(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076354
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】巻き上げデバイスと時計ムーブメント
(51)【国際特許分類】
G04B 11/00 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
G04B11/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189933
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】22209423.7
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クーザン、 ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌレ、 ローラン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】巻き取り部分間の摩擦を低減し、かつ良好な巻き取りトルクを保証する、バレルの巻き上げデバイスを提供する。
【解決手段】バレル2の巻き上げデバイス1であって、回転巻き上げシャフト5に取り付けられるラチェット3と、ラチェット3に噛合する巻き上げギア列4とを含み、回転巻き上げシャフト5の回転によりバレル2が巻き取られ、巻き上げギア列4の回転が、ラチェット3にトルクを及ぼすことによってラチェット3の回転及び回転巻き上げシャフト5の回転を引き起こし、巻き上げデバイス1には、ラチェット3と回転巻き上げシャフト5との接続解除手段10が設けられ、接続解除手段10がラチェット3及び回転巻き上げシャフト5に配列され、ラチェット3に及ぼされるトルクが実質的にしきい値を超えるときに、詳しくは前記バレル2が十分に巻き取られたときに、ラチェット3と回転巻き上げシャフト5とを接続解除するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
詳しくはばねが設けられたバレル(2)の巻き上げデバイス(1)であって、
回転巻き上げシャフト(5)に取り付けられるラチェット(3)と、前記ラチェット(3)に噛合する巻き上げギア列(4)とを含み、
前記回転巻き上げシャフト(5)は、例えば、前記バレル(2)の巻き上げシャフトであり、その回転により前記バレル(2)が巻き取られ、前記巻き上げギア列(4)の回転が、前記ラチェット(3)にトルクを及ぼすことによって前記ラチェット(3)の回転及び前記回転巻き上げシャフト(5)の回転を引き起こし、前記巻き上げデバイス(1)には、前記ラチェット(3)と前記回転巻き上げシャフト(5)との接続解除手段(10)が設けられ、
特徴は、前記接続解除手段(10)が前記ラチェット(3)及び前記回転巻き上げシャフト(5)に配列され、前記ラチェット(3)に及ぼされるトルクが実質的にしきい値を超えるときに、詳しくは前記バレル(2)が十分に巻き取られたときに、前記ラチェット(3)と前記回転巻き上げシャフト(5)とを接続解除するように構成されることにある、巻き上げデバイス。
【請求項2】
前記接続解除手段(10)が複数の可撓性爪(15)及び第1セットの歯(6)を含み、前記可撓性爪(15)が前記第1セットの歯(6)と協働して前記ラチェット(3)のトルクを前記回転巻き上げシャフト(5)に伝えて前記回転巻き上げシャフト(5)を回転させることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項3】
前記トルクがしきい値を下回る場合に前記可撓性爪(15)が前記第1セットの歯(6)に係合することを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項4】
前記可撓性爪(15)が、前記トルクが実質的に前記しきい値よりも大きいときに曲がることにより、前記可撓性爪(15)がもはや前記第1セットの歯(6)に噛合しなくなり、前記ラチェット(3)の回転がもはや前記回転巻き上げシャフト(5)を駆動しなくなることを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項5】
前記第1セットの歯(6)が前記回転巻き上げシャフト(5)に配列され、前記可撓性爪(15)が前記ラチェット(3)に配列されることを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項6】
前記ラチェット(3)が、前記可撓性爪(15)が配列されるハブ(7)を含み、前記可撓性爪(15)が前記回転巻き上げシャフト(5)に向かって延びることを特徴とする、請求項5に記載の巻き上げデバイス。
【請求項7】
前記回転巻き上げシャフト(5)が、前記ラチェット(3)の前記ハブ(7)を通るように配列され、前記第1セットの歯(6)が、前記ハブにおいて前記回転巻き上げシャフト(5)まわりに配列されることを特徴とする、請求項5に記載の巻き上げデバイス。
【請求項8】
