(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076299
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ファンフィルタユニット
(51)【国際特許分類】
F04D 29/46 20060101AFI20240529BHJP
F04D 29/70 20060101ALI20240529BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20240529BHJP
【FI】
F04D29/46 F
F04D29/70 L
F24F8/80 240
F24F8/80 218
F24F8/80 252
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187820
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安達 東彦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真人
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB46
3H130AC11
3H130BA66B
3H130BA74B
3H130CA08
3H130EA06B
3H130EA07B
3H130EB04B
3H130ED04B
(57)【要約】
【課題】ファンフィルタユニット1において、ファン15から排出された空気のフィルタ40への流入分布を均一化し、清浄空気の風速のばらつきを抑制する。
【解決手段】モータ20により回転駆動させるターボファン10と、フィルタ40と、フィルタ40及びターボファン10を格納するFFUケース30を有し、FFUケース30は空気の吸い込み用の開口部31aと空気の排出用の開口面33を有するファンフィルタユニット1において、ターボファン10とフィルタ40の間の空間に、軸線A1から水平方向の一方向(長手方向)から離れた位置から、軸線A1に近づくにつれ上下方向の長さが規則的に短くなるように複数の整流板を並べた整流手段50を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによってファンを回転駆動させるターボファンと、空気を洗浄するフィルタと、前記ターボファンと前記フィルタを収容するケースを有し、
前記ケースは、前記ファンによる空気の吸込口と前記フィルタを通過した空気の排出用開口を有するファンフィルタユニットであって、
前記ターボファンは前記吸込口の内側に設けられ、
前記フィルタは、前記ターボファンから離れた前記排出用開口を塞ぐようにして、前記ファンの回転軸線と交差する位置に配置され、
前記ターボファンと前記フィルタの間の空間に、前記回転軸線方向に延在するように所定の間隔をあけて多数の整流板を並べて形成された整流手段を設け、
前記整流板の前記回転軸線方向の長さが、前記回転軸線から離れた位置の前記整流板では大きく、前記回転軸線に近い位置の前記整流板では短くなるように形成されることを特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項2】
前記ケースは直方体状の形状であって、上壁と、前記上壁の辺部と接続される4つの側壁を有し、4つの前記側壁の下側辺部にて画定される底面部分が前記排出用開口とされ、
前記上壁の中央に円形の前記吸込口が形成され、
前記ターボファンは前記回転軸線が前記吸込口を通過するように配置されることにより、吸い込まれた空気が前記ファンによって前記上壁の下側において回転軸線から径方向外側、前記4つの側壁に向けて排出され、
前記4つの側壁によって流れる方向が変えられた空気が、前記整流手段によって案内されてから前記フィルタに流入することを特徴とする請求項1に記載のファンフィルタユニット。
【請求項3】
前記整流手段のそれぞれの前記整流板は、前記ケースの短辺方向及び回転軸線方向と平行方向に延在する矩形の薄板であって、
前記整流板の前記回転軸線方向の長さが、短辺を形成する前記側壁から、最も近い整流板が一番長くなり、最も遠くて前記回転軸線に最も近い前記整流板が一番短くなるように、それぞれの前記整流板の長さが徐々に短くなるように形成するか、または、複数枚の整流板ごとに段階的に長さが短くなるように形成することを特徴とする請求項2に記載のファンフィルタユニット。
