(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076364
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】活性汚泥状態の診断装置、システム、方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240529BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20240529BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
C02F3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196120
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022187727
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松代 武士
(72)【発明者】
【氏名】小原 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】胡 錦陽
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
(72)【発明者】
【氏名】野田 周平
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 義喜
(72)【発明者】
【氏名】水内 理映子
(72)【発明者】
【氏名】今田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】平岡 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勇太
(72)【発明者】
【氏名】助川 寛
【テーマコード(参考)】
4D028
5L096
【Fターム(参考)】
4D028CC05
4D028CC14
4D028CE01
4D028CE02
4D028CE03
5L096CA17
5L096DA02
5L096KA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報をオペレータに対して表示し、水処理施設の運転操作を支援する活性汚泥状態の診断装置等を提供する。
【解決手段】診断システム20において、活性汚泥状態の診断装置10は、活性汚泥を含む撮影試料を撮影した顕微鏡画像データが記録される撮影情報記憶部と、顕微鏡画像データを用いた機械学習により、活性汚泥中の微生物を画像認識により検出する微生物学習済みモデルを生成する微生物学習モデル生成部と、顕微鏡画像データを用いた機械学習により、活性汚泥の状態を画像認識により検出する活性汚泥学習済みモデルを生成する活性汚泥学習モデル生成部と、微生物学習済みモデルを用いた前記微生物の検出結果による微生物情報と、活性汚泥学習済みモデルを用いた活性汚泥の状態の検出結果による活性汚泥情報とによる活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報を生成して出力する活性汚泥状態情報生成部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥を含む撮影試料を撮影した複数の顕微鏡画像データが記録される撮影情報記憶部と、
前記顕微鏡画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥中の微生物を画像認識により検出する微生物学習済みモデルを生成する微生物学習モデル生成部と、
前記顕微鏡画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥の状態を画像認識により検出する活性汚泥学習済みモデルを生成する活性汚泥学習モデル生成部と、
前記微生物学習済みモデルを用いた前記微生物の検出結果による微生物情報と、前記活性汚泥学習済みモデルを用いた前記活性汚泥の状態の検出結果による活性汚泥情報と、による活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報を生成して出力する活性汚泥状態情報生成部と、
を備えた活性汚泥状態の診断装置。
【請求項2】
活性汚泥を含む撮影試料を撮影した複数の顕微鏡画像データが記録される撮影情報記憶部と、
前記顕微鏡画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥中の微生物を画像認識により検出する微生物学習済みモデルを生成する微生物学習モデル生成部と、
前記顕微鏡画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥の状態を画像認識により検出する活性汚泥学習済みモデルを生成する活性汚泥学習モデル生成部と、
前記微生物学習済みモデルを用いた前記微生物の検出結果による微生物情報と、前記活性汚泥学習済みモデルを用いた前記活性汚泥の状態の検出結果による活性汚泥情報と、による活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報を生成して出力する活性汚泥状態情報生成部と、を備えた活性汚泥状態の診断装置と、
撮影部と、前記撮影部による撮影条件を調整する撮影部保持部と、前記撮影試料を照明する光源と、前記撮影部保持部および前記光源を制御する制御部と、を備えた微生物情報取得部と、を備え、
前記制御部は、前記撮影部保持部および前記光源を制御して前記撮影部により撮影された前記撮影試料の前記顕微鏡画像データを取得し、前記撮影情報記憶部へ記録する活性汚泥状態の診断システム。
【請求項3】
前記活性汚泥状態の診断装置は微生物追従機能部を更に備え、
前記制御部は、前記微生物追従機能部から供給される位置情報に応じて前記撮影部の観察視野が移動するように前記撮影部保持部を制御する、請求項2記載の活性汚泥状態の診断システム。
【請求項4】
前記微生物情報取得部は、前記撮影部および前記撮影部保持部に代えて、イメージセンサを含むマイクロイメージングデバイスを備える、請求項2記載の活性汚泥状態の診断システム。
【請求項5】
前記活性汚泥が採取された下水処理場に設置されたセンサから逐次取得されるオンラインデータを少なくとも記憶するオンラインデータ記憶装置と、
前記活性汚泥が採取された下水処理場に流入する下水から処理水が得られる過程における被処理水の水質を示すオフラインデータを周期的に記憶するオフラインデータ記憶装置と、を備え、
前記活性汚泥状態情報生成部は、前記オンラインデータと前記オフラインデータとを用いて支援情報を生成する、請求項2記載の活性汚泥状態の診断システム。
【請求項6】
前記活性汚泥状態情報生成部の前記診断結果に少なくとも基づいて、将来の顕微鏡画像を生成する第1推移予測部と、活性汚泥の将来の運転情報の予測値を算出する第2推移予測部とを夫々少なくとも一つ含む予測アルゴリズム部と、
活性汚泥の将来の運転情報の手動予測値を入力する手動予測値入力部と、
前記第1推移予測部、前記第2推移予測部および前記手動予測値入力部から入力される予測値から将来の活性汚泥状態を判定する運転ランク判定アルゴリズム部と、を含む予測情報生成部を更に備える、請求項1記載の活性汚泥状態の診断装置。
【請求項7】
活性汚泥を含む撮影試料を撮影した複数の顕微鏡画像データを取得し、
前記顕微鏡画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥中の微生物を画像認識により検出する微生物学習済みモデルを生成し、
