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特開2024-7628ポリウレタンフォーム、車両用部材、及び吸音材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007628
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム、車両用部材、及び吸音材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240112BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240112BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/48
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108813
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 計仁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 恵
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB03
4J034KB05
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA03
4J034QB01
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有するポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォーム10は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたポリウレタンフォームであって、前記ポリオールは、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%以上であるポリエーテルポリオールを含み、前記ポリエーテルポリオールの含有量は、前記ポリオール全体を100質量部とした場合に10質量部以上50質量部以下であり、前記ポリオール全体の平均官能基数が3.8以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールは、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%以上であるポリエーテルポリオールを含み、
前記ポリエーテルポリオールの含有量は、前記ポリオール全体を100質量部とした場合に10質量部以上50質量部以下であり、
前記ポリオール全体の平均官能基数が3.8以上である、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
密度が30kg/m以上である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォームを備える、車両用部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォームを備える、吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォーム、車両用部材、及び吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低密度層と高密度層の2層からなる硬質ポリウレタンフォームが開示されている。この硬質ポリウレタンフォームのフォーム形成性組成物は、ポリオール成分として、アルカノールアミンを含有することが記載されている。また、硬質ポリウレタンフォームの実施例2,4において、全ポリオール110質量部に対して、エチレンオキサイド単位含量68%のポリオールa3-1を5.0質量部含むことが示されている。
【0003】
特許文献2には、硬質ポリイソシアヌレートフォームからなる吸音性能及び衝撃吸収能に優れた吸音衝撃吸収材が開示されている。硬質ポリイソシアヌレートフォームの実施例として、平均分子量3600、官能基数3、ポリオキシエチレン含有量80%のポリエーテルポリオールとトルエンジイソシアネートからなる水酸基価31mgKOH/gの水酸基末端プレポリマー 100部と、ポリオキシエチレン含有量0%、水酸基価56mgKOH/gのポリオール 30部の配合処方が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-272806号公報
【特許文献2】特開2013-047338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリウレタンフォームの吸音性能を向上する技術が求められている。しかし、特許文献1の高密度層のようなスキン層は、硬質ポリウレタンフォームの強度向上に寄与するものの、吸音性能を悪化させる一因となることが懸念される。硬質ポリウレタンフォームの分野においては、優れた吸音性能を得るために、低密度層を表面に露出させる二次加工が行われているのが実情である。また、硬質ポリイソシアヌレートフォームは、一般的に成形性が悪く、型成形での流動性不良等の課題がある。
本開示は、良好な諸物性を保持し、二次加工をしない場合であっても優れた吸音性能を有するポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールは、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%以上であるポリエーテルポリオールを含み、
前記ポリエーテルポリオールの含有量は、前記ポリオール全体を100質量部とした場合に15質量部以上50質量部以下であり、
前記ポリオール全体の平均官能基数が3.8以上である、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有するポリウレタンフォームを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポリウレタンフォームの断面を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・密度が30kg/m以上である、ポリウレタンフォーム。
・上記のポリウレタンフォームを備える、車両用部材。
・上記のポリウレタンフォームを備える、吸音材。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
1.ポリウレタンフォーム10
