IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日新電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-訓練用治具及び訓練方法 図1
  • 特開-訓練用治具及び訓練方法 図2
  • 特開-訓練用治具及び訓練方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076258
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】訓練用治具及び訓練方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20240529BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G09B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187753
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】結城 祥伍
(57)【要約】
【課題】被加工体の加工に予め習熟可能な訓練用治具を実現する。
【解決手段】訓練用治具(1)は、製品の本体の、被加工板の一部が固定される部位を含む部分を模擬した模擬本体部材(10)と、被加工板を模擬した模擬被加工板(30)を、本体に一部が固定された状態を模擬するように、模擬本体部材に脱着可能に取り付ける取付部材(20)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体に一部が固定された被加工板とを含む製品の製造工程における、前記被加工板の加工の訓練に用いられる訓練用治具であって、
前記本体の、前記被加工板の前記一部が固定される部位を含む部分を模擬した模擬本体部材と、
前記被加工板を模擬した模擬被加工板を、前記本体に一部が固定された状態を模擬するように、前記模擬本体部材に脱着可能に取り付ける取付部材とを備える、訓練用治具。
【請求項2】
前記被加工板の加工は、前記被加工板の一部が前記本体に固定された状態での、折り曲げ加工または穴開け加工の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の訓練用治具。
【請求項3】
前記被加工板の一部は、前記本体に埋設された状態で前記本体に固定される、請求項2に記載の訓練用治具。
【請求項4】
前記模擬本体部材は、
第1面と、
前記第1面に平行な第2面と、
前記第1面と前記第2面とを接続する、前記第1面および前記第2面に対して傾斜している第3面と、
前記第1面とは異なる第4面と、
前記第1面と前記第4面との間を貫通し、かつ前記模擬被加工板を埋設可能なスリットと、を有し、
前記取付部材は、前記第4面に前記模擬被加工板を取り付ける、請求項3に記載の訓練用治具。
【請求項5】
前記模擬被加工板をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の訓練用治具。
【請求項6】
前記模擬被加工板は金属板である、請求項5に記載の訓練用治具。
【請求項7】
本体と、前記本体に一部が固定された被加工板とを含む製品の製造工程における、前記被加工板の加工の訓練方法であって、
前記本体の、前記被加工板の前記一部が固定される部位を含む部分を模擬した模擬本体部材に対して、前記被加工板を模擬した模擬被加工板を、前記本体に一部が固定された状態を模擬するように、前記模擬本体部材に脱着可能に取り付ける取付ステップと、
前記模擬被加工板を、前記模擬本体部材の表面に沿う形状に折り曲げ加工する折り曲げ加工ステップと、
折り曲げ加工された前記模擬被加工板を穴開け加工する穴開け加工ステップと、
前記模擬被加工板を前記模擬本体部材から取り外す取外ステップと、を含み、
前記取付ステップ、前記折り曲げ加工ステップ、前記穴開け加工ステップ、および前記取外ステップを繰り返し可能な訓練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の加工の訓練に用いられる訓練用治具及び訓練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被加工体に加工を行う際に、加工ステージに被加工体を密着保持し、作業効率を向上させる治具を備えた加工装置が開示されている。当該加工装置は、固定治具により加工ステージに固定された被加工体を、切削治具により加工するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3166160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている加工装置は、加工ステージに載置可能な被加工体でなければ加工できない。このため、当該加工装置は、例えば、予め他の部品に取り付けられた状態で当該部品に沿う形状に加工される被加工体の加工には適用できない。