前記顕微鏡画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥の状態を画像認識により検出する活性汚泥学習済みモデルを生成し、
前記微生物学習済みモデルを用いた前記微生物の検出結果による微生物情報と、前記活性汚泥学習済みモデルを用いた前記活性汚泥の状態の検出結果による活性汚泥情報とによる活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報を生成して出力する、活性汚泥状態の診断方法。
【請求項8】
コンピュータに、請求項7に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、活性汚泥状態の診断装置、システム、方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、活性汚泥法は、国内外で最も普及している下水処理法で、活性汚泥と呼ばれる微生物集塊が処理を担っている。活性汚泥は数10μmから数mmの好気性微生物の集合体であり、生物反応槽中に1,000~10,000mg/Lの濃度で浮遊している。下水中の懸濁物質は、活性汚泥に吸着して微生物によって分解され、溶解性の有機物は、移流や拡散により活性汚泥中の微生物によって分解される。このように、活性汚泥は下水処理の根幹を担っており、常にその状態を良好に保つ必要がある。
【0003】
活性汚泥の状態を判断する手法の一つに顕微鏡観察がある。顕微鏡観察によって、活性汚泥中の微生物種や、活性汚泥の大きさ、形状の均一性、圧密性、糸状性細菌の有無などを確認でき、活性汚泥法の運転障害の診断やその解決に活用できる。例えば、活性汚泥法の運転障害の一つである最終沈澱池における処理水の濁りは、糸状性細菌の過剰増殖、微細活性汚泥の生成、原生動物の消滅、多量の分散菌体の発生などにより生じる。このように、処理水の濁りの要因は多岐にわたるため、運転障害の要因を的確に把握する必要があり、顕微鏡観察は要因把握の有効な手段となる。
【0004】
活性汚泥の顕微鏡観察では、生物反応槽から活性汚泥をサンプリングし、オペレータが顕微鏡を使用して行っている。通常、これらの多くは手作業で行われており、時間や労力を要するとともに、微生物の同定や分類には、高度な知識と多くの経験が必要となることから、現在、十分に活用されていないのが実情である。このため、必ずしも高度な知識と多くの経験がなくとも、微生物の形態的な特徴や運動の仕方などから容易に微生物の同定ができ、運転障害を事前に検知できる技術が求められている。
【0005】
従来、生物反応槽から採取した活性汚泥を撮影する撮像手段により、活性汚泥中の微生物を撮像し、画像認識技術を利用した活性汚泥の良否判定装置が提案されている。例えば、撮像手段で撮像した画像信号が画像認識装置に入力され、あらかじめ活性汚泥中に出現する微生物の形状や大きさなどを記憶した画像と比較して微生物の種類を分類する技術が提案されている。また、画像処理技術を利用した微生物認識装置を用いる技術として、微生物の拡大画像を工業用テレビカメラで検出し、画像認識技術を応用して、糸状性細菌を認識する技術が提案されている。さらに、活性汚泥中に出現する微生物の同定および計数のために、処理水の撮影画像から画像認識技術により微生物を自動的に同定および計数する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-46430号公報
【特許文献2】特開2020-32394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、微生物、特に原生動物や後生動物は活発に活動をしており、顕微鏡で微生物を観察した場合には、その形状や位置は一定ではなく、変形と移動を繰り返している。従来の画像認識技術を利用した微生物の検出方法は、ある時点の瞬間的な顕微鏡画像をもとに、形状や大きさなど、あらかじめ記憶した標準的な画像と比較して微生物の同定を行うものであり、変形により標準的な画像と形状が異なる場合や、微生物が高速に移動し、画像にブレが生じている場合は、検出対象の微生物の正確な同定を行うことが難しかった。
【0008】
また、活発に活動する微生物の中には、観察している視野の外に移動するものもある。こうした微生物の同定および計数は、同一視野の観察により正確に行うことが難しかった。また、視野の外に移動した微生物の観察のために、視野をランダムに動かす方法では、偏った観察結果に陥りやすかった。
【0009】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報をオペレータに対して表示し、水処理施設の運転操作を支援する活性汚泥状態の診断装置、システム、方法およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態による活性汚泥状態の診断装置は、活性汚泥を含む撮影試料を撮影した顕微鏡画像の複数の画像データが記録される撮影情報記憶部と、前記画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥中の微生物を画像認識により検出する微生物学習済みモデルを生成する微生物学習モデル生成部と、前記画像データを用いた機械学習により、前記活性汚泥の状態を画像認識により検出する活性汚泥学習済みモデルを生成する活性汚泥学習モデル生成部と、前記微生物学習済みモデルを用いた前記微生物の検出結果による微生物情報と、前記活性汚泥学習済みモデルを用いた前記活性汚泥の状態の検出結果による活性汚泥情報とによる活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報を生成して出力する活性汚泥状態情報生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の活性汚泥状態の診断システムが適用される下水処理場の構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムの一構成例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す微生物情報取得部の一構成例を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムにおける微生物情報と、微生物情報に基づく活性汚泥のランク情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムにおける活性汚泥のランク情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムにおける活性汚泥状態情報の判定例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の活性汚泥状態の診断システムの一構成例を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、顕微鏡画像中の微生物の位置変化の一例について説明するための図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の活性汚泥状態の診断システムの一構成例を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、微生物情報取得部としてマイクロイメージングデバイスを用いた例を概略的に示したものである。
【
図11】
図11は、一実施形態の活性汚泥状態の診断システムの予測情報生成部の一構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施形態の活性汚泥状態の診断装置、システム、診断方法、および、コンピュータプログラムについて、図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態の活性汚泥状態の診断システムが適用される下水処理場の構成例を概略的に示す図である。
