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特開2024-76361量子ドット、量子ドットの製造方法及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076361
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】量子ドット、量子ドットの製造方法及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/62 20060101AFI20240529BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240529BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240529BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20240529BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20240529BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20240529BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20240529BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240529BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C09K11/62
C09K11/08 G ZNM
C09K11/08 A
C09K11/64
C09K11/88
C09K11/67
C01G15/00 Z
B82Y20/00
B82Y40/00
H05B33/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193911
(22)【出願日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0159415
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515127979
【氏名又は名称】ドク サン ネオルクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ハン ビュル
(72)【発明者】
【氏名】イ,チャン ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジョン ムン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョン ス
【テーマコード(参考)】
3K107
4H001
【Fターム(参考)】
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC07
3K107CC45
3K107DD55
3K107DD57
3K107FF13
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG28
4H001CA02
4H001CC07
4H001CC09
4H001CC10
4H001CF01
4H001XA03
4H001XA11
4H001XA13
4H001XA16
4H001XA19
4H001XA22
4H001XA29
4H001XA31
4H001XA34
4H001XA37
4H001XA47
4H001XA49
4H001XA52
4H001XA55
4H001XA79
4H001XA81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】量子ドットコアを構成するAg、In及びGa前駆体の組成に応じて、量子ドットの発光波長の調整が可能なAgInGaS量子ドット、その製造方法及び電子装置を提供する。
【解決手段】Ag、In、Ga及びSを含むコア、及びコア上のI族元素又はIII族元素から選択される少なくとも1つ及びVI族元素を含むシェルを含む量子ドットであって、下記式1で定義されるAg、In及びGa前駆体の比に応じた発光波長の調整が可能な量子ドット:

式において、1)各元素の前駆体の量は0.1mmol以上であり、2)Xが0.32以上0.40未満の場合、量子ドットは500nm~530nmの発光波長を有し、3)Xが0.40以上0.60未満の場合、量子ドットは531nm~580nmの発光波長を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ag、In、Ga及びSを含むコア;及び
前記コア上のI族元素又はIII族元素から選択される少なくとも1つ及びVI族元素を含むシェルを含む量子ドットであって、
前記量子ドットは、下記式1で定義されるAg、In及びGa前駆体の比に応じた発光波長の調整が可能な量子ドット:
【数1】

前記式1において、
1)各元素の前駆体の量は、0.1mmol以上であり、
2)Xが0.32以上0.40未満の場合、前記量子ドットは、500nm~530nmの発光波長を有し、
3)Xが0.40以上0.60未満の場合、前記量子ドットは、531nm~580nmの発光波長を有する。
【請求項2】
前記シェルに含まれるI族元素が、Li、Na、K、Rb、Cs、Cu、Ag及びAuから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
前記シェルに含まれるIII族元素が、Al、Ga、In及びTlから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記シェルに含まれるVI族元素が、S、Se及びTeから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項5】
前記量子ドットの直径は、1nm~20nmである、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項6】
前記シェルは、コア上に配置され、I族元素及びIII族元素のうち少なくとも1つ及びVI族元素を含む第1のシェル;及び前記第1のシェルに配置され、I族元素及びIII族元素のうち少なくとも1つ及びVI族元素を含む第2のシェルを含む、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項7】
前記第1のシェル及び前記第2のシェルはそれぞれ、AgAlS、AgAlSe、AgAlTe、AgGaS、AgGaSe、AgGaTe、AgInS、AgInSe、AgInTe、AgTiS、AgTiSe、AgTiTe、CuAlS、CuAlSe、CuAlTe、CuGaS、CuGaSe、CuGaTe、CuInS、CuInSe、CuInTe、CuTiS、CuTiSe、CuTiTe、AuAlS、AuAlSe、AuAlTe、AuGaS、AuGaSe、AuGaTe、AuInS、AuInSe、AuInTe、AuTiS、AuTiSe、AuTiTe、AlS、AlSe、AlTe、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、TiS、TiSe、TiTeのうちの1つを含む、請求項6に記載の量子ドット。
