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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076363
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】熱分解ガス化装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 49/02 20060101AFI20240529BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20240529BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240529BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20240529BHJP
【FI】
C10B49/02
C10B53/00
B09B3/40 ZAB
B09B101:75
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196015
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022187163
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大嶺 聖
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004AA02
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA26
4D004CB01
4D004CB31
4D004DA02
(57)【要約】
【課題】低コストかつ小型化を図りつつ、有機系廃棄物及び廃プラスチックの炭化が可能な熱分解ガス化装置を提供する。
【解決手段】熱分解ガス化装置10Aは、有機物を加熱して炭化させる熱分解ガス化装置10Aであって、外筒300Aと、前記外筒300Aの内側に所定の隙間をあけて配置され、前記有機物を収納する容器100と、を備え、前記容器100は、前記有機物の加熱により発生する乾留ガスを排気するための孔112を側壁に有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を加熱することで炭化物を生成する熱分解ガス化装置であって、
前記有機物を収納する容器と、
前記容器の外周部を囲むように配置される外筒と、
を備え、
前記容器は、前記有機物の加熱により発生する乾留ガスを排気するための孔を側壁に有し、
前記容器の側壁と前記外筒の内壁との間には、少なくとも前記乾留ガスが流れる流路が設けられる、
熱分解ガス化装置。
【請求項2】
前記容器の上方には、前記外筒によって囲まれた空間が設けられる
請求項1に記載の熱分解ガス化装置。
【請求項3】
前記容器の長手方向の長さは第1長さであり、
前記外筒の長手方向の長さは前記第1長さよりも長い第2長さである、
請求項2に記載の熱分解ガス化装置。
【請求項4】
前記容器は、複数の容器を含み、
前記外筒は、細長の筒形状であり、
前記複数の容器は、前記外筒の長手方向に重ねて配置される、
請求項1に記載の熱分解ガス化装置。
【請求項5】
前記複数の容器は、第1容器と、当該第1容器上に載置される第2容器とを、少なくとも含み、
前記第1容器は前記孔である第1孔を有し、前記第2容器は前記孔である第2孔を有し、
前記第1容器の前記第1孔と前記第2容器の前記第2孔とは、前記外筒の長手方向に沿って延びる線上に位置する、
請求項4に記載の熱分解ガス化装置。
【請求項6】
前記有機物は、熱分解により乾留ガスを発生し、
前記第1容器の前記第1孔から排出された乾留ガスに着火した火炎は、前記外筒と前記容器との間の前記流路を上昇し、
前記火炎は、前記第2容器内の有機物を加熱して炭化させるとともに、前記第2孔から排出された前記乾留ガスに着火して火炎を発生させる、
請求項5に記載の熱分解ガス化装置。
【請求項7】
前記流路には、乾留ガス及び火炎の流れを調整するための整流板が配置され、
前記整流板は、前記容器の外周部に沿うとともに斜め上方に向かって傾斜する傾斜面を有する、
請求項1に記載の熱分解ガス化装置。
【請求項8】
前記有機物は、有機系廃棄物と廃プラスチックとが所定の割合で混合された混合物である、
請求項1に記載の熱分解ガス化装置。
【請求項9】
前記容器の下方に配置され、前記有機物を加熱するための加熱部を備える、
請求項1に記載の熱分解ガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解ガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレンやポリ塩化ビニル等のいくつかの素材が混ざった廃プラスチックは、分離及び分別が難しいため、多くは焼却処分されている。また、大量に発生する家畜排せつ物や汚泥等の有機廃棄物についても、処理及び処分するのにコストがかかり、一部は焼却処分されている。そこで、有機系廃棄物や廃プラスチック等を安全に燃焼させながら廃棄処理を行いつつ、さらに廃棄処理後に有効利用できる炭化材を得ることが可能な装置が求められている。
【0003】
有機系廃棄物や廃プラスチック等を炭化させるためには、一般的に外部から熱を与えながら空気を遮断して熱分解ガスを得る方法が用いられている。特許文献1には、大量に発生する下水汚泥や家畜排せつ物の処理が可能な大型の炭化炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-336233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来における炭化装置は、大型であるため、高価であり、定期的なメンテナンスも必要となるため、広く導入されている状況ではない。地域活性化を図り、かつ農村地域、小規模自治体でも活用可能とするためには、小規模であって分散型の小型炭化炉の製品化が期待されている。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、低コストかつ小型化を図りつつ、有機系廃棄物及び廃プラスチックの炭化が可能な熱分解ガス化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、有機物を加熱して炭化させる熱分解ガス化装置であって、外筒
と、前記外筒の内側に所定の空間をあけて配置され、前記有機物を収納する容器と、を備え、前記容器は、前記有機物の加熱により発生する乾留ガスを排気するための孔を側壁に有する、熱分解ガス化装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機物を収納する容器の側壁に孔を設けるので、有機物の加熱により孔から排出された乾留ガスを利用して燃焼を起こすことができる。これにより、簡易な装置構成により炭化材を得ることができ、熱分解ガス化装置の低コスト化及び小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の分解斜視図である
図3A】第1の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の断面図である。
図3B】第1の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の平面図である。
図4】第1の実施の形態の第1変形例に係る熱分解ガス化装置の断面図である。
図5A】第1の実施の形態の第2変形例に係る熱分解ガス化装置に使用される整流板の斜視図である。
図5B】第1の実施の形態の第2変形例に係る熱分解ガス化装置に使用される整流板の平面図である。
図6】第1の実施の形態の第2変形例に係る整流板を使用した場合における熱分解ガス化装置を示す斜視図である。
