(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076289
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240529BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20240529BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240529BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20240529BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240529BHJP
H01G 11/14 20130101ALN20240529BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/70 A
H01M10/0585
H01G11/70
H01M10/04 Z
H01G11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187802
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 潤
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕介
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB02
5E078FA04
5E078FA06
5E078HA24
5H017AA03
5H017AA04
5H017CC03
5H017DD05
5H017DD08
5H017HH05
5H028CC07
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029DJ07
5H029DJ14
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】高い体積効率を保持したまま、発生したガスが溜まることを抑制し得る電池の提供。
【解決手段】セパレータ9と、正極活物質層8と、負極活物質層4と、正極側集電体1と、負極側集電体2と、負極側集電体2の負極活物質層4と反対側の表面に設けられた接着層6と、を有し、負極側集電体2は、負極活物質層4が形成されていない領域a1及び負極活物質層4が形成されている領域a2を有し、領域a1及び領域a2のそれぞれにおいて、負極活物質層4を有する側の表面から接着層6側の表面まで貫通する貫通孔を有し、負極側集電体2における接着層6側の表面の一部には、接着層6が負極側集電体2に接していない領域を有することで、接着層6と負極側集電体2の間に隙間7を有し、隙間7は、領域a1に設けられた貫通孔3aと、領域a2に設けられた貫通孔3bと、が連通するように設けられている、電池10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータと、
正極活物質層と、
前記正極活物質層にセパレータを介して対向する負極活物質層と、
前記正極活物質層の前記セパレータと反対側の表面に設けられた正極側集電体と、
前記負極活物質層の前記セパレータと反対側の表面に設けられた負極側集電体と、
前記負極側集電体の前記負極活物質層と反対側の表面に設けられた接着層と、を有し、
下記構成Aまたは下記構成Bを満たす、電池。
(構成A)
前記負極側集電体は、前記負極活物質層が形成されていない領域a1及び前記負極活物質層が形成されている領域a2を有し、前記領域a1及び前記領域a2のそれぞれにおいて、前記負極活物質層を有する側の表面から前記接着層側の表面まで貫通する貫通孔を1つ以上有し、
前記負極側集電体における前記接着層側の表面の一部には、前記接着層が前記負極側集電体に接していない領域を有することで、前記接着層と前記負極側集電体の間に隙間を有し、
前記隙間は、前記領域a1に設けられた貫通孔と、前記領域a2に設けられた貫通孔と、が連通するように設けられている。
(構成B)
前記正極側集電体は、前記正極活物質層が形成されていない領域b1及び前記正極活物質層が形成されている領域b2を有し、前記領域b1及び前記領域b2のそれぞれにおいて、前記正極活物質層を有する側の表面から前記接着層側の表面まで貫通する貫通孔を1つ以上有し、
前記正極側集電体における前記接着層側の表面の一部には、前記接着層が前記正極側集電体に接していない領域を有することで、前記接着層と前記正極側集電体の間に隙間を有し、
前記隙間は、前記領域b1に設けられた貫通孔と、前記領域b2に設けられた貫通孔と、が連通するように設けられている。
【請求項2】
前記負極活物質層と前記負極側集電体と前記接着層と前記正極側集電体と前記正極活物質層とを有する2つのセルを、前記セパレータを介して含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記構成Aを満たす場合に、前記接着層は、前記隙間を有する領域において、高さが他の領域より低い接着層を前記正極側集電体の表面にを有し、
前記構成Bを満たす場合に、前記接着層は、前記隙間を有する領域において、高さが他の領域より低い接着層を前記負極側集電体の表面に有する、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記構成Aを満たす場合に、前記負極側集電体は、前記領域a1に前記貫通孔を複数有し、且つ前記領域a2に前記貫通孔を複数有し、
