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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076343
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/00 20060101AFI20240529BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20240529BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20240529BHJP
   B41J 29/17 20060101ALI20240529BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240529BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B65H5/00 B
B65H5/02 S
B41J11/02
B41J29/17
B41J2/17 103
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167260
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022187156
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】小関 光浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 大甫
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
2C061
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB31
2C056EB58
2C056EC06
2C056EC35
2C056FA13
2C056HA29
2C056JB18
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF31
2C058DA13
2C061AQ05
2C061AS02
2C061CM01
2C061CM11
3F049BB08
3F049DB04
3F049DB06
3F049LA01
3F101AB01
3F101AB07
3F101AB08
3F101AB09
3F101AB19
3F101LA01
(57)【要約】
【課題】クリーニングウェブと搬送ベルトとの間の接触面積を確保するとともに、クリーニングウェブと搬送ベルトとの間の接触面積のばらつきを抑制する。
【解決手段】搬送ベルトの第1面をクリーニングするクリーニングウェブを搬送ベルトの第1面に向けて押圧する押圧部と、搬送ベルトの内側に位置し、搬送ベルトの第2面に当接可能な対向部と、を備え、押圧部は、第1面に対する交差方向に移動することで、第1面のクリーニングを行わない第1位置と、第1面のクリーニングを行う第2位置とに変位可能であり、対向部は、押圧部の第1位置から第2位置への移動に伴い、第2面と接する位置が第1位置から第2位置に向かう方向に移動可能であり、クリーニングウェブは、押圧部が第2位置に位置する際に、第1面に対する接触面積が最も大きくなり、押圧部の第2位置は、押圧部の、第1位置から第2位置へ向かう方向の移動を規制する規制部によって規定される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出する液体吐出部と、
外側の第1面と内側の第2面とを有する無端状のベルトであって、前記第1面が前記液体吐出部と対向し、回転することで媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの前記第1面をクリーニングするクリーニング部と、を備え、
前記クリーニング部は、
前記搬送ベルトの前記第1面に接しながら前記第1面に対して相対移動することで前記第1面のクリーニングを行うクリーニングウェブと、
前記クリーニングウェブを前記搬送ベルトの前記第1面に向けて押圧する押圧部と、
を有し、
前記搬送ベルトの内側には、前記クリーニングウェブが前記搬送ベルトの前記第1面に接する位置において前記第2面に当接可能な対向部が設けられ、
前記押圧部は、前記第1面に対し交差する方向に移動することで、前記第1面のクリーニングを行わない第1位置と、前記第1面のクリーニングを行う第2位置とに変位可能であり、
前記対向部は、前記押圧部の前記第1位置から前記第2位置への移動に伴い、前記第2面と接する位置が前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に移動可能であり、
前記クリーニングウェブは、前記押圧部が前記第2位置に位置する際に、前記第1面に対する接触面積が最も大きくなり、
前記押圧部の前記第2位置は、前記押圧部の、前記第1位置から前記第2位置へ向かう方向の移動を規制する規制部によって規定される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記対向部は、前記搬送ベルトの移動方向と交差する幅方向に沿って複数設けられる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側に設けられている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、前記規制部は、前記搬送ベルトの内側に設けられ、前記搬送ベルトを介して前記押圧部の移動を規制する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出装置において、前記規制部は、ポリアセタール樹脂により形成される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出装置において、前記規制部は、スナップフィットによって着脱可能である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出装置において、前記押圧部が前記第1位置に位置する際、前記対向部は、前記搬送ベルトの前記第2面との間に隙間を形成する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記規制部は、前記押圧部の前記第2位置を調整可能に設けられている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液体吐出装置において、前記規制部は、駆動源から動力を得て前記押圧部の前記第2位置を調整可能であり、
前記駆動源を制御する制御部は、環境情報および記録情報の少なくとも一方に基づき、前記駆動源を制御する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出装置において、前記記録情報には、記録デューティ及び累積記録枚数の少なくとも一方が含まれる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記押圧部は、第1押圧手段によって前記搬送ベルトの内側に向けて押圧され、
前記対向部は、第2押圧手段によって前記搬送ベルトの前記第2面に向けて押圧され、
前記第1押圧手段が前記第2押圧手段による押圧力に抗して前記押圧部を押圧することにより、前記押圧部が前記第1位置から前記第2位置へと移動する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の液体吐出装置において、前記第1押圧手段は、ユニットとして構成された前記クリーニング部を押圧する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記押圧部は、前記幅方向に延びるとともに両端部において軸受部によって軸支される軸部材で構成され、
前記対向部を前記搬送ベルトに向けて押圧する弾性部材をさらに備え、
複数の前記対向部は、
前記幅方向において前記軸部材の中央領域に設けられる第1対向部と、
前記幅方向において前記第1対向部の両側に設けられる第2対向部と、
を有し、
前記弾性部材は、
前記第1対向部を押圧する第1弾性部材と、
前記第2対向部を押圧する第2弾性部材と、
を有し、
前記第1弾性部材の押圧力は、前記第2弾性部材の押圧力より大きい、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の液体吐出装置において、
前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側であって、前記軸受部の外側に設けられる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項15】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記押圧部は、前記搬送ベルトの移動方向と交差する幅方向に延びるとともに両端部において軸受部によって軸支される軸部材で構成され、
前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側であって、前記軸受部の外側に設けられる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項16】
