の場合、16である。Nθは送信角の個数であり、図6の例の場合、3である。
【0036】
【数1】
【0037】
主成分分析回路116は、入力信号ベクトルxi,jに基づいて相関行列Rxxを計算する。相関行列Rxxは、下記(2)式により表される。(2)式のHは、複素共役転置を表す。
【0038】
【数2】
【0039】
主成分分析回路116は、相関行列Rxxを固有値分解し、相関行列Rxxの対角行列を算出する。相関行列Rxxの対角行列Dは、下記(3)式により表される。(3)式の対角行列Dは、固有値を対角要素とする対角行列である。Vは、直交行列である。
【0040】
【数3】
【0041】
主成分分析回路116は、対角行列Dに含まれるNθ個の主成分のうちのm(0<m<Nθ)個の主成分を選択する。Nθ個の主成分の中から、大きい方から順番にm個の主成分が選択される。選択されたm個の主成分λ(0<i<m)からなる対角行列Eは、下記(4)式により表される。なお、個数mは、任意の数値に設定可能である。
【0042】
【数4】
【0043】
主成分分析回路116は、対角行列Eと直交行列Vとに基づいて、上位m個の主成分を抽出するフィルタ(以下、主成分フィルタ)を生成する。主成分フィルタWは、下記(5)式により表される。主成分フィルタWは、パケット毎に生成される。
【0044】
【数5】
【0045】
主成分分析回路116は、下記(6)式に示すように、主成分フィルタWをMTI画像(入力信号ベクトル)xi,jに適用し、MTI画像のうちの主成分のみを表す画像(以下、主成分画像)yi,jを生成する。
【0046】
【数6】
【0047】
ここで、主成分の抽出処理による鏡面反射体アーチファクトの低減機序について説明する。図7は、主成分の抽出処理による鏡面反射体アーチファクトの低減機序を説明するための図である。図7に示すように、5個の送信角T11~T15での平面波送受信を想定する。送信角T13のように、送信角θ=0°の場合、すなわち、超音波プローブ101に含まれる振動子群81から発生された平面波が、鏡面反射体82に対して真っ直ぐに入射する場合、強い鏡面反射信号が発生し、これが鏡面反射体アーチファクトの要因となる。他方、送信角T11,T12,T14,T15のように、送信角θ≠0°の場合、すなわち、振動子群81から発生された平面波が、鏡面反射体82に対して斜めに入射する場合、弱い反射信号が発生する。このように鏡面反射信号は角度依存性が強いのであるから、複数の送信角T11~T15の反射信号の間では主成分にはなり得ない。したがってMTI画像に対して主成分フィルタを施すことにより鏡面反射体アーチファクトを低減することが可能になる。
【0048】
ステップS4が行われるとコヒーレント加算回路117は、パケット単位でコヒーレント加算を実行する(ステップS5)。ステップS5においてコヒーレント加算回路117は、各パケットPAに関する送信角θ1の主成分画像、送信角θ2の主成分画像及び送信角θ3の主成分画像に対してコヒーレント加算を施すことにより、コヒーレント加算画像を生成する。コヒーレント加算画像zi,jは、主成分画像zi,jに基づいて、下記(7)式に従い生成される。なお(7)式のTは、転置を表す。
【0049】
【数7】
【0050】
ステップS5が行われると血流パラメータ演算回路118は、複数パケットに亘りパワー加算を実行する(ステップS6)。ステップS6において血流パラメータは血流パワーに設定されているとする。この場合、ステップS6において血流パラメータ演算回路118は、16個のパケットPA1~PA16に関する送信角θ1~θ3の主成分画像に基づいて画素毎に血流パラメータを計算し、血流パラメータの空間分布を表す血流パワー画像を生成する。血流パワー画像Pは、下記(8)式に従い、コヒーレント加算画像zi,jに基づいて生成される。上記の通りi=1~Nx×Nzであるので、血流パワー画像Pは二次元画像である。
【0051】
【数8】
【0052】
ステップS6が行われると処理回路110は、血流パワー画像を表示する(ステップS7)。ステップS7において処理回路110は、ステップS6において生成された血流パワー画像を表示機器114に表示する。血流パワー画像は、時系列で生成されるので、動画表示される。もちろん、所望のフレームの血流パワー画像が静止画として表示されてもよい。