【0005】
被加工体を加工する頻度が低い場合、作業者は、被加工体の加工のたびに、当該加工に不慣れな状態で加工作業を行うこととなる。また、そのような不慣れな状態で、特許文献1に開示されているような加工装置を使用せず、失敗できない作業を行うことで、作業者の精神的な負担が大きくなる。
【0006】
本発明の一態様は、製品の製造前に、被加工体の加工に予め習熟可能な訓練用治具などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る訓練用治具は、本体と、前記本体に一部が固定された被加工板とを含む製品の製造工程における、前記被加工板の加工の訓練に用いられる訓練用治具であって、前記本体の、前記被加工板の前記一部が固定される部位を含む部分を模擬した模擬本体部材と、前記被加工板を模擬した模擬被加工板を、前記本体に一部が固定された状態を模擬するように、前記模擬本体部材に脱着可能に取り付ける取付部材とを備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る訓練方法は、本体と、前記本体に一部が固定された被加工板とを含む製品の製造工程における、前記被加工板の加工の訓練方法であって、前記本体の、前記被加工板の前記一部が固定される部位を含む部分を模擬した模擬本体部材に対して、前記被加工板を模擬した模擬被加工板を、前記本体に一部が固定された状態を模擬するように、前記模擬本体部材に脱着可能に取り付ける取付ステップと、前記模擬被加工板を、前記模擬本体部材の表面に沿う形状に折り曲げ加工する折り曲げ加工ステップと、折り曲げ加工された前記模擬被加工板を穴開け加工する穴開け加工ステップと、前記模擬被加工板を前記模擬本体部材から取り外す取外ステップと、を含み、前記取付ステップ、前記折り曲げ加工ステップ、前記穴開け加工ステップ、および前記取外ステップを繰り返し可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る訓練用治具などによれば、製品の製造前に、被加工体の加工に予め習熟できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る訓練用治具を用いた訓練の対象となる製品の一部を示す斜視図である。
図2】本発明に係る訓練用治具の構成を示す図である。
図3】本発明に係る訓練用治具による訓練方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
(製品の構成)
図1は、本発明に係る訓練用治具1を用いた訓練の対象となる製品90の一部を示す斜視図である。図1には、製品90の一部としての本体91および被加工板92が現れている。図1において、符号101は被加工板92の加工前の状態を示し、符号102は、被加工板92の加工後の状態を示す。
【0013】
本体91は、例えばステンレスまたは鉄で形成されている。被加工板92は、例えばアルミニウムで形成されている。ただし、本体91および被加工板92の材質はこれらに限定されない。
【0014】
図1に示す例では、被加工板92の一部は、本体91に埋設された状態で本体91に固定されている。被加工板92は、本体91の表面から突出した部位が当該表面に沿うように折り曲げ加工され、さらに穴開け加工されている。ただし、製品90における被加工板92の加工は、図1に示した例に限られない。
【0015】
(訓練用治具の概略)
図2は、本発明に係る訓練用治具1の構成を示す図である。図2において、符号201は斜視図を示し、符号202は断面図を示す。訓練用治具1は、製品90の製造工程における、被加工板92の加工の訓練に用いられる。図2に示すように、訓練用治具1は、模擬本体部材10と、取付部材20とを備える。
【0016】
訓練用治具1を用いた訓練では、模擬被加工板30に対して加工の訓練を行う。模擬被加工板30は、被加工板92を模擬する部材である。模擬被加工板30は、訓練用治具1とは別であってよい。例えば、訓練者が訓練用治具1とは別に模擬被加工板30を用意して訓練を行ってよい。
【0017】
模擬本体部材10は、図1に示した本体91の、被加工板92が固定される部分の形状を模擬した部材である。模擬本体部材10は、樹脂または金属など、任意の材料で形成されてよい。特に、模擬本体部材10を樹脂で形成する場合、模擬本体部材10を金属で形成する場合と比較して、当該模擬本体部材10を軽量化できる。したがって、模擬本体部材10のハンドリング性が向上する。
【0018】
また、模擬本体部材10は、例えば3Dプリンタを用いて形成されてよい。これにより、短期間、かつ低コストで模擬本体部材10を作製できる。
