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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076334
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】時計ムーブメント及び時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 27/02 20060101AFI20240529BHJP
   G04B 19/25 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G04B27/02 A
G04B19/25 L
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023134547
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】22209465.8
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バックマン、 ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポン、 デイビッド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】時刻又は日付を設定ステムによって迅速に修正することを許容する時計ムーブメントを提供する。
【解決手段】設定ステム1、ムーブメント巻取機構、日付表示機構及び時刻表示機構を含む時計ムーブメントであって、設定ステム1に運動学的に接続可能な駆動ホイール11を支承するとともに、時刻表示機構と協働するように配列されて駆動ホイール11に運動学的に接続可能である少なくとも一つの針設定ホイール12を支承する第1レバー10と、駆動ホイール11及び日付表示機構に運動学的に接続可能な日付修正機構を支承する第2レバー20とを含み、第2レバー20は、第1レバー10に枢動可能に取り付けられ、日付修正機構が日付表示機構と協働する噛合位置と日付修正機構が日付表示機構から接続解除される後退位置との間を動くように配列され、設定ステム1と第1レバー10及び第2レバー20は3つの位置を占めるように配列される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定ステム(1)、ムーブメント巻取機構、日付表示機構(3)及び時刻表示機構を含む時計ムーブメントであって、
前記設定ステム(1)に運動学的に接続可能な駆動ホイール(11)を支承するとともに、前記時刻表示機構と協働するように配列されて前記駆動ホイール(11)に運動学的に接続可能である少なくとも一つの針設定ホイール(12)を支承する第1レバー(10)と、
前記駆動ホイール(11)及び前記日付表示機構(3)に運動学的に接続可能な日付修正機構を支承する第2レバー(20)と
を含み、
前記第2レバー(20)は、前記第1レバー(10)に枢動可能に取り付けられ、前記日付修正機構が前記日付表示機構と協働する噛合位置と前記日付修正機構が前記日付表示機構から接続解除される後退位置との間を動くように配列され、
前記設定ステム(1)と前記第1レバー(10)及び前記第2レバー(20)とは、
・前記設定ステム(1)が前記ムーブメント巻取機構に運動学的に接続されるが前記駆動ホイール(11)には運動学的に接続されない巻取位置と、
・前記設定ステム(1)が前記駆動ホイール(11)に運動学的に接続される日付修正位置であって、前記第1レバー(10)及び第2レバー(20)が、前記第1駆動ホイール(11)が前記日付修正機構に運動学的に接続されるが前記時刻表示機構には運動学的に接続されないように位置決めされる、日付修正位置と、
・前記設定ステム(1)が前記第1駆動ホイール(11)に運動学的に接続される針設定位置であって、前記第1レバー(10)及び第2レバー(20)が、前記第1駆動ホイール(11)が前記少なくとも一つの針設定ホイール(12)を介して前記時刻表示機構に運動学的に接続されるが前記日付修正機構には運動学的に接続されないように位置決めされる、針設定位置と
の3つの位置を示すように配列され、
前記時計ムーブメントは、前記第2レバー(20)と協働するように配列される第3レバー(30)を含み、
前記第3レバー(30)は、前記設定ステム(1)が前記針設定位置にあるときに前記針設定位置において前記第2レバー(20)をブロックするように、かつ、時刻が修正されている間に日付が修正されることを防止するように、配列されることを特徴とする、時計ムーブメント。
【請求項2】