【0053】
図8は、血流パワー画像を例示する図である。血流パワー画像には血流パワーに応じた色値が各画素に割り当てられている。図8に示すように、ステップS6において生成された血流パワー画像からは、図4に示す血流パワー画像に比して、鏡面反射体アーチファクトが除去又は低減されている。したがって、心臓弁や心臓壁、横隔膜等の鏡面反射体アーチファクトが生じる傾向のある部位についても鏡面反射体アーチファクトの除去又は低減された良好な画質の血流画像を表示することができる。これにより超音波画像診断の精度も向上することが期待される。
【0054】
なお、本実施形態は、鏡面反射により生じる強反射信号の除去以外に多重反射の除去にも効果を有する。図9は、多重反射信号の発生機序を説明するための図である。図9に示すように、超音波プローブ101からみて1番目の組織の境界面91を透過し2番目の組織の境界面92で反射する反射信号について着目する。この場合、境界面92で反射して境界面91を透過して超音波プローブ101により受信される反射信号が正しい反射信号ということになる。他方、境界面92で反射した反射波が更に境界面91と境界面92とで順番に反射して境界面91を透過して超音波プローブ101により受信される反射信号が多重反射信号ということになる。なお、境界面91と境界面92との間で複数回往復して超音波プローブ101により受信される反射信号も多重反射信号である。鏡面反射以外では多重反射信号の信号レベルは小さいので、複数の送信角で平面波送信を行った場合に多重反射信号は主成分にはならない。したがって、本実施形態に係る主成分抽出処理により多重反射信号成分も除去又は低減することができる。
【0055】
以上により、本実施形態に係る超音波検査が終了する。
【0056】
なお、図5及び図6に示す超音波検査は一例であり、本実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更、追加及び/又は削除が可能である。例えば、図7において血流パワー画像が生成されるとしたが、血流パラメータが速度である血流速度画像や血流パラメータが分散である血流分散画像等が生成及び表示されてもよい。他の例として、ステップS3~S6に並行して、Bモード処理回路108により初期画像に対してBモード処理が施されBモード画像が生成されてもよい。この場合、血流パワー画像がBモード画像に重畳して又は並列して表示されるとよい。
【0057】
上記の通り、本実施形態に係る超音波診断装置は、送信回路103、受信回路104、ビームフォーミング回路106、MTIフィルタ回路115、主成分分析回路116及びコヒーレント加算回路117を有している。送信回路103は、複数の振動子を有する超音波プローブ101を介して、互いに送信角及び/又は送信始点の異なる複数の超音波送信をパケット単位で繰り返す。受信回路104は、超音波プローブ101を介して、複数の超音波送信にそれぞれ対応する複数の受信信号を受信する。ビームフォーミング回路106は、複数の受信信号にそれぞれビームフォーミングを施して複数の初期画像を生成する。MTIフィルタ回路115は、複数の初期画像に対して送信角及び/又は送信始点が同じグループ毎にMTIフィルタを施して複数のMTI画像を生成する。主成分分析回路116は、複数のMTI画像に対して送信角及び/又は送信始点が同じパケット毎に主成分分析して複数の主成分画像を生成する。コヒーレント加算回路117は、複数の主成分画像に対してパケット毎にコヒーレント加算を施してのコヒーレント加算画像を生成する。
【0058】
上記の構成によれば、送信超音波に対する角度依存性の強い鏡面反射体アーチファクトを、複数の送信角に亘る主成分分析により除去又は低減することが可能になる。また、超音波送信毎にビームフォーミングを実施した後、送信角方向に関して主成分分析を実施するので、比較的軽度な演算負荷で済ますことが可能である。
【0059】
また、超音波送信として平面波送信を実行する場合、複数の偏向角に亘る主成分分析を行う。これにより、CPWCのカラードプラ法により得られる血流画像に含まれる鏡面反射体アーチファクトを除去又は低減することができる。