【0019】
取付部材20は、製品90において本体91に被加工板92の一部が固定された状態を模擬するように、模擬被加工板30を模擬本体部材10に脱着可能に取り付ける。図2に示す例では、取付部材20は、六角穴付きボルト21および六角ナット22を備える。また、図2に示す例では、訓練用治具1が備える取付部材20の数は4である。ただし、取付部材20の構成および数は上記の例に限られない。
【0020】
(訓練用治具の具体的構成)
図2においては、模擬本体部材10は、第1面11、第2面12、第3面13、および第4面14を有する。また、模擬本体部材10は、これらの面とともに模擬本体部材10を構成する、他の面を有する。
【0021】
第1面11は、製品90の本体91における、被加工板92が突出する面を模擬した面である。第2面12は、第1面11に略平行な面である。略平行とは、実質的に平行と見なすことができることを意味する。すなわち、第2面12は、必ずしも第1面11に完全に平行である必要はない。例えば、第2面12と第1面11との間の角度が5°以下であれば略平行と見なすことができる。第2面12は、第1面11に垂直な方向からの平面視において、第1面11から離隔している。
【0022】
第3面13は、第1面11と第2面12とを接続する面である。第3面13は、第1面11および第2面12に対して傾斜している。
【0023】
第1面11、第2面12、および第3面13は、製品90における本体91の、表面の形状を模擬している。第1面11、第2面12、および第3面13の形状は、上記の例に限定されず、製品90における本体91の形状に応じて変更されてよい。例えば第1面11と第2面12とが互いに略平行でなくてもよい。また、例えば模擬本体部材10が第2面12を有さず、第1面11と、それに連続する第3面13のみを、本体91の表面の形状を模擬する面として有していてもよい。
【0024】
第4面14は、第1面11とは異なる面である。図2においては、第4面14は、第1面11および第2面12と対向する、第1面11および第2面12に略平行な面である。ただし、第4面14は必ずしもこれに限られない。例えば第4面14は、第1面11および第2面12に略平行でなくてもよい。
【0025】
また、模擬本体部材10は、スリット15をさらに有する。スリット15は、第1面11と第4面14との間を貫通している。スリット15には、模擬被加工板30を埋設可能である。模擬被加工板30は、第1面11および第4面14の両側に突出するようにスリット15に埋設された状態で、第4面14側に突出した部位が第4面14に沿うように折り曲げられる。図2に示した例では、模擬被加工板30は、断面がL字形状になるように折り曲げられている。
【0026】
また、模擬本体部材10には、貫通孔16と、六角穴17とが設けられている。貫通孔16は、第2面12と第4面14との間を貫通している。六角穴17は、貫通孔16の、第1面11側の端部に位置する。さらに、模擬被加工板30には、第4面14側に突出した部位が第4面14に沿うように折り曲げられた状態において貫通孔16と重畳する孔31が形成されている。
【0027】
六角穴付きボルト21および六角ナット22を備える取付部材20により模擬本体部材10に模擬被加工板30を取り付ける手順は以下のとおりである。まず、六角穴17に六角ナット22を挿入する。次に、貫通孔16および孔31を互いに重畳させた状態で、孔31から貫通孔16に向かって六角穴付きボルト21を挿通させる。さらに、六角穴付きボルト21を六角穴17に挿入された六角ナット22に螺合させる。以上の手順により、取付部材20は、模擬被加工板30を、模擬本体部材10に取り付ける。
【0028】
このとき、取付部材20は、第4面14に模擬被加工板30を取り付けると言える。これにより、製品90の本体91に埋設された状態で本体91に固定された被加工板92を、模擬被加工板30により模擬することができる。
【0029】
また、六角穴17に六角ナット22を挿入することで、取付部材20により模擬本体部材10に模擬被加工板30を取り付けるための工具の点数を、六角穴付きボルト21を回転させる工具の1点のみとすることができる。したがって、六角ナット22を固定するための工具を別途使用する場合と比較して、模擬本体部材10に模擬被加工板30を取り付けるための手間が削減される。
【0030】
また、第4面14は、模擬本体部材10における、第1面11、第2面12および第3面13とは逆側に設けられた凹部の底面である。このため、第4面14に模擬被加工板30を取り付けることで、第4面14から取付部材20の一部が突出した状態であっても、当該一部が他の物体に接触する可能性が低減される。例えば第1面11、第2面12および第3面13を上側として、台などに模擬本体部材10を載置して訓練を行う場合に、当該台に取付部材20が接触する可能性が低減される。