【請求項8】
Ag前駆体、In前駆体、Ga前駆体、S前駆体及び溶媒を、第1の反応器に注入して反応させることにより、コアを製造するコア製造工程、及び
I族元素を含むI族前駆体又はIII族元素を含むIII族前駆体から選択される少なくとも1つ、及びVI族元素を含むVI族前駆体を備えた第2の反応器に、前記製造されたコアを注入して反応させることにより、シェルを製造するシェル製造工程を含む量子ドットの製造方法であって、
前記量子ドットは、下記式1で定義される前記Ag、In及びGa前駆体の比に応じた発光波長の調整が可能な量子ドットの製造方法であって、
【数2】

前記式1において、
1)各元素の前駆体の量は、0.1mmol以上であり、
2)Xが0.32以上0.40未満の場合、前記量子ドットは、500nm~530nmの発光波長を有し、
3)Xが0.40以上0.60未満の場合、前記量子ドットは、531nm~580nmの発光波長を有する、量子ドットの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の量子ドットを含む発光ダイオードを含むディスプレイ装置;及び前記ディスプレイ装置を駆動する制御部を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット、量子ドットの製造方法及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットとは、数ナノメートルのサイズを有する物質であり、量子閉じ込め効果により、バルク(bulk)状態での物質とは異なる特性を示す物質をいう。量子ドットは、材料が有する固有のバンドギャップによって表すことができる発光波長が異なる。
【0003】
量子ドットは、一般に、コア及びシェルで構成され、コアは、量子ドットの発光波長と半値幅などの量子ドットの特性を決定する主な要素である。このような光特性は、数ナノサイズで現れる特殊な現象であり、量子閉じ込め効果により、バルク(bulk)状態での物質とは異なる特性を示す。この特徴により、量子ドットは、同じ組成で粒子の大きさに応じて発光波長が調整され、放出する光の色が変わることがある。また、可視光領域だけでなく、様々な波長領域で発光が可能であるため、量子ドットは、次世代高輝度発光ダイオード(light emitting diode、LED)、バイオセンサー(bio sensor)、レーザー、太陽電池ナノ素材などに活用できる素材として注目されている。
【0004】
量子ドットの発光波長は、材料の固有バンドギャップに基づいて、様々な方法で調整することができる。
【0005】
量子ドットは、一般に、粒径が小さくなるにつれて、バンドギャップが大きくなり、発光波長がブルーシフトし、逆に、粒径が大きくなるにつれて、バンドギャップが小さくなり、比較的に発光波長がレッドシフトする傾向を示すため、粒径の調整により量子ドットの発光波長を調整することができる。しかし、従来研究が進められていたIII-V族化合物ベースの量子ドットは、製造方法において粒径の調整が難しく、特に粒径を小さくして、発光波長がブルーシフトした量子ドットを構成することが難しい。
【0006】
したがって、最近、III-V族化合物量子ドットに続き、I-III-VI族ディスプレイ用の量子ドット技術の開発が進められている。
【0007】
前記I-III-VI族ディスプレイ用の量子ドットは、III-V族量子ドットに比べて吸光度が大きいため、発光効率が相対的に高いという利点を有している。また、I-III-VI族量子ドットのうち、AgInGaS量子ドットは、4成分系で量子ドットを構成する元素の組成に応じて、発光特性を変化させることが容易である。したがって、組成の変化に応じて、発光波長などを様々に調整することができ、色再現に優れた量子ドット素材として活用が可能である。
【0008】
したがって、AgInGaS量子ドットの組成を適切に調整して、発光波長などの光特性を制御可能な技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一態様では、本開示の実施形態は、AgInGaS量子ドットコアを構成するときに、Ag、In及びGa前駆体の量を調整して、発光波長の調整が可能なAgInGaS量子ドット、量子ドットの製造方法及び電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の実施形態は、AgInGaS量子ドットコアの構成時に、Ag、In及びGa前駆体の量に応じて、500nm~580nmの範囲内で発光波長の調整が可能なAgInGaS量子ドット、量子ドットの製造方法及び電子装置を提供する。
【0011】
一態様では、本開示の実施形態は、Ag、In、Ga、及びSを含むコア、及び該コア上にI族元素又はIII族元素から選択される少なくとも1つ及びVI族元素を含むシェルを含む量子ドットを提供する。
【0012】
量子ドットは、下記式1で定義されるAg、In及びGa前駆体の比に応じた発光波長の調整が可能である。
【0013】
【数1】
【0014】
前記式1において、
1)各元素の前駆体の量は、0.1mmol以上であり、
2)Xが0.32以上0.40未満の場合、前記量子ドットは、500nm~530nmの発光波長を有し、
3)Xが0.40以上0.60未満の場合、前記量子ドットは、531nm~580nmの発光波長を有する。
【0015】
シェルに含まれる少なくとも1つのI族元素は、Li、Na、K、Rb、Cs、Cu、Ag及びAuから選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
シェルに含まれる少なくとも1つのIII族元素は、Al、Ga、In及びTlから選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0017】
シェルに含まれる少なくとも1つのVI族元素は、S、Se及びTeから選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0018】
量子ドットの直径は、1nm~20nmであってもよい。
【0019】
シェルは、コア上に配置され、I族元素又はIII族元素のうちの1つ及びVI族元素を含む第1のシェルと、第1のシェル上に配置され、I族元素又はIII族元素のうちの1つ及びVI族元素を含む第2のシェルとを含むことができる。第1のシェルと第2のシェルとに含まれるI族元素、III族元素、及びVI族元素は、同一でも異なっていてもよい。
【0020】