【0013】
下水処理場1は、最初沈澱池2と、生物反応槽3と、最終沈澱池4と、ブロワ5と、汚泥返送ポンプ6と、余剰汚泥ポンプ7と、を備えている。
下水処理場1へ流入した下水(被処理水)は、最初沈澱池2で、小さなゴミや砂が取除かれ、生物反応槽3に供給される。生物反応槽3では、活性汚泥と呼ばれる微生物の集合体により、有機物の分解処理が行われる。微生物への酸素供給ため、生物反応槽3にはブロワ5により空気が供給される。
【0014】
生物反応槽3から排出された被処理水は、最終沈澱池4において活性汚泥と処理水とに分離され、処理水が排出される。最終沈澱池4で沈降した活性汚泥は、汚泥返送ポンプ6により生物反応槽3の前段に返送されるとともに、一部が余剰汚泥ポンプ7により余剰汚泥として排出され、処分される。
【0015】
活性汚泥処理が行われる下水処理場1においては、処理が順調に行われている場合と、運転障害が生じている場合とでは、活性汚泥中に出現し優占化する微生物の種類が異なることが知られている。例えば、生物反応槽3の負荷が高い環境ではPleuromonas属、Bodo属、Uronema属など、標準負荷で処理が良好な環境ではVorticella属、Epistylis属、Aspidisca属など、負荷が低い環境ではArcella属、Euglypha属、Pyxidicula属、Actinomyces属、Centropyxis属などが出現する。このうち、標準負荷に分類される微生物が多く観察されるほど、活性汚泥の状態が良好であるとされている。また、活性汚泥が適度な大きさで、糸状性細菌が少なく、活性汚泥の間の水が清澄なほど、状態が良いとされている。
【0016】
本実施形態の活性汚泥状態の診断システム20では、上記活性汚泥の状態と、活性汚泥中に出現し優占化する微生物の種類との関係に少なくとも基づいて、活性汚泥状態を診断している。
本実施形態の活性汚泥状態の診断システム20は、下水処理場1の生物反応槽3から活性汚泥を取得し、活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報をオペレータ99に供給する。
【0017】
図2は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムの一構成例を概略的に示す図である。
活性汚泥状態の診断システム20は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリとを含み、ソフトウエアにより若しくはソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、以下に説明する種々の機能を実現することができる。
【0018】
活性汚泥状態の診断システム20は、微生物情報取得部21と、活性汚泥状態の診断装置10と、を備えている。活性汚泥状態の診断装置10は、撮影情報記憶部22と、微生物情報・学習モデル記憶部23と、活性汚泥情報・学習モデル記憶部24と、微生物情報生成部25と、微生物学習モデル生成部26と、活性汚泥情報生成部27と、活性汚泥学習モデル生成部28と、活性汚泥状態情報生成部29と、支援情報表示部30と、を備えている。
【0019】
撮影情報記憶部22と、微生物情報・学習モデル記憶部23と、活性汚泥情報・学習モデル記憶部24と、微生物情報生成部25と、微生物学習モデル生成部26と、活性汚泥情報生成部27と、活性汚泥学習モデル生成部28と、活性汚泥状態情報生成部29とは、例えば計算機などに実装され得る。
【0020】
図3は、
図2に示す微生物情報取得部の一構成例を概略的に示す図である。
微生物情報取得部21は、静止している微生物の画像に加え、変形や移動をともなう微生物の複数枚の拡大画像や、活性汚泥(例えばフロック)の画像を取得して出力する。微生物情報取得部21は、撮影部21Aと、撮影部保持部21Bと、光源21Cと、制御部21Eと、通信部21Fと、を備えている。なお、本実施形態では、人手により、下水処理場1の生物反応槽3から採取した活性汚泥を撮影試料21Dとして微生物情報取得部21にセットしているが、採水ポンプなどを使用して活性汚泥を連続的に微生物情報取得部21に供給して、撮影試料21Dとしてもよい。また、撮影試料21Dの活性汚泥とは、混合状態の活性汚泥の他、活性汚泥静置後の上澄みに浮遊する活性汚泥粒子を含む活性汚泥沈殿上澄み水、活性汚泥静置後の活性汚泥の沈殿汚泥等も、撮影試料21Dとすることもでき、活性汚泥の由来に応じて画像を分けて、相互比較することもできる。
【0021】
通信部21Fは、微生物情報取得部21の各構成と外部との間で情報の授受を行うための構成であって、制御部21Eにより動作を制御される。
撮影部21Aは、顕微鏡と、顕微鏡の視野の画像(顕微鏡画像)を撮影する撮影手段とを備えている。撮影部21Aにおける撮影条件は、撮影部保持部21Bおよび光源21Cの動作により調整される。撮影部21Aは、撮影部保持部21Bにより撮影位置などを調整されることにより、撮影試料21Dの観察対象領域全体を撮影することが可能である。
【0022】
撮影部保持部21Bは、撮影部21Aを保持する筐体を備え、撮影部21Aの解像度、フレームレート、撮影試料21Dに対する撮影部21Aの位置などの撮影条件を調整することができる。撮影部保持部21Bの動作は、制御部21Eにより制御される。
【0023】
光源21Cは、撮影試料を照明するように配置されている。本実施形態では、光源21Cは、撮影部21Aと逆側から撮影試料に対して光を出射して、撮影対象となる領域の照度および輝度を確保する。光源21Cは、点光源であってもよく、面光源であってもよい。
【0024】
制御部21Eは、撮影部21A、撮影部保持部21Bおよび光源21Cを制御して、撮影試料21Dにおいて静止している微生物の顕微鏡画像に加え、変形や移動をともなう微生物の顕微鏡画像、活性汚泥の状態を示す顕微鏡画像を撮影する。撮影部21Aで撮影される顕微鏡画像は静止画であってもよく動画であってもよい。また、顕微鏡画像は、RGB画像、光学フィルタ等を活用した色相変換画像、位相差変換画像、暗視野画像であってもよく、モノクロ画像であってもよい。制御部21Eは、撮影部21Aにより複数の視野を観察するための撮影条件(解像度、フレームレート、撮影位置など)を、後述する撮影情報記憶部22から取得し、その撮影条件に従って、撮影部21A、撮影部保持部21Bおよび光源21Cの動作を制御する。
【0025】
制御部21Eは、静止している微生物に加え、変形や移動をともなう微生物を観察するために、撮影部21Aおよび撮影部保持部21Bを制御して、同一視野にて複数枚の画像を撮影してもよい。さらに、複数の視野を観察するために、制御部21Eは、撮影部21Aにより撮影試料21Dの観察対象領域全体を観察できるように、撮影部保持部21Bを動作させる。
【0026】
制御部21Eは、撮影部21Aで撮影された顕微鏡画像のデータを撮影条件の情報と関連付けて、通信部21Fを介して撮影情報記憶部22へ送信する。このとき、撮影条件の情報には、例えば解像度、フレームレート、撮影位置などの情報が含まれていてもよく、更に撮影日時、光源21Cの制御情報などが含まれていてもよく、同一の撮影試料21Dについて同一視野を撮影した複数の画像を関連付ける識別情報が含まれていてもよい。
撮影情報記憶部22には、微生物情報取得部21から供給された顕微鏡画像のデータと、撮影条件とが記憶されている。
【0027】