図7】第2の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の斜視図である。
図8】第2の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の分解斜視図である
図9A】第2の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の断面図である。
図9B】第2の実施の形態に係る熱分解ガス化装置の平面図である。
図10】第2の実施の形態の第2変形例に係る熱分解ガス化装置の断面図である。
図11A】第2の実施の形態の第2変形例に係る熱分解ガス化装置に使用される整流板の斜視図である。
図11B】第2の実施の形態の第2変形例に係る熱分解ガス化装置に使用される整流板の平面図である。
図12】第2の実施の形態の第2変形例に係る整流板を使用した場合における熱分解ガス化装置を示す斜視図である。
図13A】第2の実施の形態の第3変形例に係る熱分解ガス化装置の断面図である。
図13B】第2の実施の形態の第3変形例に係る熱分解ガス化装置の平面図である。
図14図10に示す熱分解ガス化装置により有機物の炭化実験を行った場合における3段目の容器及び6段目の容器の温度変化を示すグラフである。
図15図10に示す熱分解ガス化装置により有機物の炭化実験を行った場合における1段目から6段目の各容器内の炭化の収率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
<第1の実施の形態>
[熱分解ガス化装置10Aの構成例]
図1は、第1の実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Aの斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Aの分解斜視図である。図3Aは第1の実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Aの断面図であり、図3Bは熱分解ガス化装置10Aの平面図である。
【0012】
本実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Aは、有機系廃棄物や廃プラスチック等の有機物を加熱することで発生する可燃性の乾留ガスを利用して連続的な燃焼を起こし、有機物を効率的に炭化させるための装置である。乾留ガスには、例えば一酸化炭素、水素、メタン等が含まれる。
【0013】
熱分解ガス化装置10Aは、図1図3に示すように、容器100と、外筒300Aと、着火源400とを備える。なお、本実施の形態において、熱分解ガス化装置10Aを設置した際における容器100及び外筒300Aの長手方向が、熱分解ガス化装置10Aの上下方向及び高さ方向である。また、本実施の形態において容器100及び外筒300Aの中心は、中心軸線Cに一致するものとする。
【0014】
容器100には、有機物が収納される。有機物には、例えば、有機系廃棄物と廃プラスチックとを所定の割合で配合した混合物が用いられる。有機系廃棄物としては、例えば、家畜ふん、農業残さ、下水汚泥等の廃棄物系バイオマス、刈草等の未利用バイオマス等が挙げられる。廃プラスチックとしては、例えば、ビニールハウスにも使用されている市販のポリエチレンシート(PE)、ポリオレフィン系樹脂シート、ポリ塩化ビニルシート、フッ素樹脂シート(硬質フィルム)、ポリプロピレン(PP)、飲料用ペット容器(PE
T)、水道用塩ビパイプ(塩化ビニル:PVC)等が挙げられる。所定の割合の一例として、廃プラスチックは、有機系廃棄物及び廃プラスチックを含む有機物全体に対して、約5~22.5%の質量の範囲であることが好ましい。廃プラスチックを5%以上とすることで有機物を十分に燃焼させることができる。また、廃プラスチックを22.5%以下とすることでススの発生を抑制できる。
【0015】
容器100には、例えば、耐熱機能を有するステンレス等の金属材料が用いられる。容器100は、容器本体110と、蓋120と、を有する。容器本体110は、中心軸線Cに沿って延びる細長の円筒形状からなる。容器本体110の下端(長手方向の一端)には底壁が設けられ、容器本体110の上端(長手方向の他端)は開口している。蓋120は、容器本体110の上部に装着可能であり、上端開口を塞ぐことで容器100内を密閉状態とする。容器100の高さ方向(長手方向)の高さh1(第1長さ)は、図3Aに示すように、例えば0.5m~1.0m程度である。また、容器100の直径D1は、図3Bに示すように、例えば50mm~150mmである。
【0016】
容器本体110の側壁下部には、図1図2及び図3Bに示すように、その側壁を厚み方向に貫通する複数の孔112が形成されている。複数の孔112は、容器本体110内に充填された有機物の熱分解により発生した乾留ガスを外部に排出するとともに、容器本体110内に空気を送る通気口として機能する。孔112の孔径は、例えば、容器本体110内に収納される有機物や炭化した炭化材が漏れ出さない程度の大きさであることが好ましい。本実施の形態において複数の孔112は、図3Bに示すように、例えば3個で構成される。3個の孔112は、中心軸線Cを中心とする容器本体110の側壁の円周方向に等間隔(120°)に形成されている。
【0017】
なお、孔112は、容器本体110の中間部及び上部に形成してもよい。この場合、有機物の燃焼により発生した乾留ガスを容器本体110の中間部及び上部から排出できるので、これらの孔112から排出された乾留ガスに火炎が着火することにより、容器本体110の中間部及び上部でも連続的に燃焼を起こすことができる。一方で、容器本体110の中間部及び上部に孔112を形成した場合、容器本体110の中間部及び上部の孔112から乾留ガスが燃焼せずにそのまま外部に排出されてしまう場合もある。そのため、熱分解ガス化装置10Aを使用する環境、設計等に応じて孔112の形成位置を決定することが好ましい。また、上述した実施の形態では、3個の孔112を容器100に形成したが、孔112の個数は3個に限定されることはなく、単数でもよいし、3個以外の複数であってもよい。また、本実施の形態では、容器100を円筒形状としたが、この形状に限定されることはなく、有機物を収納することができれば、例えば角筒であってもよい。
【0018】
外筒300Aは、図1等に示すように、中心軸線Cに沿って延びる細長の円筒形状からなる。外筒300Aの下端及び上端は、それぞれ開口している。外筒300Aは、容器100よりも長くかつ容器100よりも直径が大きい。具体的には、図3Aに示すように、外筒300Aの高さh2(第2長さ)は、容器100の高さh1よりも0.5m~1.0mほど高くすることが好ましく、例えば1.0m~2.0mである。外筒300Aの取り回しや、安全性を考慮すると外筒300Aの高さh2(第2長さ)は、例えば1.0m~1.5m程度であることがより好ましく考慮される。また、外筒300Aの内径D2は、容器100の直径D1よりも15mm~20mm程度大きくすることが好ましく、例えば65mm~170mmである。なお、外筒300Aについても円筒形状に限定されることはなく、容器100との間に隙間を形成できれば、例えば角筒であってもよい。
【0019】
外筒300Aの下端部には、外部から外筒300A内に空気を流入させるための流入口302が形成されている。本実施の形態では、流入口302を1箇所としているが、これに限定されることはなく、流入口302を複数箇所に形成してもよい。また、外筒300
Aを着火源400に対して浮かせて配置することで、その隙間を流入口302として機能させてもよい。後述する着火源400に通気口を設けることで、外部の空気を外筒300A内に流入させてもよい。
【0020】