第1のシェルは、AgAlS、AgAlSe、AgAlTe、AgGaS、AgGaSe、AgGaTe、AgInS、AgInSe、AgInTe、AgTiS、AgTiSe、AgTiTe、CuAlS、CuAlSe、CuAlTe、CuGaS、CuGaSe、CuGaTe、CuInS、CuInSe、CuInTe、CuTiS、CuTiSe、CuTiTe、AuAlS、AuAlSe、AuAlTe、AuGaS、AuGaSe、AuGaTe、AuInS、AuInSe、AuInTe、AuTiS、AuTiSe、AuTiTeのうちの1つを含むことができる。
【0021】
第2のシェルは、AlS、AlSe、AlTe、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、TiS、TiSe、TiTeのうちの1つを含むことができる。
【0022】
別の態様では、本開示の実施形態は、量子ドットの製造方法を提供する。
【0023】
量子ドットの製造方法は、コア製造工程及びシェル製造工程を含む。
【0024】
コア製造工程は、Ag前駆体、In前駆体、Ga前駆体、S前駆体及び溶媒を、第1の反応器に注入して反応させることにより、コアを製造する工程である。
【0025】
シェル製造工程は、I族元素を含むI族前駆体又はIII族元素を含むIII族前駆体から選択される少なくとも1つ、及びVI族元素を含むVI族前駆体を備えた第2の反応器に、前記製造されたコアを注入して反応させることにより、シェルを製造する工程である。
【0026】
量子ドットは、前記式(1)で定義されるAg、In及びGa前駆体の比に応じた発光波長の調整が可能である。
【0027】
さらに別の態様では、本開示の実施形態は、量子ドットを含む発光ダイオードを含むディスプレイ装置と、ディスプレイ装置を駆動する制御部とを含む電子装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施形態による量子ドットの断面図である。
図2】別の実施形態による量子ドットの断面図である。
図3】さらに別の実施形態による量子ドットの断面図である。
図4】別の実施形態による電子装置の断面図である。
図5】別の実施形態による発光ダイオードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の説明では、実施形態を理解するために必要な部分のみを説明し、量子ドットの製造方法を詳細に説明する。説明に使用される技術的用語や科学用語において、別の定義がない場合、発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が、通常に理解している意味を示す。本発明を説明するにあたって、具体的な説明が本発明の要旨をぼかすことができると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0030】
また、本発明の構成要素を説明するにあたって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。これらの用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであるだけで、その用語によって当該構成要素の本質、順番、順序などが限定されない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」、又は「接続」されると記載されている場合、その構成要素は、他の構成要素に直接連結又は接続されてもよいが、各構成要素間にさらに別の構成要素が「連結」、「結合」、又は「接続」されてもよいことが理解されるべきである。
【0031】
また、層、膜、領域、板などの構成要素が、他の構成要素「の上に」又は「上に」あるとする場合、これは、他の構成要素の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに別の構成要素がある場合も含むことができると理解されるべきである。逆に、ある構成要素が、他の部分の「真上に」あると言う場合には、中間にさらに別の部分がないことを意味すると理解されるべきである。また、基準となる部分「の上に」又は「上に」あるということは、基準となる部分の上又は下に位置するものであり、必ず重力の反対方向に向かって、「の上に」又は「上に」位置することを意味するわけではない。
【0032】
さらに、本開示を説明するにあたって、ある部分が、ある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0033】
なお、本開示を説明するにあたり、「平面状」と言う場合は、対象部分を上から見たときを意味し、「断面状」という場合は、対象部分を垂直に切った断面を横から見たときを意味する。
【0034】
なお、本開示を説明するにあたり、「族(Group)」とは、元素周期律表の族をいう。
【0035】
ここで、「I族」は、IA族及びIB族を含むことができ、I族元素は、Li、Na、K、Rb、Cs、Cu、Ag、Auを含むが、これらに限定されない。
【0036】
「II族」は、IIA及びIIB族を含むことができ、II族元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Zn、Cd及びHgを含むが、これらに限定されない。
【0037】
「III族」は、IIIA族及びIIIB族を含むことができ、III族元素は、In、Ga及びAlを含むが、これらに限定されない。
【0038】
「V族」は、VA族を含むことができ、V族元素は、P、As、Sb、Bi及びNを含むが、これらに限定されない。
【0039】
「VI族」は、VIA族を含むことができ、VI族元素は、S、Se、及びTeを含むが、これらに限定されない。
【0040】
本開示における前駆体(Precursor)とは、量子ドットを反応させるために予め製造された化学物質であり、金属、イオン、元素、化合物、錯化合物、複合体及びクラスターなどを含むすべての化合物を指す概念である。必ずしも任意の反応の最終的な物質に限定されず、任意に定められたいずれかの段階で得られる物質を意味する。
【0041】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態による量子ドットを詳細に説明する。
【0042】
図1は、一実施形態による量子ドットの断面図である。
【0043】
図1を参照すると、本開示による量子ドット10は、Ag、In、Ga、及びSを含むAgInGaS量子ドットコア12を含む。
【0044】
本開示による量子ドット10は、AgInGaSコア12と、AgInGaSコア12上に配置されたシェル14とを含むAgInGaS量子ドットであってもよい。
【0045】
一実施形態では、コア12上に配置されたシェル14は、I族元素又はIII族元素から選択される少なくとも1つ及びVI族元素を含むことができる。
【0046】
シェル14に用いられるI族元素は、IA族及びIB族を含むことができ、Li、Na、K、Rb、Cs、Cu、Ag及びAu又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つを使用することができるが、これらに限定されない。
【0047】
シェル14に使用されるIII族元素は、IIIA族及びIIIB族を含むことができ、In、Ga、Al及びTl又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つを使用することができるが、これらに限定されない。