請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記押圧部は、前記幅方向に延びるとともに両端部において軸受部によって軸支される軸部材で構成され、
前記対向部を前記搬送ベルトに向けて押圧する弾性部材であって、受け面と前記対向部との間で押圧力を生じさせる弾性部材を前記幅方向に沿って複数備え、
前記受け面は、前記幅方向における中央部が、前記中央部に対する両側よりも、前記軸部材の方向に突出する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置では、搬送ベルトを用いて媒体の一例である記録用紙を搬送する構成が知られており、またこの様な構成において特許文献1に示される様に搬送ベルトをクリーニングウェブでクリーニングする構成が知られている。特許文献1記載の構成においてクリーニングウェブは、クリーニングウェブローラを介して、一定の接触圧力を保ちながらベルト表面に対して接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-169968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の記録装置では、クリーニングウェブは搬送ベルトを巻き掛けるローラーとクリーニングウェブローラとの間で挟まれた状態で搬送ベルトをクリーニングする。この様な構成においては、クリーニングウェブと搬送ベルトとの間の接触面積が確保できず、クリーニング効果が不足する虞がある。
また、クリーニングウェブと搬送ベルトとの間の接触面積のばらつきは、クリーニング効果のばらつきや、搬送ベルトを駆動するモーターの必要トルクのばらつきを招き、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出部と、外側の第1面と内側の第2面とを有する無端状のベルトであって、前記第1面が前記液体吐出部と対向し、回転することで媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの前記第1面をクリーニングするクリーニング部と、を備え、前記クリーニング部は、前記搬送ベルトの前記第1面に接しながら前記第1面に対して相対移動することで前記第1面のクリーニングを行うクリーニングウェブと、前記クリーニングウェブを前記搬送ベルトの前記第1面に向けて押圧する押圧部と、を有し、前記搬送ベルトの内側には、前記クリーニングウェブが前記搬送ベルトの前記第1面に接する位置において前記第2面に当接可能な対向部が設けられ、前記押圧部は、前記第1面に対し交差する方向に移動することで、前記第1面のクリーニングを行わない第1位置と、前記第1面のクリーニングを行う第2位置とに変位可能であり、前記対向部は、前記押圧部の前記第1位置から前記第2位置への移動に伴い、前記第2面と接する位置が前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に移動可能であり、前記クリーニングウェブは、前記押圧部が前記第2位置に位置する際に、前記第1面に対する接触面積が最も大きくなり、前記押圧部の前記第2位置は、前記押圧部の、前記第1位置から前記第2位置へ向かう方向の移動を規制する規制部によって規定されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】プリンターの媒体搬送経路を示す図。
図2】搬送ベルト及びクリーニング部の側面図であって、クリーニング部が非クリーニング状態にある場合の図。
図3】搬送ベルト及びクリーニング部の側面図であって、クリーニング部がクリーニング状態にある場合の図。
図4】ベルトユニットおよびクリーニング部の断面斜視図であって、クリーニング部がクリーニング状態にある場合の図。
図5】ベルトユニットから搬送ベルトを取り除いた構成の斜視図であって、バックアップ部材が幅方向に沿って配置された状態を示す図。
図6】クリーニング部の状態変化を示す図であって、上の図はクリーニング部の非クリーニング状態を示す図、下の図はクリーニング部のクリーニング状態を示す図。
図7A】規制部材が装着された状態のベースフレームの部分拡大斜視図。
図7B】規制部材が取り外された状態のベースフレームの部分拡大斜視図。
図8】ベースフレームと規制部材の断面図。
図9】クリーニング部の状態変化を示す図であって、上の図はクリーニング部の非クリーニング状態を示す図、下の図はクリーニング部のクリーニング状態を示す図。
図10】規制部材の位置を調整する手段を示す図。
図11】温度及び湿度の領域を示す図。
図12】規制部材の他の実施形態を示す図であって、上の図はクリーニング部の非クリーニング状態を示す図、下の図はクリーニング部のクリーニング状態を示す図。
図13】バックアップ部材を押圧する圧縮ばねの他の実施形態を示す図。
図14】規制部材の他の実施形態を示す図。
図15】ベースフレームの受け部の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出部と、外側の第1面と内側の第2面とを有する無端状のベルトであって、前記第1面が前記液体吐出部と対向し、回転することで媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの前記第1面をクリーニングするクリーニング部と、を備え、前記クリーニング部は、前記搬送ベルトの前記第1面に接しながら前記第1面に対して相対移動することで前記第1面のクリーニングを行うクリーニングウェブと、前記クリーニングウェブを前記搬送ベルトの前記第1面に向けて押圧する押圧部と、を有し、前記搬送ベルトの内側には、前記クリーニングウェブが前記搬送ベルトの前記第1面に接する位置において前記第2面に当接可能な対向部が設けられ、前記押圧部は、前記第1面に対し交差する方向に移動することで、前記第1面のクリーニングを行わない第1位置と、前記第1面のクリーニングを行う第2位置とに変位可能であり、前記対向部は、前記押圧部の前記第1位置から前記第2位置への移動に伴い、前記第2面と接する位置が前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に移動可能であり、前記クリーニングウェブは、前記押圧部が前記第2位置に位置する際に、前記第1面に対する接触面積が最も大きくなり、前記押圧部の前記第2位置は、前記押圧部の、前記第1位置から前記第2位置へ向かう方向の移動を規制する規制部によって規定されることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記クリーニングウェブを挟んで配置された前記押圧部と前記対向部はともに移動可能であり、双方の移動を伴って前記押圧部が前記第2位置に位置する際に、前記クリーニングウェブの前記第1面に対する接触面積が最も大きくなる構成である為、前記接触面積を容易に増大させることができ、その結果高いクリーニング効果を得ることができる。
また前記押圧部の前記第2位置は、前記押圧部の、前記第1位置から前記第2位置へ向かう方向の移動を規制する規制部によって規定されることから、前記第2位置のばらつきを抑制でき、ひいては前記搬送ベルトと前記クリーニングウェブとの間の接触面積のばらつきを抑制できる。その結果、クリーニング効果のばらつきや、前記搬送ベルトを駆動するモーターの必要トルクのばらつきを抑制することができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記対向部は、前記搬送ベルトの移動方向と交差する幅方向に沿って複数設けられることを特徴とする。
前記対向部が、前記搬送ベルトの移動方向と交差する幅方向に沿って延設されていると、部品公差等によって前記クリーニングウェブが前記搬送ベルトの前記第1面に接する際の接触圧がばらつき易くなり、ひいてはクリーニング効果にばらつきが生じる虞がある。本態様によれば、前記対向部は、前記搬送ベルトの移動方向と交差する幅方向に沿って複数設けられることから、前記接触圧のばらつきを抑制でき、その結果クリーニング効果のばらつきを抑制できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側に設けられていることから、前記押圧部の前記第2位置の前記幅方向でのばらつきを抑制でき、前記幅方向でのクリーニング効果のばらつきを抑制できる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず上記第1の態様に従属しても良い。
【0011】
第4の態様は、第3の態様に従属する態様であって、前記規制部は、前記搬送ベルトの内側に設けられ、前記搬送ベルトを介して前記押圧部の移動を規制することを特徴とする。
本態様によれば、前記規制部は、前記搬送ベルトの内側に設けられ、前記搬送ベルトを介して前記押圧部の移動を規制する構成である為、前記規制部を設けることに伴う装置の大型化を抑制できる。
尚、本態様は上記第3の態様に限らず、上記第1のまたは第2の態様に従属しても良い。
【0012】
第5の態様は、第4の態様に従属する態様であって、前記規制部は、ポリアセタール樹脂により形成されることを特徴とする。