外筒300Aは、容器100の側壁を囲むように、容器100の外側に配置される。これにより、外筒300Aの内壁と容器100の側壁との間には流路Pが形成されるとともに、容器100の上方には外筒300Aによって囲まれた空間Sが形成される。流路Pは、流入口302から吸い込まれた空気、容器100の孔112から排出された乾留ガス、乾留ガスへの着火により発生する火炎等を、容器100の下部から上部に向かって流すための隙間である。例えば、流路Pの幅W1は、図3Bに示すように、全周に亘って略均一な幅であり、15mm~20mm程度である。空間Sは、流路Pを上昇する空気及び乾留ガスを流入させることで混合気体を生成したり、生成した混合気体を一時的に溜めたりする空間として機能する。なお、例えば、外筒300Aの下部に、保温することで乾留ガスの発生を促進するための保温材や断熱材を巻き付けてもよい。
【0021】
着火源400は、容器100及び外筒300Aの下方に配置され、着火、燃焼することで容器100内に収納された有機物を加熱する。着火源400には、例えば、ガスコンロ、電気コンロ、アルコールランプ、アルコールストーブ又は炭等が用いられる。また、着火源400は、容器100を載置するための載置部410を有する。載置部410は、着火源400の上面に対して所定の高さを有し、容器100を着火源400の上面の例えば着火口から離れた位置で保持する。
【0022】
[熱分解ガス化装置10Aの動作例]
次に、本実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Aを使用して容器100内の有機物を炭化させるまでの流れについて図1図3を参照して説明する。なお、図3Aでは、容器100内を下部の有機物O1と中間部及び上部の有機物O2との2段構成で便宜上図示しているが、これに限定されるものではない。
【0023】
まず、作業者により着火源400が着火(点火)されると、外筒300Aの流入口302から流入する空気とガスとが反応して燃焼する。着火源400が燃焼すると、図3A等に示すように、その火炎によって容器100内の下部に充填されている有機物O1が加熱される。容器100内の有機物O1が加熱されると、有機物O1が熱分解されることで乾留ガスが発生するとともに、容器100内の有機物O1が炭化して炭化材が生成される。
【0024】
容器100内で発生した乾留ガスは、容器100の下部の孔112から流路Pに排出される。流路Pに排出された乾留ガスは、着火源400の火炎等によって着火して燃焼し、その火炎が流路Pを上昇していく。これにより、例えば、容器100内の中間部及び上部に充填されている有機物O2が加熱される。有機物O2が加熱されると、有機物O2が炭化して炭化材が生成される。
【0025】
また、本実施の形態では、流入口302から流入した空気及び容器100の孔112から排出された乾留ガスが、流路Pで発生した上昇気流に乗って上昇し、容器100の上方に形成された空間Sに流入する。空間Sに流入した空気及び乾留ガスは混合され、混合された混合気体が流路Pを上昇する火炎によって着火して燃焼する。これにより、容器100の上部や容器100の上方の空間Sでも燃焼が起こるので、容器100内の上部及び中間部の有機物が加熱され、有機物O2が炭化して炭化材が生成される。
【0026】
なお、有機物の炭化作業時には、容器100の下部の有機物の方が上部よりも着火源400に近く、早く炭化する。そのため、炭化作業開始から所定時間後に、容器100の下部において炭化した炭化材を取り出し、その後、容器100の上部の蓋120を開いて新たな有機物を投入してもよい。
【0027】
以上のように第1の実施の形態によれば、家畜ふん、下水汚泥などの廃棄物系バイオマス、刈草などの未利用バイオマス、PETや農業用ポリエチレンシート等の廃棄物を資材として活用するので、燃料費用がほぼかからず、資材の低コスト化を図ることができる。また、本実施の形態によれば、有機系廃棄物や廃プラスチックから炭化材を得ることができるので、得られた炭化材を燃料又は土壌改良材として有効利用できる。
【0028】
また、第1の実施の形態によれば、容器100の上方であって外筒300Aの内側に空間Sを形成するので、上昇気流に乗って流路Pを流れる空気、乾留ガスを空間Sに流入させることで空間S内において混合気体を生成できる。また、空間S内に一時的に生成した混合気体を溜めることもできる。これらにより、流路Pを上昇してきた火炎に混合気体が着火することで、容器100の上部やその上方で燃焼を起こすことができる。その結果、容器100の上部やその近傍の中間部においても、容器100内の有機物を加熱することができ、着火用の燃料を除けば外部からの熱を与えずに連続的に燃焼を続けることができる。したがって、長尺状の容器100を使用した場合でも、容器100の下部から上部に向かって連続で燃焼を起こすことができるので、容器100の容量に応じた一定量の炭化材を効率的に得ることができる。さらには、簡易な装置構成により、長尺状の容器100内に充填した有機物全体を炭化できるので、熱分解ガス化装置10Aの低コスト化及び小型化を図ることができる。その結果、農村地域、小規模自治体であっても導入することができ、地域活性化を図ることができる。
【0029】
また、第1の実施の形態によれば、容器100の外周部の全周に亘って幅W1の流路Pを設けるので、熱の温度を十分に上げることができる。また、容器100内を略均一に加熱することができる。これらにより、細長の容器100を使用した場合でも、容器100の内部の有機物を効率的に炭化させることができる。
【0030】
<第1の実施の形態の第1変形例>
第1の実施の形態の第1変形例では、容器100よりも低い外筒300Bを用いて熱分解ガス化装置10Bを構成する点において上記第1の実施の形態と相違している。なお、第1変形例において、第1の実施の形態と共通する構成及び動作については、第1の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0031】
図4は、第1の実施の形態の第1変形例に係る熱分解ガス化装置10Bの断面図である。なお、図4では、容器100については便宜上断面で図示していない。
【0032】
熱分解ガス化装置10Bは、容器100と、容器100の外周部を囲むように配置される外筒300Bとを備える。容器100の側壁と外筒300Bの内壁との間には、流入口302から取り込まれた空気、容器100の孔112から排出された乾留ガス、乾留ガス等に着火した火炎が通過する流路Pが設けられる。
【0033】
第1の実施の形態の第1変形例では、図4に示すように、容器100の高さh3は、外筒300Bの高さh4よりも高い。そのため、容器100の上端部が外筒300Bの上端縁から突出し、容器100の少なくとも蓋120が外筒300Bの上部から外部に露出する。例えば、容器100の高さh3は0.5m~1.0mであり、外筒300Bの高さh4は0.3m~0.9mである。
【0034】
熱分解ガス化装置10Bを使用した有機物の炭化作業では、容器100の下部での燃焼が強いため、容器100の下部での有機物の炭化が早い。この場合、炭化した有機物を取り出し、新たな有機物を投入することで連続的、継続的な有機物の炭化を実現できる。第
1変形例によれば、蓋120が外筒300Bの上部から外部に露出しているので、蓋120を容器本体110から容易に取り外すことができる。これにより、炭化作業を継続した状態において、容器100の下部から炭化物を取り出した後、容器100の上部開口から新たな有機物を投入でき、有機物の炭化作業の効率化を図ることができる。
【0035】
<第1の実施の形態の第2変形例>
第1の実施の形態の第2変形例の熱分解ガス化装置10Cでは、空気、乾留ガス及び火炎の流れを整流するための整流板500Aを使用する。なお、第2変形例では、整流板500Aを第1の実施の形態の容器100に取り付けた場合について説明する。また、第2変形例において、第1の実施の形態と共通する構成及び動作については、第1の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0036】
[熱分解ガス化装置10Cの構成例]
図5Aは熱分解ガス化装置10Cに使用される整流板500Aの斜視図であり、図5Bは整流板500Aの平面図である。図6は、整流板500Aを容器100に取り付けた場合における熱分解ガス化装置10Cを示す斜視図である。なお、図5Bでは、取付片510bを便宜上水平方向に倒した状態で示している。
