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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076261
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240529BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240529BHJP
   H10K 59/123 20230101ALI20240529BHJP
   H10K 59/131 20230101ALI20240529BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20240529BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G09F9/30 338
H01L29/78 618B
H01L29/78 617N
H01L29/78 616T
H10K59/123
H10K59/131
H10K59/40
G02F1/1368
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187757
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
【テーマコード(参考)】
2H192
3K107
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
2H192AA24
2H192BB12
2H192BB73
2H192BC32
2H192CB02
2H192CB08
2H192CB33
2H192CB37
2H192DA12
2H192DA24
2H192DA32
2H192EA67
2H192GB33
2H192JA33
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3K107DD39
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3K107EE04
3K107EE66
3K107FF04
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5C094FB14
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5F110HL06
5F110HL11
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5F110NN27
5F110NN44
5F110NN71
5F110NN73
5F110NN77
5F110PP10
5F110QQ08
5F110QQ11
5F110QQ19
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で表示部の開口率を向上させた表示装置を提供すること。
【解決手段】表示装置は、各々半導体装置に接続された複数の画素電極と、各々前記複の画素電極の一部に対向して配置された複数の共通電極と、各々前記複数の共通電極に接続された複数の共通配線と、を備え、前記半導体装置は、多結晶構造を有する酸化物半導体層を含み、前記共通配線の少なくとも一部は、前記酸化物半導体層で構成されている。前記複数の共通電極は、各々前記複数の画素電極の一部に跨って配置されていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々半導体装置に接続された複数の画素電極と、
各々前記複数の画素電極の一部に対向して配置された複数の共通電極と、
各々前記複数の共通電極に接続された複数の共通配線と、
を備え、
前記半導体装置は、多結晶構造を有する酸化物半導体層を含み、
前記共通配線の少なくとも一部は、前記酸化物半導体層で構成されている、表示装置。
【請求項2】
前記複数の共通電極は、各々前記複数の画素電極の一部に跨って配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記共通電極と前記画素電極とは絶縁層を介して重畳し、
前記画素電極及び前記共通電極の上に液晶層が配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記画素電極又は前記共通電極は、櫛歯状のパターン形状を有する、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記画素電極の上に発光層が配置され、
前記共通電極は、前記発光層の上に配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の共通電極は、タッチセンサの検出電極として機能する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記半導体装置は、前記酸化物半導体層で構成されたチャネル部及び導電部を含む薄膜トランジスタであり、
前記共通配線の少なくとも一部は、前記導電部と同一層で構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記薄膜トランジスタは、トップゲート構造又はデュアルゲート構造のトランジスタである、請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記導電部は、前記薄膜トランジスタのトップゲートと重畳しない、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記導電部の結晶構造は、前記チャネル部の結晶構造と同一である、請求項7に記載の表示装置。
【請求項11】
所定の結晶方位において、前記導電部の結晶構造の面間隔d値は、前記チャネル部の結晶構造の面間隔d値と略同一である、請求項7に記載の表示装置。
【請求項12】
前記導電部のシート抵抗は、500Ω/sq.以下である、請求項7に記載の表示装置。
【請求項13】
前記酸化物半導体層の結晶構造は、立方晶である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項14】
前記酸化物半導体層は、インジウム元素を含む少なくとも2以上の金属元素を含み、
前記少なくとも2以上の金属元素に対する前記インジウム元素の比率は、50%以上である、請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示部に重ねてタッチセンサを配置したタッチセンサ付き表示装置が知られている。タッチセンサは、表示部に触れた指などの位置を検出するセンサであり、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式など様々の方式のタッチセンサが存在する。特に、静電容量方式は、複数個所のタッチ検出が可能であるという利点を有し、広く普及している。静電容量方式は、さらに自己容量方式及び相互容量方式に区別される。特に、自己容量方式のタッチセンサを備える表示装置は、タッチセンサとして用いる電極の数が相互容量方式に比べて少なく、表示装置全体の構造が簡易になるという利点を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-42184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自己容量方式のタッチセンサは、タッチ検出に使用する複数の検出電極に対して制御電圧(例えば、接地電圧)を印加するために、各検出電極を共通配線で電気的に接続する必要がある。そのため、自己容量方式のタッチセンサを備える表示装置の表示部には複数の検出電極が配置され、これらの検出電極を電気的に接続するために複数の共通配線が配置される。このような複数の共通配線は、一般的に金属材料で構成されるため、表示部の開口率(表示部の面積に対する画素として有効な領域の占める割合)を減少させてしまう場合がある。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で表示部の開口率を向上させた表示装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態の表示装置は、各々半導体装置に接続された複数の画素電極と、各々前記複数の画素電極の一部に対向して配置された複数の共通電極と、各々前記複数の共通電極に接続された複数の共通配線と、を備え、前記半導体装置は、多結晶構造を有する酸化物半導体層を含み、前記共通配線の少なくとも一部は、前記酸化物半導体層で構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の表示装置の構成を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態の表示装置における画素回路の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態の表示装置におけるタッチセンサ回路の構成を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の構成を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の構成を示す平面図である。
図7A】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図7B】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図7C】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図8】酸化物半導体層の導電部のバンド構造を説明するためのバンドダイアグラムである。
図9】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図10】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図13】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図14】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図15】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図16】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図17】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図18】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図19】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の構成を示す断面図である。
図20】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図21】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図22】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図23】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図24】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図25】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図26】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
図27】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