【請求項4】
前記整流手段のそれぞれの前記整流板の上端位置が水平方向に並ぶように、又は、整流板の下端位置が水平方向に並ぶようにして固定されることを特徴とする請求項3に記載のファンフィルタユニット。
【請求項5】
複数の前記整流板は、隣接する整流板が平行であって前記回転軸線と平行になるように並べて配置され、前記複数の整流板を連結する外枠、又は、梁状の連結部材にて固定されることを特徴とする請求項3に記載のファンフィルタユニット。
【請求項6】
複数の前記整流板のうち、前記ファンの回転軸線方向の投影範囲には、前記整流板を配置しないことを特徴とする請求項5に記載のファンフィルタユニット。
【請求項7】
前記整流手段のそれぞれの前記整流板は、上端に比べて下端側が前記回転軸線に近づくように傾けて配置されることを特徴とする請求項3に記載のファンフィルタユニット。
【請求項8】
前記整流手段の隣接する複数の前記整流板間の間隔は、一定に構成されるか、又は、前記回転軸線に遠い位置では前記整流板間の間隔が狭くて前記回転軸線に近づくに従い間隔が広くなるように構成されることを特徴とする請求項3に記載のファンフィルタユニット。
【請求項9】
前記整流板は円筒状に形成され、前記整流板の中心軸線が前記回転軸線と一致するように複数の整流板を前記ファンと同心円上に配置したことを特徴とする請求項2に記載のファンフィルタユニット。
【請求項10】
モータによってファンを回転駆動させるターボファンと、空気を洗浄するフィルタと、前記ターボファンと前記フィルタを収容するケースを有し、
前記ケースは直方体状の形状であって、上壁と4つの側壁を有し、前記ファンによる空気の吸込口と前記フィルタを通過した空気の排出用開口を有すると共に、前記ファンから前記フィルタへの空気の流れる空間を画定するようにしたファンフィルタユニットであって、
前記ターボファンは前記吸込口の内側に設けられ、
前記フィルタは前記ターボファンと前記排出用開口の間に配置され、
前記フィルタの清浄空気吹き出し側に、前記モータの回転軸線に近づくにつれて前記回転軸線方向の長さが低くなるような複数の整流板を前記回転軸線と平行方向に延在する板を間隔をあけて多数並べるように形成された整流手段を設けたことを特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項11】
前記整流手段のそれぞれの前記整流板は、前記ケースの短辺方向及び回転軸線方向と平行方向に延在する矩形の薄板であって、
前記整流板の前記回転軸線方向の長さが、短辺を形成する前記側壁から、最も近い整流板が一番長くなり、最も遠くて前記回転軸線に最も近い前記整流板が一番短くなるように、それぞれの前記整流板の長さが徐々に短くなるように形成するか、または、複数枚の整流板ごとに段階的に長さが短くなるように形成されることを特徴とする請求項10に記載のファンフィルタユニット。
【請求項12】
前記整流手段は、前記複数の整流板を連結する外枠によって複数の前記整流板が上端位置が水平にそろうように固定され、
前記外枠が前記ケースに固定されることを特徴とする請求項11に記載のファンフィルタユニット。
【請求項13】
前記ファンフィルタユニットは、取り付け対象に形成された取付穴の上側に固定されるものであり、
前記外枠の上端縁から径方向外側に延在するフランジ部を形成し、
前記フランジ部を前記取り付け対象の上面と前記ファンフィルタユニットに挟み込むようにして前記整流手段が固定されることを特徴とする請求項12に記載のファンフィルタユニット。
【請求項14】
モータによってファンを回転駆動させるターボファンと、空気を洗浄するフィルタと、前記ターボファンと前記フィルタを収容するケースを有し、
前記ケースは直方体状の形状であって、上壁と4つの側壁を有し、前記ファンによる空気の吸込口と前記フィルタを通過した空気の排出用開口を有すると共に、前記ファンから前記フィルタへの空気の流れる空間を画定するようにしたファンフィルタユニットであって、
前記ターボファンは前記吸込口の内側に設けられ、
前記フィルタは前記ターボファンと離れた位置の前記排出用開口に隣接して配置され、