【0048】
シェル14に使用されるVI族元素は、S、Se及びTe又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つを使用することができるが、これらに限定されない。
【0049】
一実施形態では、発光体から構成される本開示の量子ドット10は、コア12とシェル14とのバンドギャップの差に応じたタイプ1の量子ドットであってもよい。
【0050】
タイプ1の量子ドットは、シェル14のバンドギャップが、コア12のバンドギャップよりも大きい構造で構成される量子ドットであり、その構造で、発光は、バンドギャップがより小さいコア12で起こり、シェル14は、発光に影響を及ぼさない。したがって、発光波長は、コア12の構成にのみ影響を受ける。
【0051】
タイプ1の構造では、シェル14は、コア12の表面欠陥を抑制する役割を果たし、それにより、発光効率をさらに向上させることができる。
【0052】
図2は、別の実施形態による量子ドットの断面図である。図3は、さらに別の実施形態による量子ドットの断面図である。
【0053】
図2を参照すると、一実施形態では、量子ドット10は、AgInGaSコア12と、コア12上に(又は直上に)配置されたI族元素及びIII族元素のうち少なくとも1つ及びVI族元素を含む第1のシェル14と、第1のシェル14(の真上)に配置されたI族元素及びIII族元素のうち少なくとも1つ及びVI族元素を含む第2のシェル16とを有するコア-多層シェルの構造であってもよい。
【0054】
別の実施形態による量子ドット10は、図3に示すように、AgInGaSコア12と、第1のシェル14及び第2のシェル16を含み、第2のシェル16より外殻に、別のシェル18をさらに含んでもよく、又は図示していないが、第1のシェル14と第2のシェル16との間に、別の中間シェルをさらに含んでもよい。
【0055】
一実施形態では、AgInGaSコアシェル量子ドットの製造は、反応器内で、Ag前駆体、In前駆体、Ga前駆体及びS前駆体を用いて、AgInGaSコア12を構成し、AgInGaSコア12に、第1のシェル14を構成するI族元素及びIII族元素のうち少なくとも1つ及びVI族元素前駆体を注入して、コア上に第1のシェル14を形成する方法、又は、第1のシェル14が形成された量子ドット溶液に、I族元素及びIII族元素のうち少なくとも1つとVI族元素前駆体とを注入して、第2のシェル16を形成する方法で行うことができる。
【0056】
第1のシェル14と第2のシェル16とに含まれるIII族元素及びVI族元素は、同じでも異なっていてもよい。AgInGaSコアシェル量子ドットの形成方法は、高温注入(hot-injection)法、定位置反応(In-situ)及び温度上昇(heating up)法で行うことができる。前記の方法は、AgInGaSコア製造工程及びシェル製造工程の各工程で実施することができる。
【0057】
コア12を構成するAg前駆体は、例えば、アセチルアセトン銀(silver(I) acetylacetonate)、塩化銀(silver(I) chloride)、臭化銀(silver(I) bromide)、ヨウ化銀(silver(I) iodide)、酢酸銀(silver(I) acetate)、硝酸銀(silver(I) nitrate)、及びミリスチン酸銀(silver(I) myristate)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0058】
コア12を構成するIn前駆体は、例えば、アセチルアセトンインジウム(indium(III) acetylacetonate)、塩化インジウム(indium(III) chloride)、酢酸インジウム(Indium(III) acetate)、トリメチルインジウム(trimethyl Indium)、アルキルインジウム(alkyl Indium)、アリールインジウム(aryl Indium)、ミリスチン酸インジウム(indium(III) myristate)及び酢酸ミリスチン酸インジウム(indium(III) myristate acetate)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0059】
コア12を構成するGa前駆体は、例えば、アセチルアセトンガリウム(gallium(III)acetylacetonate)、塩化ガリウム(gallium(III) chloride)、ヨウ化ガリウム(gallium(III) iodide)、臭化ガリウム(gallium(III) bromide)、酢酸ガリウム(gallium(III) acetate)、硝酸ガリウム(gallium(III) nitrate)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0060】
コア12を構成するS前駆体は、例えば、1-オクタンチオール(1-octanethiol)、1-ドデカンチオール(1-dodecanethiol)、二塩化硫黄(SCl)、硫黄元素(S)、S-TOP、S-ODEからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0061】
コア12を構成するAg、In、Ga及びS前駆体は、オレイルアミン(oleylamine)、エタノール(ethanol)、トルエン(toluene)等の溶媒と混合して、AgInGaS量子ドットコアを製造する前駆体-溶媒前駆体溶液として構成することができる。
【0062】
一実施形態では、シェル14を構成するI族前駆体は、Ag前駆体、Cu前駆体又はAu前駆体などを含むことができるが、これらに限定されない。
【0063】
シェル14を構成するCu前駆体は、例えば、アセチルアセトン銅(cupper(II) acetylacetonate)、塩化銅(cupper(II) chloride)、臭化銅(cupper(II) bromide)、ヨウ化銅(cupper(II) iodide)、酢酸銅(cupper(II) acetate)、及び硝酸銅(cupper(II) nitrate)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0064】
シェル14を構成するAu前駆体は、例えば、四塩化金酸水素(hydrogen tetrachloroaurate(III))、塩化金(gold(III) chloride)及び臭化金(gold(III) bromide)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0065】
シェル14を構成するAg前駆体は、コア12を構成する前駆体で既に説明したところ、これについての説明は、省略する。
【0066】
また、シェル14を構成するIII族前駆体は、Ga前駆体、In前駆体、Al前駆体又はTl前駆体などを含むことができるが、これらに限定されない。
【0067】