前記可撓性爪(15)が前記回転巻き上げシャフト(5)まわりに角度的に分散されることを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項9】
各爪(15)が可撓性板(16)と前記可撓性板(16)の自由端に配列される歯(17)とを含み、前記可撓性爪(15)の歯(17)が前記第1セットの歯(6)と協働することを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項10】
前記ラチェット(3)が周縁リム(8)を含み、前記周縁リム(8)には、前記巻き上げギア列(4)の第3セットの歯(12)と協働する第2セットの歯(11)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項11】
前記ラチェット(3)が前記バレル(2)に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項12】
前記回転巻き上げシャフト(5)が、前記バレル(2)ばねの巻き取りを許容する前記バレル(2)の巻き上げシャフトであることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項13】
バレル(2)と請求項1に記載のバレル(2)の巻き上げデバイス(1)とを含む時計ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き上げデバイスに関し、詳しくは腕時計バレルのための、接続解除手段が設けられる巻き上げデバイスに関する。
【0002】
本発明はまた、かかる巻き上げデバイスを含む時計ムーブメントにも関する。
【背景技術】
【0003】
最近の自動巻き腕時計は一般に、重力によってギア列を駆動する振動重りを含む。このドラムの回転により、軸まわりのドラムにおいて巻き上げられていた板ばねすなわちバレルばねを、当該軸を駆動することによって巻き取ることが可能となる。回転は一般に一方向のみに強いられ、爪によって逆戻りが防止される。
【0004】
しかしながら、ばねが十分に巻き取られるとき、ばねの破損、又は振動子のノッキングを引き起こし得る過剰な巻き取りを回避することが重要となる。ノッキングの間、振動の振幅が、バランスホイールがアンカーホーンの裏に当接するポイントまで増加し、これらのストップに対してバランスホイールが反発することに起因する速度のドリフトが生じる。
【0005】
これらのリスクを回避するべく、かかるバレルは一般に、バレルばねの巻き取りを制限するシステムを有する。
【0006】
この制限は一般に、ばねの最後の外側板をドラムの内壁に当てるように摺動させることによって達成される。ばねが、バレルの巻き上げシャフトまわりに十分に巻き取られて巻かれていると、最後に巻かれている巻き取り部分が、ドラムの外壁に押し当てられる。
【0007】
それゆえ、巻き取りトルクが、最後の巻き取り部分の壁に対する摩擦トルクを超過すると、当該巻き取り部分が摺動し始める。制御不能の摺動を防止するべく、ノッチが、巻き取りトルクが十分に低下するとすぐに板の端が摺動を停止することを可能にする。
【0008】
しかしながら、かかるシステムの欠点は、ドラム内の最後の巻き取り部分の摺動摩擦プロセスに存在する。実際のところ、被駆動機構が高トルクを必要とする場合、当該壁に対するばね板の支承力及び摩擦が増強されるので、所定時間後に摩擦トラックから排出されるグリースが存在していても摩耗が生じ、バレルの性能劣化が生じる。
【0009】
さらに、自動バレルの中では、効率を最大化するべく、巻き取り部分間の摩擦を低減することと、良好な巻き取りトルクを保証するためにばねとドラムとの間の摩擦を高くすることとのような、相反する基準を満たす必要がある。
【0010】
十分に巻き取られたばね板の圧力下でのコーティングの破れ、スラッジの蓄積、及び壁の摩耗のような、ドラムへの損傷も回避しなければならない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上述した欠点のすべて又はいくつかを、ドラムの内壁のノッチに対する板の摺動に基づくシステムを置換するばねの巻き取りを制限するシステムが備えられた巻き上げデバイスを与えることによって、克服することにある。
【0012】
この目的に向けて、本発明は、巻き上げデバイスに関し、詳しくはばねが設けられた腕時計バレルのための巻き上げデバイスに関し、この巻き上げデバイスは、回転巻き上げシャフトに取り付けられるラチェットと、ラチェットに噛合する巻き上げギア列とを含み、回転巻き上げシャフトは、例えば、バレルの巻き上げシャフトであり、その回転によってバレルを巻き取り、巻き上げギア列の回転がラチェットにトルクを及ぼすことによって、ラチェットの回転及び回転巻き上げシャフトの回転を引き起こし、巻き上げデバイスには、ラチェットと回転巻き上げシャフトとを接続解除する手段が設けられる。
【0013】
本発明は、接続解除手段が、ラチェット及び回転巻き上げシャフトに配列され、ラチェットと巻き上げシャフトとを、ラチェットに及ぼされるトルクが実質的にしきい値を超えるときに、詳しくはバレルが十分に巻き取られたときに、接続解除するように構成される点で注目に値する。