図28】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
図29】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
図30】本発明の一実施形態の表示装置における画素回路の構成を示す図である。
図31】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
各実施形態において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を上又は上方という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を下又は下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。以下の説明で、例えば基板上の酸化物半導体層という表現は、上記のように基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、「トランジスタの上方の画素電極」と表現する場合、平面視において、トランジスタと画素電極とが重ならない位置関係であってもよい。一方、「トランジスタの鉛直上方の画素電極」と表現する場合は、平面視において、トランジスタと画素電極とが重なる位置関係を意味する。
【0010】
各実施形態において、ある一つの膜に対してエッチング等の加工処理を施すことにより形成された複数の要素(element)は、それぞれ異なる機能又は役割を有する要素として記載されることがある。これらの複数の要素は、同一の層構造及び同一の材料で構成されたものであり、同一層で構成された要素として記載される。
【0011】
各実施形態において、「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する装置を指す。例えば、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルだけでなく、表示パネルに対して他の光学部材(例えば、偏光部材又はバックライト等)を装着した装置をも含む。「電気光学層」には、技術的な矛盾を生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。後述する各実施形態において、液晶層を含む液晶表示装置を例示して説明するが、本発明は、上述した他の電気光学層を含む表示装置に対しても適用することができる。
【0012】
各実施形態において、「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、「αはA、B及びCからなる群から選択される一つを含む」といった表現は、特に明示が無い限り、αはA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0013】
(第1実施形態)
[表示装置の構成]
本発明の一実施形態の表示装置100について説明する。本実施形態において、表示装置100は、電気光学層として液晶層を備えた液晶表示装置である。より詳細には、表示装置100は、タッチセンサ機能を備えた液晶表示装置である。具体的には、表示装置100は、自己容量方式のタッチセンサを備えている。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の表示装置100の構成を示す平面図である。図1に示すように、表示装置100の回路基板100Aの表面側には、表示部110、走査側駆動部120、及び端子部130が設けられている。
【0015】
回路基板100Aは、透光性を有する支持基板上に、酸化物半導体を用いて形成された半導体装置を複数配置した基板である。本実施形態では、半導体装置として薄膜トランジスタを配置する例を示すが、この例に限られるものではなく、スイッチング素子として機能する素子であれば、他の半導体装置を配置してもよい。回路基板100Aは、アクティブマトリクス基板と呼ばれる場合もある。回路基板100Aを構成する支持基板としては、透光性を有する基板を用いることができる。例えば、支持基板として、ガラス基板、又は可撓性を有する樹脂基板を用いることが好ましい。
【0016】
表示部110は、画像を表示する複数の画素112を制御するための部位である。具体的には、表示部110は、D1方向(行方向)に延びる複数の走査信号線114及びD2方向(列方向)に延びる複数の映像信号線116を含み、複数の走査信号線114及び複数の映像信号線116の交点のそれぞれに対応して、薄膜トランジスタ等の半導体装置を含む画素112を有する。本実施形態において、個々の画素112は、R(赤)、G(緑)及びB(青)のいずれかの色に対応するサブ画素である。したがって、実際には、RGBの各色に対応する3つの画素112を含む1つの画素(メイン画素)を単位としてカラー表示を行う構成となっている。
【0017】
ここで、個々の画素112の発光制御を行うための画素回路200について図2を用いて説明する。説明の便宜上、1つの半導体装置(薄膜トランジスタ)と1つの保持容量を用いた基本的な構成を例示して説明するが、画素回路200の構成は、この例に限られるものではない。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素回路200の構成を示す図である。図2に示すように、画素回路200は、選択トランジスタ201、保持容量202、及び液晶素子203を含む。後述するように、選択トランジスタ201は、酸化物半導体層で構成されるチャネル部を含む薄膜トランジスタである。
【0019】
選択トランジスタ201のゲートは、走査信号線114に接続され、選択トランジスタ201のソースは、映像信号線116に接続されている。映像信号線116には、液晶素子203を透過する光量を決める階調信号が供給される。走査信号線114には、階調信号を書き込む画素を選択するための走査信号が供給される。選択トランジスタ201のドレインは、保持容量202及び液晶素子203に接続されている。なお、選択トランジスタ201のソース及びドレインは、映像信号線116に印加された電圧と保持容量202に蓄積された電圧との大小関係によって入れ替わる場合がある。
【0020】
保持容量202は、選択トランジスタ201を介して映像信号線116から入力された電圧を保持するコンデンサである。保持容量202の一方の電極は、選択トランジスタ201のドレインに接続され、他方の電極は、接地電位に固定される。ただし、この例に限られるものではなく、他方の電極は、他の電位に固定されてもよい。
【0021】
液晶素子203は、一対の電極間に液晶層を設けた構造を有する電気光学素子である。具体的な構造は後述するが、本実施形態の液晶素子203は、選択トランジスタ201のドレインに接続された画素電極と、共通配線204に接続された共通電極とを含み、画素電極と共通電極との間に形成された電界によって液晶分子の配向が制御される。本実施形態では、共通配線204に接続された共通電極は、液晶層に電圧を印加する電極として機能すると共に、タッチセンサの検出電極として機能する。この点については後述する。
【0022】
以上説明した画素回路200が、表示装置100の各画素112に配置されている。換言すれば、図1に示した表示部110は、画素回路200の集合体で構成されているとも言える。
【0023】
図1に説明を戻す。走査側駆動部120は、走査信号線114に連結され、走査信号線114に対して走査信号を伝達する。具体的には、走査信号は、図2に示した選択トランジスタ201のゲートに与えられ、選択トランジスタ201のスイッチング制御に用いられる。本実施形態では、複数の画素112に含まれる画素回路200と同様に、走査側駆動部120を構成する駆動回路も薄膜トランジスタを用いて形成されているが、ICチップ等で代用することも可能である。なお、本実施形態では、回路基板100Aに2つの走査側駆動部120を含むが、いずれか片方だけであってもよい。
【0024】
端子部130は、回路基板100Aに配置された各種配線とフレキシブルプリント回路基板140とを電気的に接続するための部位である。具体的には、端子部130は、複数の映像信号線116、走査側駆動部120に制御信号を供給するための配線(図示せず)、及び共通配線204に接続された複数の端子の集合体である。端子部130は、表示部110の外側に配置される。外部から供給される映像信号及び制御信号は、端子部130を介して、それぞれ表示部110及び走査側駆動部120に供給される。また、表示装置100のタッチセンサ機能は、共通配線204を介して外部に出力される検出信号を処理することによって実現される。
【0025】
端子部130には、フレキシブルプリント回路基板140が接続される。フレキシブルプリント回路基板140は、回路基板100Aと外部の制御回路(図示せず)とを接続するためのインターフェース基板である。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板140に対して表示制御回路150が実装されている。表示制御回路150は、表示部110に供給する映像信号及び走査側駆動部120に供給する各種の制御信号の信号処理を実行する信号処理回路である。
【0026】
本実施形態において、表示制御回路150は、共通配線204を介して取得した検出信号に基づいてタッチ位置を検出するタッチセンサ回路としての機能も有する。ただし、この例に限らず、表示制御に関する機能と、タッチセンサに関する機能とは、個別の制御回路に分けて設けてもよい。本実施形態では、表示制御回路150は、ICチップの形態でフレキシブルプリント回路基板140に実装される。
【0027】
フレキシブルプリント回路基板140は、樹脂材料で構成された可撓性基板の上に配線が印刷された回路基板であるため、折り曲げることが可能である。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板140を一点鎖線142で折り曲げ、フレキシブルプリント回路基板140と回路基板100Aの裏面側(表示部110などが形成されていない側)とが重なるようにすることができる。
【0028】
次に、タッチセンサについて説明する。本実施形態の表示装置100は、自己容量方式のタッチセンサを備えている。ただし、タッチセンサの方式は、自己容量方式に限られるものではない。本発明は、タッチセンサを構成する検出電極に信号を供給するための配線、又は、検出電極から信号を出力するための配線が表示部に配置された表示装置であれば、如何なる表示装置にも適用することができる。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態の表示装置100におけるタッチセンサ回路115の構成を示す平面図である。タッチセンサ回路115は、回路基板100Aに設けられており、実質的に表示部110と同じ領域に配置される。タッチセンサ回路115は、D1方向(行方向)及びD2方向(列方向)に配列された複数の共通電極205と、各々複数の共通電極205と電気的に接続された複数の共通配線204とを含む。複数の共通配線204は、端子部130に接続されている。
【0030】
図3に示すように、本実施形態では、D2方向に並ぶ複数の共通電極205a~205cに対応して、各々複数の共通配線204a~204cが接続される。つまり、D2方向にm個の共通電極205が並んでいる場合、一列の共通電極205に対応する共通配線204の数は、m本となる。D1方向に並ぶ共通電極205の数がn個であれば、合計でn×m本の共通配線204が配置される。
【0031】
共通配線204は、共通電極205に所定の電圧(例えば、接地電圧)を印加したり、共通電極205からタッチ位置を示す検出信号を読み取るために使用される。すなわち、本実施形態において、共通電極205は、表示期間において液晶層に電圧を印加するための電極として用いられると共に、センシング期間においてタッチセンサの検出電極として用いられる。自己容量方式のタッチセンサにおけるタッチ位置の検出方法は公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