【0060】
(変形例1)
上記実施形態において超音波送信は平面波送信であるとした。変形例1に係る超音波送信は、拡散波送信であるとする。以下、変形例1に係る超音波診断装置100について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0061】
変形例1に係る送信回路103は、複数の振動子を有する超音波プローブ101を介して、互いに送信角及び/又は送信遅延中心点の異なる複数の拡散波送信をパケット単位で繰り返す。信遅延中心点は、送信始点の一例である。変形例1に係る超音波プローブ101は、拡散波を送信可能であれば、リニアプローブやコンベックスプローブ、セクタプローブその他の如何なる配列方式でもよい。
【0062】
図10は、変形例1に係る拡散波送信を説明するための図である。図10に示すように、拡散波送信は、平面波送信が深さ方向に波が広がらない超音波送信であるの対し、深さ方向に波が広がっていく超音波送信を意味する。拡散波の送信方向は、送信角と送信遅延中心点83との組合せにより規定される。送信角は、送信拡散波の中心軸と振動子群81の送信面とが成す角度に規定される。送信遅延中心点83は、送信拡散波の仮想的な波源である。拡散波は、振動子群81から、送信遅延中心点83を仮想波源として任意の送信角に送信される。
【0063】
送信角T22のように送信角θ=0°の場合、すなわち、振動子群81から発生された拡散波が、鏡面反射体82に対して真っ直ぐに入射する場合、強い鏡面反射信号が発生し、これが鏡面反射体アーチファクトの要因となる。この場合、送信遅延中心点83は、振動子群81の中心軸の直上に位置する。他方、送信角T21,T23のように、送信角θ≠0°の場合、すなわち、振動子群81から発生された拡散波が、鏡面反射体82に対して斜めに入射する場合、弱い反射信号が発生する。このように鏡面反射信号は角度依存性が強いのであるから、複数の送信角T21~T23の反射信号の間では主成分にはなり得ない。したがって、MTI画像に対して主成分フィルタを施すことにより鏡面反射体アーチファクトを低減することが可能になる。
【0064】
なお、送信遅延中心点83は、送信角に応じて異なる位置に設定される。送信角T21の場合、送信遅延中心点83は送信角T22の場合に比して紙面右下に位置し、送信角T23の場合、送信遅延中心点83は送信角T22の場合に比して紙面左下に位置することとなる。
【0065】
変形例1に係る超音波検査処理は、超音波送信が平面波送信から拡散波送信に変更された点が異なるのみであり、その他の点については上記実施形態と同一である。したがって、拡散波送信によっても血流画像に含まれる鏡面反射エコーによるアーチファクトを少ない演算量で低減することが可能になる。
【0066】
(変形例2)
上記実施形態及び変形例1では、1回の超音波送信の受信信号から全領域の初期画像をピクセルビームフォーミングにより生成するものとした。変形例2においては、必ずしも1回の超音波送信の受信信号から全領域の初期画像を生成しなくてもよい。変形例2に係るビームフォーミング回路106は、送信角及び/又は送信始点の異なる複数回の超音波送信の重複領域に関する初期画像を生成する。変形例2に係る超音波送信は、遠方フォーカス送信であるとする。以下、変形例2に係る超音波診断装置100について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0067】
変形例2に係る送信回路103は、複数の振動子を有する超音波プローブ101を介して、互いに送信角及び/又は送信焦点位置の異なる複数の遠方フォーカス送信をパケット単位で繰り返す。送信焦点位置は、送信始点の一例である。遠方フォーカスの送信方向は、送信角と送信焦点位置との組合せにより規定される。送信角は、送信超音波の中心軸と振動子群の振動子面とが成す角度に規定される。送信焦点位置は、振動子群に対して所定の深さ方向に設定された送信超音波の焦点位置である。遠方フォーカス送信は、視野深度よりも深い位置に送信焦点位置が設定される超音波送信である。視野深度よりも深い位置に送信焦点位置を設定することにより、比較的平坦な送信音場を形成することが可能になる。このような場合にも鏡面反射体アーチファクトは発生しうる。なお、変形例2に係る超音波プローブ101は、遠方フォーカス送信可能であれば、リニアプローブやコンベックスプローブ、セクタプローブその他の如何なる配列方式でもよい。