前記ターボファンと前記フィルタの間の空間に、前記4つの側壁に接する外枠を有し、
前記外枠の4つの側壁部分から直交する内側方向に突出するようにして一定の間隔で整列され複数の整流板を並べた整流手段を設けたことを特徴とするファンファンフィルタユニット。
【請求項15】
複数の前記整流板の前記回転軸線方向の長さは同一であって、
前記回転軸線付近であって、前記ファンの回転軸線方向に見た投影範囲内に、前記整流板が入らないように前記整流板の水平方向の幅が決定されることを特徴とする請求項14に記載のファンフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや液晶パネルなどの製造を行うクリーンルームの天井部や、クリーンルーム内の製造装置の部分的な領域内で、より清浄空気を必要とする環境においてファンフィルタユニット(Fan Filter Unit:以下、本明細書では「FFU」と称する)という空気清浄機が広く用いられる。FFUは、洗浄対象空間の外部からエアを、電動式のファンで吸入して加圧し、ファンからケースの内部に排出された空気をフィルタに通すことによって特定の部屋(クリーンルーム)内に清浄空気を吹き出して、浮遊微小粒子、浮遊微生物が規定された清浄度レベルになるようにする装置である。FFUは、ターボファン等の送風手段と、ファンを回転駆動させる駆動手段(モータ)と、ファンとモータを格納し、空気の吸込口と排出口を有するケースと、ターボファンの排気側に取り付けられるフィルタを有して構成される。このようなFFUの一例として、特許文献1の技術が知られている。
【0003】
特許文献1では、ケース(チャンバ)の上部に吸込口を形成し、ファンユニットをケースに内蔵し、ファンユニットの下流側にフィルタを配設し、フィルタの吸込側とファンユニットの間にパンチングプレートを備えたFFUが開示されている。パンチングプレートは、全面に直径1mm程度、穴ピッチ2mm程度の丸孔を設けたものと、中央部に円孔をあけるとともに、チャンバ外周から中心に向かって吹出方向へ傾斜した形状としたパンチングプレートを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファンユニットとしてターボファン等の遠心ファンを用いる場合は、ファンからの排気口の流れ方向は、吸い込み方向に対して回転軸方向と垂直方向になり、ファンの径方向に向けて排出風を吹き出す。排出された空気はFFUケースの内壁に当たって向きが回転軸方向に変えられ、その後、フィルタに流入する。従って、フィルタに流入する直前の回転軸線方向の風速は、ターボファンの直下、即ち回転軸線に近い部分の軸線方向の風速が低くなり、回転軸線から離れた部分の軸線方向の風速が高いことになる。このように従来のFFUにおいては、フィルタに流入される空気にばらつきが生じ、フィルタから吹き出される清浄空気の風速にもばらつきが生じていた。特許文献1はこれを改善するものであるが、パンチングプレートが空気の流れを制限する度合いが大きいので、流路の抵抗が増大してしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ファンから排出された空気の風速のばらつきを抑制し、フィルタユニットへ流入する空気の分布を均一化するようにしたファンフィルタユニットを提供することにある。
本発明の他の目的は、フィルタによる粉塵捕集効果を高めることによりモータの消費電力の省エネルギー化を図り、フィルタの長寿命化を図ったファンフィルタユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、モータによってファンを回転駆動させるターボファンと、空気を洗浄するフィルタと、ターボファンとフィルタを収容するケースを有し、ケースにはファンによる空気の吸込口とフィルタを通過した空気の排出用の開口を有するファンフィルタユニット(FFU)において、ターボファンとフィルタの間の空間に、ターボファンから離れた位置から、ターボファンに近づくにつれ低くなる整流板を多数並べたもの(以下、「整流手段」という)を設けた。ターボファンは吸込口の内側に設けられ、フィルタはターボファンから離れた排出用開口を塞ぐようにして、ファンの回転軸線と交差する位置に配置される。