図3に示した1つの共通電極205は、複数の画素112の画素回路200に跨って配置されている。詳細は後述するが、各画素回路200には、液晶層に電圧を印加するための共通電極が設けられている。つまり、図3に示した1つの共通電極205は、複数の画素回路200に含まれる各共通電極の集合体と言える。各共通配線204は、1つの共通電極205、すなわち、複数の画素回路200の各々に含まれる複数の共通電極と電気的に接続されている。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す断面図である。図4に示すように、選択トランジスタ201は、基板500の上に設けられる。基板500は、透光性を有する基板であり、例えば、ガラス基板又は樹脂基板を用いることができる。下地層520は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、又は、酸化シリコン層及び窒化シリコン層の積層膜で構成される。下地層520は、基板500からの不純物等の侵入を防ぐ役割を有する。
【0034】
本実施形態の選択トランジスタ201は、多結晶構造を有する酸化物半導体で構成された酸化物半導体層544を含む。酸化物半導体としては、例えば、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む金属酸化物が用いられる。通常、酸化物半導体は、透光性を有し、可視光に対して透明である。酸化物半導体層544は、チャネル部403a及び導電部403bを含む。チャネル部403aは、選択トランジスタ201のチャネルとして機能する。導電部403bは、選択トランジスタ201のソース又はドレインとして機能する。選択トランジスタ201の詳細な構造については後述する。
【0035】
図4に示すように、図3に示した共通配線204は、選択トランジスタ201を構成する酸化物半導体層544と同一層で構成されている。すなわち、本実施形態において、酸化物半導体層544と共通配線204とは、同一の酸化物半導体層に由来する、同一の層構造及び同一の材料で構成された要素である。詳細は後述するが、共通配線204は、酸化物半導体層544の導電部403bと同時に形成される。後述するように、導電部403bは、酸化物半導体層544のうち不純物を添加する過程で導電性が付与された部分である。共通配線204は、導電部403bと同じプロセスを経て導電性が付与された酸化物半導体層で構成される。この点については、選択トランジスタ201の製造方法と併せて後述する。
【0036】
選択トランジスタ201及び共通配線204の上には、樹脂材料で構成された平坦化層610が設けられる。平坦化層610は、選択トランジスタ201の形成に伴って生じた基板500上の起伏を平坦化する役割を有する。平坦化層610の上には、画素電極620が設けられる。画素電極620は、ITO等の金属酸化物を含む透明導電膜で構成される。画素電極620は、平坦化層610に設けられたコンタクトホールを介して選択トランジスタ201に接続される。
【0037】
画素電極620の上には、絶縁層630が設けられる。絶縁層630は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、又はそれらの積層構造で構成される。絶縁層630の上には、一部が画素電極620と重畳するように共通電極205が設けられる。共通電極205は、画素電極620と同様に、ITO等の金属酸化物を含む透明導電膜で構成される。共通電極205は、平坦化層610及び絶縁層630に設けられたコンタクトホールを介して共通配線204に接続される。図3を用いて説明したとおり、共通電極205は、センシング期間において共通配線204を介して信号の入出力を行うことによりタッチセンサの検出電極として機能する。
【0038】
本実施形態において、共通電極205は、櫛歯状のパターン形状を有する。例えば、共通電極205は、図1のD1方向に延在する線状の電極に、D2方向に延在する複数の線状電極が接続されたパターン形状を有する。図4に示す例では、画素電極620に重畳する3つの電極パターンが図示されているが、これらはD2方向に延在する複数の線状電極の断面に相当し、互いに電気的に接続されている。すなわち、図4では、それぞれ分離されて図示されているが、共通電極205はいずれも共通配線204と電気的に接続されている。
【0039】
本実施形態では、画素電極620と共通電極205との間にフリンジ電界を形成して液晶層650の液晶分子を配向させるFFS(Fringe Field Switching)方式を採用している。液晶表示装置の駆動方式としてFFS方式は公知であるため、ここでの説明は省略する。フリンジ電界を形成する際、共通電極205には所定の電圧(例えば、接地電圧)が印加される。つまり、フリンジ電界の強度は、画素電極620に印加される電圧によって制御される。このように、共通電極205は、表示期間において共通配線204を介して定電圧に保持されることにより、液晶層に電圧を印加するための電極として機能する。
【0040】
なお、本実施形態では、画素電極620と共通電極205との間にフリンジ電界を形成するFFS方式を採用した例について説明したが、この例に限られるものでなく、例えば、IPS(In-Plane Switching)方式を採用してもよい。この場合、画素電極及び共通電極の両方を櫛歯状のパターン形状で構成すると共に、画素電極及び共通電極の櫛歯部分を互いに対向させて配置すればよい。IPS方式の場合、互いに横方向において向かい合う画素電極及び共通電極によって横電界が形成され、当該横電界によって液晶分子の配向制御が行われる。
【0041】
画素電極620及び共通電極205の上には、液晶層650を介して基板700及びカラーフィルタ710が設けられる。本実施形態では、基板700及びカラーフィルタ710を併せて対向基板700Aと呼ぶ。液晶層650は、図示しないシール材によって貼り合わされた回路基板100Aと対向基板700Aとの間に配置される。なお、図4では図示を省略するが、回路基板100A及び対向基板700Aにおける液晶層650と接する面には、配向膜が設けられている。また、本実施形態では、基板700上にカラーフィルタ710のみ図示しているが、必要に応じて遮光膜(いわゆるブラックマトリクス)が設けられていてもよい。
【0042】
以上説明したとおり、本実施形態では、各画素112に、画素電極620と重畳して配置された共通電極205を有し、共通電極205が共通配線204と電気的に接続されている。このとき、共通配線204は、各画素112に配置された半導体装置(ここでは選択トランジスタ201)の活性層(チャネル部403aを含む半導体層)として機能する酸化物半導体層544で構成されている。なお、共通配線204は、全体が酸化物半導体層544で構成されている必要はなく、少なくとも一部が酸化物半導体層544で構成されていてもよい。
【0043】
本実施形態の選択トランジスタ201に用いた酸化物半導体層544は、多結晶構造を有し、極めて結晶性に優れている。また、本実施形態の酸化物半導体層544に導電性を付与した導電部403bは、抵抗が従来のものより大幅に低いという特長を有する。具体的には、導電部403bのシート抵抗は、1000Ω/sq.以下(好ましくは、500Ω/sq.以下)であり、十分に配線としての使用が可能となっている。本実施形態の表示装置100は、このような酸化物半導体層544の物性に着目し、タッチセンサ回路115として用いる共通配線204を酸化物半導体層544と同一層で構成している。
【0044】
本実施形態によれば、従来技術において表示部110の開口率を低減させる要因となっていたタッチセンサ用の共通配線204を透光性材料(具体的には、金属酸化物で構成される酸化物半導体層544)で構成することができる。しかも、共通配線204は、選択トランジスタ201に用いる酸化物半導体層544と同一層で構成することができるため、簡易な構造で表示装置100の表示部の開口率を向上させることが可能である。
【0045】
以上説明した表示部110の構造は、酸化物半導体層の抵抗を配線として使用し得るレベルまで小さくしたことによって実現されている。具体的には、酸化物半導体を用いた半導体装置である選択トランジスタ201の導電部403bを低抵抗化することによって実現される。そこで、本実施形態で用いる半導体装置(図4では、選択トランジスタ201)の構成及び製造方法について以下に説明する。
【0046】
[半導体装置の構成]
図5は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の構成を示す断面図である。図6は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の構成を示す平面図である。図10は、図11に示す一点鎖線で切断したときの断面図に対応する。なお、説明の便宜上、若干異なる寸法で図示されているが、図5に示す半導体装置10と図4に示した選択トランジスタ201とは、基本的に同じ構造である。
【0047】
図5に示すように、半導体装置10は、基板500の上方に設けられている。半導体装置10は、下地層520、酸化物半導体層544、ゲート絶縁層550、ゲート電極564、絶縁層570、絶縁層580、ソース電極591、及びドレイン電極593を含む。
【0048】
下地層520は、基板500の上に設けられている。酸化物半導体層544は、下地層520の上に設けられている。酸化物半導体層544は、下地層520に接している。酸化物半導体層544の主面のうち、ゲート絶縁層550に接する面を上面と呼び、下地層520に接する面を下面と呼ぶ。また、上面と下面との間の面を側面という。下地層520は、基板500から酸化物半導体層544に向かって拡散する不純物を遮蔽するバリア膜としての機能を備える。
【0049】
酸化物半導体層544は、透光性を有している。また、酸化物半導体層544は、ソース領域544S、ドレイン領域544D、及びチャネル領域544CHに区分される。チャネル領域544CHは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564の鉛直下方の領域である。ソース領域544Sは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564と重ならない領域であって、チャネル領域544CHよりもソース電極591に近い側の領域である。ドレイン領域544Dは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564と重ならない領域であって、チャネル領域544CHよりもドレイン電極593に近い側の領域である。チャネル領域544CHは、図4に示したチャネル部403aに相当し、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、それぞれ図4に示した導電部403bに相当する。
【0050】
ゲート電極564は、金属層で構成され、酸化物半導体層544に対向している。ゲート絶縁層550は、酸化物半導体層544とゲート電極564との間に設けられている。ゲート絶縁層550は、酸化物半導体層544に接している。絶縁層570及び絶縁層580は、それぞれゲート絶縁層550及びゲート電極564の上に設けられている。絶縁層570及び絶縁層580には、酸化物半導体層544に達するコンタクトホール571及び573が設けられている。ソース電極591は、コンタクトホール571を介してソース領域544Sに接する。ドレイン電極593は、コンタクトホール573を介してドレイン領域544Dに接する。
【0051】
酸化物半導体層544は、複数の結晶粒を含む多結晶構造を有する。詳細は後述するが、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いることにより、多結晶構造を有する酸化物半導体層544を形成することができる。以下の説明において、多結晶構造を有する酸化物半導体そのものを指してPoly-OSと呼ぶ場合がある。
【0052】