本態様によれば、前記規制部は、ポリアセタール樹脂(POM:polyoxymethylene)により形成されるので、前記規制部が前記搬送ベルトの内側の面即ち前記第2面に接触する際の摩擦抵抗を小さくすることができ、前記搬送ベルトを駆動するモーターの負荷を抑制することができる。
尚、本態様は上記第4の態様に限らず、上記第1から第3の態様のいずれかに従属しても良い。
【0013】
第6の態様は、第5の態様に従属する態様であって、前記規制部は、スナップフィットによって着脱可能であることを特徴とする。
本態様によれば、前記規制部は、スナップフィットによって着脱可能であることから、着脱が容易であるとともに、前記規制部を寸法の異なるものに付け替えることで、前記押圧部の前記第2位置を調整でき、ひいてはクリーニング効果を調整することができる。
尚、本態様は上記第5の態様に限らず、上記第1から第4の態様のいずれかに従属しても良い。
【0014】
第7の態様は、第6の態様に従属する態様であって、前記押圧部が前記第1位置に位置する際、前記対向部は、前記搬送ベルトの前記第2面との間に隙間を形成することを特徴とする。
本態様によれば、前記押圧部が前記第1位置に位置する際、前記対向部は、前記搬送ベルトの前記第2面との間に隙間を形成することから、前記対向部と前記搬送ベルトの摩耗を抑制することができる。
尚、本態様は上記第6の態様に限らず、上記第1から第5の態様のいずれかに従属しても良い。
【0015】
第8の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記規制部は、前記押圧部の前記第2位置を調整可能に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、前記規制部は、前記押圧部の前記第2位置を調整可能に設けられていることから、クリーニング効果を調整することができる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第7の態様のいずれかに従属しても良い。
【0016】
第9の態様は、第8の態様に従属する態様であって、前記規制部は、駆動源から動力を得て前記押圧部の前記第2位置を調整可能であり、前記駆動源を制御する制御部は、環境情報および記録情報の少なくとも一方に基づき、前記駆動源を制御することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記規制部は、駆動源から動力を得て前記押圧部の前記第2位置を調整可能であり、前記駆動源を制御する制御部は、環境情報および記録情報の少なくとも一方に基づき、前記駆動源を制御することから、前記環境情報又は前記記録情報、或いは前記環境情報および前記記録情報に基づき前記第2位置が調整され、より適切なクリーニング効果を得ることができる。
【0018】
第10の態様は、第9の態様に従属する態様であって、前記記録情報には、記録デューティ及び累積記録枚数の少なくとも一方が含まれることを特徴とする。
本態様によれば、前記記録情報には、記録デューティ及び累積記録枚数の少なくとも一方が含まれることから、前記記録デューティ及び前記累積記録枚数の少なくとも一方に基づいて適切なクリーニング効果が得られる。
【0019】
第11の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記押圧部は、第1押圧手段によって前記搬送ベルトの内側に向けて押圧され、前記対向部は、第2押圧手段によって前記搬送ベルトの前記第2面に向けて押圧され、前記第1押圧手段が前記第2押圧手段による押圧力に抗して前記押圧部を押圧することにより、前記押圧部が前記第1位置から前記第2位置へと移動することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記第1押圧手段が前記第2押圧手段による押圧力に抗して前記押圧部を押圧することにより、前記押圧部が前記第1位置から前記第2位置へと移動する構成である為、モーター等の動力源を用いずに前記押圧部を前記第1位置から前記第2位置へと移動させることができ、装置のコストアップを抑制できる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第10の態様のいずれかに従属しても良い。
【0021】
第12の態様は、第11の態様に従属する態様であって、前記第1押圧手段は、ユニットとして構成された前記クリーニング部を押圧することを特徴とする。
前記クリーニングウェブを、前記押圧部を含めた複数の巻き掛け部位に巻き掛けるとともにテンションを付与する構成の場合、前記押圧部のみが変位すると前記クリーニングウェブのテンションが変化し易くなり好ましくない。
しかしながら本態様によれば、前記第1押圧手段は、ユニットとして構成された前記クリーニング部を押圧する構成であり、即ち前記押圧部を直接押圧するのではなくユニット全体を押圧する構成である。この為、前記クリーニングウェブの巻き掛け状態を維持したまま前記押圧部を前記搬送ベルトの内側に向けて押圧することができ、これにより前記クリーニングウェブに付与されたテンションを維持することができる。
【0022】
第13の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記押圧部は、前記幅方向に延びるとともに両端部において軸受部によって軸支される軸部材で構成され、前記対向部を前記搬送ベルトに向けて押圧する弾性部材をさらに備え、複数の前記対向部は、前記幅方向において前記軸部材の中央領域に設けられる第1対向部と、前記幅方向において前記第1対向部の両側に設けられる第2対向部と、を有し、前記弾性部材は、前記第1対向部を押圧する第1弾性部材と、前記第2対向部を押圧する第2弾性部材と、を有し、前記第1弾性部材の押圧力は、前記第2弾性部材の押圧力より大きいことを特徴とする。
【0023】
前記クリーニングウェブが前記搬送ベルトの前記第1面に接する際の接触圧は、適切に得られることが好ましい。しかしながら前記押圧部が、前記幅方向に延びるとともに両端部において軸支される軸部材で構成される場合、前記軸部材が撓むことで前記幅方向における中央領域で前記接触圧が低下し易くなる。その結果、適切なクリーニング効果が得られない虞がある。
本態様によれば、前記弾性部材は、前記第1対向部を押圧する第1弾性部材と、前記第2対向部を押圧する第2弾性部材と、を有し、前記第1弾性部材の押圧力は、前記第2弾性部材の押圧力より大きいことから、前記中央領域での前記接触圧の低下を抑制できる。その結果、適切なクリーニング効果を得ることができる。
【0024】
第14の態様は、第13の態様に従属する態様であって、前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側であって、前記軸受部の外側に設けられることを特徴とする。
前記規制部が、前記軸受部の内側に設けられる場合は、前記規制部が前記軸部材に付与する力によって、前記軸部材が前記搬送ベルトから離れる方向に撓む虞があり、これにより前記幅方向における中央領域で前記接触圧が低下し易くなる。その結果、適切なクリーニング効果が得られない虞がある。
しかしながら本態様によれば、前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側であって、前記軸受部の外側に設けられることから、前記規制部が前記軸部材に付与する力によって、前記軸部材が前記搬送ベルトから離れる方向に撓むことを抑制できる。その結果、前記幅方向における中央領域で前記接触圧が低下することを抑制でき、ひいては適切なクリーニング効果を得ることができる。
【0025】
第15の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記押圧部は、前記搬送ベルトの移動方向と交差する幅方向に延びるとともに両端部において軸受部によって軸支される軸部材で構成され、前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側であって、前記軸受部の外側に設けられることを特徴とする。
【0026】
前記クリーニングウェブが前記搬送ベルトの前記第1面に接する際の接触圧は、適切に得られることが好ましい。ここで前記規制部が、前記軸受部の内側に設けられる場合は、前記規制部が前記軸部材に付与する力によって、前記軸部材が前記搬送ベルトから離れる方向に撓む虞があり、これにより前記幅方向における中央領域で前記接触圧が低下し易くなる。その結果、適切なクリーニング効果が得られない虞がある。
しかしながら本態様によれば、前記規制部は、前記幅方向において前記対向部の両側であって、前記軸受部の外側に設けられることから、前記規制部が前記軸部材に付与する力によって、前記軸部材が前記搬送ベルトから離れる方向に撓むことを抑制できる。その結果、前記幅方向における中央領域で前記接触圧が低下することを抑制でき、ひいては適切なクリーニング効果を得ることができる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第12の態様のいずれかに従属しても良い。
【0027】
