(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076309
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】接触式温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 7/02 20210101AFI20240529BHJP
【FI】
G01K7/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187838
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】594020248
【氏名又は名称】株式会社幸和電熱計器
(74)【代理人】
【識別番号】100126310
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】川井 清
(57)【要約】
【課題】被測温体の表面に沿って測温板を安定して接触させて被測温体の温度を精度よく測定できる接触式温度センサを提供する。
【解決手段】熱電対2を保持する筐体部3と、筐体部3の端面より突出された一対の熱電対素線20・21が連結された測温板40を有する測温部4とが設けられ、被測温体Rの表面に測温板40を接触させて温度を測定する接触式温度センサ1において、測温板40は、弾性を有する薄板状部材にて形成され、筐体部3の先端に筐体部3より被測温体Rに向かう方向に傾斜して一端が片持ち支持されるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電対を保持する筐体部と、前記筐体部の端面より突出された一対の熱電対素線が連結された測温板を有する測温部とが設けられ、被測温体の表面に前記測温板を接触させて温度を測定する接触式温度センサにおいて、
前記測温板は、弾性を有する薄板状部材にて形成され、前記筐体部の先端に前記筐体部より被測温体に向かう方向に傾斜して一端が片持ち支持される、
ことを特徴とする接触式温度センサ。
【請求項2】
前記測温部は、前記筐体部に被測温体に向かう方向に沿って支持ブラケットが突設され、前記支持ブラケットの下端に形成された傾斜面に前記測温板が取り付けられる請求項1に記載の接触式温度センサ。
【請求項3】
前記熱電対は、前記筐体部より突出された一対の熱電対素線の中途箇所がコイル状に成形され、前記測温板を被測温体に向かう方向に付勢する弾性部が設けられる請求項1又は請求項2に記載の接触式温度センサ。
【請求項4】
前記熱電対は、前記筐体部より突出された一対の熱電対素線の端部が楕円柱状に成形され、前記測温板の表面に短軸側の側面を当接して接合される接合部が設けられる請求項1又は請求項2に記載の接触式温度センサ。
【請求項5】
前記熱電対は、前記一対の熱電対素線が前記測温板の被測温体に接触しない面に複数の溶接点に分けて溶接される請求項1又は請求項2に記載の接触式温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式温度センサの技術に関し、より詳細には、熱電対を保持する筐体部と、筐体部の端面より突出された一対の熱電対素線が連結された測温板を有する測温部とが設けられ、被測温体の表面に測温板を接触させて温度を測定する接触式温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱電対を保持する筐体部と、筐体部の端面より突出された一対の熱電対素線が連結された測温板を有する測温部とが設けられ、被測温体の表面に測温板を接触させて温度を測定する接触式温度センサの技術が公知となっている。被測温体の温度を測定する際には、センサを被測温体の表面に完全に接触させることが測定誤差を最小にするために重要であるところ、この種の接触式温度センサでは、熱電対の一対の熱電対素線を所定の金属からなる測温板に連結して一体化させることで、被測温体の表面に測温板を押し付けるだけで測定できるため、測定誤差を軽減し、熱電対の耐久性も向上できるようにしたものである。
【0003】
従来の接触式温度センサとしては、例えば、特許文献1に開示されるように、測温板が弾性を有する薄帯状部材にて形成され、筐体部の先端に被測温体に向かう方向に側面視半円弧状に膨出して張架された構成が提案されている。かかる構成によれば、被測温体の温度を測定する際には、測温板の中央を被測温体の表面に押圧することで、測温板を扁平に変形させて、被測温体の表面に測温板の一部(接触面)を沿わせて被測温体の表面に接触させるようにしたものである。