微生物学習モデル生成部26は、微生物情報・学習モデル記憶部23に蓄積された顕微鏡画像データなどの微生物の入出力情報を用いて、観察対象の微生物を画像認識により同定・計数するための微生物学習済みモデル(特徴量)を機械学習により生成する。微生物学習済みモデルは、例えば画素や矩形ごとの糸状性細菌識別結果や、画素や矩形ごとの指標微生物の識別結果や特徴量を出力し、混合状態の活性汚泥画像中の、活性汚泥静置後の上澄みに浮遊する活性汚泥粒子を含む活性汚泥沈殿上澄み水画像(浮遊性汚泥)と、活性汚泥の沈殿汚泥画像(沈殿性汚泥)の特徴量を出力する。機械学習の手法としては、例えば、観察対象の微生物の任意の顕微鏡画像を教師データとし、ディープラーニングや、ランダムフォレスト、ビジョントランスフォーマなど、そのほか、観察対象を矩形にて検出する物体検出手法や、観察対象を画像領域の分割にて画素ごとに求めるセマンティックセグメンテーション、インスタンスセグメンテーション、パノプティックセグメンテーションなど、その他の様々な手法を採用することができる。
【0028】
観察対象の識別結果は、例えば、画素ごとの場合、各画素に対して識別種が付与される画素単位での形式でもよく、各画素に付与された同じ識別種、かつ隣接または付近に位置する画素の集合を一つの微生物と画像処理にて判別した画像領域単位での形式でもよい。また、矩形ごとの場合、各矩形に対して識別種が付与される矩形単位の形式でもよい。観察対象を計数する方法としては、例えば、画素ごとに観察対象を識別した場合、同じ観察対象と識別され、かつ隣接または付近に位置する画素の集合を一つの微生物とし、画像処理によって観察対象ごとにその微生物数を計数することにより、求めてもよい。また、画像領域や矩形ごとに観察対象を識別した場合、一つの識別された画像領域や矩形を観察対象の一つの微生物とし、画像処理によって観察対象ごとにその微生物数を計数することにより、求めてもよい。
【0029】
微生物学習モデル生成部26において、変形や移動をともなう微生物が撮影された画像データを用いて機械学習を行うことにより、微生物の同定精度を向上させることができる。微生物学習モデル生成部26で生成された微生物学習済みモデルは、微生物情報・学習モデル記憶部23に記録される。なお、微生物学習モデル生成部26は、撮影情報記憶部22から(若しくは微生物情報・学習モデル記憶部23を介して撮影情報記憶部22から)複数の顕微鏡画像データおよび撮影条件を取得して、微生物学習済みモデルを生成してもよい。
【0030】
微生物情報・学習モデル記憶部23は、微生物学習モデル生成部26で生成された微生物学習済みモデルと、検出対象の微生物情報と、活性汚泥のランク情報とを記憶するとともに、検出対象の微生物の同定および計数を行う際に必要な情報(微生物学習済みモデル、顕微鏡画像データおよび撮影条件)を微生物情報生成部25へ提供する。微生物情報・学習モデル記憶部23は、微生物情報生成部25に対して、検出対象の微生物の同定および計数を行う際に必要な微生物学習モデルを提供する。微生物情報は、微生物学習済みモデルおよび顕微鏡画像データを用いた画像認識による微生物の検出結果(微生物の種類、出現環境、微生物の個数、同定確率、微生物活性度、浮遊性・沈降性汚泥割合)の情報を含み得る。ここで、微生物活性度とは、例えば、画像内で同定された各微生物の移動量(大きさと方向)としてもよい。この移動量は、例えば、時系列順に連続した複数の画像内において同定された各微生物を、カルマンフィルタやパーティクルフィルタなどの物体追跡手法を用いて、画像間の各微生物同士を紐づけることにより、求めてもよい。
【0031】
微生物情報生成部25では、微生物情報・学習モデル記憶部23から取得した複数の顕微鏡画像と微生物学習済みモデルとを用いて、顕微鏡画像中の観察対象の微生物を同定して、微生物情報(画素ごとの糸状性細菌識別結果、糸状性細菌の量(長さ・面積)の測定結果、糸状性細菌の量(長さ・面積)の測定結果の変化量、糸状性細菌量のランク情報、指標微生物の識別結果、指標微生物の数の測定結果、浮遊性・沈降性汚泥割合の測定結果、指標微生物の数の測定結果の変化量、微生物の識別結果および測定結果に基づくランク情報、"測定単位ごとの測定結果(測定単位:1回の採水やN枚の画像など)"、活性汚泥状態を示すランク情報などを含む)を生成する。このとき、時系列によって微生物情報の推移を確認できるように微生物情報と日時とを関連付けてもよい。その場合、活性汚泥を解析する際に解析した日時も取得しておくとよい。微生物情報生成部25は、顕微鏡画像を微生物学習済みモデルに入力する前の前処理として、二値化処理などの画像処理を行っても良い。上述の学習済みモデルを用いた画像認識を行うことにより、従来の画像認識技術では難しかった変形や移動をともなう微生物を、自動的に同定および計数することができる。
【0032】
また、微生物情報生成部25では、微生物の同定および計数の結果から活性汚泥のランク情報を生成する。具体的には、微生物情報生成部25は、観察された微生物情報をもとに、活性汚泥が以下の1~5のどのランクの状態にあるかのランク情報を生成する。
1…非常に負荷が高い状態
2…負荷が高い状態
3…負荷が高い・低い状態から良くなっている状態、または良い状態から悪くなっている状態
4…標準負荷で処理が良好な状態
5…負荷が低い状態または滞留時間が長い状態
【0033】
微生物情報生成部25は、生成した活性汚泥のランク情報は、微生物情報・学習モデル記憶部23に記憶される。なお、本実施形態では、活性汚泥の状態を5段階で定義したが、活性汚泥の状態の段階数は下水処理場の運転状況に応じて任意に設定することができる。また、負荷状態以外に、活性汚泥の酸素の過不足状態や、活性汚泥の沈降・膨化状態を、微生物情報から定義してもよい。また、活性汚泥のランク情報を生成するために、必ずしも、観察されたすべての微生物情報を用いる必要はなく、あらかじめ指標となる代表微生物を定義し、その代表微生物から活性汚泥状態を生成してもよい。また、微生物情報生成部25は、ひとつ以上選択した画像判定要素(顕微鏡画像データ)と、活性汚泥の流入量、水温、pH、流入原水BOD濃度、流入原水COD濃度、流入原水窒素濃度、流入原水アンモニア態窒素濃度、流入水滞留時間、活性汚泥濃度、活性汚泥沈降性指標、溶存酸素濃度、最終沈殿槽水面積負荷、最終沈殿池出口BOD濃度、最終沈殿池出口COD濃度、最終沈殿池出口アンモニア態窒素濃度、最終沈殿池出口りん濃度、最終沈殿池出口硝酸態窒素濃度、最終沈殿池出口透視度、汚泥滞留時間、汚泥循環量、循環汚泥濃度、余剰汚泥発生量、余剰汚泥濃度、曝気風量などの活性汚泥運転パラメータを組み合わせて、活性汚泥状態や活性汚泥のランク情報を生成してもよく、多変量解析法、決定木法、勾配ブースティング法、ランダムフォレスト法、ニューラルネット法、K近接法、サポートベクターマシンなどのデータ分類アルゴリズムおよびこれらのアンサンブル学習アルゴリズムや、ガウス混合法、K平均法、階層法などのクラスタリングアルゴリズムや、主成分分析法、多次元尺度構成法、t-分布的近傍埋め込み法、UMAP法などのデータ次元圧縮アルゴリズムを単独または組み合わせ選択して活性汚泥状態や活性汚泥のランク情報を生成してもよい。
【0034】
また、ひとつ以上選択した画像判定要素(顕微鏡画像データ)や、活性汚泥運転パラメータ、活性汚泥状態のランク情報の推移を、ベイズ構造時系列法、長・短期記憶法、再帰型ニューラルネット法、自己回帰和分移動平均法、季節性自己回帰和分移動平均法などの自己回帰法、Transformer法など系列データ解析アルゴリズムを用いて判定した将来予測結果情報(活性汚泥状態や活性汚泥のランク情報)を支援情報として生成してもよい。
【0035】
図4は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムにおける微生物情報と、微生物情報に基づく活性汚泥のランク情報の一例を示す図である。
微生物情報は、微生物の種類、出現環境、微生物の個数(個/ml)、同定確率、微生物活性度から、換算微生物個数(個/ml)を含む。ここで、微生物活性度は、微生物の変形や移動を考慮した係数である。微生物情報をオペレータ99に提示する際には、微生物の種類に対して、換算微生物個数が多いものから順に並べて表示してもよい。