ポリウレタンフォーム10は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたポリウレタンフォームである。ポリオールは、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%以上であるポリエーテルポリオールを含む。ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に15質量部以上50質量部以下である。ポリオール全体の平均官能基数が3.8以上である。
【0012】
組成物は、ポリオール及びイソシアネートを含んでいる。組成物は、発泡剤、触媒、及び整泡剤から選択される少なくとも1種を任意の成分として含んでいてもよい。組成物の各成分について説明する。
【0013】
(1)ポリオール
ポリオールは、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%以上であるポリエーテルポリオール(a)を含む。ポリエーテルポリオール(a)は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本開示のポリオールにおいて、エチレンオキサイド単位の含有量は、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のエチレンオキサイド単位の含有量として表す。エチレンオキサイド単位を除く他のアルキレンオキサイド単位としては、例えば、プロピレンオキサイド単位、ブチレンオキサイド単位等が挙げられる。
【0014】
また、ポリオールは、ポリエーテルポリオール(a)以外の他のポリオールを含む。他のポリオールは、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%未満(エチレンオキサイド単位を含んでいなくてもよい)のポリオールであれば、特に限定されない。他のポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%未満のポリエーテルポリオール、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%未満のポリマーポリオール、ポリエステルポリオール等を用いることができる。他のポリオールは、衝撃吸収性等の諸物性の観点から、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%未満のポリエーテルポリオールであることが好ましい。他のポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。以下、ポリエーテルポリオール(a)について説明した後に、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%未満のポリエーテルポリオールとして、ポリエーテルポリオール(b)及びポリエーテルポリオール(c)について説明する。
【0015】
(1.1)ポリエーテルポリオール(a)
ポリエーテルポリオール(a)として、以下の開始剤(化合物)の1種又は2種以上に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキサイド等の1種又は2種以上を付加せしめて得られるポリエーテルポリオールが例示される。
【0016】
(1.1.1)開始剤
(1.1.1.1)多価アルコール、及び多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物
多価アルコールの例:
〔2官能アルコール〕エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール
〔3官能アルコール〕グリセリン、トリメチロールプロパン
〔4官能アルコール〕ペンタエリスリトール
〔6官能アルコール〕ソルビトール
〔8官能アルコール〕ショ糖
(1.1.1.2)多価フェノール類のアルキレンオキサイド付加物
多価フェノール類のアルキレンオキサイド付加物の例:ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物
(1.1.1.3)多価ヒドロキシ化合物
多価ヒドロキシ化合物の例:りん酸、ベンゼンりん酸、ポリりん酸(例えばトリポリりん酸およびテトラポリりん酸)等
(1.1.1.4)フェノール-アニリン-ホルムアルデヒド三元縮合生成物
(1.1.1.5)アニリン-ホルムアルデヒド縮合生成物
(1.1.1.6)ポリアミン類
ポリアミン類の例:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビスオルソクロルアニリン、4,4-および2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン等
(1.1.1.7)アルカノールアミン類
アルカノールアミン類の例:トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等
【0017】
ポリエーテルポリオール(a)は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加物であることが好ましく、プロピレンオキサイド-エチレンオキサイドのランダム共重合体であることがより好ましい。
【0018】
ポリエーテルポリオール(a)における、エチレンオキサイド単位の含有量は、吸音性向上の観点から、25質量%以上であり、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。エチレンオキサイド単位の含有量は、100質量%以下であり、成形性の観点から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下である。これらの観点から、エチレンオキサイド単位の含有量は、25質量%以上100質量%以下であり、好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上85質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以上80質量%以下である。
【0019】
ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量は特に限定されない。ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量は、好ましくは20000以下であり、より好ましくは15000以下であり、更に好ましくは10000以下であり、更に好ましくは7000以下であり、更に好ましくは5000以下である。ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量の下限は、通常、1000以上であり、2000以上、2500以上であってもよい。
ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。ポリエーテルポリオール(a)が市販品である場合には、カタログ値をポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量として採用してもよい。なお、後述する他のポリオールについても同様に規定できる。
【0020】
ポリエーテルポリオール(a)の官能基数は、後述のポリオール全体の平均官能基数の要件を満たす限り、特に限定されない。ポリエーテルポリオール(a)の官能基数は、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは3である。ポリエーテルポリオール(a)の官能基数は、通常2以上であり、好ましくは2.5以上である。
ポリエーテルポリオール(a)の官能基数とは、ポリエーテルポリオール(a)に含まれるそれぞれの成分が有する活性水素基の数の平均を意味する。ポリエーテルポリオール(a)が市販品である場合には、カタログ値をポリエーテルポリオール(a)の官能基数として採用してもよい。なお、後述する他のポリオールについても同様に規定できる。
【0021】
ポリエーテルポリオール(a)の含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、吸音性の観点から、10質量部以上であり、好ましくは15質量部以上であり、より好ましくは18質量部以上であり、更に好ましくは20質量部以上である。上記ポリエーテルポリオール(a)の含有量は、成形性の観点から、50質量部以下であり、好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは35質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下である。これらの観点から、ポリエーテルポリオール(a)の含有量は、10質量部以上50質量部以下であり、好ましくは15質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは18質量部以上35質量部以下であり、更に好ましくは20質量部以上30質量部以下である。
【0022】
(1.2)ポリエーテルポリオール(b)
ポリエーテルポリオール(b)として、上述の開始剤(化合物)の1種又は2種以上に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキサイド等の1種又は2種以上を付加せしめて得られるポリエーテルポリオールが例示される。ポリエーテルポリオール(b)は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加物であることが好ましく、プロピレンオキシドを付加重合させ、更にエチレンオキシドを付加重合させたプロピレンオキサイド-エチレンオキサイドの共重合体であることがより好ましい。
【0023】
ポリエーテルポリオール(b)のエチレンオキサイド単位の含有量は特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール(b)のエチレンオキサイド単位の含有量は、0質量%より多いことが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。ポリエーテルポリオール(b)のエチレンオキサイド単位の含有量の上限は、特に限定されず、25質量%未満であればよく、例えば、23質量%以下、20質量%以下であってもよい。
【0024】
ポリエーテルポリオール(b)の数平均分子量は特に限定されない。ポリエーテルポリオール(b)の数平均分子量は、好ましくは20000以下であり、より好ましくは15000以下であり、更に好ましくは10000以下であり、更に好ましくは7000以下であり、更に好ましくは5000以下である。ポリエーテルポリオール(b)の数平均分子量の下限は、通常、1000以上であり、2000以上、2500以上であってもよい。
【0025】
ポリエーテルポリオール(b)の官能基数は、後述のポリオール全体の平均官能基数の要件を満たす限り、特に限定されない。ポリエーテルポリオール(b)の官能基数は、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは3である。ポリエーテルポリオール(b)の官能基数は、通常2以上であり、好ましくは2.5以上である。
【0026】
ポリエーテルポリオール(b)の含有量は、特に限定されない。ポリエーテルポリオール(b)の含有量は、衝撃吸収性の観点から、ポリオール全体を100質量部とした場合に、好ましくは15質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、更に好ましくは25質量部以上である。上記ポリエーテルポリオール(b)の含有量は、ポリエーテルポリオール(a)の配合量を十分にして吸音性を確保する観点から、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下であり、更に好ましくは55質量部以下である。これらの観点から、ポリエーテルポリオール(b)の含有量は、好ましくは15質量部以上70質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上60質量部以下であり、更に好ましくは25質量部以上55質量部以下である。
【0027】
(1.3)ポリエーテルポリオール(c)
ポリエーテルポリオール(c)として、上述の開始剤(化合物)の1種又は2種以上に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキサイド等の1種又は2種以上を付加せしめて得られるポリエーテルポリオールが例示される。ポリエーテルポリオール(c)は、ポリオール全体の平均官能基数を確保する観点から、5官能以上の開始剤を用いたポリエーテルポリオールを含有することが好ましく、ショ糖を用いたポリエーテルポリオールを含有することが好ましい。
【0028】
ポリエーテルポリオール(c)のエチレンオキサイド単位の含有量は、25質量%未満であれば、特に限定されない。
ポリエーテルポリオール(c)の数平均分子量は特に限定されない。ポリエーテルポリオール(c)の数平均分子量は、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1500以下であり、更に好ましくは1000以下であり、特に好ましくは800以下である。ポリエーテルポリオール(c)の数平均分子量の下限は、特に限定されず、400以上、500以上であってもよい。
【0029】
ポリエーテルポリオール(c)の官能基数は、後述のポリオール全体の平均官能基数の要件を満たす限り、特に限定されない。ポリエーテルポリオール(c)の官能基数は、好ましくは4以上であり、より好ましくは4.5以上であり、更に好ましくは5以上である。ポリエーテルポリオール(c)の官能基数は、通常8以下であり、例えば、7以下、6以下であってもよい。