前記構成Bを満たす場合に、前記正極側集電体は、前記領域b1に前記貫通孔を複数有し、且つ前記領域b2に前記貫通孔を複数有する、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記構成Aを満たし、
前記接着層は、前記隙間を有する領域において、高さが他の領域より低い接着層を前記正極側集電体の表面に有し、
前記負極側集電体は、前記領域a1に前記貫通孔を1つ以上有し、且つ前記領域a2に前記貫通孔を1つ以上有する、請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電装置において、第2接着層が、凹部の谷部と凹部への入込部分の頂部との距離が相対的に小さい強接着部と、凹部の谷部と凹部への入込部分の頂部との距離が相対的に大きい弱接着部とを有し、弱接着部が第2接着層の接合領域の縁の一端及び他端を結ぶように延在した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池では、負極活物質層や正極活物質層でガスが発生することがあり、負極活物質層と負極側集電体の間または正極活物質層と正極側集電体の間にこのガスが溜まって、層間の剥離が生じ、電池性能が悪化することがあった。
これに対し特許文献1には、活物質層で発生したガスを排出するために、活物質層に凹部を設けると共に第2接着層に弱接着部を設けて、ガスを排出する構成が示されている。しかし、活物質層の表面に凹部を形成しており、そのために体積効率が低下する。
【0005】
本開示は、高い体積効率を保持したまま、負極活物質層で発生したガスが負極活物質層と負極側集電体の間に溜まること、または正極活物質層で発生したガスが正極活物質層と正極側集電体の間に溜まることを抑制し得る電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1>
セパレータと、
正極活物質層と、
前記正極活物質層にセパレータを介して対向する負極活物質層と、
前記正極活物質層の前記セパレータと反対側の表面に設けられた正極側集電体と、
前記負極活物質層の前記セパレータと反対側の表面に設けられた負極側集電体と、
前記負極側集電体の前記負極活物質層と反対側の表面に設けられた接着層と、を有し、
下記構成Aまたは下記構成Bを満たす、電池。
(構成A)
前記負極側集電体は、前記負極活物質層が形成されていない領域a1及び前記負極活物質層が形成されている領域a2を有し、前記領域a1及び前記領域a2のそれぞれにおいて、前記負極活物質層を有する側の表面から前記接着層側の表面まで貫通する貫通孔を1つ以上有し、
前記負極側集電体における前記接着層側の表面の一部には、前記接着層が前記負極側集電体に接していない領域を有することで、前記接着層と前記負極側集電体の間に隙間を有し、
前記隙間は、前記領域a1に設けられた貫通孔と、前記領域a2に設けられた貫通孔と、が連通するように設けられている。
(構成B)
前記正極側集電体は、前記正極活物質層が形成されていない領域b1及び前記正極活物質層が形成されている領域b2を有し、前記領域b1及び前記領域b2のそれぞれにおいて、前記正極活物質層を有する側の表面から前記接着層側の表面まで貫通する貫通孔を1つ以上有し、
前記正極側集電体における前記接着層側の表面の一部には、前記接着層が前記正極側集電体に接していない領域を有することで、前記接着層と前記正極側集電体の間に隙間を有し、
前記隙間は、前記領域b1に設けられた貫通孔と、前記領域b2に設けられた貫通孔と、が連通するように設けられている。
<2>
前記負極活物質層と前記負極側集電体と前記接着層と前記正極側集電体と前記正極活物質層とを有する2つのセルを、前記セパレータを介して含む、<1>に記載の電池。
<3>
前記構成Aを満たす場合に、前記接着層は、前記隙間を有する領域において、高さが他の領域より低い接着層を前記正極側集電体の表面にを有し、
前記構成Bを満たす場合に、前記接着層は、前記隙間を有する領域において、高さが他の領域より低い接着層を前記負極側集電体の表面に有する、<1>又は<2>に記載の電池。
<4>
前記構成Aを満たす場合に、前記負極側集電体は、前記領域a1に前記貫通孔を複数有し、且つ前記領域a2に前記貫通孔を複数有し、
前記構成Bを満たす場合に、前記正極側集電体は、前記領域b1に前記貫通孔を複数有し、且つ前記領域b2に前記貫通孔を複数有する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の電池。
<5>
前記構成Aを満たし、
前記接着層は、前記隙間を有する領域において、高さが他の領域より低い接着層を前記正極側集電体の表面に有し、
前記負極側集電体は、前記領域a1に前記貫通孔を1つ以上有し、且つ前記領域a2に前記貫通孔を1つ以上有する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高い体積効率を保持したまま、負極活物質層で発生したガスが負極活物質層と負極側集電体の間に溜まること、または正極活物質層で発生したガスが正極活物質層と正極側集電体の間に溜まることを抑制し得る電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る電池を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図1に示す電池における負極活物質層、負極側集電体、接着層、及び正極側集電体を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図2を電池の厚み方向から見た平面図である。