ターボファンとフィルタの間の空間には、回転軸線方向に延在するように所定の間隔をあけて多数の整流板を並べて形成された整流手段が設けられる。整流板の回転軸線方向の長さは、回転軸線から離れた位置の整流板では大きく、回転軸線に近い位置の整流板では短くなるように形成される。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、ケースは直方体状の形状であって、上壁と、上壁の辺部と接続される4つの側壁を有し、4つの側壁にて画定される底面部分が排出用開口とされ、上壁の中央に円形の吸込口が形成される。ターボファンは回転軸線が吸込口を通過するようにケースに配置されることにより、吸入された空気がファンによって上壁の下側において回転軸線から径方向外側、4つの側壁に向けて排出される。4つの側壁によって流れる方向が変えられた空気は、整流手段によって案内されてからフィルタに流入する。整流手段のそれぞれの整流板は、ケースの短辺方向及び回転軸線方向と平行方向に延在する矩形の薄板であって、整流板の回転軸線方向の長さが、短辺を形成する側壁から、最も近い整流板が一番長くなり、最も遠くて回転軸線に最も近い整流板が一番短くなるように、それぞれの整流板の長さが徐々に短くなるように形成されるか、または、複数枚の整流板ごとに段階的に長さが短くなるように形成される。整流手段のそれぞれの整流板の上端位置は、水平方向に並ぶように固定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファンフィルタユニットのフィルタへ流入する前の空気流の分布、特に回転軸線に近い付近から遠い部分に至る分布を従来よりも均一化できたので、フィルタにおける粉塵の捕集効率を高めることができた。また、フィルタから排出される清浄空気の風速のばらつきも抑制したファンフィルタユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1のFFU1の全体構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図1の整流手段50の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図2の整流手段50の第1の変形例を示す縦断面図である。
【
図5】
図2の整流手段50の第2の変形例を示す縦断面図である。
【
図6】
図2の整流手段50の第3の変形例を示す縦断面図である。
【
図7】
図2の整流手段50の第4の変形例を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の実施例2のFFU101の全体構造を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の実施例2の変形例に係る整流手段150Aの取り付け構造を示す縦断面図である。
【
図10】本発明の実施例3に係る整流手段250の外観を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施例4に係る整流手段350の外観を示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施例4の変形例に係る整流手段350Aの取り付け構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。各図において同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【実施例0012】
図1は本発明の第1の実施例に係るFFU(ファンフィルタユニット)1を示すもので、FFU1の鉛直断面図である。FFU1はケース30を有し、ケース30の内部に、ターボファン10と、フィルタ40と、整流手段50が設けられる。
【0013】
FFUケース30は略直方体状の筐体であって、上壁31と4つの側壁(32a~32d:ただし、右側壁32c、左側壁32dは
図1では見えない)を有し、4つの側壁の下側縁部で形成される底面部分が、排出用の開口33とされる。上壁31の中央には上面視(回転軸線A1方向視)で円形の開口部31aが形成される。開口部31aがターボファン10よりFFU1の外部から内部空間へ外気を吸い込むための空気の吸込口となる。開口部31aを設ける位置は、上壁22の前後方向中央、左右方向中央にすると良い。但し、開口部31aをFFUケース30の左右中心位置よりもオフセットさせるように配置しても良い。ケース30の材質は任意に選択できるが、ステンレス等の金属の板金又はプレス加工したものを用いて製造すると良い。