本実施形態において、酸化物半導体層544は、インジウムを含む2以上の金属を含み、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。インジウム元素以外の金属元素として、ガリウム(Ga)元素、亜鉛(Zn)元素、アルミニウム(Al)元素、ハフニウム(Hf)元素、イットリウム(Y)元素、ジルコニウム(Zr)元素、およびランタノイドが用いられる。ただし、この例に限らず、酸化物半導体層544は、上記以外の金属元素を含んでいてもよい。
【0053】
また、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、上記金属元素以外の元素を含んでいてもよい。詳細は後述するが、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、チャネル領域544CHよりも抵抗率が低い。このような抵抗率の低下は、酸化物半導体層544にアルゴン(Ar)、リン(P)、又はボロン(B)などの元素(以下、「不純物元素」という)を添加する過程で実現される。
【0054】
ソース領域544S及びドレイン領域544Dに含まれる不純物元素の濃度は、SIMS分析(二次イオン質量分析)で測定した場合に、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であることが好ましい。ソース領域544S及びドレイン領域544Dに、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下で不純物元素が含まれる場合、イオン注入法又はイオンドーピング法により不純物元素が意図的に添加されたものと推定される。ただし、ソース領域544S及びドレイン領域544Dには、1×1018cm-3未満の濃度で、アルゴン(Ar)、リン(P)、又はボロン(B)以外の不純物元素が含まれていてもよい。なお、チャネル領域544CHに、不純物元素が含まれると、半導体装置10の特性に影響を及ぼす。そのため、チャネル領域544CHに含まれる不純物元素の濃度は、1×1018cm-3未満(より好ましくは1×1016cm-3以下)であることが好ましい。
【0055】
ゲート電極564は、半導体装置10のトップゲートとしての機能を備える。ゲート絶縁層550は、トップゲートに対するゲート絶縁層としての機能を備え、製造プロセスにおける熱処理によって酸素を放出する機能を備える。絶縁層570及び絶縁層580は、それぞれゲート電極564とソース電極591との間、及び、ゲート電極564とドレイン電極593との間を絶縁する。これにより、ゲート電極564とソース電極591との間、及び、ゲート電極564とドレイン電極593との間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0056】
図6に示すように、ゲート配線565は、第1方向(D1方向)に延在する。ゲート配線565の一部は、第2方向(D2方向)に向かって分岐し、酸化物半導体層544と重畳する。ゲート配線565のうち酸化物半導体層544と重畳した部分が、ゲート電極564として機能する。酸化物半導体層544とゲート電極564とが重畳する領域(すなわち、チャネル領域544CH)の第1方向(D1方向)の長さがチャネル長(L)であり、第2方向(D2方向)の長さがチャネル幅(W)である。
【0057】
[酸化物半導体層の結晶構造]
本実施形態の酸化物半導体層544及び共通配線204は、Poly-OSを含む。以下の説明では、酸化物半導体層544を例に挙げて説明するが、酸化物半導体層544と同一層で構成された共通配線204についても同じ説明が可能である。
【0058】
酸化物半導体層544の上面(または酸化物半導体層544の膜厚方向)から観察したPoly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は、0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。結晶粒の結晶粒径は、例えば、断面SEM観察、断面TEM観察、または電子線後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction:EBSD)法などを用いて取得することができる。
【0059】
Poly-OSでは、複数の結晶粒が1種類の結晶構造を有していてもよく、複数の種類の結晶構造を有していてもよい。Poly-OSの結晶構造は、電子線回折法またはXRD法などを用いて特定することができる。すなわち、酸化物半導体層544の結晶構造は、電子線回折法またはXRD法などを用いて特定することができる。
【0060】
酸化物半導体層544の結晶構造は、立方晶であることが好ましい。立方晶は、結晶構造の対称性が高く、酸化物半導体層544に酸素欠陥が生成された場合においても、構造緩和が起きにくく、結晶構造が安定している。上述したように、酸化物半導体層544は、インジウムを含む2以上の金属を含み、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。インジウム元素の比率を高くすることにより、複数の結晶粒の各々の結晶構造が制御され、立方晶の結晶構造を有する酸化物半導体層544を形成することができる。
【0061】
図5に示したように、酸化物半導体層544は、チャネル領域544CHに対応するチャネル部403a(図4参照)、並びに、ソース領域544S及びドレイン領域544Dに対応する導電部403b(図4参照)を含む。酸化物半導体層544では、チャネル部403aが第1の結晶構造を有し、導電部403bが第2の結晶構造を有する。導電部403bは、チャネル部403aよりも大きな電気伝導度を有するが、第2の結晶構造は、第1の結晶構造と同一である。ここで、2つの結晶構造が同一とは、結晶系が同一であることを意味する。例えば、酸化物半導体層544の結晶構造が立方晶であるとき、チャネル部403aの第1の結晶構造および導電部403bの結晶構造は、ともに立方晶であり、同一である。第1の結晶構造および第2の結晶構造は、例えば、極微電子線回折法などを用いて特定することができる。
【0062】
また、所定の結晶方位において、第1の結晶構造の面間隔d値と、第2の結晶構造の面間隔dとは、略同一である。ここで、2つの面間隔d値が略同一とは、一方の面間隔d値が、他方の面間隔d値の0.95倍以上1.05倍以下であることをいう。あるいは、極微電子線回折法において、2つの回折パターンがほとんど一致している場合をいう。
【0063】
チャネル部403aと導電部403bとの間には、結晶粒界が存在しなくてもよい。また、1つの結晶粒の中に、チャネル部403a及び導電部403bが含まれていてもよい。換言すると、チャネル部403aから導電部403bへの変化は、連続的な結晶構造の変化であってもよい。
【0064】
図7A図7Cは、酸化物半導体層544の導電部403bに含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。図7A図7Cには、インジウム原子(In原子)およびIn原子と異なる金属原子(M原子)を含むPoly-OSが示されている。
【0065】
図7Aに示すPoly-OSでは、In原子および金属原子Mの各々が酸素原子(O原子)と結合している。図7Aに示すPoly-OSの結晶構造は、導電部403bでは、チャネル部403aよりも電気伝導度を大きくするために、In原子とO原子(又は金属原子MとO原子)との結合が切断され、O原子が脱離された酸素欠陥が生成されている(図7B参照)。Poly-OSは、結晶粒径の大きな結晶粒を含むため、長距離秩序が維持されやすい。そのため、酸素欠陥が生成されても、構造緩和が起きにくく、In原子および金属原子Mの位置はほとんど変化しない。図7Bに示す状態において、水素が存在すると、酸素欠陥中のIn原子のダングリングボンド及び金属原子Mのダングリングボンドが水素原子(H原子)と結合し、安定化する(図7C参照)。酸素欠陥中のH原子はドナーとして機能するため、導電部403bのキャリア濃度が増加する。
【0066】
また、図7Cに示すように、Poly-OSでは、酸素欠陥中でH原子が結合されても、In原子及び金属原子Mの位置がほとんど変化しない。そのため、導電部403bの第2の結晶構造は、酸素欠陥のないPoly-OSの結晶構造から変化しない。すなわち、導電部403bの第2の結晶構造は、チャネル部403aの第1の結晶構造と同一である。
【0067】
図8は、酸化物半導体層544の導電部403bのバンド構造を説明するためのバンドダイアグラムである。
【0068】
図8に示すように、導電部403bのPoly-OSでは、バンドギャップE内に、第1のエネルギー準位1010及び第2のエネルギー準位1020を含む。また、価電子帯上端のエネルギー準位Evの近傍及び伝導帯下端のエネルギー準位Eの近傍のそれぞれに、テイル準位1030を含む。第1のエネルギー準位1010は、バンドギャップE内に存在する深いトラップ準位であり、酸素欠陥に起因するものである。第2のエネルギー準位1020は、伝導帯の下端近傍に存在するドナー準位であり、酸素欠陥内で結合された水素原子に起因するものである。テイル準位1030は、長距離秩序の乱れに起因するものである。
【0069】
導電部403bにおけるPoly-OSは、酸素欠陥を含むものの、結晶構造を有しており、長距離秩序が維持されている。また、導電部403bにおけるPoly-OSでは、構造的な乱れを生じることなく、酸素欠陥内で水素原子を結合することができる。そのため、テイル準位1030の状態密度(Density of State:DOS)を抑制しながら、第2のエネルギー準位1020のDOSを大きくすることができる。そのため、第2のエネルギー準位1020のDOSは、伝導帯下端近傍のテイル準位1030のDOSよりも大きく、第2のエネルギー準位1020のDOSは、伝導帯下端のエネルギー準位Eを超えて広がることができる。すなわち、フェルミ準位Eは、伝導帯下端のエネルギー準位Eを超え、導電部403bにおけるPoly-OSは、金属的性質を有する。
【0070】
上述したように、導電部403bにおけるPoly-OSは、従来の酸化物半導体と異なり、金属的性質を有する。そのため、導電部403bは、酸素欠陥を生成することにより、十分に低抵抗化することができる。導電部403bのシート抵抗は、1000Ω/sq.以下であり、好ましくは500Ω/sq.以下であり、さらに好ましくは250Ω/sq.である。
【0071】
このように、本実施形態では、酸化物半導体層544のソース領域544S及びドレイン領域544D(すなわち、導電部403b)を十分に低抵抗化することが可能であるため、導電部403bを配線として使用することができる。図3及び図4に示した共通配線204は、このような酸化物半導体層544の特長を利用したものである。
【0072】
本実施形態において、基板500と酸化物半導体層544との間には遮光層が設けられてもよい。チャネル領域544CHと重畳する領域に、遮光層が設けられることにより、チャネル領域544CHへの光の照射に起因する半導体装置10の特性変動を抑制することができる。この場合、遮光層をゲート電極として用いることにより、半導体装置10をデュアルゲート構造としてもよい。
【0073】
[半導体装置の製造方法]
図9図18を用いて、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法について説明する。図9は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法を示すシーケンス図である。図10図18は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法を示す断面図である。
【0074】
まず、図9及び図10に示すように、基板500の上に下地層520を形成する(ステップS1001)。
【0075】
基板500として、ガラス基板、石英基板、及びサファイア基板など、透光性を有する剛性基板が用いられる。基板500が可撓性を備える必要がある場合、基板500として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板など、樹脂を含む基板が用いられる。基板500として樹脂を含む基板が用いられる場合、基板500の耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物元素が導入されていてもよい。