第16の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記押圧部は、前記幅方向に延びるとともに両端部において軸受部によって軸支される軸部材で構成され、前記対向部を前記搬送ベルトに向けて押圧する弾性部材であって、受け面と前記対向部との間で押圧力を生じさせる弾性部材を前記幅方向に沿って複数備え、前記受け面は、前記幅方向における中央部が、前記中央部に対する両側よりも、前記軸部材の方向に突出することを特徴とする。
【0028】
前記クリーニングウェブが前記搬送ベルトの前記第1面に接する際の接触圧は、適切に得られることが好ましい。しかしながら前記押圧部が、前記幅方向に延びるとともに両端部において軸支される軸部材で構成される場合、前記軸部材が撓むことで前記幅方向における中央領域で前記接触圧が低下し易くなる。その結果、適切なクリーニング効果が得られない虞がある。
本態様によれば、前記受け面は、前記幅方向における中央部が、前記中央部に対する両側よりも、前記軸部材の方向に突出することから、前記中央領域での前記接触圧の低下を抑制できる。その結果、適切なクリーニング効果を得ることができる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第3から第7の態様のいずれかに従属しても良い。
【0029】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では記録用紙に代表される媒体に対し、インクに代表される液体を吐出することで記録を行うインクジェットプリンター1を、液体吐出装置の一例として説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。
【0030】
各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であって、Y軸方向が媒体の搬送方向と交差する幅方向であり、また装置奥行き方向である。またY軸方向は、後述する搬送ベルト33及びクリーニングウェブ51の幅方向となる。尚、Y軸方向のうち+Y方向を装置前面から装置背面に向かう方向とし、-Y方向は装置背面から装置前面に向かう方向とする。
またX軸方向は装置幅方向であり、プリンター1の操作者から見て矢印の向く方向である+X方向が左側、その反対の-X方向が右側となる。Z軸方向は鉛直方向即ち装置高さ方向であり、矢印の向く方向である+Z方向が上方向、その反対の-Z方向が下方向となる。
【0031】
またG軸方向は後述するラインヘッド26のインク吐出面26aに対する法線方向である。またF軸方向はインク吐出面26aに平行な方向であって、インク吐出面26aと対向する位置における媒体搬送方向であり、矢印の向く方向である+F方向が搬送方向下流となり、その反対の-F方向が搬送方向上流となる。一部の図では、X-Y-Z座標系に代えて、F-G-Y座標系を用いることとする。
尚、以下では媒体が送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。
【0032】
図1において媒体搬送経路は破線で示されている。プリンター1において媒体は、破線で示す媒体搬送経路を通って搬送される。
プリンター1は装置本体2の下部に増設ユニット3を連結可能に構成されている。装置本体2は、下部に媒体を収容する第1媒体カセット4Aを備えており、増設ユニット3を連結した場合、更にその下に第2媒体カセット4B及び第3媒体カセット4Cが設けられる。符号Pは、各媒体カセットに収容される媒体を示している。各媒体カセットは、装置前方側から着脱可能に設けられている。
【0033】
第1媒体カセット4Aに対しては、収容された媒体を送り出すピックローラー10Aが設けられ、第2媒体カセット4Bに対しては、収容された媒体を送り出すピックローラー10Bが設けられ、第3媒体カセット4Cに対しては、収容された媒体を送り出すピックローラー10Cが設けられている。
【0034】
また第1媒体カセット4Aに対しては、送り出された媒体を斜め上方向に給送する給送ローラー対11Aが設けられている。また第2媒体カセット4Bに対しては、送り出された媒体を斜め上方向に給送する給送ローラー対11Bと、媒体を上方向に搬送する搬送ローラー対14とが設けられている。また第3媒体カセット4Cに対しては、送り出された媒体を斜め上方向に給送する給送ローラー対11Cと、媒体を上方向に搬送する搬送ローラー対13とが設けられている。
尚、以下では「ローラー対」とは、特に説明しない限り不図示のモーターによって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成されるものとする。
【0035】
各媒体カセットから送り出された媒体は、搬送ローラー対16に送られる。搬送ローラー対16から送り力を受ける媒体は、ラインヘッド26と、搬送ベルト33との間、つまりラインヘッド26と対向する位置に送られる。
【0036】
ヘッドユニット25はラインヘッド26を備えており、ラインヘッド26は、媒体の面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する。ヘッドユニット25は不図示の駆動源によってG軸方向に移動可能に設けられている。ラインヘッド26は、インクを吐出するインク吐出面26aにインク吐出ノズル(不図示)が配置されている。ラインヘッド26は、インク吐出ノズル(不図示)が媒体幅方向の全域をカバーする様に配置されたインク吐出ヘッドであり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。ラインヘッド26は、液体を吐出する液体吐出部の一例である。
但しインク吐出ヘッドは媒体幅方向への移動を伴って記録を行うタイプであっても良い。
【0037】
ヘッドユニット25に対し+X方向には、インクを収容する複数のインクカートリッジ5と、インクカートリッジ5が着脱可能な装着部6と、インク流路においてインクカートリッジ5とラインヘッド26との間に位置する部位であってインクカートリッジ5から供給されたインクを貯留するリザーバタンク7とが設けられている。インクカートリッジ5は、装置前方側から着脱可能である。
リザーバタンク7に貯留されたインクは、不図示のインクチューブを介してラインヘッド26へと供給される。
【0038】
また符号8はメンテナンスボックスを示している。メンテナンスボックス8は不図示のメンテナンス部と、不図示のインクチューブによって接続されており、ラインヘッド26からメンテナンス部に対して吐出されたインク(廃インク)がメンテナンスボックス8へと送られ、貯留される。
メンテナンスボックス8は、装置前方側から着脱可能である。
【0039】
搬送ベルト33、駆動軸31、及び従動軸32は、ベルトユニット30を構成する。搬送ベルト33は、駆動軸31と従動軸32とに掛け回される無端ベルトである。搬送ベルト33は、駆動軸31がベルト駆動モーター(不図示)により駆動されることで回転する。
媒体は、搬送ベルト33に吸着されつつラインヘッド26のインク吐出面26aと対向する位置を搬送される。
【0040】
ここでラインヘッド26と対向する位置を通る媒体搬送経路は、水平方向及び鉛直方向の双方に対して交差しており、斜め上方向に媒体を搬送する構成である。この斜め上向きの搬送方向は、図1において-X方向成分と+Z方向成分とを含む方向であり、このような構成により、プリンター1の水平方向寸法を抑制できる。
尚本実施形態では、G軸方向の水平方向に対する傾斜角αが、45°より小さく、より具体的には概ね15°となっている。
【0041】
ラインヘッド26により第1面に記録が行われた媒体は、搬送ベルト33の下流に位置する搬送ローラー対17により、更に斜め上方向に送られる。
搬送ローラー対17の下流にはフラップ23が設けられており、このフラップ23によって媒体の搬送方向が切り換えられる。媒体をそのまま排出する場合は、媒体の搬送経路はフラップ23によって上方の排出ローラー対24に向かう様に切り換えられる。
排出ローラー対24に送られた媒体は排出ローラー対24によって胴内排出部28に排出され、排出トレイ27によって支持される。
【0042】
媒体の第1面に加えて更に第2面に記録を行う場合、媒体は、フラップ23によって-X方向成分と+Z方向成分とを含む斜め上方向に送られ、分岐位置K1を通り、分岐位置K1から上方のスイッチバック経路に送られる。このスイッチバック経路には搬送ローラー対22A、22Bが設けられており、スイッチバック経路に入った媒体は、搬送ローラー対22A、22Bによって下流に搬送され、そして媒体の上流端が分岐位置K1を通過したら、搬送ローラー対22A、22Bの回転方向が切り換えられ、これにより媒体は下方向に搬送される。
【0043】
搬送ローラー対22A、22Bによって下方向に搬送された媒体は搬送ローラー対18、19、15から送り力を受けて搬送ローラー対16に到達し、搬送ローラー対16によって再び搬送ベルト33に送られる。
再びラインヘッド26と対向する位置に送られた媒体は、既に記録が行われた第1面に対し反対側の第2面がラインヘッド26と対向する。これにより、媒体の第2面に対しラインヘッド26による記録が可能となる。
【0044】
続いて、図2以降を参照してベルトユニット30及びクリーニング部50について説明する。クリーニング部50はクリーニングウェブ51を有するクリーニング部の一例である。
ベルトユニット30を構成する搬送ベルト33は、外側の第1面Saと内側の第2面Sbとを有する無端状のベルトであって、駆動軸31と従動軸32とに掛け回されている。搬送ベルト33は、ウレタンやゴム等からなるベース材に、抵抗値を調整する為に必要に応じて導電材が含有されて成る。