【0014】
すなわち、巻き取りトルクが高すぎるとラチェットハブがバレルの回転巻き上げシャフトから接続解除されてもはや、ラチェットの回転トルクがバレルの巻き上げシャフトに伝えられることがない。すなわち、ラチェットは巻き上げギアによって駆動されて回転を続けるが、巻き上げシャフトはもはや回転しなくなる。
【0015】
本発明により、バレルの摩耗が早まるリスクが回避される。制限デバイスがバレルよりも上流にかつバレルの外部に配列されるからである。加えて、バレル内側のばね摩擦に基づく従来型の巻き取り制限デバイスの使用が回避される。
【0016】
本発明の特定の実施形態によれば、接続解除手段は、複数の可撓性爪と第1セットの歯とを含み、可撓性爪は、第1セットの歯と協働してラチェットからのトルクを回転巻き上げシャフトに伝えて当該回転巻き上げシャフトを回転させる。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、トルクがしきい値を下回る場合に可撓性爪は第1セットの歯に係合する。
【0018】
本発明の特定の実施形態によれば、可撓性爪は、トルクが実質的にしきい値よりも大きくなる場合に曲がる。これにより、可撓性爪はもはや、第1セットの歯に噛合することがなく、ラチェットの回転ももはや、回転巻き上げシャフトを駆動することがない。
【0019】
本発明の特定の実施形態によれば、第1セットの歯が回転巻き上げシャフトに配列され、可撓性爪がラチェットに配列される。
【0020】
本発明の特定の実施形態によれば、ラチェットは、可撓性爪が配列されるハブを含む。可撓性爪は回転巻き上げシャフトに向かって延びる。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、回転巻き上げシャフトは、ラチェットのハブを通るように配列される。第1セットの歯は、ハブにおいて回転巻き上げシャフトまわりに配列される。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、複数の可撓性爪は、回転巻き上げシャフトまわりに角度的に分散される。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、各爪が、可撓性板と、当該可撓性板の自由端に配列される歯を含む。可撓性爪の歯は第1セットの歯と協働する。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、ラチェットは、巻き上げギア列の第3セットの歯と協働する第2周縁セットの歯が設けられる周縁リムを含む。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、ラチェットはバレルに取り付けられる。
【0026】
本発明の特定の実施形態によれば、回転巻き上げシャフトは、バレルばねの巻き取りを許容するバレルの巻き上げシャフトである。
【0027】
本発明の特定の実施形態によれば、各可撓性爪は、ラチェット及び巻き上げ軸に対して径方向に向けられる。
【0028】
本発明はまた、バレルを含む時計ムーブメントに関し、この時計ムーブメントはかかるバレル巻き上げデバイスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の目的、利点及び特徴が、添付図面を参照して非限定的な例のみによって与えられるいくつかの実施形態から明らかとなる。
【0030】
【
図1】係合位置にある本発明の一実施形態に係る巻き上げデバイスの上面図を模式的に表す。
【
図2】接続解除位置にある、詳しくはバレルばねが十分に巻き取られているときの、
図1の発明に係る巻き上げデバイスの上面図を模式的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び
図2は、本発明に係る巻き上げデバイス1の一実施形態、この場合は時計のバレル2、を示す。
【0032】
バレル2の巻き上げデバイス1は、ラチェット3及び巻き上げギア列4を含む。巻き上げギア列4は、巻き上げギア列4が第1方向に回転するとラチェット3が、第1方向に対向する第2方向に回転するように、ラチェット3に噛合する。
【0033】
ラチェット3は巻き上げシャフト5に取り付けられ、巻き上げシャフト5によってバレル2の巻き上げが許容される。この例において、巻き上げシャフト5は、バレル2の巻き上げシャフトであり、ラチェットはバレル2に取り付けられる。
【0034】
図示しない変形例において、巻き上げシャフトはバレルに取り付けられていない。巻き上げシャフトは、ラチェットがバレルに取り付けられていない場合にばねを巻き取るべくバレルの巻き上げシャフトを駆動するホイールセットに噛合するピニオンを含む。
【0035】
巻き上げシャフト5は円柱形が好ましい。第1セットの歯6が、巻き上げシャフト5まわりに配列される。
【0036】
ラチェット3はハブ7及び周縁リム8を含み、ハブ7は、周縁リム8の内側に配列される。ハブ7及び周縁リム8は円環状の形状とされ、ハブ7の半径は、周縁リム8の半径よりも小さい。ハブ7と周縁リム8とは、少なくとも一つのアーム、この場合はハブ7まわりに角度的に分散される4つのアーム9、によって接続される。ハブ7及び周縁リム8は好ましくは、同じ平面内に延びる。