【
図4】
図2における負極側集電体のみを電池の厚み方向から見た平面図である。
【
図5】
図2に示す電池における接着層及び正極側集電体を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図5における接着層と貫通孔が負極側集電体に設けられている箇所とを示す、電池の厚み方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る電池の一実施形態について図面を用いて説明する。
以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電池を示す概略的な断面図である。
図1に示す電池10は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる蓄電モジュールである。電池10は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。電池10は、電気二重層キャパシタであってもよいし、固体電池であってもよい。固体電池には、電解質として無機系固体電解質を用いたいわゆる全固体電池が含まれる。本実施形態では、電池10がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0011】
電池10は、複数の蓄電セルが厚み方向にスタック(積層)されたセルスタック(積層体)を含んで構成されている。各蓄電セルは、正極活物質層8と、負極活物質層4と、セパレータ9とを備える。正極活物質層8および負極活物質層4は、それぞれ、例えば矩形状の電極である。正極活物質層8のセパレータ9と反対側の表面には正極活物質層8に接するように正極側集電体1を備える。負極活物質層4のセパレータ9と反対側の表面には負極活物質層4に接するように負極側集電体2を備える。正極側集電体1と負極側集電体2とにはそれぞれ接着層6が設けられており、蓄電セル間における正極側集電体1と負極側集電体2は接着層6を介して接着されている。
【0012】
図2は、
図1に示す電池10における負極活物質層4、負極側集電体2、接着層6、及び正極側集電体1を拡大して示す断面図である。
図3は、
図2を電池10の厚み方向から見た平面図である。
図4は、
図2における負極側集電体2のみを電池10の厚み方向から見た平面図である。
負極側集電体2には負極活物質層4側の表面から接着層6側の表面まで貫通する貫通孔3が設けられている。
図3に示すように負極活物質層4が形成されていない未形成部5には貫通孔3aが設けられ、且つ
図4に示すように負極活物質層4が形成されている領域にも貫通孔3bが設けられている。
【0013】
図5は、
図2に示す電池10における接着層6、及び正極側集電体1を拡大して示す断面図である。
図6は、電池10の厚み方向から見た平面図であり、
図5における接着層6と貫通孔3が負極側集電体2に設けられている箇所(
図4参照)とを示す。
図1及び
図5に示すように、接着層6は、負極側集電体2に貫通孔3が設けられている領域において、高さが他の領域より低くなっている領域があり、この高さが低い領域により接着層6と負極側集電体2の貫通孔3が設けられている領域との間に隙間7が形成される。
図5及び
図6に示すように、隙間7は、負極側集電体2の負極活物質層4が形成されていない未形成部5に設けられた貫通孔3aと、負極活物質層4が形成されている領域に設けられた貫通孔3bとの両方が存在するよう、負極活物質層4が形成されている領域から未形成部5まで連続して形成されている。
【0014】
この構成により、電池10は、負極側集電体2の負極活物質層4が形成されている領域に設けれらた貫通孔3bが、接着層6の高さが低い領域に設けられた隙間7を通じて、負極側集電体2の未形成部5に設けられた貫通孔3aと連通した構成を有している。
そのため、負極活物質層4で発生したガスを、貫通孔3b、隙間7、及び貫通孔3aを通じて排出することができ、負極活物質層4と負極側集電体2の間にガスが溜まることを抑制できる。
【0015】
また、前記特許文献1においては、活物質層で発生したガスを排出するために、活物質層に凹部を設けると共に第2接着層に弱接着部を設けて、ガスを排出する構成が示されている。しかし、本開示の実施形態に係る電池10では、負極活物質層4に凹部を設けることなく、貫通孔3b、隙間7、及び貫通孔3aを通じてガスを排出することができる。つまり、負極活物質層4の体積を減らすことなく、高い体積効率を実現したうえで、ガスを排出することができる。
【0016】
(貫通孔)
図3及び
図4では、負極側集電体2の負極活物質層4が形成されていない未形成部5に貫通孔3aが4つ設けられ、負極活物質層4が形成されている領域に貫通孔3bが6つ設けらた構成を示している。しかし、これに限られず、負極側集電体2の未形成部5に貫通孔3aが1つ以上、且つ負極活物質層4が形成されている領域に貫通孔3bが1つ以上設けられていればよい。ただし、ガスの排出性を高める観点から、負極側集電体2の未形成部5に貫通孔3aが2つ以上(より好ましくは4つ以上)設けられ、且つ負極活物質層4が形成されている領域に貫通孔3bが2つ以上(より好ましくは6つ以上)設けられていることが好ましい。
【0017】
(隙間)