【0030】
ポリエーテルポリオール(c)の含有量は、特に限定されない。ポリエーテルポリオール(c)の含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、衝撃吸収性を得る観点から、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは25質量部以上であり、更に好ましくは30質量部以上である。上記ポリエーテルポリオール(b)の含有量は、ポリエーテルポリオール(a)の配合量を十分にして吸音性を確保する観点から、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは45質量部以下であり、更に好ましくは40質量部以下である。これらの観点から、ポリエーテルポリオール(c)の含有量は、好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは25質量部以上45質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以上40質量部以下である。
【0031】
(1.4)その他のポリオール
ポリオールとしては、発明の効果を阻害しない範囲内でその他のポリオールを含んでいてもよい。その他のポリオールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールが挙げられる。その他のポリオールは1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
(1.5)ポリオール全体の平均官能基数
ポリオール全体の平均官能基数は、衝撃吸収性等の諸物性を保持する観点から、3.8以上であり、好ましくは4.0以上であり、より好ましくは4.5以上である。ポリオール全体の平均官能基数の上限は特に限定されない。ポリオール全体の平均官能基数は、通常、8.0以下であり、例えば、7.0以下、6.0以下、5.0以下であってもよい。
ポリオール全体の平均官能基数は、ポリオール全体に含まれる各ポリオールの官能基数と、各ポリオールのモル分率から算出される。例えば、ポリオールとして、ポリオール(a)、ポリオール(b)、ポリオール(c)の3種を用いた場合には、以下の式により、ポリオール全体の平均官能基数を求めることができる。
【数1】


ここで、Fはポリエーテポリオール(a)の官能基数、Wはポリエーテポリオール(a)の質量部、Mはポリエーテポリオール(a)の数平均分子量を表し、Fはポリエーテポリオール(b)の官能基数、Wはポリエーテポリオール(b)の質量部、Mはポリエーテポリオール(b)の数平均分子量を表し、Fはポリエーテポリオール(c)の官能基数、Wはポリエーテポリオール(c)の質量部、Mはポリエーテポリオール(c)の数平均分子量を表す。
【0033】
(1.5)ポリオール全体におけるエチレンオキサイド単位の含有量
組成物に含まれるポリオール全体におけるエチレンオキサイド単位の含有量は、特に限定されない。ポリオール全体におけるエチレンオキサイド単位の含有量は、好ましくは10質量%以上45質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上35質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以上30質量%以下である。
【0034】
(1.6)ポリエーテルポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の比
ポリオールが、ポリエーテルポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を含有する場合において、ポリエーテルポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の比(質量比)は特に限定されない。ポリエーテルポリオール(a):ポリエーテルポリオール(b)は、吸音性及び衝撃吸収性の観点から、60:40-20:80(質量比)であることが好ましく、50:50-25:75(質量比)であることがより好ましく、40:60-30:70(質量比)であることが更に好ましい。
【0035】
(2)発泡剤
組成物には、発泡剤が含まれていてもよい。発泡剤は特に限定されない。発泡剤としては、例えば、水、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等のハイドロハロオレフィン、メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩化アルキレン、イソペンタン等の炭素数4-8のアルカンが挙げられる。これらの中でも、好適にスキン層に連通化したセルを形成して、吸音性を向上する点から水が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。発泡剤の含有量は特に限定されない。発泡剤の含有量は、吸音性と各種物性を確保する観点から、ポリオール100質量部に対して好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは3質量部以上8質量部以下である。
【0036】
(3)触媒
組成物には、触媒が含まれていてもよい。触媒は特に限定されない。各種の触媒は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
触媒としては、例えば、泡化触媒、樹脂化触媒、泡化および樹脂化の両方を促進し得るうる触媒(バランス触媒)、イソシアネート基の三量化反応を促進させる三量化触媒等が挙げられる。
【0037】
泡化触媒としては、例えば、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン等の3級アミンまたはその有機酸塩等、モルホリン化合物、ピペラジン化合物が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
樹脂化触媒としては、例えば、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、3級アミンまたはその有機酸塩、有機金属等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
バランス触媒としては、メチルジシクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
三量化触媒としては、例えば、1,3,5-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン等の3級アミン類、トリエチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等の4級アンモニウム塩、金属酸化物類、アルコキシド類等、有機金属塩類、窒素含有複素環化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