【0076】
下地層520はCVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法によって成膜される。下地層520として、一般的な絶縁性材料が用いられる。下地層520として、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、及び窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁材料が用いられる。
【0077】
上記のSiO及びAlOは、酸素(O)よりも少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。SiN及びAlNは、窒素よりも少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。
【0078】
下地層520は、単層構造又は積層構造で形成される。下地層520を積層構造とする場合には、基板500から窒素を含む絶縁材料と酸素を含む絶縁材料との順で形成されることが好ましい。窒素を含む絶縁材料を用いることにより、例えば、基板500側から酸化物半導体層544に向かって拡散する不純物をブロックすることができる。また、酸素を含む絶縁材料を用いることにより、熱処理によって酸素を放出させることができる。酸素を含む絶縁材料が酸素を放出する熱処理の温度は、例えば、600℃以下、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。つまり、酸素を含む絶縁材料は、例えば、基板500としてガラス基板が用いられた場合の半導体装置10の製造工程で行われる熱処理温度で酸素を放出する。本実施形態では、窒素を含む絶縁材料として、例えば、窒化シリコンが用いられる。酸素を含む絶縁材料として、例えば、酸化シリコンが用いられる。
【0079】
次に、図9及び図11に示すように、下地層520の上に酸化物半導体層540を形成する(ステップS1002)。酸化物半導体層540は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。酸化物半導体層540の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下、15nm以上70nm以下、又は20nm以上40nm以下である。
【0080】
酸化物半導体層540として、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。酸化物半導体層540として、例えば、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む酸化物半導体が用いられる。また、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。酸化物半導体層540として、インジウムに加えて、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、又はランタノイドが用いられる。酸化物半導体層540として、上記以外の元素が用いられてもよい。本実施形態では、酸化物半導体層540として、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む金属酸化物(IGO系酸化物半導体)が用いられる。
【0081】
後述するOSアニール(ステップS1004)によって、酸化物半導体層540を結晶化する場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層540はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。つまり、酸化物半導体層540の成膜方法は、成膜直後の酸化物半導体層540ができるだけ結晶化しない条件であることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって酸化物半導体層540が成膜される場合、被成膜対象物(基板500及びその上に形成された構造物)の温度を制御することにより、酸化物半導体層540が結晶化しない条件を実現することができる。
【0082】
スパッタリング法によって被成膜対象物に対して成膜を行うと、プラズマ中で発生したイオン及びスパッタリングターゲットによって反跳した原子が被成膜対象物に衝突するため、成膜処理に伴い被成膜対象物の温度が上昇する。成膜処理中の被成膜対象物の温度が上昇すると、成膜直後の状態で酸化物半導体層540に微結晶が含まれ、その後のOSアニールによる結晶化が阻害される。上記のように被成膜対象物の温度を制御するために、例えば、被成膜対象物を冷却しながら成膜を行うことができる。例えば、被成膜対象物の被成膜面の温度(以下、「成膜温度」という。)が100℃以下、70℃以下、50℃以下、又は30℃以下になるように、被成膜対象物を当該被成膜面の反対側の面から冷却することができる。上記のように、被成膜対象物を冷却しながら酸化物半導体層540の成膜を行うことで、成膜直後の状態で結晶成分が少ない酸化物半導体層540を成膜することができる。
【0083】
次に、図9及び図12に示すように、フォトリソグラフィにより酸化物半導体層540のパターンを形成する(ステップS1003)。図示は省略するが、酸化物半導体層540の上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層540をエッチングする。酸化物半導体層540をエッチングする際には、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングの場合、酸性のエッチャントを用いてエッチングを行うことができる。エッチャントとしては、例えば、シュウ酸又はフッ酸を用いることができる。
【0084】
酸化物半導体層540は、ステップS1004で実施するOSアニールの前にパターンに加工されることが好ましい。OSアニールによって酸化物半導体層540が結晶化すると、エッチングし難い傾向がある。また、エッチングによって酸化物半導体層540にダメージが生じても、OSアニールによってダメージを修復することができる。
【0085】
酸化物半導体層540のパターン形成の後に酸化物半導体層540に対して熱処理(OSアニール)が行われる(ステップS1004)。OSアニールでは、酸化物半導体層540が、所定の到達温度で所定の時間保持される。所定の到達温度は、300℃以上500℃以下であり、好ましくは350℃以上450℃以下である。また、到達温度での保持時間は、15分以上120分以下であり、好ましくは30分以上60分以下である。OSアニールを行うことにより、酸化物半導体層540が結晶化され、多結晶構造を有する酸化物半導体層544が形成される。
【0086】
なお、本実施形態の表示装置100を製造する場合、選択トランジスタ201の酸化物半導体層544を形成すると同時に、共通配線204として用いるための酸化物半導体層で構成される配線パターンが形成される。そのため、このプロセスで形成される配線パターンは、酸化物半導体層544と同じ結晶構造を有する。
【0087】
次に、図9及び図13に示すように、酸化物半導体層544の上にゲート絶縁層550を成膜する(ステップS1005)。
【0088】
ゲート絶縁層550の成膜方法及び絶縁材料は、下地層520の説明を参照すればよい。本実施形態において、ゲート絶縁層550の膜厚は、例えば、50nm以上150nm以下であるが、この例に限られない。
【0089】
ゲート絶縁層550として、酸素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。また、ゲート絶縁層550として、欠陥が少ない絶縁層を用いることが好ましい。例えば、ゲート絶縁層550における酸素の組成比と、ゲート絶縁層550と同様の組成の絶縁層(以下、「他の絶縁層」という)における酸素の組成比と、を比較した場合、ゲート絶縁層550における酸素の組成比の方が当該他の絶縁層における酸素の組成比よりも当該絶縁層に対する化学量論比に近い。例えば、ゲート絶縁層550及び絶縁層580の各々に酸化シリコン(SiO)が用いられる場合、ゲート絶縁層550として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比は、絶縁層580として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比に比べて、酸化シリコンの化学量論比に近い。例えば、ゲート絶縁層550として、電子スピン共鳴法(ESR)で評価したときに欠陥が観測されない層が用いられてもよい。
【0090】
ゲート絶縁層550として欠陥が少ない絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度でゲート絶縁層550を成膜してもよい。また、ゲート絶縁層550を成膜した後に、ゲート絶縁層550の一部に酸素を打ち込む処理を行ってもよい。本実施形態では、ゲート絶縁層550として、欠陥が少ない絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度で酸化シリコン層が形成される。
【0091】
次に、図9及び図13に示すように、ゲート絶縁層550の上にアルミニウムを主成分とする金属酸化物層555を成膜する(ステップS1006)。
【0092】
金属酸化物層555は、スパッタリング法によって成膜される。金属酸化物層555の成膜によって、ゲート絶縁層550に酸素が打ち込まれる。アルミニウムを主成分とする金属酸化物層は、例えば、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられる。「アルミニウムを主成分とする金属酸化物層」とは、金属酸化物層555に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物層555全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物層555に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物層555全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0093】
金属酸化物層555の膜厚は、例えば、5nm以上100nm以下、5nm以上50nm以下、5nm以上30nm以下、又は7nm以上15nm以下である。本実施形態では、金属酸化物層555として酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムはガスに対する高いバリア性を備えている。本実施形態において、金属酸化物層555として用いられた酸化アルミニウムは、金属酸化物層555の成膜時にゲート絶縁層550に打ち込まれた酸素が外方へ拡散することを抑制する。
【0094】
例えば、金属酸化物層555をスパッタリング法で形成した場合、金属酸化物層555の膜中にはスパッタリングで用いられたプロセスガスが残存する。例えば、スパッタリングのプロセスガスとしてArが用いられた場合、金属酸化物層555の膜中にはArが残存することがある。残存したArは金属酸化物層555に対するSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析で検出することができる。
【0095】
酸化物半導体層544の上にゲート絶縁層550が成膜され、ゲート絶縁層550の上に金属酸化物層555が成膜された状態で、酸化物半導体層544へ酸素を供給するための熱処理(酸化アニール)が行われる(ステップS1007)。
【0096】
酸化物半導体層544が成膜されてから酸化物半導体層544の上にゲート絶縁層550が成膜されるまでの間の工程で、酸化物半導体層544の上面及び側面には多くの酸素欠陥が発生する。上記の酸化アニールによって、下地層520から放出された酸素が酸化物半導体層544の上面及び側面に供給され、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥が修復される。