【0036】
図5は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムにおける活性汚泥のランク情報の一例を示す図である。
微生物情報に基づく活性汚泥のランク情報は、あらかじめ微生物情報から定義した活性汚泥状態の候補と、その状態である確率を示す状態確率を算出してオペレータ99に提示しても良い。
【0037】
また、微生物情報生成部25は、最終沈澱池4における処理水の濁りにつながる糸状性細菌の量や、糸状性細菌量と活性汚泥量との割合から、活性汚泥のランク情報を定義してもよい。具体的には、微生物情報生成部25は、活性汚泥が以下の0~5’のどのランクの状態にあるかのランク情報を生成する。
【0038】
0…糸状性細菌が認められない
1’…糸状性細菌が時々認められる、またはフロックすべてではないが、糸状性細菌が認められる
2’…低密度で糸状性細菌がすべてのフロックに認められる
3’…中密度で糸状性細菌がすべてのフロックに認められる
4’…高密度で糸状性細菌がすべてのフロックに認められる
5’…フロックより糸状性細菌が多量に認められ、液中にも増殖している
微生物情報生成部25は、生成した微生物情報および上記活性汚泥のランク情報を、微生物情報・学習モデル記憶部23に記録する。
【0039】
活性汚泥学習モデル生成部28は、活性汚泥情報・学習モデル記憶部24に蓄積された顕微鏡画像データなどの微生物の入出力情報を用いて、活性汚泥の状態を画像認識により同定するための活性汚泥学習済みモデル(特徴量)を機械学習により生成する。活性汚泥学習済みモデルは、例えば入力された画像の画素ごとのフロック識別結果を出力する。機械学習の手法としては、例えば、観察対象の活性汚泥の任意の顕微鏡画像を教師データとし、ディープラーニングや、ランダムフォレスト、ビジョントランスフォーマなど、そのほか、観察対象を画像領域の分割にて画素ごとに求めるセマンティックセグメンテーション、インスタンスセグメンテーション、パノプティックセグメンテーションなど、その他の様々な手法を採用することができる。観察対象の識別結果は、例えば、各画素に対して識別種が付与される画素単位での形式でもよく、各画素に付与された同じ識別種、かつ隣接または付近に位置する画素の集合を一つの個体と画像処理にて判別した画像領域単位での形式でもよい。活性汚泥学習モデル生成部28において、活性汚泥が撮影された画像データを用いて機械学習を行うことにより、活性汚泥の状態の同定精度を向上させることができる。活性汚泥学習モデル生成部28で生成された活性汚泥学習済みモデルは、活性汚泥情報・学習モデル記憶部24に記録される。なお、活性汚泥学習モデル生成部28は、撮影情報記憶部22から(若しくは活性汚泥情報・学習モデル記憶部24を介して撮影情報記憶部22から)複数の顕微鏡画像データおよび撮影条件を取得して、活性汚泥学習済みモデルを生成してもよい。
【0040】
活性汚泥情報・学習モデル記憶部24は、活性汚泥学習モデル生成部28で生成された活性汚泥学習済みモデルと、検出対象の活性汚泥状態の情報と、活性汚泥のランク情報とを記憶するとともに、検出対象の活性汚泥状態の同定を行う際に必要な情報(活性汚泥学習済みモデル、顕微鏡画像データおよび撮影条件など)を活性汚泥情報生成部27へ提供する。活性汚泥情報・学習モデル記憶部24は、活性汚泥情報生成部27に対して、検出対象の活性汚泥状態の同定を行う際に必要な活性汚泥学習済みモデルを提供する。活性汚泥情報は、活性汚泥学習済みモデルおよび顕微鏡画像データを用いた画像認識による活性汚泥状態の検出結果の情報を含み得る。
【0041】
活性汚泥情報生成部27は、活性汚泥情報・学習モデル記憶部24に蓄積された情報をもとに、活性汚泥情報を生成する。活性汚泥情報は、例えば画素ごとのフロック識別結果、フロックの円相当径の測定結果、フロックの円相当径の測定結果の変化量、フロックの形状(滑らか、不規則など)の測定結果、フロックの形状の測定結果の変化量、フロックの構造(緻密、緩いなど)の測定結果、フロックの構造の測定結果の変化量などを含む。具体的には、活性汚泥情報生成部27は、活性汚泥(例えばフロック)の形状および構造の緻密性、活性汚泥の境界面の強さ、直径、半径、面積、輪郭の長さ、ピクセル数、個数、前日比、基本統計量(平均値、中央値、最頻値、分散、標準偏差など)など、活性汚泥の画像から得られる数値化された指標値から活性汚泥の状態を定義する。
【0042】
ここで、フロックの円相当径は、フロックの大きさを示す指標の一例であって、円相当径が長いほど大きなフロックであり、短いほど小さいフロックであるとされる。そのほか、フロックの形状の滑らかさや形状の特徴などを表すために、円形度、周囲長包絡度、面積包絡度、真円度、アスペクト比、離心率、エクステントなどを用いても良い。
構造の緻密性とは、フロックの固着度合い(密度)を表す指標であり、例えば画像上におけるフロックの領域内の平均輝度値を算出することで表現される。この場合、活性汚泥情報生成部27は、例えば画像解析により画像におけるフロックの領域を特定し、特定した領域に含まれるピクセルにおける画像の輝度平均値を算出する。フロックの領域の平均輝度値が高いほど密度は小さく、平均輝度値が低いほど密度は大きいとされる。なお、活性汚泥情報生成部27は、フロックの周囲の領域における画像の平均輝度値をもとに、フロックの領域における画像の平均輝度値を正規化し、フロックの領域の平均輝度値に対応する構造の緻密性の数値を算出しても良い。例えば、フロックの周囲の領域における画像の平均輝度値を構造の緻密性がゼロに対応する値とし、フロックの領域の平均輝度値とフロックの周囲の領域の平均輝度値から差分を求め、その値を構造の緻密性を表す数値としてもよい。上記のように正規化した値を指標値とすることにより、例えば画像の撮影環境により指標値がバラつくことを回避することができ、活性汚泥の状態の判定精度が低下することがなくなる。
【0043】
活性汚泥の境界面の強さとは、フロックの崩れにくさを表す指標であり、例えばフロックの輪郭領域(例えばフロックと特定された領域を囲むラインを含む所定の幅の部分)の平均輝度値によって表現される。活性汚泥情報生成部27は、フロックの領域の平均輝度値を算出する場合と同様に、フロックの輪郭領域の平均輝度値を算出することができる。フロックの輪郭領域の平均輝度値が高いほど、水相とフロックとの境界面は明瞭であり、フロックの輪郭領域の平均輝度値が低いほど、水相とフロックとの境界面が曖昧であって水がフロック内部に入り込みやすいとされる。
このとき、時系列によって各指標値の推移を確認できるよう日時も指標値に含んでもよい。その場合、汚泥を解析する際に解析した日時も取得しておくとよい。
【0044】
具体的には、活性汚泥情報生成部27は、数値化された指標値ならびに指標値の時系列変化から、以下の1’’~3’’のどの状態にあるかの情報を生成する。
1’’…指標値が閾値の範囲内、または指標値の時系列に変化なし
2’’…指標値が閾値の範囲内かつ指標値の時系列に変化あり
3’’…指標値が閾値の範囲外、または指標値の時系列に大きく変化あり
活性汚泥情報生成部27は、生成した活性汚泥情報を活性汚泥情報・学習モデル記憶部24に記録する。
【0045】
活性汚泥状態情報生成部29は、微生物情報生成部25で生成した微生物の同定および計数の結果に加え、微生物情報に基づく活性汚泥のランク情報、糸状性細菌の量や、糸状性細菌量と活性汚泥量の割合に基づく活性汚泥のランク情報、活性汚泥情報生成部27で生成した数値化された指標値の情報をもとに、活性汚泥の状態ならびに状態変化の情報(活性汚泥状態情報)を生成する。
【0046】