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される従来の接触式温度センサの構造では、被測温体の表面に測温板を接触させた状態では、測温板の変形が進むにつれて、被測温体に向けて測温板を押圧する分力と中央に向けて測温板を圧縮させようとする分力が作用するため、測温板の接触面の中央が浮き上がって接触箇所が分離し、被測温体と接触片との間に隙間が生じて正確な温度測定ができなくなるという問題があった。また、測温板の中央以外の箇所を被測温体の表面に押圧させると、測温板の一端が極端に湾曲して大きな応力が発生じるため、継続使用により測温板が永久変形して測温誤差が増大してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、接触式温度センサに関し、前記従来の課題を解決するもので、被測温体の表面に沿って測温板を安定して接触させて被測温体の温度を精度よく測定できる接触式温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
すなわち、請求項1においては、熱電対を保持する筐体部と、前記筐体部の端面より突出された一対の熱電対素線が連結された測温板を有する測温部とが設けられ、被測温体の表面に前記測温板を接触させて温度を測定する接触式温度センサにおいて、前記測温板は、弾性を有する薄板状部材にて形成され、前記筐体部の先端に前記筐体部より被測温体に向かう方向に傾斜して一端が片持ち支持されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記測温部は、前記筐体部に被測温体に向かう方向に沿って支持ブラケットが突設され、前記支持ブラケットの下端面に形成された傾斜面に前記測温板が取り付けられるものである。
【0010】
請求項3においては、前記熱電対は、前記筐体部より突出された一対の熱電対素線の中途箇所がコイル状に成形され、前記測温板を被測温体に向かう方向に付勢する弾性部が設けられるものである。
【0011】
請求項4においては、前記熱電対は、前記筐体部より突出された一対の熱電対素線の端部が楕円柱状に成形され、前記測温板の表面に短軸側の側面を当接して接合される接合部が設けられるものである。
【0012】
請求項5においては、前記熱電対は、前記一対の熱電対素線が前記測温板の被測温体に接触しない面に複数の溶接点に分けて溶接されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、被測温体の表面に沿って測温板を安定して接触させて被測温体の温度を精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例に係る接触式温度センサの全体的な構成を示した正面図である。
【
図3】測温部における熱電対素線の配置構成を示した
図1のA-A矢視拡大断面図である。
【
図4】測温部における熱電対素線の配置構成を示した
図3のB-B矢視拡大端面図である。
【
図5】被測温体の表面に測温板を接触させた状態を示した図である。
【
図6】別実施例の測温部の測温板を示した
図1のA-A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施例の接触式温度センサ1は、熱電素子としての熱電対2と、熱電対2を保持する筐体部3と、筐体部3の端面に設けられた測温部4等とを具備してなり、被測温体Rの表面に測温部4の測温板40を接触させて温度を測定する接触式の温度センサとして構成されている。
【0017】
熱電対2は、一対の熱電対素線20・21が絶縁材料にて被覆された被覆熱電対として構成されており、シリコン樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂、ガラス繊維、シリカ繊維及びセラミック繊維等の公知の被覆材料にて丸線状又は薄帯状に覆われて成形されている。熱電対素線20・21は、例えば、プラス側ではNi-CR系合金としてのクロメル(登録商標)等及びマイナス側ではNi系合金としてのアルメル(登録商標)等の素線素材より形成され、絶縁状態で互いに離間を有するようにして配設されている。
【0018】
熱電対2は、後述する筐体部3に保持され、筐体部3(のケース体30)の内部にて被覆材料に覆われることなく一対の熱電対素線20・21が露出され、筐体部3の端面より熱電対素線20・21のみがそれぞれ突出されている。筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21は、相互に接触しないように離間を有して配設されている。
【0019】
筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21の中途箇所にはコイル状に成形された弾性部20a・21aが設けられており、弾性部20a・21aは、素線素材が被測温体Rに向かう方向(