これらの中でも、VOC低減の観点から、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノールの使用が好ましく、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノールと、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル又はN,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミンとの併用がより好ましい。
触媒は市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ルプラゲンN301(泡化触媒)、ルプラゲンN206(泡化触媒)、ルプラゲンN107(泡化触媒)、カオライザーNo.25(樹脂化触媒)、Polycat12(バランス触媒)、Polycat55(バランス触媒)、ルプラゲンN600(三量化触媒)、Ucat18X(三量化触媒)、TOYOCAT TR20(三量化触媒)、TOYOCAT TRX(三量化触媒)が挙げられる。
触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、触媒の合計量が0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0038】
(4)整泡剤
組成物には、整泡剤が含まれていてもよい。整泡剤は特に限定されない。整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。シリコーン系整泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルの共重合体等のポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。整泡剤は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0039】
整泡剤は、「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」及び「HR(High Resilience)モールドフォーム用整泡剤」から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」及び「HRモールドフォーム用整泡剤」は、「硬質ポリウレタンフォーム用整泡剤」に比して、セルオープン性(破泡性)に優れる。このため、上述のポリオール(a)との併用によって、ポリウレタンフォーム10のスキン層に連通化したセル等の開口が形成されて、吸音性向上に寄与すると推測される。高周波数域(例えば周波数2000Hz以上)の吸音性を向上する観点から、整泡剤は、「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」の1種以上と、「HRモールドフォーム用整泡剤」の1種以上が併用されることがより好ましい。
「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」としては、プロピレンオキサイド単位を含むポリエーテルで変性したポリエーテル変性シリコーンや、変性ポリエーテルの末端がアルコキシ基等でキャップされたポリエーテル変性シリコーン等を挙げることができる。市販品の「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」としては、東レ・ダウコーニング社製 VORASURF SF1280A、VORASURF SZ1136;モメンティブ社製 Niax Silicone L895、Niax Silicone L858、Niax Silicone L838、Niax Silicone L3636LF等が挙げられる。
「HRモールドフォーム用整泡剤」としては、比較的分子量の小さいポリエーテル変性シリコーンが広く用いられている。本開示のポリウレタンフォームに用いられる「HRモールドフォーム用整泡剤」の動粘度(JIS Z8803:2011に準拠)は、好ましくは1000mm/s(25℃)以下であり、より好ましくは500mm/s(25℃)以下であり、更に好ましく300mm/s(25℃)以下である。上記の「HRモールドフォーム用整泡剤」の動粘度は通常10mm/s(25℃)以上である。市販品の「HRモールドフォーム用整泡剤」としては、東レ・ダウコーニング社製 VORASURF SF2962A、SF2965、SF2973、SF2961、SRX253、TF1348、TF1365等が挙げられる。
【0040】
整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、整泡剤の合計量が0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上8質量部以下がより好ましい。
「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」と、「HRモールドフォーム用整泡剤」が併用される場合において、「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」:「HRモールドフォーム用整泡剤(質量比)は特に限定されない。「軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤」:「HRモールドフォーム用整泡剤」は、吸音性及び衝撃吸収性の観点から、20:80-40:60(質量比)であることが好ましく、25:75-35:65(質量比)であることがより好ましい。
【0041】
(5)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。イソシアネートとしては、芳香族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。芳香族系イソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0042】
イソシアネートとしては、ポリメリックMDIが好適である。ポリメリックMDIは、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートであり、例えば、二核体であるMDIと、三核体以上の多核体との混合物である。ポリメリックMDIは、MDI合成反応により得られる未処理の粗MDIであってもよく、また上記の粗MDIから減圧蒸留等により所望量のモノメリックMDIを分離して組成を調整したものであってもよい。