【0037】
整流板500Aは、図5A及び図6等に示すように、容器100の側壁の外周部であって流路Pに張り出すように取り付けられ、容器100と外筒300Aとの間の流路Pを上昇する空気、乾留ガス及び火炎を容器100の円周方向に渦を巻くように整流する。なお、本実施の形態において、空気等が渦を巻いて上昇する円周方向の一の方向(矢印方向)を渦巻方向Uと呼ぶ。
【0038】
整流板500Aは、図5A及び図5Bに示すように、取付部510と、固定部520と、傾斜部550と、を備える。整流板500Aの取付部510等の各構成部は、例えば、一枚の平板を切断、折り曲げ等の加工を施すことで形成してもよいし、別々に用意した取付部510等を溶接、ねじ等で締結することで形成してもよい。
【0039】
取付部510は、環状体510aと、複数の取付片510bとを有する。環状体510aは、容器100の外径と略同一の大きさの開口を有し、容器100の外周部に沿うように取り付け可能となっている。複数の取付片510bは、環状体510aの内側開口縁から容器100の側壁に沿うように立設するとともに、環状体510aの円周方向に沿って配置されている。取付片510bを含む容器100の外周部には、図6に示すように、複数の取付片510bを内側に押さえ付けるように、帯状の締結部材560が巻き付けられる。これにより、整流板500Aが容器100の高さ方向における所定位置で固定される。
【0040】
固定部520は、環状体510aの外縁部から径方向に突出した部位であり、外筒300Aの内壁に当接可能に構成されている。具体的には、固定部520の径方向における中心軸線Cから固定部520の先端面までの長さ(径)L1は、外筒300Aの内径D2(図3B参照)と略同一である。本実施の形態では、固定部520は3箇所に設けられ、これらの固定部520が環状体510aの円周方向に等間隔で配置されている。これにより、整流板500Aを取り付けた容器100を外筒300Aの内側に設置すると、3箇所の固定部520が外筒300Aの内壁に当接又は当接可能となり、外筒300Aの内側での容器100の水平方向(左右方向、前後方向)の動きが規制される。
【0041】
傾斜部550は、環状体510aの外縁部から径方向に突出するとともに、環状体510aに沿うように形成されている。傾斜部550は、中心軸線Cに直交する水平面に対して所定の角度で傾斜している。本実施の形態では、傾斜部550は3箇所に設けられ、3箇所の傾斜部550が環状体510aの円周方向に等間隔で配置されている。隣接する傾斜部550,550間には、空気、乾留ガス及び火炎が通過可能な隙間Gが設けられている。
【0042】
傾斜部550は、第1傾斜部550aと、第2傾斜部550bと、を有する。第1傾斜部550aは、第2傾斜部550bよりも渦巻方向Uの下流側に位置し、水平面に対して斜め下方に傾斜している。第1傾斜部550aの幅は、渦巻方向Uの下流から上流に向かって狭くなっている。第2傾斜部550bは、第1傾斜部550aよりも渦巻方向Uの上流側に位置し、水平面に対して斜め上方に傾斜している。第2傾斜部550bの幅は、渦巻方向Uの下流から上流に向かって広くなっている。本実施の形態では、第1傾斜部550aと第2傾斜部550bとにより、側面視で略斜め上方に傾斜しかつ容器100の外周部に沿うように略螺旋状に延びる傾斜部550を構成している。なお、第1傾斜部550aと第2傾斜部550bとを固定部520を挟んで配置しているが、第1傾斜部550aと第2傾斜部550bとを連続して配置してもよい。
【0043】
[熱分解ガス化装置10Cの動作例]
次に、本実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Cを使用して容器100内の有機物を炭化させるまでの流れについて図5A及び図6等を参照して説明する。
【0044】
まず、所定の場所に着火源400を設置する。続けて、着火源400の周辺に設置された外枠に外筒300Aを針金等を使用して締結する。続けて、例えば容器100の下部から中間部の間の3箇所に整流板500Aをそれぞれ取り付け、外筒300Aの内側に容器100を配置する。このとき、整流板500Aの固定部520が外筒300Aの内壁に接触することで容器100の外筒300A内での位置ずれが防止される。また、整流板500Aの固定部520によって、容器100の周壁と外筒300Aの内壁との間の流路Pが確保される。
【0045】
作業者により着火源400が着火されると、空気とガスとが反応して燃焼が起こり、容器100の下部が加熱される。容器100の下部が加熱されると、容器100内の有機物が熱分解することで乾留ガスが発生するとともに、有機物が炭化される。乾留ガスは、容器100の下部に形成された孔112から排出され、流路Pを上昇する火炎等によって着火する。
【0046】
第1の実施の形態の第2変形例では、空気、乾留ガス、火炎の一部は、整流板500Aの傾斜部550の裏面に沿うように斜め上方に流れる。また、整流板500Aに沿って流れる空気、乾留ガス、火炎等は、整流板500Aの隙間Gを通過して流路Pを上昇する。このようにして、空気、乾留ガス、火炎は、全体として渦を巻くように、流路Pの下部から上部に向かって流れる。渦を巻く流れは、一旦形成されると、整流板500Aのない容器100等の外周部においても維持される。
【0047】
第1の実施の形態の第2変形例によれば、容器100の外周部に整流板500Aを取り付けるので、容器100の外周部に略螺旋状に渦を巻くように、空気、乾留ガス、火炎を整流することができる。これにより、容器100の外周部の全周であってかつ容器100の下部から上部に亘って、略均一に加熱することができ、細長の容器100内の有機物の全部を効率的に炭化させることができる。
【0048】
なお、図6では、3個の整流板500Aを容器100の下部から中間部の間に取り付けた例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、整流板500Aを容器100の下部から上部の間に取り付けてもよい。また、整流板500Aを容器100に取り付ける個数は、3個以外であってもよい。
【0049】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、有機物を複数の容器200a~200fに小分けして収容する点において第1の実施の形態とは相違している。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と共通する構成及び動作については、第1の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0050】
[熱分解ガス化装置10Dの構成例]
図7は、第2の実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Dの斜視図である。図8は、第2の実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Dの分解斜視図である。図9Aは第2の実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Dの断面図であり、図9Bは熱分解ガス化装置10Dの平面図である。なお、図9Aでは、容器200a~200fについては便宜上断面で示していない部位がある。
【0051】
熱分解ガス化装置10Dは、図7図9に示すように、複数の容器200a~200fと、外筒300Cと、着火源400と、を備える。
【0052】
複数の容器200a~200fは、外筒300Cの内側であって高さ方向の中心軸線Cに沿うように積み重ねて配置される。具体的には、容器200a(第1容器)の上面に容器200b(第2容器)が載置され、容器200bの上面に容器200cが載置され、容器200cの上面に容器200dが載置され、容器200dの上面に容器200eが載置され、容器200eの上面に容器200fが載置される。容器200a~200fのそれぞれには、有機系廃棄物と廃プラスチックとがそれぞれ所定の割合で混合された有機物が収納される。なお、第2の実施の形態に係る6個の容器200a~200fは、同一の大きさであり、同一の構成及び機能を有するため、以下では代表して容器200aについてのみ説明する。