図1の下方)に螺旋状に延出され、筐体部3と後述する測温板40との間に配設されている。また、筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21の端部には楕円柱状に成形された接合部20b・21bが設けられており、接合部20b・21bは、弾性部20a・21aより連続して延出されて後述する測温板40に接合されている(
図3参照)。
【0020】
筐体部3は、熱電対2の端部を収容保持する筐体部材として構成されており、ステンレス鋼等の金属素材にて内部中空の筒状に形成されたケース体30に熱電対2の端部が挿設されている。筐体部3は、ケース体30の内部空間に挿入された熱電対2とケース体30との空隙に熱伝導性素材が硬化された充填層31が形成されており、充填層31にて熱電対2及びケース体30が固定されている。充填層31を形成する熱伝導性素材としては、酸化マグネシウムや伝熱セメント等の公知のセラミック素材を用いることができる。
【0021】
また、筐体部3は、ケース体30の側面に後述する支持ブラケット41を介して把持部32が配設されている。把持部32は、断面円形の円柱状に形成され、ケース体30の長手方向に沿うように支持ブラケット41の側面に位置決めしてレーザ溶接やアーク溶接等にて溶着されている。
【0022】
図1乃至
図4に示すように、測温部4は、筐体部3の先端(下端部)に形成され、被測温体Rの表面に測温板40を押し付けて温度を測定する接触式の温度測定部として構成されている。測温板40は、ステンレス鋼やニッケル合金等の金属材で弾性を有する素材(例えば、ステンレス製のばね鋼)等よりなる平面視長方形の薄板状部材にて形成され、被測温体Rの温度を測定する際に所与の弾性力(復元力)を有するように厚さや剛性等が好適に設計されている。
【0023】
測温部4は、筐体部3のケース体30の側面に被測温体Rに向かう方向(
図1の下方向)に沿って支持ブラケット41が突設されており、支持ブラケット41の突出端面に測温板40の一端が取り付けられて片持ち状に支持されている。支持ブラケット41は、測温板40の取り付け面となる下端に筐体部30の中心軸方向に向けて下方傾斜された傾斜面41aが形成されており、傾斜面41aに測温板40の一端が固定されることで、筐体部3より被測温体Rに向かう方向に他端が下方傾斜して測温板40が取り付けられる。
【0024】
測温板40は、表裏面が平面状に形成されており、被測温体Rに接触しない面である接合面40aに上述した一対の熱電対素線20・21の端部の接合部20b・21bが複数の溶接点42・43にて溶接されて一体化されている、具体的には、本実施例の溶接部4は、測温板40の接合面40aに熱電対素線20・21の接合部20b・21bが短軸側の側面を当接させた状態で、熱電対素線20・21の先端の一か所と対抗する一辺のそれぞれ一か所の計三か所にて溶接されている。
【0025】
次に、
図5を参照しながら、本実施例の接触式温度センサ1を用いた被測温体Rの温度測定について説明すると、接触式温度センサ1を用いて被測温体Rの温度を測定する際には、被測温体Rの上方より接触式温度センサ1の測温部4を徐々に近接させる(
図5(a))。接触式温度センサ1の移動(下動)に伴って、測温部4の測温板40は、被測温体Rの表面に当接し、支持ブラケット41との固定端と反対側の先端(自由端)が上方に向く方向に略く字状に弾性変形(屈曲変形)され、やがて被測温体Rの表面に接触面40bを沿わせて接触される(
図5(b))。
【0026】
このとき、被測温体Rの表面に測温板40が接触された状態では、測温板40の弾性力とともに、一対の熱電対素線20・21に設けられた弾性部20a・21aにて測温板40を被測温体Rに向かう方向に付勢する付勢力が作用することで、被測温体Rの表面に測温板40が押し付けられるため、接触面40bが浮き上がることなく被測温体Rの表面に測温板40が押圧接触されて温度測定が行われる。
【0027】
そして、被測温体Rの温度測定が終了すると、上記とは逆に接触式温度センサ1の移動(上動)により、屈曲変形された測温板40は、測温板40の復元力とともに一対の熱電対素線20・21の弾性部20a・21aの復元力も作用して、自由端が被測温体Rから離れることで、被測温体Rに向かう方向に傾斜した元の姿勢に戻る(
図5(a))。このように、本実施例の接触式温度センサ1は、測温板40が弾性変形(屈曲変形)と復元とを繰り返しながら被測温体Rの温度測定が行われる。
【0028】