シェル14を構成するGa前駆体及びIn前駆体は、コアを構成する前駆体で既に説明したところ、これについての説明は、省略する。
【0068】
Al前駆体は、例えば、塩化アルミニウム(aluminium(III) chloride)、ヨウ化アルミニウム(aluminium(III) iodide)、酸化アルミニウム(aluminium oxide)、アルミニウムアセチルアセトナート(aluminium acetylacetonate)などの化合物からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0069】
Tl前駆体は、例えば、酢酸タリウム(thallium acetate)、タリウムアセチルアセトナート(thallium acetylacetonate)、酸化タリウム(thallium oxide)、臭化タリウム(thallium bromide)、塩化タリウム(thallium chloride)、ヨウ化タリウム(thallium iodide)などの化合物からなる群から選択される1つであってもよい。
【0070】
また、シェル14を構成するVI族前駆体は、S前駆体、Se前駆体、Te前駆体などを含むことができるが、これに限定されない。
【0071】
Se前駆体は、例えば、塩化セレン(selenium chloride)、元素セレン(Se)、Se-TOP、Se-DPP、Se-ODE、有機セレン化合物、例えば、ジベンジルジセレニド(dibenzyl diselenide)、ジフェニルジセレニド(diphenyl diselenide)又はセレン水素化物等の化合物からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0072】
Te前駆体は、例えば、塩化テルリウム(tellurium chloride)、元素テルリウム(Te)又はテルリウム水素化物からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0073】
第1のシェル14及び第2のシェル16はそれぞれ、AgAlS、AgAlSe、AgAlTe、AgGaS、AgGaSe、AgGaTe、AgInS、AgInSe、AgInTe、AgTiS、AgTiSe、AgTiTe、CuAlS、CuAlSe、CuAlTe、CuGaS、CuGaSe、CuGaTe、CuInS、CuInSe、CuInTe、CuTiS、CuTiSe、CuTiTe、AuAlS、AuAlSe、AuAlTe、AuGaS、AuGaSe、AuGaTe、AuInS、AuInSe、AuInTe、AuTiS、AuTiSe、AuTiTe、AlS、AlSe、AlTe、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、TiS、TiSe、TiTeのうちの1つを含むことができる。
【0074】
一実施形態では、AgInGaS量子ドット10におけるAgInGaSコア12を構成するAg、In及びGa前駆体のモル比は、下記式1で表される。
【0075】
【数2】
【0076】
前記式1において、
1)各元素の前駆体の量は、0.1mmol以上であり、
2)Xが0.32以上0.40未満の場合、量子ドットは、500nm~530nmの発光波長を有し、
3)Xが0.40以上0.60未満の場合、量子ドットは、531nm~580nmの発光波長を有する。
【0077】
式1において、Xが0に近いほど、AgInGaS量子ドットは、発光波長がブルーシフトし、Xが1に近いほど、レッドシフトすることが可能である。
【0078】
量子ドット10の形態は、当該分野で一般的に使用される形態のものであり、特に限定されないが、より具体的には、球状、ピラミッド型、多枝型(multi-arm)、又は立方体(cubic)のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノ繊維、ナノ板状粒子などの形態のものを用いてもよい。
【0079】
量子ドット10は、粒径に応じて放出される光の色を調整することができ、これにより、量子ドット10は、青色、赤色、緑色などの様々な発光色を有することができる。
【0080】
一実施形態によれば、量子ドット10の直径は、1nm~20nm、好ましくは、2nm~15nm、より好ましくは、2nm以上10nmであってもよい。
【0081】
さらに別の態様では、本開示の実施形態によれば、量子ドット10を含むインク組成物を提供することができる。本開示の実施形態によるインク組成物において、量子ドット10に関する事項は、特に断りのない限り、本開示の実施形態による量子ドットと同じである。
【0082】
本実施形態によるインク組成物は、量子ドット10、光硬化型モノマー、光開始剤、光拡散剤を含む光変換インク組成物であってもよい。
【0083】
一実施形態によれば、量子ドット10の含有量は、量子ドットインク組成物の総含有量100重量部に対して、20重量部~60重量部、例えば、25重量部~50重量部、又は30重量部~45重量部であり得る。一実施形態によれば、インク組成物は、溶媒を含まなくてもよい。すなわち、インク組成物は、無溶剤型の量子ドットインク組成物であり得る。一実施形態によれば、インク組成物は、粘度が10cP~25cPであり得る。一実施形態によれば、インク組成物は、25℃での表面張力が、30mN/m以上であり得る。前述の粘度及び/又は表面張力の範囲を満たす場合、インク組成物は、無溶剤型の量子ドットインク組成物として、色変換部材又は発光素子の発光層などの様々な部材を、インクジェットなどの溶液工程に好適に用いることができる。
【0084】
一実施形態によれば、インク組成物を用いて形成された光学部材(optical member)を提供することができる。例えば、光学部材は、色変換部材であってもよい。
【0085】
別の態様によれば、図4を参照すると、一実施形態による電子装置100は、基板110、基板110上に配置された光源120、及び光源120から放出された光の経路に配置された色変換部材130を含み、色変換部材130は、前述したインク組成物を用いて形成することができる。
【0086】
一実施形態によれば、光源120は、発光素子であってもよい。例えば、光源120は、有機発光ダイオード(OLED)又は無機発光ダイオード(ILED又はQLED)であり得る。
【0087】
さらに別の態様では、図5を参照すると、別の実施形態による発光ダイオード200は、量子ドット10を含むことができる。別の実施形態による発光ダイオード200は、アノード210及びカソード230と、その間に位置する中間層220とを含む。中間層220は、前述の量子ドットを含むインク組成物を含む発光層を含むことができる。
【0088】
また、本開示のさらなる態様は、前述した発光ダイオードを含むディスプレイ装置と、ディスプレイ装置を駆動する制御部とを含む電子装置を提供することができる。
【0089】
電子装置は、例えば、表示装置、照明装置、太陽電池、携帯又はモバイル端末(例えば、スマートフォン、タブレット、PDA、電子辞書、PMPなど)、ナビゲーション端末、ゲーム機、各種テレビ、各種コンピュータモニタなどをすべて含むことができ、これらに限定されず、構成物を含むだけであれば、任意の形態の装置を含むことができる。