【0031】
取付部材20の構成は、十分な軸力を得られるのであれば、六角穴付きボルト21および六角ナット22を備える例に限定されない。例えば、取付部材20は、六角穴付きボルト21の代わりに+ネジまたは六角ボルトを備えていてもよい。また、取付部材20は、六角ナット22の代わりに蝶ナットを備えていてもよい。また、六角ナット22は、必ずしも六角穴17に挿入されていなくてもよい。
【0032】
また、図2に示した例では、六角ナット22が第2面12側に位置し、六角穴付きボルト21が第4面14側から貫通孔16に挿入されている。しかし、六角ナット22が第4面14側に位置し、六角穴付きボルト21が第2面12側から貫通孔16に挿入されてもよい。
【0033】
また、取付部材20は、六角ナット22を備えていなくてもよい。その場合、例えば模擬本体部材10に、貫通孔16および六角穴17の代わりに、六角穴付きボルト21と螺合する雌ネジが設けられていればよい。
【0034】
製品90の製造時には、被加工板92の一部が本体91に固定される。その後、被加工板92は、本体91の表面に沿って折り曲げ加工され、さらに穴開け加工される。ただし、被加工板92の加工はこれに限られず、被加工板92の一部が本体91に固定された状態での、折り曲げ加工または穴開け加工の少なくともいずれかを含んでいればよい。訓練用治具1によれば、このような製品90の製造工程における、被加工板92に対する折り曲げ加工および/または穴開け加工について、訓練者が訓練を行うことができる。
【0035】
また、図1に示した例のように、製品90においては、被加工板92の一部は、本体91に埋設された状態で本体91に固定されてよい。訓練用治具1によれば、本体91に埋設された状態で本体91に固定される被加工板92、すなわち特許文献1に開示されているような加工装置を適用できない被加工板92について、訓練者が訓練を行うことができる。
【0036】
上述した例では、模擬被加工板30は、訓練用治具1とは別であった。しかし、訓練用治具1は、模擬被加工板30を備えていてもよい。訓練用治具1が模擬被加工板30を備える場合、訓練用治具1の製造者が、訓練に適した模擬被加工板30を選定できる。したがって、訓練者は、訓練に適した模擬被加工板30を用いて訓練を行うことができる。
【0037】
訓練用治具1が模擬被加工板30を備える場合において、模擬被加工板30は、例えば金属板であってよい。模擬被加工板30が金属板である場合、訓練者は、被加工板92が金属板である製品90の製造工程について、より近い状況で訓練を行うことができる。例えば被加工板92がアルミニウム板である場合、模擬被加工板30もアルミニウム板であってよい。ただし、模擬被加工板30の材料は、必ずしも被加工板92の材料と一致していなくてもよい。
【0038】
(訓練方法)
図3は、訓練用治具1による訓練方法を示す図である。訓練用治具1による訓練方法について、以下に説明する。
【0039】
符号301に示すように、訓練の開始前の初期状態においては、模擬本体部材10に模擬被加工板30が取り付けられていない。訓練者は、符号302に示すように、断面が略L字形状になるように折り曲げた模擬被加工板30を、スリット15に挿入する。さらに、訓練者は、取付部材20を用いて、模擬被加工板30を模擬本体部材10に脱着可能に取り付ける(取付ステップ)。
【0040】
訓練者は、符号303に示すように、模擬本体部材10に取り付けられた模擬被加工板30を、第1面11に沿うように折り曲げ加工する。続けて、訓練者は、符号303に示すように、模擬被加工板30を、第3面13および第2面12に沿うように折り曲げ加工する(折り曲げ加工ステップ)。さらに、訓練者は、符号305に示すように、模擬被加工板30を穴開け加工する(穴開け加工ステップ)。その結果、模擬被加工板30に穴32が形成される。訓練の終了後には、訓練者は、符号301に示したように、模擬被加工板30を模擬本体部材10から取り外す(取外ステップ)。
【0041】
以上の方法により、訓練者は、製品90の製造工程における被加工板92に対する加工と同様の加工について、訓練用治具1を用いて訓練できる。訓練の終了後には、訓練者は、訓練用治具1を再び訓練に使用することが可能となる。すなわち、訓練用治具1による訓練方法においては、上記の取付ステップ、折り曲げ加工ステップ、穴開け加工ステップ、および取外ステップを繰り返し可能である。これにより、訓練者は、訓練用治具1を用いた訓練を繰り返し行い、習熟度を高めることができる。
【0042】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 訓練用治具
10 模擬本体部材
11 第1面
12 第2面
13 第3面
14 第4面
15 スリット
20 取付部材
30 模擬被加工板
図1
図2
図3