【0037】
ハブ7は、巻き上げシャフト5が少なくとも部分的に通過する内部空間を画定する。
【0038】
周縁リム8は、ラチェット3まわりに周縁リム8に沿って分散される第2外部セットの歯11を含む。第2セットの歯11は、巻き上げギア列4に配列される第3セットの歯12と協働する。巻き上げギア列4は、その周縁に配列される第3セットの歯12が設けられるピニオンを含む。
【0039】
バレル2は、バレル2の内側に配列されるバレルばねと称される渦巻きばね(図面に示さない)を含む。この渦巻きばねは、自動巻きシステム又は手動巻きシステムのいずれかによって巻き取られる必要がある。
【0040】
この目的に向けて、巻き上げデバイス1はさらに、例えば、時計ムーブメントの自動巻き質量(図面に示さない)によって駆動されるギア列システム13を含む。ギア列システム13はまた、手動巻きの場合はクラウンによって作動され得る巻き上げステム(図面に示さない)によって駆動することができる。
【0041】
ギア列システム13のホイールセット21は、巻き上げギア列4の第3セットの歯12と噛合する。すなわち、ギア列システム13を作動させることによってトルクがラチェット4に及ぼされ、そのトルクは少なくとも部分的に、ホイールセット21によって駆動される巻き上げギア列4を介して、及び巻き上げギア列4によって駆動されるラチェット3を介して、巻き上げシャフト5に伝えられる。
【0042】
本発明によれば、巻き上げデバイス1は、ラチェットと巻き上げシャフトとを接続解除する手段10を含む。接続解除手段10は、好ましくはラチェット3と同じレベルにある巻き上げシャフト5まわりに配列される第1セットの歯6を含む。
【0043】
接続解除手段10はまた、ハブ7から巻き上げシャフト5に向かって延びる複数の可撓性爪15を含む。これらの可撓性爪15は、ラチェット3の平面内でハブ7の内側に角度的に分散される。可撓性爪15が第1セットの歯6と協働することにより、ラチェット3の回転が、バレル2が巻き上げられるときに巻き上げシャフト5の回転を引き起こす。
【0044】
各爪15は、ラチェット3のハブ7から延びる可撓性板16を含む。巻き上げシャフト5の第1セットの歯6と協働可能な歯17が、各可撓性板16の自由端に配列される。巻き上げの間、可撓性爪15の歯17は、第1セットの歯6に挿入されて第1セットの歯6を回転させる。
【0045】
接続解除手段10は、少なくとも一つの可撓性爪15、好ましくは少なくとも4つの可撓性爪、を含む。可撓性爪15の数は、可撓性板16の可撓性に依存し、かつ、超えることにより接続解除手段10がラチェット3と巻き上げシャフト5とを接続解除するように構成されるトルクのしきい値に依存する。
【0046】
各可撓性爪15は、ラチェット3及び巻き上げ軸5に対して径方向に向けられる。換言すれば、可撓性爪15は、巻き上げシャフト5の軸に向かうように配向される。
【0047】
この実施形態において、接続解除手段10は、巻き上げシャフトまわりに分散される16の可撓性爪15を含む。
【0048】
可撓性板16は、バレルを巻き取るのに通常必要とされるトルクしきい値を超えると曲がるように構成される。すなわち、しきい値を上回るとトルクが高すぎることになり、可撓性ブレード16が曲がる。これにより、可撓性爪15の歯17が、第1セットの歯を駆動することができないまま第1セットの歯の中に飛び込む。その結果、ラチェット3の回転にもかかわらず、巻き上げシャフト5はもはや回転しない。
【0049】
巻き上げ構成にある
図1において、ラチェット3によって巻き上げシャフトに及ぼされる巻き上げトルクがしきい値未満であることにより、可撓性爪15の可撓性板16は実質的に直線のままである。すなわち、可撓性爪15は、第1セットの歯6を介して巻き上げシャフト5を駆動する。
【0050】
バレル2が十分に巻き取られている
図2において、ラチェット3によって巻き上げシャフト5に及ぼされるトルクがしきい値を超えることにより、可撓性爪15の可撓性板16は曲がる。換言すれば、巻き上げシャフト5を回転させるのに必要なトルクが、可撓性爪にとって大きすぎて曲がるようになる。その結果、可撓性爪15の歯17はもはや、巻き上げシャフト5を駆動するのに十分な第1セットの歯6の握り締めを有しなくなる。
【0051】
これらの接続解除手段が、バレル2を過剰な巻き取りから保護し、バレル2の内側の摩耗の早まりを防止する。
【0052】
バレル2はさらに、時計ムーブメントのホイールセット20の第5セットの歯19と協働するように構成される第4周縁セットの歯18を含む。ホイールセット20は、例えば、中心ホイールセット若しくはアベレージホイールであり、又は打撃ホイールセットである。ひとたび巻き取られると、バレル2は、時計ムーブメントを動作させるのに必要なエネルギーを、ホイールセット20を介して供給する。
【0053】
本発明はまた、図面に示さない時計ムーブメントに関し、このムーブメントは、バレルと、上述したバレル巻き上げデバイスとを含む。
【0054】
当然のことながら、本発明は、図面を参照して説明された実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲を逸脱することのない変形例が考慮され得る。