前記第2レバー(20)は、角度ストロークを制限する手段を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項3】
前記角度ストロークを制限する手段は、前記第2レバー(20)に形成されるアパチャ(20c)を含み、前記アパチャはピンと協働するように配列され、前記アパチャの両端が前記第2レバー(20)のストローク長さを画定する、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項4】
巻取ピニオン(2)、摺動ピニオン(4)を含み、前記摺動ピニオン(4)の位置決めが、引出片(6)及びレバー(8)によって保証され、前記第3レバー(30)は、前記引出片(6)が不動とされる位置に応じて前記第3レバー(30)の角度位置を画定する湾曲ガイド溝(34)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項5】
前記第3レバー(30)は、前記引出片(6)を介してジャンパー(9)と間接的に協働し、前記ジャンパー(9)は、3つのノッチ(9a、9b、9c)を含む可撓性アーム(90)を含み、前記3つのノッチ(9a、9b、9c)は、前記巻取位置、前記日付修正位置及び前記時刻修正位置に対応する3つの位置を形成する、請求項4に記載の時計ムーブメント。
【請求項6】
前記第3レバー(30)は、前記巻取ステム(1)が前記針設定位置にあるときに前記第2レバー(20)に当接するように配列されるピン(32)が取り付けられる第1自由端(31)と、前記引出片(6)に固定されるピン(35)と協働する前記ガイド溝(34)を含む第2端(33)とを有する、請求項4に記載の時計ムーブメント。
【請求項7】
前記ピン(35)は、前記第3レバーがその載置位置からその針設定位置へと傾動させるべく前記ガイド溝(34)に配列されることにより、少なくとも前記日付表示機構(3)へと向かう前記第2レバー(20)の変位をブロックし、又は前記第2レバー(20)を完全にブロックする、請求項6に記載の時計ムーブメント。
【請求項8】
前記第2レバーは摩擦手段を含む、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項9】
前記摩擦手段はワッシャの形態をとる、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項10】
請求項1に記載の時計ムーブメントを含む時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式腕時計製造の分野に関する。詳しくは、設定ステム、ムーブメント巻取機構、日付表示機構、及び時刻表示機構を含む時計ムーブメントに関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、時刻及び/又は日付修正機構に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの機械式腕時計は従来、3時に位置する設定ステムを含む。これは、2つの位置、すなわち手動巻取位置及び針設定位置を占める。これらの腕時計はさらに、同設定ステムを介して作動される日付修正機構も含む。
【0004】
特許文献1は、第3位置を占めるように配置された設定ステムによって日付を修正する機構を記載する。しかしながら、この機構においては、日付修正器部材が固定されているので、日付リングと永続的に噛合し、日付修正は両方向で行われる。ユーザが深夜0時頃に日付を修正すると、日付駆動アームが破損するリスクが存在する。
【0005】
特許文献2はさらに、第1レバー、第2レバー及び第3レバーを含む時計ムーブメントを記載する。第1レバーは、設定ステムに運動学的に接続可能な第1駆動ホイールを支承する。第2レバーは、時刻表示機構と協働するように配列されて第1駆動ホイールに運動学的に接続可能な第2針設定ホイールを支承する。第3レバーは、第1駆動ホイール及び日付表示機構に運動学的に接続可能な日付修正機構を支承する。第3レバーは、第2レバーに枢動可能に取り付けられて、日付修正機構が日付表示機構と協働する噛合位置と、日付修正機構が日付表示機構から接続解除される後退位置との間で動くように配列される。設定ステムと第1レバー及び第2レバーとは3つの位置を占めるように配列される。
【0006】
しかしながら、この機構においては、装着者は時刻を修正するときに日付も変更してしまう。日付の意図せぬ変更は必ずしも装着者が望むわけではなく、装着者はこの場合、時刻を修正した後に日付を修正しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2707778号明細書
【特許文献2】欧州特許第3144743号明細書
【発明の概要】
【0008】
詳しくは、本発明は、周知の機構の様々な欠点を克服することを目的とする。