隙間7は、負極側集電体2の負極活物質層4が形成されていない未形成部5に設けられた貫通孔3aと、負極活物質層4が形成されている領域に設けられた貫通孔3bと、が連通するように形成されていればよい。つまり、負極側集電体2の未形成部5に設けられた貫通孔3aは全て、隙間7を通じて、負極活物質層4が形成されている領域に設けられた貫通孔3bと連通する。
図5及び
図6では、接着層6に隙間7が2つ設けられた構成を示している。しかし、これに限られず、隙間7は1つのみでもよく、その場合未形成部5に設けられた全ての貫通孔3a、及び負極活物質層4が形成されている領域に設けられた全ての貫通孔3bが、1つの隙間7により連通される。また、隙間7は2つ以上設けられていても、3つ以上設けられていてもよい。
【0018】
隙間7が設けられている領域では、
図5に示す通り、他の領域よりも高さが低い(厚みの薄い)接着層6が正極側集電体1の表面に形成されている。これにより、厚みの薄い接着層6がリチウム耐食性被膜として作用することにより、アルミニウム箔の腐食が抑制され、負極活物質の反応電位における蓄電装置の動作の安定性の低下が抑制される。この観点から、本開示では、隙間7が設けられている領域においても、他の領域よりも高さが低い(厚みの薄い)接着層6が正極側集電体1の表面に形成されていることが好ましい。
【0019】
(変形例)
図1~
図6には、負極側集電体2が、負極活物質層4が形成されていない領域a1及び負極活物質層4が形成されている領域a2を有し、領域a1及び領域a2のそれぞれにおいて、負極活物質層4を有する側の表面から接着層6側の表面まで貫通する貫通孔を1つ以上有し、負極側集電体2における接着層6側の表面の一部には、接着層6が負極側集電体2に接していない領域を有することで、接着層6と負極側集電体2の間に隙間7を有し、隙間7は、領域a1に設けられた貫通孔3aと、領域a2に設けられた貫通孔3bと、が連通するように設けられた構成(つまり構成A)、を有する電池10を示した。
【0020】
しかし、本開示においては、正極側集電体に貫通孔が設けられていてもよい。つまり、正極側集電体が、正極活物質層が形成されていない領域b1及び正極活物質層が形成されている領域b2を有し、領域b1及び領域b2のそれぞれにおいて、正極活物質層を有する側の表面から接着層側の表面まで貫通する貫通孔を1つ以上有し、正極側集電体における接着層側の表面の一部には、接着層が正極側集電体に接していない領域を有することで、接着層と正極側集電体の間に隙間を有し、隙間は、領域b1に設けられた貫通孔と、領域b2に設けられた貫通孔と、が連通するように設けられた構成(つまり構成B)、を有していてもよい。
この構成Bを有する電池は、正極側集電体の正極活物質層が形成されている領域に設けれらた貫通孔が、接着層の高さが低い領域に設けられた隙間を通じて、正極側集電体の未形成部に設けられた貫通孔と連通した構成を有している。そのため、正極活物質層で発生したガスを、領域b2に設けられた貫通孔、隙間、及び領域b1に設けられた貫通孔を通じて排出することができ、正極活物質層と正極側集電体の間にガスが溜まることを抑制できる。
なお、構成Bにおける貫通孔の好ましい態様、隙間の好ましい態様、隙間における接着層の好ましい態様についても、
図1~
図6に示す構成(つまり構成A)の場合と同様である。
【0021】
(電池を構成する部材)
正極側集電体1及び負極側集電体2は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層8及び負極活物質層4に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。
正極側集電体及び負極側集電体を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。正極側集電体及び負極側集電体は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。正極側集電体及び負極側集電体の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。正極側集電体及び負極側集電体は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。正極側集電体及び負極側集電体を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等を用いることができる。本実施形態において、正極側集電体はアルミニウム箔であり、負極側集電体は銅箔である。箔状の集電体を用いる場合、その厚みは、例えば、1μm~100μmとしてよい。
【0022】
正極活物質層は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層は複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含む。
【0023】
負極活物質層は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLi、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0024】