【0043】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、成形性の観点から、80-140が好ましく、90-120がより好ましい。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0044】
(6)その他の成分
組成物は、上記の成分以外に、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、難燃剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、粘着付与剤、相溶化剤等、添加剤として公知のものを添加することができる。
難燃剤としては、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル系化合物、赤燐、ポリリン酸アンモニウム等のリン系化合物、メラミン系化合物、金属水和物、アンチモン化合物等が挙げられる。難燃剤は、ポリオール100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上15質量部以下がより好ましい。
【0045】
2.ポリウレタンフォーム10の製造方法
ポリウレタンフォーム10の製造には、例えば、プレポリマー法、ワンショット法などが採用される。プレポリマー法は、ポリオールとイソシアネートとを事前に反応させて末端にイソシアネート基又は水酸基を有するウレタンプレポリマーを得て、ウレタンプレポリマーを用いてポリウレタンフォーム10を得る方法である。ワンショット法は、ポリオールとイソシアネート等を一括に仕込み、反応させる方法である。
【0046】
ポリウレタンフォーム10の製造には、型内で成形するモールド法における公知の方法が適用できる。具体的には、組成物(発泡原液)を密閉型のモールドに注入し、ウレタン化反応を行わせ、硬化後、脱型してポリウレタンフォームを得ることができる。
【0047】
3.ポリウレタンフォーム10の物性
ポリウレタンフォーム10は、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、及び軟質ポリウレタンフォームのいずれであってもよい。ポリウレタンフォーム10は、衝撃吸収性の観点から、硬質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォームであることが好ましい。
【0048】
ポリウレタンフォーム10の見掛け全体密度(JIS K7222:2005に準拠)は、30kg/m以上が好ましく、40kg/m以上がより好ましく、50kg/m以上が更に好ましい。上記ポリウレタンフォーム10の見掛け全体密度の上限は特に限定されず、例えば、500kg/m以下とすることができ、吸音性及び軽量化の観点から、300kg/m以下、200kg/m以下、100kg/m以下、80kg/m以下、65kg/m以下としてもよい。なお、後述の実施例とは別に、密度250kg/mのポリウレタンフォームにおいても、所望の吸音性能が得られることを確認している。
【0049】
ポリウレタンフォーム10は、JIS A1405-2:2007に準拠して、試験体の厚み15mm、周波数500Hzにて測定した吸音率が0.10以上であることが好ましい。
ポリウレタンフォーム10は、JIS A1405-2:2007に準拠して、試験体の厚み15mm、周波数1000Hzにて測定した吸音率が0.35以上であることが好ましい。
ポリウレタンフォーム10は、JIS A1405-2:2007に準拠して、試験体の厚み15mm、周波数2000Hzにて測定した吸音率が0.78以上であることが好ましい。
ポリウレタンフォーム10は、JIS A1405-2:2007に準拠して、試験体の厚み15mm、周波数2500Hzにて測定した吸音率が0.84以上であることが好ましい。
ポリウレタンフォーム10は、JIS A1405-2:2007に準拠して、試験体の厚み15mm、周波数3150Hzにて測定した吸音率が0.76以上であることが好ましい。
ポリウレタンフォーム10は、上記の周波数500Hz、1000Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hzの好ましい吸音率の各要件について、2以上の要件を充足することがより好ましく、3以上、4以上の要件を充足することが更に好ましく、5の要件を充足することが特に好ましい。
なお、吸音率の測定は、スキン層がある試験体を用い、スキン層の表面を基準面として行う。上記の各周波数における吸音率の上限は、特に限定されず、1以下である。
好ましい吸音率の各要件の充足性については、各ポリオールの配合割合、触媒の種類及び配合量、整泡剤の種類及び配合量、イソシアネートインデックス等を変更することで、コントロールできる。
【0050】
JIS K7220 :2006に準拠して測定した、ポリウレタンフォーム10の変形率10%以内に到達した最大の力(最大荷重)は、衝撃吸収性の観点から、120N以上400N以下が好ましく、180N以上300N以下がより好ましい。
なお、ポリウレタンフォーム10の最大荷重は、ポリウレタンフォーム10のコア部から切り出した50mm×50mm×厚さ30mmの試験片を用いて測定した。
なお、ポリウレタンフォーム10の最大荷重は、各ポリオールの配合割合、触媒の種類及び配合量、整泡剤の種類及び配合量、イソシアネートインデックス等を変更することで、コントロールできる。
【0051】
4.本実施形態の作用及び効果
本実施形態のポリウレタンフォーム10は、良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有する。諸物性としては、衝撃吸収性、VOC値が低いこと、臭気が低いこと等が例示される。
【0052】
本実施形態のポリウレタンフォーム10が良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有する理由は定かではないが、次のように推測される。なお、本開示はこの推測理由によって限定解釈されるものではない。
図1は、ポリウレタンフォーム10の断面を模式的に表した図である。ポリウレタンフォーム10は、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%以上であるポリエーテルポリオール(a)を所定量以上含むため、スキン層に連通化したセル等の開口が形成されやすい。このため、スキン層に連通化したセルの開口がないポリウレタンフォームに比して、外部の音が開口からポリウレタンフォーム10の内部に進入し易く、吸音性が向上すると推測される。なお、図1においては、外部の音がポリウレタンフォームの内部に進入し吸音される様子を矢印で模式的に表している。