【0068】
変形例2に係る送信回路103は、各パケットにおいて、複数の振動子を有する超音波プローブ101を介して、互いに送信焦点位置の異なる複数の遠方フォーカス送信を行う。1個のパケットに含まれる複数の遠方フォーカス送信に亘り送信角及び/又は送信焦点位置が異なるように設定される。すなわち、複数の遠方フォーカス送信にそれぞれ対応する複数の受信領域は、空間的な位置が異なる事となる。ここで、複数の遠方フォーカス送信にそれぞれ対応する複数の受信領域のうちの空間的に隣接する数個の受信領域が重複するように各遠方フォーカス送信の送信焦点位置が設定される。これにより複数の遠方フォーカス送信の全体として広範な重複領域を得ることが可能になる。なお、送信焦点位置に応じて、超音波送信に供される振動子群(以下、駆動素子群)を変更してもよい。例えば、超音波プローブ101に含まれる全振動子群(振動子アレイ)の一端から他端にかけて順次、駆動素子群を移動させることにより、更に広範囲を超音波走査することが可能になる。
【0069】
図11は、変形例2に係る遠方フォーカス送信を説明するための図である。図11に示すように、1個のパケットに含まれる3個の送信方向T31,T32,T33に関する遠方フォーカス送信が例示されている。各遠方フォーカス送信において、遠方フォーカス送信T31,T32,T33に対応する受信領域851,852,853が互いに重複するように送信角及び送信焦点位置84が設定される。受信領域851,852,853を合成することにより重複領域86が得られる。
【0070】
図11に示すように、鏡面反射体82のある領域は、3回の受信領域851,852,853に含まれており、送信波面が鏡面反射体82に当たる角度が異なる。例えば、送信方向T32では、送信波面が鏡面反射体82に対して平行に当たるので鏡面反射信号が生じることとなるが、他の送信方向T31,T33では、送信波面が鏡面反射体82に対して斜めに当たるので鏡面反射信号が生じないこととなる。このように鏡面反射信号は角度依存性が強いのであるから、複数の送信方向T31~T33の反射信号の間では主成分にはなり得ない。したがって、MTI画像に対して主成分フィルタを施すことにより鏡面反射体アーチファクトを低減することが可能になる。
【0071】
変形例2に係るビームフォーミング回路106及びドプラ処理回路109は、複数の遠方フォーカス送信にそれぞれ対応する複数の受信領域の重複領域に対して、本実施形態と同様の処理を実行する。したがって、血流画像に含まれる鏡面反射エコーによるアーチファクトを少ない演算量で低減することが可能になる。重複領域に対して処理を行うことにより、平面波送信や拡散波送信に比して、血流画像のS(Signal)/N(Noise)比の向上が期待される。なお、上記(1)式に関する、方位方向のデータ点数Nx及び深さ方向のデータ点数Nzは、重複領域内のデータ点に制限される。重複領域の空間的位置及び範囲は、ユーザやシステムにより予め設定されるものとする。
【0072】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、カラードプラ法における鏡面反射エコーに起因するアーチファクトを少ない演算量で低減することができる。
【0073】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
100 超音波診断装置
101 超音波プローブ
102 装置本体
103 送信回路
104 受信回路
105 送受信制御回路
106 ビームフォーミング回路
107 メモリ
108 Bモード処理回路
109 ドプラ処理回路
110 処理回路
111 記憶装置
112 入力機器
113 通信機器
114 表示機器
115 MTIフィルタ回路
116 主成分分析回路
117 コヒーレント加算回路
118 血流パラメータ演算回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11