【0097】
上記の酸化アニールにおいて、ゲート絶縁層550に打ち込まれた酸素は、金属酸化物層555によってブロックされるため、大気中への放出が抑制される。したがって、ステップS1007で行われる酸化アニールによって、酸素が効率よく酸化物半導体層544に供給され、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥が修復される。
【0098】
次に、図9及び図14に示すように、酸化アニールの後に、金属酸化物層555はエッチング(除去)される(ステップS1008)。金属酸化物層555のエッチングには、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングのエッチャントとしては、例えば希釈フッ酸(DHF)が用いられる。当該エッチングによって、ゲート絶縁層550の全面に形成された金属酸化物層555が除去される。換言すると、金属酸化物層555の除去はマスクを用いずに行われる。さらに換言すると、ステップS1008で行われるエッチングによって、少なくとも平面視において、ある1つのパターンに形成された酸化物半導体層544と重なる領域の全ての金属酸化物層555が除去される。
【0099】
次に、図9及び図15に示すように、ゲート絶縁層550の上にゲート電極564を形成する(ステップS1009)。ゲート電極564は、スパッタリング法又は原子層堆積法によって形成された金属層に対し、パターニングを行うことにより形成される。上記のように、ゲート電極564は、金属酸化物層555が除去されることで露出したゲート絶縁層550と接するように形成される。
【0100】
ゲート電極564の材料としては、一般的な金属材料が用いられる。金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物などを用いることができる。ゲート電極564は、上記の材料が単層構造で用いられてもよいし、積層構造で用いられてもよい。
【0101】
次に、図9及び図16に示すように、ゲート電極564が形成された状態で、酸化物半導体層544のソース領域544S及びドレイン領域544Dが形成される(ステップS1010)。具体的には、イオン注入又はイオンドーピング法によって、ゲート電極564をマスクとしてゲート絶縁層550を介して酸化物半導体層544に不純物元素が注入される。ステップS1010では、ゲート電極564で覆われていない酸化物半導体層544の一部に対して、例えば、アルゴン(Ar)、リン(P)、ボロン(B)などの不純物元素が注入される。
【0102】
酸化物半導体層544のうち不純物元素が注入された領域は、酸素欠損が形成されることにより、導電層として機能し得る程度に低抵抗化される。すなわち、ステップS1010で酸化物半導体層544に不純物元素が注入された結果、ゲート電極564で覆われていない領域には、導電部403b(ソース領域544S及びドレイン領域544D)が形成される。他方、酸化物半導体層544のうち、ゲート電極564で覆われた領域には、チャネル部403a(チャネル領域544CH)が形成される。ゲート電極564がマスクとして機能するため、チャネル部403aには不純物元素は注入されない。
【0103】
なお、本実施形態の表示装置100を製造する場合、酸化物半導体層544に不純物が注入されると同時に、上述の酸化物半導体層で構成された配線パターン(図12において、酸化物半導体層544と同時に形成された配線パターン)にも不純物が注入される。この不純物注入により、配線パターンは、導電部403bと同一のシート抵抗もしくは電気伝導度を有する酸化物半導体層となる。すなわち、図16に示すプロセスによって共通配線204が形成される。
【0104】
また、本実施形態では、ゲート絶縁層550を介して酸化物半導体層544に不純物元素が注入されるため、ソース領域544S及びドレイン領域544Dだけでなく、ゲート絶縁層550にもアルゴン(Ar)、リン(P)、ボロン(B)などの不純物元素が含まれている。
【0105】
次に、図9及び図17に示すように、ゲート絶縁層550及びゲート電極564の上に層間膜として絶縁層570及び580を成膜する(ステップS1011)。
【0106】
絶縁層570及び580の成膜方法及び絶縁材料は、下地層520の説明を参照すればよい。絶縁層570の膜厚は、50nm以上500nm以下である。絶縁層580の膜厚は、50nm以上500nm以下である。本実施形態では、例えば、絶縁層570として窒化シリコン層が形成され、絶縁層580として酸化シリコン層が形成される。
【0107】
次に、図9及び図18に示すように、ゲート絶縁層550及び絶縁層570及び580にコンタクトホール571及び573を形成する(ステップS1012)。コンタクトホール571によってソース領域544Sが露出され、コンタクトホール573によってドレイン領域544Dが露出される。コンタクトホール571及び573によってソース領域544S及びドレイン領域544Dが露出したら、図5に示したソース電極591及びドレイン電極593を形成する(ステップS1013)。以上のプロセスを経て、図5に示した半導体装置10が完成する。
【0108】
ソース電極591及びドレイン電極593は、例えば、スパッタリング法により成膜される。ソース電極591及びドレイン電極593は、一般的な金属材料を用いて形成することができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物を用いることができる。ソース電極591及びドレイン電極593は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0109】
上記の製造方法で作製した半導体装置10では、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が30cm/Vs以上、35cm/Vs以上、又は40cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度とは、半導体装置10の飽和領域における電界効果移動度であって、ソース電極とドレイン電極との間の電位差(Vd)が、ゲート電極に供給される電圧(Vg)から半導体装置10の閾値電圧(Vth)を引いた値(Vg-Vth)より大きい領域における電界効果移動度の最大値を意味する。
【0110】
本実施形態の半導体装置10は、ソース領域544S及びドレイン領域544Dを構成する導電部403bの抵抗値が十分に低い。そのため、導電部403bと同一層で構成された酸化物半導体層を配線(具体的には、共通配線204)として用いることが可能である。酸化物半導体は、透光性を有するため、本実施形態のように酸化物半導体を配線材料として用いることが可能となれば、表示装置100における表示部110の開口率を向上させる上で非常に有利である。
【0111】
〈第2実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態に示す半導体装置10の構成とは異なる構成を有する半導体装置10aについて説明する。
【0112】
本実施形態に係る半導体装置10aの構成は、第1実施形態の半導体装置10と類似しているが、下地層520と酸化物半導体層544との間に金属酸化物層530が設けられている点において、第1実施形態の半導体装置10と相違する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0113】
図19は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの構成を示す断面図である。図19に示すように、半導体装置10aは、下地層520、金属酸化物層530、酸化物半導体層544、ゲート絶縁層550、ゲート電極564、絶縁層570、絶縁層580、ソース電極591、及びドレイン電極593を含む。
【0114】
金属酸化物層530は、下地層520の上に設けられている。金属酸化物層530は、下地層520に接している。酸化物半導体層544は、金属酸化物層530の上に設けられている。酸化物半導体層544の下面は、金属酸化物層530に接している。本実施形態において、金属酸化物層530の端部と酸化物半導体層544の端部とは略一致している。
【0115】
金属酸化物層530は、金属酸化物層555(図13参照)と同様にアルミニウムを主成分とする金属酸化物を含む層であり、酸素や水素などのガスを遮蔽するガスバリア膜としての機能を備える。金属酸化物層530としては、金属酸化物層555と同様の材料を用いることができるが、異なる材料を用いてもよい。
【0116】
半導体装置10aの平面形状は、図6と同様なので図示を省略するが、平面視において、金属酸化物層530の平面パターンは、酸化物半導体層544の平面パターンと略同一である。図19を参照すると、酸化物半導体層544の下面は金属酸化物層530によって覆われている。特に、本実施形態では、酸化物半導体層544の下面の全てが、金属酸化物層530によって覆われている。
【0117】
酸化物半導体層544におけるインジウムの比率が50%以上であることで、高移動度の半導体装置10aを実現することができる。他方、このような酸化物半導体層544では、酸化物半導体層544に含まれる酸素が還元されやすく、酸化物半導体層544に酸素欠陥が形成されやすい。
【0118】
半導体装置10aのようなトップゲート構造では、製造プロセスの熱処理工程において、酸化物半導体層544よりも基板500側に設けられる層(例えば、下地層520)から水素が放出される。そして、下層から放出された水素が酸化物半導体層544に到達することで、酸化物半導体層544に酸素欠陥が発生する場合がある。酸素欠陥の発生は、酸化物半導体層544のパターンサイズが大きいほど顕著である。このような酸素欠陥の発生を抑制するために、酸化物半導体層544の下面への水素の到達を抑制することが好ましい。
【0119】
また、酸化物半導体層544の上面は、酸化物半導体層544が形成された後の工程(例えば、パターニング工程又はエッチング工程)の影響を受ける。一方、酸化物半導体層544の下面は、上記のような影響を受けない。したがって、酸化物半導体層544の上面に形成される酸素欠陥は、酸化物半導体層544の下面に形成される酸素欠陥より多い。つまり、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥は、酸化物半導体層544の膜厚方向に一様な分布で存在しているのではなく、酸化物半導体層544の膜厚方向に不均一な分布で存在している。具体的には、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥は、酸化物半導体層544の下面側ほど少なく、酸化物半導体層544の上面側ほど多い。
【0120】
上記のように酸素欠陥が分布した酸化物半導体層544に対して、酸化物半導体層544の上面側に形成された酸素欠陥を修復するために必要な量の酸素を一様に供給すると、酸化物半導体層544の下面側には酸素が過剰に供給される。その結果、下面側では、過剰な酸素によって酸素欠陥とは異なる欠陥準位が形成されてしまい、信頼性試験における特性変動、又は電界効果移動度の低下などの現象が発生する虞がある。したがって、このような現象を抑制するためには、酸化物半導体層544の下面側への酸素供給を抑制しつつ、酸化物半導体層544の上面側へ酸素を供給することが望ましい。
【0121】
以上説明したように、第1実施形態の構成及び製造方法では、酸化物半導体層への酸素供給処理によって半導体装置の初期特性が改善されても、信頼性試験による特性変動が発生する虞がある。すなわち、初期特性と信頼性試験との間にはトレードオフの関係があると言える。しかし、本実施形態によれば、酸化物半導体層544の下面に金属酸化物層530を配置することにより、半導体装置10aの良好な初期特性及び信頼性試験を得ることができる。
【0122】