【0090】
量子ドットを用いた様々な電子素子及び装置への応用は、本技術分野における通常の知識を有する者が容易に適用できるため、その詳細な説明は、省略する。
【0091】
以下では、具体的な実施形態を提示する。ただし、以下に記載される実施例は、開示を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎず、それによって本発明の範囲が限定されるべきではない。
【実施例0092】
(実施例)
(1)製造例1:ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)前駆体溶液の調製
50mLのフラスコに、ヨウ化銀(Silver(I) iodide)0.56g(2.4mmol)と、オレイルアミン(oleylamine)10mL(30mmol)とを入れ、室温(RT)で1時間減圧し、減圧した状態で120℃まで10分間昇温した後、1時間反応した。混合溶液をAr雰囲気にした後、常温に減温して、Ag前駆体溶液を調製した。前駆体溶液のAg濃度は、0.24Mである。
【0093】
(2)製造例2:塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)前駆体溶液の調製
10mLのバイアル(vial)に、塩化インジウム(Indium(III) chloride)0.11g(0.5mmol)と、エタノール5mLとを入れて、In前駆体溶液を調製した。前駆体溶液のIn濃度は、0.10Mである。
【0094】
(3)製造例3:塩化ガリウム-トルエン(Gallium(III) chloride-toluene)前駆体溶液の調製
10mLのバイアルに、塩化ガリウム(Gallium(III) chloride)0.80g(4.54mmol)と、トルエン0.8mLとを入れて、Ga前駆体溶液を調製した。前駆体溶液のGa濃度は、5.68Mである。
【0095】
(4)製造例4:アセチルアセトンガリウム-トルエン(Gallium(III) acetylacetonate-toluene)前駆体溶液の調製
20mLのバイアルに、塩化ガリウム(Gallium(III) chloride)1.67g(4.54mmol)と、トルエン16mLとを入れて、Ga前駆体溶液を調製した。前駆体溶液のGa濃度は、0.28Mである。
【0096】
(5)製造例5:S-オレイルアミン(S-oleylamine)前駆体溶液の調製
50mLのフラスコに、S 0.305g(9.5mmol)と、オレイルアミン(oleylamine)9.5mL(28.5mmol)とを入れ、室温(RT)で30分間減圧し、減圧した状態で120℃まで10分間昇温した後、1時間反応した。混合溶液をアルゴン雰囲気にした後、常温に減温して、S前駆体溶液を調製した。前駆体溶液のS濃度は、1Mである。
【0097】
(6)製造例6:AgInGaS量子ドットコアの製造
1)還流器を備えた50mLの三口丸底フラスコに、製造例4で製造したアセチルアセトンガリウム(Gallium(III) acetylacetonate)及びトリオクチルホスフィンオキシド(trioctylphosphine oxide、TOPO)0.3g、製造例1で製造したヨウ化銀-オレイルアミン(silver(I) iodide-oleylamine)、製造例2で製造した塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)及び1-オクタデセン(1-octadecene)5mlを入れ、120℃に加熱し、真空ポンプを用いて、30分間、0.005トール(torr)程度に維持する。
【0098】
2)次に、N雰囲気に置換した後、120℃で、製造例5で製造したS-オレイルアミン(S-oleylamine)溶液1ml(0.03g、1mmol)と、1-ドデカンチオール(1-dodecanethiol)0.5mlとを注入する。
【0099】
3)S-オレイルアミン(S-oleylamine)溶液の投入後、120℃で30分間、真空ポンプを用いて、0.005torr程度に維持する。そして、310℃の温度で10分間攪拌した後、反応を終了する。
【0100】
4)280℃の温度で、トリスジメチルアミノホスフィン(tris dimethylamino phosphine(PDEA))及びトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine、TOP)の混合溶液5mlを注入した後、常温に減温する。
【0101】
5)調製したAgInGaS量子ドット溶液を2等分し、エタノール42.5mlを満たし、AgInGaSコア-エタノール溶液50mlを用意する。
【0102】
6)前記溶液を5000RPMで5分間遠心分離した後、トルエン1.2mlに分散させる。分散したAgInGaSコア-トルエン溶液を、5000RPMで1分間遠心分離して、不純物を除去し、AgInGaSコア量子ドット溶液を得る。
【0103】
(7)実施例1:AgInGaS/GaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.328]
【0104】
(7-1)実施例1-1:AgInGaS/GaS量子ドットの製造
1)製造例6の過程で、ヨウ化銀(Silver(I) iodide)-オレイルアミン(S-oleylamine)1ml(Ag:0.24mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)2ml(In:0.2mmol)、アセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.135g(Ga:0.37mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコア溶液を調製する。
【0105】
2)還流器を備えた50mLの三口丸底フラスコに、オレイルアミン(oleylamine)16mlを入れ、120℃に加熱し、30分間、真空ポンプを用いて、0.005torr程度に維持する。120℃で窒素雰囲気に置換した後、1)のAgInGaS量子ドットコア溶液を注入し、製造例3で製造した塩化ガリウム-トルエン(Gallium(III) chloride-toluene)溶液0.8ml(0.80g、4.54mmol)及びS-オレイルアミン(S-oleylamine)2mlを注入した後、真空ポンプを用いて、トルエンを除去する。その後、窒素雰囲気に置換した後、310℃で60分間反応を進行する。
【0106】
3)280℃の温度で、トリスジメチルアミノホスフィン(tris dimethylamino phosphine(PDEA))及びトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine、TOP)の混合溶液5mlを注入して、常温に減温した後、AgInGaS/GaS量子ドット溶液を得る。
【0107】