【0053】
容器200aには、例えば、耐熱機能を有するステンレス等の金属材料が用いられる。容器200aは、容器本体210aと、蓋220aと、を有する。容器本体210aは、第1の実施の形態の容器100よりも高さが低い細長の円筒形状からなる。容器本体21
0aの下端には底壁が設けられ、容器本体210aの上端は開口している。蓋220aは、容器本体210aの上部に装着可能であり、上端開口を塞ぐことで容器200a内を密閉状態とする。容器200aの高さh5aは、図9Aに示すように、例えば40mm~170mm程度であり、容器200a~200fを積層した際の高さh5は、例えば240mm~1020mmである。また、容器200aの直径D3は、図9Bに示すように、例えば50mm~150mmである。
【0054】
容器本体210aの側壁には、その側壁を厚み方向に貫通する複数の孔212aが形成されている。複数の孔212aは、容器本体210a内に充填された有機物の熱分解により発生した乾留ガスを外部に排出するとともに、容器本体210a内に空気を送る通気口として機能する。孔212aの孔径は、例えば、容器本体210a内に収納される有機物やその有機物が炭化した炭化材が漏れ出さない程度の大きさであることが好ましい。複数の孔212aは、図9Bに示すように、例えば3個で構成される。3個の孔212aは、容器本体210aの中心軸線Cを基準として容器本体210aの側壁の円周方向に等間隔(120°)で形成されている。
【0055】
容器200b~200fにも、容器200aと同一の個数及び配置にて複数の孔212b~212fが形成されている。本実施の形態では、図8に示すように、円周方向において同一角度に配置された容器200aの孔212a(第1孔)、容器200bの孔212b(第2孔)、容器200cの孔212c、容器200dの孔212d、容器200eの孔212e及び容器200fの孔212fは、外筒300Cの中心軸線Cに平行に延びる仮想線L上に位置している。すなわち、各孔212a,212b,212c,212d,212e,212fは、左右方向(水平方向)の位置が同一となるように高さ方向に並んで配置される。なお、図8では、中心軸線Cと仮想線Lとを重ねて表示しているが、仮想線Lは実際には中心軸線Cの前方にずれている。
【0056】
なお、本実施の形態では、容器200a等を円筒形状としたが、この形状に限定されることはなく、有機物を収納することができれば、例えば角筒であってもよい。また、上述した実施の形態では、複数の孔212a~212fを容器200a~200fの周壁に規則的に形成したが、上述したパターン(配列)に限定されることはない。孔212a~212fの個数は、3個に限定されることはなく、単数でもよいし、3個以外の複数であってもよい。
【0057】
外筒300Cは、図7等に示すように、中心軸線Cに沿って延びる細長の円筒形状からなる。外筒300Cの下端及び上端は、それぞれ開口している。外筒300Cの下端部には、外部から外筒300C内に空気を流入させるための流入口302が形成されている。外筒300Cは、容器200a~200fを積載した際の積載高さよりも高くかつ容器200a等よりも直径が大きい。具体的には、図9Aに示すように、外筒300Cの高さh6は、容器200a~200fを積載した際の高さh5よりも0.5m~1mほど長くすることが好ましく、例えば0.7m~2.0mである。また、外筒300Cの内径D4は、容器200fの直径D3よりも15mm~20mm程度大きくすることが好ましく、図9Bに示すように、例えば65mm~170mmである。
【0058】
外筒300Cは、積載された容器200a~200fの側壁の外周部を囲むように、容器200a~200fの外側に配置される。これにより、外筒300Cの内壁と容器200a~200fの側壁との間には流路Pが形成されるとともに、最上段の容器200fの上方には外筒300Cによって囲まれた空間Sが形成される。流路Pは、流入口302から吸い込まれた空気、容器200aの孔212a等から排出された乾留ガス、乾留ガスへの着火により発生する火炎等を、最下段(1段目)の容器200aから最上段の容器200fに向かって流すための隙間である。例えば、流路Pの幅W2は、図9Bに示すように、全周に亘って略均一な幅であり、15mm~20mm程度である。空間Sは、流入口302等から吸い込まれた空気及び容器200aの孔212a等から漏れ出した乾留ガスを流路Pを経由して流入させながら混合したり、混合した混合気体を一時的に溜めたりする空間として機能する。
【0059】
着火源400は、容器200a及び外筒300Cの下方に配置され、着火、燃焼することで主に最下段の容器200a内に収納された有機物を加熱する。また、着火源400は、容器200a~200fを載置するための載置部410を有する。
【0060】
[熱分解ガス化装置10Dの動作例]
次に、本実施の形態に係る熱分解ガス化装置10Dを使用して有機物を炭化させるまでの流れについて図7図9を参照して説明する。
【0061】
まず、作業者により着火源400が着火されると、外筒300Cの流入口302から流入する空気とガスとが反応して燃焼する。着火源400が燃焼すると、図9A等に示すように、その火炎によって最下段の容器200a内に充填されている有機物Oaが加熱される。容器200a内の有機物Oaが加熱されると、有機物Oaが熱分解されることで乾留ガスが発生するとともに、容器200a内の有機物Oaが炭化して炭化材が生成される。
【0062】
容器200a内で発生した乾留ガスは、容器200aの孔212aから流路Pに排出さ
れる。流路Pに排出された乾留ガスは、着火源400の火炎によって着火して燃焼し、その火炎が流路Pを上昇する。これにより、例えば、容器200a上の容器200b内に充填されている有機物O2が加熱される。有機物Obが加熱されると、有機物Obが熱分解されることで乾留ガスが発生するとともに、容器200b内の有機物Obが炭化して炭化材が生成される。
【0063】
容器200b内で発生した乾留ガスは、容器200bの孔212bから流路Pに排出される。流路Pに排出された乾留ガスは、下方の容器200a等で発生した火炎等によって着火して燃焼し、その火炎が流路Pを上昇する。これにより、例えば、容器200b上の容器200c内に充填されている有機物Ocが加熱される。容器200c内の有機物Ocが加熱されると、有機物Ocが熱分解されることで乾留ガスが発生するとともに、容器200c内の有機物Ocが炭化して炭化材が生成される。容器200c内で発生した乾留ガスは、容器200cの孔212cから流路Pを上昇する。
【0064】
容器200d~200fにおいても、自身よりも下方で発生した火炎により加熱されることで乾留ガスが発生し、発生した乾留ガスが火炎によって着火してさらに燃焼する。このように、第2の本実施の形態では、有機物の加熱、有機物の熱分解による乾留ガスの発生(有機物の炭化)、乾留ガスへの着火による燃焼(火炎の発生)のサイクルが、高さ方向に積載された容器200a~200fにおいて連続的に発生する。
【0065】
また、本実施の形態では、流入口302から流入した空気及び各容器200a~200fの孔212a~212fから排出された乾留ガスが、流路Pで発生した上昇気流に乗って上昇し、容器200fの上方に形成された空間Sに流入する。空間Sに流入した空気及び乾留ガスは混合され、混合された混合気体が流路Pを上昇する火炎によって着火してさらに燃焼する。これにより、容器200fの上方の空間Sにおいて燃焼が起こるので、上段側の容器200fでの有機物Ofの炭化がさらに促進される。
【0066】