さらに、ポリウレタンフォーム10は、ポリオール全体の平均官能基数が3.8以上であるから、適度な強度を有し、衝撃吸収性等の諸物性を確保できると推測される。
【0053】
ポリウレタンフォーム10が使用される物品は特に限定されない。
ポリウレタンフォーム10は、良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有するから、車両用部材として好適である。車両用部材としては、天井用基材、インストルメントパネル等の内装材、車両の足回り等に配置される各種吸音材等が挙げられる。ポリウレタンフォーム10が衝撃吸収性に優れる場合には、車両用部材として特に好適である。また、ポリウレタンフォーム10のVOC値が低い場合や、臭気が低い場合にも、車両用部材として特に好適である。
また、ポリウレタンフォーム10は、良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有するから、吸音材として好適である。吸音材としては、車両、航空機、船舶等の乗物用吸音材、建材用吸音材、電子部品用の吸音材等が挙げられる。ポリウレタンフォーム10が衝撃吸収性に優れる場合には、衝撃吸収吸音材として特に好適である。吸音材を構成するポリウレタンフォーム10は、一部又は全部のスキン層が除去されていなくてもよい。スキン層が除去されない場合には、スキン層除去に係る二次加工のコストを削減でき、また、スキン層が除去された場合に比して、部材の硬度を大きくできる。
【実施例0054】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
1.ポリウレタンフォームの製造
まず、各実施例及び各比較例のポリウレタンフォームに用いた組成物の原料成分を以下に示す。
ポリオール(a1):水酸基価52mgKOH/g、数平均分子量3300、官能基数3のプロピレンオキサイド-エチレンオキサイドのランダム共重合体(三井化学社製、EP505S)、エチレンオキサイド単位の含有量 72質量%、実施形態に記載のポリエーテルポリオール(a)に相当する。
ポリオール(b):水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量3000、官能基数3のプロピレンオキサイド-エチレンオキサイドの共重合体(三洋化成工業社製、GL3000)、エチレンオキサイド単位の含有量 20質量%、実施形態に記載のポリエーテルポリオール(b)に相当する。
ポリオール(c):水酸基価450mgKOH/g、数平均分子量650、官能基数5.2のポリエーテルポリオール(BASF社製、VP9346)、エチレンオキサイド単位の含有量 0質量%、実施形態に記載のポリエーテルポリオール(c)に相当する。
ポリオール(d):水酸基価1828mgKOH/g、数平均分子量92.07、官能基数3のポリオール(花王社製、グリセリン)、エチレンオキサイド単位の含有量 0質量%
ポリオール(a2):水酸基価42mgKOH/g、数平均分子量3600、官能基数2.7のポリオール(BASF社製、Lupranol 2048/2)、エチレンオキサイド単位の含有量 30質量%、実施形態に記載のポリエーテルポリオール(a)に相当する。
添加剤:トリス(1-クロロ-2-プロピル)=ホスファート、(大八化学社製、TCPP)
整泡剤1:軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤、東レ・ダウコーニング社製 VORASURF SF1280A
整泡剤2:HRモールドフォーム用整泡剤、東レ・ダウコーニング社製 VORASURF SF2962A
整泡剤3:軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤、東レ・ダウコーニング社製 VORASURF SZ1136
触媒1:N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、BASF社製 ルプラゲンN301(泡化触媒)
触媒2:1,3,5-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、BASF社製 ルプラゲンN600(三量化触媒)
触媒3:トリエチルメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、サンアプロ社製 Ucat18X(三量化触媒)
触媒4:ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、BASF社製 ルプラゲンN206(泡化触媒)
触媒5:メチルジシクロヘキシルアミン、EVONIK社製 Polycat12(バランス触媒)
触媒6:脂肪族アミン、EVONIK社製 Polycat55(バランス触媒)
触媒7:N,N-ジメチルアミノヘキサノール、BASF社製、ルプラゲンN107(泡化触媒)
触媒8:4級アンモニウム塩、東ソー社製 TOYOCAT TR20(三量化触媒) 触媒9:4級アンモニウム塩、東ソー社製 TOYOCAT TRX(三量化触媒)
触媒10:ジメチルアミノヘキサノール、花王社製 カオライザーNo.25(樹脂化触媒)
発泡剤:水
イソシアネート:ポリメリックMDI、NCO% 31.0%のポリメリックMDI(BASF社製、品番LUPRANATE M-20S
【0055】
上記各成分を下記表1-4に示す配合割合で混合し、各実施例及び比較例のポリウレタンフォームを得た。なお、表1-4において、空欄は、その成分の配合割合が0質量部であることを表す。
【0056】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0057】
2.ポリウレタンフォームの評価
得られたポリウレタンフォームを以下の評価方法で評価した。その結果を表1-4の各欄に示す。
[密度]
JIS K7222:2005に準拠して、見掛け全体密度(kg/m)を測定した。
[吸音性能]
JIS A1405-2:2007に準拠して、試験体の厚み15mm、周波数500Hz、1000Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hzにて吸音率を測定した。吸音率の測定は、スキン層がある試験体を用い、スキン層の表面を基準面として行った。各周波数にて測定した吸音率について、以下の評価基準で評価した。
500Hz:吸音率が0.10以上である。
1000Hz:吸音率が0.35以上である。
2000Hz:吸音率が0.78以上である。
2500Hz:吸音率が0.84以上である。
3150Hz:吸音率が0.76以上である。
表1-4において、各周波数で評価基準を満たす場合に、当該測定周波数の欄に「OK」と示した。各周波数で条件を満たせば1点とし、周波数500Hz、1000Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hzについての合計の点数(1点-5点)を当該試験体の吸音性能についての点数とした。吸音性能の点数が高い程、吸音性能に優れることを表す。