正極活物質層及び負極活物質層のそれぞれ、電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。正極活物質層及び負極活物質層に含まれる成分、又は当該成分の配合比、及び正極活物質層及び負極活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。正極活物質層及び負極活物質層の厚みは、例えば2μm~150μmである。集電体の表面に正極活物質層又は負極活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いてもよい。正極活物質層又は負極活物質層の熱安定性を向上させるために、正極側集電体又は負極側集電体の表面(片面又は両面)、或いは正極活物質層又は負極活物質層の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0025】
導電助剤は、正極活物質層8又は負極活物質層4の導電性を高めるために添加される。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。
【0026】
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒には、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0027】
セパレータ9は、正極活物質層8と負極活物質層4の間に配置されて、正極活物質層8と負極活物質層4とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ9は、蓄電セルをスタックした際に隣り合うバイポーラ電極間の短絡を防止する。
【0028】
セパレータは、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。セパレータを構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。セパレータは、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータには、電解質が含浸されてもよく、セパレータ自体を高分子電解質又は無機型電解質等の電解質で構成してもよい。
【0029】
セパレータ9に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリクス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質などが挙げられる。
【0030】
セパレータ9に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0031】
(作製方法)
ここで、本開示の実施形態に係る電池10の作製方法について、一例を挙げて説明する。
まず、負極側集電体2に対し貫通孔3を形成する。貫通孔3は、負極側集電体2の負極活物質層4が形成される側の表面から接着層6が形成される側の表面まで貫通するように形成する。貫通孔3としては、負極側集電体2の負極活物質層4が形成されない未形成部5に貫通孔3aを形成し、且つ負極活物質層4が形成される領域にも貫通孔3bを形成する。貫通孔3の形成方法としては、例えば打ち抜き加工、レーザ加工等が挙げられる。
【0032】
次いで、貫通孔3を形成した負極側集電体2の一方の表面に、負極活物質層4を形成するための塗布材料を塗布し、硬化させて負極活物質層4を形成してもよい。なお、塗布材料が貫通孔3から流れ出ないようにすることが好ましく、例えば塗布材料の粘度を高める方法が挙げられる。
【0033】
次いで、一方の表面に正極活物質層8が形成された正極側集電体1を用意し、正極側集電体1の他方の表面に接着層6を形成する。なお、接着層6の形成は、例えば2回に分けて接着剤を塗布することで行うことができる。まず、隙間7が形成される領域を除いて1回目の接着剤を塗布し、次いで1回目よりも薄い塗布量となるように2回目の接着剤を、全面に塗布する。これにより、隙間7が形成される領域には2回目の接着剤のみが塗布され、その他の領域には1回目及び2回目の接着剤が塗布される。そのため、隙間7が形成される領域の接着層の高さが他の領域より低くなり、隙間7が形成される。1回目に隙間7が形成される領域を除いて接着剤を塗布する方法としては、選択的に接着剤を塗布する方法や、隙間7が形成される領域にマスキングを設けた上で全面に接着剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0034】
次いで、正極側集電体1と負極側集電体2とを接着層6を介して貼り合わせる。貼り合わせる際、負極側集電体2に設けた貫通孔3が、接着層6に設けた隙間7の位置に配されるように調整する。これにより、負極活物質層4/負極側集電体2/接着層6/正極側集電体1/正極活物質層8の積層構造を有する蓄電セルが得られる。
【0035】
なお、正極活物質層8及び負極活物質層4の形成は、正極側集電体1と負極側集電体2とを接着層6を介して貼り合わせた後に行うこともできる。
【0036】
その後、負極活物質層4、負極側集電体2、接着層6、正極側集電体1、正極活物質層8を有する蓄電セルを、セパレータ9を介して積層することで、電池10を作製する。
【0037】
なお、正極側集電体に貫通孔が設けらた構成(つまり前述の構成B)を有する電池を作製する場合も、上記に示す作製方法に準じて、正極側集電体に貫通孔を設け、且つ正極側集電体の表面側の接着層に隙間を設けることで、作製することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 正極側集電体
2 負極側集電体
3 貫通孔
4 負極活物質層
5 未形成部
6 接着層
7 隙間
8 正極活物質層
9 セパレータ
10 電池