【0009】
さらに詳しくは、本発明の一つの目的は、時刻又は日付を設定ステムによって迅速に修正することを許容する時計ムーブメントを与えることにある。
【0010】
この目的のために、本発明は、設定ステムと、ムーブメント巻取機構と、日付表示機構と、時刻表示機構とを含む時計ムーブメントに関し、時計ムーブメントは、設定ステムに運動学的に接続可能な駆動ホイールを支承する第1レバーであって、時刻表示機構と協働するように配列されて駆動ホイールに運動学的に接続可能な少なくとも一つの針設定ホイールを支承する第1レバーと、駆動ホイール及び日付表示機構に運動学的に接続可能な日付修正機構を支承する第2レバーであって、第1レバーに枢動可能に取り付けられて、日付修正機構が日付表示機構と協働する噛合位置と、日付修正機構が日付表示機構から接続解除される後退位置との間で動くように配列される第2レバーとを含み、設定ステムと第1レバー及び第2レバーとは3つの位置、すなわち、
・設定ステムがムーブメント巻取機構に運動学的に接続されるが駆動ホイールには運動学的に接続されない巻取位置と、
・設定ステムが駆動ホイールに運動学的に接続される日付修正位置であって、第1レバー及び第2レバーが、第1駆動ホイールが日付修正機構に運動学的に接続されるが時刻表示機構には運動学的に接続されないように位置決めされる、日付修正位置と、
・設定ステムが第1駆動ホイールに運動学的に接続される針設定位置であって、第1レバー及び第2レバーが、第1駆動ホイールが少なくとも一つの針設定ホイールを介して時刻修正機構に運動学的に接続されるが日付修正機構には運動学的に接続されないように位置決めされる、針設定位置と
を占めるように配列される。
【0011】
本発明によれば、時計ムーブメントは、第2レバーと協働するように配列される第3レバーを含み、第3レバーは、設定ステムが針設定位置にあるときに当該針設定位置において第2レバーをブロックするように、かつ、時刻が修正されている間に日付が修正されることを防止するように、配列される。
【0012】
本発明の他の有利な変形例によれば、
・第2レバーが、角度ストロークを制限する手段を含み、
・角度ストロークを制限する手段が、第2レバーに形成されるアパチャを含み、アパチャはピンと協働するように配列され、アパチャの両端が第2レバーのストローク長さを画定し、
・時計ムーブメントが、巻取ピニオン、摺動ピニオンを含み、摺動ピニオンの位置決めが、引出片及びレバーによって保証され、第3レバーが不動にされる位置に応じて引張片が第3レバーの角度位置を画定する湾曲ガイド溝を含み、
・第3レバーが、引出片を介してジャンパーと間接的に協働し、ジャンパーは、3つのノッチを有する可撓性アームを含み、3つのノッチは、巻取位置、日付修正位置及び時刻修正位置に対応する3つの位置を形成し、
・第3レバーが、巻取ステムが針設定位置にあるときに第2レバーに当接するように配列されるピンが取り付けられる第1自由端と、引出片に固定されたピンと協働するガイド溝を含む第2端とを含み、
・そのピンは、第3レバーをその載置位置からその針設定位置へと傾動させるべくガイド溝に配列されることにより、少なくとも日付表示機構へと向かう第2レバーの変位をブロックし、又は第2レバーを完全にブロックし、
・第2レバーが摩擦手段を含み、
・摩擦手段がワッシャの形態をとる。
【0013】
本発明はさらに、本発明に係るムーブメントを含む時計に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明のさらなる特徴及び利点が、添付図面を参照して非限定的な例を介して与えられる以下の詳細な説明から明らかになる。
【0015】
図1】本発明に係るムーブメント修正機構の斜視上面図を示す。
図2】本発明に係るムーブメント修正機構の斜視下面図を示す。
図3】本発明に係る時計ムーブメントの部分上面図を示す。
図4a】本発明に係る時計ムーブメントの修正機構の上面図を示す。当該修正機構が異なる位置に示されている。
図4b】本発明に係る時計ムーブメントの修正機構の上面図を示す。当該修正機構が異なる位置に示されている。
図4c】本発明に係る時計ムーブメントの修正機構の上面図を示す。当該修正機構が異なる位置に示されている。
図4d】本発明に係る時計ムーブメントの修正機構の上面図を示す。当該修正機構が異なる位置に示されている。
図5】本発明に係る時計ムーブメントの修正機構の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3は、時計ムーブメントの一部を示す。時計ムーブメントは、詳しくは、設定ステム1、巻取機構、日付修正機構及び時刻修正機構を含む。
【0017】