【0045】
駆動軸31は制御部90(図10参照)により制御されるベルト駆動モーター(不図示)により回転駆動される。駆動軸31が矢印a方向に回転駆動されると、搬送ベルト33が図2図3の時計回り方向に回転する。以下ではこの搬送ベルト33の回転を「正転」と言う場合がある。
駆動軸31が矢印b方向に回転駆動されると、搬送ベルト33が図2図3の反時計回り方向に回転する。以下ではこの搬送ベルト33の回転を「逆転」と言う場合がある。
【0046】
搬送ベルト33の内側にはベースフレーム35が設けられている。ベースフレーム35にはバックアッププレート35aが設けられ、搬送ベルト33においてラインヘッド26と対向する部分がバックアッププレート35aによって支持される。
ベースフレーム35には、スライドフレーム36がF軸方向に沿ってスライド可能に支持され、スライドフレーム36に従動軸32が支持されている。ベースフレーム35には、スライドフレーム36を+F方向に押圧する押圧部材である圧縮ばね39(図5参照)が設けられており、これにより従動軸32が+F方向に押圧され、そして搬送ベルト33にテンションが付与される。
【0047】
搬送ベルト33は駆動軸31と従動軸32とに掛け回されたことで、平坦状のベルト区間として第1区間33aと第2区間33bとが形成される。第1区間33aはラインヘッド26と対向する区間であり、第2区間33bは第1区間33aに対して反対側の区間である。
【0048】
搬送ベルト33が正転すると、搬送ベルト33の第1区間33aは+F方向に移動し、第2区間33bは-F方向に移動する。即ち搬送ベルト33が正転する際、第1区間33aでは-F方向がベルト移動方向の上流となり、+F方向がベルト移動方向の下流となり、また第2区間33bでは+F方向がベルト移動方向の上流となり、-F方向がベルト移動方向の下流となる。
搬送ベルト33が逆転すると、搬送ベルト33の第1区間33aは-F方向に移動し、第2区間33bは+F方向に移動する。即ち搬送ベルト33が逆転する際、第1区間33aでは+F方向がベルト移動方向の上流となり、-F方向がベルト移動方向の下流となり、また第2区間33bでは-F方向がベルト移動方向の上流となり、+F方向がベルト移動方向の下流となる。
【0049】
次に、搬送ベルト33を挟んで駆動軸31と対向する位置には、帯電ローラー29が設けられている。
帯電ローラー29は搬送ベルト33の外面である第1面Saに接触しており、搬送ベルト33の回転に応じて従動回転する。帯電ローラー29には、不図示の電圧印加部により直流電圧が印加され、これにより帯電ローラー29は搬送ベルト33に接触している部位に電荷を供給する。
本実施例では帯電ローラー29は搬送ベルト33に正の電荷を供給し、搬送ベルト33の第1面Saをプラス極性に帯電させ、これにより搬送ベルト33の第1面Saが媒体を吸着する吸着面となる。
但し搬送ベルト33によって媒体を搬送する構成はこの様な静電吸着方式に限らず、エアー吸引方式等の他の方式であっても良い。
【0050】
ラインヘッド26の上流側には媒体に接触するサポートローラー34が設けられている。サポートローラー34は、搬送ベルト33のうち駆動軸31に巻き掛けられた部位に媒体を押し付ける。尚、サポートローラー34は接地され、これにより媒体の記録面側の電荷が除去される。
【0051】
次に、搬送ベルト33の第2区間33bと対向する位置には、クリーニング部50が設けられている。クリーニング部50は、クリーニングウェブ51を備えている。クリーニングウェブ51は、駆動軸52、押圧軸53、及び従動軸54に掛け回されるとともに、テンショナー55によってテンションが付与されている。本実施形態において駆動軸52、押圧軸53、従動軸54、及びテンショナー55は、いずれもY軸方向に延びる1本の軸体で構成されている。
【0052】
クリーニングウェブ51は、本実施形態では無端状の布帛であり、押圧軸53によって搬送ベルト33の第1面Saに押し当たることができる。駆動軸52はシート駆動モーター(不図示)により回転駆動される。駆動軸52は図2図3の時計回り方向に回転駆動され、これによりクリーニングウェブ51が図2図3の時計回り方向に回転する。
【0053】
クリーニング部50は回転フレーム57を備えている。上述した駆動軸52、押圧軸53、従動軸54、のこれらは回転フレーム57に設けられ、全体がユニット体として構成されている。回転フレーム57はY軸方向に延びる回転軸58を中心に回転可能に設けられ、回転することで押圧軸53が搬送ベルト33に対して進退する。
【0054】
回転軸58は図4に示すメインフレーム44に設けられている。メインフレーム44と回転フレーム57との間には、押圧部材の一例である引っ張りばね60が設けられ、引っ張りばね60は回転フレーム57の-F方向端部に対し+G方向成分を含む押圧力を付与する。引っ張りばね60は、回転フレーム57に対し+Y方向の端部と-Y方向の端部とに配置されており、図4は回転フレーム57に対し+Y方向の端部に配置された引っ張りばね60を示している。尚、回転フレーム57に対し-Y方向の端部にも配置された引っ張りばね60は図示を省略する。
引っ張りばね60は、押圧軸53を搬送ベルト33の内側に向けて押圧する第1押圧手段を構成する。
【0055】
また回転フレーム57の-F方向端部に臨む位置にはカム66が配置されている。カム66はY軸方向に延びるカム軸65に固定されており、カム軸65の回転に伴って回転する。
カム66は、回転フレーム57に対し+Y方向の端部と-Y方向の端部とに配置されており、図4は回転フレーム57に対し+Y方向の端部に配置されたカム66を示している。尚、回転フレーム57に対し-Y方向の端部に配置されたカム66は図示を省略する。
【0056】
以上の構成において、カム66が回転フレーム57の-F方向端部を-G方向に押し下げる状態では、図2に示す様に押圧軸53が搬送ベルト33から離間し、クリーニング部50はクリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saから離間する非クリーニング状態となる。尚、この場合の押圧軸53の位置を第1位置とする。
【0057】
クリーニング部50は、非クリーニング状態においてカム66が回転して回転フレーム57の-F方向端部を-G方向に押し下げる状態が解消されると、引っ張りばね60の押圧力によって回転フレーム57の-F方向端部が+G方向に移動する様に回転フレーム57が回転する。これにより図3に示す様に押圧軸53が搬送ベルト33の側に進出し、クリーニング部50はクリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saと接触するクリーニング状態となる。尚、この場合の押圧軸53の位置を第2位置とする。
以上により押圧軸53は、第1面Saに対し交差する方向であるG軸方向に移動することで、第1面Saのクリーニングを行わない第1位置と、第1面Saのクリーニングを行う第2位置とに変位する。
【0058】
クリーニング部50のクリーニング状態では、クリーニングウェブ51が押圧軸53によって搬送ベルト33に押し付けられる。この状態で搬送ベルト33が正転するとともにクリーニングウェブ51が図3の時計回り方向に回転することで搬送ベルト33の第1面Saがクリーニングされる。即ちクリーニングウェブ51は、搬送ベルト33の第1面Saに接しながら第1面Saに対して相対移動することで第1面Saのクリーニングを行う。
【0059】
次に、図2図3に戻りクリーニング部50に対して-F方向には紙粉除去ワイパー70が設けられている。紙粉除去ワイパー70は一例としてPET(ポリエチレンテレフタレート)製のシート材により形成されており、搬送ベルト33の正転方向に対して逆らう様な向きに配置されている。紙粉除去ワイパー70は固定的に設けられ、常に搬送ベルト33に対して接触し、搬送ベルト33に付着した紙粉を除去する。
符号72は、除去された紙粉を回収する回収箱である。また符号71は、搬送ベルト33を逆転させた際に紙粉除去ワイパー70に付着した紙粉が搬送ベルト33に移動して上流側に向かわない様にする為の接触シートである。
【0060】
続いて搬送ベルト33とクリーニングウェブ51とをニップする押圧部と対向部について詳述する。
上述した押圧軸53は押圧部の一例であり、上述した様にクリーニング部50のクリーニング状態においてクリーニングウェブ51を搬送ベルト33の第1面Saに向けて押圧する。
搬送ベルト33の内側には、対向部の一例であるバックアップ部材37が設けられている。バックアップ部材37は、搬送ベルト33の内側において、ベースフレーム35に設けられる。バックアップ部材37は、クリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saに接する位置において第2面Sbに当接する位置に設けられている。
【0061】
バックアップ部材37は、第2位置に位置する押圧軸53との間で搬送ベルト33とクリーニングウェブ51とをニップし、クリーニングウェブ51による第1面Saのクリーニングを補助する。
バックアップ部材37は、ベースフレーム35においてG軸方向に変位可能に設けられているとともに、圧縮ばね38によって第2面Sbに向けて押圧されている。圧縮ばね38は、バックアップ部材37を第2面Sbに向けて押圧する第2押圧手段を構成する。