以上のように、本実施例の接触式温度センサ1は、熱電対2を保持する筐体部3と、筐体部3の端面より突出された一対の熱電対素線20・21が連結された測温板40を有する測温部4とが設けられ、被測温体Rの表面に測温板40を接触させて温度を測定する接触式温度センサ1において、測温板40は、弾性を有する薄板状部材にて形成され、筐体部3の先端に筐体部3より被測温体Rに向かう方向に傾斜して一端が片持ち支持されるものであるため、被測温体Rの表面に沿って測温板40を安定して接触させて被測温体Rの温度を精度よく測定できるのである。
【0029】
すなわち、本実施例の接触式温度センサ1は、熱電対2を保持する筐体部3と、筐体部3の端面より突出された一対の熱電対素線20・21が連結された測温板4を有する測温部4とが設けられるため、被測温体Rの表面に測温板40を押し付けて測定することができ、その際、測温板40が弾性を有する薄板状部材にて形成され、筐体部3の先端に筐体部3より被測温体Rに向かう方向に傾斜して一端が片持ち支持されるため、接触式温度センサ1の移動に伴って測温板40が弾性変形され、被測温体Rの表面に接触面40bを沿わせて測温板40を安定して接触させて測温精度を向上できる。
【0030】
特に、本実施例の測温部4は、筐体部3に被測温体Rに向かう方向に沿って支持ブラケット41が突設され、支持ブラケット41の下端に形成された傾斜面41aに測温板40が取り付けられるため、測温板40を被測温体Rに向かう方向に傾斜した姿勢に安定して維持することができる。
【0031】
また、本実施例の熱電対2は、筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21の中途箇所がコイル状に成形され、測温板40を被測温体Rに向かう方向に付勢する弾性部20a・21aが設けられるため、弾性部20a・21aの付勢力にて被測温体Rの表面に測温板40を安定して接触させることができる。
【0032】
また、本実施例の熱電対2は、筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21の端部が楕円柱状に成形され、測温板40の表面に短軸側の側面を当接して接合される接合部20b・21bが設けられるため、測温板40に対する熱電対素線20・21の接触面積を多くして接合強度を高め、接合状態を安定して維持することができる。
【0033】
また、本実施例の熱電対2は、一対の熱電対素線20・21が測温板40の被測温体Rに接触しない面に複数の溶接点42・43に分けて溶接されるため、接合箇所に作用する応力を分散して、接合状態を安定して維持することができる。
【0034】
なお、接触式温度センサ1の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0035】
すなわち、上述した実施例では、筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21が相互に接触しないように離間を有して配設されて測温板40に溶接される構成について説明したが、かかる熱電対2の配置構成はこれに限定されず、例えば、
図6に示す別実施例のように、筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21が端部にて感温部22を有するように構成されてもよい。かかる場合には、一対の熱電対素線20・21は、接合部20b・21bが溶接点42で測温板40に溶接されるとともに、感温部22も測温板40に溶接される。
【0036】
また、上述した実施例では、筐体部3より突出された一対の熱電対素線20・21の弾性部20a・21aの形状が略同形状となる構成について説明したが、かかる弾性部20a・21aの形状はこれに限定されず、例えば、弾性部20a・21aのコイルの巻き数や長さが異なるように構成されてもよく、特に、測温板40の支持ブラケット41との固定端と反対側の先端(自由端)と連結される側の弾性部において他方の弾性部に比べてコイルの巻き数を多くしつつ長くなるように構成されてもよい。
【0037】
また、上述した実施例では、一対の熱電対素線20・21が絶縁材料にて被覆された熱電対2として構成される場合について説明したが、かかる熱電対2の構成はこれに限定されず、熱電対素線の基端側(測温板4と連結される端部とは反対側)に補償導線が接続される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 接触式温度センサ
2 熱電対
3 筐体部
4 測温部
20 熱電対素子
20a 弾性部
20b 接合部
21 熱電対素子
21a 弾性部
21b 接合部
30 ケース体
31 充填層
32 把持部
40 測温板
40a 接合面
40b 接触面
41 支持ブラケット
41a 傾斜面
42 溶接点
43 溶接点
R 被測温体