活性汚泥状態情報は、例えば、画像毎のフロックの検出結果、フロックの円相当径の測定結果のトレンド、フロックの形状の測定結果のトレンド、フロックの構造の測定結果のトレンド、画像毎の糸状性細菌の検出結果、糸状性細菌の量(長さ・面積)の測定結果のトレンド、糸状性細菌量のランク情報、画像毎の指標微生物の検出結果、指標微生物の数の測定結果のトレンド、浮遊性・沈降性汚泥割合の測定結果、活性汚泥状態を示すランク情報、指定した日のフロック検出結果、指定した日の糸状性細菌検出結果、指定した日の指標微生物検出結果、指定した日の活性汚泥状態を示すランク情報、指定した日の検出画像一覧、最新の活性汚泥状態を示すランク情報などを含み得る。
【0047】
図6は、第1実施形態の活性汚泥状態の診断システムにおける活性汚泥状態情報の判定例を示す図である。
活性汚泥状態情報生成部29は、例えば、活性汚泥が以下の1’’’(正常)、2’’’(注意)、3’’’(警告)のどの状態にあるかの情報(活性汚泥状態情報)を生成する。ここでは、活性汚泥状態情報生成部29は、微生物情報に基づく活性汚泥の状態、微生物情報(糸状正細菌)および活性汚泥の数値化された指標値(活性汚泥情報)の3つの組み合わせにより、活性汚泥状態情報を判定している。
【0048】
例えば、微生物情報に基づく活性汚泥の状態が4又は5であり、かつ、微生物情報(糸状正細菌)のランクが1’(糸状性細菌が時々認められる、またはフロックすべてではないが、糸状性細菌が認められる)以下であり、かつ、活性汚泥情報のランクが1’’(指標値が閾値の範囲内、または指標値の時系列に変化なし)であるとき、活性汚泥状態情報は1’’’(正常)である。
【0049】
また、例えば微生物情報に基づく活性汚泥の状態が3である若しくは4、5のいずれかであり微生物の数が(第1閾値以上)変化している、又は、微生物情報(糸状性最近)のランクが2’(低密度で糸状性細菌がすべてのフロックに認められる)と3’(中密度で糸状性細菌がすべてのフロックに認められる)とのいずれかである、又は、活性汚泥情報のランクが2’’(指標値が閾値の範囲内かつ指標値の時系列に変化あり)であるときに、活性汚泥状態情報は2’’’(注意)である。
【0050】
また、例えば微生物情報に基づく活性汚泥の状態が1、2のいずれかである若しくは4、5のいずれかであり微生物の数が大きく(第2閾値以上)変化しているときに、微生物情報(糸状性最近)のランクが4’(高密度で糸状性細菌がすべてのフロックに認められる)以上である、又は、活性汚泥情報のランクが3’’(指標値が閾値の範囲外、または指標値の時系列に大きく変化あり)である場合、活性汚泥状態情報は3’’’(警告)である。
【0051】
なお、活性汚泥状態情報を生成するための情報の組み合わせは上記に限定されるものではなく、活性汚泥状態情報は少なくとも1つの情報に基づいて生成され得、一又は複数の情報により活性汚泥状態情報を生成するように下水処理場の運転状況に応じて任意に設定することができる。
【0052】
支援情報表示部30は、活性汚泥状態情報生成部29が生成した活性汚泥状態情報を支援情報としてオペレータ99に対して表示し、下水処理場1などの水処理施設の運転操作を支援する。支援情報表示部30は、例えばディスプレイや警告灯などの表示手段に活性汚泥状態情報を表示して視覚的に情報をオペレータ99に提示してもよい。このとき、支援情報表示部30は、例えば支援情報に含まれる数値をトレンドグラフなど、値の変化示す図によりオペレータに提示してもよい。また、支援情報表示部30は、音声や警報により活性汚泥状態情報をオペレータ99に提供してもよい。
【0053】
上記本実施形態の活性汚泥状態の診断システムによれば、オペレータ99は、活性汚泥中の静止している微生物に加え、変形や移動をともなう微生物の種類、個数、生物活性、移動量、などの情報、その情報から生成される活性汚泥のランク情報、糸状性細菌の量や、糸状性細菌量と活性汚泥量の割合に基づく活性汚泥のランク情報、活性汚泥の状態ならびに状態変化を示す数値化された指標値などの情報から支援援情報を自動的に得ることができ、必ずしも高度な知識と多くの経験がなくとも、下水処理場1での処理が順調に行われているか、運転障害が生じているか、などの運転状態を把握することができる。
【0054】
すなわち、本実施形態によれば、活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報をオペレータに対して表示し、水処理施設の運転操作を支援する活性汚泥状態の診断装置、システム、方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【0055】
次に、第2実施形態の活性汚泥状態の診断システム、診断装置、診断方法およびコンピュータプロフラムについて図面を参照して詳細に説明する。
【0056】
図7は、第2実施形態の活性汚泥状態の診断システムの一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の活性汚泥状態の診断システム20は、微生物追従機能部22Aを更に備える点において上述の第1実施形態と相違している。
【0057】
微生物追従機能部22Aは、微生物情報取得部21から顕微鏡画像データを取得するとともに、微生物情報・学習モデル記憶部23から微生物学習済みモデルを取得する。微生物追従機能部22Aは、微生物学習済みモデルを用いて顕微鏡画像データ中の微生物の種類を画像認識により検出する。微生物追従機能部22Aは、顕微鏡画像データ中の微生物の種類を検出できるまで、顕微鏡画像データの取得および微生物学習済みモデルによる画像認識を繰り返して行う。このとき、微生物追従機能部22Aは、撮影部21Aの視野が微生物の位置変化に追従して移動するように、顕微鏡画像中の微生物の位置情報(例えば顕微鏡画像中の座標)を微生物情報取得部21の制御部21Eへ送信する。
【0058】
微生物追従機能部22Aは、顕微鏡画像中の微生物の種類を検出した場合、微生物の種類の情報と顕微鏡画像データと関連付けて撮影情報記憶部22へ記録する。撮影情報記憶部22には、微生物の種類の情報の検出に用いられた一連の顕微鏡画像データと、微生物の種類の情報とが関連付けられて記憶される。
【0059】
図8は、顕微鏡画像中の微生物の位置変化の一例について説明するための図である。
例えば、活発に移動する微生物32が、微生物追従機能部22Aにより種類を特定される前に撮影部21Aの観察時の視野31の外側の位置33に移動した場合、制御部21Eは微生物追従機能部22Aがその微生物の種類を特定するまで、微生物の位置情報に従って撮影部21Aの視野31を視野34へ移動させる。視野34は、視野31の外側の位置33へ移動した微生物を含む視野である。
【0060】
制御部21Eは、例えばカルマンフィルタやパーティクルフィルタなどの物体追跡手法により、観察時の視野31から外へ移動する微生物を追跡することができる。
なお、本実施形態において、微生物学習モデル生成部26は、撮影情報記憶部22から複数の顕微鏡画像データ、微生物の種類の情報および撮影条件を取得して、微生物学習済みモデルを生成してもよい。また、活性汚泥学習モデル生成部28は、撮影情報記憶部22から複数の複数の顕微鏡画像データ、微生物の種類の情報および撮影条件を取得して、活性汚泥学習済みモデルを生成してもよい。
本実施形態の活性汚泥状態の診断システム20は、上記以外の構成は上述の第1実施形態と同様である。本実施形態の活性汚泥状態の診断システム20によれば、活発に活動し、観察時の視野の外に移動する微生物に追従して撮影部21Aの視野を移動させることが可能であって、一連の顕微鏡画像により微生物の種類の特定し、微生物の同定および計数を正確に行うことができる。
【0061】