図20図23を用いて、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法について説明する。図20は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法を示すシーケンス図である。図21図23は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法を示す断面図である。
【0123】
図20に示すように、基板500の上に下地層520が形成される(ステップS2001)。ステップS2001については、図9及び図10に示すステップS1001の説明を参照すればよい。本実施形態では、下地層520の材料として、窒化シリコン及び酸化シリコンを用いる。酸化シリコンは、熱処理によって酸素を放出するため、酸化物半導体層544の酸素欠陥を低減する上で好ましい。
【0124】
図20及び図21に示すように、下地層520の上に金属酸化物層530及び酸化物半導体層540を形成する(ステップS2002)。金属酸化物層530及び酸化物半導体層540は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。
【0125】
金属酸化物層530の材料は、図13に示した金属酸化物層555の材料の説明を参照すればよい。金属酸化物層530の膜厚は、例えば、1nm以上100nm以下、1nm以上50nm以下、1nm以上30nm以下、又は1nm以上10nm以下である。本実施形態では、金属酸化物層530として酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムはガスに対する高いバリア性を備えている。本実施形態において、金属酸化物層530として用いられた酸化アルミニウムは、下地層520から放出された水素及び酸素をブロックし、放出された水素及び酸素が酸化物半導体層540に到達することを抑制する。
【0126】
酸化物半導体層540の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下、15nm以上70nm以下、又は20nm以上40nm以下である。本実施形態では、酸化物半導体層540として、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む酸化物が用いられる。後述するステップS2004で行われるOSアニールの前の酸化物半導体層540は、アモルファスである。
【0127】
後述するOSアニールによって、酸化物半導体層540を結晶化する場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層540はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。成膜後の酸化物半導体層540がアモルファスとなる成膜方法については、図9に示したステップS1002の説明を参照すればよい。
【0128】
次に、図20及び図22に示すように、酸化物半導体層540のパターンを形成する(ステップS2003)。図示は省略するが、酸化物半導体層540の上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層540をエッチングする。酸化物半導体層540のエッチングは、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングは、酸性のエッチャントを用いて行うことができる。酸性のエッチャントとしては、例えば、シュウ酸又はフッ酸を用いることができる。
【0129】
次に、図20に示すように、酸化物半導体層540のパターン形成の後に酸化物半導体層540に対して熱処理(OSアニール)が行われる(ステップS2004)。本実施形態では、OSアニールによって、酸化物半導体層540が結晶化する。また、結晶化された酸化物半導体層を、酸化物半導体層544と記載する。
【0130】
次に、図20及び図23に示すように、金属酸化物層530のパターンを形成する(ステップS2005)。金属酸化物層530は、結晶化された酸化物半導体層544をマスクとしてエッチングされる。金属酸化物層530のエッチングは、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングのエッチャントとしては、例えば希釈フッ酸(DHF)が用いられる。結晶化された酸化物半導体層544は、アモルファスの酸化物半導体層540と比較して、希釈フッ酸に対するエッチング耐性を有する。そのため、酸化物半導体層544をマスクとして、自己整合的に金属酸化物層530をエッチングすることができる。これにより、フォトリソグラフィ工程を省略することができる。
【0131】
図20に示すステップS2006~ステップS2014に示す工程は、図9に示すステップS1005~ステップS1013と同様であるため、以降の説明を省略する。ステップS2006~ステップS2014を経ることにより、図19に示した半導体装置10aを形成することができる。
【0132】
上記の製造方法で作製した半導体装置10aでは、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が50cm/Vs以上、55cm/Vs以上、又は60cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度の定義は、第1実施形態と同様である。
【0133】
〈第3実施形態〉
本実施形態では、第2実施形態とは異なる方法で製造された半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置の構造は、外観としては第2実施形態で説明した半導体装置10aと同一であるため、以下の説明では半導体装置10aと記載する。本実施形態では、第2実施形態と異なる点に着目して説明する。
【0134】
図24は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法を示すシーケンス図である。図24に示すように、本実施形態では、図20に示したステップS2007及びステップS2009の2つの工程が省略されている。すなわち、本実施形態では、ゲート絶縁層550を形成した後、そのままの状態で酸化アニール(ステップS2008)を行う。酸化アニールにより、ゲート絶縁層550から放出された酸素が酸化物半導体層540へと供給され、酸化物半導体層540に含まれる酸素欠陥が修復される。その際における金属酸化物層530の役割は、第2実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0135】
本実施形態の製造方法で作成した半導体装置10aでは、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が30cm/Vs以上、35cm/Vs以上、又は40cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度の定義は、第1実施形態と同様である。
【0136】
〈第4実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で製造された半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置の構造は、外観としては第1実施形態で説明した半導体装置10と同一であるため、以下の説明では半導体装置10と記載する。本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明する。
【0137】
図25は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法を示すシーケンス図である。図25に示すように、本実施形態では、図9に示したステップS1006及びステップS1008の2つの工程が省略されている。すなわち、本実施形態では、ゲート絶縁層550を形成した後、そのままの状態で酸化アニール(ステップS1007)を行う。酸化アニールにより、ゲート絶縁層550から放出された酸素が酸化物半導体層544へと供給され、酸化物半導体層544に含まれる酸素欠陥が修復される。
【0138】
〈第5実施形態〉
第1実施形態では、画素電極620の上に共通電極205を配置する例を示したが、本実施形態では、画素電極620及び共通電極205の位置関係は逆であってもよい。すなわち、画素電極620は、共通電極205の上に配置されていてもよい。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0139】
図26は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す断面図である。図26に示すように、本実施形態では、平坦化層610の上に共通電極205が設けられている。また、画素電極620は、絶縁層630を介して共通電極205の上に配置されている。本実施形態の場合においても、画素電極620と共通電極205との間に形成されたフリンジ電界によって液晶層650の液晶分子の配向制御が行われる。
【0140】
〈第6実施形態〉
第1実施形態では、選択トランジスタ201の構造をトップゲート構造とした例について説明したが、選択トランジスタ201の構造は、トップゲート構造に限られるものではない。本実施形態では、画素112に配置される選択トランジスタの構造をデュアルゲート構造とした例について説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0141】
図27は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す断面図である。図27に示すように、本実施形態では、下地層520の上にゲート電極525が設けられている。ゲート電極525は、本実施形態の選択トランジスタ201bにおけるボトムゲートとしての機能を備える。ゲート電極525を構成する材料は、ゲート電極564を構成する材料と同じであってもよいし異なっていてもよい。ただし、ゲート電極525の材料としては、酸化物半導体層544を結晶化する処理(図9に示したS1004:OSアニール)の温度に耐える材料であることが望ましい。
【0142】
ゲート電極525の上には、ゲート絶縁層527が設けられる。ゲート電極525と酸化物半導体層544とはゲート絶縁層527を介して対向する。ゲート絶縁層527を構成する材料としては、ゲート絶縁層550を構成する材料を用いることができる。本実施形態では、ゲート絶縁層527として酸化シリコン層を用いる。
【0143】
本実施形態のように、選択トランジスタ201aをデュアルゲート構造とした場合、ゲート電極525を遮光膜として機能する。すなわち、ゲート電極525は、基板500側から酸化物半導体層544のチャネル部403aに向かう光をブロックする機能を有する。そのため、本実施形態の選択トランジスタ201aは、第1実施形態の選択トランジスタ201よりもオフ電流が低いという利点を有する。また、酸化物半導体層544のチャネル部403aに対して上下方向からゲート電圧が印加されるため、オン電流の増加が見込まれる。
【0144】
〈第7実施形態〉
第1実施形態では、選択トランジスタ201の構造をトップゲート構造とした例について説明したが、本実施形態では、画素112に配置される選択トランジスタの構造をボトムゲート構造とした例について説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0145】
図28は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す断面図である。図28に示すように、本実施形態の選択トランジスタ201bでは、下地層520の上にゲート電極525及びゲート絶縁層527が設けられている。ゲート電極525及びゲート絶縁層527については、第6実施形態(図27参照)で説明したとおりである。
【0146】