以上のように第2の実施の形態によれば、複数の容器200a~200fに小分けにして有機物を収容し、各容器200a~200fで発生した乾留ガスを自身に形成された孔212a~212fから排出できるので、発生した乾留ガスが燃焼せずにそのまま外部に抜ける割合を少なくできる。これにより、有機物の加熱、有機物の熱分解による乾留ガスの発生(有機物の炭化)、乾留ガスへの着火による燃焼(火炎の発生)のサイクルを、最下段の容器200aから最上段の容器200fに向かって順番に連続的に発生させることができるので、各容器200a~200f内の有機物を効率的に燃焼、炭化させることができる。したがって、簡易な装置構成により、複数の容器200a~200f内の有機物全体を炭化できるので、熱分解ガス化装置10Dの低コスト化及び小型化を実現できる。その結果、農村地域、小規模自治体であっても導入することができ、地域活性化を図ることができる。
【0067】
また、第2の実施の形態によれば、複数の容器200a~200fの側壁に孔212a~212fを形成し、複数の孔212a~212fを仮想線L上に揃うように容器200a~200fを配置するので、各孔212a~212fから排出された乾留ガスに火炎が着火することで、最下段の容器200aから最上段の容器200fに向かって連続的に燃焼(自燃)を起こすことができる。これにより、各容器200a~200fにおいてより効率的に燃焼を発生させることができ、各容器200a~200fの容量に応じた一定量の炭化材を効率的に得ることができる。
【0068】
また、第2の実施の形態では、家畜ふん、下水汚泥などの廃棄物系バイオマス、刈草などの未利用バイオマス、PETや農業用ポリエチレンシート等の廃棄物を資材として活用するので、燃料費用がほぼかからず、資材の低コスト化を図ることができる。また、本実
施の形態によれば、有機系廃棄物や廃プラスチックから炭化材を得ることができるので、得られた炭化材を燃料又は土壌改良材として有効利用できる。
【0069】
また、第2の実施の形態によれば、容器200fの上方であって外筒300Cの内側に空間Sを形成するので、上昇気流に乗って流路Pを流れる空気、乾留ガスを空間Sに流入させることで空間S内で混合気体を生成できる。また、空間S内において生成した混合気体を一時的に溜めることもできる。これらにより、流路Pを上昇してきた火炎に混合気体が着火することで、容器200fの上方で燃焼を起こすことができる。その結果、容器200fやその近傍の容器200e等においても有機物を加熱することができ、着火用の燃料を除けば外部からの熱を与えずに連続的に燃焼を続けることができる。
【0070】
また、第2の実施の形態によれば、容器200a~200fの外周部の全周に幅W2の流路Pを設けるので、熱の温度を十分に上げることができるとともに、各容器200a~200fを略均一に加熱できる。これらにより、小分けした容器200a~200fを使用した場合でも、容器200a~200fの内部の有機物を効率的に炭化させることができる。
【0071】
また、第2の実施の形態では、図示しないものの、外筒300Cの下端部に設けられた流入口302および流入口302の周囲の外壁部分とを含み、左右一方の端部が蝶番等により開閉自在とされた容器取り出し口が設けられていてもよい。該容器取り出し口が設けられていることにより、容器内の有機物の炭化が完了し、乾留ガスを生じ切った炭化材が収容された容器200aを前記容器取り出し口より簡便に取り出すことができる。容器200aを取り出すと、容器200aの上方に積載されていた容器200b~容器200fが達磨落としのように外筒300C内を落下し、容器200bが着火源400により直接加熱されることにより、乾留ガスの発生ならびに有機物の炭化が効率的に行われる。さらに、外筒300Cの開口した上部より有機物を収容した容器200gを、外筒300C内に新たに投入することにより、連続的な乾留ガスの発生、燃焼、炭化材の生産を図ることができる。
【0072】
<第2の実施の形態の第1変形例>
第2の実施の形態の第1変形例の熱分解ガス化装置10Eでは、積載した容器200a~200fの積載した高さよりも外筒300Dの高さを低く構成し、最上段に配置される容器200fを外筒300Dから突出させる点において上記第1の実施の形態と相違している。なお、第2の実施の形態の第1変形例において、第2の実施の形態と共通する構成及び動作については、第2の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0073】
図10は、第2の実施の形態の第1変形例に係る熱分解ガス化装置10Eの断面図である。なお、図10では、容器200a~200fについては便宜上断面で図示していない。
【0074】
熱分解ガス化装置10Eは、高さ方向に積載される6個の容器200a~200fと、容器200a~200fの外周部を囲むように配置される外筒300Dと、を備える。容器200a~200fの側壁と外筒300Dの内壁との間には、流入口302から取り込まれた空気、容器200aの孔212a等から排出された乾留ガス、乾留ガス等に着火した火炎が通過する流路Pが設けられる。
【0075】
第2の実施の形態の第1変形例では、図10に示すように、高さ方向に積載された容器200a~200fの積載高さh7は、外筒300Dの高さh8よりも高い。そのため、最上段の容器200fの上端部が外筒300Dの上端縁から突出し、容器200fの少な
くとも蓋220fが外筒300Dの上部から外部に露出している。例えば、容器200fの高さh7aは40mm~170mm程度であり、容器200a~200fを積載した際の高さh7は240mm~1020mm程度、外筒300Dの高さh8は0.15m~0.9mである。
【0076】
熱分解ガス化装置10Eを使用した有機物の炭化作業では、最下段の容器200aでの燃焼が強いため、容器200aでの有機物の炭化が早い。この場合、炭化した有機物を取り出し、新たな有機物を投入することで連続的、継続的な有機物の炭化を実現できる。第1変形例によれば、最上段の容器200fの蓋220fが外筒300Dの上部から外部に露出しているので、蓋220fを容器本体210fから容易に取り外すことができる。これにより、炭化作業を継続した状態において、最下段の容器200aから炭化物を取り出した後、最上段の容器200fの上部開口から新たな有機物を投入でき、有機物の炭化作業の効率化を図ることができる。
【0077】
<第2の実施の形態の第2変形例>
第2の実施の形態の第2変形例の熱分解ガス化装置10Fでは、空気、乾留ガス及び火炎の流れを整流するための整流板500Bを使用する。なお、第2変形例では、第2の実施の形態の熱分解ガス化装置10Dに整流板500Bを適用した例について説明する。また、第2変形例において、第2の実施の形態と共通する構成及び動作については、第2の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0078】
[熱分解ガス化装置10Fの構成例]
図11Aは熱分解ガス化装置10Fに使用される整流板500Bの斜視図であり、図11Bは整流板500Bの平面図である。図12は、整流板500Bを使用した場合における熱分解ガス化装置10Fを示す斜視図である。なお、図11Bでは、支持部530を便宜上水平方向に倒した状態で示している。
【0079】
整流板500Bは、上下に積載される容器200a,200b間、容器200b,200c間、容器200c,200d間に挿入して使用される。整流板500Bは、容器200a~200fと外筒300Cとの間の流路Pを上昇する空気、乾留ガス及び火炎を容器200a等の円周方向に渦を巻くように整流する。なお、本実施の形態において、空気等が渦を巻いて上昇する円周方向の一の方向(矢印方向)を渦巻方向Uと呼ぶ。
【0080】
整流板500Bは、載置部502と、固定部520と、支持部530と、傾斜部550と、を備える。整流板500Bの載置部502等の各構成部は、例えば、一枚の平板を切断、折り曲げ等の加工を施すことで形成してもよいし、別々に用意した載置部502等の構成部を溶接、ねじ等で接続することで形成してもよい。
【0081】