【0014】
ターボファン10は、回転軸21を有するモータ20と、回転軸21の上端付近に取り付けられるファン15を含んで構成され、開口穴31aの直下に配置される。ターボファン10は、モータ20、ファン15とセットでユニット化され、モータ20を固定するための図示しないハウジングを有する。ターボファン10のハウジング(図示せず)が、FFUケース30の開口部31aの付近に形成された取付部34にねじ等によって固定される。取り付け部34は、開口部31aの開口縁の周囲を上向きに隆起させるようにプレス加工等により形成される部位である。取り付け部34の周方向の4箇所には、ターボファン10をねじ止めするための4つのねじ穴(図では見えない)が形成される。尚、ターボファン10のFFUケース30への取り付け方法は、図示しないねじによる固定方法だけに限られずに、公知の任意の固定方法を利用できる。
【0015】
ターボファン10は、ターボファン10のモータ20の回転軸21は、上面視で円形の開口部31aと同心に位置し、鉛直方向に向くように配置され、ファン10の吸入側が開口部31a側(上側)になるように位置付けられる。ターボファン10に用いられるファン15の種類は任意であるが、ここでは、開口部31aから矢印25の方向に吸い込んだ空気を、回転するファン15の遠心力により側面から放射状に、矢印26の方向に風を吐き出すような、いわゆる遠心ファンを用いると良い。矢印26のようにターボファン10から回転軸線A1に対して垂直方向に向けて排出される空気は、上壁31の内側(下側)において回転軸線A1から径方向外側に向けて、放射状に排出され、4つの側壁32a~32d(32c、32dは
図1では見えない)に到達する。放射状に排出される矢印26の方向の空気は、FFUケース30の上面31の下側を回転軸線A1に対して回転しながら流れ、FFUケース30の側壁(前面壁32a、後面壁32b等)に矢印27のように衝突して、全体的に矢印28のように回転軸線A1に対して平行方向、即ち、下方向に方向を変えて流れる。
【0016】
FFUケース30の下面のほぼ全面は、フィルタ40からの排気口が排出されるための開口部33となるため、壁面(底面)が形成されない。フィルタ40はターボファン10から軸線A1方向に所定の距離を隔てた位置であって、ケース30の下端付近に取り付けられ、開口部33全体を覆うように配置される。このため、ケース30の内部の空気は、フィルタ40を貫通しない限り開口部33から外部には流出できない。フィルタ40をFFUケース30に固定する方法は任意であり、公知のFFU1と同じ固定方法とすることができる。
【0017】
フィルタ40は、例えば日本工業規格(JIS)にて規定されるULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)であって、通過する空気中のゴミ、塵、埃等を取り除いて、空気を清浄にする目的で使用される。本発明で用いるフィルタ40の種類は、ULPAフィルタだけに限定されず、HEPAフィルタ (High Efficiency Particulate Air Filter)等、その他のフィルタを用いても良い。フィルタ40の空気の流入方向は、
図1において回転軸線A1と平行方向であって、
図1中で空気は、フィルタ40の上面から流入して、フィルタ40の内部を通過し、複数の矢印29で示すように下方向に向けて浄化された空気が排出される。
【0018】
フィルタ40の粉塵捕捉性能や耐久性を考えると、空気の流量分布がフィルタ40の上面の全体において均一化されていることが好ましい。このように流量分布を均一するために、フィルタ40の流入側において空気の流量分布を調整する。本実施例では、ケース30に取り付けられたフィルタ40と、ターボファン10との間の空間に、空気の流れを均一化させた状態で所定の方向に導くための整流手段50を設けた。整流手段50の最下端位置とフィルタ40の上面の間には一定の間隔S1が確保される。
【0019】