(7-2)実施例1-2:AgInGaS/GaS/GaS量子ドットの製造
1)還流器を備えた50mLの三口丸底フラスコに、オレイルアミン(oleylamine)16mlを入れ、120℃に加熱し、30分間真空ポンプを用いて、0.005torr程度に維持する。120℃で窒素雰囲気に置換した後、AgInGaS/GaS量子ドット溶液を注入し、塩化ガリウム-トルエン(Gallium(III) chloride-toluene)溶液0.8ml及びS-オレイルアミン(S-oleylamine)2mlを注入した後、真空ポンプを使用して、トルエンを除去する。その後、窒素雰囲気に置換した後、310℃で100分間反応を進行する。
【0108】
2)280℃の温度で、トリスジメチルアミノホスフィン(tris dimethylamino phosphine(PDEA))及びトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine、TOP)の混合溶液5mlを注入して、常温に減温した後、量子ドット溶液を得る。
【0109】
(8)実施例2:AgInGaS/GaS/AgGaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.328]
実施例1の実施例1-2のステップ2)で、ヨウ化銀(silver(I) iodide)0.014gを用いたことを除いて、実施例2と同様の方法で量子ドットを得る。
【0110】
(9)実施例3:AgInGaS/AgGaS/AgGaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.328]
実施例1の実施例1-1及び実施例1-2のステップ2)で、ヨウ化銀(silver(I) iodide)0.014gを用いたことを除いて、実施例2と同様の方法で量子ドットを得る。
【0111】
(10)実施例4:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.328]
実施例1の実施例1-1のステップ2)で、ヨウ化銀(silver(I) iodide)0.014gを用いたことを除いて、実施例2と同様の方法で量子ドットを得る。
【0112】
(11)実施例5:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.365]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)0.915ml(Ag:0.22mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)2.3ml(In:0.23mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.15g(Ga:0.41mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に実施例4と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0113】
(12)実施例6:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.397]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)0.9575ml(Ag:0.23mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)2.5ml(In:0.25mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.146g(Ga:0.4mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に実施例4と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0114】
(13)実施例7:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.407]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)1.67ml(Ag:0.4mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)2.4ml(In:0.24mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.0697g(Ga:0.19mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に実施例4と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0115】
(14)実施例8:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.459]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)1.92ml(Ag:0.46mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)2.8ml(In:0.28mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.055g(Ga:0.15mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に実施例4と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0116】
(15)実施例9:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.508]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)1.96ml(Ag:0.47mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)3.1ml(In:0.31mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.051g(Ga:0.14mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に実施例4と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0117】
(16)実施例10:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.557]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)2ml(Ag:0.48mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)3.4ml(In:0.34mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.047g(Ga:0.13mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に実施例4と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0118】