従来の態様では、設定ステム1又は巻取ステムは、腕時計ケースの外側から作動させることができ、その様々な位置を占めるべく一方でその回転軸Cまわりに回転することが、他方でその回転軸Cに沿って並進することができる。巻取ピニオン2及び摺動ピニオン4もまた設けられる。摺動ピニオン4は引出片6及びレバー8によって位置決めされる。
【0018】
従来の態様では、図1に示されるように、設定ステムがその巻取位置(一般にはその非引出位置)にあって摺動ピニオン4が巻取ピニオン2と協働するときに、手動でムーブメントを巻き取るべく巻取ピニオン2が巻取機構(図示せず)と噛合する。
【0019】
日付表示機構は従来、内歯5を有する日付ディスク又は日付リング3を含む。内歯5は日付修正機構によって作動させることができる。
【0020】
時刻修正機構は、キャノンピニオンと協働するミニッツホイールと噛合する一組の中間ホイールを含み得る。
【0021】
これらの要素及びその動作はすべて当業者にとって周知であり、さらなる説明は不要である。
【0022】
本発明によれば、第1レバー10がプレートに枢動可能に取り付けられ、一軸まわりに自由に回転するように取り付けられた第1駆動ホイール11を支承する。駆動ホイール11には、設定ステム1が日付修正位置又は針設定位置(引出位置)にあるときに設定ステム1の摺動ピニオン4が噛合する。
【0023】
第2レバー20もまた設けられ、第1レバー10に枢動可能に取り付けられる。図5を参照すると、第2レバー20は、第1レバー10上に第2レバー20の枢動軸を構成する第1シャフトAが通るように第1孔が設けられた第1部分20aを含む。第2レバー20はまた、日付修正手段の枢動軸を構成する第2シャフトBが通るように第2孔を有する第2部分20bも含む。
【0024】
第2レバー20は、駆動ホイール11及び日付リング3に運動学的に接続され得る日付修正機構を支承する。特に図3を参照すると、日付修正機構は、接続ピニオン16を介して駆動ホイール11に運動学的に接続され得る修正器部材15を含む。修正器部材15は、日付リング3の歯5と協働し得る修正フィンガー17を含む。修正器部材15は、シャフトBを修正器部材15に固定することにより、摩擦ワッシャ18を介して第2レバー20に摩擦取り付けされる。修正器部材15と接続ピニオン16とは互いに固定され、これら全体が回転できるように第2レバー20に取り付けられる。
【0025】
図示の例において、修正フィンガー17は、日付ディスク3と直接協働するが、修正器部材15と日付表示機構との間に歯車列又は他の中間機構を設けてもよいことは明らかである。
【0026】
第2レバー20は、第1レバー10に枢動可能に取り付けられて、日付修正機構が日付リング3と協働する噛合位置と、日付修正機構が日付リング3から接続解除される後退位置との間で動くように配列される。
【0027】
第2レバー20はさらに停止要素を含む。停止要素はアパチャ20cの形態であり、アパチャ20cの両端によって画定される2つの停止要素間を第2レバーが移動する。すなわち、アパチャ20cの両端により第2レバーの角度ストロークを制限することが可能となって第2レバー20のための2つの別個の位置が画定される。
【0028】
加えて、ペグ(図示せず)がプレートに設けられる。このペグは、第2レバー20におけるアパチャ20cと協働するように配列される。アパチャ20cとの協働により、ペグは、第2レバー20が枢動するときに第2レバー20のストロークを制限する手段を形成する。すなわち、修正器と日付リングとの噛合位置が、ペグに接触するようになるときにアパチャの第1端によって画定される。
【0029】
ペグとアパチャの第2端との接触はリリース位置を画定する。
【0030】
本発明によれば、第3レバー30がプレートに枢動可能に取り付けられ、引出片6と協働するように配列されるガイド溝34を支承する。第3レバー30は、第2レバー20と協働するように、かつ、巻取ステムが針設定位置にあるときに第2レバー20をブロックするように、配列される。これにより、時刻が修正されるときに日付が修正されることが防止される。図4bからわかるように、第3レバーは、ピン32が取り付けられる第1自由端31と、引出片6に固定されたピン35と協働するガイド溝34を含む第2端33とを有する。ピン32は、巻取ステム1が針設定位置にあるときに第2レバー20に当接するように配列される。
【0031】
ガイド溝34は、設定ステム1の巻取位置、日付修正位置及び時刻修正位置に対応する当該レバーの3つの角度位置を画定するように湾曲している。本発明によれば、レバー30は、引出片6を介してジャンパー9と間接的に協働する。ジャンパー9は、3つのノッチ9a、9b、9cを備える可撓性アーム90を含む。
【0032】