整流手段50は、鉛直方向に延在する複数の複数の整流板(51、71等)を並べて構成したもので、フィルタ40の各部位に流入する空気の流れを均一化するために設けられる。複数の整流板の間は回転軸線A1と平行となる空気の流路であるが、隣接する整流板による回転軸線A1方向の流路の長さが、回転軸線A1に近い中央部分から径方向2方向(ここでは整流板の面と直交する前方向と後方向)に離れるほど長くなるように形成される。従って、中央部分では整流板による流路が短いため、空気の流入抵抗が小さく、中央部分から前方向又は後方向に離れるに従って流路が長くなるため抵抗が大きくなる。この結果、整流手段50の流入側(上側)における空気密度のばらつきに比べて、整流手段50の排出側(下側)の空気密度のばらつきが小さくなるので、従来例(整流手段50を設けない構成)よりもフィルタ40への空気流の流入度合いが均一化される。このように、整流手段50を設けたことによって、フィルタ40による粉塵捕集効率が向上する上に、フィルタ40の耐久性が従来よりも改善される。
【0020】
整流手段50は、複数の整流板(51、71等)を固定するための4つの側壁(
図3にて後述)からなる外枠を有し、外枠の内部に、上下及び左右方向に延在する薄い金属製の板(整流板51、71等)が配置されたものである。整流板51~71は、一定の間隔を隔てて平行に並べられ、各整流板の上端の高さ(上端位置)は同一に揃えられるが、下端の高さ(下端位置)は、モータ20の回転軸線A1を通る線に一番近い板51の下端位置が一番高く、回転軸線A1から前後方向に離れるにつれて整流板の下端位置が徐々に低くなるように形成される。整流手段50の形状を、
図2及び
図3を用いてさらに説明する。
【0021】
図2は、
図1の整流手段50の詳細な縦断面図である。整流手段50は上下左右方向に延在する金属製の薄い整流板51~71の計41枚を前後方向に等間隔で配置したものである。尚、
図1では整流手段50の整流板数を間引いても模式的に図示したが、
図2ではすべての整流板51~71を図示している。但し、整流板51~71は符号番号が順に整列されるため、符号52~55、57~60、62~69の数字の記載を省略している。
図2からわかるように、整流板51~71の上端位置は同一になるようにそろえている。モータ20の回転軸線A1上に位置する整流板51の上下方向長さが一番短く、回転軸線A1から前方向に向かうに従って整流板52~71の下端位置が徐々に下側に位置するような形状とされる。同様に、回転軸線A1から後ろ方向に向かうに従って整流板52~71の下端位置が下側に位置するような形状とされる。各整流板51~71の左右方向に見た下端縁部は水平である。
【0022】
図3は本発明の実施例1の整流手段50の外観を示す斜視図であり、(a)は整流板51~71部分だけの斜視図(外枠72、73の図示を省略した状態)を示し、(b)は外枠72、73を含めた状態の斜視図である。
図3(a)からわかるように、各整流板51~71(図では52~60、62~70の符号付与は省略している)はステンレス等の金属による薄板であり、その延在方向は上下及び左右方向である。整流板51~71は均等間隔にて整列配置される。つまり、上面視において長方形の外縁形状を有するFFUケース30の短辺部分(前面壁31a、後面壁31b)と平行になるように多数の整流板51~71が固定される。この固定のために、
図3(b)のように左右両端に連結板72、73が設けられる。連結板72、73は、各整流板51~71と垂直に接続されるように配置されるものであって、上下及び前後方向に延在する金属製のやや厚めの板である。連結板72、73と各整流板51~71との接合方法は任意であり、例えば、溶接でも良いし、接着でも良い。連結板72、73は金属で形成しても良いが、合成樹脂によって製造しても良い。
図3の整流手段50では、前後の両端に位置する2枚の整流板71を、外枠として兼用している。従って、2枚の整流板71は、合成樹脂製として、連結板72、73と一体に整形しても良い。また、左右両端の連結板72、73を設けることに加え、又は、連結板72、73の代わりに前後方向に延びる梁状の連結部材を設けて整流板51~71が動かないように固定しても良い。
【0023】
次に、FFU1の動作について再び