したがって、本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様に、活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報をオペレータに対して表示し、水処理施設の運転操作を支援する活性汚泥状態の診断装置、システム、方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【0062】
次に、第3実施形態の活性汚泥状態の診断システム、診断装置、診断方法およびコンピュータプロフラムについて図面を参照して詳細に説明する。
図9は、第3実施形態の活性汚泥状態の診断システムの一構成例を概略的に示す図である。
【0063】
本実施形態の活性汚泥状態の診断システム20は、オンラインデータ記憶装置51と、オフラインデータ記憶装置52とを更に備えている点において上述の第2実施形態と相違している。オンラインデータ記憶装置51とオフラインデータ記憶装置52とは、活性汚泥状態の診断装置10と有線又は無線により通信可能に接続されていればよく、例えばインターネットなどのネットワークを介して活性汚泥状態の診断装置10と接続されていてもよい。
【0064】
本実施形態の活性汚泥状態の診断システム20では、活性汚泥状態情報生成部29が、オンラインデータ記憶装置51およびオフラインデータ記憶装置52から供給される情報を更に用いて、活性汚泥状態情報を生成する。
【0065】
オンラインデータ記憶装置51は、例えば下水処理場1に設置されたセンサや、ネットワークを介して外部からリアルタイムで逐次取得されるデータを記憶する。オンラインデータ記憶装置51には、オンラインデータとして、例えば気温、天候情報、流量、SRT、pH、水温、MLSS、DO、ORP、T-N、T-P、COD(UV)、曝気風量などの情報が記憶されている。
【0066】
オフラインデータ記憶装置52は、例えば下水処理場1に流入する下水から処理水が得られる過程における被処理水の水質を示す情報を記憶する。オフラインデータ記憶装置52は、具体的には、オフラインデータとして、下水から処理水が得られる過程における水質項目である、pH、水温、COD、BOD、SS、T-N、T-P、NH4-N、NO3-N、NO2-N、透視度、大腸菌群、残留塩素などと、汚泥の性状項目である、pH、水温、SV、SVI、MLSS、SS、VSS、TS、VTSなどが記憶されている。オフラインデータ記憶装置52は、例えば数時間分、1日分、数日分などの所定期間分のオフラインデータを周期的に取得してデータを更新する。例えば、汚泥の性状項目中のSSは、微生物量と無機物など微生物以外の浮遊物質量の合計を示すものである。撮影用に活性汚泥を採取する際には、サンプリング時に活性汚泥の採取量にばらつきが生じる可能性があるため、撮影した複数画像中の微生物と無機物など微生物以外の浮遊物の大きさ、数、画像中に占める面積と、SSの関係をあらかじめ規格化しておき、その規格値に比べて、撮影した複数画像中の微生物と無機物など微生物以外の浮遊物の大きさ、数、画像中に占める面積が、例えば、80%~120%以内などの任意の規定値から外れる場合には、撮影した画像データの信頼性が不十分と判断して、解析する画像データから外すこともできる。
【0067】
活性汚泥状態情報生成部29は、オンラインデータおよびオフラインデータを用いることにより、下水処理場1の状況を示す情報と活性汚泥状態情報とを合わせて支援情報として出力することができる。
以上により、オペレータ99は、活性汚泥中の静止している微生物に加え、変形や移動をともなう微生物の種類、個数、生物活性などの情報と、その情報から生成される活性汚泥のランク情報、糸状性細菌の量や、糸状性細菌量と活性汚泥量の割合に基づく活性汚泥のランク情報、活性汚泥の状態ならびに状態変化を示す数値化された指標値などの情報と、オンラインデータ、オフラインデータから生成される活性汚泥状態情報を含む支援情報を自動的に得ることによって、必ずしも高度な知識と多くの経験がなくとも、下水処理場1での処理が順調に行われているか、運転障害が生じているか、などの運転状態を把握することができる。
【0068】
本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様に、活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報をオペレータに対して表示し、水処理施設の運転操作を支援する活性汚泥状態の診断装置、システム、方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【0069】
なお、上述の第1乃至第3実施形態の活性汚泥状態の診断システム20において、微生物情報取得部21はマイクロイメージングデバイスを含んでいてもよい。
図10は、微生物情報取得部としてマイクロイメージングデバイスを用いた例を概略的に示したものである。
【0070】
マイクロイメージングデバイス40は、イメージセンサ41と周辺部品42とを備え、イメージセンサ41の上に直接、撮影試料21Dを乗せて撮影試料21Dの顕微鏡画像(静止画および動画の少なくとも一方)を取得できるデバイスである。マイクロイメージングデバイス40は、通常の顕微鏡の倍率100倍での視野面積に比べ、10倍程度の視野面積を有しており、広い視野を一度に観察することができる。
【0071】
マイクロイメージングデバイス40が通常の顕微鏡に比べて広い観察視野を有しているため、例えば微生物が活発に動いている場合であっても、微生物の種類を特定する前にマイクロイメージングデバイス40の観察視野から外れることを回避することができる。この場合、例えば撮影部保持部21B、撮影部保持部21Bの制御機能、微生物追従機能部22Aを省略しても構わない。すなわち、マイクロイメージングデバイス40を用いることにより、撮影試料21Dを広い観察視野で撮影することで、微生物情報取得部21の撮影部21Aおよびその制御機能を有することなく、静止している微生物に加え、変形や移動をともなう微生物を含めて、微生物の同定および計数を正確に行うことができる。
【0072】
次に、一実施形態の活性汚泥状態の診断システムの予測情報生成部の一例について説明する。本実施形態の活性汚泥状態の診断システムは、予測情報生成部を備える点において上述の第1乃至第3実施形態と異なっている。以下に説明する予測情報生成部は、上述の第1実施形態乃至第3実施形態に適用することができる。
【0073】
図11は、一実施形態の活性汚泥状態の診断システムの予測情報生成部の一構成例を概略的に示す図である。
予測情報生成部は、現状データ(活性汚泥状態情報、運転ランク情報)を出力する活性汚泥状態情報生成部29、活性汚泥施設における、水質計測、汚泥計測、顕微鏡計測等の手分析・観察データを記憶した第1記憶部60、自動計測される得る活性汚泥運転データを記憶した第2記憶部61、および、過去運転実績値の過去運転帳票データを記憶した第3記憶部62を含む。なお、第1記憶部60、第2記憶部61、第3記憶部62は、活性汚泥状態情報生成部29に含まれていてもよく、診断システムの外部に設けられた構成であってもよい。
【0074】
また、予測情報生成部は、予測アルゴリズム部70と、手動予測値入力部71と、運転ランク判定アルゴリズム部72と、第1将来運転ランク出力部73と、第2将来運転ランク出力部(手動入力あり)74と、を備える。
予測アルゴリズム部70は、活性汚泥状態情報生成部29の出力(活性汚泥状態情報)と、第1記憶部60の手分析・観測データと、第2記憶部61の活性汚泥運転データと、第3記憶部62の過去運転帳票データとを用いて作成される複数の個別要素の時系列推移予測アルゴリズム70-1~70-6を含む。予測アルゴリズム部70は、例えば前述の糸状菌量、糸状菌ランク情報、活性汚泥フロックサイズ、フロック分布、一定サイズフロック量、フロック色調など活性汚泥画像から機械学習により判定される第1乃至第3活性汚泥画像(顕微鏡画像)のデータ推移予測数、第1乃至第3運転情報(活性汚泥運転情報)などについて、個別に時系列推移予測アルゴリズム(個別要素)を有し、既往データから時系列の予測データを出力することができる。