引出片6は、ステムの位置に応じてノッチ9a、9b、9cのいずれか一つと協働するピン36を含む。引出片6はまた、巻取ステム1の溝38に載置されるように配列されるピン37によって巻取ステム1とも協働する。すなわち、巻取ステム1を引っ張ると、引出片6が枢動して可撓性アーム90を押し、ピン36が、巻取ステム1が占める位置に応じてノッチ9a、9b、9cのうちの一つの中で動く。かかる配列は特に、巻取ステム1の異なる位置に対して「ノッチ」がもたらされることを許容するので、装着者にとって修正を行おうとするときに巻取ステム1の位置を識別することが容易となる。
【0033】
本発明に係るムーブメントは、以下のように動作する。すなわち、手動巻取位置において、図4aに示されるように、摺動ピニオン4が巻取ピニオン2に噛合し、巻取ピニオン2が巻取機構(図示せず)に噛合してムーブメントが手動で巻き取られる。すなわち、巻取位置にある設定ステム1が、ムーブメント巻取機構に運動学的に接続されるが、駆動ホイール11には運動学的に接続されず、ひいては他の時刻修正機構又は日付修正機構にも運動学的に接続されない。
【0034】
設定ステム1がその日付修正位置へと引き込まれたときの図4dを参照すると、摺動ピニオン4が駆動ホイール11に向かって並進して駆動ホイール11に噛合する。設定ステム1が引き出されるとき第3レバー30もまた変位し、第2レバー20が枢動して日付修正位置になることが許容される。すなわち、この日付修正位置において、設定ステム1は駆動ホイール11に運動学的に接続され、第1レバー10及び第2レバー20は、第1駆動ホイール11iが、第2レバー20によって支承される日付修正機構に運動学的に接続されるがミニッツホイールには運動学的に接続されないように位置決めされる。詳しくは、第2レバー20が支承する接続ピニオン16に駆動ホイール11が噛合するように、第2レバー20が位置決めされる。接続ピニオン16が、修正器部材15に固定されることによって修正器部材15及び摩擦ワッシャ18を回転させ、第2レバー20の枢動を引き起こす。その後、複数の修正フィンガー17のうちの一つが日付リング3の歯5と協働して日付リング3を作動させ、日付が修正される。第1レバー10が、駆動ホイール11がミニッツホイールと協働しないように位置決めされる。このようにして、迅速日付修正機能が、針設定機能及び巻取機能から分離される。
【0035】
この位置では、一方向への設定ステム1の回転が、接続ピニオン16及び摩擦ワッシャ18の一方向への回転を引き起こすので、第2レバー20が同方向に枢動する。この枢動方向により、例えば、図4dに示されるように、修正器部材15が日付リング5に向かって引き寄せられる。すなわち、第3レバー30がその日付修正位置を占めるので、日付を修正することができる。
【0036】
設定ステム1が逆方向に回されると、接続ピニオン及び軸Bの逆方向回転が引き起こされるので、第2レバー20も同逆方向に枢動し、この逆方向の枢動により、図4cに示されるように日付修正機構は日付リング5から離れるように動く。日付修正機構が日付リング5から離れるように動くことは、ペグと、第2レバー20に設けられるアパチャ20cの両端との協働によって制限される。すなわち、本発明に係る機構により、設定ステム1による日付の一方向修正が可能となる。設定ステムが逆方向に回されるときは、他機能の修正が想定される。
【0037】
設定ステム1がその針設定位置へと引き出されたときの図4bを参照すると、摺動ピニオン4が第1レバー10に向かって並進する。すなわち、設定ステム1が第1レバー10と協働し、第1レバー10の枢動が引き起こされることにより、駆動ホイール11が針設定ホイール12と噛合する一方、摺動ピニオン4は第1駆動ホイール11と噛合したままとなる。すなわち、この針設定位置において、設定ステム1が駆動ホイール11に運動学的に接続され、第1レバーは、第1駆動ホイール11及び針設定ホイール12によって針の設定が可能となるように位置決めされる。詳しくは、設定ステム1が並進されると、引出片が第3レバー30に作用して第3レバー30を、第2レバー20をブロックする位置まで移動させる。ピン35がガイド溝34において協働することにより、第3レバー30がその載置位置からその針設定位置へと傾動し、少なくとも日付の方向の第2レバーの変位がブロックされ、又はさらに日付リングの方向のレバーの変位が完全にブロックされる。このようにして、針設定機能は、迅速日付修正機能及び巻取機能から分離される。
【0038】
本発明に係るムーブメントにおいて、第1駆動ホイールと日付表示機構又は針設定機構との噛合は永続的ではないので、様々な部品の歯の目立てに特定の切り取りを要しない。
【0039】
本発明はさらに、本発明に係る時計ムーブメントを含む時計に関する。
【0040】