図1に戻って説明する。モータ20が起動し、ターボファン10が回転を開始すると、開口部31aを介して外気が吸引され、ファン15の回転によって、矢印26のように上壁31に沿って回転軸線A1と直交方向(径方向)に放射状に排出される。矢印26のように前側壁32a、後側壁32dに向けて流れる空気は、前側壁32a、後側壁32dに当たることによって矢印27のように流れる向きが下向きに変えられ、その後に空気は矢印28に示すように下向きに流れて、整流手段50内に流入する。ターボファン10の直下のFFUケース30内部では、回転軸線A1に対してFFUケース30の外側部分の風速が高くなり、ターボファン10の直下、即ち回転軸線A1に近い位置では回転軸線方向の風速が低くなっている。本実施例では、FFUケース30内のフィルタ40の上流側に整流手段50を設けているため、整流手段50を通過することによって、風量が調整されてからフィルタ40に流れていく。
【0024】
整流手段50の整流板51~71の上端位置は同一であるが、下端位置は、回転軸線A1から離れた位置から、回転軸線A1近づくにつれ低くなっている。従って、ターボファン10から離れた位置になるほど、整流手段50の間を通過する空気の摩擦抵抗が大きくなる。この構造により、FFUケース30内の矢印28方向に流れる風速が、外側の空気ほど外側の整流板との摩擦抵抗により減速される。また、風速が低くなるターボファン10直下の空気は、内側の整流板によってはほとんど減速されないことで、整流手段50を通過後は、風速のばらつきが抑えられることになる。このばらつきが抑えられた空気が、フィルタ40の流入面(ここでは上面)から入って、フィルタ40内を通過すること
フィルタ40の下面から下方向に吹き出される清浄空気29の風速のばらつきも抑えられる。
【0025】
以上のように本実施例のFFU1では、整流手段50の上側から下側に風を導く多数の整流板51~71を配置した。しかしながら、設ける整流板51~71の数は任意であり、
図3に図示した合計41枚だけに限られずに、その他の枚数としても良い。また、整流手段50の上側縁部が水平になるように配置し、下側縁部が斜めになるように形成したが、これらの関係を上下逆にして、整流手段50の複数の整流板51~71の上側縁部が斜めになるように形成し、下側縁部が水平になるように構成しても良い。その場合は、
図3(b)で示す整流手段50を上下反転させた状態でFFUケース30に取り付ければ良い。さらには、整流手段50の複数の整流板51~71の上側縁部と下側縁部のそれぞれが斜めになるように形成しても良い。
【0026】
図4は
図2の整流手段50の第1の変形例を示す縦断面図である。第1の変形例の整流手段50Aは、
図2、
図3で示した整流手段50に替えてFFUケース30に取り付けられるものである。整流手段50Aは、
図2、
図3で示した整流手段50と同様に、回転軸線A1方向に延在するように所定の間隔をあけて多数の整流板57~71を前後方向に並べて形成される。2つの整流板57間には、他の整流板(
図2の整流板51~56に相当するもの)は設けられない。整流板の回転軸線A1の長さは、前後方向に見て回転軸線A1から離れた位置となる両側(前端と後端)の整流板71で大きく、回転軸線A1に近づくにつれて整流板70~57の整流板の下端位置が徐々に上側に位置するように形成される。つまり、整流板が71から57に向かうにつれて整流板71~56の単体で見たの高さ(回転軸線A1の長さ)が小さくなる。整流板71~57の左右方向の大きさ(幅)は、
図3(a)で示した整流板71~57と全く同一であり、各整流板70~57は、それぞれが上下及び左右方向に延在する板状であって、異なる高さであるが同一の横幅を有する形状になっている。
【0027】
このように、第1の変形例では、回転軸線A1に近い所定部分(奥行きD
2に相当する部分)の整流板を取り除いた状態としている。取り除いた部分の前後長(奥行き)D
2の大きさをどの程度とするかは任意であるが、取り除く整流板の範囲をファン15の直下部分、もしくは少なくともファン50の回転軸線A1方向下側に投影した範囲(ファン15の直径D
fに含まれる部分)と重複する位置にある整流板(
図2の51から56)を取り除くようにすると良い。このように、
図4ではファン15の直径D
fに比べてD