【0055】
例えば、
図1及び
図2に示される実施形態において、可撓性爪15がラチェット3に配列され、第1セットの歯6が巻き上げシャフト5に配列される。
【0056】
しかしながら、図示しない他実施形態において、可撓性爪を巻き上げシャフトに配置し、第1セットの歯をラチェットハブの内側に配列することも可能である。可撓性爪の可撓性板は、第1セットの歯と協働するべく巻き上げシャフトからラチェットハブに向かって延びる。
【0057】
すなわち、可撓性爪に及ぼされるトルクがしきい値を下回っている限り、ラチェットは巻き上げシャフトを駆動し、可撓性爪に及ぼされるトルクがしきい値を超えると、可撓性板が曲がってもはや第1セットの歯と噛合しなくなり、ラチェットは巻き上げシャフトを駆動することなく回転する。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばねが設けられたバレル(2)の巻き上げデバイス(1)であって、
回転巻き上げシャフト(5)に取り付けられるラチェット(3)と、前記ラチェット(3)に噛合する巻き上げギア列(4)とを含み、
前記回転巻き上げシャフト(5)は、前記バレル(2)の巻き上げシャフトであり、その回転により前記バレル(2)が巻き取られ、前記巻き上げギア列(4)の回転が、前記ラチェット(3)にトルクを及ぼすことによって前記ラチェット(3)の回転及び前記回転巻き上げシャフト(5)の回転を引き起こし、前記巻き上げデバイス(1)には、前記ラチェット(3)と前記回転巻き上げシャフト(5)との接続解除手段(10)が設けられ、
特徴は、前記接続解除手段(10)が前記ラチェット(3)及び前記回転巻き上げシャフト(5)に配列され、前記ラチェット(3)に及ぼされるトルクがしきい値を超えるときに、前記ラチェット(3)と前記回転巻き上げシャフト(5)とを接続解除するように構成されることにある、巻き上げデバイス。
【請求項2】
前記接続解除手段(10)が複数の可撓性爪(15)及び第1セットの歯(6)を含み、前記可撓性爪(15)が前記第1セットの歯(6)と協働して前記ラチェット(3)のトルクを前記回転巻き上げシャフト(5)に伝えて前記回転巻き上げシャフト(5)を回転させることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項3】
前記トルクがしきい値を下回る場合に前記可撓性爪(15)が前記第1セットの歯(6)に係合することを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項4】
前記可撓性爪(15)が、前記トルクが実質的に前記しきい値よりも大きいときに曲がることにより、前記可撓性爪(15)がもはや前記第1セットの歯(6)に噛合しなくなり、前記ラチェット(3)の回転がもはや前記回転巻き上げシャフト(5)を駆動しなくなることを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項5】
前記第1セットの歯(6)が前記回転巻き上げシャフト(5)に配列され、前記可撓性爪(15)が前記ラチェット(3)に配列されることを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項6】
前記ラチェット(3)が、前記可撓性爪(15)が配列されるハブ(7)を含み、前記可撓性爪(15)が前記回転巻き上げシャフト(5)に向かって延びることを特徴とする、請求項5に記載の巻き上げデバイス。
【請求項7】
前記回転巻き上げシャフト(5)が、前記ラチェット(3)の前記ハブ(7)を通るように配列され、前記第1セットの歯(6)が、前記ハブ(7)において前記回転巻き上げシャフト(5)まわりに配列されることを特徴とする、請求項6に記載の巻き上げデバイス。
【請求項8】
前記可撓性爪(15)が前記回転巻き上げシャフト(5)まわりに角度的に分散されることを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項9】
各可撓性爪(15)が可撓性板(16)と前記可撓性板(16)の自由端に配列される歯(17)とを含み、前記可撓性爪(15)の歯(17)が前記第1セットの歯(6)と協働することを特徴とする、請求項2に記載の巻き上げデバイス。
【請求項10】
前記ラチェット(3)が周縁リム(8)を含み、前記周縁リム(8)には、前記巻き上げギア列(4)の第3セットの歯(12)と協働する第2セットの歯(11)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項11】
前記ラチェット(3)が前記バレル(2)に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項12】
前記回転巻き上げシャフト(5)が、前記バレル(2)ばねの巻き取りを許容する前記バレル(2)の巻き上げシャフトであることを特徴とする、請求項1に記載の巻き上げデバイス。
【請求項13】
バレル(2)と請求項1に記載の巻き上げデバイス(1)とを含む時計ムーブメント。
【外国語明細書】