[強度]
JIS K7220:2006に準拠して、ポリウレタンフォームの変形率10%以内に到達した最大の力(最大荷重)を測定した。ポリウレタンフォームの最大荷重は、各ポリウレタンフォームのコア部から切り出した50mm×50mm×厚さ30mmの試験片を用いて測定した。測定した最大荷重(N)について、以下の評価基準で評価し、点数を付けた。強度の点数が高い程、衝撃吸収性に優れることを表す。
3点:圧縮強さが180N以上300N以下である。
2点:圧縮強さが120N以上180N未満、又は、300Nより大きく400N以下である。
1点:圧縮強さが120N未満、又は、400Nより大きい。
[VOC]
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、テトラデカン、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ビス[2-エチルヘキシル](DEHP)について、自動車内装材として用いた場合を想定した試験を実施し、以下の基準で点数を付けた。1点の方が、0点よりもVOCが低減されていることを表す。
1点:上記の11項目について、すべての項目のVOC値が基準値以下である。
0点:上記の11項目について、VOC値が基準値を満たさない項目がある。
[臭気]
自動車内装材として用いた場合を想定した官能試験を実施し、次の臭気強度の評価基準にて評価した。
臭気強度
5:強烈な臭い
4:強い臭い
3:楽に感知できる臭い
2:何の臭いであるかわかる臭い
1:やっと感知できる臭い
0:無臭
臭気の点数は、以下の基準で点数を付けた。1点の方が、0点よりも臭気が低減されていることを表す。
1点:臭気強度が0、1、2のいずれかである。
0点:臭気強度が3、4、5のいずれかである。
【0058】
吸音性能の点数と、強度の点数と、VOCの点数と、臭気の点数の合計点を、物性の合計点として算出した。総合判定は、物性の合計点に基づき以下の基準で評価した。
A:物性の合計点が7点以上10点以下である。
B:物性の合計点が4点以上6点以下である。
C:物性の合計点が3点以下である。
【0059】
3.結果
実施例1-10,12-23は、下記要件a-cを満たしている。
・要件a:ポリオールは、エチレンオキサイド単位の含有量が25質量%以上であるポリエーテルポリオール(a)を含む。
・要件b:ポリエーテルポリオール(a)の含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に10質量部以上50質量部以下である。
・要件c:ポリオール全体の平均官能基数が3.8以上である。
これに対して、比較例は要件cを満たしていない。
実施例1-10,12-23は、比較例と比較して、総合判定が高かった。実施例1-10,12-23は、良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有していることがわかった。
【0060】
実施例1-5は、ポリオール(a)とポリオール(b)の配合割合を変更して得られたポリウレタンフォームである。ポリオール(a)の配合割合が高い程、強度が高くなる傾向があり、ポリオール(b)の配合割合が高い程、1000Hz-2500Hzでの吸音率が高くなる傾向があった。この結果から、ポリオール(a)とポリオール(b)の配合割合を調整することによって、吸音性能と衝撃吸収性を好適にコントロールできることが示唆された。
【0061】
実施例6-8,18-21は、整泡剤の種類と配合量を変更して得られたポリウレタンフォームである。
整泡剤1(軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤)と整泡剤2(HRモールドフォーム用整泡剤)を併用した実施例6は、整泡剤3(軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤)のみを用いた実施例7-8よりも吸音性能の点数が高かった。この結果から、HRモールドフォーム用整泡剤を用いることによって、吸音性を向上できることが示唆された。
また、実施例18-21は、整泡剤1(軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤)と整泡剤2(HRモールドフォーム用整泡剤)の配合量が多い程、吸音性能及び強度の点数が高かった。この結果から、整泡剤の配合量を調整することによって、吸音性及び衝撃吸収性をコントロールできることが示唆された。
【0062】
実施例9,10は、イソシアネートインデックス(INDEX)を変更して得られたポリウレタンフォームである。イソシアネートインデックスが100の実施例9は、イソシアネートインデックスが120の実施例10よりも圧縮強さが小さかった。この結果から、イソシアネートインデックスを調整することによって、衝撃吸収性をコントロールできることが示唆された。
【0063】
実施例12-17は、触媒の種類と配合量を変更して得られたポリウレタンフォームである。
例えば、触媒4(ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、泡化触媒)を用いた実施例12では、2000Hz以上の吸音性が良好であった。触媒7(N,N-ジメチルアミノヘキサノール、泡化触媒)を用いた実施例15では、2000Hz以下の吸音性が良好であった。また、その他の触媒を用いた各実施例においても、触媒の種類及び配合量に応じて、周波数と吸音率の特性が変化することがわかった。これらの結果から、触媒の種類を調整することによって、吸音性能をコントロールできることが示唆された。
【0064】
実施例22は、比較例及び他の実施例と比較して、物性の合計点が高かった。実施例22より、整泡剤1(軟質ポリウレタンフォーム用整泡剤)と整泡剤2(HRモールドフォーム用整泡剤)の併用によって、好適に吸音性能と衝撃吸収性能を向上できることが示唆された。また、実施例22より、触媒4(ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、泡化触媒)と、触媒7(N,N-ジメチルアミノヘキサノール、泡化触媒)の併用によって、VOC及び臭気を低減しつつ、好適に吸音性能と衝撃吸収性能を向上できることが示唆された。
【0065】
4.実施例の効果
以上の実施例のポリウレタンフォームは、良好な諸物性を保持し、優れた吸音性能を有していた。
【0066】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、本開示の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10: ポリウレタンフォーム
10A: 表面
11: コア部
12: スキン層
図1