2の方が大きくなるように設定している。第1の変形例ではターボファン10の直下周辺の板を無くすことにより、フィルタ40の中央部分において、整流手段50による風速の減速を無くすようにしたので、フィルタ40の排出側での清浄空気29(
図1参照)の風速のばらつきを抑えることができる。
【0028】
図5は
図2の整流手段50の第2の変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の整流板68単体の正面図(前側から見た図)である。実施例1では整流板51~71の左右方向位置による高さは一定であり、前方から見た形状が細長い長方形(矩形)であった。しかしながら、第2の変形例では
図5(b)のように、左右方向にみた全体の長さWのうち、中央付近の幅W
2の部分の下側を長方形状に切り抜いたような形状とした。つまり、左端付近68aと、右端付近68bの上下方向の高さh
68は、
図2、
図3で示した整流板68と同一になるが、中央部68cでは高さh
2となり、細長い帯状の形状となる。幅W
2の大きさをどの程度にするかは任意であるが、例えば、ファン15の直径D
fとの関係で適宜設定すると良い。ここでは、W
2>D
fの関係にある。他の整流板51~67、69では、中央部では高さh
2で他の整流板と同じ高さとなるが、左端付近と、右端付近の上下方向の高さはそれぞれ異なることになる。尚、全端と後端にある整流板71については、中央部は切りかかれずに前方視で矩形の形状とされる。このようにFFUケース30の右側壁面と左側面から離れた中央部分に切り欠き部を設けることで、ターボファン直下だけでなく、右壁面又は左側面から離れた風速の低い位置での整流手段50による風速の減速を抑え、清浄空気29の風速のばらつきを抑えることができる。
【0029】
図6は
図2の整流手段50の第3の変形例を示す縦断面図である。実施例1とは整流手段50Cの構造が異なる。用いられる整流板51~71の単体形状及び必要な枚数は、
図2、
図3で示した整流手段50と同一である。しかしながら整流板51~71間の間隔が一定でないように配置される。つまり、ターボファン10の回転軸線A1から離れた位置の整流板(例えば整流板70と71)の間隔S
2を最も狭くし、回転軸線A1に近づくにつれて隣接する整流板間との間隔を徐々に広くし、回転軸線A1上にある整流板51とそれに隣接する2枚の整流板52との間隔S
1が最も広くなる。このように整流板51~71間の間隔を徐々に変化するように設定することで、ターボファン10の回転軸線A1から離れた位置での空気の摩擦抵抗が大きくなり、風速の減速効果を大きくすることができる。一方、回転軸線A1に近い位置での空気の摩擦抵抗が小さくなるので、フィルタ40の上面にて流入する清浄空気の風速のばらつきを抑えることができる。
【0030】
図7は
図2の整流手段50の第4の変形例を示す縦断面図である。実施例1とは整流手段50の形状及び間隔は、ほぼ同等であるが、並べる向きが異なる。ここでは整流板52~71の上端縁部は前後左右の水平方向に並ぶように配置されるものの、整流板52~71の下端縁部が
図7のように右側面視(又は左側面視)にて回転軸線A1に近いほど上側にあり、離れるほど下側にあるように構成した。また、整流板52~71の下端側は回転軸線A1に近づく方向にそれぞれ傾けるようにした。回転軸線A1に近い整流板52の回転軸線A1となす角度θ
1が最も小さく、回転軸線A1から最も遠い整流板71の角度θ
2が最も大きくなる。
図7の例では、回転軸線A1に沿った整流板(
図2の51に相当)は設けられていないが、設けるようにしても良い。このように整流板52~72をそれぞれ傾けることで、回転軸線A1から前後方向に離れた領域での空気と整流板との摩擦抵抗で風速の減速をすると共に、風速が低い回転軸線A1付近のフィルタ40の領域に空気を集中して送り込むことで、フィルタ40の上面にて流入する空気の分布の均一化を図ることができる。
以上、実施例2ではフィルタ40の清浄空気の吹き出し側に整流手段150を配置することにより、フィルタ40を通過する風速のばらつきを抑えるようにした。フィルタ40の清浄空気の吹き出し側に整流手段150を配置することで、FFUケース130を従来の製品と同様に薄型に形成することができ、言い換えれば、FFU101を従来のままとして、それに整流手段150を追加するだけで本願発明を実施できる。