載置部502は、平面視円形状であり、容器200b等の底面の直径と略同一の大きさの径を有する。載置部502の上面には、容器200b等が載置可能である。
【0082】
固定部520は、載置部502の周縁部から径方向に突出した部位であり、外筒300Cの内壁に当接可能である。具体的には、整流板500Bにおける中心軸線Cから固定部520の先端面までの長さL2は、外筒300Cの内径D4(図11B参照)と略同一である。本実施の形態では、固定部520は3箇所に設けられ、これらの固定部520が載置部502の円周方向に等間隔(120°)で配置されている。整流板500Bを使用した状態で容器200a等を外筒300Cの内側に配置すると、3箇所の固定部520が外筒300Cの内壁に当接又は当接可能となる。これにより、外筒300Cの内側での容器200a等の水平方向(左右方向、前後方向)の動きが規制され、整流板500Bの外筒300C内での位置ずれが防止される。
【0083】
支持部530は、載置部502の周縁部から載置面に対して直交する方向に立設され、その内側に配置される容器200b等の側壁に当接可能である。変形例1では、支持部530は、載置部502の円周方向に等間隔で3箇所に配置されている。つまり、支持部530は、載置部502上に載置される容器200b等の外周部を囲むように配置される。これにより、載置部502上であって支持部530の内側に容器200b等が配置されると、容器200b等の側壁が支持部530に接触することによって支持されることで、容器200b等の水平方向の移動が規制され、容器200bが整流板500Bを介して容器200aの所定位置に固定される。
【0084】
傾斜部550は、載置部502の周縁部から径方向に突出するとともに、載置部502の外周形状に沿うように形成されている。傾斜部550は、水平面に対して所定の角度で傾斜している。本実施の形態では、傾斜部550は3箇所に設けられ、3箇所の傾斜部550が環状体510aの円周方向に等間隔(120度)で配置されている。隣接する傾斜部550,550間には、空気、乾留ガス及び火炎が通過可能な隙間Gが設けられている。傾斜部550は、第1傾斜部550aと、第2傾斜部550bと、を有する。第1傾斜部550aは、第2傾斜部550bよりも渦巻方向Uの下流側に位置し、水平面に対して斜め下方に傾斜している。第2傾斜部550bは、第1傾斜部550aよりも渦巻方向Uの上流側に位置し、水平面に対して斜め上方に傾斜している。本実施の形態では、第1傾斜部550aと第2傾斜部550bとにより、側面視で略斜め上方に傾斜しかつ容器200a等の外周部に沿って略螺旋状に延びる傾斜部550を構成している。
【0085】
[熱分解ガス化装置10Fの使用例]
次に、熱分解ガス化装置10Fを使用して有機物を炭化させるまでの流れについて図11A及び図12等を参照して説明する。
【0086】
まず、所定の場所に着火源400を設置し、着火源400の載置部410上に容器200aを配置し、容器200aの上面に整流板500Bを配置する。続けて、整流板500Bの載置部502上に容器200bを載置する。同様にして、容器200b上に整流板500B、容器200c、整流板500B、容器200d、容器200e、容器200fを順に載置する。続けて、積載した容器200a~200fの外周部に外筒300Cを配置する。外筒300Cは、針金等により図示しない外枠に締結することで固定する。このように、整流板500Bを使用することで、整流板500Bの固定部520が外筒300Cの内壁に接触することで整流板500B及び整流板500B上に載置される容器200bの外筒300C内での位置ずれが防止される。また、整流板500Bの固定部520によって、容器200a~200fの各周壁と外筒300Cの内壁との間の流路Pが確保される。
【0087】
作業者により着火源400が着火されると、空気とガスとが反応して燃焼が起こり、最下段の容器200aが加熱される。容器200aが加熱されると、容器200a内の有機物が熱分解することで乾留ガスが発生するとともに、有機物が炭化される。乾留ガスは、容器200aに形成された孔212aから排出され、流路Pを上昇する火炎等によって着火する。
【0088】
第2の実施の形態の第2変形例では、空気、乾留ガス、火炎の一部は、整流板500Bの傾斜部550の裏面に沿うように斜め上方に流れる。また、整流板500Bに沿って流れる空気、乾留ガス、火炎等は、整流板500Bの隙間Gを通過して流路Pを上昇する。このようにして、空気、乾留ガス、火炎は、全体として螺旋状に渦を巻くように、流路Pの下部から上部に向かって流れる。渦を巻く流れは、一旦形成されると、整流板500Bのない箇所においても維持される。
【0089】
第2の実施の形態の第2変形例によれば、流路Pに張り出すように整流板500Bを容器200a,200b間等に挿入するので、容器200a~200fの外周部に略螺旋状に渦を巻くように、空気、乾留ガス、火炎を整流することができる。これにより、容器200a~200fの外周部の全周であってかつ最下段の容器200aから最上段の容器200fに亘って、略均一に加熱することができ、高さ方向に積載した容器200a~200f内の有機物の全部を効率的に炭化させることができる。
【0090】
なお、図12では、整流板500Bを3箇所に使用した例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、最下段の容器200aと容器200bとの間の一箇所のみに整流板500Bを使用して、渦巻き方向Uの流れを最初の段階で形成するようにしてもよい。また、整流板500Bを4箇所以上で使用してもよい。
【0091】
<第2の実施の形態の第3変形例>
第2の実施の形態の第3変形例に係る熱分解ガス化装置10Gでは、容器200a~200fの積載した高さよりも外筒300Gの高さを高く構成し、断熱材310を用いる点において上記第2の実施の形態と相違している。なお、第2の実施の形態の第3変形例において、第2の実施の形態と共通する構成及び動作については、第2の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0092】
図13Aは第2の実施の形態の第3変形例に係る熱分解ガス化装置10Gの断面図であり、図13B図13Aに示す熱分解ガス化装置10Gの平面図である。なお、図13Aでは、容器200a~200eについては便宜上断面で図示していない。図13Bでは、整流板500Bを便宜上省略して図示している。
【0093】
熱分解ガス化装置10Gは、図13A及び図13Bに示すように、5個の容器200a~200eと、外筒300Gと、断熱材310と、整流板500Bとを備える。
【0094】
5個の容器200a~200eは、高さ方向に積載される。各容器200a~200eの内部には、例えば、有機系廃棄物と廃プラスチックとを所定の割合で配合した混合物である有機物が収納される。容器200a~200eの側壁には、複数の孔212a~212eが形成されている。複数の孔212a等は、容器本体210a等に収納された有機物の加熱による生じた乾留ガスを外部に排出する等の機能を有する。容器200a等の高さh9aは、例えば90~180mmである。容器200a等の直径D5は、例えば直径60~110mmである。容器200a~200fを積載した際の高さh9は、例えば450~900mm程度である。
【0095】
外筒300Gは、容器200a~200eの外周部であって、容器200a~200eの側壁を囲むように配置される。外筒300Gは、高さ方向に積載された容器200a~200eの高さよりも高くなっている。具体的には、外筒300Gの高さh10は、例えば1.5m以上であり、容器200a~200eの高さh9に対して約2倍以上である。外筒300Gの直径D6は、例えば110~150mmである。このように、外筒300Gを構成することで、容器200eの上方の空間Sを含む煙突部分を長くでき、外筒300Gの内側に設けられる流路Pに強い上昇気流を発生させることができる。
【0096】