【0062】
バックアップ部材37は、図5に示す様にY軸方向即ちベルト幅方向に沿って複数設けられている。バックアップ部材37に押圧力を付与する圧縮ばね38は、図示は省略するが本実施形態では一つのバックアップ部材37に対して二つ設けられている。
【0063】
図6に示す様にバックアップ部材37には被係止部37aが形成されており、被係止部37aがベースフレーム35に形成された係止部35bに当接することで、バックアップ部材37の押圧軸53側への突出が規制されている。
【0064】
図6の上の図は、クリーニング部50の非クリーニング状態であり、この状態では押圧軸53がバックアップ部材37から離間した第1位置にある。またバックアップ部材37は圧縮ばね38の押圧力によって被係止部37aが係止部35bに当接した状態にある。この状態ではバックアップ部材37と搬送ベルト33との間に隙間が形成され、バックアップ部材37は搬送ベルト33を押圧軸53側に押圧しない。従って搬送ベルト33はバックアップ部材37と対向する部位においてF軸方向に沿って直線状を成している。
【0065】
この状態から押圧軸53がバックアップ部材37に向けて変位する際、押圧軸53が搬送ベルト33とクリーニングウェブ51とをニップした状態になると、複数のバックアップ部材37が押圧軸53を-G方向に押圧し、また押圧軸53が複数のバックアップ部材37を+G方向に押圧する状態となる。この状態において押圧軸53が複数のバックアップ部材37を+G方向に押圧する押圧力が、複数のバックアップ部材37が押圧軸53を-G方向に押圧する押圧力より強くなる様に、圧縮ばね38と引っ張りばね60(図4参照)のそれぞれのばね力が設定されている。
従って図6の上の図から図6の下の図への変化で示す様に、引っ張りばね60(図4参照)が圧縮ばね38による押圧力に抗して押圧軸53を押圧することにより、押圧軸53が第1位置から第2位置へと移動する。
【0066】
押圧軸53の第1位置から第2位置への移動に伴い、搬送ベルト33がクリーニングウェブ51を介して押圧軸53に角度α1の範囲で巻き付く状態となる。この状態において、クリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saに対する接触面積が最も大きくなる。
角度α1は、後述する規制部材81が押圧軸53の第2位置を規制する位置を調整することで増減させることができる。角度α1は、一例として30°~110°の範囲に設定することができる。勿論、角度α1の範囲はこれに限られずその他の値に設定しても良い。
【0067】
以上の様にクリーニングウェブ51を挟んで配置された押圧軸53とバックアップ部材37とがともに移動可能であり、双方の移動を伴って押圧軸53が第2位置に位置する際に、クリーニングウェブ51の第1面Saに対する接触面積が最も大きくなる構成である為、前記接触面積を容易に増大させることができる。そしてその状態において搬送ベルト33の第1面Saのクリーニングを行う為、第1面Saのクリーニング性が向上するとともに、搬送ベルト33の摩耗を抑制して搬送ベルト33の寿命を延ばすことができる。
【0068】
続いて押圧軸53の第2位置を規制する規制部の一例である規制部材81について説明する。
図5図7Aに示す様にベースフレーム35には、規制部材81が設けられている。規制部材81は、本実施形態ではY軸方向においてバックアップ部材37の両側に設けられている。
図7Bに示す様にベースフレーム35には規制部材81を受け入れる装着部35cが形成されており、規制部材81は装着部35cに対して着脱可能に設けられる。
【0069】
規制部材81は図8に示す様に本体部81bに、+G方向に延びる腕部81c、81cを一体に備えている。腕部81c、81cは弾性変形可能であり、弾性変形することで互いに接近し或いは離間することができる。腕部81cの上端にはフック部81dが形成されている。
ベースフレーム35には係止部35e、35eが形成されており、図8に示す様にフック部81dが係止部35eに引っ掛かることで、規制部材81が装着状態となる。規制部材81は、図8の装着状態において腕部81c、81cを互いに接近する方向に弾性変形させると、フック部81dが係止部35eから外れ、規制部材81を-G方向に引き抜くことができる。以上の様に規制部材81はスナップフィットによってベースフレーム35に対して着脱可能に構成されている。符号81eはフック部81dにおいて係止部35eと係合する係合面であり、係合面81eはF軸方向とG軸方向の双方に対して交差する傾斜面で形成されている。
【0070】
ベースフレーム35には図7Bに示す様に規制面35dが形成されており、規制部材81がベースフレーム35に装着された際に規制部材81の本体部81bが規制面35dに当接することで、規制部材81のG軸方向位置が定まる。
尚、図8を参照した様にフック部81dにおいて係止部35eと係合する係合面81eが、F軸方向とG軸方向の双方に対して交差する傾斜面で形成されている。この為、本体部81bが規制面35dに当接した状態において、フック部81dの係止部35eに対する位置が多少ずれても、フック部81dが係止部35eに適切に引っ掛かることができ、また本体部81bと規制面35dとの間に隙間が生じることを抑制できる。
【0071】
規制部材81は、詳しくは後述するが搬送ベルト33の第2面Sbと摺動する為、搬送ベルト33の第2面Sbとの間の摩擦係数が低くなる様に摺動性の良好な材料で形成することが好ましく、一例としてポリアセタール樹脂(POM:polyoxymethylene)により形成される。但し規制部材81がそれ以外の材料で形成されても良いことは勿論である。例えば規制部材81において搬送ベルト33の第2面Sbと摺動する面は規制面81aである為、規制面81aに摺動性の良好なシート材等を貼り付けても良い。
またバックアップ部材37も搬送ベルト33の第2面Sbと摺動する為、搬送ベルト33の第2面Sbとの間の摩擦係数が低くなる様に摺動性の良好な材料で形成することが好ましく、本実施形態では規制部材81と同様にポリアセタール樹脂により形成されている。
【0072】
次に、規制部材81の機能について図9を参照して説明する。図9の上の図は、クリーニング部50の非クリーニング状態、即ち押圧軸53の第1位置を示している。尚、図9では図示の便宜上、クリーニングウェブ51を破線で示している。
この状態では、クリーニングウェブ51と搬送ベルト33の第1面Saとの間には隙間d0が形成されている。また搬送ベルト33の第2面Sbとバックアップ部材37との間には隙間d1が形成され、搬送ベルト33の第2面Sbと規制部材81の規制面81aとの間には隙間d2が形成されている。隙間d2は隙間d1より大きく、これによりバックアップ部材37は規制部材81に対し-G方向に突出した状態にある。
尚、図示する様に本実施形態において規制部材81は搬送ベルト33の幅方向において搬送ベルト33の内側に配置されている。また搬送ベルト33の幅方向において、規制部材81の一部が押圧軸53の配置領域と重なっている。
【0073】
この状態から押圧軸53が搬送ベルト33に進出すると、隙間d0が解消されてクリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saに接し、次いで隙間d1が解消されて搬送ベルト33の第2面Sbがバックアップ部材37に接する。
ここで上述した様に押圧軸53はバックアップ部材37を+G方向に押し上げる。これにより、隙間d2が解消されて搬送ベルト33の第2面Sbと規制部材81の規制面81aとが接し、押圧軸53が搬送ベルト33とクリーニングウェブ51とを介して規制部材81に当接した状態となる。これによって、図9の下の図に示す様に押圧軸53の第2位置が規制される。
【0074】
この状態、即ちクリーニングウェブ51が押圧軸53によって搬送ベルト33に押し付けられた状態で、搬送ベルト33が正転するとともにクリーニングウェブ51が図3の時計回り方向に回転することで搬送ベルト33の第1面Saがクリーニングされる。
【0075】
以上の様に押圧軸53は、第1面Saに対し交差する方向(G軸方向)に移動することで、第1面Saのクリーニングを行わない第1位置と、第1面Saのクリーニングを行う第2位置とに変位可能である。またバックアップ部材37は、押圧軸53の第1位置から第2位置への移動に伴い、第2面Sbと接する位置が第1位置から第2位置に向かう方向(+G方向)に移動可能である。そしてクリーニングウェブ51は、押圧軸53が第2位置に位置する際に、第1面Saに対する接触面積が最も大きくなり、押圧軸53の第2位置は、押圧軸53の、第1位置から第2位置へ向かう方向(+G方向)の移動を規制する規制部材81によって規定される。
この様な構成により、上述した様にクリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saに接する接触面積を容易に増大させることができ、その結果高いクリーニング効果を得ることができる。
また押圧軸53の第2位置は、押圧軸53の、第1位置から第2位置へ向かう方向の移動を規制する規制部材81によって規定されることから、第2位置のばらつきを抑制でき、ひいては搬送ベルト33とクリーニングウェブ51との間の接触面積のばらつきを抑制できる。その結果、クリーニング効果のばらつきや、搬送ベルト33を駆動するベルト駆動モーター(不図示)の必要トルクのばらつきを抑制することができる。