(17)実施例11:AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.596]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)2ml(Ag:0.48mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)3.7ml(In:0.37mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.051g(Ga:0.14mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に実施例4と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0119】
(18)比較例1:AgInGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.328]
実施例1の実施例1-2の過程を除いて、実施例1-1と同様の方法で量子ドットを得る。
【0120】
(19)比較例2:AgInGaS/GaS量子ドットの製造[In/(Ag+Ga)=0.508]
製造例6の過程で、ヨウ化銀-オレイルアミン(Silver(I) iodide-oleylamine)1.96ml(Ag:0.47mmol)、塩化インジウム-エタノール(Indium(III) chloride-ethanol)3.1ml(In:0.31mmol)及びアセチルアセトンガリウム(gallium(III) acetylacetonate)0.051g(Ga:0.14mmol)を用いて、AgInGaS量子ドットコアを製造し、コア上に比較例1と同様の方法でシェルを形成して、量子ドットを得る。
【0121】
(実験例)
表1は、Otsuka Electronics社のQE-2000装備で測定した結果値であり、製造された量子ドットの光特性[発光波長ピーク(Emission Peak)、量子効率(Quantum Yield)、半値幅(Full Width at Half Maximum,FWHM)]を確認した結果を示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表1において、Ag前駆体の量が増加すると、ブルーシフトし、In、Gaの前駆体の量が増加すると、レッドシフトする傾向を示す。
【0124】
これは、量子ドット10を構成するAgの量が増加すると、AgInGaSコア12のバンドギャップ構造において、AgSを構成する電子がAgInGaSコアの価電子帯(valence band)領域で占める比重が増大するにつれて、AgInGaSの全体的なバンドギャップが増加することにより、ブルーシフトする結果であると判断される。
【0125】
また、AgInGaSコア12を構成する前駆体の量が全て同一であり、シェル14の構成が異なる実施例1~実施例4、比較例1及び実施例9[In/(Ag+Ga)=0.328]と、比較例2[In/(Ag+Ga)=0.508]との結果を比較すると、シェル14の構成とは関係なく、AgInGaSコア12を構成する前駆体の量が全て同一であれば、発光波長が全て同一であることを確認することができる。これは、量子ドット10の構成時に、シェル14が発光波長に影響を与えないという結果を示す。
【0126】
波長シフトへの寄与は、AgよりもInが大きいことが確認されている。これは、In前駆体の原子価数(In3+)が相対的に大きいため、量子ドット構成元素との結合寄与度が高く、それに応じて、より大きなサイズのAgInGaS量子ドットの構成が容易な結果であると判断される。一方、Agが波長シフトへの寄与が少ない理由は、Ag前駆体の原子価数が比較的小さく(Ag)、それに応じて、量子ドット構成原子の結合に対する寄与度が小さく、量子ドットの構成が比較的容易でない結果によるものと判断される。
【0127】
本実施形態では、コア12の表面欠陥を低減し、発光効率の向上に寄与するシェル14の形成は、AgInGaS量子ドット10上に、単一シェル14よりも二重シェル14、16又は多重シェル14、16、18からなることが望ましいことがある。
【0128】
表1において、単一シェル(GaS)からなる比較例1及び比較例2の結果と、二重シェルからなる実施例1~実施例11の結果とを比較すると、二重シェルからなる量子ドットの量子効率が、さらに向上した結果を示す。
【0129】
これは、量子ドット10の表面に薄く形成できる外殻シェル16が、コア12と内部シェル14とに比べて、最大のバンドギャップを示すことができ、それにより、表面欠陥をさらに抑制することができることで、量子ドット10の発光効率が向上すると判断される。
【0130】
以上、AgInGaS/GaS/GaS、AgInGaS/GaS/AgGaS、AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットの実施例1~11及び比較例1、2を通じて、AgInGaS量子ドットコアの構成時に、Ag、In及びGa前駆体の量を調整して、発光効率を向上させることができることを説明した。
【0131】
前記の実施例1~11において、第1のシェル14及び第2のシェル16に用いられるI族元素としてAgを、III族元素としてGaを、VI族元素としてSであるAgInGaS/GaS/GaS、AgInGaS/GaS/AgGaS、AgInGaS/AgGaS/GaS量子ドットを代表的に説明したが、第1、2のシェル14、16に含まれるAg以外に、I族元素であり、第1、2のシェル14、16に含まれるIII族元素は、Gaに加えて、Al、In及びTlのうちの一つであり、VI族元素は、Sに加えて、Se及びTeのうちの一つであるAgInGaS/第1のシェル/第2のシェル量子ドットも、AgInGaS量子ドットコアの構成時に、Ag、In及びGa前駆体の量を調整して、発光効率を向上させることができる。
【0132】
以上の説明は、本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明に属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な変形が可能であろう。したがって、本明細書に開示された実施形態は、本発明を限定するものではなく、説明するためのものであり、そのような実施形態によって、本発明の精神及び範囲が限定されるわけではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内のすべての技術は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5