断熱材310は、外筒300Gの内側の温度を保持する機能を有する。断熱材310には、例えば、セラミックファイバー等の公知の材料を用いることができる。断熱材310は、外筒300Gの外側であって外筒300Gの外周部を囲むように配置される。例えば、断熱材310は、外筒300Gの外壁(外周面)に巻き付けてもよいし、外筒300Gの外壁に貼り付け、吹き付け等の手段により固着してもよい。本実施形態では、断熱材310を外筒300Gの外壁の略全周に亘って設けているが、外筒300Gの外壁の範囲の一部であってもよい。このように、断熱材310を外筒300Gの外周部を囲むように配置することで、外筒300Gの内側をより高温の状態で保持できる。例えば、有機物の炭化作業において、断熱材310を使用しない場合には外筒300Gの内側の温度が約900℃となった。これに対し、本変形例によれば、断熱材310を用いることで外筒300Gの内側の温度が約1200℃程度の高温の状態を維持できることが確認された。
【0097】
容器200a~200eの側壁と断熱材310の内周面との間には、流入口302から取り込まれた空気、容器200aの孔212a等から排出された乾留ガス、乾留ガス等に着火した火炎が通過する流路Pが設けられる。流路Pは、容器200a~200eの上方に形成される空間Sに連通している。
【0098】
整流板500Bは、図12等でも説明したように、容器200a~200eと外筒300Gとの間の流路Pを上昇する空気、乾留ガス及び火炎を容器200a等の円周方向に渦を巻くように整流する機能を有する。例えば、整流板500Bは、容器200aと容器200bとの間、容器200bと容器200cとの間、容器200cと容器200dとの間、容器200dと容器200eとの間に挿入される。また、整流板500Bは、最上段の容器200eの上面に載置される。なお、整流板500Bの個数は、図13Aに示す個数に限定されることはない。
【0099】
このように構成された熱分解ガス化装置10Gにおいて、作業者により着火源400が着火されると、外筒300Gの流入口302から流入する空気によって着火源400が燃焼することで、容器200a等が加熱される。本変形例でも、有機物の加熱、有機物の熱分解による乾留ガスの発生、乾留ガスへの着火による燃焼(火炎の発生)のサイクルが、最下段の容器200aから最上段の容器200eに向かって順番に連続的に発生する。これにより、各容器200a~200e内の有機物を効率的に燃焼、炭化させることができる。また、乾留ガス、燃焼ガス(排ガス)等は、整流板500Bにより容器200a~200eの周囲を渦を巻きながら上昇する。これにより、容器200a~200eの外周部の全周に亘って、略均一に加熱することができ、容器200a~200e内の有機物の全部を効率的に炭化させることができる。
【0100】
外筒300Gの内側に設けられた流路P内は、容器200a~200e内の燃焼により生じる熱により高温となる。また、外筒300Gの内側であって容器200eの上方の空間S内では、流路Pから流れ込む空気、乾留ガスの混合気体により燃焼が起こることで高温となる。本変形例では、外筒300Gの外側に外筒300Gの外壁を囲むように断熱材310を設けているので、流路P及び空間S内において高温の状態が保持される。流路P及び空間S内は、高温となることで低密度となって浮力が生じ、外筒300G内の下側と上側との間に圧力差が生じる。これにより、外筒300Gの流入口302から外部の空気を流入させ、排ガス等を外筒300Gの上端側の排気口303から排出させる上昇気流を発生させることができる。本変形例では、外筒300Gの空間Sを含む煙突部分を長く形成しているので、流路P及び空間S内に強い上昇気流を発生させることができる。
【0101】
第2の実施の形態の第3変形例によれば、外筒300Gの外側に断熱材310を設けるので、流路P、空間S内を高温に保持できる。さらに、外筒300Gの空間Sを含む煙突部分を長く形成し、流路P、空間S内を高温に保持することで、流路P及び空間S内に強い上昇気流を発生させることができる。これらにより、各容器200a~200eの内部を高温で燃焼できるので、乾留ガスの発生を促進できる。さらに、容器200a~200e内の有機物を高温で完全燃焼させることができ、燃焼ガスとして煙、タール、煤等が発生することを防止できる。
【0102】
[実施例]
次に、図10に示した構成のガス化装置を使用して試料を炭化させる炭化実験を行った。図14は、乾留ガス化装置を使用した炭化実験時における3段目の容器内及び6段目の容器内の温度変化を示している。図14の縦軸は各容器内の温度であり、横軸は時間である。図15は、今回の炭化実験で得られた各容器における炭化材の収率を示している。ここで、収率は、得られた炭化材の重量と乾燥状態の原料の重量比で定義される。
【0103】
ガス化装置は、試料を燃焼させるアルコールストーブ、試料を収納する6個の容器及び容器の外側に配置する外筒により構成した。下から3段目の容器及び下から6段目の容器のそれぞれには、内部の温度変化を調べるため、熱電対を設置した。
【0104】
容器としては、ステンレスからなり、直径70mm、高さ55mmのサイズの円筒形状の缶を使用した。各容器の側壁には、4個の孔を円周方向に等間隔で形成した。孔の径は、容器内で発生した乾留ガスが漏れ出すことが可能なように、2mmとした。
【0105】
試料としては、牛ふん堆肥:35gに市販のポリエチレンシート(PE):5g及び飲料用ペット容器(PET):5gを混ぜたものを使用した。牛ふん堆肥は、含水比が高いとうまく炭化できない可能性あるため、乾燥機を使用して100℃で1日乾燥させた。PEは、丸めて体積を減らした。PETは、シュレッダーを使用して細かく粉砕した。
【0106】
外筒としては、ステンレスからなり、直径100mm、高さ450mmのサイズの円筒管を使用した。
【0107】
アルコールストーブの上面に取り付けられた載置台(ゴトク)上に、6個の容器を順に積み重ねた。そして、積み重ねた6個の容器の外側に、これらの容器を囲むように外筒を配置した。外筒は、留め具によってアルコールストーブの上面に固定した。このとき、容器と外筒との間の空間幅が均一となるように、容器及び外筒を配置した。
【0108】
アルコールストーブ上に容器及び外筒を設置したら、アルコールストーブを着火し、1段目の容器内の試料を加熱した。アルコールストーブによる加熱は、着火開始から10分で停止した。
【0109】
図14に示すように、アルコールストーブの燃焼開始から12分までは、3段目の容器内の温度が6段目の容器内の温度よりも高くなった。3段目の容器内は、600℃前後まで上昇した。一方、12分以降は、逆に6段目の容器内の温度が3段目の容器内の温度よりも高くなった。6段目の容器内は、600℃以上に上昇した。これにより、時間の経過に伴って、下段の容器から上段の容器に向かって容器内の温度が上昇していることが確認
された。
【0110】
炭化実験の終了後、6個の容器を取り出し、各容器内を確認した。図15に示すように、1段目の容器から6段目の容器における収率が30%前後となっており、原形もなくなっていたため、各容器において600℃前後で各試料が十分に炭化されていることが確認された。これらの結果から、1段目の容器の加熱、着火用にアルコールストーブを使用したが、2段目以降の容器では、各容器の加熱により発生する乾留ガスが利用されることで順次燃焼(自燃)が起こり、各容器が連続的に加熱されることで炭化材が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0111】
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G 熱分解ガス化装置
100,200a,200b,200c,200d,200e,200f 容器
112,212a,212b,212c,212d,212e,212f 孔
300A,300B,300C,300D,300E,300F,300G 外筒
400 着火源(加熱部)
500A,500B 整流板
P 流路
S 空間
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15