【0076】
また本実施形態においてバックアップ部材37は、搬送ベルト33の移動方向と交差する幅方向に沿って複数設けられることから、以下の作用効果が得られる。即ちバックアップ部材37が、搬送ベルト33の移動方向と交差する幅方向(Y軸方向)に沿って延設されていると、部品公差等によってクリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saに接する際の接触圧がばらつき易くなり、ひいてはクリーニング効果にばらつきが生じる虞がある。しかしながらバックアップ部材37は、搬送ベルト33の移動方向と交差する幅方向に沿って複数設けられることから、接触圧のばらつきを抑制でき、その結果クリーニング効果のばらつきを抑制できる。
【0077】
また規制部材81は、幅方向においてバックアップ部材37の両側に設けられている。このことにより、押圧軸53の第2位置の幅方向でのばらつきを抑制でき、幅方向でのクリーニング効果のばらつきを抑制できる。
但しこの様な構成に限られず、例えば規制部材81が幅方向において中央領域にのみ設けられていても良い。また或いは、規制部材81が幅方向においてバックアップ部材37の両側に設けられるとともに、更に中央領域にも設けられていても良い。
また規制部材81が幅方向においてバックアップ部材37の両側ではなく一方側にのみ設けられていても良い。但し規制部材81が幅方向においてバックアップ部材37の両側に設けられることで、上記の様に押圧軸53の第2位置の幅方向でのばらつきを抑制でき、好適である。
【0078】
また規制部材81は、搬送ベルト33の内側に設けられ、搬送ベルト33を介して押圧軸53の移動を規制する構成である。この為、規制部材81を設けることに伴う装置の大型化を抑制できる。
但しこの様な構成に限られず、幅方向において規制部材81の一部のみが搬送ベルト33の内側に設けられていても良く、或いは規制部材81の全部が搬送ベルト33の外側に設けられていても良い。
【0079】
また本実施形態において規制部材81は、ポリアセタール樹脂により形成される。このことにより、規制部材81が搬送ベルト33の内面即ち第2面Sbに接触する際の摩擦抵抗を小さくすることができ、搬送ベルト33を駆動するベルト駆動モーターの負荷を抑制することができる。
【0080】
また本実施形態において規制部材81は、スナップフィットによって着脱可能である。これにより、規制部材81の着脱が容易であるとともに、規制部材81を寸法の異なるものに付け替え、規制面81aのG軸方向位置を変更することで押圧軸53の第2位置を調整でき、ひいてはクリーニング効果を調整することができる。
但し規制部材81の固定構造はスナップフィットに限られず、ねじ固定等の他の固定構造を採用しても良いことは勿論である。
【0081】
また本実施形態において押圧軸53が第1位置に位置する際、バックアップ部材37は、搬送ベルト33の第2面Sbとの間に隙間d1を形成する。このことにより、バックアップ部材37と搬送ベルト33の摩耗を抑制することができる。
但しこの様な構造に限られず、押圧軸53が第1位置に位置する際、バックアップ部材37が搬送ベルト33の第2面Sbに接触していても良い。
【0082】
また押圧軸53は、引っ張りばね60(図4参照)によって搬送ベルト33の内側に向けて押圧され、バックアップ部材37は、圧縮ばね38(図6参照)によって搬送ベルト33の第2面Sbに向けて押圧され、引っ張りばね60が圧縮ばね38による押圧力に抗して押圧軸53を押圧することにより、押圧軸53が第1位置から第2位置へと移動する構成である。このことによりモーター等の動力源を用いずに押圧軸53を第1位置から第2位置へと移動させることができ、装置のコストアップを抑制できる。
但しモーター等の動力源を用いて押圧軸53を第1位置と第2位置との間で変位させる様に構成しても良い。
【0083】
また本実施形態において引っ張りばね60(図4参照)は、ユニットとして構成されたクリーニング部50を押圧する。これにより以下の作用効果が得られる。
クリーニングウェブ51を、押圧軸53を含めた複数の巻き掛け部位に巻き掛けるとともにテンションを付与する構成の場合、押圧軸53のみが変位するとクリーニングウェブ51のテンションが変化し易くなり好ましくない。
しかしながら本実施形態では、引っ張りばね60(図4参照)は、ユニットとして構成されたクリーニング部50を押圧する構成であり、即ち押圧軸53を直接押圧するのではなくユニット全体を押圧する構成である。この為、クリーニングウェブ51の巻き掛け状態を維持したまま押圧軸53を搬送ベルト33の内側に向けて押圧することができ、これによりクリーニングウェブ51に付与されたテンションを容易に維持することができる。
但し押圧軸53を単体で変位させても良いことは勿論である。
【0084】
尚、本実施形態では押圧軸53は、搬送ベルト33の移動方向と交差する方向である幅方向に沿って延びる。そしてバックアップ部材37が、一つの押圧軸53に対し幅方向に沿って複数設けられることから、押圧軸53とバックアップ部材37とで搬送ベルト33とクリーニングウェブ51をニップする際のニップ力が幅方向で偏り難く、適切に搬送ベルト33をクリーニングすることができる。
尚、この様な構成に代えて、押圧軸53を搬送ベルト33の幅方向に沿って複数設けても良い。
【0085】
また本実施形態では、クリーニングウェブ51は、押圧軸53と、回転駆動される駆動軸52とを含む複数の巻き掛け部位に巻き掛けられるとともに、駆動軸52の回転に伴って回転し、押圧軸53は、クリーニングウェブ51と接して回転する構成であることから、クリーニングウェブ51の摩耗を抑制できる。
【0086】
次いで図10図11を参照して規制部材が押圧軸53の第2位置を調整可能な構成について説明する。図10図11に示す規制部材82は、上述した規制部材81の他の実施形態である。
図10において規制部材82は、ベースフレーム35に設けられた不図示のガイド部によってG軸方向に沿って変位可能に設けられている。規制部材82は、押圧部材の一例である引っ張りばね87によって+G方向に押圧されているとともに、偏心カム85に当接することでG軸方向位置が規制されている。
【0087】
偏心カム85は回転軸86を中心に回転可能であり、回転軸86は駆動源の一例であるモーター89によって回転する。モーター89は、制御部90によって制御される。尚、回転軸86には不図示の回転検出手段が設けられており、制御部90は前記回転検出手段の検出情報をもとに、偏心カム85の位相を検出できる。
【0088】
回転軸86の回転に伴い偏心カム85が回転すると、偏心カム85による規制部材82のG軸方向における規制位置が変更され、規制部材82がG軸方向に沿って変位する。二点鎖線及び符号82-1は、実線及び符号82で示す規制部材が一例として+G方向に変位した状態を示す。
規制部材82が+G方向に変位すると、押圧軸53の第2位置は+G方向にシフトする。これにより図6(B)に示す角度α1が大きくなるとともに、クリーニングウェブ51が搬送ベルト33の第1面Saに接する際の接触圧も大きくなり、クリーニング効果が高まる。
【0089】
プリンター1は温湿度センサー(不図示)を備えており、制御部90は温湿度センサーの情報をもとに、モーター89を制御して規制部材82をG軸方向に変位させる。
図11は温度及び湿度に基づく領域を示すものであり、領域A1、A2は温度0℃以上T1℃未満の領域であり、領域A3、A4は温度T1℃以上Tm℃以下の領域である。また領域A2、A3は湿度0%以上H1%未満の領域であり、領域A1、A4は湿度H1%以上100%以下の領域である。温度T1及び湿度H1は適宜設定できるが、一例として温度T1は25℃を採用でき、また湿度H1は35%を採用できる。
領域A1は標準的な室内環境であり、この領域A1を基準として、領域A2は低湿環境となり、領域A3は高温低湿環境となり、領域A4は高温環境となる。
【0090】
領域A2、A3の場合、領域A1よりも低湿環境である為インクが固化し易く、搬送ベルト33のクリーニング効果を高める必要がある。また領域A4の場合、領域A1よりも高温環境である為インクの水分の蒸発によってインクが固化し易く、搬送ベルト33のクリーニング効果を高める必要がある。搬送ベルト33のクリーニング効果は、一例として領域A1に比べて領域A3を最も高める必要があり、次いで領域A2及び領域A4を高める必要がある。
従って領域A1での規制部材82の位置を標準位置とすると、領域A3での規制部材82の位置は最も+G方向に設定し、領域A2及び領域A4での規制部材82の位置は、領域A1での位置と領域A3での位置との間に設定することが好ましい。
【0091】
上記各領域での規制部材82の位置、換言すれば偏心カム85の位相に係わる情報は、制御部90が備える不図示の不揮発性メモリに保存されており、制御部90は取得した温湿度情報をもとにしてモーター89を制御し、規制部材82を変位させて、押圧軸53の第2位置を調整する。
【0092】
尚、規制部材82による押圧軸53の第2位置の調整は、温度及び湿度のうち少なくとも一方のみに基づいて行っても良い。また規制部材82による押圧軸53の第2位置の調整は、温度及び湿度を含む環境情報に代えて、或いは環境情報に加えて、記録情報に基づいて行っても良い。記録情報の一例として、記録デューティや累積記録枚数が挙げられる。記録情報として、記録デューティ及び累積記録枚数の双方を用いても良いし、いずれか一方のみを用いても良い。