【0075】
手動予測値入力部71は、例えば診断システムのユーザによりシステムに入力された将来の運転情報の手動予測値の推移を取得し、取得した手動予測値の推移を運転ランク判定アルゴリズム部72に入力する。
運転ランク判定アルゴリズム部72は、予測アルゴリズム部70の複数の個別要素70-1~70-6各々の出力および手動予測値入力部71から入力された手動予測値に基づき、将来運転ランク(将来の活性汚泥のランク)の判定を行う。
【0076】
第1将来運転ランク出力部73は、運転ランク判定アルゴリズム部72により判定された将来運転ランクを出力する。
第2将来運転ランク出力部74は、手動予測値入力部71から取得した手動予測値と運転ランク判定アルゴリズム部72により判定された将来運転ランクとを出力する。
【0077】
手分析・観察データとは、顕微鏡観察微生物数、流入原水BOD、流入原水COD、流入原水T-N、流入原水NH4-N、MLSS、余剰汚泥SS濃度、SV、SVI、最終沈殿池出口BOD、最終沈殿池COD、最終沈殿池出口NH4-N、最終沈殿池出口T-P、最終沈殿池出口NO3-N、最終沈殿池出口透視度、余剰汚泥発生量、余剰汚泥固形分量、脱水汚泥含水率などを含み得る。
【0078】
自動計測される活性汚泥運転データとは、原水pH、処理水pH、水温、汚泥滞留時間、汚泥循環量、循環汚泥濃度、余剰汚泥発生量、曝気風量などを含み得るが、施設によって一部の手分析項目は、自動計測も用いられる。
過去運転実績値の過去運転帳票データは、手分析・観察データおよび活性汚泥運転データの過去データである。過去データは、計測された日時や分析された日時などの日付と関連付けられて帳票データとして検出結果記憶・表示部53に記憶されている。帳票データは、計測地点や分析手法等を識別するデータを含んでいてもよい。
【0079】
予測アルゴリズム部70は、複数の個別要素70-1~70-6を含む。本実施例では、個別要素70-1~70-3は、学習済みモデルを用いて得られた微生物の検出結果に少なくとも基づいて、活性汚泥に含まれる将来の微生物数の予測値を算出する第1推移予測部である。個別要素70-4~70-6は、学習済みモデルを用いて得られた微生物の検出結果に少なくとも基づいて、活性汚泥の将来の運転情報(活性汚泥運転データや活性汚泥運転パラメータ)の予測値を算出する第2推移予測部である。複数の個別要素70-1~70-6の各々は、例えば第1微生物出現数、第2微生物出現数、第3微生物出現数、第1乃至第3活性汚泥運転情報(例えば活性汚泥運転データや活性汚泥運転パラメータのいずれか)などについて、個別に将来の予測値を算出する時系列推移予測アルゴリズムを有し、既往データを入力することにより将来の予測値を出力することができる。
【0080】
時系列推移予測アルゴリズム70-1~70-6は、多変量解析法、決定木法、勾配ブースティング法、ランダムフォレスト法、ニューラルネット法、K近接法、サポートベクターマシンおよびこれらのアンサンブル学習アルゴリズムやベイズ構造時系列法、長・短期記憶法、再帰型ニューラルネット法、自己回帰和分移動平均法、季節性自己回帰和分移動平均法などの自己回帰法、トランスフォーマ法などの時系列データ解析アルゴリズム、およびこれらを組み合わせて用いることができる。また、運転操作で値を一定範囲で変更することができる一部の第1乃至第3活性汚泥運転情報などについては、手動での予測値入力により、運転操作範囲の策定をすることができる。
【0081】
第1将来運転ランク出力部73は、時系列推移予測アルゴリズム70-1~70-6の出力結果(時系列情報)を用いて、運転ランク判定アルゴリズム部72にて判定された将来運転ランク(将来の活性汚泥状態)を得る。
また、手動予測値入力部71から入力された手動予測値がある場合、第2将来運転ランク出力部74は、時系列推移予測アルゴリズム部70の出力結果(時系列情報)および手動予測値入力部71から入力された手動予測値を用いて、手動入力による予測値を考慮した将来運転ランク(将来の活性汚泥状態)を得る。
【0082】
ここで、運転ランク判定アルゴリズム部72は、多変量解析法、決定木法、勾配ブースティング法、ランダムフォレスト法、ニューラルネット法、K近接法、サポートベクターマシンなどのデータ分類アルゴリズムおよびこれらのアンサンブル学習アルゴリズムや、ガウス混合法、K平均法、階層法などのクラスタリングアルゴリズムや、主成分分析法、多次元尺度構成法、t-分布的近傍埋め込み法、UMAP法などのデータ次元圧縮アルゴリズムを単独または組み合わせ選択して将来のランク情報を生成してもよい。また、運転ランク判定アルゴリズム部72は、長・短期記憶法、再帰型ニューラルネット法、自己回帰和分移動平均法、季節性自己回帰和分移動平均法などの自己回帰法、トランスフォーマ法などの時系列データ解析アルゴリズム、およびこれらを組み合わせて用いて将来のランク情報を生成することができる。
【0083】
第1将来運転ランク出力部73および第2将来運転ランク出力部74から出力された将来運転ランクの情報は、例えば、支援情報として支援情報表示部30に供給される。支援情報表示部30は、予測情報生成部が生成した将来運転ランクの情報を支援情報としてオペレータ99に対して表示し、下水処理場1などの水処理施設の運転操作を支援することができる。
本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様に、活性汚泥状態の診断結果を含む支援情報をオペレータに対して表示し、水処理施設の運転操作を支援する活性汚泥状態の診断装置、システム、方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【0084】
本実施形態に係るプログラムは、電子機器に記憶された状態で譲渡されてよいし、電子機器に記憶されていない状態で譲渡されてもよい。後者の場合は、プログラムは、ネットワークを介して譲渡されてよいし、記憶媒体に記憶された状態で譲渡されてもよい。記憶媒体は、非一時的な有形の媒体である。記憶媒体は、コンピュータ可読媒体である。記憶媒体は、CD-ROM、メモリカードなどのプログラムを記憶可能かつコンピュータで読取可能な媒体であればよく、その形態は問わない。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…下水処理場、2…最初沈澱池、3…生物反応槽、4…最終沈澱池、5…ブロワ、6…汚泥返送ポンプ、7…余剰汚泥ポンプ、20…診断システム、99…オペレータ、21…微生物情報取得部、10…診断装置、22…撮影情報記憶部、23…微生物情報・学習モデル記憶部、24…活性汚泥情報・学習モデル記憶部、25…微生物情報生成部、26…微生物学習モデル生成部、27…活性汚泥情報生成部、28…活性汚泥学習モデル生成部、29…活性汚泥状態情報生成部、30…支援情報表示部、21A…撮影部、21B…撮影部保持部、21C…光源、21E…制御部、21F…通信部、21D…撮影試料、22A…微生物追従機能部、32…微生物、31、34…視野、33…位置、51…オンラインデータ記憶装置、52…オフラインデータ記憶装置、40…マイクロイメージングデバイス、41…イメージセンサ、42…周辺部品、60…第1記憶部、61…第2記憶部、62…第3記憶部、70…予測アルゴリズム部、70-1~70-6…時系列推移予測アルゴリズム(個別要素)、71…手動予測値入力部、72…運転ランク判定アルゴリズム部、73…第1将来運転ランク出力部、74…第2将来運転ランク出力部