ゲート絶縁層527の上には、酸化物半導体層544aが設けられる。酸化物半導体層544の上には、ソース領域544S及びドレイン領域544Dに対応する位置に、それぞれソース電極591a及びドレイン電極593aが配置される。酸化物半導体層544aのうちソース電極591a及びドレイン電極593aが配置されない領域がチャネル領域544CHとして機能する。本実施形態の選択トランジスタ201bでは、ソース電極591a及びドレイン電極593aが酸化物半導体層544aと直接的に接するように配置されている。
【0147】
ソース電極591a及びドレイン電極593aの上には、絶縁層570及び580が配置される。本実施形態では、第1実施形態とは逆に、下層から絶縁層580、絶縁層570の順に配置される。すなわち、酸化物半導体層544aのチャネル領域544CHには、酸化シリコンを材料とする絶縁層580が接する構造となっている。このような構造とすることにより、図9に示した酸化アニール(S1007)と同様の熱処理を行った際、絶縁層580から酸化物半導体層544aのチャネル領域544CHに対して酸素が供給され、チャネル領域544CHの内部の酸素欠陥を修復することができる。
【0148】
本実施形態の酸化物半導体層544aは、図9に示したOSアニール(S1004)と同様の熱処理を行うため、第1実施形態と同様に、多結晶構造を有する。ただし、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、ソース電極591a及びドレイン電極593aを形成する際に、酸化物半導体層544aに形成される酸素欠損によって低抵抗化することができる。
【0149】
なお、共通配線204aは、酸化物半導体層544aと同一層で構成されるが、チャネル領域544CHと同じ過程で形成される。そのため、共通配線204aを低抵抗化するプロセスを別途追加することが望ましい。図28に示す例では、共通配線204aとして用いる酸化物半導体層で構成される配線パターンを形成した後、当該配線パターンに対してイオン注入等により不純物を添加している。したがって、共通配線204aは、第1実施形態の酸化物半導体層544における導電部403bと同じ電気伝導度を有する。
【0150】
図29は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す断面図である。具体的には、図29は、共通配線204bを意図的に水素を導入することにより低抵抗化した例を示している。
【0151】
図29に示す例では、酸化シリコンで構成される絶縁層580を形成した後、酸化物半導体層で構成される配線パターン(図示せず)が露出するように、絶縁層580に対して開口部582が設けられている。開口部582を形成した後に窒化シリコンで構成される絶縁層570を形成すると、上述の配線パターンは、絶縁層570で覆われた構成となる。酸化物半導体層で構成される配線パターンと絶縁層570とが接した状態で熱処理過程を経ると、窒化シリコンに含まれる水素が酸化物半導体層の内部に拡散する。酸化物半導体層の内部に拡散した水素が酸素欠損と結合し、ドナーとして機能するため、酸化物半導体層は低抵抗化する。
【0152】
以上のように、図29に示す例では、共通配線204bとして用いる配線パターンに窒化シリコンで構成される絶縁層570を接触させ、酸化物半導体層の内部に意図的に水素を導入する。この水素の導入により、酸化物半導体層で構成される配線パターンが十分に低抵抗化するため、酸化物半導体層544aと同一層で構成される酸化物半導体層を共通配線204bとして用いることができる。
【0153】
〈第8実施形態〉
第1実施形態では、表示装置100として液晶表示装置を例に挙げて説明したが、本実施形態では、有機EL表示装置に本発明を適用した例について説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0154】
図30は、本発明の一実施形態の表示装置における画素回路300の構成を示す図である。画素回路300は、各画素112(図1参照)の発光制御を行うための回路である。図30に示す例では、説明の便宜上、2つの半導体装置を用いた基本的な構成を例示するが、この例に限られるものではない。
【0155】
図30に示すように、本実施形態の画素回路300は、駆動トランジスタ301、選択トランジスタ302、保持容量303、及び発光素子304を含む。駆動トランジスタ301及び選択トランジスタ302は、酸化物半導体層を用いた半導体装置(具体的には、薄膜トランジスタ)で構成される。
【0156】
駆動トランジスタ301のソースは、アノード電源線311に接続され、駆動トランジスタ301のドレインは、発光素子304の一端(アノード)に接続されている。発光素子304の他端(カソード)は、共通配線312に接続されている。すなわち、本実施形態では、表示期間において共通配線312がカソード電源線として機能し、センシング期間において共通配線312がタッチセンサの検出信号を取り出す配線として機能する。本実施形態において、アノード電源線311には、共通配線312よりも高い電源電圧が印加されている。
【0157】
選択トランジスタ302のゲートは、走査信号線313に接続され、選択トランジスタ302のソースは、映像信号線314に接続されている。選択トランジスタ302のドレインは、駆動トランジスタ301のゲートに接続されている。なお、選択トランジスタ302のソース及びドレインは、映像信号線314に印加された電圧と保持容量303に蓄積された電圧との関係によって入れ替わる場合がある。
【0158】
保持容量303は、駆動トランジスタ301のゲート及びドレイン、並びに選択トランジスタ302のドレインに接続されている。映像信号線314には、発光素子304の発光強度を決める階調信号が供給される。走査信号線313には、階調信号を書き込む画素を選択するための走査信号が供給される。
【0159】
以上説明した画素回路300では、選択トランジスタ302を介して映像信号線314から入力された諧調信号(諧調電圧)が保持容量303に保持される。表示期間(発光期間)では、保持容量303に保持された電圧に応じた電流が駆動トランジスタ301を介してアノード電源線311から発光素子304に向かって流れる。本実施形態において、発光素子304は、有機EL素子である。発光素子304は、アノード電極とカソード電極との間を流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0160】
図31は、本発明の一実施形態の表示装置における画素112の構造を示す断面図である。図31に示すように、駆動トランジスタ301は、下地層520が設けられた基板500の上に配置される。本実施形態の駆動トランジスタ301は、多結晶構造を有する酸化物半導体層544を含む。本実施形態の駆動トランジスタ301の基本的な構造は、第1実施形態の選択トランジスタ201の構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0161】
下地層520の上には、駆動トランジスタ301の酸化物半導体層544と同一層で構成された共通配線312が設けられている。共通配線312は、酸化物半導体層544の導電部403bと同一の電気伝導度もしくはシート抵抗を有する酸化物半導体層で構成される。
【0162】
駆動トランジスタ301には、発光素子304のアノード電極として機能する画素電極620が設けられている。本実施形態において、画素電極620は、ITO等の透明導電膜と銀等の金属層とを積層した構造を有する。本実施形態では、画素電極620を形成する際、接続電極622を形成する。すなわち、接続電極622は、画素電極620と同一層で構成される。接続電極622は、ゲート絶縁層527、絶縁層570、絶縁層580、及び平坦化層610に設けられたコンタクトホールを介して共通配線312に接続されている。
【0163】
画素電極620の端部は、バンク又はリブと呼ばれる樹脂層810に覆われている。樹脂層810に設けられた開口部815は、画素電極620の表面の一部を露出させる。開口部815によって露出された画素電極620の表面の外形が発光素子304の発光領域を画定させる。開口部815の内側には、発光層820及び共通電極830が設けられる。共通電極830は、発光素子304のカソード電極として機能し、複数の画素112に跨って配置される。他方、画素電極620及び発光層820は、各画素112に対して個別に設けられる。発光層820は、画素の表示色に応じて異なる材料が用いられる。なお、図31では発光層820のみを図示しているが、発光層820に加えて、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層などの機能層を設けてもよい。
【0164】
図30で説明したように、共通電極830は、共通配線312に接続される。本実施形態では、図31に示すように、共通電極830が接続電極622を介して共通配線312に接続されている。接続電極622と共通電極830とを接続するためのコンタクトホール816は、樹脂層810に開口部815を形成する際に同時に形成しておけばよい。
【0165】
発光素子304の上には、封止層840が設けられる。封止層840は、樹脂材料で構成してもよいが、樹脂材料と無機材料とを組み合わせて構成してもよい。本実施形態の封止層840は、窒化シリコン層で樹脂層を挟んだ三層構造で構成される。封止層840の上には、保護基板850が設けられる。保護基板850は、ガラス基板等の透光性基板であり、タッチセンサのタッチ面としても機能する。
【0166】
本実施形態の共通電極830は、表示期間において発光素子304のカソード電極として機能し、センシング期間においてタッチセンサの検出信号を取り出す検出電極として機能する。共通電極830に印加する電圧の供給及び共通電極830からの検出信号の出力は、共通配線312を介して行われる。本実施形態では、共通配線312が、駆動トランジスタ301の活性層として機能する酸化物半導体層544と同一層で構成される。すなわち、タッチセンサのための共通配線312を透光性を有する材料(酸化物半導体層)で構成することができるため、簡易な構造で表示装置の表示部における有効発光領域(発光領域として実効的に機能する領域)を向上させることが可能である。
【0167】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0168】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0169】
10、10a…半導体装置、100…表示装置、100…表示装置、100A…回路基板、110…表示部、112…画素、114…走査信号線、115…タッチセンサ回路、116…映像信号線、120…走査側駆動部、130…端子部、140…フレキシブルプリント回路基板、150…表示制御回路、200…画素回路、201、201a、201b…選択トランジスタ、202…保持容量、203…液晶素子、204、204a~204c…共通配線、205、205a~205c…共通電極、300…画素回路、301…駆動トランジスタ、302…選択トランジスタ、303…保持容量、304…発光素子、311…アノード電源線、312…共通配線(カソード電源線)、313…走査信号線、314…映像信号線、403a…チャネル部、403b…導電部、500…基板、520…下地層、525…ゲート電極、527…ゲート絶縁層、530…金属酸化物層、540、544、544a…酸化物半導体層、544CH…チャネル領域、544D…ドレイン領域、544S…ソース領域、550…ゲート絶縁層、555…金属酸化物層、564…ゲート電極、565…ゲート配線、570…絶縁層、571、573…コンタクトホール、580…絶縁層、582…開口部、591、591a…ソース電極、593、593a…ドレイン電極、610…平坦化層、620…画素電極、622…接続電極、630…絶縁層、650…液晶層、700…基板、700A…対向基板、710…カラーフィルタ、810…樹脂層、815…開口部、816…コンタクトホール、820…発光層、830…共通電極、840…封止層、850…保護基板、1010…第1のエネルギー準位、1020…第2のエネルギー準位、1030…テイル準位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31