記録デューティとは、記録面の単位面積当たりをインクが覆う割合であり、例えば、50%の記録デューティであれば、記録面の単位面積の50%がインクで覆われることとなる。但し記録デューティは、単位面積当たりに形成可能なドットに対し実際に形成されたドットの割合としても良い。
累積記録枚数は、プリンター1の使用開始時点からの記録枚数の累積値でも良いし、前回搬送ベルト33をクリーニングした時点からの記録枚数の累積値でも良い。
【0093】
記録デューティが高いほど、また累積記録枚数が多いほど、搬送ベルト33がインクによって汚損された程度が顕著である可能性が高い。従って記録デューティが高いほど、また累積記録枚数が多いほど、規制部材82の位置即ち押圧軸53の第2位置は+G方向に設定されることが好ましい。
記録デューティや累積記録枚数に基づいた規制部材82の位置、換言すれば偏心カム85の位相に係わる情報は、制御部90が備える不図示の不揮発性メモリに保存されており、制御部90は取得した記録デューティや累積記録枚数に係わる情報をもとにしてモーター89を制御し、規制部材82を変位させて、押圧軸53の第2位置を調整する。
尚、環境情報と記録情報に基づく上記第2位置の調整は、環境情報及び記録情報の双方に基づいて行っても良いし、いずれか一方のみに基づいて行っても良い。
【0094】
以上の様に規制部材82は、押圧軸53の第2位置を調整可能に設けられていることから、クリーニング効果を調整することができる。
また規制部材82は、駆動源であるモーター89から動力を得て押圧軸53の第2位置を調整可能であり、モーター89を制御する制御部90は、環境情報および記録情報の少なくとも一方に基づき、モーター89を制御し、上記第2位置が調整されることから、より適切なクリーニング効果を得ることができる。
【0095】
また記録情報には、記録デューティ及び累積記録枚数の少なくとも一方が含まれることから、記録デューティ及び累積記録枚数の少なくとも一方に基づいて適切なクリーニング効果が得られる。
【0096】
次いで図12を参照して更に規制部材の他の実施形態について説明する。
図12に示す規制部材83は、上述した規制部材81の他の実施形態である。
規制部材83は、搬送ベルト33の幅方向において搬送ベルト33の外側に設けられている。これにより、図12の上の図から図12の下の図への変化で示す様に、規制部材83は搬送ベルト33及びクリーニングウェブ51を介さずに直接押圧軸53と当接し、押圧軸53の第2位置を規定する。
この様な構成によれば、規制部材83と押圧軸53とで搬送ベルト33及びクリーニングウェブ51をニップしない為、搬送ベルト33及びクリーニングウェブ51の摩耗を抑制できる。
【0097】
次いで図13図15を参照して更に他の実施形態について説明する。
先ず、クリーニングウェブ51を搬送ベルト33の第1面Saに向けて押圧する押圧部が、幅方向に延びるとともに両端部において軸受部によって軸支される軸部材で構成される場合の課題について説明する。本実施形態において前記押圧部及び前記軸部材は、押圧軸53に相当する。
クリーニングウェブ51が搬送ベルト33に接する際の接触圧は、適切に得られることが好ましい。しかしながら押圧軸53が、図13に示す様に両端部において軸受部56によって軸支される場合、押圧軸53が図13の二点鎖線で示す様に搬送ベルト33から離れる方向に撓む虞がある。この場合、幅方向における中央領域で接触圧が低下し易くなり、適切なクリーニング効果が得られない虞がある。図13図15に示す実施形態は、この様な不具合を抑制可能な構成を備える。
尚、以下において単に接触圧と言う場合、クリーニングウェブ51が搬送ベルト33に接する際の接触圧を意味する。
【0098】
図13において、対向部の一例であるバックアップ部材37は、第1対向部としてのバックアップ部材37-1と、第2対向部としてのバックアップ部材37-2とを備える。バックアップ部材37-1は、幅方向において押圧軸53の中央領域に設けられ、バックアップ部材37-2は、幅方向においてバックアップ部材37-1の両側に設けられる。尚、バックアップ部材37-1とバックアップ部材37-2を区別する必要のない場合、バックアップ部材37と総称する。
またバックアップ部材37-1を搬送ベルト33に向けて押圧する第1弾性部材として、圧縮ばね38-1を備え、バックアップ部材37-2を搬送ベルト33に向けて押圧する第2弾性部材として、圧縮ばね38-2を備える。尚、圧縮ばね38-1と圧縮ばね38-2を区別する必要のない場合、圧縮ばね38と総称する。
尚、符号35fは、ベースフレーム35において圧縮ばね38-1、38-2を受ける受け部である。
【0099】
そして本実施形態において圧縮ばね38-1の押圧力は、圧縮ばね38-2よりも大きい。この様な構成により、幅方向における中央領域での接触圧の低下を抑制できる。その結果、適切なクリーニング効果を得ることができる。
尚、圧縮ばね38-1は、圧縮ばね38-2に比べてばね定数を高くしたり、自由長を長くしたりすることで、押圧力を圧縮ばね38-2に比べて大きくすることができる。
尚、ここでの押圧力とは、圧縮ばね38がバックアップ部材37を押圧する押圧力である。また圧縮ばね38-1の押圧力が圧縮ばね38-2よりも大きいとは、押圧軸53が撓まずに直線状を維持する場合の関係である。従って押圧軸53が撓み、押圧軸53の幅方向における中央領域がその両側よりも搬送ベルト33から離れた結果、幅方向に沿って配置された複数のバックアップ部材37が均しい圧力で搬送ベルト33に接する構成、バックアップ部材37-1がバックアップ部材37-2よりも強い圧力で搬送ベルト33に接する構成、バックアップ部材37-2がバックアップ部材37-1よりも強い圧力で搬送ベルト33に接する構成、のこれらは本実施形態に含まれる。
尚、本実施形態において、規制部材81は省略しても良い。
【0100】
次に、図14に示す実施形態は、規制部材81を、幅方向においてバックアップ部材37の両側であって、軸受部56の外側に配置した例である。この様に構成することで、規制部材81が押圧軸53に付与する力によって、押圧軸53が搬送ベルト33から離れる方向に撓むことを抑制できる。その結果、幅方向における中央領域で接触圧が低下することを抑制でき、ひいては適切なクリーニング効果を得ることができる。
【0101】
尚、図14に示す実施形態では、幅方向に沿って設けられる複数の圧縮ばね38は同一部材であるが、図13を参照して説明した様に幅方向における中央領域での圧縮ばね38の押圧力を、他の圧縮ばね38の押圧力よりも大きくしても良い。
【0102】
次に、図15に示す実施形態は、ベースフレーム35において圧縮ばね38を受ける受け面35gを、非直線状に形成したものである。具体的には、受け面35gは、幅方向における中央部が、中央部に対して両側の部位よりも、押圧軸53の方向に突出する様に形成される。この様に構成することで、幅方向における中央領域での接触圧の低下を抑制でき、その結果、適切なクリーニング効果を得ることができる。
尚、図15に示す受け面35gは、押圧軸53に向けて凸となる円弧状に形成されているが、階段状に形成されていても良い。
尚、本実施形態において、規制部材81は省略しても良い。
【0103】
更に本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0104】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…増設ユニット、4A…第1媒体カセット、4B…第2媒体カセット、4C…第3媒体カセット、5…インクカートリッジ、6…装着部、7…リザーバタンク、8…メンテナンスボックス、9…インクチューブ、10A、10B、10C…ピックローラー、11A、11B、11C…給送ローラー対、13、14、15、16、17、18、19、22A、22B…搬送ローラー対、23…フラップ、24…排出ローラー対、25…ヘッドユニット、26…ラインヘッド、27…排出トレイ、28…胴内排出部、29…帯電ローラー、30…ベルトユニット、31…駆動軸、32…従動軸、33…搬送ベルト、33a…第1区間、33b…第2区間、34…サポートローラー、35…ベースフレーム、35a…バックアッププレート、35c…装着部、35d…規制面、35e…係止部、35f…受け部、35g…受け面、36…スライドフレーム、37…バックアップ部材、38…圧縮ばね、39…圧縮ばね、44…メインフレーム、50…クリーニング部、51…クリーニングウェブ、52…駆動軸、53…押圧軸、54…従動軸、55…テンショナー、56…軸受部、57…回転フレーム、58…回転軸、60…引っ張りばね、65…カム軸、66…カム、70…紙粉除去ワイパー、71…接触シート、72…回収箱、81…規制部材、81b…本体部、81c…腕部、81d…フック部、81e当接面、82、83…規制部材、85…偏心カム、86…回転軸、87…引っ張りばね、89…モーター、90…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
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