もちろん、本発明は、示された例に限られることはなく、特許請求の範囲により画定される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかな様々な代替例及び修正例を作り得る。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定ステム(1)、ムーブメント巻取機構、日付表示機構(3)及び時刻表示機構を含む時計ムーブメントであって、
前記設定ステム(1)に運動学的に接続可能な駆動ホイール(11)を支承するとともに、前記時刻表示機構と協働するように配列されて前記駆動ホイール(11)に運動学的に接続可能である少なくとも一つの針設定ホイール(12)を支承する第1レバー(10)と、
前記駆動ホイール(11)及び前記日付表示機構(3)に運動学的に接続可能な日付修正機構を支承する第2レバー(20)と
を含み、
前記第2レバー(20)は、前記第1レバー(10)に枢動可能に取り付けられ、前記日付修正機構が前記日付表示機構と協働する噛合位置と前記日付修正機構が前記日付表示機構から接続解除される後退位置との間を動くように配列され、
前記設定ステム(1)と前記第1レバー(10)及び前記第2レバー(20)とは、
・前記設定ステム(1)が前記ムーブメント巻取機構に運動学的に接続されるが前記駆動ホイール(11)には運動学的に接続されない巻取位置と、
・前記設定ステム(1)が前記駆動ホイール(11)に運動学的に接続される日付修正位置であって、前記第1レバー(10)及び第2レバー(20)が、前記駆動ホイール(11)が前記日付修正機構に運動学的に接続されるが前記時刻表示機構には運動学的に接続されないように位置決めされる、日付修正位置と、
・前記設定ステム(1)が前記駆動ホイール(11)に運動学的に接続される針設定位置であって、前記第1レバー(10)及び第2レバー(20)が、前記駆動ホイール(11)が前記少なくとも一つの針設定ホイール(12)を介して前記時刻表示機構に運動学的に接続されるが前記日付修正機構には運動学的に接続されないように位置決めされる、針設定位置と
の3つの位置を示すように配列され、
前記時計ムーブメントは、前記第2レバー(20)と協働するように配列される第3レバー(30)を含み、
前記第3レバー(30)は、前記設定ステム(1)が前記針設定位置にあるときに前記針設定位置において前記第2レバー(20)をブロックするように、かつ、時刻が修正されている間に日付が修正されることを防止するように、配列されることを特徴とする、時計ムーブメント。
【請求項2】
前記第2レバー(20)は、角度ストロークを制限する手段を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項3】
前記角度ストロークを制限する手段は、前記第2レバー(20)に形成されるアパチャ(20c)を含み、前記アパチャはピンと協働するように配列され、前記アパチャの両端が前記第2レバー(20)のストローク長さを画定する、請求項に記載の時計ムーブメント。
【請求項4】
前記設定ステム(1)は巻取ピニオン(2)及び摺動ピニオン(4)を含み、前記摺動ピニオン(4)の位置決めが、引出片(6)及びレバー(8)によって保証され、前記第3レバー(30)は、前記引出片(6)が不動とされる位置に応じて前記第3レバー(30)の角度位置を画定する湾曲ガイド溝(34)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項5】
前記第3レバー(30)は、前記引出片(6)を介してジャンパー(9)と間接的に協働し、前記ジャンパー(9)は、3つのノッチ(9a、9b、9c)を含む可撓性アーム(90)を含み、前記3つのノッチ(9a、9b、9c)は、前記巻取位置、前記日付修正位置及び時刻修正位置に対応する3つの位置を形成する、請求項4に記載の時計ムーブメント。
【請求項6】
前記第3レバー(30)は、前記設定ステム(1)が前記針設定位置にあるときに前記第2レバー(20)に当接するように配列されるピン(32)が取り付けられる第1自由端(31)と、前記引出片(6)に固定されるピン(35)と協働する前記湾曲ガイド溝(34)を含む第2端(33)とを有する、請求項4に記載の時計ムーブメント。
【請求項7】
前記ピン(35)は、前記第3レバーがその載置位置からその針設定位置へと傾動させるべく前記湾曲ガイド溝(34)に配列されることにより、少なくとも前記日付表示機構(3)へと向かう前記第2レバー(20)の変位をブロックし、又は前記第2レバー(20)を完全にブロックする、請求項6に記載の時計ムーブメント。
【請求項8】
前記第2レバーは摩擦手段を含む、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項9】
前記摩擦手段はワッシャの形態をとる、請求項に記載の時計ムーブメント。
【請求項10】
請求項1に記載の時計ムーブメントを含む時計。
【外国語明細書】